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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09C
管理番号 1175524
審判番号 不服2005-17518  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-13 
確定日 2008-04-03 
事件の表示 特願2001-309335「ラテン方体の作成方法及び作成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月18日出願公開、特開2003-114619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月5日の出願であって、平成17年6月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月28日付けで手続補正がなされたものの、同年8月16日付けで拒絶の査定がなされた。その後、同年9月13日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同年10月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年10月12日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年10月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正内容
上記平成17年10月12日付け手続補正により、特許請求の範囲は、

「【請求項1】
X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に、互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように配置された、次数nのラテン方体を作成する作成方法において、
前記次数n分の記号を順列及び該順列に従った選択順を定めて設定すると共に、前記Y軸とZ軸に沿った前記X軸方向の面、前記Z軸とX軸に沿った前記Y軸方向の面、及び前記X軸とY軸に沿った前記Z軸方向の面のいずれか一つの面を変換基準面として定めて設定し、かつ、所望の既存のn次のラテン方体を記憶用配列に設定する第1のステップと、
前記変換基準面上の要素の位置の順番を入れ替える入替情報Pをn個の順番を示す値P(1)?P(n)として設定する第2のステップと、
前記第2のステップで設定された入替情報Pによって、前記ラテン方体記憶用配列に格納されている既存のn次のラテン方体の各要素を、前記第1のステップで設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択し、選択した要素の記号を読み出し、面毎にn×nのすべての要素を入れ替える第3のステップと
を含み、前記第3のステップは、前記既存のn次のラテン方体の前記X軸の位置I、前記Y軸の位置J及び前記Z軸の位置Kにおける要素を、前記第1のステップで設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択した要素としたとき、その選択した要素の記号R’(I,J,K)を前記既存のn次のラテン方体から読み出し、その読み出した記号R’(I,J,K)を、作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置P(I)、Y軸の位置J及びZ軸の位置Kにおける要素R(P(I),J,K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置P(J)及びZ軸の位置Kにおける要素R(I,P(J),K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置J及びZ軸の位置P(K)における要素R(I,J,P(K))とすることにより、前記既存のn次のラテン方体のすべての要素を入れ替えて前記新たなn次のラテン方体を作成することを特徴とするラテン方体の作成方法。
【請求項2】
前記第1乃至第3のステップを複数回繰り返して新たなラテン方体の作成を複数回行うと共に、新たなラテン方体の作成の度に前記変換基準面を変更することを特徴とする請求項1記載のラテン方体の作成方法。
【請求項3】
作成するラテン方体の次数nと記号とを設定し、該ラテン方体の各位置に前記記号の一つを配列要素として選択決定する際に、その選択決定を、前記X軸あるいはY軸あるいはZ軸に沿って最後の位置まで順に行うと共に、各位置毎に、同一X軸及びY軸及びZ軸の前の位置の既に決定されている配列要素と同一記号とならないように、記号を選択順に選択して最初の一つ目のラテン方体を作成する第4のステップを更に有し、前記第4のステップにより作成されたラテン方体を、前記第1のステップで前記記憶用配列に設定する前記既存のn次のラテン方体とすることを特徴とする請求項1又は2記載のラテン方体の作成方法。
【請求項4】
前記第4のステップ又は前記第1乃至第3のステップにより作成された一つ目のラテン方体の最後に選択決定された位置から、前記X軸及びY軸及びZ軸に沿って、既存の配列要素の記号よりも選択順位が下位である記号を選択できる位置まで順に戻り、その位置から前記X軸あるいはY軸あるいはZ軸に沿って最後の位置まで、各位置毎に同一X軸及びY軸及びZ軸の前の位置の既に決定されている配列要素と同一記号とならないように、順に配列要素の記号を選択決定して2つ目以降のラテン方体を作成する第5のステップを更に有し、前記第5のステップにより作成されたラテン方体を、前記第1のステップで前記記憶用配列に設定する前記既存のn次のラテン方体とすることを特徴とする請求項3記載のラテン方体の作成方法。
【請求項5】
X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に相当するn3個の記憶素子を有し、該記憶素子のそれぞれには互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように格納されて、所望の既存の次数nのラテン方体を格納するラテン方体記憶用配列と、
前記次数n分の記号を順列及び該順列に従った選択順を定めて設定すると共に、前記Y軸とZ軸に沿った前記X軸方向の面、前記Z軸とX軸に沿った前記Y軸方向の面、及び前記X軸とY軸に沿った前記Z軸方向の面のいずれか一つの面を変換基準面として定めて設定する設定手段と、
n個の順番を示す値P(1)?P(n)が前記変換基準面上の要素の位置の順番を入れ替える入替情報として書き込まれ、書き込まれた前記入れ替え情報が読み出される入替情報記憶部と、
X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に相当するn3個の記憶素子を有し、該記憶素子のそれぞれには互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように格納されて、次数nの新たなラテン方体を格納するラテン方体入替用配列と、
前記入替情報によって、前記ラテン方体記憶用配列に格納されている既存のn次のラテン方体の各要素を、前記設定手段で設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択し、選択した要素の記号を読み出して前記ラテン方体入替用配列に格納することを繰り返して、面毎にn×nのすべての要素を入れ替える演算手段と
を有し、前記演算手段により、前記既存のn次のラテン方体の前記X軸の位置I、前記Y軸の位置J及び前記Z軸の位置Kにおける要素を、前記設定手段で設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択した要素としたとき、その選択した要素の記号R’(I,J,K)を前記既存のn次のラテン方体から読み出し、その読み出した記号R’(I,J,K)を、前記ラテン方体入替用配列のX軸の位置P(I)、Y軸の位置J及びZ軸の位置Kにおける要素R(P(I),J,K)、又はX軸の位置I、Y軸の位置P(J)及びZ軸の位置Kにおける要素R(I,P(J),K)、又はX軸の位置I、Y軸の位置J及びZ軸の位置P(K)における要素R(I,J,P(K))とすることにより、前記ラテン方体入替用配列に新たに作成したラテン方体を格納することを特徴とするラテン方体作成装置。」

から、

「【請求項1】
X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に、互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように配置される所望の既存のn次のラテン方体が記憶された記憶用配列に、新たな別のn次のラテン方体を、コンピュータを用いて更新記憶させるラテン方体作成用プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記次数n分の記号を順列及び該順列に従った選択順を定めて設定すると共に、前記Y軸とZ軸に沿った前記X軸方向の面、前記Z軸とX軸に沿った前記Y軸方向の面、及び前記X軸とY軸に沿った前記Z軸方向の面のいずれか一つの面を変換基準面として定めて設定する第1の機能と、
前記変換基準面上の要素の位置の順番を入れ替える入替情報Pをn個の順番を示す値P(1)?P(n)として設定する第2の機能と、
前記第2の機能で設定された入替情報Pによって、前記記憶用配列に格納されている前記既存のn次のラテン方体の各要素を、前記第1の機能で設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択し、選択した要素の記号を読み出し、面毎にn×nのすべての要素を入れ替える第3の機能と
を実現させ、
前記第3の機能は、前記既存のn次のラテン方体の前記X軸の位置I、前記Y軸の位置J及び前記Z軸の位置Kにおける要素を、前記第1の機能で設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択した要素としたとき、その選択した要素の記号R’(I,J,K)を前記既存のn次のラテン方体から読み出し、その読み出した記号R’(I,J,K)を、作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置P(I)、Y軸の位置J及びZ軸の位置Kにおける要素R(P(I),J,K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置P(J)及びZ軸の位置Kにおける要素R(I,P(J),K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置J及びZ軸の位置P(K)における要素R(I,J,P(K))とすることにより、前記既存のn次のラテン方体のすべての要素を入れ替えて前記新たなn次のラテン方体を作成することを特徴とするラテン方体作成用プログラム。
【請求項2】
X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に相当するn3個の記憶素子を有し、該記憶素子のそれぞれには互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように格納されて、所望の既存の次数nのラテン方体を格納するラテン方体記憶用配列と、
前記次数n分の記号を順列及び該順列に従った選択順を定めて設定すると共に、前記Y軸とZ軸に沿った前記X軸方向の面、前記Z軸とX軸に沿った前記Y軸方向の面、及び前記X軸とY軸に沿った前記Z軸方向の面のいずれか一つの面を変換基準面として定めて設定する設定手段と、
n個の順番を示す値P(1)?P(n)が前記変換基準面上の要素の位置の順番を入れ替える入替情報として書き込まれ、書き込まれた前記入れ替え情報が読み出される入替情報記憶部と、
X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に相当するn3個の記憶素子を有し、該記憶素子のそれぞれには互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように格納されて、次数nの新たなラテン方体を格納するラテン方体入替用配列と、
前記入替情報によって、前記ラテン方体記憶用配列に格納されている既存のn次のラテン方体の各要素を、前記設定手段で設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択し、選択した要素の記号を読み出して前記ラテン方体入替用配列に格納することを繰り返して、面毎にn×nのすべての要素を入れ替える演算手段と
を有し、前記演算手段により、前記既存のn次のラテン方体の前記X軸の位置I、前記Y軸の位置J及び前記Z軸の位置Kにおける要素を、前記設定手段で設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択した要素としたとき、その選択した要素の記号R’(I,J,K)を前記既存のn次のラテン方体から読み出し、その読み出した記号R’(I,J,K)を、前記ラテン方体入替用配列のX軸の位置P(I)、Y軸の位置J及びZ軸の位置Kにおける要素R(P(I),J,K)、又はX軸の位置I、Y軸の位置P(J)及びZ軸の位置Kにおける要素R(I,P(J),K)、又はX軸の位置I、Y軸の位置J及びZ軸の位置P(K)における要素R(I,J,P(K))とすることにより、前記ラテン方体入替用配列に新たに作成したラテン方体を格納することを特徴とするラテン方体作成装置。」

と補正された。

(2)補正の是非についての検討
本件手続補正は、特許法第17条の2第1項第3号の規定による補正であって、少なくとも、同条第4項第1号ないし第4号に掲げる請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれかの事項を目的とするものでなければならないから、以下、これについて検討する。

(ア)請求項の削除について
補正前の請求項1,5については、それぞれ、補正後の請求項1,2が対応し、補正前の請求項2-4については請求項の削除に該当する。

(イ)特許請求の範囲の減縮について
補正前の請求項1に係る発明は、既存のラテン方体から別のラテン方体を作成する方法の発明であるのに対し、補正後の請求項1に係る発明は、既存のラテン方体から別のラテン方体を作成するためのコンピュータプログラムの発明である。そして、プログラムは方法発明の各ステップを実現するための主体となるものであり、その実施の形態としては「物」の発明に属するものであるから、補正後の発明は補正前の発明のカテゴリーを変更するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当しない。

(ウ)誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明について
上記補正は、誤記の訂正ではなく、また、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものでもない。

以上検討したとおり、本件手続補正のうち、請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれも目的とするものではない。

(3) 結び
以上のとおりであって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反しているものであるから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

3.補正却下の決定を踏まえた検討

(1)本願の請求項1に係る発明
平成17年10月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年7月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「【請求項1】
X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に、互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように配置された、次数nのラテン方体を作成する作成方法において、
前記次数n分の記号を順列及び該順列に従った選択順を定めて設定すると共に、前記Y軸とZ軸に沿った前記X軸方向の面、前記Z軸とX軸に沿った前記Y軸方向の面、及び前記X軸とY軸に沿った前記Z軸方向の面のいずれか一つの面を変換基準面として定めて設定し、かつ、所望の既存のn次のラテン方体を記憶用配列に設定する第1のステップと、
前記変換基準面上の要素の位置の順番を入れ替える入替情報Pをn個の順番を示す値P(1)?P(n)として設定する第2のステップと、
前記第2のステップで設定された入替情報Pによって、前記ラテン方体記憶用配列に格納されている既存のn次のラテン方体の各要素を、前記第1のステップで設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択し、選択した要素の記号を読み出し、面毎にn×nのすべての要素を入れ替える第3のステップと
を含み、前記第3のステップは、前記既存のn次のラテン方体の前記X軸の位置I、前記Y軸の位置J及び前記Z軸の位置Kにおける要素を、前記第1のステップで設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択した要素としたとき、その選択した要素の記号R’(I,J,K)を前記既存のn次のラテン方体から読み出し、その読み出した記号R’(I,J,K)を、作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置P(I)、Y軸の位置J及びZ軸の位置Kにおける要素R(P(I),J,K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置P(J)及びZ軸の位置Kにおける要素R(I,P(J),K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置J及びZ軸の位置P(K)における要素R(I,J,P(K))とすることにより、前記既存のn次のラテン方体のすべての要素を入れ替えて前記新たなn次のラテン方体を作成することを特徴とするラテン方体の作成方法。」

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-285101号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

A.「【特許請求の範囲】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【請求項5】 ラテン方陣を3次元(縦方向をX軸、横方向をY軸、奥行き方向をZ軸とする)に配置した作成しようとするラテン方体(R) の次数(n) を設定すると共に、該次数(n) 分の記号(m) を順列および該順列に従った選択順を定めて設定する制御部(1) と、該制御部(1) に設定した次数(n) に対応してラテン方体記憶用配列(12)の各位置(A_(IJK) ) を設定するラテン方体作成部(2) と、を有し、前記制御部(1) に対する次数(n) の設定と、前記記号(m) の順列および該順列に従った選択順の設定を、前記ラテン方体記憶用配列(12)に対する既存のラテン方体の設定により達成し、前記制御部(1) に予め記憶させた制御プログラムに従って、前記ラテン方体記憶用配列(12)のX軸(I) およびY軸(J) およびZ軸(K) の最後の位置(A_(nnn) ) から、前記X軸(I) およびY軸(J) およびZ軸(K) に沿って、既存の配列要素(E_(IJK) ) の記号(m) よりも選択順が下位である記号(m)を選択できる位置(A_(IJK) ) まで順に戻り、該位置(A_(IJK) ) から前記X軸(I) あるいはY軸(J) あるいはZ軸(K) に沿って前記最後の位置(A_(nnn) ) まで、各位置(A_(IJK) ) 毎に同一X軸(I) およびY軸 (J) およびZ軸(K) の前の位置(A_(IJK) )の既に決定されている配列要素(E_(IJK) ) と同一記号(m) とならないように、順に配列要素(E_(IJK) ) の記号(m) を選択決定するラテン方体の作成方法。」

B. 「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、暗号通信に使用される変換表とか、実験計画法、統計学における同一性を持たない組合せの設定等に利用されるラテン方体の作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本発明の説明のために、ラテン方体の基本的性質を説明する。n個の記号から成る集合A={a_(1) ,・・・,a_(n) }の各元をn回ずつ使って、合計n^(3) 個を3つの方向(X軸(縦)方向、Y軸(横)方向、Z軸(奥行き)方向)にそれぞれn個の要素を持つ立方体に配列し、各方向において、Aの各元が1度づつ現れるもの、すなわち互いの同じ位置に同じ値を持たないn次ラテン方陣をn個重ね合わせたものをA上のラテン方体、あるいはn次ラテン方体と云う。
【0003】1次のラテン方体は、
A={0}
a(0,0,0)=0
とすると、2次元表示では、図1に示すようになり、3次元座標で表示すると、図2に示すようになる。
【0004】次に、2次のラテン方体の基本形を示す。
A={0,1}
a(0,0,0)=0、 a(0,1,0)=1
a(1,0,0)=1、 a(1,1,0)=0
a(0,0,1)=1、 a(0,1,1)=0
a(1,0,1)=0、 a(1,1,1)=1
とすると、2次元表示では、図3に示すようになり、この二つの表(Z=0とZ=1)を重ねて、3次元座標で表示すると、図4に示すようになる。
【0005】3次のラテン方体の標準形の一例を2次元表示すると図5に示すようになり、この図5における(・)の要素の値は、ラテン方体を形成する任意の値が設定されているものであり、この図5のラテン方体は、X軸、Y軸、Z軸に沿った並びの配列要素の値のいずれも0?2の昇順(自然順列)になっているので、標準形(既約形)である。
【0006】標準形のラテン方体の個数は公に示されてはいないが、L3(n)として表すと、n次ラテン方体の総数は、n!・(n-1)!・(n-1)!・L3(n)で表すことができ、L3(n)の値はnが5以下のときでは、
L3(1)=1
L3(2)=1
L3(3)=1
L3(4)=64
L3(5)=40246
で、各次数におけるラテン方体の総数は、1次=1、2次=2、3次=24、4次=55296、5次=2781803520となる。 」

C.「【0043】図18は、請求項5ないし7記載の発明の実施例のフローチャートの一例を示すもので、ステップT1は、ラテン方体記憶用配列12に新しく作成を行おうとするものと等しい次数nの同一の記号mの既存のラテン方体を記憶させることにより、制御部1に次数n、記号m、記号mの順列と選択順{0,1,・・・n-1}を指定すると共に、X軸位置指定部3を最後の位置の値nに、Y軸位置指定部4を最後の位置の値nに、そしてZ軸位置指定部5を最後の位置の値nに設定する。
【0044】ステップT2は、ラテン方体記憶用配列12の位置A_(IJK) の配列要素E_(IJK )の値をラテン方体Rの記号mの次の順序に設定し、ステップT3は、ラテン方体記憶用配列12の位置A_(IJK) の配列要素E_(IJK) の値が最後の値(n-1)を越えなければ、ステップT10へ行き、最後の値(n-1)を越えたなら置くものがないのでステップT4に進む。
【0045】ステップT4は、設定用データ記憶部9に値0を設定することで、ラテン方体記憶用配列12の位置A_(IJK) の配列要素E_(IJK) の値を最初の値0に設定し、ステップT5は、Z軸位置指定部5を一つ前の位置に設定し、ステップT6は、Z軸位置指定部5が先頭1より前でない場合にステップT2へ行く。
【0046】ステップT7は、Y軸位置指定部4を一つ前の位置に設定すると共に、Z軸位置指定部5の位置を最後nにし、ステップT8は、Y軸位置指定部4が先頭1より前でない場合にステップT2へ行く。
【0047】ステップT9は、X軸位置指定部3を一つ前の位置に設定すると共に、Y軸位置指定部4を最後nの位置に設定し、ステップT2へ行く。
【0048】ステップT10は、X軸位置指定部3の位置が先頭1なら、X軸Iの同じ並びにはそれ以前の比較する配列要素E_(IJK) が存在しないので、ステップT12へ行き、ステップT11は、配列要素E_(IJK) の値に対し、X軸Iの同じ並びの、それ以前の位置A_(IJK) の配列要素E_(IJK) を示すように、Y軸位置比較部7にY軸位置指定部4の値を設定してZ軸位置比較部8にZ軸位置指定部5の値を指定し、X軸位置比較部6の値を1からX軸位置指定部3の位置の示す1つ前の値まで順に変化させて、その示す比較用データ記憶部10の値と設定用データ記憶部9の値をデータ比較部11により比較し、一致するものがある場合には、ステップT2へ行く。
【0049】ステップT12は、Y軸位置指定部4の位置が先頭1なら、Y軸Jの同じ並びに、それ以前の比較する配列要素E_(IJK) が存在しないので、ステップT14へ行き、ステップT13は、配列要素E_(IJK) の値に対し、Y軸Jの同じ並びの、それ以前の位置A_(IJK) の配列要素E_(IJK) を示すように、X軸位置比較部6にX軸位置指定部3の値を設定してZ軸位置比較部8にZ軸位置指定部5の値を設定し、Y軸位置比較部7の値を1からY軸位置指定部4の位置の示す1つ前の値まで順に変化させて、その示す比較用データ記憶部10の値と設定用データ記憶部9の値をデータ比較部11により比較し、一致するものがある場合には、ステップT2へ行く。
【0050】ステップT14は、Z軸位置指定部5の位置が先頭1なら、Z軸Kの同じ並びに、それ以前の比較する配列要素E_(IJK) が存在しないので、ステップT16へ行き、ステップT15は、配列要素E_(IJK) の値に対し、Z軸Kの同じ並びの、それ以前の位置A_(IJK) の配列要素E_(IJK) を示すように、X軸位置比較部6にX軸位置指定部3の値を設定してY軸位置比較部7にY軸位置指定部4の値を設定し、Z軸位置比較部8の値を1からZ軸位置指定部5の位置の示す1つ前の値まで順に変化させて、その示す比較用データ記憶部10の値と設定用データ記憶部9の値をデータ比較部11により比較し、一致するものがある場合には、ステップT2へ行く。
【0051】ステップT16は、Z軸位置指定部5の位置を一つ次の位置に設定し、ステップT17は、Z軸位置指定部5の位置は最後の位置A_(IJK) を越えたかどうか、越えていない場合はステップT19へ行く。
【0052】ステップT18は、Y軸位置指定部4を一つ次の位置に設定すると共に、Z軸位置指定部5を先頭1の位置に設定し、ステップT19では、Y軸位置指定部4は最後の位置A_(IJK) を越えたかどうか、越えていない場合はステップT21へ行く。
【0053】ステップT20は、X軸位置指定部3を一つ次の位置に設定すると共に、Y軸位置指定部4を先頭1の位置に設定し、ステップT21は、X軸位置指定部3は最後の位置A_(IJK) を越えたかどうか、越えていない場合はステップT10へ行くが、最後の位置A_(IJK )より後の場合はステップT22に進んで作成を完了する。」

上記Bには、次数nのラテン方体とは、n個の記号から成る集合A={a_(1) ,・・・,a_(n) }の各元をn回ずつ使って、合計n^(3) 個を3つの方向(X軸(縦)方向、Y軸(横)方向、Z軸(奥行き)方向)にそれぞれn個の要素を持つ立方体に配列し、各方向において、Aの各元が1度づつ現れるものと説明されている。

上記A,Cの記載によれば、ラテン方体記憶用配列に格納される既存のラテン方体から新たなラテン方体を作成する手法として、ラテン方体記憶配列の最後の位置から、既存の配列要素の記号よりも下位である記号を選択できる位置まで戻り、選択決定をやり直す手法が記載されている。

以上の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n^(3)個の要素を持つ立方体の各要素に、互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように配置された、次数nのラテン方体を作成する作成方法において、
次数(n) の設定と、前記記号(m) の順列および該順列に従った選択順の設定を、前記ラテン方体記憶用配列(12)に対する既存のラテン方体の設定により達成し、
前記ラテン方体記憶用配列(12)のX軸(I) およびY軸(J) およびZ軸(K) の最後の位置(A_(nnn) ) から、前記X軸(I) およびY軸(J) およびZ軸(K) に沿って、既存の配列要素(E_(IJK) ) の記号(m) よりも選択順が下位である記号(m)を選択できる位置(A_(IJK )) まで順に戻り、該位置(A_(IJK )) から前記X軸(I) あるいはY軸(J) あるいはZ軸(K) に沿って前記最後の位置(A_(nnn) ) まで、各位置(A_(IJK) ) 毎に同一X軸(I) およびY軸 (J) およびZ軸(K) の前の位置(A_(IJK) )の既に決定されている配列要素(E_(IJK) ) と同一記号(m) とならないように、順に配列要素(E_(IJK) ) の記号(m) を選択決定するラテン方体の作成方法

また、原査定の拒絶の理由で引用された特開平2001-67339号公報(以下、引用文献2」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。

D. 「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、暗号通信に使用される変換表とか、実験計画法、統計学における同一性を持たない組合せの設定等に利用されるラテン方陣の作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本発明の説明のために、ラテン方陣の基本的性質を説明する。n個の記号から成る集合A={a_(1) ,・・・,a_(n) }の各元をn回ずつ使って、合計n^(2) 個のn行n列の正方形に配列し、各行各列において、Aの各元が1度づつ現れるものをA上のラテン方陣、あるいはn次ラテン方陣と云う。」

E.「 【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した特願平8-260006号に示された手法は、既知のラテン方陣における各位置の配列要素の記号を最終の位置から順に変換して、新たなラテン方陣を規則的に求めるものであるが、ラテン方陣を秘密にしておく必要のある暗号通信の鍵として使用する場合、使用済みのラテン方陣を元にして規則的に使用中の鍵としてのラテン方陣を推測されてしまう可能性が大きい、と云う問題があった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0011】そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、上記した手法を用いて、元のラテン方陣から各配列要素が充分に変化した新たなラテン方陣を作成することを技術的課題とし、もって元のラテン方陣から推測の殆ど不可能な新たなラテン方陣の規則的な作成を可能をし、ラテン方陣を安全にかつ簡単に利用できるようにすることを目的とする。」

F.「【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を、図1ないし図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、次数nを4とし、記号mは自然数(0,1,2,3)とし、その順列および選択順は自然順列の通りとする。
【0023】図1は、本発明方法を実施するために構成されたコンピュータの電気回路ブロック構成を示すもので、演算部1とラテン方陣作成部2とから構成され、演算部1は、ソフトウエア的に演算処理を実行する他に、次数n、記号m、記号mの順列と選択順、最初に配列要素E_(IJ)の値を選択決定する位置A_(IJ)、配列要素E_(IJ)を選択決定する順序、そして既存のラテン方陣R’のそれぞれを設定し、予め定められた制御プログラムに従って制御信号を出力する。
【0024】ラテン方陣作成部2は、与えられたラテン方陣の各位置K_(IJ)の配列要素E_(IJ)としての記号mを規則的に順に変換して新しいラテン方陣を作成する変換機能部3と、与えられたラテン方陣の各位置K_(IJ)の配列要素E_(IJ)としての記号mを、行Iまたはおよび列J単位で入れ替えて別のラテン方陣に変形させる入れ替え機能部4との組合せで構成されている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0026】入れ替え機能部4は、演算部1で設定された、入れ替える行およびその順序を予め記憶しておく行入れ替え記憶部13と、同じく演算部1で設定された、入れ替える列およびその順序を予め記憶しておく列入れ替え記憶部14と、演算部1により行入れ替え記憶部13に記憶された設定に従って与えられたラテン方陣の行Iの入れ替えを行う入れ替え用行位置指定用記憶部15と、演算部1により列入れ替え記憶部14に記憶された設定に従って与えられたラテン方陣の列Jの入れ替えを行う入れ替え用列位置指定用記憶部16と、与えられたラテン方陣および新しいラテン方陣に対応して、配列要素E_(IJ)を位置させる位置K_(IJ)を、2次元に配列した位置設定で設定記憶するラテン方陣入れ替え用配列17と、入れ替える配列要素E_(IJ)を記憶する第1入れ替え用データ記憶部18および第2入れ替え用データ記憶部19とから構成されている。」

G.「【0027】図2は、請求項2記載の発明の実施例のフローチャートの一例を示すもので、ステップS1でコンピュータを稼働させてから、ステップS2で、変換機能部3のラテン方陣記憶用配列12に、演算部1に予め記憶してある既存のラテン方陣R’の情報を記憶設定させ、ステップS3で、入れ替え機能部4の行入れ替え記憶部13に、演算部1に予め記憶してある行入れ替え情報を記憶設定し、同じく入れ替え機能部4の列入れ替え記憶部14に、演算部1に予め記憶してある列入れ替え情報を記憶設定して、設定処理を完了する。
【0028】ステップS3におけるrow(1)?row(n)は、行入れ替え記憶部13で、1?n行の行入れ替え情報を示し、データは1?nの指定した入れ替え先の値であり、またcolumn(1)?column(n)は、列入れ替え情報を示し、データは1?nの指定した入れ替え先の値である。
【0029】例えば、行Iの入れ替えは、行入れ替え記憶部13に、各々の入れ替え先の値を、
row(1)←2
row(2)←1
row(3)←3
row(4)←4
と設定する。」

H.「【0037】ステップS5である、入れ替え機能部4での中間ラテン方陣R”から新たなラテン方陣Rへの入れ替え作成処理は、変換機能部3で変換作成した中間ラテン方陣R”を入れ替え機能部4に移し換えた後で、設定された行Iの入れ替え(図4の(a)の場合、行1と行2との入れ替え)と、設定された列Jの入れ替え(図4の(b)の場合、列1と列2との入れ替え)とを順に行って、図4の(c)を得ることにより達成する。
【0038】このステップS5の処理について、以下に示す。行の入れ替え。2行目の行Iの値を1行目に入れ替える処理ラテン方陣入れ替え用配列17の2行目のデータを、第1入れ替え用データ記憶部18に格納するために、次の一連の処理を行う。
【0039】入れ替え用行位置指定用記憶部15を2行目に設定し、入れ替え用列位置指定用記憶部16を1列目に設定して、2行目の1列目のラテン方陣入れ替え用配列17のデータE(2,1)を、第1入れ替え用データ記憶部18の1つ目に格納する。
【0040】次いで、入れ替え用列位置指定用記憶部16を2列目に設定し、2行目の2列目のラテン方陣入れ替え用配列17のデータE(2,2)を、第1入れ替え用データ記憶部18の2つ目に格納する。以下、同様に2行目の4列目迄行う。
【0041】次に、1行目のデータを第2入れ替え用データ記憶部19に格納するために、次の一連の処理を行う。
【0042】入れ替え用行位置指定用記憶部15を1行目に設定し、入れ替え用列位置指定用記憶部16を1列目に設定して、1行目の1列目のラテン方陣入れ替え用配列17のデータE(1,1)を、第2入れ替え用データ記憶部19の1つ目に格納する。
【0043】次いで、入れ替え用列位置指定用記憶部16を2列目に設定し、1行目の2列目のラテン方陣入れ替え用配列17のデータE(1,2)を、第2入れ替え用データ記憶部19の2つ目に格納する。以下、同様に1行目の4列目迄行う。
【0044】次に、第1入れ替え用データ記憶部18のデータを、行入れ替え記憶部13の場所row(2)の値1に従って、ラテン方陣入れ替え用配列17の1行目に格納するために、次の一連の処理を行う。
【0045】入れ替え用行位置指定用記憶部15を1行目に設定し、入れ替え用列位置指定用記憶部16を1列目に設定して、第1入れ替え用データ記憶部18の1つ目のデータをラテン方陣入れ替え用配列17の1行目の1列目E(1,1)に格納する。
【0046】次いで、入れ替え用列位置指定用記憶部16を2列目に設定し、第1入れ替え用データ記憶部18の2つ目のデータをラテン方陣入れ替え用配列17の1行目の2列目E(1,2)に格納する。以下、同様に1行目の4列目迄行う。
【0047】次に、第2入れ替え用データ記憶部19のデータを、行入れ替え記憶部14の場所row(1)の値2に従って、ラテン方陣入れ替え用配列17の2行目に格納するために、次の一連の処理を行う。
【0048】入れ替え用行位置指定用記憶部15を2行目に設定し、入れ替え用列位置指定用記憶部16を1列目に設定して、第2入れ替え用データ記憶部19の1つ目のデータをラテン方陣入れ替え用配列17の2行目の1列目E(2,1)に格納する。
【0049】次いで、入れ替え用列位置指定用記憶部16を2列目に設定し、第1入れ替え用データ記憶部18の2つ目のデータをラテン方陣入れ替え用配列17の2行目の2列目E(2,2)に格納する。以下、同様に2行目の4列目迄行い、行の入れ替えが完了する。」

以上の記載から、引用文献2には、既知のラテン方陣から行単位又は列単位に各要素を入れ替えることにより新たなラテン方陣を作成する方法として次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

行及び列方向にそれぞれn個の計n^(2)個の要素を持つ正方形の各要素に、互いに異なるn個の記号が行及び列方向で同じ記号が1度ずつ現れるように配置された、次数nのラテン方陣を作成する作成方法において、
入れ替えが行われるべき既知のn次ラテン方陣をラテン方陣入れ替え用配列に格納するステップと、
行単位で入れ替えを行うための行入れ替え情報又は列単位で入れ替えを行うための列入れ替え情報を行入れ替え記憶部又は列入れ替え記憶部に記憶するステップと、
前記行入れ替え情報又は前記列入れ替え情報を用いて前記ラテン方陣入れ替え用配列に格納されている既知のn次ラテン方陣のすべての要素を入れ替えるステップと
を含むラテン方陣の作成方法

(3)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「次数nのラテン方体」「ラテン方体記憶用配列」は、それぞれ、本願発明の「次数nのラテン方体」「記憶用配列」に相当し、引用発明1と本願発明とは、互いに異なる記号を3次元に配置した次数nの既存のラテン方体から新たなラテン方体を作成する作成方法である点で共通している。
引用発明1の「次数(n) の設定と、前記記号(m) の順列および該順列に従った選択順の設定を、前記ラテン方体記憶用配列(12)に対する既存のラテン方体の設定により達成」する点は、本願発明の第1のステップのうち、前記次数n分の記号を順列及び該順列に従った選択順を定めて設定すると共に、所望の既存のn次のラテン方体を記憶用配列に設定する点に相当する。
既存のラテン方体から新しいラテン方体を作成する手法が、引用発明1では最後の位置から既存の配列要素の記号よりも下位である記号を選択できる位置まで戻り、選択決定をやり直すものであるのに対し、本願発明では変換基準面上の要素の記号を入れ替え情報によって面毎に入れ替えるものであり、両者は手法に違いはあるものの、既存のn次のラテン方体の要素を入れ替えて新たなn次のラテン方体を作成する手法である点で共通している。

よって、本願発明と引用発明1とは、

X軸(縦)方向、Y軸(横)方向及びZ軸(奥行き)方向にそれぞれn個ずつ計n3個の要素を持つ立方体の各要素に、互いに異なるn個の記号が前記X軸、Y軸及びZ軸の各方向で同じ記号が1度ずつ現われるように配置された、次数nのラテン方体を作成する作成方法において、
前記次数n分の記号を順列及び該順列に従った選択順を定めて設定すると共に、所望の既存のn次のラテン方体を記憶用配列に設定するステップと、
前記既存のn次のラテン方体の要素を入れ替えて前記新たなn次のラテン方体を作成するステップとを含むことを特徴とするラテン方体の作成方法

である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
既存のn次のラテン方体のすべての要素を入れ替えて前記新たなn次のラテン方体を作成するステップが、引用発明1では、最後の位置から、既存の配列要素の記号よりも下位である記号を選択できる位置まで戻り、選択決定をやり直すものであるのに対し、本願発明では変換基準面上の要素を入れ替え情報によって面毎に入れ替えるものであり、具体的には、
(ア)前記Y軸とZ軸に沿った前記X軸方向の面、前記Z軸とX軸に沿った前記Y軸方向の面、及び前記X軸とY軸に沿った前記Z軸方向の面のいずれか一つの面を変換基準面として定めて設定するステップと、
(イ)前記変換基準面上の要素の位置の順番を入れ替える入替情報Pをn個の順番を示す値P(1)?P(n)として設定するステップと、
(ウ)前記第2のステップで設定された入替情報Pによって、前記ラテン方体記憶用配列に格納されている既存のn次のラテン方体の各要素を、前記第1のステップで設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択し、選択した要素の記号を読み出し、面毎にn×nのすべての要素を入れ替えるステップと
を含み、
(エ)前記入れ替えるステップは、前記既存のn次のラテン方体の前記X軸の位置I、前記Y軸の位置J及び前記Z軸の位置Kにおける要素を、前記第1のステップで設定された選択順で、かつ、前記変換基準面上で選択した要素としたとき、その選択した要素の記号R’(I,J,K)を前記既存のn次のラテン方体から読み出し、その読み出した記号R’(I,J,K)を、作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置P(I)、Y軸の位置J及びZ軸の位置Kにおける要素R(P(I),J,K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置P(J)及びZ軸の位置Kにおける要素R(I,P(J),K)、又は前記作成する新たなn次ラテン方体のX軸の位置I、Y軸の位置J及びZ軸の位置P(K)における要素R(I,J,P(K))とするものである点

(4)相違点についての検討
引用文献2の記載によれば、既知のラテン方陣から新たなラテン方陣を作成する場合、最終の位置から順に変換していく手法では規則性があり、ラテン方陣を推測されてしまう可能性があるという問題に対処して、引用発明2では、行単位又は列単位ですべての要素を入れ替えることにより既知のラテン方陣から新たなラテン方陣を作成している。従って、引用文献2の記載と同じ問題意識の元に、既存のn次のラテン方体の要素を入れ替えて前記新たなn次のラテン方体を作成するステップとして、引用発明1における手法に替えて、引用発明2における行単位又は列単位のすべての要素を入れ替える手法を検討することは通常の思考過程から自然に想到されることである。
引用発明2は、2次元のラテン方陣に対するものであり、行単位又は列単位の入れ替えを行うものであるが、3次元のラテン方体は2次元のラテン方陣の拡張に過ぎず、2次元のラテン方陣のおいて行又は列を入れ替えたときにできる新たな配列がラテン方陣になることが知られている以上、3次元のラテン方体においても、行又は列の集合である面単位で入れ替えた配列が新たなラテン方体を形成することは自明のことである。また、引用発明2は行単位又は列単位で入れ替えるものであり、この場合の行方向又は列方向とは、正方形配列の置き換えるべき1次元の基準方向となるものであるから、3次元に拡張したときには立方体配列の入れ替えのために2次元の何らかの基準、つまり、変換基準面を設定し、この変換基準面に関して面単位に入れ替えることは容易に為し得ることである。更に、引用発明2では行単位又は列単位の入れ替えのための行入れ替え情報又は列入れ替え情報を有しており、本願発明の入替情報Pはこれを単に面単位の入れ替え情報としたものにすぎない。
以上のとおり、面同士の入れ替えを行うための具体的構成である(ア)-(エ)の事項も2次元配列の行単位又は列単位の入れ替えを3次元配列に拡張したときに容易に想到されることである。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(5)むすび
したがって、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明および当該分野の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-30 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-02-19 
出願番号 特願2001-309335(P2001-309335)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09C)
P 1 8・ 572- Z (G09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 中里 裕正
野仲 松男
発明の名称 ラテン方体の作成方法及び作成装置  
代理人 松浦 兼行  

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