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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1175537 |
審判番号 | 不服2005-23431 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-05 |
確定日 | 2008-04-03 |
事件の表示 | 特願2002-210608「ライン照明装置及び画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月19日出願公開、特開2004- 56425〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成14年7月19日の出願であって、平成17年11月1日付で拒絶査定がされ、これに対して同年12月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月21日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年12月21日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年12月21日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(請求項の数は全部で6である。)は、 「棒状導光体の一端に発光ユニットを配置したライン照明装置において、 前記棒状導光体はアクリルなどの樹脂を射出成形して得られ、また前記棒状導光体は断面矩形状をなし、前記棒状導光体の射出成形時のひけが生じ難い側面となる前記矩形の短辺を含む長手方向の対向する側面のうち、一方の側面には光散乱パターンが設けられ、他方の側面は出射面とされ、また前記矩形の長辺を含む長手方向の対向する側面の少なくとも一方に前記短辺を含む長手方向の側面に設けた光散乱パターンよりも大きな光散乱パターンが設けられ、前記光散乱パターンは発光ユニットから離れるにつれて単位長さ当たりの面積が増加し、また前記発光ユニットの光源は光散乱パターンの法線上に配置されることを特徴とするライン照明装置。」と補正された。 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光散乱パターン」について具体的な限定を付加して補正後の請求項2とするものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-324308号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次の記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 LEDランプから放射される光を略棒状の導波路体の端部から入射させ、前記導波路体の前記端部とは略直角となる光放出面から放射して成るLED線状光源において、前記光放出面は前記導波路体の幅方向に曲率を有する凸面とされると共に、前記導波路体の前記光放出面に略対峙する位置には円形状あるいは多角形上にそれぞれが独立し且つ前記LEDランプからの距離に対応する面積を有する拡散体が配設される拡散面が設けられ、前記拡散体は顔料を体積濃度30%以下として含む媒体であって、顔料屈折率>媒体屈折率とされていることを特徴とするLED線状光源。」 イ 「【0010】 【発明の実施の形態】つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは本発明に係るLED線状光源であり、このLED線状光源1は、図中に符号2で示す導波路体と、符号3で示す三原色LEDランプと、符号4で示すランプハウスと、符号5で示す配線基板とを主たる構成部品として形成されている。 【0011】前記導波路体2は、図2に示すように例えば無色透明なアクリル樹脂など透明部材により略棒状として形成されるものであり、この実施形態では断面を図2(A)に示すように四辺形の一辺を円弧に置き換えたような形状とされ、その円弧状とした辺が光放出面2aとされ、この光放出面2aに対峙する辺が拡散面2bとされている。このときに、前記拡散面2bは図示のように凸または凹の円弧面、あるいは、直線など形状は自由である。 【0012】また、前記光放出面2aと拡散面2bとを結ぶ側面2cは直線状とされているが、この側面2cについては後のランプハウス4の項で再度説明する。そして、図2(B)に示すように、導波路体2の長手方向の一方の端部は、後にも説明する三原色LEDランプ3が取付けられる光取込面2dとされ、他方の端部には、例えばアルミニウムの真空蒸着が行われて鏡面とされて折返し反射面2eとされている。 【0013】尚、参考までに前記導波路体2のこの実施形態における各部の具体的寸法を記載すれば、前記光放出面2aは半径2.25mmとした凸の円弧面、拡散面2bは半径2.5mmとした凸の円弧面、光放出面2aから拡散面2bまでの距離は最大寸法で5.5mm、両側面2c間は4.5mm、そして、全長は230mmであり、用紙寸法A4に対応するものである。」 ウ 「【0015】このときに、前記導波路体2内を伝播する光量は三原色LEDランプ3からの距離が離れるに従い減少するものであり、また、拡散体6における反射量はその面積に比例するものであるので、三原色LEDランプ3(即ち、光取込面2d)からの距離が離れる程に適宜に面積が増されるものとされて、光放出面2aから放射される光量を均一化している。」 したがって、上記アないしウの記載及び図面から、引用例には、 「LEDランプから放射される光を略棒状の導波路体の端部から入射させ、前記導波路体の前記端部とは略直角となる光放出面から放射して成るLED線状光源において、前記光放出面は前記導波路体の幅方向に曲率を有する凸面とされると共に、前記導波路体の前記光放出面に略対峙する位置には円形状あるいは多角形上にそれぞれが独立し且つ前記LEDランプからの距離に対応する面積を有する拡散体が配設される拡散面が設けられたLED線状光源」発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (3)対比 引用発明の「LEDランプ」は、本願補正発明の「発光ユニット」に相当する。 引用発明の「略棒状の導波路体」は、本願補正発明の「棒状導光体」に相当する。 引用発明の「LED線状光源」は、引用例の前掲イ(【0012】)の記載から、棒状導光体の一端に発光ユニットを設けた線状光源であるから、本願補正発明の「棒状導光体の一端に発光ユニットを配置したライン照明装置」に相当する。 引用発明の「拡散体」は、棒状光源において光を拡散反射させるためのものであるから、本願補正発明の「光散乱パターン」に相当する。そして、引用発明の「拡散体」において「LEDランプからの距離に対応する面積を有する」ことは、本願補正発明の「光散乱パターン」における「発光ユニットから離れるにつれて単位長さ当たりの面積が増加」することに相当する。 引用発明の「光放出面」は、本願補正発明の「出射面」に相当する。 引用発明の「略棒状の導波路体」は、引用例の前掲イ(【0011】、【0013】)の記載から、断面の形状が、長辺と短辺を有する四辺形の一辺を円弧に置き換えたような形状であって、該断面の形状の短辺を含む長手方向の対向する側面のうち、一方に、「拡散体」を配設し、他方の円弧状とした面を「光放出面」としたものであるから、本願補正発明の「棒状導光体の断面形状の短辺を含む長手方向の対向する側面のうち、一方の側面には光散乱パターンが設けられ、他方の側面は出射面とされる」ことに相当する構成を有しているといえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「棒状導光体の一端に発光ユニットを配置したライン照明装置において、前記棒状導光体の断面形状の短辺を含む長手方向の対向する側面のうち、一方の側面には光散乱パターンが設けられ、他方の側面は出射面とされ、前記光散乱パターンは発光ユニットから離れるにつれて単位長さ当たりの面積が増加するライン照明装置」の点で一致し、次の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明の「棒状導光体」の断面は「矩形状」であるのに対して、引用発明の「棒状導光体」の断面は、長辺と短辺を有する四辺形の一辺を円弧に置き換えたような形状である点。 [相違点2] 本願補正発明の「棒状導光体」は、「アクリルなどの樹脂を射出成形して」作られたものであって、断面形状の短辺を含む長手方向の対向する側面が「棒状導光体の射出成形時のひけが生じ難い側面」であるのに対して、引用発明の「棒状導光体」は、引用例の前掲イ(【0011】)から、アクリル樹脂などで形成されるが、どのような手法で作られたのかについて特定されおらず、そして、断面形状の短辺を含む長手方向の対向する側面が「棒状導光体の射出成形時のひけが生じ難い側面」であるか否かは、不明である点。 [相違点3] 本願補正発明には断面の「長辺を含む長手方向の対向する側面の少なくとも一方に短辺を含む長手方向の側面に設けた光散乱パターンよりも大きな光散乱パターンが設けられ」ているのに対して、引用発明には、長辺を含む長手方向の側面には光散乱パターンが設けられていない点。 [相違点4] 本願補正発明の「発光ユニット」は、「光散乱パターンの法線上に配置」したものであるのに対して、引用発明の「発光ユニット」は、どのように配置したものであるのか特定されていない点。 (4)判断 [相違点1]について 棒状導光体を用いたライン照明装置において、棒状導光体の断面を「矩形状」とすることは、当該技術分野において普通に用いられている周知技術である。 例えば、前記周知技術は、特開平6-148435号公報に、「【0012】【実施例】以下本発明を図面に示した好適実施例に基づき詳細に説明する。図4は本発明の一実施例を示す断面図であり、従来のものと共通する部分については同一の参照番号を使用している。照明体3は角柱状の透明ガラスあるいは透明樹脂からなり、断面を長方形として対象物5に対する奥行き方向の辺の長さPを、対象物5に対向する辺の長さQよりも大きくしている。そして照明体3の四周側面のうち、対象物5に対向する面とは反対側の側面全体を粗面化することにより光散乱面3aとしてある。また、内面が反射面6Aとなっていて上部が開口している断面チャンネル形状の反射板6を照明体3を囲むように配置する。すなわち、対象物5と対向する面を除く三面に対向させて反射面6Aを設ける。」と記載されている。 したがって、棒状導光体を用いたライン照明装置である引用発明において、棒状導光体の断面を「長辺と短辺を有する四辺形の一辺を円弧に置き換えたような形状」に代えて、当該技術分野において普通に用いられている「矩形状」とすることは、当業者が実施の際に適宜行うべき事項である。 [相違点2]について 棒状導光体を用いたライン照明装置において、棒状導光体を「アクリルなどの樹脂を射出成形して」作ることは、周知技術である。 例えば、前記周知技術は、特開平10-241432号公報に「【0188】導光体10は、アクリル樹脂等の光透過性の優れた樹脂で射出成形法等により形成することができる。また、拡散領域11を鋸歯状とするには射出成形の金型にその形状を設けておけば、容易に可能である。」と記載され、また、特開2002-190917号公報に「【0031】図4は図1のIV-IV線の拡大断面図、図5は導光棒1の一端部の斜視図である。導光棒1は射出成形された透光性を有するアクリル樹脂等の無色透明な合成樹脂製であり、長手方向と直交する断面形状を蒲鉾形としてある。この蒲鉾形によって長手方向と交差する他面側を略半円棒形の放射部13とし、一面側を非円形の導光部14としてある。また、導光棒1は原紙サイズに見合う長さと、鏡面状の周面とを有する棒であり、この周面によって前記光入射面11,11から入射した光の出入及び全反射の機能を充足すべく成してある。」と記載されている。 そして、樹脂を用いた射出成形による製造物において、該製造物を構成する面のうち、面積の小さな面の方が面積の大きな面よりも「射出成形時のひけが生じ難い」ことは、当業者であれば常識的な特性を示しているにすぎず、引用発明の棒状導光体を「アクリルなどの樹脂を射出成形して」作ったときには、短辺を含む長手方向の対向する側面が、長辺を含む長手方向の対応する側面と比較して「棒状導光体の射出成形時のひけが生じ難い側面」となることは自明の事項である。 したがって、引用発明の棒状導光体を、「アクリルなどの樹脂を射出成形して」作り、断面矩形の短辺を含む長手方向の対向する側面が「棒状導光体の射出成形時のひけが生じ難い側面」とすることは、当業者が適宜実施できた設計的事項である。 [相違点3]について 棒状導光体の光散乱パターンを断面の「長辺を含む長手方向の対向する側面」に設けることは、周知技術であり、該周知技術は、例えば、特開平10-112782号公報の「【0008】透明導光体の底面または側面に設けられる切り欠き部は、光源から導入された光をその凸曲面(光出射面)に反射する機能を有する。切り欠き部の反射面で反射された光は光出射面のレンズ作用によって集光される。光源から透明導光体中に入射された光のうち、切り欠き部の反射面に到達しなかった光はその底面、側面や端面で反射された後に切り欠き部の反射面に到達し光出射面から出射される。」、及び、図面(図5)の記載において、切り欠き部、つまり、光散乱パターンを「長辺を含む長手方向の対向する側面」に設けることが示されている。 そして、所定の同じ目的を達成するための構成として、いくつかの異なる構成が存在するときに、それらを組み合わせることは、様々な技術分野において普通に行われていることであるから、引用発明において「短辺を含む長手方向の対向する側面」に光散乱パターンを設ける構成に加え、同じ目的を達成するための異なる構成である、前記周知技術の「長辺を含む長手方向の対向する側面」に光散乱パターンを設ける構成を組み合わせることは、当業者が容易になし得たことである。 その際、該光散乱パターンを「短辺を含む長手方向の側面に設けた光散乱パターンよりも大きな」ものとすることは、棒状導光体の各側面の面積や、加工の容易さ等に応じて、当業者が適宜実施できた設計事項にすぎない。 [相違点4]について 「発光ユニット」を、棒状導光体の中心位置等の「光散乱パターンの法線上に配置」することは、棒状導光体を用いたライン照明装置において、慣用技術である。 よって、引用発明において、「発光ユニット」を、「光散乱パターンの法線上に配置」することは、当業者が実施の際に適宜行うべき事項にすぎない。 そして、これらの相違点を総合的に考慮しても、本願補正発明は当業者が想到し難い格別のものであるとすることはできず、また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきである。 3.本願発明について 平成17年12月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「棒状導光体の一端に発光ユニットを配置したライン照明装置において、 前記棒状導光体はアクリルなどの樹脂を射出成形して得られ、また前記棒状導光体は断面矩形状をなし、前記棒状導光体の射出成形時のひけが生じ難い側面となる前記矩形の短辺を含む長手方向の対向する側面のうち、一方の側面には光散乱パターンが設けられ、他方の側面は出射面とされ、前記光散乱パターンは発光ユニットから離れるにつれて単位長さ当たりの面積が増加し、また前記発光ユニットの光源は光散乱パターンの法線上に配置されることを特徴とするライン照明装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「光散乱パターン」について具体的な限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-01-31 |
結審通知日 | 2008-02-05 |
審決日 | 2008-02-18 |
出願番号 | 特願2002-210608(P2002-210608) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 努 |
特許庁審判長 |
西山 昇 |
特許庁審判官 |
松永 稔 脇岡 剛 |
発明の名称 | ライン照明装置及び画像読取装置 |
代理人 | 小山 有 |