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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800274 審決 特許
無効200580168 審決 特許
無効2007800272 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G06F
審判 全部無効 1項1号公知  G06F
審判 全部無効 1項2号公然実施  G06F
審判 全部無効 2項進歩性  G06F
審判 全部無効 発明同一  G06F
管理番号 1175585
審判番号 無効2007-800083  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2008-04-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3242094号発明「キーボード命令入力モードの切り換え処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3242094号の請求項1?請求項10に係る発明(以下、「本件発明1?10」という。)についての出願は、平成12年3月3日になされ、平成13年10月19日にその発明について特許の設定登録がなされた。
これに対し、平成17年5月30日に無効審判が請求され、平成17年10月11日に訂正請求書が提出され、平成18年6月29日付けで上記訂正請求書における訂正が認められ、無効審判の請求が成り立たないとの審決がなされた。
(2)これに対して、審判請求人は、本件発明1?10は、
特許法第29条第1項各号、第29条第2項および第29条の2の規定に反して特許されたものであって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきであると主張して証拠方法として甲第1号証乃至甲第3号証を提出している。

2.審判請求人が主張する無効理由の概要
審判請求人は無効理由を概ね次の様に説明している。
(1)特許法第29条第1項各号の規定により特許を受けることができない理由
(i)無効審判請求の根拠
本件発明1?10は、その特許に係る出願前に日本国内において公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない、ものであり、また、本件発明1?10は、その特許に係る出願前に日本国内において公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない、ものであり、また、本件発明1?10は、その特許に係る出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、ものである。

(ii)先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明1
本件特許の出願前に頒布された甲第1号証(サンワサプライ株式会社発行:サンワサプライ総合カタログ『'99 COMPUTER SUPPLY CATALOG』)(以下、甲第1号証に係る総合カタログを「公知カタログ」と称する。)には、「テンキーボード」の商品詳細が開示されている。この商品詳細に示されているように、本件発明は、出願前から製品として販売されているとともに、その製品の内部において同一の処理がなされているものである。
また、公知カタログは、その裏表紙に「本カタログの内容は、1999年9月現在のものです。」とあるように、本件特許が出願された2000年3月3日より以前に既に公然と知られているものである。
具体的には、甲第1号証に提示した公知カタログの新製品第N4頁?第N5頁に、次のような記載がある。
型番「NT-USB9・USB9SV・USB9VA・NT-DOSV9・DOSV5V」及び型番「NT-USB8」などの商品詳細の説明のうち、特長の欄の第2項目に、「●NumLock非連動対応で、快適な入力環境を実現! テンキーから数字などを入力する際、NumLockをONにしても本体の一部がテンキーモードになることなく、アルファベットを入力することができます。」とある。他の型番の機器についても同様である。
すなわち、上記の型番などで示されているテンキーボードは、「主キーボード(パーソナルコンピュータメインキーボード)にキーパッド(テンキーボード)が連接使用される場合に、主キーボード或いはキーパッドの状態がどのようであっても、両者が完全に独立して両者が相互に影響を与えない状況の下で数字と英文字の入力をより便利となす」という、作用効果を奏するのである。
つまり、甲第1号証の公知カタログにはテンキーボードにおける詳細な処理手順の記載がないものの、公知カタログに紹介されているテンキーボードは作用効果が本件発明と同一であり、その処理内容(適宜NumLockコードに対応する信号を付与する)も当該技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に把握可能な程度であることから、本件発明は、実質的に公然に知られた、又は公然に実施されたものである。

(iii)先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明2
本件特許の出願前に頒布された甲第2号証(実願昭54-131013号(実開昭56-49936号)のマイクロフィルム)には、「テンキー・シフト符号自動挿入装置」の考案が開示されている。
甲第2号証に開示されている「テンキー・シフト符号自動挿入装置」の考案は、「操作判別回路」と、「シフト状態判読部」と、「信号付加回路」と、「切換回路手段」とを備え、「テン・キー部が操作されたときシフト状態判別部によりフル・キー部のシフト状態を判読しテン・キー部出力にシフト信号を付加するか否かを判断しかつテン・キー部の操作が終了したとき信号付加回路によりシフト信号を変更するか否かを判断するように構成したこと」を特徴とする。
甲第2号証は、「テンキー・シフト符号自動挿入装置」に係る考案である点において、「キーボード命令入力モードの切り換え処理方法」を提供する本件発明と、そのカテゴリが相違する。しかしながら、甲第2号証は、「フル・キー部(本件発明の『主キーボード』に対応)のシフト状態を判読しテン・キー部(本件発明の『キーパッド』に対応)出力にシフト信号(本件発明の『Num Lockコード&数理ラッチコード』に対応)を付加するか否かを判断する」という点において本件発明と共通する。

(2)特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない理由
(i)無効審判請求の根拠
本件発明1?10は、その特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が甲第1号証及び甲第2号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができない、ものである。

(ii)甲第1号証について
甲第1号証の公知カタログには、上述の通り、特長の欄の第2項目に、「●NumLock非連動対応で、快適な入力環境を実現! テンキーから数字などを入力する際、NumLockをONにしても本体の一部がテンキーモードになることなく、アルファベットを入力することができます。」とある。
すなわち、上記の型番で示されているテンキーボードは、「主キーボード(パーソナルコンピュータメインキーボード)にキーパッド(テンキーボード)が連接使用される場合に、主キーボード或いはキーパッドの状態がどのようであっても、両者が完全に独立して両者が相互に影響を与えない状況の下で数字と英文字の入力をより便利となす」という、本件発明と同様の作用効果を奏するのである。
このように、本件特許の請求項1に記載のステップ(a)(主キーボード及び予備キーパッドに一定の状態を要求しない)は、すでに甲第1号証に示されている。

(iii)甲第2号証について
甲第2号証には、実用新案登録請求の範囲、明細書の第5頁から第8頁にあるように、次の構成を備える考案が開示されている。すなわち、
(あ)フル・キー部を操作したのか、テン・キー部を操作したのかを判別する操作判別回路を備える
(い)フル・キー部が操作状態にあるとき、そのシフト状態を判読するシフト状態判読部を備える
(う)テン・キー部が操作されているとき、その付加すべきシフト信号を自動的に付加し、テン・キー部入力終了時にその前までテン・キー部のシフトと別のシフトでフル・キー部が動作していた場合、該別のシフト信号を付加する信号付加回路を備える
(え)テン・キー出力信号及びフル・キー出力信号のいずれか一方を選択出力する切換回路手段を備える
(お)テン・キー部が操作されたとき、シフト状態判読部によりフル・キー部のシフト状態を判読し、テン・キー部出力にシフト信号を付加するか否かを判断し、かつテン・キー部の操作が終了したとき、信号付加回路によりシフト信号を変更するか否かを判断するように構成した
(か)上記を特徴とするテン・キー・シフト符号自動挿入装置。
が開示されている。
このように、甲第2号証には、テン・キー部とフル・キー部とのシフト状態が同一であるか否かを判断し、同一のシフト状態でないとき、テン・キー部からの入力信号に自動的に別のシフト信号を付加するとともに、テン・キー部の操作が終了すると、信号付加回路によりシフト信号を変更し、フル・キー部のシフト状態を元に戻すことが開示されている。
また、甲第2号証の明細書の第7頁第12行目以降には、
「いま、第4図(イ)に示す如く、フル・キー部2がシフト・アウト状態で使用されているとき操作判別回路4はこれを判別して、入力切換回路7よりフル・キー部2から伝達される信号を出力するように上記入力切換回路7を制御する。そしてシフト状態判読回路5は上記フル・キー部2がシフト・アウト状態で操作されていることを判読している。
この状態においてテン・キー部8が操作されると、操作判読回路4は上記テン・キー部8が操作されたことを判別して入力切換回路7に対し制御信号を発生し、これを上記テン・キー部8から発生された信号を出力するように切換える。
このとき、シフト状態判読回路5は、それまでフル・キー部2がシフト・アウト状態で操作されていることをSI等自動付加回路6に伝達しているので、テン・キー部8から最初に信号が伝達されたとき、その冒頭にシフト・イン信号SIを自動的に付加し、以降連続してテン・キー部が操作された場合に発生される信号が数字等を示すものであることを表示する。
その後、再びフル・キー部2を操作することになるが、このとき該フル・キー部2においてシフト・アウト状態で操作する場合には、これを上記シフト状態判読回路5で判読して、上記SI等自動付加回路6からシフト・アウト信号SOを発生させる。それから後で入力切換回路7を切換えてフル・キー部2から発生される信号を上記入力切換回路7から出力することになる。」ことが開示されている。

(iv)本件発明1?10と甲第2号証の記載との対比
(iv)-1 本件発明1について
本件発明1の「主キーボード」は、甲第2号証の「フル・キー部」に対応する。
本件発明1の「キーパッド」は、甲第2号証の「テン・キー部」に対応する。
本件発明1の「Num Lockコード」は、甲第2号証の「シフト信号」に対応する。
以上の点から、甲第2号証に開示されている考案は、装置で発明であるものの、当該装置の内部で行われている処理の内容は本件発明と極めて共通する。すなわち、甲第2号証の明細書の第7頁第12行目から同第8頁第19行目には、用語に多少の差はあるものの、実質的に本件発明と同一の処理方法が記載されている。
さらに、上記に加え、以下の事項が従来周知の技術にすぎない。
すなわち、本件特許の請求項1に記載のステップ(b)(例;その現在の状態を記憶させるために、前記主キーボード及び前記キーパッドの状態フラグを読取り入力するために前記キーパッドのプログラムを使用すること)は、すでに公知のデスクトップコンピュータに標準のキーボードの仕様として広く知られるに至っている。
さらに、本件特許の請求項1に記載のステップ(c)は、その出願日より前に他者によって利用された先行技術として、本件特許に係る明細書の段落【0004】に開示されている。
すなわち、本件特許の明細書には、「即ち、ノートパソコンのキーボードの状態を強制的にオフ即ち非数字入力モードとし、キーパッドの状態をオンとする時、使用者がキーパッドの任意のキーを押すと、コンピュータに対して一つのNum Lockコードを送り、ノートパソコンの状態をオンとし、続いてキーコードをコンピュータに送り、最後に再度コンピュータにNum Lockコードを送り、ノートパソコンをもとのオフ状態に還元し、即ちノートパソコンの状態をキーパッド上の任意のキーを押すことで暫くオンに変え、そうでない平時にはオフの状態とし、キーパッドの状態がオフの時、ノートパソコンの状態もまたオフとされ、ゆえに両者はこの状況の下で、同じキーコードを使用しコンピュータに直接送ることができ、他のコードをさらに伝送する必要がない。」と記載されている。
したがって、本件特許の請求項1に記載のステップ(c)は、本件特許の出願前に既に公知の技術である。
すなわち、本件発明1において、ステップ(a)、ステップ(b)及びステップ(c)は、単に周知技術の寄せ集めにすぎない。
以上の通りであるから、本件発明は、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された発明、ならびに甲第2号証に示す出願前に頒布された刊行物の記載に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、当業者)が容易に発明をできたものであると論理づけられる。

(iv)-2 本件発明2について
主キーボードとして、一般に周知のコンピュータ用キーボード或いはノートパソコン用キーボードとすることは、周知技術の組み合わせに過ぎず、当業者であれば容易に想到しうるものである。

(iv)-3 本件発明3について
キーパッドとして、数字キーボードとすることは、周知技術の組み合わせに過ぎず、当業者であれば容易に想到しうるものである。

(iv)-4 本件発明4及び本件発明5について
本件発明4又は本件発明5では、初期状態を単に設定したに過ぎず、当業者であれば容易に想到可能な設計事項に過ぎない。

(iv)-5 本件発明6?本件発明9について
本件発明6?本件発明9は、本件発明1を処理手順ごとに細かく記載した本件発明1の下位概念にすぎない。したがって、上記本件発明1において説明したように、本件発明6?本件発明9についても、当業者であれば甲第1号証及び甲第2号証に基づいて容易に想到しうるものに過ぎない。

(iv)-6 本件発明10について
本件発明10は、キーボード命令入力モードの切換ソフトがキーパッド(2)又は主キーボード(1)に搭載されることが記載されている。この点は、設計的な事項に過ぎず、当業者であれば甲第1号証及び甲第2号証に基づいて容易に想到しうるものに過ぎない。

(3)特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない理由
(i) 無効審判請求の根拠
本件発明1?10は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開された甲第3号証の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(ii)先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明
請求人からは、甲第3号証として、平成11年8月27日に出願された平成11年特許願第241548号を優先権主張の基礎とした、特願2000-117213号の出願公開公報(特開2001-142612号公報)が提出されている。

(iii)本件発明1?10と甲第3号証の記載との対比
甲第3号証の、特に段落「0062」から段落「0084」までを考慮すると、段落「0069」に記述されている第3の実施例において、この公報は、以下の特徴を備える方法に焦点を当てていることが明らかである。
すなわち、甲第3号証には、「コンピュータ62のNumlock状態とは独立してテンキーボード61内で独自に遷移するNumlock状態が設けられている。そして、コンピュータ62におけるNumlock状態とテンキーボード61におけるNumlock状態とを常に監視して2つのNumlock状態の一致不一致を検出し、Numlock状態が不一致の場合は、テンキーボード61はユーザの所望の入力モードにないことを意味するので、特定のキーの押下時には押下された特定のキーのキーコードの送出の前後でコンピュータ62の入力モードをモード遷移させる。これに対し、Numlock状態が一致している場合は、テンキーボード61はユーザの所望の入力モードにあることを意味するので、特定のキーの押下時であってもコンピュータの入力モードを切り替えずにそのままキーコードを送出する。」ことが記載されている。
ここで、甲第3号証の図11における第3の実施例のフローチャートには、第3の実施例が以下のステップで構成されることが開示されている。
(601):「本実施例のテンキーボード61内の制御IC64は、ステップ601において、テンキーボード61及びコンピュータ62の各Numlock状態を監視し、テンキーボード61のNumlock状態とコンピュータ62のNumlock状態との不一致を検出する。すなわち、テンキーボード61内の制御IC64で実現されるモード検出手段70が、コンピュータ62からLED点灯コマンド又はLED消灯コマンドのいずれのコマンドが送出されてくるかを監視する。LED点灯コマンドが送出されてきた場合にはコンピュータ62のNumlock状態はONモード(テンキー入力モード)であり、LED消灯コマンドが送出されてきた場合にはコンピュータ62のNumlock状態はOFFモード(通常入力モード)であることがわかる。
このように各コマンドからテンキーボード61はコンピュータ62のNumlock状態を知ることができるので、テンキーボード61自体のNumlock状態と照らし合わせてテンキーボード61とコンピュータ62との入力モードの一致不一致を判定する。不一致の場合はステップ602へ進み、一致の場合はステップ609へ進む。」
(602):「キーマトリクス65を用いてテンキーボード61上のキーの押下の有無が検出され、押下があった場合はステップ603へ進み、押下がなかった場合はステップ601へ戻る。」
(603):「押下されたキーが異なる2つの入力モードを択一的に有する特定のキーであるか否かが判定される。特定のキーである場合はステップ604へ進み、それ以外のキーである場合はステップ610へ進む。」
(604):「テンキーボード61内の制御IC64で実現される第1のキーコード送出手段72がコンピュータの入力モードの切替えを指示する切替えキーコードを送出する。本実施例では、切替えキーコードとしてダミーのNumlockキーコードがコンピュータ62に送出される。」
(605):「コンピュータ62はダミーのNumlockキーコードを受信し、Numlock状態がモード遷移する。すなわち、コンピュータ62のNumlock状態がONモード(テンキー入力モード)であった場合はOFFモード(通常入力モード)に、コンピュータ62のNumlock状態がOFFモードであった場合はONモードにモード遷移する。」
(606):「テンキーボード61内の制御IC64で実現される第2のキーコード送出手段73は、押下された特定のキーのキーコードをコンピュータ62へ送出する。」
(607):「テンキーボード61内の制御IC64で実現される第3のキーコード送出手段74は、コンピュータの入力モードの切替えを指示する切替えキーコードを再び送出する。本実施例では、ダミーのNumlockキーコードがコンピュータ62に再び送出される。」
(608):「コンピュータ62はダミーのNumlockキーコードを再び受信し、Numlock状態がモード遷移する。すなわち、コンピュータ62のNumlock状態がOFFモードであった場合はONモードに、コンピュータ62のNumlock状態がONモードであった場合はOFFモードにモード遷移するので、特定のキーの押下直前のNumlock状態に戻ることになる。」
(609):「キーマトリクス65を用いてテンキーボード61上のキーの押下の有無が検出され、押下があった場合はステップ610へ進み、押下がなかった場合はステップ601へ戻る。」
(610):「押下されたキーのキーコードをコンピュータ62へ送出する。このステップ610において送出されるキーコードは、前述のステップ603で特定のキーではないと判定されたキーのキーコードも含む。そしてステップ601へ戻る。」
上記の構成を要約すると、甲第3号証には、段落「0083」にあるような特徴を有する第3の実施例の中の方法、すなわち「この実施例では、テンキーボード61上のNumlockキーが押下されたとき、このような事例の先行技術において送出されるNumlockキーコードはコンピュータ62へ送られず、テンキーボード61のモード遷移はコンピュータ62のモード遷移とは無関係に引き起こされる」ことが記載されている。
このように甲第3号証と本件特許とを比較し、本件特許に係るキーパッドのプログラムの全ての制御処理は、甲第3号証の第3実施例及び図11の中で既に開示されていることは明らかである。
ここでは、本件特許に係る発明の特徴(a)、(b)及び(c)に関する、キーパッドのプログラムの制御処理であるステップは、甲第3号証の第3実施例及び図11の中で開示されているステップ(601)?(610)と同一であることが明らかである。
したがって、本件発明1の全ての要素は、甲第3号証の第3実施例及び図11の中で既に開示されていることは明らかである。

3.本件発明
本件発明1?10は、平成17年10月11日に訂正された特許請求の範囲の請求項1?請求項10に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、
(a)主キーボード(1)或いはキーパッド(2)のどちらにも一定の状態を維持することを要求しない
(b)主キーボード(1)或いはキーパッド(2)の状態がどのようであっても、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)とキーパッド(2)の現在の状態を記憶させる
(c)キーパッド(2)の任意のキーが押される時、キーパッド(2)ソフトがキーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断し、
もし同じであれば、直接キーボードコードを送り、
もし同じでなければ、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態をキーパッド(2)の状態と同じにし、キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、続いてキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後再度数理ラッチコード即ちNum Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態を還元し、キーパッド(2)は元来の状態に維持させ、
これにより主キーボード(1)或いはキーパッド(2)の状態がどのようであっても、両者を完全に独立させて両者が相互に影響を与えない状況の下で数字と英文字の入力をより便利となす、
以上を包括することを特徴とする、キーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項2】 前記主キーボード(1)が一般に周知のコンピュータ用キーボード或いはノートパソコン用キーボードとされることを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項3】 前記キーパッド(2)が数字キーボードとされることを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項4】 前記キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、コンピュータ起動前にキーパッド(2)がすでにコンピュータ(3)に連接され、コンピュータ起動後のキーパッド(2)の開始状態がオンとされ、主キーボード(1)の開始状態もオンとされることを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項5】 前記キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、コンピュータ起動前にキーパッド(2)がコンピュータ(3)に連接されておらず、コンピュータ起動後にはじめてキーパッド(2)に連接され、この時にキーパッド(2)の開始状態がオンとされ、主キーボード(1)の開始状態がオンとされることを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項6】 前記キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、主キーボード(1)の入力モード状態がオフ即ち非数字入力モードとされ、キーパッド(2)の入力モード状態がオフ即ち非数字入力モードとされる時、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオフ即ち非数字入力モードであり、キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、一つのキーボードコードを送出し、キーパッド(2)がオフ即ち非数字入力モードに維持され、また更にキーパッド(2)のNum Lockキーが押されると、キーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードとなり、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオフ即ち非数字入力モードでありキーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードに変わり、これによりキーパッド(2)のキーボードコードを受信し、さらにキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後さらにNum Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態を還元しオフ即ち非数字入力モードとし、キーパッド(2)の状態をオン即ち数字入力モードに維持し、さらにキーパッド(2)のNum Lockキーが押されると、再度キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードに進入することを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項7】 前記キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、主キーボード(1)の入力モード状態がオフ即ち非数字入力モードとされ、キーパッド(2)の入力モード状態がオン即ち数字入力モードとされる時、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオフ即ち非数字入力モードであり、キーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードに変わり、キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、さらにキーボードコードがコンピュータ(3)に送られ、その後、さらにNum Lockコードがコンピュータ(3)に送られ、主キーボード(1)の状態がオフ即ち非数字入力モードに還元され、キーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードに維持され、さらにキーパッド(2)のNum Lockキーが押されると再度キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードに進入し、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオフ即ち非数字入力モードでありキーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、一つのキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードに維持され、さらにキーパッド(2)のNum Lockキーが押されるとキーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードに進入することを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項8】 前記キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、主キーボード(1)の入力モード状態がオン即ち数字入力モードとされ、キーパッド(2)の入力モード状態がオフ即ち非数字入力モードとされる時、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードであり、キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態がオフ即ち非数字入力モードに変わり、キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、さらにキーボードコードがコンピュータ(3)に送られ、その後、さらにNum Lockコードがコンピュータ(3)に送られ、主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードに還元され、キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードに維持され、さらにキーパッド(2)のNum Lockキーが押されると再度キーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードに進入し、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードでありキーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、一つのキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、キーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードに維持され、さらにキーパッド(2)のNum Lockキーが押されるとキーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードに進入することを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項9】 前記キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、主キーボード(1)の入力モード状態がオン即ち数字入力モードとされ、キーパッド(2)の入力モード状態がオン即ち数字入力モードとされる時、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードであり、キーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、一つのキーボードコードがコンピュータ(3)に送られ、続いてキーパッド(2)のNum Lockキーが押されると、キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードに進入し、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードでありキーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードであることを記憶させ、キーパッド(2)の任意のキーが押されると、Num Lockコードがコンピュータ(3)に送られて主キーボード(1)の状態がオフ即ち非数字入力モードに変わり、キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、
さらにキーボードコードがコンピュータ(3)に送られ、その後、さらにNum Lockコードがコンピュータ(3)に送られ、主キーボード(1)の状態がオン即ち数字入力モードに還元され、キーパッド(2)の状態がオフ即ち非数字入力モードに維持され、さらにキーパッド(2)のNum Lockキーが押されると、再度キーパッド(2)の状態がオン即ち数字入力モードに進入すること
を特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。

【請求項10】 前記キーボード命令入力モードの切り換え処理方法において、キーボード命令入力モードの切り換え処理ソフトがキーパッド(2)に搭載されるか、或いは主キーボード(1)に搭載されて、主キーボード(1)が一般に周知のキーパッドと組合せ使用可能とされることを特徴とする、請求項1に記載のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法。」

4.当審の判断
4-1.特許法第29条第1項各号の規定により特許を受けることができない理由について
(1)先行技術発明及びその記載
(1)-1 甲第1号証について
サンワサプライ株式会社発行:サンワサプライ総合カタログ『'99 COMPUTER SUPPLY CATALOG』(甲第1号証)N4頁、N5頁には以下の記載がある。
型番「NT-USB9・USB9SV・USB9VA・NT-DOSV9・DOSV95V」及び型番「NT-USB8」などの商品詳細の説明のうち、特長の欄の第3項目或いは第2項目に、「●NumLock非連動対応で、快適な入力環境を実現! テンキーから数字などを入力する際、NumLockをONにしても本体の一部がテンキーモードになることなく、アルファベットを入力することができます。」

(1)-2 甲第2号証について
実願昭54-131013号(実開昭56-49936号)のマイクロフィルム(甲第2号証)には以下の記載がある。
「上記フル・キー部を操作したのか上記テン・キー部を操作したのかを判別する操作判別回路と、上記フル・キー部が操作状態にあるときそのシフト状態を判読するシフト状態判読部と、上記テン・キー部が操作されるとき、その付加すべきシフト信号を自動的に付加するとともに、テン・キー入力終了時にその前までテン・キー部のシフトと別のシフトでフル・キー部が動作していた場合該別のシフト信号を付加する信号付加回路と、上記テン・キー出力信号及び上記フル・キー出力信号のいずれか一方を選択出力する切換回路手段を具備するとともに、上記テン・キー部が操作されたとき上記シフト状態判読部により上記フル・キー部のシフト状態を判読し上記テン・キー部出力にシフト信号を付加するか否かを判断しかつ上記テン・キー部の操作が終了したとき上記信号付加回路によりシフト信号を変更するか否かを判断するように構成したことを特徴とするテン・キー・シフト符号自動挿入装置。」(第1頁第7行乃至第2頁第8行)
「いま、第4図(イ)に示す如く、フル・キー部2がシフト・アウト状態で使用されているとき操作判別回路4はこれを判別して、入力切換回路7よりフル・キー部2から伝達される信号を出力するように上記入力切換回路7を制御する。そしてシフト状態判読回路5は上記フル・キー部2がシフト・アウト状態で操作されていることを判読している。
この状態においてテン・キー部8が操作されると、操作判別回路4は上記テン・キー部8が操作されたことを判別して入力切換回路7に対し制御信号を発生し、これを上記テン・キー部8から発生された信号を出力するように切換える。
このとき、シフト状態判読回路5は、それまでフル・キー部2がシフト・アウト状態で操作されていることをSI等自動付加回路6に伝達しているので、テン・キー部8から最初に信号が伝達されたとき、その冒頭にシフト・イン信号SIを自動的に付加し、以降連続してテン・キー部が操作された場合に発生される信号が数字等を示すものであることを表示する。
その後、再びフル・キー部2を操作することになるが、このとき該フル・キー部2においてシフト・アウト状態で操作する場合には、これを上記シフト状態判読回路5で判読して、上記SI等自動付加回路6からシフト・アウト信号SOを発生させる。それから後で入力切換回路7を切換えてフル・キー部2から発生される信号を上記入力切換回路7から出力することになる。」(第7頁第12行乃至第8頁第19行)

(1)-3 乙第1号証について
被請求人が提出した、サンワサプライ株式会社「サポート・対応表」の対象商品「NT-USB9シリーズ」に関する「A:回答」欄(乙第1号証)には以下の記載がある。
「このテンキーではテンキー入力時の文字種を選択することはできません。
このテンキーはノートパソコン側のキーボードにあるNumlock機能とテンキーのNumlock機能を連動させないために、テンキー側でメインキー側の数字キーをエミュレートしているためです。」

(2)対比・判断
(2)-1 甲第1号証について
本件発明1と甲第1号証とを対比すると、甲第1号証の「本体」、「テンキー」は、本件発明1の「主キーボード(1)」、「キーパッド(2)」にそれぞれ相当する。

そして、本件発明1と甲第1号証とを対比すると、以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明1が、「(b)主キーボード(1)或いはキーパッド(2)の状態がどのようであっても、キーパッド(2)ソフトが状態フラグに主キーボード(1)とキーパッド(2)の現在の状態を記憶させる
(c)キーパッド(2)の任意のキーが押される時、キーパッド(2)ソフトがキーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断し、
もし同じであれば、直接キーボードコードを送り、
もし同じでなければ、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態をキーパッド(2)の状態と同じにし、キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、続いてキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後再度数理ラッチコード即ちNum Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態を還元し、キーパッド(2)は元来の状態に維持させ、」る構成を有しているのに対して、甲第1号証は、この構成を有していない点。

[相違点]について
この点について審判請求人は、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に把握可能な程度であると主張しているが、甲第1号証には、これらの構成に関して何ら記載されていない。

甲第1号証の処理内容は、乙第1号証によれば、「テンキー側でメインキー側の数字キーをエミュレート」することであって、甲第1号証の処理内容は本件発明1の上記構成を示唆するものではない。

(2)-2 甲第2号証について
甲第2号証には、「フル・キー部2(本件発明1の「主キーボード(1)」に対応)がシフト・アウト状態で操作されていることを判読し、この状態においてテン・キー部8(本件発明1の「キーパッド(2)」に対応)が操作されると、テン・キー部8から最初に信号が伝達されたとき、その冒頭にシフト・イン信号SIを自動的に付加し、以降連続してテン・キー部が操作された場合に発生される信号が数字等を示すものであることを表示し、その後、再びフル・キー部2を操作する場合にシフト・アウト信号SOを発生させ、フル・キー部2から発生される信号を出力する」ことが記載されている。

そして、本件発明1と甲第2号証とを対比すると、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1が、ステップ(b)において「キーパッド(2)に一定の状態を維持することを要求しない」構成及び「キーパッド(2)ソフトが状態フラグにキーパッド(2)の現在の状態を記憶させる」構成を有しているのに対して、甲第2号証は、テン・キー部8からの信号はシフト・イン状態の信号に維持されており、それに伴い、テン・キー部8の現在の状態を記憶させる必要がない点。

[相違点2]
本件発明1が、ステップ(c)において「キーパッド(2)の任意のキーが押される時、キーパッド(2)ソフトがキーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断」するのに対して、甲第2号証は、「テン・キー部8が操作される」時、「フル・キー部2がシフト・アウト状態で操作されていることを判読し」ている点。

[相違点3]
本件発明1が「キーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態」と「同じでなければ、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送」るのに対して、甲第2号証は、「フル・キー部2がシフト・アウト状態で操作されていることを判読した際に、シフト・イン信号SI、シフト・アウト信号SOを出力する点。

[相違点4]
本件発明1では、ステップ(c)において「キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、続いてキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後再度数理ラッチコード即ちNum Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態を還元」するのに対して、に甲第2号証は「再びフル・キー部2を操作する場合に、SI等自動付加回路6からシフト・アウト信号SOを発生させる」点。

[相違点1]について
キーパッドの状態フラグを記憶させる構成自体が甲第2号証には記載が無く、このことが甲第2号証に記載された事項から自明であるということもできない。

[相違点2]について
甲第2号証は、テン・キー部8からの信号はシフト・イン状態の信号に維持されており、「フル・キー部2がシフト・アウト状態でフル・キー部2の状態とテン・キー部8の状態が同じであると判断」することや、「フル・キー部2がシフト・イン状態でフル・キー部2の状態とテン・キー部8の状態が同じでないと判断」することがないから、「キーパッド(2)ソフトがキーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断する」構成が、甲第2号証には記載が無く、このことが甲第2号証に記載された事項から自明であるということもできない。

[相違点3]について
キーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じでなければ、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送ることは甲第2号証には記載が無く、このことが甲第2号証に記載された事項から自明であるということもできない。

[相違点4]について
本件発明1のように「キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、続いてキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後」、「主キーボード(1)の状態を還元」することは甲第2号証には記載が無く、このことが甲第2号証に記載された事項から自明であるということもできない。

したがって、本件発明1は、甲第1号証からは、その特許に係る出願前に日本国内に於いて公然知られた発明、その特許に係る出願前に日本国内に於いて公然実施された発明、であるということはできず、また、甲第2号証の記載から、その特許に係る出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるということはできない。

そして、本件発明2?本件発明10は何れも本件発明1を引用して本件発明1を更に限定したものであるから、本件発明2?本件発明10に関しても甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された事項、あるいは甲第2号証の記載、は本件発明1について指摘した相違点に係る構成を有しておらず、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された発明であるということはできず、また、甲第2号証の記載から、その特許に係る出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるということはできない。
よって、本件発明1?本件発明10は、特許法第29条第1項各号の規定により特許を受けることができないものに該当しない。

4-2.特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない理由について
(1)先行技術発明及びその記載
甲第1号証、甲第2号証及び乙第1号証の記載は、前記「4-1.(1)」で述べたとおりである。

(2)対比・判断

(2)-1 本件発明1と甲第1号証との対比・判断
本件発明1と甲第1号証の相違点は、前記「4-1.(2)-1」で述べたとおりである。

[相違点]について
本件発明1のステップ(b)の、状態フラグにキーパッド(2)の状態を記憶させる構成、ステップ(c)の、キーパッド(2)ソフトがキーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断する構成、およびキーパッド(2)のキーボードコードを受信し、続いてキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後、主キーボード(1)の状態を還元する構成が、甲第2号証には何ら記載がなく、また、公知であるとも認められないから、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された事項及び甲第2号証に記載された事項から当業者が容易になし得たものであるということはできない。

(2)-2 本件発明1と甲第2号証との対比・判断
本件発明1と甲第2号証の相違点は、前記「4-1.(2)-2」で述べたとおりである。

[相違点1]について
相違点1について審判請求人が、本件発明1に記載のステップ(b)(その現在の状態を記憶させるために、前記主キーボード及び前記キーパッドの状態フラグを読取り入力するために前記キーパッドのプログラムを使用すること)は、すでに公知のデスクトップコンピュータに標準のキーボードの仕様として広く知られるに至っていると主張するが、キーパッドの状態フラグを読取り入力させる構成自体が、甲第2号証には何ら記載がなく、上述の通り甲第1号証にも何ら記載がなく、また、公知であるとも認められないから、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された事項及び甲第2号証に記載された事項から当業者が容易になし得たものであるということもできない。

[相違点3]について
キーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じでなければ、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送ることは、甲第2号証には何ら記載がなく、上述の通り甲第1号証にも何ら記載がなく、また、公知であるとも認められないから、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された事項及び甲第2号証に記載された事項から当業者が容易になし得たものであるということもできない。

[相違点2、4]について
甲第2号証は、テン・キー部8からの信号はシフト・イン状態の信号に維持されており、「フル・キー部2がシフト・アウト状態でフル・キー部2の状態とテン・キー部8の状態が同じであると判断」することや、「フル・キー部2がシフト・イン状態でフル・キー部2の状態とテン・キー部8の状態が同じでないと判断」することがないから、「キーパッド(2)ソフトがキーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断する」構成が、甲第2号証には何ら記載がなく、上述の通り甲第1号証にも何ら記載がなく、また、公知であるとも認められないから、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された事項及び甲第2号証に記載された事項から当業者が容易になし得たものであるということもできない。

また、審判請求人が、本件発明1のステップ(c)が本件特許に係る明細書の段落【0004】の記載を根拠として、公知の技術であると主張するが、当該本件特許に係る明細書の段落【0004】は、ノートパソコンのキーボードの状態を強制的にオフ即ち非数字入力モードとし、ノートパソコンの状態をキーパッド上の任意のキーを押すことで暫くオンに変え、そうでない平時にはオフの状態とするものであって、本件発明1のように「キーパッド(2)ソフトがキーパッド(2)内部に存在するフラグの主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断する」構成、「キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、続いてキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後、主キーボード(1)の状態を還元する」ことは記載されておらず、また、公知であるとも認められないから、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された事項及び甲第2号証に記載された事項から当業者が容易になし得たものであるということもできない。

したがって、本件発明1は、その特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野に於ける通常の知識を有する者が甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

そして、この構成によって本件発明1は「本発明のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法は、主キーボードにキーパッドが連接使用される場合に、主キーボード或いはキーパッドの状態がどのようであっても、両者が完全に独立して両者が相互に影響を与えない状況の下で数字と英文字の入力をより便利となす効果を提供する。」との特有の効果を奏するものである。

そして、本件発明2?本件発明10は何れも本件発明1を引用して本件発明1を更に限定したものであるから、本件発明2?本件発明10に関しても甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された発明及び甲第2号証に記載された発明は本件発明1について指摘した相違点に係る構成を有しておらず、甲第1号証に示す出願前に公然知られた、若しくは公然実施された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
よって、本件発明1?本件発明10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。

4-3.特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない理由について
(1)先願及びその記載
本件特許出願後の平成12年4月13日に出願された特願2000-117213号(特開2001-142612号公報、甲第3号証)は、本件特許出願前の平成11年8月27日に出願された特願平11-241548号に記載された発明に基づいて優先権を主張している。そこで、特願2000-117213号(甲第3号証)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明のうち、優先権の主張の基礎とされた先の出願(特願平11-241548号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明(以下、「先願発明」という。)について検討する。

なお、審判請求人は審判請求書において先願の内容に関して、上記2.(3)(iii)のとおり、
「上記の構成を要約すると、甲第3号証には、段落「0083」にあるような特徴を有する第3の実施例の中の方法、すなわち「この実施例では、テンキーボード61上のNumlockキーが押下されたとき、このような事例の先行技術において送出されるNumlockキーコードはコンピュータ62へ送られず、テンキーボード61のモード遷移はコンピュータ62のモード遷移とは無関係に引き起こされる」ことが記載されている。
このように甲第3号証と本件特許とを比較し、本件特許に係るキーパッドのプログラムの全ての制御処理は、甲第3号証の第3実施例及び図11の中で既に開示されていることは明らかである。
ここでは、本件特許に係る発明の特徴(a)、(b)及び(c)に関する、キーパッドのプログラムの制御処理であるステップは、甲第3号証の第3実施例及び図11の中で開示されているステップ(601)?(610)と同一であることが明らかである。
したがって、本件発明1の全ての要素は、甲第3号証の第3実施例及び図11の中で既に開示されていることは明らかである。」
と、甲第3号証の第3実施例及び図11の記載を引用して主張している。
しかしながら、審判請求人の主張する甲第3号証(本件出願後に出願され、公開された)の第3実施例及び図11は、先願明細書(乙第2号証)に記載されていない内容であって、当該甲第3号証の第3実施例及び図11の記載については先願発明ということはできない。

先願明細書には以下の記載がある。
【請求項1】 数字入力モードと文字入力モードとを切り替える主入力モード切替えキーを有する主キーボードを備えるコンピュータに接続され、複数のキーを備える補助キーボードであって、
第1の入力モードと第2の入力モードとを有する補助キーボードにおいて、
入力モード切替えキーと、
該入力モード切替えキーが1回押下される毎に、前記コンピュータに前記押下を通知することなく、前記第1の入力モードと前記第2の入力モードとを切り替えるモード切替え手段と、
前記第1の入力モード又は前記第2の入力モードのいずれの入力モードにおいても、前記補助キーボードの前記キーの押下時にそのキーに対応する予め定められた第1のキーコードを送出するキーコード送出手段と、
前記主キーボードが前記数字入力モードに切り替えられたときに前記文字入力モードに修正するモード修正手段とを備えることを特徴とする補助キーボード。

【請求項8】 数字入力モードと文字入力モードとを切り替える主入力モード切替えキーを有する主キーボードを備えるコンピュータに接続されて使用され、第1の入力モードと第2の入力モードとを有し、複数のキーと入力モード切替えキーとを備える補助キーボードの制御方法であって、
前記入力モード切替えキーが1回押下される毎に、前記コンピュータに前記押下を通知することなく、前記第1の入力モードと前記第2の入力モードとを切り替えるモード切替えステップと、
前記第1の入力モード又は前記第2の入力モードのいずれの入力モードにおいても、前記補助キーボードの前記キーの押下時にそのキーに対応する予め定められた第1のキーコードを送出するキーコード送出ステップと、
前記主キーボードが前記数字入力モードに切り替えられたときに前記文字入力モードに修正する修正ステップとを備えることを特徴とする補助キーボードの制御方法。

【0015】
また、図4に示されるように、ノート型パソコン2は、PC全体を制御するホスト5及びメインキーボード4から成り、テンキーボード1はメインキーボード4を介してホスト5に接続される。テンキーボード1は、入力モード切替えキー51と、入力モード切替えキー51が1回押下される毎に、ホスト5に押下を通知することなく、入力モードとを切り替えるモード切替え手段52と、いずれの入力モードにおいても、テンキーボード1内のキーの押下時にそのキーに対応する予め定められたキーコードを送出するキーコード送出手段53と、メインキーボード4が数字入力モードに切り替えられたときに文字入力モードに修正するモード修正手段54とを備える。

【0017】
ここで、説明を簡単化するために、PCの電源投入直後にホスト5が認識するデフォルトのNumlock状態の入力モードは、テンキーボード1及びメインキーボード4共にOFFモードであると仮定する。
本実施例では、まずノート型パソコン2の電源入力時に、初期化プロセスが実行される。この初期化プロセスによって、テンキーボード1が接続されたノート型パソコン2をユーザが実際に使用する前にメインキーボード4のNumlock状態をOFFモードに設定しておく。また後述するように、初期化プロセス完了後は、メインキーボード4のNumlock状態は常にOFFモードとなるようにする。
【0018】
図5は、本発明の第1の実施例による初期化プロセスのフローチャートを示す図である。この図では、理解を容易にするために、テンキーボード1及びメインキーボード4に関するNumlock状態が、各ステップの右側に記されている。
ノート型パソコンの電源が投入されると(ステップ101)、ホスト5は、ステップ102において、まずBIOS設定に従い、Numlock状態表示LEDの点灯あるいは消灯を指示するコマンドであるLED点灯コマンドをテンキーボード1及びメインキーボード4に送出する。LED点灯コマンドはNumlock状態表示LEDの点灯あるいは消灯を指示するコマンドであり、ユーザはLEDの点灯あるいは消灯により、Numlock状態がONモードであるかOFFモードであるかを識別することができる。このようなホスト5におけるLED点灯コマンドの生成は、通常Numlockキーのコード受信毎に実行される。
【0019】
ステップ103において、テンキーボード1及びメインキーボード4は、LED点灯コマンドを受信し、ホスト5に対してそれぞれACK応答を返信する。前述のように、LED点灯コマンドは、Numlock状態表示LEDの点灯あるいは消灯の指示の他に、キーボードのモード遷移にも用いられる。従って、メインキーボード4はLED点灯コマンドを受信したのでモード遷移し、Numlock状態はONモードになる(ステップ104)。しかし、本発明によるテンキーボード1では、LED点灯コマンドが無視され、Numlock状態がOFFモードに留まる(ステップ105)。
【0020】
次に、ステップ106において、メインキーボード4のNumlock状態をOFFモードにするために、テンキーボード1はダミーのNumlockキーコードをホスト5に更に送出する。すなわち、テンキーボード1は、テンキーボード1内のNumlockキーの押下なしでダミーのNumlockキーコードを送出することになる。一方、本発明によるテンキーボード1のNumlock状態は、OFFモードからONモードにモード遷移する。
【0021】
ホスト5はテンキーボード1からのダミーのNumlockキーコードを受信すると、ステップ107において、LED消灯コマンドをテンキーボード1及びメインキーボード4に送出する。
ステップ108において、テンキーボード1及びメインキーボード4は、LED消灯コマンドを受信し、ホスト5に対してそれぞれACK応答を返信する。このLED消灯コマンドにより、メインキーボード4はNumlock状態がOFFモードにモード遷移する(ステップ109)。しかし、本発明によるテンキーボード1では、LED消灯コマンドが無視され、Numlock状態がONモードに留まる(ステップ110)。
【0022】
以上説明した初期化プロセスによってテンキーボード1及びメインキーボード4の初期化が完了し、メインキーボード4のNumlock状態をOFFモードにすることができる。
なお、後述するように、初期化プロセス完了以降は、Numlock状態のモード遷移はテンキーボード1内のみに生じることになるので、以降のテンキーボード1のNumlock状態を、特に「内部仮想Numlock状態」と呼ぶことにする。
【0023】
続いて、本発明の第1の実施例によるテンキーボードにおける、Numlockキーを操作することによるモード遷移のプロセスについて説明する。
図6は、本発明の第1の実施例によるテンキーボードのモード遷移のフローチャートを示す図である。
ステップ201では、テンキーボード1内の制御ICは、テンキーボード1内のNumlockキーが押下されたか否かを判定する。Numlockキーが押下されたと判定されるとステップ202へ進む。
【0024】
ステップ202では、テンキーボード1内の制御ICは、ホスト5に対してNumlockキーコードを送出せず、テンキーボード1の内部仮想Numlock状態をモード遷移させる。すなわち、テンキーボード1については、内部仮想Numlock状態がONモードであった場合はOFFモードに、OFFモードであった場合はONモードにモード遷移する。一方、ホスト5はNumlockキーコードを受信しないので、メインキーボード4に対してLED点灯コマンドを送出することはない。従って、メインキーボード4については、モード遷移は生じず、Numlock状態はOFFモードのままである。
【0025】
ステップ203でテンキーボード1内のキーが押下されると、ステップ204に示すように、そのキーに対応するキーコードが出力される。このキーコード出力については後述する。
このように本実施例によれば、テンキーボード1内のNumlockキーが押下されても、テンキーボード1の制御ICは、Numlockキーコードをホストに送信せずテンキーボード1に関する内部疑似Numlock状態をモード遷移させるので メインキーボード4のNumlock状態を常にOFFモード、すなわち通常入力モードに維持することができる。従って、テンキーボード1内のNumlockキーの押下毎に、テンキーボード1に関してのみNumlock状態のモード(通常入力モードとテンキー入力モード)がモード遷移されることになる。
【0026】
次に、テンキーボード1内ではなく、メインキーボード4内のNumlockキーが押下された場合について説明する。
図7は、メインキーボード内のNumlockキーが押下された場合のプロセスのフローチャートを示す図である。この図では、理解を容易にするために、テンキーボード1及びメインキーボード4に関するNumlock状態が、各ステップの右側に記されている。
【0027】
ここで、メインキーボード4のNumlock状態がOFFモード、テンキーボード1の内部疑似Numlock状態がONモードであった場合にメインキーボード4のNumlockが押下されたと仮定する。
メインキーボード4内のNumlockキーが押下される(ステップ301)と、ステップ302において、Numlockキーコードがホスト5に送出される。
【0028】
ホスト5はメインキーボード4からのNumlockキーコードを受信すると、ステップ302に示すように、LED点灯コマンドをテンキーボード1及びメインキーボード4に送出する。
次にテンキーボード1及びメインキーボード4は、ステップ303に示すように、LED点灯コマンドを受信し、ホスト5に対してそれぞれACK応答を返信する。
【0029】
すると、メインキーボード4はNumlock状態がONモードにモード遷移する(ステップ304)。
一方、本発明によるテンキーボード1では、ホスト5から送出されてくるLED点灯コマンドは無視されるので、内部疑似Numlock状態はONモードに留まる(ステップ305)。
【0030】
上述のようなステップ301?305の動作は、メインキーボード4内のNumlockキーが押下されたときに必然的に生じてしまう現象であり、その結果生じるメインキーボード4のNumlock状態のONモードを改めてOFFモードに戻す必要がある。
既に説明したように、本発明によれば、初期化プロセス完了以降に、テンキーボード1内のNumlockキーが押下された場合、テンキーボード1内の制御ICはNumlockキーコードをホストに対して送信することはないのでテンキーボード1がLED点灯コマンドを受信するようなことはあり得ない。つまり、ステップ303で示されるような、テンキーボード1におけるLED点灯コマンドの受信は、メインキーボード4内のNumlockキーが押下された場合に限られる。
【0031】
そこで本実施例では、次に説明するように、テンキーボード1は、ホストから送出されてくるLED点灯コマンドを常時監視し、LED点灯コマンドを受信した場合はメインキーボード4内のNumlockキーが押下されたものと判断し、メインキーボード4のNumlock状態をOFFモードに戻す処理を実行する。
【0032】
図8は、本発明の第1の実施例による、メインキーボードのNumlock状態をOFFモードに戻す処理のフローチャートを示す図である。この図では、理解を容易にするために、テンキーボード1及びメインキーボード4に関するNumlock状態が、各ステップの右側に記されている。
このフローチャートの開始時点における各ボードのNumlock状態は、前述の図7のステップ305終了時点のモード、すなわちメインボード4はONモード、テンキーボード1はONモードであると仮定する。
【0033】
テンキーボード1は、ホストから送出されてくるLED点灯コマンドを常時監視しており、LED点灯コマンドを受信すると、ステップ401に示すように、ダミーのNumlockキーコードをホスト5に送出する。
ホスト5はテンキーボード1からのNumlockキーコードを受信すると、ステップ402に示すように、LED消灯コマンドをテンキーボード1及びメインキーボード4に送出する。

【0037】
次に、モード切替え完了後のキーのコード出力について説明する。
本実施例では、ホスト5のOS(Operating System)が、各キーボードのNumlock状態を監視し、各キーボードのNumlock状態と各キーボードから送出されてくるキーコードに基づいて、ホスト5側における動作を決定する。
【0038】
表1に各モードのNumlock状態と押下されるキーとの関係を示す。上述の通り、メインキーボード4のNumlock状態は常時OFFモードである。
【0039】
【表1】
【0040】
図6のステップ203及び204において、通常キーが押下されることでホスト5へ送出されるキーコード自体は、Numlock状態がONモードでもOFFモードでも常に同じである。例えば、メインキーボード4内のE列にある「$4」キーを押下した場合に出力されるキーコードは常に「”05”hex 」であり、テンキーボード1内の「4←」キーを押下した場合に出力されるキーコードは常に「”4B”hex 」である。
【0041】
本発明においては、表1に示すように、メインキーボード4のNumlock状態がOFFモード、テンキーボード1の内部疑似Numlock状態がONモードであるような場合には、テンキーボード1内の「4←」キーが押下されると、E列$4キーのコードである「”05”hex」がホスト5に送信され、ホスト5のOSの判断の下、ディスプレイ画面上に数字「4」が表示される。また、メインキーボード4内の「$4」キーが押下されるとキーコード「”05”hex」がホスト5に送信され、ホスト5のOSの判断の下、ディスプレイ画面上に数字「4」が表示される。
【0042】
また、メインキーボード4のNumlock状態がOFFモード、テンキーボード1の内部疑似Numlock状態がOFFモードであるような場合に、テンキーボード1内の「4←」キーが押下されると、本来のキーコード「”4B”hex 」がホスト5へ送信され、ホスト5のOSの判断の下、ディスプレイ画面上のカーソルが左方向へ1つ移動する。また、メインキーボード4内の「$4」キーが押下されるとキーコード「”05”hex 」がホスト5へ送信され、ホスト5のOSの判断の下、ディスプレイ画面上に数字「4」が表示される。
【0043】
テンキーボード1の入力モードは、テンキーボード1内のNumlock状態表示LEDの他に、ノート型パソコン2のディスプレイ画面上に表示させてもよい。
このように、本発明の第1の実施例によれば、テンキーボード1のNumlock状態のモードに関わらず、メインキーボード4のNumlock状態を常にOFFモードに維持することになるので、メインキーボード4に配置されている各キーに対応する機能を常に利用することができる。(なお、段落【0039】の表1の内容については摘記を省略した。)

【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、第1の発明によれば、テンキーボード内のNumlockキーを押下することによりテンキーボード内のみNumlock状態のモードを遷移させることができ、かつメインキーボードのNumlock状態はOFFモードに維持することができるので、テンキーボードをテンキー入力モードと通常入力モードとの間で容易に使い分けることができると同時に、メインキーボードについてはテンキーボードのモードの如何に関わらず常に通常入力モードで使うことができる。つまり、メインキーボードに配置されている各キーに対応する機能を常に利用することができるので、キー入力の操作性が向上される。
【0060】
また、第2の発明によれば、テンキーボードに予め定められている通常のキーコードとは異なる第2のキーコードをテンキーボード内部のみの処理で送出するモードを設けるので、ホスト及びメインキーボードに対して影響を与えることなく、テンキーボードの機能を拡張することができる。

これら先願明細書の記載は、甲第3号証にも同一の記載がある。

これらの記載によれば先願発明は以下のとおりである。
「数字入力モードと文字入力モードとを切り替える主入力モード切替えキーであるNumlockキーを有する主キーボードを備えるコンピュータに接続されて使用される補助キーボードであって、第1の入力モードと第2の入力モードとを有し、複数のキーと入力モード切替えキーであるNumlockキーとを備える補助キーボードの制御方法であって、
コンピュータの電源入力時の初期化プロセスが完了すると、主キーボードはNumlock状態がOFF、補助キーボードはONに設定され、
主キーボードは主キーボードのNumlockキーが押下されても、補助キーボードにより主キーボードはNumlockをOFFの状態に戻されて文字入力モードに修正されて主キーボードのNumlock状態は常にOFFの状態を維持され、
補助キーボードはNumlock状態のモード遷移はテンキーボード内のみに生じる内部疑似Numlock状態を有しており、主キーボードのNumlockキーの押下とは無関係に、自身のNumlockキーの押下に従い、コンピュータに当該押下を通知することなく第1の入力モード、第2の入力モードを切り替え、
前記第1の入力モード又は前記第2の入力モードのいずれの入力モードにおいても、前記補助キーボードの前記キーの押下時にそのキーに対応する予め定められた共通の第1のキーコードである数字コードを送出する補助キーボードの制御方法。」

(2)対比・判断
本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明の「補助キーボード」は、本件発明1の「キーパッド」に相当する。

そして、本件発明1は、「主キーボード(1)の状態がキーパッド(2)の状態と同じであるか否かを判断しもし同じでなければ、Num Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態をキーパッド(2)の状態と同じにし、キーパッド(2)のキーボードコードを受信し、続いてキーボードコードをコンピュータ(3)に送り、その後再度数理ラッチコード即ちNum Lockコードをコンピュータ(3)に送り、主キーボード(1)の状態を還元し、キーパッド(2)は元来の状態に維持させ」る構成を有しているのに対して、先願発明は、この構成を有していない。
この構成が先願発明から自明であるということもできない。

そして、この構成によって本件発明1は「本発明のキーボード命令入力モードの切り換え処理方法は、主キーボードにキーパッドが連接使用される場合に、主キーボード或いはキーパッドの状態がどのようであっても、両者が完全に独立して両者が相互に影響を与えない状況の下で数字と英文字の入力をより便利となす効果を提供する。」との特有の効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、特願2000-117213号(甲第3号証)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明のうち、当該出願の優先権の主張の基礎とされた先の出願(特願平11-241548号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一のものであるということはできない。

そして、本件発明2?本件発明10は何れも本件発明1を引用して本件発明1を更に限定したものであるから、本件発明2?本件発明10に関しても先願発明は本件発明1について指摘した相違点に係る構成を有しておらず、特願2000-117213号(甲第3号証)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明のうち、当該出願の優先権の主張の基礎とされた先の出願(特願平11-241548号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一のものであるということはできない。
よって、本件発明1?本件発明10は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものに該当しない。

5.むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張する理由によって、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1?10に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-18 
結審通知日 2008-01-25 
審決日 2008-02-20 
出願番号 特願2000-58187(P2000-58187)
審決分類 P 1 113・ 161- Y (G06F)
P 1 113・ 121- Y (G06F)
P 1 113・ 113- Y (G06F)
P 1 113・ 112- Y (G06F)
P 1 113・ 111- Y (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 友章  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 重田 尚郎
大野 克人
登録日 2001-10-19 
登録番号 特許第3242094号(P3242094)
発明の名称 キーボード命令入力モードの切り換え処理方法  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  
代理人 服部 雅紀  

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