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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B60S
管理番号 1176144
審判番号 無効2006-80127  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-07-10 
確定日 2008-03-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2834385号発明「自動洗車方法及びその装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2834385号の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1. 手続の経緯
(1)本件特許第2834385号の請求項1?3に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての出願は、平成5年5月10日に出願され、平成10年10月2日に、その発明について特許権の設定登録がされたものである。

(2)これに対して、請求人は、平成18年7月10日に本件審判請求書を、同年11月15日に弁駁書(1回目)を提出し、本件特許発明は、本願出願前に頒布された刊行物である甲第1?10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件特許は無効である旨主張し、証拠方法として甲第1?10号証を提出した。

(3)これに対して、被請求人はそれぞれ平成18年9月29日、平成19年2月2日の2回にわたって訂正請求を行った。請求人、被請求人は、平成19年6月29日付けでそれぞれ口頭審理陳述要領書を提出し、同日、特許庁審判廷(大阪ガーデンパレス401会議室)において口頭審理が行われた。当審は、その口頭審理において、本件特許発明は、上記各甲号証に加えて当審が職権探知により発見した刊行物に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである旨を理由とする無効理由通知を告知し、調書が作成された。

(4)これに対し、被請求人は、平成19年7月17日に訂正請求書(3回目)を提出して訂正を求めた。この訂正内容に関して、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されていないか、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでない可能性があるとして、特許法第36条の規定を満たしていないとの当審の疑念に対する釈明を求める同年8月10日付けの審尋に対して、被請求人は、同年8月29日に回答書を提出し、当該訂正に係る訂正明細書の記載が特許法第36条の規定を満たす証拠として、公然実施発明に係る刊行物として「扇形ノズル製品カタログ」の写し(後記する引用例11)を提出している。

(5)これに対して、請求人は、同年10月9日付け弁駁書(2回目)において、上記訂正によっても本件特許発明は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから無効である旨主張し、証拠方法として甲第1?10号証に加え甲第11号証を提出している。また、請求人は、上記訂正に係る訂正明細書の記載は、願書に添付した明細書又は図面に記載のない事項を含むものであるから、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に違反し認められない旨、及び発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に十分記載されていないか、特許請求の範囲の記載が発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでないから、特許法第36条に規定する要件を満たしていない旨主張するとともに、上記被請求人が写しを提出した「扇形ノズル製品カタログ」の発行年月日、その公然実施の事実等について争う旨主張している。

(6)当審は、同年10月26日付け無効理由通知書により、本件特許発明は引用例1?11(当審が職権探知により発見した刊行物である後記する引用例2,7、及び被請求人が公然実施発明に係る証拠として提出した後記する引用例11を含む)から当業者が容易に想到し得たものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり無効とすべき旨の無効理由を通知した。これに対して、被請求人は同年11月29日に意見書を提出し、本件特許発明は引用例1?11から当業者が容易に想到し得たものではなく、登録されるに十分な進歩性を有する旨主張している。また、上記意見書において、被請求人は、上記回答書とともに公然実施発明に係る証拠として提出した「扇形ノズル製品カタログ」の写しは、本件特許発明の出願前に発行された真正のカタログの写しである旨主張している。

2.請求人の主張の概要
請求人は概要以下のように主張し、本件特許を無効とするとの審決を求めている。

2-1.特許法第29条第2項の適用について
本願請求項1?3に係る発明は、甲第1?11号証記載の各発明及び当審が無効理由通知において引用した刊行物記載の発明並びに従前周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、無効とされるべきである。

2-2.特許法第36条の適用について
(1)請求項2における「前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)及びブロア噴出手段(10)は門型フレーム(3)の最初の往動時に車検出手段(4)による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段(4)より往動方向で後行側に位置しており」の記載において、「ブロア噴出手段(10)」が「最初の往動時に…洗車動作を開始するべく」の点は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、上記記載は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていないか、または第36条第4項に規定する要件を満たしていない
(2)請求項1における「前記昇降ドラム(6)を一端降下させ」の記載は、意味が不明瞭であり、第36条第4項及び/又は第5項の要件を満たしていない。
(3)請求項1における「前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」の記載は、技術的に不明瞭であり、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでない。また、当該「洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」ための具体的構成が、明細書又は図面に記載されていないから、上記記載は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていないか、または第36条第4項に規定する要件を満たしていない
(4)請求項2、3における「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、…ノズル姿勢変更機構を設け」の記載は、ノズル姿勢変更機構が移動台と上部ノズルとの間に設けられていると解する外ないが、明細書又は図面にはそのような構成は記載されておらず、技術的に不明瞭な記載であるから、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない。

2-3.公然実施発明に関する証拠について
被請求人が提出した「扇形ノズル製品カタログ」(株式会社いけうち発行)には、「920225-03」と記載されているが、これが発行年月日を表すものであるかどうか不明であり、この製品カタログが本件特許出願前に公知であったかどうかも不明である。
また、該製品カタログに係る「高圧均等扇形ノズル」を被請求人が本件特許出願前に発注したものであるかどうかも不明であるから、当該「高圧均等扇形ノズル」が本件特許出願前に公然実施されていたものであるとの被請求人の主張は信用できない。

3.被請求人の主張の概要
被請求人は概要以下のように主張し、本件特許には無効理由がない旨主張している。

3-1.特許法第29条第2項の適用について
(1)引用例1(甲第10号証)記載の光電センサとトップノズルは一体に昇降するものであって、本件特許発明のように車検出手段を先行側に上部ノズルを後行側にそれぞれ独立配置しているものではないから、引用例2(当審が無効理由通知で引用した特開平4-292245号公報)記載のブラシ装置より前方に(独立して)位置するビームセンサからなる車種判別装置を引用例1記載の発明に適用することは困難である。
(2)引用例1では、往行時に車体を検出し、復行時に洗浄するものであるから、引用例2記載の車種判別と平行して洗車動作をする構成を適用することはできない。
(3)引用例1は車体の上面を検出するだけであり、本件特許発明のようにバンパー及び荷台の下側を検出するものではなく、他の引用例・甲各号証にもそのような構成はない。
(4)本件特許の請求項1に係る発明の「前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」の構成は、各引用例・甲各号証に記載も示唆もない。
(5)本件特許の請求項2、3に係る発明の「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、…ノズル姿勢変更機構を設け」た構成は、各引用例・甲各号証に記載も示唆もない。
(6)本件特許の請求項3に係る発明の「移動台(7)に対して上部ノズル(8)を横軸廻り回動可能」とした構成は、各引用例・甲各号証に記載も示唆もない。

3-2.特許法第36条の適用について
(1)請求項2における「前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)及びブロア噴出手段(10)は門型フレーム(3)の最初の往動時に車検出手段(4)による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段(4)より往動方向で後行側に位置しており」の記載において、「洗車動作」とは門型フレームの往動に始まって選択された洗車コースを履行し、ブロア噴出手段による車体乾燥をして門型フレームの復動が完了するまでの一連の動作を意味するものであるから、上記記載は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号、または第36条第4項に規定する要件を満たしている。
(2)請求項1における「前記昇降ドラム(6)を一端降下させ」の記載は、発明の詳細な説明の段落[0036]及び図14に記載されており、車体乾燥工程等で上方に待機している昇降ドラムが次の洗車工程で下降することとなることも明らかだから、第36条第4項及び第5項の要件を満たしている。
(3)請求項1における「前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」の記載は、1本のノズルを洗浄水を噴射する状態とワックスを含む水を噴射する状態とに変更することは周知の技術であり、本件特許出願前に公然実施されていた株式会社いけうち発行の製品カタログに記載の「高圧均等扇形ノズル」を該周知技術に適用して、「液圧、噴量、洗浄対象物との間の距離等」を調節すれば、洗剤を噴霧する状態と水をヘラ状にして噴出する状態とに変更することができるから、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されており、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号及び第36条第4項に規定する要件を満たしている。
(4)請求項2、3における「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、…ノズル姿勢変更機構を設け」の記載は、空間的意味ではなく、移動台に上部ノズルがノズル姿勢変更機構を介して取り付けられているとの意であり、そのことは発明の詳細な説明及び図面に、ノズル姿勢変更機構がモータ及び伝達手段によって構成されていることが記載されていることからも明らかであるから、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしている。

3-3.公然実施発明に関する証拠について
平成19年8月29日付け回答書に添付した証拠は、「株式会社いけうち」が1992年2月25日に発行した「高圧均等扇形ノズル」の製品カタログの正真正銘の複写であり、該カタログ記載の高圧均等扇形ノズルは本件特許出願前に公然実施されていたものであって、被請求人が自社の自動洗車装置を製作するに当たり発注したものである。

4.訂正請求(3回目)に係る訂正事項と訂正の可否に対する判断
上記平成19年7月17日に提出された訂正請求書(3回目)による訂正請求に係る訂正事項は、本件特許発明の明細書を上記訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正事項は以下のとおりである。
(以下の下線部は、訂正により付加・変更された記載部分を示す)

a.請求項1において、「洗車動作を開始する」の記載を、「洗車動作を開始しており、前記昇降ドラム(6)を一旦降下させて車体(2)に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル(8)を車体(2)の端部下部位置に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラム(6)を昇降させながら上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズル(8)を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行い、前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」と訂正する。

b.請求項2において、「往動方向で後行側に位置している」の記載を、「往動方向で後行側に位置しており、 前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更するノズル姿勢変更機構(51)を設け、 前記昇降ドラム(6)にはノズル姿勢変更機構(51)によって各姿勢に変更された上部ノズル(8)を左右に移動させるために前記移動台(7)を往復移動させる駆動機構(15)を設けている」と訂正する。

c.請求項3において、「昇降ドラム(6)に左右移動自在に設けられた移動台(7)」の記載を、「昇降ドラム(6)内に左右移動自在に設けられた移動台(7)」と訂正するとともに、「往動方向で後行側に位置している」の記載を、「往動方向で後行側に位置しており、 前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更するノズル姿勢変更機構(51)を設けており、 前記ノズル姿勢変更機構(51)は移動台(7)にモータ(41)及び支持ケース(42)を固定し、この支持ケース(42)の下部は昇降ドラム(6)に形成した溝(38)を挿通して下方に突出していて上部ノズル(8)を回動自在に支持し、前記モータ(41)は、移動台(7)に対して上部ノズル(8)を横軸廻り回動可能に構成しており、 前記昇降ドラム(6)には、ノズル姿勢変更機構(51)によって各姿勢に変更された上部ノズル(8)を左右に移動させるために前記移動台(7)を往復移動させる駆動機構(15)を設けている」と訂正する。

d.発明の詳細な説明の段落[0007]において、「洗車動作を開始することである。」の記載を、「洗車動作を開始しており、 前記昇降ドラム6を一旦降下させて車体2に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル8を車体2の端部下部位置に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラム6を昇降させながら上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズル8を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行い、前記上部ノズル8は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出することである。」と訂正する。

e.発明の詳細な説明の段落[0008]において、「往動方向で後行側に位置していることである。」の記載を、「往動方向で後行側に位置しており、 前記移動台7と上部ノズル8との間に、上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更するノズル姿勢変更機構51を設け、 前記昇降ドラム6にはノズル姿勢変更機構51によって各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に移動させるために前記移動台7を往復移動させる駆動機構15を設けていることである。」と訂正する。

f.発明の詳細な説明の段落[0009]において、「昇降ドラム6に左右移動自在に設けられた移動台7」の記載を、「昇降ドラム6内に左右移動自在に設けられた移動台7」と訂正するとともに、「往動方向で後行側に位置していることである。」の記載を、「往動方向で後行側に位置しており、 前記移動台7と上部ノズル8との間に、上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更するノズル姿勢変更機構51を設けており、 前記ノズル姿勢変更機構51は移動台7にモータ41及び支持ケース42を固定し、この支持ケース42の下部は昇降ドラム6に形成した溝38を挿通して下方に突出していて上部ノズル8を回動自在に支持し、前記モータ41は、移動台7に対して上部ノズル8を横軸廻り回動可能に構成しており、 前記昇降ドラム6には、ノズル姿勢変更機構51によって各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に移動させるために前記移動台7を往復移動させる駆動機構15を設けていることである。」と訂正する。

g.発明の詳細な説明の段落[0044]において、「洗車動作を開始するので、」の記載を「洗車動作を開始しており、 前記昇降ドラム6を一旦降下させて車体2に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル8を車体2の端部下部位置に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラム6を昇降させながら上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズル8を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行い、前記上部ノズル8は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出するので、」と訂正するとともに、「しかも正確に洗車することができる。」の記載を、「しかも正確に洗車することができ、さらに、各姿勢に変更された上部ノズル8を洗剤噴霧状態と水ヘラ状噴出状態とに使い分けることができ、水を前後に広い範囲で洗浄面の細部にいたるまでむらなく噴出できる。」と訂正する。

h.発明の詳細な説明の段落[0045]において、「往動方向で後行側に位置しているので、」の記載を「往動方向で後行側に位置しており、前記移動台7と上部ノズル8との間に、上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更するノズル姿勢変更機構51を設け、前記昇降ドラム6にはノズル姿勢変更機構51によって各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に移動させるために前記移動台7を往復移動させる駆動機構15を設けているので、」と訂正するとともに、「洗車動作を迅速かつ効率よくすることができる。」の記載を、「洗車動作を迅速かつ効率よくすることができ、さらに、各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に往復移動させながら洗浄液を噴出でき、さらにまた、ノズル姿勢変更機構51は昇降ドラム6に比べて小型部品である上部ノズル8を移動台7に対して姿勢変更すればよく、構成が簡単でかつ安価に製作できる。」と訂正する。

i.発明の詳細な説明の段落[0036],[0038]における「一端降下させて」の記載を、「一旦降下させて」に訂正する。

上記訂正事項a?cは、それぞれ特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。
また、上記訂正事項d?hは、発明の詳細な説明の記載を上記訂正事項a?cにより訂正された特許請求の範囲の記載を反映して整合させるものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項iは、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、これらの各訂正事項は、願書に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲を超える、いわゆる新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。

なお、請求人は、平成19年10月9日付け弁駁書(2回目)において、訂正事項a,d,gにおける「前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」の記載、及び訂正事項gにおける「各姿勢に変更された上部ノズル8を洗剤噴霧状態と水ヘラ状噴出状態とに使い分けることができ」の記載は、被請求人が従前公然実施されていたと主張する「高圧均等扇形ノズル」の特定の使用状況においてのみ可能となることを前提としたものであるにもかかわらず、願書に添付した明細書または図面には、そのような使用状況を特定する記載はないから、上記訂正は新規事項を追加するものである旨、及び訂正事項b,c,e,f,h,iにおける「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、…ノズル姿勢変更機構を設け」の記載は、空間的な意味としてしか読み取ることはできず、「移動台7にノズル姿勢変更機構51を介して上部ノズル8を回動自在に取り付けている」と同義であるとの被請求人の主張は認められないから、上記訂正は、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、新規事項を追加するものである旨主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落[0038]には、「洗剤散布行程では、洗剤を噴霧するので、洗浄行程よりノズルを車体2から遠くに離して行われる。上部の洗浄行程は、…昇降ドラム6を…車体2に対して一定間隔(洗剤散布行程より近い位置)をおいて配置するとともに、…前後に広いヘラ状になった高水圧の噴流を洗浄面の細部に至るまでむらなく吹き付けていく。」との記載があり、洗浄対象物との間の距離や水圧等を調節することによって、洗剤の噴霧状態と水の噴出状態とを切り換えることが示唆されているから、上記訂正事項a,d,gを含む上記訂正が、新規事項を追加するものであるとまで言うことはできない。
また、訂正事項b,c,e,f,h,iにおける「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、…ノズル姿勢変更機構を設け」の記載については、「間に」という記載の意味が通常は空間的な意味で使用されることが多いことは請求人が主張するとおりであるが、場合によっては介在するという機能的な意味で使用されることもあり、願書に添付した明細書又は図面の記載はみな「移動台7にノズル姿勢変更機構51を介して上部ノズル8を取り付けている」と解しうるものであって、上記訂正に係る記載をこのように機能的な意味ではなく空間的な意味、すなわち「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間」の空間にノズル姿勢変更機構を設けた構成としてしか読み取ることはできないとの請求人の主張には明確な根拠がなく、したがって、上記訂正事項b,c,e,f,h,iを含む上記訂正は、新規事項を追加するものであるとまで言うことはできない。

したがって、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書の規定に適合し、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するので、上記訂正を認める。

5.本件特許発明
5-1.請求人が主張する特許法第36条に関する無効事由について
(1)請求項2における「前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)及びブロア噴出手段(10)は門型フレーム(3)の最初の往動時に車検出手段(4)による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段(4)より往動方向で後行側に位置しており」の記載における「洗車動作」とは、発明の詳細な説明及び図面の記載全体からみて、門型フレームの往動に始まって選択された洗車コースを履行し、ブロア噴出手段による車体乾燥をして門型フレームの復動が完了するまでの一連の動作を意味するものと解することができ、ブロワ噴出手段も「門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)、側部ノズル(9)」とともに、車検出手段(4)からの検出情報に基づいて車型認識手段(5)により駆動制御されているのであるから、上記記載は発明の詳細な説明に記載されているものであり、また、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているから、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号及び特許法第36条第4項に規定する要件を満たしている。

(2)請求項1における「前記昇降ドラム(6)を一旦降下させ」の記載については、洗剤散布行程において昇降ドラムを一旦降下させて、上部ノズルを車体の端部下部位置に対向させることが、発明の詳細な説明の段落[0036]及び図14に記載されており、車体乾燥行程等で上方に待機して洗車行程を終了した昇降ドラムが次の洗車行程で下降することとなることも明らかだから、上記記載が技術的に不明瞭であるとは言えず、平成6年改正前特許法第36条第5項及び特許法第36条第4項の要件を満たしている。

(3)請求項1における「前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」の記載は、請求人が主張するように、上部ノズル自体が(噴出金具13が)「洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」構造を有するものと解される余地があるが、発明の詳細な説明の段落[0038]には、「洗剤散布行程では、洗剤を噴霧するので、洗浄行程よりノズルを車体2から遠くに離して行われる。上部の洗浄行程は、…昇降ドラム6を…車体2に対して一定間隔(洗剤散布行程より近い位置)をおいて配置するとともに、…前後に広いヘラ状になった高水圧の噴流を洗浄面の細部に至るまでむらなく吹き付けていく。」との記載があり、洗浄対象物との間の距離や水圧等を調節することによって、噴霧状態と噴出状態を切り換えることが示唆されている。
また、「7-2.(3)」において後に詳述するように、圧力等を調整して、洗浄剤については低圧で「噴霧」し、水については高圧で「噴出」する洗車方法は周知の技術であり、本願出願前公然実施されていたものと認められる株式会社いけうち製造の「高圧均等扇形ノズル」が、細長く平らな「ヘラ状」噴出流を形成することができることは、被請求人が提出した証拠である「扇形ノズル製品カタログ」に明らかであってみれば、上記請求項1の記載は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているということができ、格別技術的に不明瞭ということもできないから、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号及び特許法第36条第4項に規定する要件を満たしている。

なお上述したとおり、請求人は、上記被請求人が提出した「扇形ノズル製品カタログ」の発行年月日、及びその公然実施の事実等について争う旨主張している。
しかしながら、当該カタログ(引用例11)の表紙右下には、通常巻号数を示す「92V」との記載があり、同裏表紙には、発行者である「霧のいけうち」の名称とともに、「920225-03」との記載があるから、当該カタログが本願出願前の1992年2月25日に発行されたものと推定することができる。しかも、被請求人は、上記回答書において、当該カタログ記載の「高圧均等扇形ノズル」は、本件特許出願前に公然実施されていたものであると主張し、この証拠を無効理由の根拠を構成する引用例11として採用した当審の平成19年10月26日付け無効理由通知書に対する平成19年11月29日提出の意見書において、「引用例11について、平成19年8月29日付け回答書に添付した証拠の『高圧均等扇形ノズル』の製品カタログは、『株式会社いけうち』が1992年2月25日に発行した正真正銘のカタログの写しである。」と主張しており、これらの被請求人の主張には信用性があるというべきである。
そうすると、当該カタログは本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物であり、当該カタログ記載の「高圧均等扇形ノズル」は本件特許出願前に公然実施されていた発明であると認めるのが相当である。

(4)請求項2、3における「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、…ノズル姿勢変更機構を設け」の記載における「間に」とは、必ずしも空間的意味に解すべきものとは言えず、移動台に上部ノズルがノズル姿勢変更機構を介して取り付けられているという機能的な意味にも解することができ、発明の詳細な説明及び図面には、ノズル姿勢変更機構が移動台上に固定されたモータ及びその駆動力を上部ノズルに伝達する伝達手段によって構成されていることが記載されているから、これらの記載からみて上記請求項2,3における記載は、移動台に上部ノズルがノズル姿勢変更機構を介して取り付けられているという意味であると解され、技術的に不明瞭とは言えないから、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしている。

5-2.本件特許発明
上記のとおり、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条に規定する要件を満たしているから、本件特許の請求項1?3に係る発明は、上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3のそれぞれに記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】洗車しようとする車体(2)に対して門型フレーム(3)を移動させながら、門型フレーム(3)に設けた車検出手段(4)で車体(2)の外面形状を検出し、この車検出手段(4)からの情報を時系列で記憶しておき、その記憶情報に基づいて、昇降ドラム(6)を昇降させて上部ノズル(8)を車体(2)の外面に一定間隔をおいて倣わせ、かつこの上部ノズル(8)を左右に移動させて洗浄液を噴出し、一方、側部ノズル(9)を昇降させて車体(2)の側面に洗浄液を噴出させる自動洗車方法であって、
前記門型フレーム(3)の最初の往動時に、門型フレーム(3)の前部に設けた上下に長い車検出手段(4)で車体(2)の上下方向多数位置を一度に検出して、これを門型フレーム(3)の移動に伴って上下各位置の検出情報を時系列で記憶して車型を認識し、この車型認識と平行して車型を認識した車体部分から車検出手段(4)より後行側に設けた前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)で洗車動作を開始しており、
前記昇降ドラム(6)を一旦降下させて車体(2)に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル(8)を車体(2)の端部下部位置に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラム(6)を昇降させながら上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズル(8)を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行い、前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出することを特徴とする自動洗車方法。
【請求項2】洗車しようとする車体(2)に対して相対移動する門型フレーム(3)と、この門型フレーム(3)に設けられていて車体(2)の外面形状を検出する光センサ(11)を有する車検出手段(4)と、門型フレーム(3)に昇降自在に設けた昇降ドラム(6)と、この昇降ドラム(6)内に左右移動自在に設けられた移動台(7)と、この移動台(7)に設けられている洗浄用上部ノズル(8)と、門型フレーム(3)の左右側部に昇降自在に設けられた左右一対の洗浄用側部ノズル(9)と、車体(2)を乾燥させるブロワ噴出手段(10)と、前記車検出手段(4)からの情報を時系列で記憶しておいて門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)の各駆動機構を制御する車型認識手段(5)とを有し、
前記車検出手段(4)の光センサ(11)は車体(2)を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段(5)は上下各位置の光センサ(11)からの検出情報を時系列で記憶する記憶部(A)と、いくつかの洗車コースから選択した洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部(B)と、セット情報部(B)のセット情報に基づいて前記記憶部(A)から情報を読み取って、門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)の各駆動機構に制御信号を送る処理部(C)とを有しており、前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)及びブロア噴出手段(10)は門型フレーム(3)の最初の往動時に車検出手段(4)による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段(4)より往動方向で後行側に位置しており、
前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更するノズル姿勢変更機構(51)を設け、
前記昇降ドラム(6)にはノズル姿勢変更機構(51)によって各姿勢に変更された上部ノズル(8)を左右に移動させるために前記移動台(7)を往復移動させる駆動機構(15)を設けていることを特徴とする自動洗車装置。
【請求項3】洗車しようとする車体(2)に対して相対移動する門型フレーム(3)と、この門型フレーム(3)に設けられていて車体(2)の外面形状を検出する光センサ(11)を有する車検出手段(4)と、門型フレーム(3)に昇降自在に設けた昇降ドラム(6)と、この昇降ドラム(6)に左右移動自在に設けられた移動台(7)と、この移動台(7)に設けられている洗浄用上部ノズル(8)と、門型フレーム(3)の左右側部に昇降自在に設けられた左右一対の洗浄用側部ノズル(9)と、前記車検出手段(4)からの情報を時系列で記憶しておいて門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)の各駆動機構を制御する車型認識手段(5)と、前記車体(2)が所定の洗車停車位置から前又は後に外れているとき及び昇降ドラム(6)が車体(2)に近づきすぎたときに洗車動作中のエラーとして検出するエラー検出手段とを有し、
前記車検出手段(4)の光センサ(11)は車体(2)を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段(5)は上下各位置の光センサ(11)からの検出情報を時系列で記憶する記憶部(A)と、エラー検出手段からの検出情報を記憶するエラー記憶部(L)と、記憶部(A)及びエラー検出手段からの情報で駆動機構を制御する処理部(C)とを有しており、前記門型フレーム(3)はエラー検出手段が検出した情報を表示するエラー表示部を備えており、前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)は門型フレーム(3)の最初の往動時に車検出手段(4)による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段(4)より往動方向で後行側に位置しており、
前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更するノズル姿勢変更機構(51)を設けており、
前記ノズル姿勢変更機構(51)は移動台(7)にモータ(41)及び支持ケース(42)を固定し、この支持ケース(42)の下部は昇降ドラム(6)に形成した溝(38)を挿通して下方に突出していて上部ノズル(8)を回動自在に支持し、前記モータ(41)は、移動台(7)に対して上部ノズル(8)を横軸廻り回動可能に構成しており、
前記昇降ドラム(6)には、ノズル姿勢変更機構(51)によって各姿勢に変更された上部ノズル(8)を左右に移動させるために前記移動台(7)を往復移動させる駆動機構(15)を設けていることを特徴とする自動洗車装置。」
(以下、請求項1?3に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1?3」という。)

6.引用刊行物及び引用例1の記載事項
[引用刊行物]
1)特開平3-258638号公報(甲第10号証:以下「引用例1」という。)
2)特開平4-292245号公報(以下「引用例2」という。)
3)特開平1-164654号公報(甲第1号証:以下「引用例3」という。)
4)特開平1-127439号公報(甲第4号証:以下「引用例4」という。)
5)特開平1-127440号公報(甲第5号証:以下「引用例5」という。)
6)特開昭60-42144号公報(甲第6号証:以下「引用例6」という。)
7)特開昭62-125888号公報(以下「引用例7」という。)
8)特開平1-178051号公報(甲第2号証:以下「引用例8」という。)
9)実願昭63-791号(実開平1-106355号)のマイクロフィルム(甲第3号証:以下「引用例9」という。)
10)特開昭61-119455号公報(甲第11号証:以下「引用例10」という。)
[被請求人が提出する公然実施発明に係る刊行物]
11)「扇形ノズル製品カタログ」の写し(株式会社いけうち,1992年2月25日発行,P.27:以下「引用例11」という。)

[引用例1の記載事項]
(ア)「本発明は、車両の形状に合わせて高さ方向に昇降可能としたトップノズルボックスと、…サイドノズルボックスを備え、このサイドノズルボックスには車の高さ方向に往復移動するサイドノズルを取り付け、同様にトップノズルボックスにも車両の幅方向に往復移動可能なトップノズルを付設し、洗車アーチ本体が走行すると共にトップノズルが車両の上面を洗浄し、他方サイドノズルは車両の側面を車の高さ方向に移動しながら洗浄を行う。このときトップノズルから車両上表面までの距離…は…光電センサ…にて検知し、洗浄に最適な距離を保持させると共に、そのときのトップノズルの高さ位置…は、洗車アーチ本体と車両との位置関係と共に軌跡データとして記憶しておく。洗車アーチ本体の片道走行時に蓄積したデータを基に、復走行時は、洗車アーチ本体の移動距離に従いトップノズルの高さ位置とサイドノズルの側方位置を制御、駆動する手段を備えたものである。」(第2頁右上欄第8行?左下欄第9行)

(イ)「上記構成により、往行時においてその軌跡データを蓄積することで車の形状を学習し、復行時における洗浄あるいはすすぎ、乾燥等の次工程にて上記軌跡データに基づき各アクチュエーターを駆動し、その移動量を検知して各ノズルの位置を制御することによって車の輪郭に沿って洗浄するから、次工程での制御が簡単となると共に駆動速度を高めて運転出来る。また、トップノズルとサイドノズルの移動量は被洗浄車両の車幅と車高に見合っただけ動かす。」(第2頁左下欄第16行?右下欄第5行)

(ウ)「トップノズルボックス5の両端にシャフト89が突設し、それら端部に光電センサ11,11が取り付けられている。10は玉軸受である。シャフト9にはビニオンギア12が貫着され、それと歯合するラック13はエアーシリンダー14と連結されている。エアーシリンダー14の復動がトップノズルボックス5の回転に変換される。また、トップノズルボックス5の内部にビニオンギア15.16が配置され、それらの間にベルト18が掛けられており、そのベルト18にトップノズル19が付設されている。ギヤードモ-ター17の正転、逆転によりトップノズル19が往復運動する。」(第2頁右下欄第13行?第3頁左上欄第5行)

(エ)「第5図は、上述したトップノズルボックス5とそれに伴うトップノズル19が、車両の形状面に対し常に垂直方向に向けるようトップノズルボックスを回転させながら洗浄作業することを説明する。このようにノズルからの洗浄液を車両の表面に垂直に当てることで、洗浄液のもつ運動エネルギーを汚れの剥離と除去に有効に働かせられる。」(第3頁右上欄第9?16行)

(オ)「トップノズル19を車体表面のある距離に接近させる方法として、光電センサ11、11が車体にさえぎられる位置を車体の表面位置として検知する方法や、或は洗車アーチ本体4上部に超音波センサ28を設置して車高を測定する方法があるが、本発明の一実施例として、光電センサ11を用いた方法で説明する」(第3頁左下欄第1?7行)

(カ)「第6図において、11は第2図に示す様にトップノズルボックス5の両端に取り付けられた車体上面を検出する検出手段である透過型の光電センサであり、車体の上面を検出してノズル上下方向制御装置38に出力している。29は第2図に示す様に滑車に取り付けられ、トップノズルボックス5の移動距離を検出する検出手段であるトップノズル上下方向ロータリーエンコーダであり、トップノズル19の上下方向の移動距離を検出し、ノズル上下方向制御装置38に出力している。」(第3頁左下欄第10?20行)

(キ)「第3図に示す35は近接センサであり、 ビニオンギアの回転歯数をカウントすることでトップノズルの回転角度を検出し、ノズル上下方向制御装置38に出力している。ノズル上下方向制御装置38は、 トップノズル光電センサ11の車体上面検出信号a、トップノズル上下方向ロータリーエンコーダ29の移動距離信号b、サイドノズル上下方向ロータリーエンコーダ33、33の移動距離信号c、c'、トップノズルボックス回転近接センサーからの回転角度信号dを入力し、それぞれトップノズル19の上下方向駆動系に上移動、位置保持、下移動からなる制御信号hを出す。また、トップノズル19の回転方向駆動系に右回転、位置保持、左回転からなる制御信号gを出し、さらにサイドノズル23.23の上下方向駆動系に上移動、位置保持、下移動からなる制御信号fを出力する。
第7図は、本発明のトップノズル19、サイドノズル23の左右方向の制御系のブロック図である。…
ノズル左右方向制御装置39は…トップノズル19の左右方向駆動系に左移動、位置保持、右移動からなる制御信号1を出す。…
従って、上記実施例によれば、最低でも3個という少ないノズル数で済むため、その分洗浄液とすすぎ水の量を少なくすることが出来るし、且つ車両の大きさに見合った幅だけノズルを移動させることで、従来のような車体のないところに洗浄液を噴きつけるという無駄が省ける。」(第3頁右下欄第7行?第4頁右上欄第15行)

(ク)「初回の往行時に光電センサ11、又は超音波センサ28で車の上面の形状を学習し記憶することで、次工程でのプレーバック動作がスムーズに行えるし、運行速度を高めて作業することが出来るので、洗浄のスピードアップに貢献する。トップノズルボックスの腕の長いリンク2本を用いて昇降させることでその可動範囲を広げられるので、車両の低い位置まで洗浄液を噴射出来る。と同時に、トップノズルボックスに付帯するトップブロアノズルも同様に低い位置まで下げられるから、従来の門型洗車機では不可能であった車両の正面と後面のブロア作業が出来、乾燥仕上げ面積を広げることが出来る。
又、サイドブロアノズルも車両側面に極めて近く寄せることが出来るから、車両側面の乾燥仕上状態をさらに良好とすることが可能である。」(第4頁左下欄第8行?右下欄第3行)

(ケ)「被洗浄車体の幅方向へ横移動可能としたサイドノズルボックスの内部に、上下に往復移動自在なサイドノズルを設け、又車体側面を検知する手段とサイドブロアノズルとを同サイドノズルボックスに設置し」(請求項1)

上記記載事項(ア)?(ケ)によれば、「トップノズルから車両上表面までの距離…は…光電センサ…にて検知し、洗浄に最適な距離を保持させ」、「トップノズルの高さ位置…は、洗車アーチ本体と車両との位置関係と共に軌跡データとして記憶し」、「トップノズルボックス5とそれに伴うトップノズル19が、車両の形状面に対し常に垂直方向に向けるようトップノズルボックスを回転させながら洗浄作業する」のであるから、第5図の記載をも参酌すれば、光電センサは車両上表面を検出しており、トップノズルを一旦降下させた上で、車両の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更していることがわかるから、引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

<引用発明1>
「洗車しようとする車両に対して洗車アーチ本体4を移動させながら、洗車アーチ本体4に設けた光電センサ11を有する検出手段で車両上表面を検出し、トップノズルボックス5の移動距離を検出する検出手段であるトップノズル上下方向ロータリーエンコーダ29で、トップノズル19の上下方向の移動距離を検出し、回転近接センサ35によりトップノズル19の回転角度を検出して、これらの検出情報に基づいて、トップノズルボックス5を昇降させてトップノズル19を車両上表面に間隔をおいて倣わせ、かつトップノズル19を左右に移動させて洗浄液を噴出し、一方、サイドノズル23を昇降させて車両の側面に洗浄液を噴出させる自動洗車方法であって、
前記洗車アーチ本体4の最初の往動時に、洗車アーチ本体4のトップノズルボックス5の両端のシャフト8,9の端部に設けた光電センサ11で車両上表面を検出し、洗車アーチ本体4の移動に伴ってトップノズル19およびサイドノズル23で洗車動作を開始して、トップノズルボックス5を一旦降下させてトップノズル19を車両の端部位置に対向させ、トップノズル19を車両に対して最適な距離をおいて配置すると共に、車両の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢に姿勢変更し、これらの各姿勢に変更したトップノズル19を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行うと共に、そのときのトップノズル19の高さ位置を洗車アーチ本体4と車両との位置関係と共に軌跡データとして記憶することで、車の上面の形状を学習して記憶し、次工程(復行時)でのプレーバック動作をスムーズに行うようにした自動洗車方法。」

7.本件特許発明1と引用発明1との対比・判断
引用発明1における「車両」、「洗車アーチ本体」、「光電センサを有する検出手段」、「トップノズルボックス」、「トップノズル」、「サイドノズル」は、それぞれ本件特許発明1における「車体」、「門型フレーム」、「車検出手段」、「昇降ドラム」、「上部ノズル」、「側部ノズル」に相当する。
そして、引用発明1における光電センサを有する検出手段が検出する「車両上表面」も、本件特許発明1における車検出手段が検出する「車体の外面形状」も、「車体」であることに変わりはないから、本件特許発明1と引用発明1の一致点、相違点は以下のとおりである。

7-1.一致点及び相違点
7-1-1.一致点
「洗車しようとする車体に対して門型フレームを移動させながら、門型フレームに設けた車検出手段で車体を検出し、この車検出手段からの情報に基づいて、昇降ドラムを昇降させて上部ノズルを車体の外面に間隔をおいて倣わせ、かつこの上部ノズルを左右に移動させて洗浄液を噴出し、一方、側部ノズルを昇降させて車体の側面に洗浄液を噴出させる自動洗車方法であって、
前記門型フレームの最初の往動時に、門型フレームに設けた車検出手段の検出情報を、門型フレームの移動に伴って時系列で記憶して、前記上部ノズル及び側部ノズルで洗車動作を開始しており、前記昇降ドラムを一旦降下させて車体に対して間隔をおいて配置すると共に、上部ノズルを車体の端部に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラムを昇降させながら上部ノズルを車体の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢に姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズルを左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行う自動洗車方法。」

7-1-2.相違点
(1)相違点1-1
本件特許発明1では、車検出手段は「門型フレームの前部に設け」られ、「上下に長い車検出手段で車体の上下方向多数位置を一度に検出」して、「車体の外面形状」を検出し、その「情報を時系列で記憶して車型を認識し」、上部ノズル及び側部ノズルは「車検出手段より後行側に設け」られており、「門型フレームの最初の往動時に」、「車型認識と平行して車型を認識した車体部分から」、「洗車動作を開始」しているのに対して、引用発明1では、車検出手段は、「トップノズルボックス5(昇降ドラム)の両端にシャフト89が突設し、それら端部に取り付けられ」ているもので、上部ノズル及び側部ノズルが「車検出手段より後行側に設け」られているかどうかは不明であり、「車両(車体)上表面」を検出し、その検出情報は、「トップノズル19の高さ位置を洗車アーチ本体4と車両との位置関係と共に軌跡データとして記憶する」ことで車の上面の形状を学習して記憶し、当該学習記憶した車の上面の形状に基づいて、次工程(復行時)での洗車動作を開始するものである点。

(2)相違点1-2
本件特許発明1では「昇降ドラム(6)を一旦降下させて車体(2)に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル(8)を車体(2)の端部下部位置に対向させて」いるのに対して、引用発明1では昇降ドラムを一旦降下させ上部ノズルを車両の端部位置に対向させてはいるが、「車体の端部下部位置に対向させて」いるかどうかは不明であり、上部ノズルは車体に対して「最適な距離」に配置されているが、昇降ドラムが車体に対して一定間隔をおいて配置されているかどうかは不明である点。

(3)相違点1-3
本件特許発明1では、「上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出する」のに対して、引用発明1には、そのような構成がない点。

7-2.相違点についての検討・判断
(1)相違点1-1について
引用例2(段落[0007]?[0015]及び図7)及び引用例3(甲第1号証:第8頁左上欄第10行?第9頁左下欄第10行及び第9図)の記載にみられるように、洗浄処理装置が「車検出手段より後行側に設け」られ、すなわち洗浄処理装置とは別個に配置された車検出手段が、洗浄処理装置より先行側に設けられており、「門型フレームの最初の往動時に」、車検出手段の検出情報に基づいて、「車型認識と平行して車型を認識した車体部分から」、「洗車動作を開始」するようにした洗車装置は周知のものである。
ここで、当該「車型」の意味について、被請求人は、平成19年6月29日に行われた第1回口頭審理に対する陳述要領書の中で、「『車型』とは、乗用車やトラックなどの車の形状の種類を意味する通常の用語である『車型』と異なるものではなく」(第2頁第16?17行)と述べて、「車型」とは通常言うところの車種に相当すると主張していたが、当該口頭審理の場では、この主張を翻して、「本件特許発明で言う『車体の外面形状』と『車型』とは、同じものを意味し、その意味は『車検出手段の検出情報をある一定期間、または車両全長にわたって時系列で記憶することにより認識される、車体の横(車幅方向)から見た輪郭』のことである。」(第1回口頭審理調書)と主張している。
しかしながら、引用例2記載の車種判別装置も、「車検出手段の検出情報をある一定期間にわたって時系列で記憶することにより認識される、車体の横(車幅方向)から見た輪郭」を検出して記憶し認識していることに変わりはないから、上記の通り周知技術を認定した。
また、洗車装置において、車検出手段が「門型フレームの前部」に設けられた「上下に長い車検出手段」であって、「車体の上下方向多数位置を一度に検出」し、その「検出情報を時系列で記憶する」ことは周知の技術である(例えば、上記引用例3、引用例4:甲第4号証、引用例5:甲第5号証等参照)。
そして、上記周知の車検出手段によって、車体の上下方向多数位置を一度に検出し、その検出情報を時系列で記憶することは、車体の横方向(車幅方向)から見た車体の輪郭の全部または一部を意味する「車体の外面形状」を検出していることになることは明らかである。
そうすると、引用発明1において、次工程(復行時)ではなく最初の往動時から、洗浄処理装置とは別個に洗浄処理装置より先行側に設けられた車検出手段からの検出情報に基づいて車型を認識した車体部分から洗車動作を開始する上記周知技術を適用し、その際に車検出手段として、車体の上下方向多数位置を一度に検出する上記周知の技術を適用して、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、被請求人は、引用例2,3は、洗浄処理装置としてブラシを使用するものであって、ノズルを使用する引用発明1とは異なる制御技術によるものであるから、引用発明1に引用例2、3記載のものを適用することは困難である旨、主張している。
しかしながら、自動洗車装置において、ブラシもノズルも周知のものであって、何れを選択するかは当業者の必要に応じて適宜選択しうるものであり、しかも、車検出手段を洗浄処理装置に先行させて車体を検出し、その検出動作と平行して最初の往動時から、蓄積した検出情報に基づいて洗浄処理装置の位置を制御して洗車動作を開始するという作用・機能において、洗浄処理装置がブラシであるかノズルであるかにより格別の差異はなく、当該作用・機能を有する上記周知の構成を引用発明1に適用すれば、車検出手段を洗浄処理装置とは別個に先行側に配置することとなることは、技術的にみて当然のことであるから、上記被請求人の主張は採用できない。
また、本件特許発明1は、「上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更」するものであるから、車検出手段が検出する上記「車体の外面形状」は、少なくとも車体の上面と前後面を含むものであると解することができるが、被請求人は、引用発明1は車両の「上面」を検出しているものであって前後面を検出してない点で本件特許発明1と相違している、とも主張している。
しかしながら、引用発明1は、本件特許発明1と同様に上部ノズルを車体の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢に姿勢変更して車両を洗浄するものであるところ、引用例1には、「トップノズルが車両の上面を洗浄し」(上記記載事項ア)、「ノズルからの洗浄液を車両の表面に垂直に当てることで、…汚れの剥離と除去に有効に働かせられる」(上記記載事項エ)と記載されているように、引用発明1における車両の上面とは車両の表面と格別異なる意味を有するものではないから、引用例1の第5図の記載をも参酌すると、引用発明1における車検出手段が検出する「車両の上表面」には、車両の前後面が含まれていることは明らかであり、引用発明1に車体の上下多数方向位置を一度に検出する上記周知の車検出手段を適用すれば、当然に車体の前後面をも検出することとなることは、技術的にみて当然のことである。

さらに、被請求人は、平成19年7月17日付け意見書において、引用例1は「バンパー及び荷台の下側を検出することは困難」であり、引用例2についても「車体の下面を検出する、あるいは、バンパーより下方は検出できない」と主張し、あたかも本件特許発明1が車体の下面、あるいはバンパーより下方を検出するものであるかのように主張している。
しかしながら、本件特許明細書には車体の下部面を検出することについては記載がなく、車型の読み取り例とされる図6、図7にも、「バンパー及び荷台の下側」を検出していることを示す記載はない。逆に、段落[0010]には、「洗車するべき車体2の外面を検出する」との記載がある一方、本件特許発明1の上部ノズルは、最大限回動しても、「下向き姿勢Eから前後に90度づつ回動可能にし、前向き水平姿勢と後向き水平姿勢とに姿勢変更するようにしても良い」というものであり、当該上部ノズルで「バンパー及び荷台の下側」を洗浄することを想定したものとは言えないから、上記被請求人の主張は明細書または図面に根拠を有さない主張であり、採用できない。

(2)相違点1-2について
上記記載事項(ア)、(ウ)から、引用発明1における「最適な距離」が、「一定間隔」を含んでいることは明らかであり、上部ノズルと車体が一定間隔であれば昇降ドラムと車体の間隔もほぼ一定と言って良いから、昇降ドラムを車体に対して一定間隔をおいて配置したことは、引用発明1に実質的に記載されているに等しいことである。
そして、引用例1の第5図には、上部ノズルを車体の端部に対向させて水平方向に洗浄噴射している実施例が記載されており、上記記載事項(エ)には「ノズルからの洗浄液を車両の表面に垂直に当てる」ことが示されているから、車体を端部下部位置まできれいに洗浄しようとすれば、上部ノズルを車体端部の下部位置まで降下させて洗浄するのであって、そのようにすることは当業者であれば必要に応じて決定しうる設計的事項にすぎないと言うべきである。
したがって、上記相違点1-2に係る本件特許発明1の構成は、当業者が必要に応じて適宜決定し得た設計的事項にすぎない。

(3)相違点1-3について
車体を洗浄剤及び水でノズルを使い洗浄する場合に、圧力等を調整して、洗浄剤については低圧で「噴霧」し、水については高圧で「噴出」する洗車方法は周知の技術であり(例えば、上記引用例7等参照)、被請求人が本願出願前公然実施されていたものと認める株式会社いけうち製造の「凹圧均等扇形ノズル」が、細長く平らな「ヘラ状」噴出流を形成することができることは、被請求人が平成19年8月29日に当審の審尋に対する回答書とともに提出した証拠である上記引用例11(「扇形ノズル製品カタログ」)により明らかであるから、引用発明1の上部ノズルに該周知の洗車方法を適用するにあたり、本願出願前公然実施されていた上記「凹圧均等扇形ノズル」を採用し、その際、当該扇形ノズルによって形成される「ヘラ状」噴出流を前後に広い方向とすることは、引用発明1が車幅方向にノズルを移動する洗車方法であってみれば、洗車の効率性からみて当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、これら相違点を総合して本件特許発明1が奏する作用効果も、上記引用発明1及び上記各周知技術並びに上記本件特許出願前に公然実施された発明から予測される程度以上のものでもない。

8.本件特許発明2と引用発明2との対比・判断
8-1.引用発明2
上記記載事項(ア)?(ケ)及び第6図の記載から、引用例1には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明2>
「洗車しようとする車両に対して相対移動する洗車アーチ本体4と、この洗車アーチ本体4に設けられていて車両上表面を検出する光電センサ11を有する車検出手段と、洗車アーチ本体4に昇降自在に設けたトップノズルボックス5と、このトップノズルボックス5に左右移動自在にベルト18に付設されたトップノズル19と、トップノズルボックス5に付帯し車両を乾燥させるトップブロワノズル27と、洗車アーチ本体4の左右側部に設けられた左右一対のサイドブロアノズル26と昇降自在なサイドノズル23と、トップノズル19及びサイドノズル23の軌跡データを記憶しておいてトップノズルボックス5、トップノズル19及びサイドノズル23の各駆動系を制御するノズル上下方向制御装置38及びノズル左右方向制御装置39とを有し、
前記光電センサ11は、トップノズル19から車両上表面までの距離を検出し、前記ノズル上下方向制御装置38及びノズル左右方向制御装置39は、トップノズル19の高さ位置を洗車アーチ本体4と車両との位置関係と共に軌跡データとして時系列で記憶する車体上面形状演算・格納部と、トップノズルボックス5、トップノズル19及びサイドノズル23の各駆動系に制御信号を送る各制御部とを有しており、前記トップノズル19及びサイドノズル23は、洗車アーチ本体4の最初の往動時に、光電センサ11の検出情報に基づいて、洗車アーチ本体4の移動に伴って洗車動作を開始して、トップノズル19を車両の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢に姿勢変更するトップノズル回転方向駆動系を有し、前記トップノズルボックス5にはトップノズル回転方向駆動系によって各姿勢に変更されたトップノズル19を左右に往復移動させるトップノズル左右方向駆動系を設けるとともに、記憶したトップノズル19の上記軌跡データから車の上面の形状を学習して記憶し、次工程(復行時)でのプレーバック動作をスムーズに行うようにした自動洗車装置。」

8-2.一致点及び相違点
本件特許発明2と引用発明2とを比較すると、引用発明2における「ノズル上下方向制御装置」及び「ノズル左右方向制御装置」は、車体を検出してその情報を記憶し、洗車装置を制御する装置であるから、その限りにおいて本件特許発明2における「車型認識手段」に相当する。
そして、引用発明2における「車両」、「洗車アーチ本体」、「光電センサ」、「トップノズルボックス」、「トップノズル」、「サイドノズル」、「トップブロアノズル」、「駆動系」、「車体上面形状演算・格納部」、「各制御部」、「トップノズル回転方向駆動系」は、それぞれ本件特許発明2における「車体」、「門型フレーム」、「光センサ」、「昇降ドラム」、「洗浄用上部ノズル(上部ノズル)」、「洗浄用側部ノズル(側部ノズル)」、「ブロワ噴出手段」、「駆動機構」、「記憶部」、「処理部」、「ノズル姿勢変更機構」に相当するから、本件特許発明2と引用発明2との一致点、相違点は、次のとおりである。

8-2-1.一致点
「洗車しようとする車体に対して相対移動する門型フレームと、この門型フレームに設けられていて車体を検出する光センサを有する車検出手段と、門型フレームに昇降自在に設けた昇降ドラムと、この昇降ドラムに左右移動自在に設けられた洗浄用上部ノズルと、門型フレームの左右側部に昇降自在に設けられている左右一対の洗浄用側部ノズルと、車体を乾燥させるブロワ噴出手段と、前記車検出手段の検出情報に基づいて昇降ドラム、上部ノズル及び側部ノズルの各駆動機構を制御する車型認識手段とを有し、
前記車型認識手段は、車検出手段の検出情報を時系列で記憶する記憶部と、記憶部から情報を読み取って、昇降ドラム、上部ノズル及び側部ノズルの各駆動機構に制御信号を送る処理部とを有しており、前記上部ノズル及び側部ノズル及びブロア噴出手段は門型フレームの最初の往動時に洗車動作を開始しており、前記上部ノズルを車体の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢に姿勢変更するノズル姿勢変更機構を有し、前記昇降ドラムにはノズル姿勢変更機構によって各姿勢に変更された上部ノズルを左右に往復移動させる駆動機構(15)を設けている自動洗車装置。」

8-2-2.相違点
(1)相違点2-1
本件特許発明2では、移動台(7)と上部ノズルの間にノズル姿勢変更機構(51)が設けられ、その移動台が処理部に制御される駆動機構に付設されているのに対して、引用発明2では、上部ノズルは、「ベルト」すなわち処理部に制御される駆動機構に付設されるものではあるが、上部ノズルと駆動機構の間に「移動台」が介在するかどうか不明であり、ノズル姿勢変更機構は、上部ノズルと昇降ドラムとを一体で姿勢変更するトップノズル回転方向駆動系である点。

(2)相違点2-2
本件特許発明2では、「車検出手段」は、光センサが「車体を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置」されて、「車体の外面形状」を検出するものであり、記憶部は、その「検出情報を時系列で記憶し」、上部ノズル及び側部ノズル及びブロア噴出手段は、「往動方向で車検出手段の後行側に位置して」、門型フレームの最初の往動時に、「車検出手段による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から」洗車動作を開始するものであるのに対して、引用発明2では、車検出手段は、光センサの個数は不明であって、上下方向多数位置を一度に検出するものではなく、「車両(車体)上表面」を検出するもので、上部ノズル及び側部ノズル及びブロア噴出手段との往動方向の配置関係は不明であり、最初の往動時に洗車動作を開始するものではあるが、記憶部は、「トップノズル19の高さ位置を洗車アーチ本体と車両との位置関係と共に」記憶して車型を認識し、当該車型認識に基づいて、次工程(復行時)で洗車動作を開始するものである点。

(3)相違点2-3
本件特許発明2の「セット情報部」は、「いくつかの洗車コースから選択した洗車のセット情報をプログラムしてあ」り、その「セット情報に基づいて前記記憶部(A)から情報を読み取」るのに対して、引用発明2では、そのようなセット情報部の構成がなく、また、「処理部」は、本件特許発明2では、「門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)の各駆動機構に制御信号を送る」のに対して、引用発明2では、「昇降ドラム、上部ノズル及び側部ノズル」の各駆動機構に制御信号を送るものではあるが、「門型フレーム」及び「ブロワ噴出手段」の各駆動機構に制御信号を送っているかどうか不明である点。

8-3.上記相違点についての検討・判断
(1)相違点2-1について
「5-1.(4)」で上述したとおり、相違点2-1における本件特許発明2の「前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、…ノズル姿勢変更機構を設け」との構成は、移動台に上部ノズルがノズル姿勢変更機構を介して取り付けられているとの意味に解されるところ、上記引用例8(甲第2号証)、引用例9(甲第3号証)にみられるように、洗車装置において、上部ノズルと上部ノズルを左右(車幅方向)に往復駆動する駆動機構の間に、「移動台」を介在させることは周知の技術である。
そして、一般的にノズルをその取り付けられた基台となる装置上で揺動させることは普通に行われており、そのような場合にノズルと基台装置との間に姿勢変更機構が設けられていることは自明のことである。また、洗車装置においても、昇降ドラムとの間でノズルを揺動させる姿勢変更機構を設けることは周知の技術である[例えば、上記引用例10(甲第11号証):第2頁左下欄第6行?同右下欄第8行等参照]。
そうすると、引用発明2の自動洗車装置において、上記周知の移動台を適用し、その際にノズルを基台装置上で揺動する周知のノズル姿勢変更機構を適用して、上記相違点2-1に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2-2について
前述した「7-2.(1)」で上記相違点1-1について検討したと同様に、車検出手段による「検出情報を時系列で記憶」して、洗浄処理装置が「往動方向で車検出手段より後行側に位置して」おり、門型フレームの最初の往動時に、車検出手段の検出情報に基づいて、「車型認識と平行して車型を認識した車体部分から」、「洗車動作を開始」するようにした洗車装置は周知のものであり(例えば、上記引用例2,3等参照)、洗車装置において、車検出手段の光センサが「車体を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置して」、「車体の外面形状」を検出し、その「検出情報を時系列で記憶する」ことも周知の技術である(例えば、上記引用例3?5等参照)。
そして、上記引用例3?5からわかるように、光センサからなる車検出手段が門型フレームの前部に設けられていることも周知の技術であり、自動洗車装置において、ブラシもノズルも洗浄処理装置として周知のものであって、何れを選択するかは当業者の必要に応じて適宜選択しうるものであることに鑑みれば、上部ノズル及び側部ノズル及びブロア噴出手段を「往動方向で車検出手段の後行側に位置」させることは、当業者の適宜決定し得た設計的事項にすぎないから、引用発明1において、次工程(復行時)ではなく、最初の往動時から車型認識に基づいて洗車動作を開始する上記周知技術を適用し、その際に車検出手段として、車体の上下方向多数位置を一度に検出する上記周知の技術を適用して、上記相違点2-2に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点2-3について
引用発明2のトップノズルは、「車両の形状面に対し常に垂直方向に向けるようトップノズルボックスを回転させながら洗浄作業する」(記載事項エ)から、引用発明2において、門型フレームの駆動機構が、トップノズルの駆動機構の制御部と連携して制御されていることは自明のことである。また、引用発明2のトップブロアノズルは、「トップノズルボックスに付帯」されており、「トップノズルボックスに付帯するトップブロアノズルも同様に低い位置まで下げられるから、従来の門型洗車機では不可能であった車両の正面と後面のブロア作業が出来、乾燥仕上げ面積を広げることが出来る」(記載事項ク)ものであるから、同様に、その駆動機構が制御されていることは明らかであり、それらの制御を、他の駆動機構を制御する「ノズル上下方向制御装置」及び「ノズル左右方向制御装置」(車型認識手段)で合わせて行うことは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得たことである。
また、「いくつかの洗車コースから選択した洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部」を有し、「セット情報部のセット情報に基づいて」、検出情報(感知信号)を読み取って、「各駆動機構に制御信号を送る」自動洗車装置は周知のものである(例えば引用例3(甲第6号証):第3頁右上欄第17行?左下欄第6行等参照)。
そうすると、引用発明2に上記各周知技術を採用して、上記相違点2-3に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、これら相違点を総合して本件特許発明2が奏する作用効果も、上記引用発明2及び上記各周知技術から予測される程度以上のものでもない。

9.本件特許発明3と引用発明2との対比・判断
本件特許発明3と引用発明2とを対比すると、上記「8-2.」と同様の検討により、両者の一致点は、上記「8-2-1.」で認定したとおりのものと同じである。
そうすると、両者の相違点は次のとおりである。

9-1.相違点
(1)相違点3-1
本件特許発明3では、上部ノズルが駆動機構に付設された「移動台(7)に設けられ」、上部ノズルと駆動台との間にノズル姿勢変更機構が設けられており、「ノズル姿勢変更機構(51)は移動台(7)にモータ(41)及び支持ケース(42)を固定し、この支持ケース(42)の下部は昇降ドラム(6)に形成した溝(38)を挿通して下方に突出していて上部ノズル(8)を回動自在に支持し、前記モータ(41)は、移動台(7)に対して上部ノズル(8)を横軸廻り回動可能に構成」されているのに対して、引用発明2では、上部ノズルは、駆動機構に付設されているが、上部ノズルと駆動機構の間に「移動台」が介在するかどうかは不明であり、ノズル姿勢変更機構は、上部ノズルと昇降ドラムとを一体で姿勢変更するトップノズル回転方向駆動系である点。

(2)相違点3-2
本件特許発明3では、「車検出手段」は、光センサが「車体を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置」されて、「車体の外面形状」を検出するものであり、記憶部は、その「検出情報を時系列で記憶し」、上部ノズル及び側部ノズル及びブロア噴出手段は、「往動方向で車検出手段の後行側に位置して」、門型フレームの最初の往動時に、「車検出手段による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から」洗車動作を開始するものであるのに対して、引用発明2では、車検出手段は、光センサの個数は不明であって、上下方向多数位置を一度に検出するものではなく、「車両(車体)上表面」を検出するもので、上部ノズル及び側部ノズル及びブロア噴出手段との往動方向の配置関係は不明であり、最初の往動時に洗車動作を開始するものではあるが、記憶部は、「トップノズル19の高さ位置を洗車アーチ本体と車両との位置関係と共に」記憶して車型を認識し、当該車型認識に基づいて、次工程(復行時)で洗車動作を開始するものである点。

(3)相違点3-3
本件特許発明3では、「車体(2)が所定の洗車停車位置から前又は後に外れているとき及び昇降ドラム(6)が車体(2)に近づきすぎたときに洗車動作中のエラーとして検出するエラー検出手段」と、「エラー検出手段からの検出情報を記憶するエラー記憶部(L)」と、「門型フレーム(3)はエラー検出手段が検出した情報を表示するエラー表示部」とを備え、処理部は「エラー検出手段からの情報で駆動機構を制御する」のに対して、引用発明2はそのような構成を有しない点。

9-2.相違点についての検討・判断
(1)相違点3-1について
上記「8-3.」で相違点2-1について検討したとおり、上部ノズルと左右往復駆動機構の間に、「移動台」を介在させることは周知の技術であり(例えば上記引用例8,9等参照)、一般的にノズルをその取り付けられた基台となる装置上で姿勢変更機構を介して揺動させることは普通に行われていることである。
そして、上記引用例10(甲第11号証:第2頁右上欄第6行?右下欄第8行,第2,3図)には、自動洗車装置において、昇降ドラムに固定したモータ及びレバー22,23、連結杆24、受動部材26等の伝動部材を介して上部ノズルを回動可能とした姿勢変更機構が記載されているから、引用発明2に上記周知の移動台及び姿勢変更機構を設け、その際、引用例10記載のモーターや伝動部材等からなる上記姿勢変更機構の構成を適用して、上記相違点3-1に係る本件特許発明3に係る構成としたことは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、上記相違点3-1に係る構成における「昇降ドラム(6)に形成した溝(38)を挿通して下方に突出」している点は、引用発明2が、車体前後方向に移動する昇降ドラムにおいて、上部ノズルを左右に(車体幅方向に)往復移動して洗浄する装置であって、上部ノズルの噴出口が昇降ドラムより下方に突出していることも、引用例1の第3図に示されるように当然に想定されることであるから、引用発明2に上記周知技術及び引用例10記載の上記構成を適用するにあたって、当業者であれば適宜なし得た設計的事項にすぎない。
また、同じく上記相違点3-1に係る「上部ノズル(8)を横軸廻り回動可能に」支持している点は、上部ノズルを昇降ドラムの左右に(車体幅方向に)往復移動して洗浄する引用発明2に、上記周知の移動台及びノズルと基台装置の間に設けた姿勢変更装置を適用すれば、昇降ドラム全体を車体前後方向(横軸方向)に回動しなくとも、上部ノズルのみを車体前後方向(横軸方向)に回動すればよいことは、当業者であれば自明な事項と言えるから、引用例10記載の上記構成を適用するにあたって、当業者であれば適宜なし得た設計的事項にすぎない。

(2)相違点3-2について
上記相違点3-2は、上記相違点2-2と同じであるから、上記「8-3.」で検討したと同様の理由により、引用発明1において、次工程(復行時)ではなく、最初の往動時から車型認識に基づいて洗車動作を開始する周知技術(例えば、上記引用例2,3等参照)を適用し、その際に車検出手段として、車体の上下方向多数位置を一度に検出する周知の技術(例えば上記引用例3?5等参照)を適用して、上記相違点3-2に係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3-3について
「車体が所定の洗車停車位置から前又は後に外れている」ことを検出する「エラー検出手段」と、その「検出情報を記憶するエラー記憶部」と、門型フレームに「エラー検出手段が検出した情報を表示するエラー表示部」とを備えた洗車装置は、上記引用例6(甲第6号証:第2頁左上欄第18行?同右上欄第1行,第2頁右下欄第10行?第3頁左上欄第6行,第3頁右上欄第11行?同左下欄第19行,第5頁左上欄表1及び第19行?同右上欄第3行)に記載されている。
また、門型フレームに設けられ上部ノズルを備えた昇降ドラムが、「車体(2)に近づきすぎたときに洗車動作中のエラーとして検出する」エラー検出手段は周知のものである(例えば上記引用例8,9等参照)。
したがって、引用発明2に引用例6記載の事項及び上記各周知技術を適用して上記相違点3-3に係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者の容易に想到し得たことである。

また、これら相違点を総合して本件特許発明3が奏する作用効果も、上記引用発明2及び引用例6,10記載の事項並びに上記各周知技術から予測される程度以上のものでもない。

10.むすび
したがって、本件特許の請求項1?3に係る各発明は、引用発明1または2、及び引用例6、10記載の事項、上記各周知技術並びに上記本件特許出願前に公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動洗車方法及びその装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】洗車しようとする車体(2)に対して門型フレーム(3)を移動させながら、門型フレーム(3)に設けた車検出手段(4)で車体(2)の外面形状を検出し、この車検出手段(4)からの情報を時系列で記憶しておき、その記憶情報に基づいて、昇降ドラム(6)を昇降させて上部ノズル(8)を車体(2)の外面に一定間隔をおいて倣わせ、かつこの上部ノズル(8)を左右に移動させて洗浄液を噴出し、一方、側部ノズル(9)を昇降させて車体(2)の側面に洗浄液を噴出させる自動洗車方法であって、
前記門型フレーム(3)の最初の往動時に、門型フレーム(3)の前部に設けた上下に長い車検出手段(4)で車体(2)の上下方向多数位置を一度に検出して、これを門型フレーム(3)の移動に伴って上下各位置の検出情報を時系列で記憶して車型を認識し、この車型認識と平行して車型を認識した車体部分から車検出手段(4)より後行側に設けた前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)で洗車動作を開始しており、
前記昇降ドラム(6)を一旦降下させて車体(2)に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル(8)を車体(2)の端部下部位置に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラム(6)を昇降させながら上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズル(8)を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行い、前記上部ノズル(8)は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出することを特徴とする自動洗車方法。
【請求項2】洗車しようとする車体(2)に対して相対移動する門型フレーム(3)と、この門型フレーム(3)に設けられていて車体(2)の外面形状を検出する光センサ(11)を有する車検出手段(4)と、門型フレーム(3)に昇降自在に設けた昇降ドラム(6)と、この昇降ドラム(6)に左右移動自在に設けられた移動台(7)と、この移動台(7)に設けられている洗浄用上部ノズル(8)と、門型フレーム(3)の左右側部に昇降自在に設けられいる左右一対の洗浄用側部ノズル(9)と、車体(2)を乾燥させるブロワ噴出手段(10)と、前記車検出手段(4)からの情報を時系列で記憶しておいて門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)の各駆動機構を制御する車型認識手段(5)とを有し、
前記車検出手段(4)の光センサ(11)は車体(2)を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段(5)は上下位置の光センサ(11)からの検出情報を時系列で記憶する記憶部(A)と、いくつかの洗車コースから選択した洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部(B)と、セット情報部(B)のセット情報に基づいて前記記憶部(A)から情報を読み取って、門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)の各駆動機構に制御信号を送る処理部(C)とを有しており、前記上部ノズル(8)、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)は門型フレーム(3)の最初の往動時に車検出手段(4)による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段(4)より往動方向で後行側に位置しており、
前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更するノズル姿勢変更機構(51)を設け、
前記昇降ドラム(6)にはノズル姿勢変更機構(51)によって各姿勢に変更された上部ノズル(8)を左右に移動させるために前記移動台(7)を往復移動させる駆動機構(15)を設けていることを特徴とする自動洗車装置。
【請求項3】洗車しようとする車体(2)に対して相対移動する門型フレーム(3)と、この門型フレーム(3)に設けられていて車体(2)の外面形状を検出する光センサ(11)を有する車検出手段(4)と、門型フレーム(3)に昇降自在に設けた昇降ドラム(6)と、この昇降ドラム(6)内に左右移動自在に設けられた移動台(7)と、この移動台(7)に設けられている洗浄用上部ノズル(8)と、門型フレーム(3)の左右側部に昇降自在に設けられた左右一対の洗浄用側部ノズル(9)と、前記車検出手段(4)からの情報を時系列で記憶しておいて門型フレーム(3)、昇降ドラム(6)、移動台(7)、上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)の各駆動機構を制御する車型認識手段(5)と、洗車動作中のエラーを検出するエラー検出手段とを有し、
前記車検出手段(4)の光センサ(11)は車体(2)を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段(5)は上下各位置の光センサ(11)からの検出情報を時系列で記憶する記憶部(A)と、エラー検出手段からの検出情報を記憶するエラー記憶部(L)と、記憶部(A)及びエラー検出手段からの情報で駆動機構を制御する処理部(C)とを有しており、前記門型フレーム(3)はエラー検出手段が検出した情報を表示するエラー表示部を備えており、前記上部ノズル(8)及び側部ノズル(9)は門型フレーム(3)の最初の往動時に車検出手段(4)による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段(4)より往動方向で後行側に位置しており、
前記移動台(7)と上部ノズル(8)との間に、上部ノズル(8)を前記車型認識された車体(2)の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢(E)に姿勢変更するノズル姿勢変更機構(51)を設けており、
前記ノズル姿勢変更機構(51)は移動台(7)にモータ(41)及び支持ケース(42)を固定し、この支持ケース(42)の下部は昇降ドラム(6)に形成した溝(38)を挿通して下方に突出していて上部ノズル(8)を回動自在に支持し、前記モータ(41)は移動台(7)に対して上部ノズル(8)を横軸廻り回動可能に構成しており、
前記昇降ドラム(6)には、ノズル姿勢変更機構(51)によって各姿勢に変更された上部ノズル(8)を左右に移動させるために前記移動台(7)を往復移動させる駆動機構(15)を設けていることを特徴とする自動洗車装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ブラシを使用しないで車体を洗浄する自動洗車方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回転ブラシに代えて水の噴出によって車体を洗浄する従来技術としては、特開平1-178051号公報及び特開平3-220050号公報等に開示されたものがある。
この従来技術は、洗車しようとする車体に対して門型フレームを前後往復移動させながら、昇降ドラムを昇降させて上部ノズルを車体の外面に一定間隔をおいて倣わせ、かつこの上部ノズルを左右に移動させて、水、洗剤、ワックス又はそれらを組み合わせた洗浄液を噴出し、一方、側部ノズルを昇降させて車体の側面に洗浄液を噴出させるようになっている。
【0003】
この洗車動作には、洗剤散布、水洗浄(ワックス入り)、水洗浄、乾燥等があり、これらを組み合わせた各種コースが設定されており、門型フレームは短いコースで1往復、長いコースで2往復する。
各洗車動作においては、効果的に作業をするために上部ノズル、側部ノズル等を車体に対して常に最適位置に配置できるように、車体の外面をセンサで検出している。このセンサとしては車体に傷を付ける可能性のある接触型に代えて、光センサ等の無接触型が採用されているが、光センサからの検出信号を一定時間遅延して上部ノズル、側部ノズル等の駆動系に伝達するようになっており、門型フレームの往復各移動毎に検出するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術では、門型フレームは往時も復時も車体の検出をしなければならなく、往復各用にセンサを設ける必要があり、センサから各ノズルまで距離が離れているため、正確な車体検出が困難になっている。
本発明は、上下に長く配置された車検出手段で車体情報を時系列で検出して、門型フレームを1度往動するだけで、車体の車型を認識し、その検出途中から認識車型に基づいて、上部ノズル、側部ノズル等を車体に対して移動させることができるようにした自動洗車方法を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、上下に長く配置された車検出手段で車型情報を時系列で検出して、門型フレームを1度往動するだけで、車体の車型を認識し、その車型情報と門型フレームの最初の往動時に選択した洗車のセット情報とを比較演算して、車検出途中から上部ノズル、側部ノズル及びブロワ噴出手段等を車体に対して正確に移動させて、門型フレームの最初の往動時から車型認識と平行して洗車動作ができるようにした自動洗車装置を提供することを目的とする。
【0006】
更に、本発明は、エラー検出手段を設けて洗車動作中のエラーを検出できるようにし、各駆動機構を制御できるようにすると共にそのエラーもエラー表示部で表示できるようにした自動洗車装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明方法における課題解決のための具体的手段は、洗車しようとする車体2に対して門型フレーム3を移動させながら、門型フレーム3に設けた車検出手段4で車体2の外面形状を検出し、この車検出手段4からの情報を時系列で記憶しておき、その記憶情報に基づいて、昇降ドラム6を昇降させて上部ノズル8を車体2の外面に一定間隔をおいて倣わせ、かつこの上部ノズル8を左右に移動させて洗浄液を噴出し、一方、側部ノズル9を昇降させて車体2の側面に洗浄液を噴出させる自動洗車方法であって、
前記門型フレーム3の最初の往動時に、門型フレーム3の前部に設けた上下に長い車検出手段4で車体2の上下方向多数位置を一度に検出して、これを門型フレーム3の移動に伴って上下各位置の検出情報を時系列で記憶して車型を認識し、この車型認識と平行して車型を認識した車体部分から車検出手段4より後行側に設けた前記上部ノズル8及び側部ノズル9で洗車動作を開始しており、
前記昇降ドラム6を一旦降下させて車体2に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル8を車体2の端部下部位置に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラム6を昇降させながら上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズル8を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行い、前記上部ノズル8は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出することである。
【0008】
本発明装置における課題解決のための第1の具体的手段は、洗車しようとする車体2に対して相対移動する門型フレーム3と、この門型フレーム3に設けられていて車体2の外面形状を検出する光センサ11を有する車検出手段4と、門型フレーム3に昇降自在に設けた昇降ドラム6と、この昇降ドラム6に左右移動自在に設けられた移動台7と、この移動台7に設けられている洗浄用上部ノズル8と、門型フレーム3の左右側部に昇降自在に設けられいる左右一対の洗浄用側部ノズル9と、車体2を乾燥させるブロワ噴出手段10と、前記車検出手段4からの情報を時系列で記憶しておいて門型フレーム3、昇降ドラム6、移動台7、上部ノズル8、側部ノズル9及びブロワ噴出手段10の各駆動機構を制御する車型認識手段5とを有し、
前記車検出手段4の光センサ11は車体2を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段5は上下位置の光センサ11からの検出情報を時系列で記憶する記憶部Aと、いくつかの洗車コースから選択した洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部Bと、セット情報部Bのセット情報に基づいて前記記憶部Aから情報を読み取って、門型フレーム3、昇降ドラム6、移動台7、上部ノズル8、側部ノズル9及びブロワ噴出手段10の各駆動機構に制御信号を送る処理部Cとを有しており、前記上部ノズル8、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)は門型フレーム3の最初の往動時に車検出手段4による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段4より往動方向で後行側に位置しており、
前記移動台7と上部ノズル8との間に、上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更するノズル姿勢変更機構51を設け、
前記昇降ドラム6にはノズル姿勢変更機構51によって各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に移動させるために前記移動台7を往復移動させる駆動機構15を設けていることである。
【0009】
本発明装置における課題解決のための第2の具体的手段は、洗車しようとする車体2に対して相対移動する門型フレーム3と、この門型フレーム3に設けられていて車体2の外面形状を検出する光センサ11を有する車検出手段4と、門型フレーム3に昇降自在に設けた昇降ドラム6と、この昇降ドラム6内に左右移動自在に設けられた移動台7と、この移動台7に設けられている洗浄用上部ノズル8と、門型フレーム3の左右側部に昇降自在に設けられた左右一対の洗浄用側部ノズル9と、前記車検出手段4からの情報を時系列で記憶しておいて門型フレーム3、昇降ドラム6、移動台7、上部ノズル8及び側部ノズル9の各駆動機構を制御する車型認識手段5と、洗車動作中のエラーを検出するエラー検出手段とを有し、
前記車検出手段4の光センサ11は車体2を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段5は上下各位置の光センサ11からの検出情報を時系列で記憶する記憶部Aと、エラー検出手段からの検出情報を記憶するエラー記憶部Lと、記憶部A及びエラー検出手段からの情報で駆動機構を制御する処理部Cとを有しており、前記門型フレーム3はエラー検出手段が検出した情報を表示するエラー表示部を備えており、前記上部ノズル8及び側部ノズル9は門型フレーム3の最初の往動時に車検出手段4による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段4より往動方向で後行側に位置しており、
前記移動台7と上部ノズル8との間に、上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更するノズル姿勢変更機構51を設けており、
前記ノズル姿勢変更機構51は移動台7にモータ41及び支持ケース42を固定し、この支持ケース42の下部は昇降ドラム6に形成した溝38を挿通して下方に突出していて上部ノズル8を回動自在に支持し、前記モータ41は移動台7に対して上部ノズル8を横軸廻り回動可能に構成しており、
前記昇降ドラム6には、ノズル姿勢変更機構51によって各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に移動させるために前記移動台7を往復移動させる駆動機構15を設けていることである。
【0010】
【作用】
門型フレーム3が走行機構22によってレール23上を前進往動していくと、その前部に上下方向に多数配置された車検出手段4の光センサ11が車体2を端部(前部)から検出する。多数の光センサ11は車体2のあるところではオフになり、車体2のないところではオンのままであり、これを車型認識手段5の記憶部Aに外部情報としてインプットし、門型フレーム3の移動により車体2の全長にわたって時系列的に検出することにより、車体2の車型が認識され、洗車するべき車体2の外面を検出する。
【0011】
前記車検出手段4で車体2の車型を認識し始めてから、車型認識手段5の処理部Cでは、洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部Bのセット情報に基づいて記憶部Aから情報を読み取って、門型フレーム3、昇降ドラム6、移動台7、側部ノズル9及び上ブロワ噴出手段10A等に出力信号を送り、これらを作動しかつ制御する。
【0012】
前記車型を認識するのと平行して、車型を認識した車体部分から車検出手段4より後行側に設けた上部ノズル8及び側部ノズル9で洗車動作を開始する。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1?5において、自動洗車装置1は門型フレーム3を有し、この門型フレーム3は左右側部とそれを連結する上部とを有する門形状であり、洗車しようとする車体2に対して跨がって覆うように相対移動可能であり、この門型フレーム3に洗車に必要なすべての機器を搭載している。
【0014】
この門型フレーム3は左右側部の底部に設けた走行機構22で車輪25を駆動することによりレール23上を所要速度で走行可能である。この門型フレーム3には、車体2の外面を検出する車検出手段4と、昇降自在に設けた昇降ドラム6と、この昇降ドラム6に左右移動自在に設けられた移動台7と、この移動台7に設けられている洗浄用上部ノズル8と、左右側部に昇降自在に設けられた左右一対の洗浄用側部ノズル9と、各種駆動機器、タンク等が内蔵され、一側前面に操作パネルが設けられている。
【0015】
前記車検出手段4は上下に配列された多数の光センサ11を有する。この光センサ11は門型フレーム3の左右一側部に発光器11Aが、他方側部に受光器11Bが設けられており、光の直進性を利用して車体2の存在を検出する。
図1、6?8において、光センサ11は上下に24個の発光器11Aを配列しており、受光器11Bは光が車体2によって遮られることによりオンからオフに変化し、上下方向の光センサ11のオンとオフの境界が車体2の上面となり、車体2に対して門型フレーム3が走行することにより、1個の受光器11Bは経時的にオンからオフに変化し、光センサ11の時系列におけるオンとオフの境界が車体2の前後面となり、上下と時系列変化が車体2の傾斜面となる。尚、図6は乗用車の車型、図7はトラックの車型の読み取り例をそれぞれ示している。
【0016】
この光センサ11からの情報は、コンピュータ30の記憶部Aに時系列で記憶される。このコンピュータ30には洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部Bと、セット情報部Bのセット情報に基づいて前記記憶部Aから情報を読み取って、自動洗車装置1の各機器に制御信号を送る処理部Cとを有し、車型認識手段5を構成している。
【0017】
図1?5、9、10において、昇降ドラム6は四角箱状に形成されており、その左右両端は門型フレーム3の左右側部内に配置されたドラム昇降機構31のチェーン32に連結され、モータ33の駆動により昇降される。34U、34Dは昇降ドラム6の昇降範囲を設定している上下センサである。
この昇降ドラム6内にはガイドレール35を介して移動台7が左右方向移動自在に設けられている。36は移動台7に連結したタイミングベルトであり、モータ37と共に移動台7の駆動機構15を構成している。
【0018】
14は昇降ドラム6内部に設けられた左右一対のセンサで、移動台7が移動してきたことを検出し、駆動機構15を直ちに逆転するか又は一定時間後に逆転する。即ち、移動台7をセンサ14の位置で逆転すると、移動台7の移動範囲は図1に示す範囲Jとなり、移動台7をセンサ14の位置から一定距離離して逆転すると、移動台7の移動範囲は範囲Kとなり、2種類の車体幅に対応して、移動台7の移動距離を設定できる。
【0019】
この移動台7の移動範囲の選択は手動で行うこともできるが、図1に示すように、接触型又は無接触型の車幅センサ39を左右一対設けておいて、自動的に車幅を検出して、一定以上の車幅であれば範囲Kで移動台7が往復移動するようにしておくことが好ましい。尚、センサ14、39を左右複数対づつ設けると、上部ノズル8の移動距離を3種類以上に設定できる。
【0020】
移動台7には支持台40にモータ41及び支持ケース42が固定され、この支持ケース42の下部は昇降ドラム6に形成した溝38を挿通して下方に突出し、上部ノズル8を回動自在に支持している。
図11、12において、前記支持ケース42には上下軸43、44が支持され、両軸43、44に固定のギヤ45、46にはタイミングベルト47が巻き掛けられ、上軸43はモータ41の出力軸41Aと直結され、下軸44には上部ノズル8の本体12が固定されている。従って、モータ41を駆動すると上軸43が回転し、タイミングベルト47及び下軸44を介して上部ノズル8が横軸回りに回動する。
【0021】
上部ノズル8は横向きの本体12から下方に突出する1つの噴出金具13と、この噴出金具13に対して直径方向にあるホース接続金具48とを有し、噴出金具13は詳しくは図示していないが、洗剤を噴霧する状態と、水をへら状にして噴射する状態とに変更可能になっている。
前記支持台40には3個の近接スイッチ49が設けられ、出力軸41Aに設けた作動片50によって作動可能になっており、この近接スイッチ49はモータ41を制御するものであり、上部ノズル8を3回動位置で停止させる。
【0022】
即ち、上部ノズル8は回動することにより、噴出金具13を図2に示すように、下向き姿勢Eと前後下斜め向き姿勢F、Gとに姿勢変更可能であり、その姿勢を設定しているのが近接スイッチ49であり、モータ41及び支持ケース42内の伝達手段によって上部ノズル8を姿勢変更するノズル姿勢変更機構51が構成されている。
【0023】
尚、前記ノズル姿勢変更機構51は近接スイッチ49の位置を変更して、上部ノズル8を下向き姿勢Eから前後に90度づつ回動可能にし、前向き水平姿勢と後向き水平姿勢とに姿勢変更するようにしても良い。
前記ホース接続金具48はホース52、電磁切り換えバルブ等を介して噴射ポンプに接続され、噴射ポンプは洗剤タンク16、水タンク17及びワックスタンク53等(図1、4に示す)に接続され、1個の上部ノズル8から洗剤、水及びワックス入り水等の洗浄液を適宜噴出する。
【0024】
前記移動台7にはまた、ドラム衝突防止手段54が設けられている。このドラム衝突防止手段54は、溝38から前後に突出したひげ状の接触片55の前後動を検出する第1センサ56と、溝38から下方に突出したひげ状の接触片57の上下動を検出する第2センサ58とを有する。
このドラム衝突防止手段54は車型認識手段5の故障により、昇降ドラム6が車体2に対して前後方向及び上下方向に近づきすぎたときに、接触片55、57が車体2に接触することにより作動して、近づきすぎを検出して昇降ドラム6の
昇降又は門型フレーム3の走行を停止する。
【0025】
前記ドラム衝突防止手段54はエラー検出手段としてコンピュータ30の処理部Cに検出情報が伝達され、その作動は図8に示すように、エラー記憶部Lに記憶されると共に、現エラー表示部Mにエラーとして表示される。
図1?5において、左右各側部ノズル9は洗剤ノズル9Aと水ノズル9Bとに分かれており、両ノズル9A、9Bは門型フレーム3の左右側部内のノズル昇降機構59のタイミングベルト60に連結され、モータ61の駆動により昇降される。62U、62Dは昇降ドラム6の最大昇降範囲を設定している上下センサである。この側部ノズル9は車型認識手段5からの指令制御により、車体2の洗車部位の高さに応じて上昇高さPから上昇高さQまで変化し、洗剤及び水等をムダにしないようになっている。また、側部ノズル9は昇降速度が速いので、チェーンでなく、タイミングベルト60で騒音がでないように駆動している。
【0026】
門型フレーム3における側部ノズル9の突出溝63は、内方向きではなく前向きに開口しており、側部ノズル9は基部が屈曲していて先端が内方に向けられており、突出溝63から門型フレーム3内に可及的に水が入らないようになっている。この洗剤ノズル9Aと水ノズル9Bはそれぞれ、ホース、電磁切り換えバルブ等を介して噴射ポンプに接続され、各噴射ポンプは洗剤タンク16又は水タンク17及びワックスタンク53等に接続され、洗剤ノズル9Aは洗剤のみ、水ノズル9Bは水又はワックス入り水を噴出する。
【0027】
前記上部ノズル8及び側部ノズル9用の洗剤噴射ポンプ及び水噴射ポンプ18、洗剤タンク16、水タンク17並びにワックスタンク53は、門型フレーム3の左右側部内に配置されており、水タンク17は外部の水道管とホースを介して接続されている。この水タンク17を門型フレーム3内に配置することにより、水噴射ポンプ18から上部ノズル8及び側部ノズル9までの距離がきわめて短くなり、洗剤用又はワックス用と同様に、所要水圧を得るのに小さなポンプ及びモータで賄うことができるようになる。
【0028】
門型フレーム3の左右側部の内面には、図2に示すように、前記各種噴射ポンプを保守・点検したり各種タンクに洗剤・ワックス等を補給したりするために、メンテナンス用のドア19を設けている。このドア19は門型フレーム3の左右側部の内面に設けることにより、門型フレーム3の周囲にドア19から出入りするための空間を必要とせず、自動洗車装置1の設置スペースを小さくできる。
【0029】
図1?5、13において、10は車体2乾燥用のブロワ噴出手段であり、上ブロワ噴出手段10Aと左右一対の横ブロワ噴出手段10Bとを有する。左右一対の横ブロワ噴出手段10Bは門型フレーム3の左右側部内に設けられ風噴出口は内方に向けられており、位置固定であるが、上下動するようにしても良い。
上ブロワ噴出手段10Aは左右一対の風噴出室66を有するブロワ噴出体24を複数本の棒材で形成した支持部材67を介して昇降体68に連結し、この昇降体68をチェーン、モータ等からなるブロワ駆動機構69で昇降可能にし、前記ブロワ噴出体24に左右一対の蛇腹ホース70を介してブロワモータ71で駆動されるブロワファン72と接続して構成している。73U、73Dはブロワ噴出体24の昇降範囲を設定している上下センサである。
【0030】
前記ブロワ噴出体24の左右中央部にはブロワ衝突防止手段74が設けられている。このブロワ衝突防止手段74は図13に示すように、軸受体75に枢支された軸76に、前後に突出したひげ状の接触片77と作動片78とを設け、この作動片78の回動を近接スイッチ79で検出するようになっており、接触片77が車体2に接触することにより揺動して、作動片78を回動することにより、車体2に近づきすぎを検出してブロワ噴出体24の下降又は門型フレーム3の走行を停止する。
【0031】
前記ブロワ衝突防止手段74もエラー検出手段としてコンピュータ30の処理部Cに検出情報が伝達され、その作動はエラー記憶部Lに記憶されると共に、現エラー表示部Mにエラーとして表示される。
エラー検出手段としては、前記ドラム衝突防止手段54、ブロワ衝突防止手段74の他に、車型認識手段5で検出する車体2の洗車位置不良検出、各駆動機構作動不良及び噴射用ポンプの作動不良等を検出する機器等があり、それぞれ検出情報はコンピュータ30の処理部Cに伝達され、エラー記憶部Lに記憶され、現エラー表示部Mにエラーとして表示され、かつ必要に応じて過去エラー表示部Nで数回前の過去のエラーまで表示可能になっている。
【0032】
前記走行機構22、ドラム昇降機構31、移動台駆動機構15、ノズル姿勢変更機構51、ブロワ駆動機構69等の駆動機器にはインバータが使用され、ノズル昇降機構59にはサーボドライバが使用されている。
次に、前記実施例に示した自動洗車装置1における洗車方法を、図8、14、15を参照しながら説明する。
【0033】
車体2を門型フレーム3に対して洗車所定位置に停止させ、操作パネルで水洗浄・乾燥コース、洗剤散布・水洗浄(ワックス入り)・乾燥コース、洗剤散布・水洗浄(ワックス入り)・水洗浄・乾燥コース等を選択して洗車スタートさせる。
門型フレーム3が走行機構22によってレール23上を前進往動していくと、その前部に配置された車検出手段4の光センサ11が車体2を端部(前部)から検出し、車型認識手段5の記憶部Aに外部情報としてインプットし、門型フレーム3の移動により車体2の全長にわたって検出することにより、車体2の車型が認識される。
【0034】
前記車検出手段4で車体2の車型を認識し始めてから、車型認識手段5の処理部Cでは、洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部Bのセット情報に基づいて記憶部Aから情報を読み取って、門型フレーム3、昇降ドラム6、移動台7、側部ノズル9及びブロワ噴出手段10等に出力信号を送り、これらを制御する。
【0035】
万一、車体2が所定の洗車停止位置から前又は後に外れている場合は、車検出手段4による車型認識が正常に行われないので、エラーが検出され、門型フレーム3の走行が停止される。
洗剤散布・水洗浄(ワックス入り)・水洗浄・乾燥コースを選択した場合、門型フレーム3の第1回往動時に洗剤散布行程が、第1回復動時に水洗浄(ワックス入り)行程が、第2回往動時に水洗浄行程が、第2回復動時に乾燥行程がそれぞれ行われ、各行程に応じて洗浄液が選択される。
【0036】
上部の洗剤散布行程は、図14に実線で示すように、昇降ドラム6を一旦降下させて車体2に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル8を前斜め下向き姿勢Fにして車体2の端部下部位置に対向させ、洗剤を噴霧状にして散布する。こうして車体2の前面が終わると、昇降ドラム6を上昇させながら上部ノズル8を下向き姿勢Eに姿勢を変えてボンネット上面に、前斜め下向き姿勢Fに変えてフロントガラスに、下向きに変えてルーフに、後斜め下向き姿勢Gに変えてリヤガラスに、下向きに変えてトランクリッドに、後斜め下向き姿勢Gに変えてリヤバンパに順次洗剤を散布していく。
【0037】
側部の洗剤散布行程は、上部洗剤散布と略同時に行われ、図14に2点鎖線で示すように、側部ノズル9を下部位置から昇降往復動させながら、洗剤ノズル9Aから洗剤を噴霧状にして散布し、車体2の側面の洗浄面の細部に至るまでむらなく吹き付ける。車体2の上面の高さは前後方向各位置によって異なり、ボンネットでは低く、ルーフでは高く、ガラス面ではその中途高さもあり、側部ノズル9の移動速度は、車体2の上面高さが低いところでは遅く、高いところでは速くなり、中途高さでは中程度の速度となり、略一定の時間で1往復する。
【0038】
前記洗剤散布行程では、洗剤を噴霧して車体2の表面に付着した汚れを浮き上がらせる。前記上部の洗剤散布行程では、洗剤を噴霧するので、洗浄行程よりノズルを車体2から遠くに離して行われる。
上部の洗浄行程は、洗剤散布行程が完了した後、図14に1点鎖線で示すように、門型フレーム3を復動させながら行われる。昇降ドラム6を一旦降下させて車体2に対して一定間隔(洗剤散布行程より近い位置)をおいて配置すると共に、上部ノズル8を後斜め下向き姿勢Gにして車体2の端部下部位置に対向させ、ワックス入りの水を噴出し、前後に広いヘラ状になった高水圧の噴流を洗浄面の細部に至るまでむらなく吹き付けていく。
【0039】
このように洗剤散布行程と同様にして、車体2の全上面及び前後面に上部ノズル8の姿勢を変えながらワックス入りの水を噴出し、ワックスのミクロ粒子を含んだ高水圧水で汚れの層を削り取り、同時にワックス分を洗浄面に展開密着させ、光沢と高い防錆効果をもたらす。
側部の洗浄行程は上部洗浄行程と略同時に行われ、側部ノズル9の水ノズル9Bからワックス入りの水を噴出する。この場合も車体2の上面の高さに応じて側部ノズル9の移動速度は変化し、略一定の時間で1往復する。
【0040】
次に、第2回目の往動(図14の実線)で車体2の前側から上部水洗浄行程と側部水洗浄行程とが行われる。これらの上部水洗浄行程と側部水洗浄行程とは、門型フレーム3の移動方向が逆になり、ワックスの入らない水を使用するだけで、前記上部洗浄行程と側部洗浄行程と略同様であり、洗剤及びワックスを高水圧で洗い流して仕上げをする。
【0041】
そして、各洗浄行程では、バックミラーやアンテナ等の突起物があっても、ブラシのような巻き付きやボディの塗装面を傷付けることなく行われ、コンピュータからの制御によって水圧も調整される。また、上部洗浄行程及び上部水洗浄行程で、車体2の幅が小さいとき、操作パネルからの信号により、移動台7の移動距離はセンサ14までの短距離区間となり、幅が大きいときにはセンサ14を越えて一定距離移動する長距離区間となる。
【0042】
乾燥行程は、すすぎが終わって門型フレーム3が車体2の最後端まで行くとストップして自動的に乾燥用ブロワ行程に切り替わり、上ブロワ噴出手段10Aが作動して、図14の点線軌跡を通って、ブロワ噴出体24を上部ノズル8と同様に昇降往復動作させながら、車体2の上部から風を吹き付け、門型フレーム3が元の位置まで移動する間に車体2上の水滴をムラなく吹き飛ばして乾燥する。そして、車体2の正面の下部まで乾燥し終わると停止し、ブロワ噴出体24が最上部へ上がって止まる。
【0043】
尚、水洗浄・乾燥コースを選択した場合は、門型フレーム3は1往復し、洗剤散布・水洗浄(ワックス入り)・乾燥コースを選択した場合は、門型フレーム3は洗剤散布行程を終了してから何も作業をせずに元位置にもどり(図14に1点鎖線で示す)、次の1往復で水洗浄(ワックス入り)及び乾燥作業をする。
洗剤散布、水洗浄(ワックス入り)、水洗浄、乾燥の各行程中に、何らかの理由により、ドラム衝突防止手段54、ブロワ衝突防止手段74等が作動するとエラーが検出され、昇降ドラム6の昇降又は門型フレーム3の走行等が停止すると共に、図8に示すように、その情報は処理部Cにインプットされ、現エラーとして表示部Mに表示される。過去何回かのエラーを知りたいときは、エラー記憶部Lから出力して過去エラー表示部Nに表示することができる。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、門型フレーム3の最初の往動時に、門型フレーム3の前部に設けた上下に長い車検出手段4で車体2の上下方向多数位置を一度に検出して、これを門型フレーム3の移動に伴って上下各位置の検出情報を時系列で記憶して車型を認識し、この車型認識と平行して車型を認識した車体部分から車検出手段4より後行側に設けた前記上部ノズル8及び側部ノズル9で洗車動作を開始しており、前記昇降ドラム6を一旦降下させて車体2に対して一定間隔をおいて配置すると共に、上部ノズル8を車体2の端部下部位置に対向させて左右に移動しながら洗浄液を噴出し、洗車動作中に昇降ドラム6を昇降させながら上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更し、これらの各姿勢に変更した上部ノズル8を左右往復移動しながら洗浄液の噴出を行い、前記上部ノズル8は、洗剤は噴霧し、水は前後に広いヘラ状にして噴出するので、門型フレーム3を1度往動するだけで、車型を認識して記憶しながら、その車検出途中からその認識車型に基づいて洗車動作をさせることができ、迅速かつ効率良く、しかも正確に洗車することができ、さらに、各姿勢に変更された上部ノズル8を洗剤噴霧状態と水ヘラ状噴出状態とに使い分けることができ、水を前後に広い範囲で洗浄面の細部にいたるまでむらなく噴出できる。
【0045】
また、車検出手段4の光センサ11は車体2を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段5は上下各位置の光センサ11からの検出情報を時系列で記憶する記憶部Aと、いくつかの洗車コースから選択した洗車のセット情報をプログラムしてあるセット情報部Bと、セット情報部Bのセット情報に基づいて前記記憶部Aから情報を読み取って、門型フレーム3、昇降ドラム6、移動台7、上部ノズル8、側部ノズル9及びブロワ噴出手段10の各駆動機構に制御信号を送る処理部Cとを有しており、前記上部ノズル8、側部ノズル(9)及びブロワ噴出手段(10)は門型フレーム3の最初の往動時に車検出手段4による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段4より往動方向で後行側に位置しており、前記移動台7と上部ノズル8との間に、上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更するノズル姿勢変更機構51を設け、前記昇降ドラム6にはノズル姿勢変更機構51によって各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に移動させるために前記移動台7を往復移動させる駆動機構15を設けているので、車体2の検出情報といくつかの洗車コースから選択した洗車のセット情報との比較演算によって、車検出途中からその認識車型及びセット情報に基づいて迅速かつ正確な洗車動作をさせることが可能になり、洗車動作を迅速かつ効率よくすることができ、さらに、各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に往復移動させながら洗浄液を噴出でき、さらにまた、ノズル姿勢変更機構51は昇降ドラム6に比べて小型部品である上部ノズル8を移動台7に対して姿勢変更すればよく、構成が簡単でかつ安価に製作できる。
【0046】
更に、本発明は、車検出手段4の光センサ11は車体2を上下方向多数位置で一度に検出すべく上下方向に多数配置しており、前記車型認識手段5は上下各位置の光センサ11からの検出情報を時系列で記憶する記憶部Aと、エラー検出手段からの検出情報を記憶するエラー記憶部Lと、記憶部A及びエラー検出手段からの情報で駆動機構を制御する処理部Cとを有しており、前記門型フレーム3はエラー検出手段が検出した情報を表示するエラー表示部を備えており、前記上部ノズル8及び側部ノズル9は門型フレーム3の最初の往動時に車検出手段4による車型認識と平行して車型を認識した車体部分から洗車動作を開始するべく車検出手段4より往動方向で後行側に位置しており、前記移動台7と上部ノズル8との間に、上部ノズル8を前記車型認識された車体2の前後面、上面の各面に対向する前後向き姿勢、下向き姿勢Eに姿勢変更するノズル姿勢変更機構51を設けており、前記ノズル姿勢変更機構51は移動台7にモータ41及び支持ケース42を固定し、この支持ケース42の下部は昇降ドラム6に形成した溝38を挿通して下方に突出していて上部ノズル8を回動自在に支持し、前記モータ41は移動台7に対して上部ノズル8を横軸廻り回動可能に構成しており、前記昇降ドラム6には、ノズル姿勢変更機構51によって各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に移動させるために前記移動台7を往復移動させる駆動機構15を設けているので、門型フレーム3を1度往動するだけで、車型を認識して記憶しながら、その検出途中からその認識車型に基づいて洗車動作をさせることができ、しかもその洗車動作中にエラーを検出すると停止等の処理ができ、洗車及びエラー処理の迅速かつ効率化と、エラー表示によりメンテナンスの容易化を図ることができ、さらに、各姿勢に変更された上部ノズル8を左右に往復移動させながら洗浄液を噴出でき、さらにまた、ノズル姿勢変更機構51は昇降ドラム6に比べて小型部品である上部ノズル8をモータ41で横軸廻り回動すればよく、構成が簡単でかつ安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例を示す正面図である。
【図2】
図1のX-X線断面図である。
【図3】
図1のY-Y線断面図である。
【図4】
図1の断面右側面図である。
【図5】
一部断面平面図である。
【図6】
乗用車の車型読み取り例を示す説明図である。
【図7】
トラックの車型読み取り例を示す説明図である。
【図8】
制御説明図である。
【図9】
昇降ドラムの内部の構造を示す平面図である。
【図10】
移動台及び上部ノズルを示す断面斜視図である。
【図11】
ノズル姿勢変更機構及びドラム衝突防止手段を示す断面正面図である。
【図12】
図11の平面図である。
【図13】
ブロワ衝突防止手段の断面正面図である。
【図14】
洗車動作を示す説明図である。
【図15】
洗車動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 自動洗車装置
2 車体
3 門型フレーム
4 車検出手段
5 車型認識手段
6 昇降ドラム
7 移動台
8 上部ノズル
9 側部ノズル
10 ブロワ噴出手段
11 光センサ
15 移動台駆動機構
31 ドラム昇降機構
51 ノズル姿勢変更機構
59 側部ノズル昇降機構
69 ブロワ駆動機構
30 コンピュータ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-01-18 
結審通知日 2008-01-25 
審決日 2008-02-05 
出願番号 特願平5-108593
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B60S)
最終処分 成立  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 柴沼 雅樹
山内 康明
登録日 1998-10-02 
登録番号 特許第2834385号(P2834385)
発明の名称 自動洗車方法及びその装置  
代理人 落合 健  
代理人 山本 淳也  
代理人 安田 敏雄  
代理人 国立 久  
代理人 ▲ぬで▼島 愼二  
代理人 安田 幹雄  
代理人 安田 幹雄  
代理人 国立 久  
代理人 山本 淳也  
代理人 仁木 一明  
代理人 安田 敏雄  

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