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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B05C
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B05C
審判 全部無効 2項進歩性  B05C
管理番号 1176147
審判番号 無効2006-80277  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-12-27 
確定日 2008-03-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3103358号発明「回転式塗布装置および回転式塗布方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3103358号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3103358号(以下、「本件特許」という。)の出願は、平成5年5月27日に特許出願された特願平5-151567号(以下、このもとの特許出願を、「親原出願」という。)の一部を分割して、新たな特許出願として平成11年2月8日に出願した特願平11-29777号(以下、このもとの特許出願を、「子原出願」という。)の、さらにその一部を分割して、新たな特許出願として平成12年5月16日に出願した特願2000-143640号(以下、「本件分割特許出願」という。)であって、その請求項1ないし請求項9に係る発明について平成12年8月25日に設定登録され、その後、本件無効審判請求人の株式会社エイブル(以下、「請求人」という。)により上記本件特許の請求項1ないし請求項9に係る発明の特許に対して平成18年12月27日に本件無効審判〔無効2006-80277〕が請求されたものであり、無効審判被請求人の大日本スクリーン製造株式会社(以下、「被請求人」という。)により指定期間内の平成19年4月2日付けの審判事件答弁書及び同日付けの訂正請求書が提出され、前記審判事件答弁書副本及び訂正請求書副本を前記請求人に送付したところ、前記請求人により指定期間内の平成19年5月29日付けの審判事件弁駁書が提出され、請求人の主張する無効理由に新たな証拠方法として甲第7号証〔平成17年(行ケ)第10796号審決取消請求事件に関する平成18年11月30日判決言渡の判決文〕及び甲第8号証〔平成17年(行ケ)第10271号審決取消請求事件に関する平成18年2月14日判決言渡の判決文〕が追加されたものである。
その後、当審は、平成19年10月26日に口頭審理を開廷すべく、前記審判事件弁駁書副本を請求人に送付し、さらに、当審の職権による審理結果としての、本件分割特許出願に関する分割要件違反を前提として、訂正請求後の本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る各発明(以下、請求項順に「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)についての、特開平11-285663号公報、特開平11-267574号公報、甲第1号証及び甲第2号証、並びに、甲第3号証及び甲第4号証の各刊行物に記載の各発明に基づく進歩性要件の欠如(特許法第29条第2項違反)と、本件訂正明細書における発明の明確性の要件、サポート要件及び実施可能要件の各要件の欠如(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)を内容とする無効理由通知〔後記の「第3 当審の審理」欄の「3」及び「4」を参照。〕を、請求人及び被請求人の両当事者双方に対して平成19年8月14日にファクシミリにより送信した上で、前記口頭審理の期日の2週間前までに、前記審判事件弁駁書及び当審の職権による無効理由通知に関する請求人及び被請求人からの意見等を纏めた口頭審理陳述要領書の提出を求めたところ、被請求人から平成19年10月12日付けの口頭審理陳述要領書が提出され、また請求人から平成19年10月26日付けの口頭審理陳述要領書が提出されたものである。
そして、当審により平成19年10月26日の期日に口頭審理が公開で開廷され、請求人は平成18年12月27日付け審判請求書、平成19年5月29日付け審判事件弁駁書及び平成19年10月26日付け口頭審理陳述要領書に基づいて陳述し、また、被請求人は、平成19年4月2日付け審判事件答弁書、平成19年4月2日付け訂正請求書及び平成19年10月12日付け口頭審理陳述要領書に基づいて陳述をした。
なお、平成19年10月26日期日の口頭審理における、審判事件弁駁書における請求人の主張に対する被請求人の意見、並びに、当審の職権による無効理由通知に関する請求人及び被請求人の意見を含む両当事者の陳述は、第1回口頭審理調書に記載のとおりである。

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、「特許第3103358号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、下記の甲第1号証ないし甲第4号証を提出して、以下の無効理由を主張する。その無効理由の要点は、次のとおりである。
〔無効理由1〕:本件分割特許出願は、分割要件を満たしていないことにより、本件分割特許出願の出願日が子原出願の出願日である平成11年2月8日に繰り下がることを前提に、本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当して特許を受けることができないか、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基づいて、子原出願の出願前当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第1号証:特開平6-338447号公報〔親原出願である特願平5-151567号の公開特許公報〕

〔無効理由2〕:本件分割特許出願は、分割要件を満たしていないことにより、本件分割特許出願の出願日が子原出願の出願日である平成11年2月8日に繰り下がることを前提に、本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当して特許を受けることができないか、あるいは、甲第2号証に記載された発明に基づいて、子原出願の出願前当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第2号証:特開平7-66108号公報

〔無効理由3〕:本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、親原出願の出願前に日本国内において頒布された甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、親原出願の出願前当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第3号証:特開平4-341367号公報
甲第4号証:特開平4-146615号公報

〔無効理由4〕:本件特許の明細書及び図面の記載と特許請求の範囲の記載は、それぞれ特許法第36条第4項第1号と同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2 被請求人の主張
被請求人は、請求人の前記主張に対し、平成19年4月2日付けの訂正請求書を提出するとともに、乙第1号証ないし乙第19号証を提出して、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、「本件特許に係る分割出願は適法であって、本件請求項1ないし請求項4に係る発明は特許法第123条第1項第2号に該当せず、また、本件特許は全ての請求項1ないし請求項4について特許法第123条第1項第4号に該当しない。よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。」旨を主張した。

第3 当審の審理
1 訂正請求の訂正の適否についての判断
(1)訂正請求の内容
被請求人は、請求人の無効審判請求書副本の送付を受けて、平成19年4月2日付の訂正請求書を提出し、その訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)に記載された次のとおりのものである。
ア 〔訂正事項1〕 本件分割特許出願の特許査定時の明細書又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項2、請求項3、請求項6、請求項7及び請求項8を削除する。

イ 〔訂正事項2〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記位置決め機構は、前記進退部材が上昇して前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材から離脱させる際に、前記塗布処理空間形成部材が基板支持部材と結合した状態で塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とするよう構成され、
当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されていることを特徴とする回転式塗布装置。」
の記載を、
「【請求項1】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、
前記位置決め機構は、前記進退部材が上昇して前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材から離脱させる際に、前記塗布処理空間形成部材が基板支持部材と結合した状態で塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とするよう構成され、
当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されていることを特徴とする回転式塗布装置。」
と訂正する。

ウ 〔訂正事項3〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項4の、
「【請求項4】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布方法において、
上部が開口したケース内に回転可能に設けられた基板支持部材にて基板を支持する工程と、
基板支持部材に支持した基板に塗布液を供給する工程と、
前記ケースの開口を閉じ部材により閉じるとともに、塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材と結合させて塗布処理空間を形成し、前記塗布処理空間形成部材と基板支持部材とを前記ケースに対して回転可能状態とする工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材とを回転させて基板上の塗布液を拡散流動させる工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材の回転を停止させる工程と、
前記基板支持部材と結合したままの前記塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とする工程と、
位置決め状態とされている前記塗布処理空間形成部材を上昇させて前記基板支持部材から離脱させる工程と、
を備えたことを特徴とする回転式塗布方法。」
の記載を、
「【請求項4】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布方法において、
上部が開口したケース内に回転可能に設けられた基板支持部材にて基板を支持する工程と、
基板支持部材に支持した基板に塗布液を供給する工程と、
進退部材により塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させて、前記進退部材と一体の閉じ部材により前記ケースの開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材と結合させて塗布処理空間を形成し、前記塗布処理空間形成部材と基板支持部材とを前記ケースに対して回転可能状態とする工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材とを回転させて基板上の塗布液を拡散流動させる工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材の回転を停止させる工程と、
前記基板支持部材と結合したままの前記塗布処理空間形成部材を凹凸結合により周方向で位置決め状態とする工程と、
位置決め状態とされている前記塗布処理空間形成部材を上昇させて前記基板支持部材から離脱させる工程と、
を備えたことを特徴とする回転式塗布方法。」
と訂正する。

エ 〔訂正事項4〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項5の、
「【請求項5】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記吊持機構は、
前記塗布処理空間形成部材の上側中央部に立設された取付部材と、
前記取付部材の上部から水平方向に延在する第1の部材と、
前記進退部材に設けられ、前記第1の部材の下方で前記取付部材に沿って相対昇降可能な第2の部材とを備えて、
前記塗布処理空間形成部材と前記基板支持部材との結合時には、前記第2の部材に対して前記取付部材および前記第1の部材が相対回転自在となるように設けられており、
前記位置決め機構は、
前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とする
ことを特徴とする回転式塗布装置。」
の記載を、
「【請求項5】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、
前記吊持機構は、
前記塗布処理空間形成部材の上側中央部に立設された取付部材と、
前記取付部材の上部から水平方向に延在する第1の部材と、
前記進退部材に設けられ、前記第1の部材の下方で前記取付部材に沿って相対昇降可能な第2の部材とを備えて、
前記塗布処理空間形成部材と前記基板支持部材との結合時には、前記第2の部材に対して前記取付部材および前記第1の部材が相対回転自在となるように設けられており、
前記位置決め機構は、
前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とする
ことを特徴とする回転式塗布装置。」
と訂正する。

オ 〔訂正事項5〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の前記〔訂正事項3〕に係る請求項4を請求項2に繰り上げて、「【請求項4】」を、「【請求項2】」と訂正する。

カ 〔訂正事項6〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の前記〔訂正事項4〕に係る請求項5を請求項3に繰り上げて、「【請求項5】」を、「【請求項3】」と訂正する。

キ 〔訂正事項7〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項9を請求項4に繰り上げて、
「【請求項9】 請求項5に記載の回転式塗布装置において、 前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、
前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されることを特徴とする回転式塗布装置。」の記載を、
「【請求項4】 請求項3に記載の回転式塗布装置において、 前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、
前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されることを特徴とする回転式塗布装置。」と訂正する。

(2)本件訂正請求の訂正の目的の適否について
ア 上記〔訂正事項1〕の訂正は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項2、請求項3、請求項6、請求項7及び請求項8を削除する訂正であるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法第1条の規定による改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

イ 上記〔訂正事項2〕の訂正は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1に「前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、」の限定事項を追加することにより、請求項1に係る発明の構成を減縮する訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

ウ 上記〔訂正事項3〕の訂正は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項4に「進退部材により塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させて、前記進退部材と一体の閉じ部材により前記ケースの開口を閉じる」及び「凹凸結合により」の限定事項を追加することにより、請求項4に係る発明の構成を減縮する訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

エ 上記〔訂正事項4〕の訂正は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項5に「前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、」の限定事項を追加することにより、請求項5に係る発明の構成を減縮する訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

オ 上記〔訂正事項5〕ないし〔訂正事項7〕の訂正は、請求項2、請求項3、請求項6、請求項7及び請求項8を削除する〔訂正事項1〕の訂正に伴い、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項4、請求項5及び請求項9の記載を、本件訂正請求の訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるための訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第3号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

カ したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項7〕の訂正は、いずれも平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。

(3)新規事項の有無及び実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
ア 本件訂正請求の本件特許明細書等の特許請求の範囲の減縮を目的とする上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項4〕の訂正、並びに、明りようでない記載の釈明を目的とする上記〔訂正事項5〕ないし〔訂正事項7〕の訂正は、いずれも本件特許明細書等、すなわち本件分割特許出願の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であると認める。
したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項7〕の訂正は、いずれも平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書の規定に適合する。

イ また、本件訂正請求の上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項7〕の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項7〕の訂正は、いずれも特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合する。

(4)本件訂正請求に対する独立特許要件の有無について
本件の特許無効審判の請求の趣旨に係る特許発明は、請求項1ないし請求項9に係る発明であり、また、特許無効審判の請求がされている請求項1、請求項2、請求項3及び請求項4に係る発明についての訂正が、上記「(2)本件訂正請求の訂正の目的の適否について」欄に前述したとおり、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当しているところ、特許法第134条の2第5項において読み替えて準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第1項ただし書第1号又は第2号の場合は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」の規定に該当する、本件の特許無効審判の請求の趣旨から除外されている請求項が、訂正請求に係る特許請求の範囲に存在していないから、当審は、訂正請求の訂正後の請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かの、いわゆる独立特許要件の有無について、検討をする必要を認めない。

(5)むすび
当審が本件無効審判事件における本件訂正請求について審理をした結果は、以上のとおりであり、本件特許明細書等についての本件訂正請求による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるので、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号及び第3号に該当し、さらに、前記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてした訂正であるので、平成6年改正前特許法第134条ただし書に適合する。また、前記訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合する。
よって、本件訂正請求の訂正を認める。

2 審判事件弁駁書の要旨の変更についての判断
請求人が審判事件弁駁書において提出した新たな証拠方法としての甲第7号証〔平成17年(行ケ)第10796号審決取消請求事件に関する平成18年11月30日判決言渡の判決文〕及び甲第8号証〔平成17年(行ケ)第10271号審決取消請求事件に関する平成18年2月14日判決言渡の判決文〕を含む、請求人が主張する新たな無効理由は、請求の理由の要旨を変更するものではあるが、当審の審理を不当に遅延させるおそれはなく、また前記新たな無効理由の主張が、被請求人の訂正請求により補正の必要が生じたものであるので、請求人が主張する新たな無効理由は、許可できるものである。

3 当審の職権による無効理由通知
しかして、当審が本件無効審判事件を審理した結果、請求人が主張していない技術事項〔「第3 当審の審理」欄に後記する「4」を参照。〕について、本件分割特許出願は分割要件を満たしていないとした上で、前記分割要件の欠如を前提に、さらに、本件訂正請求後の本件発明1ないし本件発明4に関して職権により審理をした結果として、請求人が提出した甲第1号証ないし甲第4号証、並びに、特開平11-285663号公報、特開平11-267574号公報の各刊行物の証拠方法を以て、本件訂正請求後の本件発明1ないし本件発明4は、前記証拠方法に記載の各発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の進歩性要件の欠如(特許法第29条第2項違反)を内容とする無効理由通知、及び、本件分割特許出願が分割要件の欠如を惹起する要因である特許請求の範囲の中の技術事項について、本件訂正明細書における発明の明確性の要件、サポート要件及び実施可能要件の各要件の欠如(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)を内容とする無効理由通知〔「第3 当審の審理」欄に後記する「4」を参照。〕を、請求人及び被請求人の両当事者双方に対してファクシミリの送信により通知した。

4 当審の職権による無効理由通知の内容の要点
前記当審の職権による無効理由通知の内容の要点は、請求人及び被請求人の両当事者双方に対して平成19年8月14日に送信した下記に示すファクシミリにおける「第1 被請求人に対する事項」欄の「2.」ないし「4.」項の部分に示すとおりである。

『無効審判事件(2006-80277)に関し、当審が口頭審理において審理する予定の下記の事項について、当事者は、意見等をあらかじめ「口頭審理陳述要領書」にまとめて、口頭審理期日の少なくとも2週間前までに提出してください。

第1 被請求人に対する事項
1.請求人が提出した弁駁書の副本を被請求人に送付しますので、その弁駁書における請求人の主張に対する被請求人の意見。
2.請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)及び無効理由2(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)に関連して、当審が職権により、本件分割特許出願の分割要件の有無について審理する場合において、本件分割特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9及び訂正請求後の請求項1ないし請求項4に記載の
ア.「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、
イ.「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」、
ウ.「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」、
エ.「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、
オ.「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、
カ.「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」、
キ.「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」、
ク.「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」、
ケ.「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」
の各技術事項について、原出願(特願平11-29777号)の願書に最初に添付した明細書及び図面におけるそれらの記載の根拠又はそれらの明細書の記載からの自明性についての説明、及び、そのまた原出願(特願平5-151567号)の願書に最初に添付した明細書及び図面におけるそれらの記載の根拠又はそれらの明細書の記載からの自明性についての説明。
3.本件分割特許出願の分割要件の有無について、上記2.のア.ないしケ.に記載した各技術事項に関する当審の審理結果を踏まえて、本件分割特許出願が特許法第44条に規定する分割要件を満たしていないと当審が判断する場合において、本件第3103358号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項4に係る特許発明は、本件分割特許出願の現実の特許出願日前に頒布された特開平11-285663号公報、特開平11-267574号公報、甲第1号証及び甲第2号証、並びに、甲第3号証及び甲第4号証の各刊行物に記載の各発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるという、当審の職権による無効理由通知(特許法第29条第2項違反)に対する、被請求人の意見。
4.請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由4(特許法第36条第4項及び同条第6項第2号違反)に関連して、当審が職権により、本件分割特許出願の記載要件の有無について審理する場合において、上記2.のア.ないしケ.に記載した各技術事項について、本件分割特許出願は、訂正明細書の特許請求の範囲の各請求項に係る発明の明確性の要件、訂正明細書の発明の詳細な説明における記載のサポート要件及び実施可能要件の各要件を満たしていないという、当審の職権による無効理由通知(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)に対する、被請求人の意見。

第2 請求人に対する事項
1.請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)に関して、本件第3103358号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項4に係る特許発明の各構成要素と、甲第1号証刊行物に記載の発明の各構成要素との個々の具体的な対応関係についての説明。
2.請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由2(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)に関して、本件第3103358号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項4に係る特許発明の各構成要素と、甲第2号証刊行物に記載の発明の各構成要素との個々の具体的な対応関係についての説明。
3.上記「第1 被請求人に対する事項」欄の3.において指摘した当審の職権による無効理由通知(特許法第29条第2項違反)に対する、請求人の意見。
4.上記「第1 被請求人に対する事項」欄の4.において指摘した当審の職権による無効理由通知(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)に対する、請求人の意見。』

第4 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討
1 本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明
上記のとおり、本件訂正請求の訂正が認められたので、本件特許の請求項1に係る発明(本件発明1)ないし請求項4に係る発明(本件発明4)は、訂正請求書に添付された本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、
前記位置決め機構は、前記進退部材が上昇して前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材から離脱させる際に、前記塗布処理空間形成部材が基板支持部材と結合した状態で塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とするよう構成され、
当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されていることを特徴とする回転式塗布装置。
【請求項2】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布方法において、
上部が開口したケース内に回転可能に設けられた基板支持部材にて基板を支持する工程と、
基板支持部材に支持した基板に塗布液を供給する工程と、
進退部材により塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させて、前記進退部材と一体の閉じ部材により前記ケースの開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材と結合させて塗布処理空間を形成し、前記塗布処理空間形成部材と基板支持部材とを前記ケースに対して回転可能状態とする工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材とを回転させて基板上の塗布液を拡散流動させる工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材の回転を停止させる工程と、
前記基板支持部材と結合したままの前記塗布処理空間形成部材を凹凸結合により周方向で位置決め状態とする工程と、
位置決め状態とされている前記塗布処理空間形成部材を上昇させて前記基板支持部材から離脱させる工程と、
を備えたことを特徴とする回転式塗布方法。
【請求項3】 基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、
前記吊持機構は、前記塗布処理空間形成部材の上側中央部に立設された取付部材と、前記取付部材の上部から水平方向に延在する第1の部材と、前記進退部材に設けられ、前記第1の部材の下方で前記取付部材に沿って相対昇降可能な第2の部材とを備えて、前記塗布処理空間形成部材と前記基板支持部材との結合時には、前記第2の部材に対して前記取付部材および前記第1の部材が相対回転自在となるように設けられており、
前記位置決め機構は、前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とすることを特徴とする回転式塗布装置。
【請求項4】 請求項3に記載の回転式塗布装置において、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されることを特徴とする回転式塗布装置。」

2 本件分割特許出願(特願2000-143640号)の親原出願(特願平5-151567号)からの分割要件の有無について
(1)本件発明1ないし本件発明4の技術事項についての分割の根拠についての検討
本件発明1ないし本件発明4は、上記「1 本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明」欄に前掲したとおりのものであるが、上記「第3 当審の審理」欄の「4 当審の職権による無効理由通知の内容の要点」に示した「第1 被請求人に対する事項」の「2.」に指摘してあるとおり、本件発明1ないし本件発明4には、
「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、
「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部」、
「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」、
「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、
「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、
「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」、
「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」、
「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」、
「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」
の技術事項が記載されている。
しかして、特許法第44条には、
第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、願書に添附した明細書又は図面について補正をすることができる時又は期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十9条の2に規定する他の特許出願又は実用新案法第3条の2に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用並びに第三十条第四項、第四十1条第4項並びに前条第一項及び第二項の規定の適用については、この限りでない。』
と規定されている。
そこで、前記の技術事項を有する発明が本件分割特許出願のもとの出願である親原出願(特願平5-151567号)に包含されていたか否かについて、換言すれば、前記の技術事項が、前記親原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「親原出願の当初明細書等」という。)に包含されていた発明の技術事項として記載されていたか否か、あるいは、親原出願の当初明細書等における記載から自明であるか否かについて、次に検討する。

(2)親原出願の当初明細書等における記載事項
ア 「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項についての検討
(ア)まず、親原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平6-338447号公報〕の記載を精査すると、前記甲第1号証の明細書及び図面には、本件発明1、本件発明3及び本件発明4の構成要件である前記「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の文言が記載されておらず、また、それを示唆する記載も前記甲第1号証の中に認めることができない。

(イ)そこで、前記「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」に対応する部材であると被請求人が審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書において主張する「固定支持部材16」に関する技術事項の記載について精査すると、甲第1号証の中に、次のa?mの事項が記載されている。
a 「【請求項2】 請求項1に記載の回転台洗浄手段が、
中央に開口を有し、かつ、回転台上に支持された基板の上面と所定の間隔をもって平行に設けられるとともに前記回転台と一体に回転される上部回転板と、
前記開口を開閉する蓋と、
前記蓋を開き位置に変位した状態の前記開口を通じて前記上部回転板の下方に変位し、前記回転台の上面に向けて洗浄液を噴射するように固定支持部材に設けた洗浄ノズルと、
から構成されたものである回転式塗布装置。」
b 「【請求項3】 請求項2に記載の蓋を、固定支持部材に取り付けた駆動開閉機構によって閉じ位置と開き位置とに変位可能に設け、かつ、洗浄ノズルを、固定支持部材に取り付けた駆動機構によって洗浄位置と非洗浄位置とに変位可能に設けたものである回転式塗布装置。」
c 「【0006】 また、請求項2に係る発明の回転式塗布装置は、上述のような目的を達成するために、請求項1に係る発明の回転式塗布装置における回転台洗浄手段を、中央に開口を有し、かつ、回転台上に支持された基板の上面と所定の間隔をもって平行に設けられるとともに前記回転台と一体に回転される上部回転板と、開口を開閉する蓋と、その蓋を開き位置に変位した状態の開口を通じて上部回転板の下方に変位し、回転台の上面に向けて洗浄液を噴射するように固定支持部材に設けた洗浄ノズルとから構成する。」
d 「【0007】 また、請求項3に係る発明の回転式塗布装置は、上述のような目的を達成するために、請求項2に係る発明の回転式塗布装置における蓋を、固定支持部材に取り付けた駆動開閉機構によって閉じ位置と開き位置とに変位可能に設け、かつ、洗浄ノズルを、固定支持部材に取り付けた駆動機構によって洗浄位置と非洗浄位置とに変位可能に設けて構成する。」
e 「【0014】 図1は本発明に係る回転式塗布装置の第1実施例の全体の概略構成を示す縦断正面図であり、角型基板1を載置する回転台2が鉛直方向の軸心P周りに水平回転可能に設けられ、その回転台2の上方に、回転台2と平行に上部回転板3が設けられるとともに、その上部回転板3が回転台2に上部支持板4を介して一体的に回転可能に取り付けられ、これら回転部材の下方及び周辺部を外から囲むように廃液回収ケース5が設けられ、前記回転台2に、縦向き回転軸としての出力軸6を介して電動モータ7が連結されている。」
f 「【0018】 前記廃液回収ケース5の上部に筒状カバー15が取り付けられ、その筒状カバー15に固定支持部材16が着脱可能に取り付けられている。」
g 「【0019】 図2の要部の一部切欠拡大正面図、図3および図4の要部の平面図、図5の要部の側面図に示すように、上部回転板3の中央には開口19が形成され、この開口19の鉛直方向上方位置において、固定支持部材16の上方側支持プレート16aに駆動開閉機構としての第1のエアシリンダ20が取り付けられ、その第1のエアシリンダ20のシリンダロッド20aの先端にブロック21が取り付けられるとともに、ブロック21に相対昇降および相対回転可能に有底筒状の前記蓋17が吊り下げ保持されている。」
h 「【0022】 上方側支持プレート16aの第1のエアシリンダ20の横側方に、鉛直方向の軸芯周りで90°の範囲で回転可能な第2のエアシリンダ24が設けられるとともに、その第2のエアシリンダ24のシリンダロッド24aにスプライン軸25が連結されている。スプライン軸25に昇降のみ可能にスプライン筒26が取り付けられるとともに、スプライン筒26に回転のみ可能に回転筒27が取り付けられている。回転筒27に洗浄ノズル18が一体的に取り付けられるとともに、上方側支持プレート16aの第2のエアシリンダ24の横側方下側に設けられた第3のエアシリンダ28のシリンダロッド28aに回転筒27が連結されている。図示しないが、洗浄ノズル18には、洗浄液圧送機構に接続された配管が接続されている。上述の構成により、回転台2の上面に向けて洗浄液を噴出する回転台洗浄手段が構成されている。」
i 「【0024】 固定支持部材16の下方側支持プレート16bは環状に形成され、その内周面側に寄った上面の周方向所定の4箇所それぞれに、山形状の係合突起29が設けられ、一方、下方側支持プレート16bよりも上方に位置するように、上部支持板4に取付部材30…を介して環状プレート31が取り付けられるとともに、その環状プレート31の周方向所定の4箇所それぞれに、係合突起29を嵌入する筒体32が設けられ、前記上部回転板3を着脱する際に、係合突起29…を筒体32…に嵌入することにより、固定支持部材16で吊り下げることができるように構成されている。」
j 「【0025】 以上の構成により、先ず、塗布処理に際しては、固定支持部材16を筒状カバー15から取り外すとともに上部支持板4を回転台2から取り外し、固定支持部材16で吊り下げて上部回転板3を上方に外して角型基板1を回転台2の基板支持ピン8…上に所定の姿勢で載置する。」
k 「【0026】 次に、図示しない塗布液供給手段としての塗布液供給ノズルを角型基板1の中央上方に移動させ、所定量の塗布液を滴下供給する。その後、固定支持部材16で吊り下げて上部支持板4を搬入し、上部支持板4をリングプレート10上に、そして、固定支持部材16を筒状カバー15上にそれぞれ取り付け、図6の要部の正面図に示すように、第1のエアシリンダ20を伸長して蓋17を駆動変位し、上部回転板3の開口19を閉じておくとともに洗浄ノズル18を非洗浄位置に変位しておく。」
l 「【0029】 所定回数の回転塗布処理が行われると、固定支持部材16を筒状カバー15から取り外すとともに上部支持板4を回転台2から取り外し、固定支持部材16で吊り下げて上部回転板3を上方に外して角型基板1を取り出してから、上部支持板4をリングプレート10上に、そして、固定支持部材16を筒状カバー15上にそれぞれ取り付け、その後に、第1のエアシリンダ20を短縮して蓋17を開き位置に駆動変位する。」
m 甲第1号証の回転式塗布装置のそれぞれ第1実施例及び第2実施例の全体の概略構成を示す縦断正面図である【図1】及び【図7】に、固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分が、廃液回収ケース5の上部に取り付けられた筒状カバー15の上面に掛け渡された状態で載置されている状態が図示されている。

(ウ)しかして、かかる甲第1号証の上記a?mの技術事項から、甲第1号証には、「鉛直方向の軸心P周りに水平回転可能に角型基板1を載置する回転台2が設けられ、前記回転台2の上方に、回転台2と平行に上部回転板3が設けられるとともに、前記回転台2に縦向き回転軸としての出力軸6を介して電動モータ7が連結されていて、前記上部回転板3が回転台2に上部支持板4を介して一体的に回転可能に取り付けられ、これら回転部材の下方及び周辺部を外から囲むように廃液回収ケース5設けられ、さらに前記廃液回収ケース5の上部に筒状カバー15が取り付けられていて、前記筒状カバー15の上面に掛け渡された状態で、固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分が、筒状カバー15に着脱可能に取り付けられている回転式塗布装置」の実施例の記載を認めることができる。

(エ)しかしながら、(カ)に後述する理由により、甲第1号証の記載からは、前記「固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分」が「ケースの開口を閉じる部材」である、とはいえない。

(オ)したがって、被請求人の主張するところの「固定支持部材16」が「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」であることの根拠となる記載を、甲第1号証の中に認めることができない。また、「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項が、甲第1号証の記載から自明であるということもできない。

(カ)ここで、被請求人の主張について検討する。
a 被請求人は、口頭審理陳述要領書の12頁9?20行において、「そして、甲第1号証(特に上記各箇所の記載)に記載されている技術内容を出願時において当業者が客観的に判断すれば、「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」自体が記載してあったことに相当すると認められる。なぜなら、原出願の出願時における当業者は、『断面図において基板を処理する容器に形成された「開口」の両側縁部に当接する「部材」が明示されている場合は、その「部材」が容器の「開口」を閉じることを意味する』という技術常識を通常の知識として有するからである。よって、「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」は、当業者が原出願の当初明細書等の記載からみて自明な事項である。したがって、技術事項ウは、原出願(特願平5-151567号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。」と主張し、「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項は、甲第1号証に記載されていた事項から自明である旨を主張する。

b しかして、前記甲第1号証には、「鉛直方向の軸心P周りに水平回転可能に角型基板1を載置する回転台2が設けられ、前記回転台2の上方に、回転台2と平行に上部回転板3が設けられるとともに、前記回転台2に縦向き回転軸としての出力軸6を介して電動モータ7が連結されていて、前記上部回転板3が回転台2に上部支持板4を介して一体的に回転可能に取り付けられ、これら回転部材の下方及び周辺部を外から囲むように廃液回収ケース5設けられ、さらに前記廃液回収ケース5の上部に筒状カバー15が取り付けられていて、前記筒状カバー15の上面に掛け渡された状態で、固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分が、筒状カバー15に着脱可能に取り付けられている回転式塗布装置」が記載されていることは、上記「(2)親原出願の当初明細書等における記載事項」欄の「ア」の「(ウ)」に前述したとおりであり、前記甲第1号証の図1及び図7に図示されている前記「固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分」を、被請求人は、断面図において基板を処理する容器に形成された「開口」の両側縁部に当接する「部材」であると主張する。

c しかしながら、甲第1号証の図1及び図7は、それぞれ回転式塗布装置の第1実施例及び第2実施例の全体の概略構成を示す「縦断正面図」であって、前記図1及び図7が、被請求人が主張する「縦断図」であるということについては、甲第1号証に明示の記載がない。
しかして、甲第1号証の図1及び図7に表示されている「固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分」としての「断面図において基板を処理する容器に形成された『開口』の両側縁部に当接する『部材』」は、正面図、平面図、側面図等において、目で見える部材の表面の表示に用いられる「実線」で表記されていることが明らかである。

d 仮に、甲第1号証の図1及び図7が、被請求人の主張する「断面図」であるとするとした場合には、断面図における紙面に平行な破断面により破断されて表れる部材の断面のすべては、部材ごとに線間隔及び線方向の違える約45°の平行斜線のハッチングが施されて表記されるという、当業者の技術常識である「断面図の表記ルール」に従えば、甲第1号証の図1及び図7に図示されている「固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分」としての「断面図において基板を処理する容器に形成された『開口』の両側縁部に当接する『部材』」は、線間隔及び線方向の違える約45°の平行斜線のハッチングが施されて表記されてしかるべきであるのに、前述のとおり、正面図、平面図、側面図等において、目で見える部材の表面の表示に用いられる「実線」で表記されている。
そして、前記「断面図の表記ルール」が、当業者の技術常識であることは、被請求人が提出した乙第1ないし19号証に図示されている諸々の断面図の表記を参照すれば、断面図における部材の断面は、ことごとく部材ごとに線間隔及び線方向の違える約45°の平行斜線のハッチングが施されて表記されている事実からみても、明らかなことである。

e したがって、甲第1号証の図1及び図7は、やはり被請求人が主張する純粋な「縦断図(縦断面図)」ではなく、甲第1号証の図面の簡単な説明欄に説明されているとおり、甲第1号証の図1及び図7は、正面図と断面図とを混合して、正面図の一部を断面で表した「縦断正面図」であると考えるのが相当である。
そうすると、被請求人の「原出願の出願時における当業者は、『断面図において基板を処理する容器に形成された「開口」の両側縁部に当接する「部材」が明示されている場合は、その「部材」が容器の「開口」を閉じることを意味する』という技術常識を通常の知識として有するからである。」という主張は、甲第1号証の図1及び図7が「断面図」であるという前提を欠いているといえる。

f そして、甲第1号証の図1及び図7が、正面図の一部を断面で表した「縦断正面図」であるとすると、甲第1号証の図1及び図7に図示されている「固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分」が、廃液回収ケース5の上部に取り付けられた筒状カバー15に着脱可能に取り付けられていることから、甲第1号証の図1及び図7は、前記「固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分」が、廃液回収ケース5の上部に取り付けられた筒状カバー15の開口の全面を塞いでいる(閉じている)のではなく、甲第1号証の図1及び図7の「縦断正面図」における紙面に平行な破断面よりも手前側の筒状カバー15の開口に、前記「固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分」が存在していない状態、すなわち、筒状カバー15の開口の一部が塞がれていない(閉じていない)状態を、図示したものといえる。

g ところで、本件発明1、本件発明3及び本件発明4の構成要件である「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の中の「ケース」の文言は、甲第1号証の発明の詳細な説明にしたがえば、「廃液回収ケース5」を意味すると考えるのが自然であるところ、甲第1号証には、「【0018】 前記廃液回収ケース5の上部に筒状カバー15が取り付けられ、その筒状カバー15に固定支持部材16が着脱可能に取り付けられている。」と明記されていて、「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」に相当する部材であると被請求人が主張する「固定支持部材16」は、「ケース(廃液回収ケース5)」に着脱可能に設けられているのではなく、廃液回収ケース5の上部に取り付けられた「筒状カバー15」に着脱可能に取り付けられるものとして、甲第1号証に記載されている。
しかしながら、前記「ケース」の定義として、「筒状カバー15」が本件発明1、本件発明3及び本件発明4の前記構成要件の「ケース」であるという説明が、甲第1号証に何らも記載されていないことから、本件発明1、本件発明3及び本件発明4の構成要件である「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」は、甲第1号証の発明の詳細な説明に記載されてなく、また甲第1号証の図面に図示されてもいないことが明らかである。

h 以上のとおりであり、甲第1号証の図1及び図7の回転式塗布装置の第1実施例及び第2実施例の全体の概略構成を示す「縦断正面図」に図示されている「基板を処理する容器に形成された『開口』の両側縁部に当接する『部材』」は、被請求人が主張する「容器の『開口』を閉じることを意味する」ということができない。

i そうすると、被請求人が甲第1号証に示唆されていると主張する「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項は、甲第1号証に示唆されてもいないことが明らかである。
したがって、「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項は、甲第1号証に記載されていた事項から自明である旨の被請求人の主張は、根拠がなく到底採用することができないものである。

(キ)そうしてみると、本件分割特許出願のもとの出願である親原出願の当初明細書等である上記甲第1号証には、本件発明1、本件発明3及び本件発明4における上記「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項が記載されていたということができない。
そして、本件発明1、本件発明3及び本件発明4の前記「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項が、本件分割特許出願のもとの出願である親原出願の当初明細書等である前記甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。
したがって、本件分割特許出願のもとの出願である親原出願には、「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項をその構成要件とする本件発明1、本件発明3及び本件発明4が包含されていたということができない。

イ 「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」、「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」及び「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」の技術事項についての検討
(ア)甲第1号証には、次の「回転式塗布装置」の実施例が記載されていると認められる。
「角型基板1を水平支持した状態で回転させる回転台2と、前記回転台2上に支持された角型基板1の上面に塗布液を供給する塗布液供給手段とを備えた回転式塗布装置において、
鉛直方向の軸心P周りに水平回転可能に角型基板1を載置する回転台2が設けられ、前記回転台2の上方に、回転台2と平行に上部回転板3が設けられるとともに、前記回転台2に縦向き回転軸としての出力軸6を介して電動モータ7が連結されていて、前記上部回転板3が回転台2に上部支持板4を介して一体的に回転可能に取り付けられて、回転台2と上部回転板3との間に形成された偏平な塗布処理空間Sの空気層も一体に回転し、これら回転部材の下方及び周辺部を外から囲むように廃液回収ケース5が設けられ、さらに前記廃液回収ケース5の上部に筒状カバー15が取り付けられていて、前記筒状カバー15の上面に掛け渡された状態で、固定支持部材16の左右両翼に延びた水平部分が、筒状カバー15に着脱可能に取り付けられ、
回転台2の外周上面には、回転台2と同外径のスペーサリング9およびリングプレート10が同心円線上の場所に複数箇所で連結されるとともに、このリングプレート10に上部支持板4がノブボルト11を介して着脱自在に取り付けられ、上部支持板4を取り外すことで、リングプレート10の中央開口から基板1を出し入れすることができるようになっており、
前記上部回転板3は基板1の外形形状より大径の円板に構成され、前記上部支持板4の下面にカラー12を介してボルト連結されており、
固定支持部材16の下方側支持プレート16bは環状に形成され、その内周面側に寄った上面の周方向所定の4箇所それぞれに、山形状の係合突起29が設けられ、一方、下方側支持プレート16bよりも上方に位置するように、上部支持板4に取付部材30…を介して環状プレート31が取り付けられるとともに、その環状プレート31の周方向所定の4箇所それぞれに、係合突起29を嵌入する筒体32が設けられ、前記上部回転板3を着脱する際に、係合突起29…を筒体32…に嵌入することにより、固定支持部材16の下方側支持プレート16bで前記上部支持板4を吊り下げることができるように構成されていて、
塗布処理に際しては、固定支持部材16を筒状カバー15から取り外すとともに上部支持板4を回転台2から取り外し、固定支持部材16で吊り下げて上部回転板3を上方に外して角型基板1を回転台2の基板支持ピン8…上に所定の姿勢で載置するようにした回転式塗布装置」

(イ)しかしながら、親原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平6-338447号公報〕の記載を精査しても、前記甲第1号証の明細書及び図面には、本件訂正明細書の特許請求の範囲の、
「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、
「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」
「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、
「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」及び
「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」の各技術事項の中に織り込まれて、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載されている「進退部材」、「位置決め機構」、「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」及び「凹凸結合」の各構成要素の文言が記載されておらず、また、それを示唆する記載も前記甲第1号証の中に認めることができない。

(ウ)これに対し、被請求人は、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載の「進退部材」の構成要素について、口頭審理陳述要領書の13頁3?6行において、「以上より、技術事項エに記載される『進退部材』は、甲第1号証に記載される固定支持部材16に相当すること、および、この『進退部材』に関する技術事項エは、原出願(特願平5-151567号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に明示的に記載されている。」と主張する。
また、被請求人は、特許請求の範囲の請求項1、請求項3及び請求項4に記載の「位置決め機構」の構成要素について、口頭審理陳述要領書の13頁25?28行において、「すなわち、技術事項カに記載される『位置決め機構』は、甲第1号証に記載される筒体32と係合突起29に相当すること、および、この『位置決め機構』に関する技術事項カは、原出願(特願平5-151567号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に明示的に記載されている。」と主張する。

(エ)しかしながら、前記「進退部材」及び「位置決め機構」の各構成要素が、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」及び「筒体32」と「係合突起29」をそれぞれ意味するものとして、甲第1号証にそれらの定義がなされているわけでもないから、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」及び「筒体32」と「係合突起29」が、前記「進退部材」及び「位置決め機構」の各構成要素にそれぞれ該当する蓋然性があるとはいえるが、反対に、前記「進退部材」及び「位置決め機構」の各構成要素が、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」及び「筒体32」と「係合突起29」のみを意味するものであり、それ以外の構成を意味するものではないという必然性があると、必ずしもいえないことは明らかである。
そして、このことは、「基板を回転可能に支持する基板支持部材」及び「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」についても同様のことがいえるのであり、被請求人が口頭弁論陳述要領書において主張するところの、甲第1号証に記載されている「回転台」及び「筒体32と係合突起29の嵌入」が、「基板支持部材」及び「凹凸結合」の各構成要素にそれぞれ該当する蓋然性があるとはいえるが、反対に、前記「基板支持部材」及び「凹凸結合」の各構成要素が、甲第1号証に記載されている「回転台」及び「筒体32と係合突起29の嵌入」のみを意味するものであり、それ以外の構成を意味するものではないという必然性があると、必ずしもいえないことは明らかである。

(オ)さらに、被請求人は、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載の「塗布処理空間形成部材」の構成要素について、口頭審理陳述要領書において、「『塗布処理空間形成部材』は、甲第1号証に記載の『上部回転板3』と『上部支持板4』である」旨を主張する。
しかしながら、次の(カ)に後述する理由により、甲第1号証の記載からは、甲第1号証の「上部回転板3と上部支持板4」が、前記「塗布処理空間形成部材」である、とはいえない。
したがって、被請求人の主張するところの甲第1号証の「上部回転板3と上部支持板4」が「塗布処理空間形成部材」であることの根拠となる記載を、甲第1号証の中に認めることができない。また、前記「塗布処理空間形成部材」の技術事項が、甲第1号証の記載から自明であるということもできない。

(カ)ここで、上記(オ)に前掲した被請求人の「塗布処理空間形成部材」についての前記主張について、さらに検討する。
a 被請求人は、口頭審理陳述要領書の11頁4?7行において、「以上より、技術事項イに記載される『塗布処理空間形成部材』は、甲第1号証に記載される上部回転板3および上部支持板4に相当すること、および、この『塗布処理空間形成部材』に関する技術事項イは、原出願(特願平5-151567号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に明示的に記載されている。」と主張し、前記「塗布処理空間形成部材」の技術事項は、甲第1号証に明示的に記載されているので、甲第1号証に記載した事項の範囲内である旨を主張する。つまり、被請求人は、前記甲第1号証の図1に図示されている前記回転式塗布装置の「上部回転板3と上部支持板4」を、「塗布処理空間形成部材」であると主張している。

b しかしながら、甲第1号証の段落【0027】には、「その後、電動モータ7を起動して回転台2、上部支持板4、上部回転板3および角型基板1を一体に水平回転させる。この回転によって角型基板1上の塗布液は遠心力によって外方に拡散流動して角型基板1上面に薄く塗布される。この場合、回転台2と上部回転板3との間に形成された偏平な塗布処理空間Sの空気層も一体に回転し、角型基板1上に気流が発生しない状態で塗布液の拡散流動が行われる。」と明記されているのであり、甲第1号証の前記段落【0027】の記載によれば、「偏平な塗布処理空間S」は、回転台2と上部回転板3との間に形成されるものとして記載されていることが明らかである。そして、回転台2とで偏平な塗布処理空間Sを形成する「上部回転板3」は、甲第1号証の段落【0017】の記載によれば、上部支持板4の下面にカラー12を介してボルト連結されるものとされている。
そして、甲第1号証の図5及び図7の図示では、「偏平な塗布処理空間S」は、回転台2と上部回転板3との間に形成されており、被請求人が「上部回転板3」とともに「塗布処理空間形成部材」であると主張する「上部支持板4」は、「偏平な塗布処理空間S」の形成には全く寄与していないことが明らかである。

c さらに、甲第1号証の段落【0016】には、「また、回転台2の外周上面には、回転台2と同外径のスペーサリング9およびリングプレート10が同心円線上の場所に複数箇所で連結されるとともに、このリングプレート10に上部支持板4がノブボルト11を介して着脱自在に取り付けられ、上部支持板4を取り外すことで、リングプレート10の中央開口から基板1を出し入れすることができるようになっている。」と記載されていて、これによれば、「上部支持板4」は、回転台2の外周上面に、回転台2と同外径のスペーサリング9を介してリングプレート10にノブボルト11を介して着脱自在に取り付けられるものとされている。
一方、段落【0024】の記載から、前記「上部支持板4」は、固定支持部材16の環状の下方側支持プレート16b上面の周方向所定の4箇所に設けられた係合突起29を、上部支持板4に取付部材30を介して取り付けられる環状プレート31の周方向所定の4箇所に設けられた筒体32に嵌入することにより、固定支持部材16の下方側支持プレート16bで吊り下げることができるものとして、甲第1号証に記載されている。
そうすると、かかる甲第1号証の記載によれば、係合突起29の筒体32への嵌入により、固定支持部材16に吊り下げ可能に構成されているのは、「上部支持板4」であることが明らかである。

d しかしながら、甲第1号証には、固定支持部材16に吊り下げ可能に構成されている「上部支持板4」が、回転台2と結合して前記回転台2とで塗布処理空間Sを形成することについては、一切記載がない。他方、回転台2と結合して前記回転台2とで塗布処理空間Sを形成する「上部回転板3」が、固定支持部材16に上下方向への相対移動可能に結合されることについても、一切記載がない。

e したがって、固定支持部材16に吊り下げ可能に構成されている「上部支持板4」と、回転台2と結合して前記回転台2とで塗布処理空間Sを形成する「上部回転板3」とについては、甲第1号証に個々に記載されているが、「上部支持板4」が、回転台2と結合して前記回転台2とで塗布処理空間Sを形成すること、及び「上部回転板3」が、固定支持部材16に上下方向への相対移動可能に結合されることについては、甲第1号証に一切記載がない。

f しかるに、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3に記載されている前記「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」の記載によれば、該「塗布処理空間形成部材」は、基板支持部材とで塗布処理空間を形成するために結合可能であるものとされている。

g しかしながら、基板支持部材とで塗布処理空間を形成するために結合可能であるような「塗布処理空間形成部材」についての記載を、甲第1号証に全く認めることができない。
したがって、甲第1号証に、前記「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」が記載されているということができない。

h そうすると、被請求人が主張する「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」の技術事項は、甲第1号証に記載されていないことが明らかである。
また、甲第1号証には、「上部回転板3」を「上部支持板4」と兼用して「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」とすることができるとか、あるいは、「上部回転板3」か「上部支持板4」かのいずれかを省略できるとも記載されていないから、前記「上部回転板3」及び「上部支持板4」のそれぞれの機能を併せ持った「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」を含む発明が、甲第1号証に記載されているとすることはできず、また、明示の記載はなくとも実質的に記載されているとみることもできない。
そして、前記「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」の技術事項が、甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。
したがって、前記「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」は、親原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証に記載されている事項を超える意味内容の記載であるといえる。

(キ)以上のとおりであるから、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載されている、
前記「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、
「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」、
「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、
「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」及び
「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」
の各技術事項は、親原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証に記載されている事項を超える意味内容の記載であるといえる。

(ク)したがって、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載されている、
「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、
「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」、
「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、
「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」及び
「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」
の各技術事項については、甲第1号証に記載されているということができないばかりでなく、各技術事項が甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。

ウ 「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」及び「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」の技術事項についての検討
(ア)被請求人は、口頭審理陳述要領書の13頁15?16行及び14頁9?10行において、本件発明1の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、並びに本件発明3及び本件発明4の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」について、前記「吊持機構」の構成要素は、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」に相当する旨を主張する。

(イ)しかしながら、前記「吊持機構」の構成要素が、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」を意味するものとして、甲第1号証にそれらの定義がなされているわけでもないから、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」が、前記「吊持機構」の構成要素に該当する蓋然性があるとはいえるが、反対に、前記「吊持機構」の構成要素が、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」のみを意味するものであり、それ以外の構成を意味するものではないという必然性があると、必ずしもいえないことは明らかである。

(ウ)また、本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」の技術事項について、被請求人は、口頭審理陳述要領書の15頁10?21行において、「『前記開口を閉じる部材』と『進退部材』とは共通して固定支持部材16に相当するため、『前記開口を閉じる部材』と『進退部材』が『前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること』、および、『前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材』も固定支持部材16に相当することは、甲第1号証および乙第20号証に記載された事項の範囲内である。以上より、技術事項ケは、原出願(特願平5-151567号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内である」旨を主張する。

(エ)しかしながら、前記「前記開口を閉じる部材」と「進退部材」の各構成要素が、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」を意味するものとして、甲第1号証にそれらの定義がなされているわけでもないから、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」が、前記「前記開口を閉じる部材」と「進退部材」の各構成要素に該当する蓋然性があるとはいえるが、反対に、前記「前記開口を閉じる部材」と「進退部材」の各構成要素が、甲第1号証に記載されている「固定支持部材16」のみを意味するものであり、それ以外の構成を意味するものではないという必然性があると、必ずしもいえないことは明らかである。
また、被請求人が主張する「『前記開口を閉じる部材』と『進退部材』とは共通して固定支持部材16に相当する」ことについても、それを裏付ける記載を、甲第1号証に認めることができない。
したがって、被請求人が主張する前記「『前記開口を閉じる部材』と『進退部材』が『前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること』、および、『前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材』も固定支持部材16に相当すること」を裏付ける技術事項の記載を、甲第1号証の中に認めることができない。

(オ)以上のとおりであるから、本件発明1の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、本件発明3及び本件発明4の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」、及び、本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」の各技術事項については、甲第1号証に記載されているということができないばかりでなく、各技術事項が甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。

3 本件分割特許出願(特願2000-143640号)の子原出願(特願平11-29777号)からの分割要件の有無について
(1)本件特許に係る本件分割特許出願(特願2000-143640号)についての手続の経緯が、平成5年5月27日に特許出願された特願平5-151567号〔親原出願〕の一部を分割して、新たな特許出願として平成11年2月8日に出願した特願平11-29777号〔子原出願〕の、さらにその一部を分割して、新たな特許出願として平成12年5月16日に出願した特願2000-143640号であることは、上記「第1 手続の経緯」欄に前述したとおりである。

(2)しかして、上記「第4 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討」欄の「2 本件分割特許出願(特願2000-143640号)の親原出願(特願平5-151567号)からの分割要件の有無について」において、本件分割特許出願と親原出願とにおける明細書及び図面の記載について吟味し、その結果、本件分割特許出願の親原出願からの分割要件が満たされていないことから、本件分割特許出願が、親原出願の時にしたものとみなすことができないと認定した。

(3)そこで、さらに、本件分割特許出願(特願2000-143640号)に係る特許明細書の図面及びその訂正請求書に添付した本件訂正明細書の記載と、子原出願(特願平11-29777号)における明細書及び図面の記載〔被請求人が提出した乙第20号証の特開平11-267574号公報を参照。〕について吟味し、本件分割特許出願(特願2000-143640号)の子原出願からの分割要件が満たされているか否かについて、次に検討する。

(4)被請求人が平成19年4月2日付けで提出した本件分割特許出願(特願2000-143640号)に係る特許明細書の訂正請求書に添付した本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、次のア及びイに関する技術事項が記載されている。
ア [塗布処理空間形成部材の位置決め機構の動作タイミングと効果]に関する技術事項の記載。
「【0026】 塗布処理空間形成部材を基板支持部材から離脱させる際には、上部回転板3と上部支持板4とからなる塗布処理空間形成部材が回転台2と結合している状態で、まず、環状プレート31に設けられた筒体32に固定支持部材16の係合突起29が嵌入することにより両者が結合して、塗布処理空間形成部材は固定支持部材16に対して回転しないように周方向に所定位置に位置決めされる。そしてその後に塗布処理空間形成部材が上昇する。
【0027】 このように、上部回転板3と上部支持板4が回転台2から取り外される前に位置決め固定が行われるので、それらを回転台2から取り外した後に位置決め固定する場合と比べて確実に位置決め固定が行われ、取り外しや取り付けの状態の再現性がよく、処理品質の低下がない均一な処理が可能である。」
イ [塗布処理空間形成部材の位置決め機構の作動構造と効果]に関する技術事項の記載。
「【0029】 塗布処理空間形成部材が上昇して回転台2と離れる際には、まず固定支持部材16が上昇することで塗布処理空間形成部材との相対昇降が生じ、かかる相対昇降動作に応じて環状プレート31に設けられた筒体32に固定支持部材16の係合突起29が嵌入することにより両者が結合して、塗布処理空間形成部材は固定支持部材16に対して回転しないように周方向に所定位置に位置決めされる。そしてその後に塗布処理空間形成部材が上昇する。逆に、塗布処理空間形成部材が下降して回転台2と結合する際には、塗布処理空間形成部材が回転台2と結合した後にも固定支持部材16が下降することで塗布処理空間形成部材との相対昇降が生じ、かかる相対昇降動作に応じて環状プレート31の筒体32に嵌入していた固定支持部材16の係合突起29が筒体32から離脱し、塗布処理空間形成部材の固定支持部材16に対する位置決めが解除される。このように、塗布処理空間形成部材と固定支持部材との相対昇降動作に応動して塗布処理空間形成部材の位置決めと解除の動作を行うことで、位置決め機構を駆動するための駆動源等を設ける必要がなく、処理品質の低下がない均一な処理が可能な装置を安価にできる。」

(5)しかしながら、前記ア及びイの各技術事項は、子原出願(特願平11-29777号)の願書の最初に添付した明細書の発明の詳細な説明又は図面に全く記載されてなく、前記ア及びイの各技術事項が、子原出願(特願平11-29777号)の願書の最初に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものでないことは、明らかである。
また、前記ア及びイの各技術事項が、子原出願(特願平11-29777号)の願書の最初に添付した明細書又は図面に記載されている事項から自明であるということもできない。

(6)しかして、本件分割特許出願の本件訂正明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4には、次のa?dの各構成要件からなる本件発明1ないし本件発明4の構成要件が記載されている。
a 【請求項1】の「前記位置決め機構は、前記進退部材が上昇して前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材から離脱させる際に、前記塗布処理空間形成部材が基板支持部材と結合した状態で塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とするよう構成され、当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されていること」
b 【請求項2】の「前記基板支持部材と結合したままの前記塗布処理空間形成部材を凹凸結合により周方向で位置決め状態とする工程」及び「位置決め状態とされている前記塗布処理空間形成部材を上昇させて前記基板支持部材から離脱させる工程」
c 【請求項3】の「前記位置決め機構は、前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とすること」
d 「請求項3に記載の回転式塗布装置」を引用していることに基づく【請求項4】の「前記位置決め機構は、前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とすること」

(7)以上のことから、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されている前記ア及びイの各技術事項は、本件分割特許出願の本件訂正明細書における特許請求の範囲に記載されている本件発明1ないし本件発明4の上記a?dの各構成要件に反映されており、本件発明1ないし本件発明4の上記a?dの各構成要件を基礎づけている技術事項であることが明らかである。

(8)そうすると、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に、前記ア及びイの各技術事項を翻案して記載した上記a?dの各構成要件を含む本件発明1ないし本件発明4が、子原出願(特願平11-29777号)の特許出願に包含されていたということができない。
したがって、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載した上記a?dの各構成要件を含む本件発明1ないし本件発明4に係る本件分割特許出願は、子原出願(特願平11-29777号)の特許出願の一部を新たな特許出願としたものということができない。

4 分割要件の有無についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件分割特許出願は、特許法第44条に規定されているところの、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願としたものということができない。
したがって、本件分割特許出願は、親原出願(特願平5-151567号)の時にしたものとみなすことができないばかりでなく、子原出願(特願平11-29777号)の時にしたものとみなすこともできないから、本件分割特許出願の出願日は、繰り下がって、本件分割特許出願を実際に特許出願した日の平成12年(2000年)5月16日である。
そして、上述した理由により、本件分割特許出願を、以下においては、「本件特許出願」という。

第5 請求人の無効理由2及び当審の職権による無効理由1(特許法第29条第2項違反)についての検討
1 甲号各証の記載事項
(1)甲第2号証〔特開平7-66108号公報〕の記載事項
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、「処理液塗布装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、塗布装置、特に、基板の主面に処理液を塗布する処理液塗布装置に関する。」
「【0009】【実施例】 図1において、本発明の一実施例による処理液塗布装置1は、角型基板(以下基板と記す)Wにフォトレジスト液(処理液の一例)を塗布するものである。処理液塗布装置1は、角型基板Wを保持して回転させる基板保持部2と、基板保持部2の上方に基板保持部2と平行に配置された上部回転板3と、基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された下部ケース4及び上部ケース5と、基板保持部2に保持された基板Wにフォトレジスト液を供給するための処理液供給部6と、基板保持部2の上面を洗浄するための上面洗浄部7と、上部回転板3の下面を洗浄するための下面洗浄部8とを主に有している。
【0010】 基板保持部2は、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状であり、中央部に配置された基板吸着部10と、基板吸着部10の周囲に配置されたリング状の周端部11とから構成されている。基板吸着部10の上面には、同心円上に複数の吸着溝12が形成されている。また、放射状に複数の吸着溝13も形成されている。さらに、基板吸着部10の中心には、負圧経路20の先端が開口している。」
「【0012】 筒状回転軸18は上部にフランジ部を有しており、このフランジ部には、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定されている。下部回転板24上には、周端部11と、周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されている。周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されている。この結果、基板吸着部10は、周端部11と一体回転し、かつ周端部11に対して上下動可能となっている。リング部材25の下部回転板24の端面に対向する内周面には、図4に示すように、液溜め空間26が形成されている。液溜め空間26は、僅かな隙間で下部回転板24の上面に連通しており、かつ下方に開口している。液溜め空間26には、処理液塗布時に基板Wから流出した余剰の処理液が貯溜され、貯溜された処理液は下方に排出される。
【0013】 筒状回転軸18の下端は、図2に示すように、連結部材31を介してプーリ30に連結されている。プーリ30は、軸受により装置フレーム23に回転自在に支持されている。プーリ30と、駆動モータ32の出力軸に取り付けられたプーリ33とにはベルト34が掛け渡されている。この結果、駆動モータ32の駆動力は、プーリ33、ベルト34、プーリ30、連結部材31を介して筒状回転軸18に伝達される。そして、ポールスプライン軸受16,17を介して中心軸15に伝達される。」
「【0015】 回転継手部35は、L字状の昇降ブラケット40の先端(上端)に取り付けられている。昇降ブラケット40の基端には、ロッド固定型の昇降シリンダ41のシリンダ本体41aが取り付けられている。昇降シリンダ41のロッド41bの上下端は、装置フレーム23の下部に取り付けられたコ字状の支持フレーム27に固定されている。この昇降シリンダ41により、中心軸15が上下駆動される。この結果、中心軸15の上端に固定された基板吸着部10が昇降し、基板Wを図2に2点鎖線で示す搬入・搬出位置に配置することが可能となる。
【0016】 上部回転板3は、図2に示すように、リング部材25上に着脱可能かつ係止可能に配置され得るものであり、装着時に下部回転板24と一体回転可能である。この上部回転板3と下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成することより、回転時における空気の流れが少なくなり、処理液の飛散を防止できる。上部回転板3の中心部には、図5に示すように、開口60が形成されている。」
「【0018】 上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置される。上部ケース5の中心部には、図5及び図6に示すように、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されている。両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されている。上方側支持プレート61a上面には、エアシリンダ62とエアロータリーアクチュエータ63とが、下面にはエアシリンダ71(図6)がそれぞれ取り付けられている。エアシリンダ62のシリンダロッド62aの先端には、ブロック64が取り付けられているとともに、ブロック64に昇降及び回転自在に有底筒状の蓋65が吊り下げ保持されている。蓋65は、エアシリンダ62の進退動作により上部回転板3の中心に形成された開口60を開閉可能である。」
「【0022】 固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられている。また、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられている。環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられている。この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、係合突起72が筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっている。」
「【0025】 基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置する。そして図示しない搬送機構から基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする。この結果、基板Wが吸着保持される。そして昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させる。続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を基板Wの中心位置の上方に配置する。続いて、基板Wに対して処理液(たとえばフォトレジスト液)を所定量供給する。処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着する。これにより、上部回転板3はリング部材25上に係合され、下部回転板24と一体回転可能となる。続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させる。そして基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、基板W上に処理液を均一に塗布する。基板Wからの余剰の処理液は、リング部材25に形成された液溜め空間26に徐々に溜まり、液溜め空間26から液溜め部42に滴下されて廃液配管43から排出される。
【0026】 フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させる。すると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱される。そして昇降シリンダ41により基板Wを上昇させ、図示しない搬送機構により次の工程に基板Wを搬送する。」

そして甲第2号証に添付された図面には、「水平回転可能に角型基板Wを保持する基板保持部2が設けられ、前記基板保持部2の上方に、基板保持部2と平行に上部回転板3が配置されるとともに、前記基板保持部2に電動モータ32が連結されていて、前記上部回転板3が基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられ、前記基板保持部2と上部回転板3を囲むように下部ケース4が設けられ、さらに前記下部ケース4の開口を覆うように設けられる上部ケース5が、前記下部ケース4の上部に着脱可能に取り付けられていて、前記上部ケース5の中心部に配置された一対の固定支持部材61の環状の下方側支持プレート61b上面に設けられた固定支持部材61側の係合突起72を、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられる環状プレート74に設けられた上部回転板3側の筒体75に係合することにより、固定支持部材61の下方側支持プレート61bで前記上部回転板3を吊り下げ支持することができるように構成された処理液塗布装置」が図示されている。

そうしてみると、上記甲第2号証の摘記事項及び添付図面に図示された技術事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、これを、「引用発明2」という。)の記載が認められる。
「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2と、前記基板保持部2の上方に基板保持部2と平行に配置された上部回転板3と、基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された上部が開口する下部ケース4と、該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5と、基板保持部2に保持された角型基板Wにフォトレジスト液を供給するための処理液供給部6と、基板保持部2の上面を洗浄するための上面洗浄部7と、上部回転板3の下面を洗浄するための下面洗浄部8とからなる角型基板Wにフォトレジスト液を塗布する処理液塗布装置1において、
前記基板保持部2は、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状であり、中央部に配置された基板吸着部10と、基板吸着部10の周囲に配置されたリング状の周端部11とから構成され、
筒状回転軸18の上部のフランジ部に、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定され、前記下部回転板24上に、周端部11と、周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されていて、前記周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されていて、前記基板吸着部10は、周端部11と一体回転し、かつ周端部11に対して上下動可能となっており、
昇降シリンダ41により、中心軸15が上下駆動される結果、中心軸15の上端に固定された基板吸着部10が昇降し、角型基板Wを搬入・搬出位置に配置することが可能となり、
前記上部回転板3は、基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に配置され、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成するものとされ、
前記上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置され、前記上部ケース5の中心部に、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されていて、両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されているとともに、
前記固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっていて、
基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置し、そして搬送機構から角型基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする結果、角型基板Wが吸着保持されて、昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させ、続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を角型基板Wの中心位置の上方に配置し、続いて、角型基板Wに対してフォトレジスト液を所定量供給し、処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり、続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させて、角型基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、角型基板W上に処理液を均一に塗布し、フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱され、そして昇降シリンダ41により角型基板Wを上昇させ、搬送機構により次の工程に角型基板Wを搬送するようにした処理液塗布装置」

2 当審の判断
発明のカテゴリーの違い、及び各発明間の引用請求項の有無を考慮して、まず、最初に本件発明1について判断してから、続いて本件発明3、本件発明4の順に判断し、そして、最後に本件発明2について、判断することにする。
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)ここで、本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「角型基板1」、「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2」、「フォトレジスト液」及び「処理液塗布装置1」のそれぞれが、本件発明1の「基板」、「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「塗布液」及び「回転式塗布装置」のそれぞれに相当することは、明らかである。

(イ)そして、引用発明2の「基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された上部が開口する下部ケース4」が、本件発明1の「上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケース」に相当するから、引用発明2の「該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」は、本件発明1の「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」に相当する。

(ウ)また、引用発明2の「基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に、また、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3」と、本件発明1の「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」とは、引用発明2の「上部回転板3」が「塗布処理空間形成部材」であることに違いはないから、引用発明2の「基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に、また、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3」が、本件発明1の「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」に相当する。

(エ)そして、引用発明2の「基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置し、そして搬送機構から角型基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする結果、角型基板Wが吸着保持されて、昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させ、続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を角型基板Wの中心位置の上方に配置し、続いて、角型基板Wに対してフォトレジスト液を所定量供給し、処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり、続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させて、角型基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、角型基板W上に処理液を均一に塗布し、フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱され、そして昇降シリンダ41により角型基板Wを上昇させ、搬送機構により次の工程に角型基板Wを搬送する」の一連の処理工程における前記「上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり、」及び前記「図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱され、」という「上部ケース5の下部ケース4への装着」及び「上部ケース5の下部ケース4からの離脱」の両操作工程を担保する構成であるところの引用発明2の「前記上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置され、前記上部ケース5の中心部に、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されていて、両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されているとともに、前記固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成」においては、引用発明2の「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」が、本件発明1の「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」に相当する。

(オ)そうすると、引用発明2の「環状に形成された下方側支持プレート61bの内周部上面の周方向4か所それぞれに設けられた山形状の係合突起72と、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74の外周部に設けられた、4つの前記係合突起72のそれぞれに係合する筒体75」及び「固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合」の各構成は、それぞれ本件発明1の「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して位置決めする位置決め機構」及び「前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを結合する凹凸結合」に相当するといえる。

(カ)したがって、本件発明1と引用発明2とは、
「基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して位置決めする位置決め機構とを備え、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを結合する凹凸結合よりなる回転式塗布装置」
である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
[相違点1]:本件発明1の位置決め機構が「周方向に」位置決めし、また、本件発明1の凹凸結合が「相対回転不能に」結合するものであるのに対し、引用発明2では、前記構成であるか否か明確でない点。
[相違点2]:本件発明1が「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」を備えるのに対し、引用発明2は前記構成を備えるか否か明確でない点。
[相違点3]:本件発明1が「前記閉じる部材と前記進退部材は一体であ」るのに対し、引用発明2は前記構成であるか否か明確でない点。
[相違点4]:本件発明1の位置決め機構が、「前記進退部材が上昇して前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材から離脱させる際に、前記塗布処理空間形成部材が基板支持部材と結合した状態で塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とするよう構成され」ているのに対し、引用発明2の位置決め機構は、前記構成であるか否か明確でない点。
[相違点5]:本件発明1が「当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されている」のに対し、引用発明2は前記構成であるか否か明確でない点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
a 甲第2号証の記載からみて、甲第2号証には、「吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げることにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61bの内周部上面の周方向4か所に設けられている係合突起72を、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74の外周部に設けられている4つの筒体75に係合させて、上部ケース5とともに基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置されている下部ケース4から前記上部ケース5を離脱させ、あるいは、前記下部ケース4に前記上部ケース5を装着させて、上部回転板3をリング部材25を介して下部回転板24に対し離脱又は係合できる技術手段」の記載が認められる。
してみると、引用発明2は、「吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて上部回転板3側の筒体75に固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を係合させることにより、前記上部ケース5に吊り上げられた上部回転板3を下部回転板24に対し離脱又は係合できる技術手段」を備えているといえる。

b そして、引用発明2においては、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げることにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を上方に移動させて、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75に前記係合突起72を係合させることにより、固定支持部材61と上部回転板3とを係合させ、また、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろすことにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を下方に移動させて、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75への前記係合突起72の係合を外すことにより固定支持部材61と上部回転板3とを離脱させる構成となっているので、引用発明2は、「上部回転板3が固定支持部材61に上下方向に移動可能に係合又は離脱される」構成を備えているといえる。

c そうすると、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72との係合が外れて、上部回転板3が固定支持部材61に対して離脱しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合されてなく力学的に切断されていて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するような力は存在していないから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろしているときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が自由状態にあるといえる。
一方、反対に、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72とが係合して、上部回転板3が固定支持部材61に対して係合しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合していることにより力学的に結合していて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するように力が働くから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げるときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が拘束状態にあるといえる。

d してみれば、引用発明2においては、固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられており、また、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられているのであるから、環状に形成された下方側支持プレート61bの内周部上面の周方向4か所に設けられた係合突起72と係合し得る、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられた環状プレート74の外周部に設けられた4つの筒体75の角度位置を、恣意的に選択することにより、引用発明2の「固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72」と「上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75」とからなる係合手段は、「周方向に」位置決めさせる機能を備えているものといえる。

e そして、引用発明2の「固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72」と「上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75」とからなる前記係合手段は、前記係合突起72と前記筒体75とが一旦係合してしまえば、「相対回転不能に」結合するものとなることも、明らかなことである。

f そうすると、引用発明2は、本件発明1の相違点1に係る構成を実質的に備えているといえる。
したがって、本件発明1の相違点1の係る前記「位置決め機構が周方向に位置決めし、また、凹凸結合が相対回転不能に結合する」構成とすることは、引用発明2に基いて、当業者が容易に想到できたものである。

(イ)相違点2について
a 引用発明2の「下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」が、本件発明1の「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」に相当すること、引用発明2の「基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に、また、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3」が、本件発明1の「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」に相当すること、及び引用発明2の「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」が、本件発明1の「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」に相当することについては、すでに上記「ア 対比」欄において前述したとおりである。

b しかして、引用発明2は、上記「1 甲号各証の記載事項」欄の「(1)」に先述したとおりのものであり、前記引用発明2の上部回転板3は、基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に配置され、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成するものとされ、また、前記引用発明2の上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置され、前記上部ケース5の中心部に、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されていて、両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されているとともに、前記固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっており、基板処理時には、上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり、また、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱されるようになっている。

c そうすると、引用発明2では、「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」が、上部ケース5の中心部に配置されていることにより、一体化された固定支持部材61と上部ケース5とが、「基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に、また、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3」を支持するものである。
そして、引用発明2が、一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構により上部回転板3を吊持するようになっていて、これにより、引用発明2では、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱でき、また、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて下部ケース4から離脱させると、上部ケース5の中心部に配置されている固定支持部材61によって支持されている上部回転板3がリング部材25から離脱されるようになっているものである。

d そうすると、引用発明2の「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」が、本件発明1の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」に相当するから、引用発明2は、本件発明1の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」に実質的に相当する「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」を備えているといえる。

e したがって、引用発明2は、本件発明1の相違点2に係る構成を実質的に備えているといえる。
そして、本件発明1の相違点2の係る前記「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」の構成とすることは、引用発明2に基いて、当業者が容易に想到できたものである。

(ウ)相違点3について
a 上記「(イ)相違点2について」欄の「c」に前記したように、引用発明2は、「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」が、上部ケース5の中心部に配置されていることにより、一体化された固定支持部材61と上部ケース5とが、「基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に、また、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3」を支持するものであり、一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構により上部回転板3を吊持するようになっていて、これにより、引用発明2では、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱でき、また、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて下部ケース4から離脱させると、上部ケース5の中心部に配置されている固定支持部材61によって支持されている上部回転板3がリング部材25から離脱されるようになっているものである。

b そうすると、引用発明2は、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が、上部ケース5の中心部に配置されていることにより、固定支持部材61と上部ケース5とが一体化されているものであることは、「(イ)相違点2について」欄の「c」に前述したとおりである。

c そして、引用発明2の「下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」及び「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」が、本件発明1の「閉じる部材」及び「進退部材」にそれぞれ相当するから、引用発明2は、本件発明1の前記相違点3に係る「前記閉じる部材と前記進退部材は一体であ」る構成に相当する構成を備えているといえる。

d そうすると、引用発明2は、本件発明1の相違点3に係る構成を実質的に備えているといえる。
したがって、本件発明1の相違点3の係る前記「前記閉じる部材と前記進退部材は一体であ」る構成とすることは、引用発明2に基いて、当業者が容易に想到できたものである。

(エ)相違点4について
a 上記「(1)本件発明1について」欄の「イ 相違点についての検討」の「(ア)相違点1について」の「a」、「b」及び「c」に前述したように、引用発明2は、「吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて上部回転板3側の筒体75に固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を係合させることにより、前記上部ケース5に吊り上げられた上部回転板3を下部回転板24に対し離脱又は係合できる技術手段」を備え、そして、引用発明2においては、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げることにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を上方に移動させて、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75に前記係合突起72を係合させることにより、固定支持部材61と上部回転板3とを係合させ、また、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろすことにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72も下方に移動するから、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75への前記係合突起72の係合を外すことにより固定支持部材61と上部回転板3とを離脱させる構成となっているので、引用発明2は、「上部回転板3が固定支持部材61に上下方向に移動可能に係合又は離脱される」構成を備えている。
そして、引用発明2の上記構成により、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72との係合が外れて、上部回転板3が固定支持部材61に対して離脱しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合されてなく力学的に切断されていて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するような力は存在していないから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろしているときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が自由状態にあり、また反対に、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72とが係合して、上部回転板3が固定支持部材61に対して係合しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合していることにより力学的に結合していて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するように力が働くから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げるときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が拘束状態にあるというものである。

b そして、引用発明2の「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2」、「下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」、「基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に、また、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3」及び「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」のそれぞれが、本件発明1の「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」、「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」及び「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」に相当することから、引用発明2の「環状に形成された下方側支持プレート61bの内周部上面の周方向4か所それぞれに設けられた山形状の係合突起72と、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74の外周部に設けられた、4つの前記係合突起72のそれぞれに係合する筒体75」が、本件発明1の「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して位置決めする位置決め機構」に相当し、また、引用発明2の「固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合」する構成が、本件発明1の「前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを結合する凹凸結合」に相当することは、上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」に前述したとおりである。

c そうすると、引用発明2においても、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が上昇して、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3を基板保持部2から離脱させる際には、係合突起72と筒体75との嵌入により、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合している状態にあるから、前記上部回転板3が基板保持部2と結合した状態で上部回転板3を周方向で位置決め状態とするよう構成されているといえる。

d したがって、引用発明2は、本件発明1の相違点4に係る構成を実質的に備えているといえる。
そして、本件発明1の相違点4の係る前記「前記進退部材が上昇して前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材から離脱させる際に、前記塗布処理空間形成部材が基板支持部材と結合した状態で塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とするよう構成され」ている構成とすることは、引用発明2に基いて、当業者が容易に想到できたものである。

(オ)相違点5について
a 引用発明2が、「吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて上部回転板3側の筒体75に固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を係合させることにより、前記上部ケース5に吊り上げられた上部回転板3を下部回転板24に対し離脱又は係合できる技術手段」を備え、そして、引用発明2においては、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げることにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を上方に移動させて、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75に前記係合突起72を係合させることにより、固定支持部材61と上部回転板3とを係合させ、また、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろすことにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72も下方に移動するから、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75への前記係合突起72の係合を外すことにより固定支持部材61と上部回転板3とを離脱させる構成となっており、前記構成により、引用発明2では、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72との係合が外れて、上部回転板3が固定支持部材61に対して離脱しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合されてなく力学的に切断されていて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するような力は存在していないから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろしているときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が自由状態にあり、また反対に、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72とが係合して、上部回転板3が固定支持部材61に対して係合しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合していることにより力学的に結合していて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するように力が働くから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げるときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が拘束状態にあるというものであることについては、上記「(エ)相違点4について」欄の「a」において前述した。

b そして、引用発明2では、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げるときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が拘束状態にあるから、引用発明2は、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が上昇して、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3を基板保持部2から離脱させる際には、係合突起72と筒体75との嵌入により、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合している状態にあるから、前記上部回転板3が基板保持部2と結合した状態で上部回転板3を周方向で位置決め状態とするよう構成されているといえることについても、上記「(エ)相違点4について」欄の「c」において前述したとおりである。

c そうすると、引用発明2においては、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61が上昇して、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3が基板保持部2から離脱することになり、このとき、係合突起72と筒体75との嵌入により、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合している状態にあって、前記上部回転板3が基板保持部2と結合した状態で上部回転板3を周方向で位置決め状態とするよう構成されているのであるから、引用発明2においても、係合突起72と筒体75との嵌入(本件発明1の「位置決め機構」に相当する。)により、上部回転板3(本件発明1の「塗布処理空間形成部材」に相当する。)を周方向で位置決め状態のままで、固定支持部材61を上昇させると上部回転板3も上昇させられて、前記上部回転板3を基板保持部2(本件発明1の「基板支持部材」に相当する。)から離脱させることになるものである。

d 以上のことから、引用発明2は、本件発明1の相違点5に係る上記「当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されている」の構成を備えているといえるのであり、そして、本件発明1の上記の相違点5に係る構成は、本件発明1の相違点4に係る構成と、技術的にみて同じ意味内容の事項を、言葉と表現法を変えることにより、言い替えているだけのことである。
そうすると、本件発明1の前記相違点5に係る構成は、本件発明1の相違点4に係る構成と実質的に同じ意味内容の構成であり、しかも、引用発明2に対する実質的な相違ではなく、形式的な表現上の相違であるにすぎない。

e したがって、引用発明2は、本件発明1の相違点5に係る前記「当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されている」構成を備えており、本件発明1の前記相違点5に係る構成を得ることは、当業者が引用発明2に基いて、容易に想到できたものである。

そして、本件発明1の奏する作用効果は、引用発明2から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(2)本件発明3について
ア 対比
(ア)本件発明3と引用発明2とを対比する前に、請求項1に係る本件発明1と請求項3に係る本件発明3とを比較すると、本件発明1と本件発明3とは、請求項1及び請求項3に共に記載されている「基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、基板を回転可能に支持する基板支持部材と、塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなることを特徴とする回転式塗布装置。」の点で構成が共通し、その余の点で構成が相違している。
そして、本件発明3の本件発明1と共通する構成については、すでに上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」、並びに「イ 相違点についての検討」欄の「(ア)相違点1について」及び「(ウ)相違点3について」において前述したとおりである。

(イ)そうすると、ここで、本件発明3と引用発明2とを対比した場合の両者の構成上の相違は、上記「(1)本件発明1について」欄において前述した本件発明1と引用発明2との構成上の相違である相違点1及び相違点3を含み、かつ、本件発明1と本件発明3と構成が共通していない「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」、「前記吊持機構は、前記塗布処理空間形成部材の上側中央部に立設された取付部材と、前記取付部材の上部から水平方向に延在する第1の部材と、前記進退部材に設けられ、前記第1の部材の下方で前記取付部材に沿って相対昇降可能な第2の部材とを備えて、前記塗布処理空間形成部材と前記基板支持部材との結合時には、前記第2の部材に対して前記取付部材および前記第1の部材が相対回転自在となるように設けられており、」及び「前記位置決め機構は、前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とする」の構成であることは明らかである。

(ウ)しかして、引用発明2は、上記「1 甲号各証の記載事項」欄の「(1)」に前掲したとおりのものであり、引用発明2の「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2」、「上部回転板3」及び「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」のそれぞれが、本件発明1の「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」及び「進退部材」のそれぞれに対応する関係にあることは、すでに上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」において前述したとおりであり、本件発明3についても同様に、本件発明3と引用発明2とでは、引用発明2の「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2」、「上部回転板3」及び「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」のそれぞれが、本件発明3の「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」及び「進退部材」のそれぞれに対応している。
そして、引用発明2の「取付部材73」、「環状プレート74」及び「固定支持部材61の下方側支持プレート61b」が、本件発明1の「取付部材」、「第1の部材」及び「第2の部材」のそれぞれに対応することも明らかなことである。
また、引用発明2の「環状に形成された下方側支持プレート61bの内周部上面の周方向4か所それぞれに設けられた山形状の係合突起72と、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74の外周部に設けられた、4つの前記係合突起72のそれぞれに係合する筒体75」及び「固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合」の各構成についても、本件発明1と同様であり、それぞれ本件発明3の「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して位置決めする位置決め機構」及び「当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを結合する凹凸結合」に相当している。

(エ)したがって、本件発明3と引用発明2とは、
「基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して位置決めする位置決め機構とを備え、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを結合する凹凸結合よりなる回転式塗布装置」
である点で一致し、上記「(1)本件発明1について」欄において前述した上記相違点1及び相違点3の他に、次の点で両者の構成が相違する。
[相違点6]:本件発明3が「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」を備えるのに対し、引用発明2は前記構成を備えるか否か明確でない点。
[相違点7]:本件発明3の吊持機構が「前記塗布処理空間形成部材の上側中央部に立設された取付部材と、前記取付部材の上部から水平方向に延在する第1の部材と、前記進退部材に設けられ、前記第1の部材の下方で前記取付部材に沿って相対昇降可能な第2の部材とを備えて、前記塗布処理空間形成部材と前記基板支持部材との結合時には、前記第2の部材に対して前記取付部材および前記第1の部材が相対回転自在となるように設けられて」いるのに対し、引用発明2は前記構成であるか否か明確でない点。
[相違点8]:本件発明3の位置決め機構が「前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とする」のに対し、引用発明2は、前記構成であるか否か明確でない点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1及び相違点3について
本件発明3と引用発明2との構成上の相違である相違点1及び相違点3は、本件発明1と引用発明2との構成上の相違である相違点1及び相違点3と共通しており、前記相違点1及び相違点3については、上記「(1)本件発明1について」欄の「イ 相違点についての検討」の「(ア)相違点1について」及び「(ウ)相違点3について」において、すでに前述したとおりであるので、重複を避けるために、ここでは繰り返さない。

(イ)相違点6について
a 上記「(1)本件発明1について」欄の「(イ)相違点2について」において、引用発明2が、本件発明1の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」に実質的に相当する「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」を備えているといえることについて前述した。

b そして、引用発明2の前記「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」は、上記「(1)本件発明1について」欄の「(イ)相違点2について」の「b」に前述したように、引用発明2の上部回転板3は、基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に配置され、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成するものとされ、また、前記引用発明2の上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置され、前記上部ケース5の中心部に、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されていて、両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されているとともに、前記固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっており、基板処理時には、上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり、また、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱されるようになっているものである。

c そうすると、引用発明2の前記「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」においては、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱させる場合、及び、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げて下部ケース4から離脱させる場合には、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合するまでの間、或いは、固定支持部材61側の係合突起72を上部回転板3側の筒体75から係合を外すまでの間は、いずれの場合も固定支持部材61の下方側支持プレート61bが上部回転板3の環状プレート74を固定支持部材61側の係合突起72と上部回転板3側の筒体75とによる嵌入により係合させながら支持しているから、結局のところ、引用発明2においては、引用発明2の「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」が、上部回転板3を相対昇降可能に支持しているものであるといえる。

d そうすると、引用発明2の「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」が、本件発明3の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」に相当するから、引用発明2は、本件発明3の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」に実質的に相当する「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」を備えているといえる。

e したがって、引用発明2は、本件発明3の相違点6に係る前記「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」の構成を備えているから、本件発明3の前記相違点6に係る構成を得ることは、当業者が引用発明2に基いて容易に想到できたものである。

(ウ)相違点7について
a 引用発明2が、「上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72との係合が外れて、上部回転板3が固定支持部材61に対して離脱しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合されてなく力学的に切断されていて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するような力は存在していないから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろしているときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して自由状態にあるといえ、一方、反対に、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72とが係合して、上部回転板3が固定支持部材61に対して係合しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合していることにより力学的に結合していて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するように力が働くから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げるときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して拘束状態にあるといえる」ものであることは、上記「(1)本件発明1について」欄の「イ 相違点について」の「(ア)相違点1について」の「c」に前述したとおりである。
そして、引用発明2の「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」は、上記「(イ)相違点2について」欄の「c」及び「d」に前述したとおりのものである。

b そうすると、引用発明2の「一体化された固定支持部材61と上部ケース5とからなる上部回転板3の支持機構」は、上部回転板3の上側中央部に立設された取付部材73と、前記取付部材73の上部から水平方向に延在する環状プレート74と、固定支持部材61に設けられ、前記環状プレート74の下方で前記取付部材73に沿って相対昇降可能な下方側支持プレート61bとを備えているものであることが明らかである。

c そして、引用発明2では、基板保持部2(本件発明3の「基板支持部材」に相当する。)の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に配置されている上部回転板3(本件発明3の「塗布処理空間形成部材」に相当する。)が、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられている場合は、上記「a」に前述してあるように、前記上部回転板3は、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72との係合が外れている場合であるから、その場合には、前記上部回転板3の回転を妨げるような拘束力を受けていない状態にあるから、引用発明2においても、上部回転板3と基板保持部2との結合時には、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61bに対して取付部材73及び環状プレート74が相対回転自在となるように設けられているといえる。

d したがって、引用発明2は、本件発明3の相違点7に係る前記「前記塗布処理空間形成部材の上側中央部に立設された取付部材と、前記取付部材の上部から水平方向に延在する第1の部材と、前記進退部材に設けられ、前記第1の部材の下方で前記取付部材に沿って相対昇降可能な第2の部材とを備えて、前記塗布処理空間形成部材と前記基板支持部材との結合時には、前記第2の部材に対して前記取付部材および前記第1の部材が相対回転自在となるように設けられて」いる構成を、実質的に備えているといえるから、本件発明3の前記相違点7に係る構成を得ることは、当業者が引用発明2に基いて容易に想到できたものである。

(エ)相違点8について
a 上記「(1)本件発明1について」欄の「イ 相違点についての検討」の「(エ)相違点4について」に前述したように、引用発明2は、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が上昇して、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3を基板保持部2から離脱させる際には、係合突起72と筒体75との嵌入により、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合している状態にあり、前記上部回転板3が基板保持部2と結合した状態で上部回転板3を周方向で位置決め状態とするよう構成されているものである。

b そうすると、引用発明2は、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61の上昇時に、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3と前記固定支持部材61の相対昇降動作に応動して前記上部回転板3を位置決め状態とするものであるといえる。

c したがって、本件発明3の前記相違点8に係る前記「前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とする」構成は、実質的な相違ではなく、形式的な表現上の相違であるにすぎない。

d そうすると、引用発明2は、本件発明3の相違点8に係る前記「前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とする」構成を、実質的に備えているといえるから、本件発明3の前記相違点8に係る構成を得ることは、当業者が引用発明2に基いて容易に想到できたものである。

そして、本件発明3の奏する作用効果は、引用発明2から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明3は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3)本件発明4について
ア 対比
(ア)引用発明2と本件発明4とを対比する前に、請求項3に係る本件発明3と請求項4に係る本件発明4とを比較すると、本件発明4は請求項3に係る本件発明3を引用する発明であるから、本件発明3と本件発明4とは、請求項3に記載されている構成が共通し、その余の点で構成が相違することは明らかである。
そして、本件発明4の本件発明3と共通する構成については、すでに上記「(2)本件発明3について」欄の「ア 対比」及び「イ 相違点についての検討」の欄において前述したとおりである。

(イ)そうすると、ここで、引用発明2と本件発明4とを対比した場合の両者の構成上の相違は、上記「(2)本件発明3について」欄において前述した引用発明2と本件発明3との構成上の相違である相違点1、相違点3、相違点6、相違点7及び相違点8を含み、かつ、本件発明3と本件発明4とで構成が共通していない「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」の構成であることは明らかである。

(ウ)しかして、上記「(2)本件発明3について」欄の「ア 対比」において、引用発明2の次の各構成が本件発明3の各構成にそれぞれ相当することを前述した。
a 引用発明2の「角型基板1」、「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2」、「フォトレジスト液」及び「処理液塗布装置1」のそれぞれが、本件発明3の「基板」、「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「塗布液」及び「回転式塗布装置」に相当すること。
b 引用発明2の「該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」が、本件発明3の「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」に相当すること。
c 引用発明2の「基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に、また、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成する上部回転板3」が、本件発明3の「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能でかつ前記基板支持部材との結合時には当該基板支持部材と共に回転可能な塗布処理空間形成部材」に相当すること。
d 引用発明2の「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」、「取付部材73」、「環状プレート74」、「環状に形成された下方側支持プレート61b」のそれぞれが、本件発明3の「進退部材」、「取付部材」、「第1の部材」、「第2の部材」のそれぞれに相当すること。
e 引用発明2の「環状に形成された下方側支持プレート61bの内周部上面の周方向4か所それぞれに設けられた山形状の係合突起72と、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74の外周部に設けられた、4つの前記係合突起72のそれぞれに係合する筒体75」及び「固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合」の各構成が、それぞれ本件発明3の「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して位置決めする位置決め機構」及び「当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを結合する凹凸結合」に相当すること。

(エ)したがって、請求項3を引用する請求項4に係る本件発明4においても、引用発明2の「処理液塗布装置1」、「下部ケース4」、「該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」、「上部回転板3」、「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2」及び「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」が、本件発明4の「回転式塗布装置」、「ケース」、「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」、「塗布処理空間形成部材」、「基板支持部材」及び「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」にそれぞれ相当することは明らかである。

(オ)そうすると、本件発明4と引用発明2とは、
「請求項3に記載の回転式塗布装置」
である点で一致し、上記「(2)本件発明3について」欄において前述した上記相違点1、相違点3、相違点6、相違点7及び相違点8の他に、次の点で両者の構成が相違する。
[相違点9]:本件発明4が、「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成される」のに対して、引用発明2では、前記構成が明確でない点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1、相違点3、相違点6、相違点7及び相違点8について
本件発明4と引用発明2との構成上の相違である相違点1、相違点3、相違点6、相違点7及び相違点8は、本件発明3と引用発明2との構成上の相違である相違点1、相違点3、相違点6、相違点7及び相違点8と共通しており、前記相違点1、相違点3、相違点6、相違点7及び相違点8については、上記「(2)本件発明3について」欄の「イ 相違点についての検討」において、すでに前述したとおりであるので、重複を避けるために、ここでは繰り返さない。

(イ)相違点9について
a 引用発明2の「該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」が、本件発明3の「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」に相当することは、前記「(ウ)」欄のbに摘記したとおりであり、また、引用発明2の「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」が、本件発明3の「進退部材」に相当することについても、前記「(ウ)」欄のdに摘記したとおりである。

b そして、引用発明2においては、上部ケース5が、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置され、前記上部ケース5の中心部に、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されていて、両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されているとともに、前記固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっているものである。

c そうすると、引用発明2の前記「該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置されているのであり、そして、前記「上部ケース5」の中心部に、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されていて、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっているのであるから、引用発明2においては、前記「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」は、前記「該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」の中心部に配置されて、前記上部ケース5と一体化されているといえる。

d 以上のことから、引用発明2の前記「上部ケース5」は、該上部ケース5が下部ケース4に着脱可能に取り付けられると、前記上部ケース5が下部ケース4の開口を覆う機能を具備していることは明らかである。
また、引用発明2の前記「固定支持部材61」は、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できるのであるから、前記固定支持部材61は、上部回転板3を支持して下部回転板24に対して進退させる機能を具備しているといえる。
そして、引用発明2の前記「固定支持部材61」が、前記「上部ケース5」と一体化されているのであるから、前記固定支持部材61も、下部ケース4に着脱可能に取り付けられると、前記固定支持部材61が下部ケース4の開口を覆うこととなることも明らかである。

e したがって、引用発明2においても、「該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5」と「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」とが、本件発明4と同様に、「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材」から構成されているといえるから、本件発明4の相違点9に係る前記構成は、実質的な構成上の相違ではなく、形式上の表現上の相違でしかない。

f そうすると、引用発明2は、本件発明4の相違点9に係る前記「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成される」の構成を、実質的に備えているといえるから、本件発明4の前記相違点9に係る構成を得ることは、当業者が引用発明2に基いて容易に想到できたものである。

そして、本件発明4の奏する作用効果は、引用発明2から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明4は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(4)本件発明2について
ア 対比
(ア)引用発明2は、上記「1 甲号各証の記載事項」欄の「(1)」に前掲したとおりのものである。
それによれば、引用発明2の処理液塗布装置は、角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2と、前記基板保持部2の上方に基板保持部2と平行に配置された上部回転板3と、基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された上部が開口する下部ケース4と、該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5と、基板保持部2に保持された角型基板Wにフォトレジスト液を供給するための処理液供給部6と、基板保持部2の上面を洗浄するための上面洗浄部7と、上部回転板3の下面を洗浄するための下面洗浄部8とからなる角型基板Wにフォトレジスト液を塗布する処理液塗布装置1において、基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置し、そして搬送機構から角型基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする結果、角型基板Wが吸着保持されて、昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させ、続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を角型基板Wの中心位置の上方に配置し、続いて、角型基板Wに対してフォトレジスト液を所定量供給し、処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり、続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させて、角型基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、角型基板W上に処理液を均一に塗布し、フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱され、そして昇降シリンダ41により角型基板Wを上昇させ、搬送機構により次の工程に角型基板Wを搬送するようにした」ものである。

(イ)そして、本件発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2」、「上部回転板3」及び「下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61」のそれぞれが、本件発明2の「上部が開口したケース内に回転可能に設けられた基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」及び「進退部材」のそれぞれに相当する。

(ウ)しかして、本件発明2は回転式塗布方法の発明であり、引用発明2は処理液塗布装置の発明である点で、両者の「発明のカテゴリー」が相違する。
しかしながら、両者の「発明のカテゴリー」の相違を除けば、引用発明2の「角型基板Wを水平回転可能に保持して回転させる基板保持部2と、前記基板保持部2の上方に基板保持部2と平行に配置された上部回転板3と、基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された上部が開口する下部ケース4と、該下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5と、基板保持部2に保持された角型基板Wにフォトレジスト液を供給するための処理液供給部6と、基板保持部2の上面を洗浄するための上面洗浄部7と、上部回転板3の下面を洗浄するための下面洗浄部8とからなる処理液塗布装置1による角型基板Wにフォトレジスト液を塗布すること」と、本件発明2の「基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布方法」とは、いずれも「回転式塗布に関する発明」である点で共通するといえる。

(エ)そして、引用発明2の「まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置し、そして搬送機構から角型基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする結果、角型基板Wが吸着保持されて、昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させ」る工程、「続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を角型基板Wの中心位置の上方に配置し、続いて、角型基板Wに対してフォトレジスト液を所定量供給し、処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ」る工程、「続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させて、角型基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、角型基板W上に処理液を均一に塗布」する工程、及び「フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止」する工程のそれぞれが、本件発明2の「上部が開口したケース内に回転可能に設けられた基板支持部材にて基板を支持する工程」、「基板支持部材に支持した基板に塗布液を供給する工程」、「前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材とを回転させて基板上の塗布液を拡散流動させる工程」、及び「前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材の回転を停止させる工程」のそれぞれに相当することは、明らかである。

(オ)さらに、引用発明2は、固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっていて、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り下げて、固定支持部材61側の係合突起72を上部回転板3側の筒体75から離脱させると、上部回転板3をリング部材25に対して装着できる状態となるものである。
そして、引用発明2の前記「図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り下げて、固定支持部材61側の係合突起72を上部回転板3側の筒体75から離脱させると、上部回転板3をリング部材25に対して装着できる状態」は、本件発明2の「進退部材により塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させて、前記進退部材と一体の閉じ部材により前記ケースの開口を閉じる」状態に他ならず、また、引用発明2の「続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり」の工程は、前記「図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り下げて、固定支持部材61側の係合突起72を上部回転板3側の筒体75から離脱させると、上部回転板3をリング部材25に対して装着できる状態」に引き続き行われる工程であるから、引用発明2の「続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり」の工程が、本件発明2の「進退部材により塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させて、前記進退部材と一体の閉じ部材により前記ケースの開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材と結合させて塗布処理空間を形成し、前記塗布処理空間形成部材と基板支持部材とを前記ケースに対して回転可能状態とする工程」に相当するといえる。

(カ)また、引用発明2の「フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱され」る工程は、「固定支持部材61を上昇させることにより、上部回転板3を下部回転板24から取り外し、さらに、引用発明2の「環状に形成された下方側支持プレート61bの内周部上面の周方向4か所それぞれに設けられた山形状の係合突起72」を、「上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74の外周部に設けられた、4つの前記係合突起72のそれぞれに係合する筒体75」に係合させて、固定支持部材61で上部回転板3を支持すること」に他ならならず、このときの上部回転板3は、固定支持部材61で支持されていて、固定支持部材61側の係合突起72と上部回転板3側の筒体75とは係合している状態にあることから、引用発明2の前記「フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱され」る工程が、本件発明2の「位置決め状態とされている前記塗布処理空間形成部材を上昇させて前記基板支持部材から離脱させる工程」に相当する。

(キ)そうすると、本件発明2と引用発明2とは、
「基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布方法において、
上部が開口したケース内に回転可能に設けられた基板支持部材にて基板を支持する工程と、
基板支持部材に支持した基板に塗布液を供給する工程と、
進退部材により塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させて、前記進退部材と一体の閉じ部材により前記ケースの開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材と結合させて塗布処理空間を形成し、前記塗布処理空間形成部材と基板支持部材とを前記ケースに対して回転可能状態とする工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材とを回転させて基板上の塗布液を拡散流動させる工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材の回転を停止させる工程と、
位置決め状態とされている前記塗布処理空間形成部材を上昇させて前記基板支持部材から離脱させる工程と、
を備えた回転式塗布に関する発明」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
[相違点10]:本件発明2が、「回転式塗布方法」の発明であるのに対し、引用発明2は「処理液塗布装置」の発明である点。
[相違点11]:本件発明2が、「前記基板支持部材と結合したままの前記塗布処理空間形成部材を凹凸結合により周方向で位置決め状態とする工程」を備えるのに対し、引用発明2は、前記構成を備えているか否か不明である点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点10について
a 引用発明2の物の発明を、方法の発明に、発明のカテゴリーを変更することは、当業者が何らの格別の技術力を要することなく、文言を変更することにより容易になし得ることである。

b したがって、本件発明2の相違点10に係る前記構成は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

(イ)相違点11について
a 引用発明2が、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げることにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を上方に移動させて、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75に前記係合突起72を係合させることにより、固定支持部材61と上部回転板3とを係合させ、また、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろすことにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を下方に移動させて、上部回転板3の環状プレート74側の筒体75への前記係合突起72の係合を外すことにより固定支持部材61と上部回転板3とを離脱させる構成となっているので、引用発明2は、「上部回転板3が固定支持部材61に上下方向に移動可能に係合又は離脱される」構成を備えていること、及び、「上部回転板3の環状プレート74側の筒体75と前記係合突起72との係合が外れて、上部回転板3が固定支持部材61に対して離脱しているときには、上部回転板3と固定支持部材61とは互いに係合されてなく力学的に切断されていて、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72と上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75との間に、両者を相互に力学的に拘束するような力は存在していないから、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り降ろしているときには、上部回転板3は固定支持部材61に対して回転位置が自由状態にある」ことは、上記「(1)本件発明1について」欄の「イ 相違点の検討」の「(ア)相違点1について」の「b」及び「c」に前述したとおりである。

b そして、上記引用発明2においては、吊り上げ手段で上部ケース5を吊り上げることにより、固定支持部材61の環状に形成された下方側支持プレート61b側の係合突起72を上方に移動させて、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられている環状プレート74側の筒体75に前記係合突起72を係合させることにより、固定支持部材61と上部回転板3とを係合させて、上部回転板3を周方向で位置決め状態としながら、吊り上げ手段で吊り上げられる固定支持部材61に支持されながら上方に移動する上部回転板3を、前記上部回転板3が基板保持部2の下側回転板24にリング部材25を介して結合されたままの状態とすることもできるように、上方へ移動させる場合の固定支持部材61、すなわち上部回転板3の移動距離或いは移動速度を設計上の許容範囲内において適宜設定することにより、上部回転板3の移動タイミングを最適化することは、当業者が必要に応じて容易になし得ることである。

c そうすると、引用発明2が、本件発明2の前記相違点11に係る「前記基板支持部材と結合したままの前記塗布処理空間形成部材を凹凸結合により周方向で位置決め状態とする工程」を備えるように設計変更することは、引用発明2の発明に対して、当業者が通常の最適化能力を発揮することにより、容易になし得ることである。

d したがって、本件発明2の上記相違点11は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本件発明2の奏する作用効果は、引用発明2から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明2は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 当審の職権による無効理由2(特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号違反)についての検討
1 本件発明1、本件発明3及び本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」について
(1)被請求人が親原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平6-338447号公報〕の記載から自明であると主張する本件発明1、本件発明3及び本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」について、甲第1号証の記載からは、甲第1号証に記載の「固定支持部材16」が、本件発明1、本件発明3及び本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」であるといえないことは、上記「第4 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討」欄の「2(2)ア」に前述したとおりである。
そして、本件特許出願が、上記甲第1号証に係る特願平5-151567号を親原出願とする分割出願であるとされていたことから、「固定支持部材16」についての本件訂正明細書における記載は、上記甲第1号証に記載されている技術事項の範囲内にとどまり、甲第1号証と同様に、本件訂正明細書の記載からは、前記「固定支持部材16」が、本件発明1、本件発明3及び本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」であるとはいえない。

(2)したがって、「固定支持部材16」が「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」であることの根拠となる記載を、本件訂正明細書の中に認めることができない。また、「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の技術事項が、本件訂正明細書の記載から自明であるということもできない。

(3)そうすると、本件発明1、本件発明3及び本件発明4の前記「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材」の構成要件が、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されてなく、また、前記構成要件について、当業者が実施できる程度に本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができないばかりでなく、前記構成要件を含む本件発明1、本件発明3及び本件発明4の構成が、明確でないものとなっている。

2 本件発明1ないし本件発明4等に記載されている「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」、「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」及び「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」について
(1)被請求人が原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平6-338447号公報〕に記載されていると主張する本件発明1ないし本件発明4の「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素の文言について、甲第1号証の記載からは、甲第1号証に記載の「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」のそれぞれが、本件発明1ないし本件発明4の「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素であるとはいえないことは、上記「第4 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討」欄の「2(2)イ」に前述したとおりである。
そして、本件特許出願が、上記甲第1号証に係る特願平5-151567号を親原出願とする分割出願であるとされていたことから、「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」についての本件訂正明細書における記載は、上記甲第1号証に記載されている技術事項の範囲内にとどまり、甲第1号証と同様に、本件訂正明細書の記載からは、前記「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」が、本件発明1ないし本件発明4の「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素であるとはいえない。

(2)したがって、「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」が本件発明1ないし本件発明4の「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素であることの根拠となる記載を、本件訂正明細書の中に認めることができない。また、本件発明1ないし本件発明4の「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素の技術事項が、本件訂正明細書の記載から自明であるということもできない。

(3)しかも、前記「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」という文言は、「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」という具体的構成の上位概念であり、前記「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」の具体的構成だけではなく、他の構成の概念をも包含する拡張された一般的な概念であるから、前記「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の文言が、必ずしも前記「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」のみをそれぞれ一義的に意味するものでないことは明らかである。
したがって、前記「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」が、「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素にそれぞれ該当するということはいえるが、逆に、「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の文言が、前記「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」をそれぞれ意味するとは必ずしもいえないので、前記「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」を離れた本件発明1ないし本件発明4の「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素の文言は、前記「回転台」;「上部回転板3」と「上部支持板4」;「固定支持部材16」;「筒体32」と「係合突起29」;「筒体32と係合突起29の嵌入」を超える意味内容の構成要素であって、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に明示の記載がなく、また示唆する記載もないので、明確でないものとなっている。

(4)そうすると、本件発明1ないし本件発明4の前記「基板支持部材」、「塗布処理空間形成部材」、「進退部材」、「位置決め機構」及び「凹凸結合」の各構成要素を含む本件発明1ないし本件発明4の「基板を回転可能に支持する基板支持部材」、「塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材」、「前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材」、「前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構」及び「前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合」の各構成要件についても、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されてなく、また、前記各構成要件について、当業者が実施できる程度に本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができないばかりでなく、明確でないものとなっている。

3 本件発明1ないし本件発明4の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」及び「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」について
(1)本件発明1の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、本件発明3及び本件発明4の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」、及び、本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」の各技術事項については、甲第1号証に記載されているということができないばかりでなく、各技術事項が甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできないことは、上記「第4 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討」欄の「2(2)ウ」に前述したとおりである。

(2)そして、本件特許出願の本件訂正明細書には、上記の各技術事項の中の「進退部材」、「塗布処理空間形成部材」、「吊持機構」、「相対昇降可能に支持するための吊持機構」、「前記ケースの前記開口を閉じる部材」、「基板支持部材」及び「前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材」の各構成要素について、定義がなされているわけのものでもなく、不明というしかない。

(3)したがって、本件発明1の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構」、本件発明3及び本件発明4の「前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構」、及び、本件発明4の「前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されること」の各技術事項については、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されてなく、また、前記各構成要件について、当業者が実施できる程度に本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができないばかりでなく、明確でないものとなっている。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし本件発明4の特許は、特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、請求人の無効理由2又は当審の職権による無効理由1により無効とすべきものである。
また、本件発明1ないし本件発明4の特許は、特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、当審の職権による無効理由2により無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
回転式塗布装置および回転式塗布方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を吊持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、
前記位置決め機構は、前記進退部材が上昇して前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材から離脱させる際に、前記塗布処理空間形成部材が基板支持部材と結合した状態で塗布処理空間形成部材を周方向で位置決め状態とするよう構成され、
当該位置決め機構による位置決め状態で前記塗布処理空間形成部材を上昇させて基板支持部材から離脱させるよう構成されていることを特徴とする回転式塗布装置。
【請求項2】基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布方法において、
上部が開口したケース内に回転可能に設けられた基板支持部材にて基板を支持する工程と、
基板支持部材に支持した基板に塗布液を供給する工程と、
進退部材により塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させて、前記進退部材と一体の閉じ部材により前記ケースの開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を前記基板支持部材と結合させて塗布処理空間を形成し、前記塗布処理空間形成部材と基板支持部材とを前記ケースに対して回転可能状態とする工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材とを回転させて基板上の塗布液を拡散流動させる工程と、
前記基板支持部材と塗布処理空間形成部材の回転を停止させる工程と、
前記基板支持部材と結合したままの前記塗布処理空間形成部材を凹凸結合により周方向で位置決め状態とする工程と、
位置決め状態とされている前記塗布処理空間形成部材を上昇させて前記基板支持部材から離脱させる工程と、
を備えたことを特徴とする回転式塗布方法。
【請求項3】基板を回転させることにより当該基板の表面に塗布液を塗布する回転式塗布装置において、
基板を回転可能に支持する基板支持部材と、
塗布処理空間を形成すべく前記基板支持部材と結合可能な塗布処理空間形成部材と、
上部が開口し、前記基板支持部材の周辺を囲むケースと、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材と、
前記進退部材が前記塗布処理空間形成部材を相対昇降可能に支持するための吊持機構と、
前記塗布処理空間形成部材を前記進退部材に対して周方向に位置決めする位置決め機構とを備え、
前記閉じる部材と前記進退部材は一体であり、
前記位置決め機構は、前記塗布処理空間形成部材の前記基板支持部材からの離脱時には当該塗布処理空間形成部材と進退部材とを相対回転不能に結合する凹凸結合よりなり、
前記吊持機構は、前記塗布処理空間形成部材の上側中央部に立設された取付部材と、前記取付部材の上部から水平方向に延在する第1の部材と、前記進退部材に設けられ、前記第1の部材の下方で前記取付部材に沿って相対昇降可能な第2の部材とを備えて、前記塗布処理空間形成部材と前記基板支持部材との結合時には、前記第2の部材に対して前記取付部材および前記第1の部材が相対回転自在となるように設けられており、
前記位置決め機構は、前記進退部材の上昇時に、前記塗布処理空間形成部材と前記進退部材の相対昇降動作に応動して前記塗布処理空間形成部材を位置決め状態とすることを特徴とする回転式塗布装置。
【請求項4】請求項3に記載の回転式塗布装置において、
前記ケースに着脱可能に設けられて前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じる部材と、
前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる進退部材とは、前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ケースへの装着時に前記ケースの前記開口を閉じるとともに、前記塗布処理空間形成部材を支持して前記基板支持部材に対して進退させる部材により構成されることを特徴とする回転式塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示パネル用のガラス基板、半導体ウエハ、半導体製造装置用のマスク基板などの基板の表面に、遠心力を利用してフォトレジスト液などの塗布液を薄膜状に塗布するための回転式塗布装置および回転式塗布方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の回転式塗布装置では、基板を水平に支持して回転させる回転台と、この回転台を閉じる蓋と、回転台の周囲を囲むケースと、ケースの上面を閉じる蓋とを備え、ケースを閉じる蓋を回転しないように固定支持するとともに、回転台を閉じる蓋をベアリングにより回転可能に支持している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来例の場合には、回転台を閉じる蓋は、ベアリングにより常時回転自在となるように支持されている。そのため、この蓋は、回転台を閉塞していない状態、すなわち、蓋が上昇した状態でも回転可能であり、たとえば装置のオペレータが誤って蓋に触れると不所望に回転してしまう。このように蓋が回転台に対して不所望に回転すると、次回の回転台と蓋との結合場所が周方向で変化してしまい、一定の結合状態を保つことが困難になる。また、回転台と蓋との結合は、一定の結合状態を保つとともに回転中の回転台と蓋とのスリップを防ぐなどの目的で、相互の周方向の結合位置をピンなどの位置決め機構により決定している場合もある。このような場合に、上昇した状態の蓋が不所望に回転すると、次に蓋を下降させて回転台と結合させようとしても、結合することができなくなるおそれがある。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであつて、回転台と離れた状態にある上部板の不所望な回転を防止し、回転台と上部板の結合状態を常に一定に保つことができて安定した基板処理が可能な回転式塗布装置および回転式塗布方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の構成と効果を、後に詳述する実施形態に基づき図面の符号を参照して説明する。
【0006】
[非接触構造]
【0007】
実施形態に記載のように、塗布処理に際しては、電動モータ7を起動して回転台2、上部支持板4、上部回転板3および角型基板1を一体に水平回転させる。このとき、図5、図6等の図面から明らかなように、回転台2、上部支持板4、上部回転板3、取付部材30、環状プレート31は、固定支持部材16とは非接触状態となっており、回転台2、上部支持板4、上部回転板3は固定支持部材16にかかわらず自由に回転できる。
【0008】
[非接触構造による効果]
【0009】
角形基板1よりも大きな上部支持板4、上部回転板3などをベアリングを用いて回転自在に支持する場合と比べ、摺動部分が少なくなるため装置の寿命やパーティクル発生量において有利であり、また大型かつ高精度なベアリングが不要となりコストにおいて有利である。また、ベアリングにより回転自在に支持する場合では、それら上部支持板4と上部回転板3を支持するベアリングの回転中心を回転台2の回転軸心Pに対して厳密に一致させなければ円滑な回転は得られなかったが、本構成ではそのような厳密さは不要であり、回転台2等の円滑な回転による回転塗布を低コストで実現できる。
【0010】
[相対昇降構造]
【0011】
固定支持部材16の下方側支持プレート16bは、取付部材30で互いに結合されているところの上部支持板4と環状プレート31との間の高さに位置し、かつ取付部材30に対して接触しない状態となっている。そして、廃液回収ケース5の上部に取り付けられた筒状カバー15上部の基板出し入れ用の開口を閉じる固定支持部材16と、上部支持板4とは、非接触で上下方向に相対移動可能な状態で結合されている。これにより、固定支持部材16で上部支持板4、上部回転板3を吊り下げて上方に外す際には、固定支持部材16が上昇をはじめてから固定支持部材16の下方側支持プレート16bが上部支持板4の環状プレート31の下面を持ち上げるまで、上部支持板4及び上部回転板3は回転台2と結合した状態である。そして、下方側支持プレート16bが上部支持板4の環状プレート31の下面に当接して持ち上げることで、上部支持板4及び上部回転板3は回転台2から取り外される。逆に、固定支持部材16で筒状カバー15を閉じ、上部支持板4、上部回転板3を回転台2に結合するためにそれらを下降させる際には、上部支持板4及び上部回転板3を吊り下げた状態の固定支持部材16が下降することで、まず、上部支持板4及び上部回転板3がその自重により回転台2と結合する。そしてその後も固定支持部材16は下降を続け、最終的に下方側支持プレート16bが上部支持板4にぶつかる手前で図1に示す状態となり、固定支持部材16が筒状カバー15の上面に乗ってその開口を閉じ、固定支持部材16は停止する。そしてこのとき、上部支持板4や取付部材30、環状プレート31は、下方側支持プレート16bとは非接触状態で回転可能となる。
【0012】
[相対昇降構造による効果]
【0013】
固定支持部材16と、上部支持板4及び上部回転板3とを上下方向に相対移動可能とすることにより、一方(以上の実施形態では上部支持板4及び上部回転板3)が最も下方の位置(すなわち回転台2と結合した状態)に至った後も他方(以上の実施形態では固定支持部材16)は下降を続けることができて、上部支持板4及び上部回転板3が回転台2に対して、固定支持部材16が筒状カバー15に対して、それぞれ確実に結合装着される。
【0014】
公知技術のように、上部支持板4及び上部回転板3と固定支持部材16との上下位置が固定されてしまっていれば、それら上部支持板4及び上部回転板3と固定支持部材16の距離や回転台2、廃液回収ケース5、筒状カバー15などの部材の寸法精度や組み立て精度をきわめて高くする必要があり、コストが非常に高くなってしまい、かつ、温度変化や経時変化など各種要因によって寸法が少しでもずれてしまった場合には、回転台2と廃液回収ケース5の筒状カバー15とのどちらかの閉じ状態が不完全となってしまい、不完全な結合による遊びなどに起因する気密性の低下、振動やパーティクルの発生などの問題が生じる。本構成では、上部支持板4及び上部回転板3と固定支持部材16の距離や回転台2、廃液回収ケース5、筒状カバー15などの寸法精度をさほど高くしなくても、回転台2と廃液回収ケース5の筒状カバー15との両方を確実に閉塞でき、しかも簡単な構造であるからコストも安く、しかも温度変化や経時変化など各種要因による多少の寸法変化が起きても回転台2と廃液回収ケース5の筒状カバー15との閉塞状態には全く悪影響が生じない。
【0015】
このことは、上述したように、上部支持板4が回転台2に結合した状態では上部支持板4、上部回転板3、取付部材30、環状プレート31が固定支持部材16と非接触状態になることと相俟って、装置の円滑でかつ確実な作動を低コストで実現する。
【0016】
[回転方向位置決め構造]
【0017】
また、角型基板1を基板支持部材である回転台2へ載置する際には、固定支持部材16で吊り下げて上部回転板3を上方に外す。図3、図5、図6等の図面から明らかなように、上部回転板3が連結されている上部支持板4は、その上部支持板4から上方に延びるように結合された取付部材30を介して水平方向に延在する環状プレート31に結合されている。環状プレート31には筒体32が設けられる。一方、昇降することにより回転台2に対して進退する進退部材である固定支持部材16には、環状プレート31の下方に位置するように下方側支持プレート16bが設けられ、下方側支持プレート16bの内周面側部16cの上面には、係合突起29が設けられている。係合突起29は筒体32と係合可能になっている。これら、取付部材30、環状プレート31、筒体32、下方側支持プレート16b、内周面側部16c、係合突起29により係合部が構成され、筒体32と係合突起29により凹凸結合による位置決め機構が構成される。
【0018】
上部回転板3を上方に外す際には、固定支持部材16が上昇することにより下方側支持プレート16bの内周面側部16cによって環状プレート31が下方から支持される。またこのとき、環状プレート31に設けられた筒体32に固定支持部材16の下方側支持プレート16bの内周面側部16cに設けられた係合突起29が嵌入することにより両者が結合して環状プレート31は下方から支持される。これにより、上部回転板3および上部支持板4は固定支持部材16に対して回転しないように周方向に所定位置に位置決めされて相対回転不能に吊り下げ支持され、回転台2から離脱して上昇する。回転台2に上部回転板3、上部支持板4を結合する際には、固定支持部材16が下降し、回転台2に上部回転板3、上部支持板4が自重により載置結合される。そしてさらに固定支持部材16が下降することで、下方側支持プレート16bによる環状プレート31の支持が解除され、また係合突起29が筒体32から外れてそれらによる凹凸結合が解除されて、環状プレート31の下方からの支持が解除される。かくして、上部回転板3、上部支持板4は回転台2と一体で回転自在となる。
【0019】
[回転方向位置決め構造による効果]
【0020】
公知技術のように、塗布処理空間を形成するための塗布処理空間形成部材をベアリングを用いて回転自在に支持するだけでは、角型基板1を回転台2に対して出し入れするために塗布処理空間形成部材を上昇させて回転台2との結合を解除した際に、塗布処理空間形成部材が不所望に回転してしまい、次に塗布処理空間形成部材を回転台2に対して結合しようとする際に、一定の位置に結合させることができず、確実に結合することができないおそれがある。しかし本構成では、上部回転板3と上部支持板4とからなる塗布処理空間形成部材は、上昇されて回転台2との結合が解かれた際には、周方向に位置決めされて回転不能に支持されるので、回転台2に対して常に一定位置関係を保つことができ、常に一定の位置に結合させることができ、確実に結合させることができる。これにより本構成では、回転台2のリングプレート10と上部支持板4との着脱自在な取り付けを常に一定位置関係で確実に行うことができる。
【0021】
[回転台洗浄構造]
【0022】
各実施形態では、基板を水平支持した状態で回転させる回転台と、この回転台上に支持された基板の上面に塗布液を供給する塗布液供給手段とを備えた回転式塗布装置において、回転台の上面に向けて洗浄液を噴射する回転台洗浄手段を備えて構成した。
【0023】
[回転台洗浄構造による効果]
【0024】
基板に対する所定の回転塗布を行った後、基板の無い状態にしてから洗浄液を回転台の上面に向けて噴射し、回転台の上面に飛散して付着した塗布液を洗浄除去することができるようにすることで、基板に対する所定の回転塗布に起因して回転台の上面に付着した塗布液を洗浄除去するから、回転台の上面への塗布液付着に起因するパーティクルの発生、ならびに、付着ミストの再飛散による基板の汚染を防止でき、基板の処理品質の低下を回避できる。
【0025】
[塗布処理空間形成部材の位置決め機構の動作タイミングと効果]
【0026】
塗布処理空間形成部材を基板支持部材から離脱させる際には、上部回転板3と上部支持板4とからなる塗布処理空間形成部材が回転台2と結合している状態で、まず、環状プレート31に設けられた筒体32に固定支持部材16の係合突起29が嵌入することにより両者が結合して、塗布処理空間形成部材は固定支持部材16に対して回転しないように周方向に所定位置に位置決めされる。そしてその後に塗布処理空間形成部材が上昇する。
【0027】
このように、上部回転板3と上部支持板4が回転台2から取り外される前に位置決め固定が行われるので、それらを回転台2から取り外した後に位置決め固定する場合と比べて確実に位置決め固定が行われ、取り外しや取り付けの状態の再現性がよく、処理品質の低下がない均一な処理が可能である。
【0028】
[塗布処理空間形成部材の位置決め機構の作動構造と効果]
【0029】
塗布処理空間形成部材が上昇して回転台2と離れる際には、まず固定支持部材16が上昇することで塗布処理空間形成部材との相対昇降が生じ、かかる相対昇降動作に応じて環状プレート31に設けられた筒体32に固定支持部材16の係合突起29が嵌入することにより両者が結合して、塗布処理空間形成部材は固定支持部材16に対して回転しないように周方向に所定位置に位置めされる。そしてその後に塗布処理空間形成部材が上昇する。逆に、塗布処理空間形成部材が下降して回転台2と結合する際には、塗布処理空間形成部材が回転台2と結合した後にも固定支持部材16が下降することで塗布処理空間形成部材との相対昇降が生じ、かかる相対昇降動作に応じて環状プレート31の筒体32に嵌入していた固定支持部材16の係合突起29が筒体32から離脱し、塗布処理空間形成部材の固定支持部材16に対する位置決めが解除される。このように、塗布処理空間形成部材と固定支持部材との相対昇降動作に応動して塗布処理空間形成部材の位置決めと解除の動作を行うことで、位置決め機構を駆動するための駆動源等を設ける必要がなく、処理品質の低下がない均一な処理が可能な装置を安価にできる。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明に係る回転式塗布装置の第1実施形態の全体の概略構成を示す縦断正面図であり、角型基板1を載置する回転台2が鉛直方向の軸心P周りに水平回転可能に設けられ、その回転台2の上方に、回転台2と平行に上部回転板3が設けられるとともに、その上部回転板3が回転台2に上部支持板4を介して一体的に回転可能に取り付けられ、これら回転部材の下方及び周辺部を外から囲むように廃液回収ケース5が設けられ、前記回転台2に、縦向き回転軸としての出力軸6を介して駆動源である電動モータ7が連結されている。
【0032】
回転台2は、角型基板1の外形形状より充分大きい外形円板として構成されていて、その上面に立設した多数の基板支持ピン8・・・上に角型基板1が水平に載置支持されるようになっている。また、図示しないが、回転台2上には角型基板1の四隅それぞれに一対づつの位置決めピンが設けられていて、これら位置決めピンによつて角型基板1が回転台2と一体に水平回転されるようになっている。
【0033】また、回転台2の外周上面には、回転台2と同外径のスペーサリング9およびリングプレート10が同心円線上の場所に複数箇所で連結されるとともに、このリングプレート10に上部支持板4がノブボルト11を介して着脱自在に取り付けられ、上部支持板4を取り外すことで、リングプレート10の中央開口から基板1を出し入れすることができるようになっている。
【0034】
前記上部回転板3は基板1の外形形状より大径の円板に構成され、上部支持板4の下面にカラー12を介してボルト連結されている。廃液回収ケース5の底部は絞り込まれ、その下端に廃液排出口13が形成されるとともに、周方向の複数箇所には塗布液から蒸発した溶剤ガスや塗布液ミストを排出する排気口14が形成されている。
【0035】
前記廃液回収ケース5の上部に筒状カバー15が取り付けられ、その筒状カバー15に固定支持部材16が着脱可能に取り付けられている.
【0036】
図2の要部の一部切欠拡大正面図、図3および図4の要部の平面図、図5の要部の側面図に示すように、上部回転板3の中央には開口19が形成され、この開口19の鉛直方向上方位置において、固定支持部材16の上方側支持プレート16aに駆動開閉機構としての第1のエアシリンダ20が取り付けられ、その第1のエアシリンダ20のシリンダロツド20aの先端にブロック21が取り付けられるとともに、ブロック21に相対昇降および相対回転可能に有底筒状の蓋17が吊り下げ保持されている。
【0037】
また、ブロック21の下面に第1の磁石22が付設され、一方、蓋17の底面に、前記第1の磁石22と同極の第2の磁石23が付設され、蓋17を閉じ位置に変位した状態で、ブロック21を蓋17と非接触状態にしたときに、反発力によって蓋17を閉じ位置に維持できるようになっている。
【0038】
したがって、第1のエアシリンダ20の短縮により、蓋17を開口19の上方の開き位置に上昇変位させ、一方、第1のエアシリンダ20の伸長により、蓋17を下降して開口19に嵌入する閉じ位置に変位し、開口19を閉じながら蓋17のみを上部回転板3と一体回転できるようになっている。
【0039】
上方側支持プレート16aの第1のエアシリンダ20の横側方に、鉛直方向の軸芯周りで90°の範囲で回転可能な第2のエアシリンダ24が設けられるとともに、その第2のエアシリンダ24のシリンダロツド24aにスプライン軸25が連結されている。スプライン軸25に昇降のみ可能にスプライン筒26が取り付けられるとともに、スプライン筒26に回転のみ可能に回転筒27が取り付けられている。スプライン筒26に洗浄ノズル18が一体的に取り付けられるとともに、上方側支持プレート16aの第2のエアシリンダ24の横側方下側に設けられた第3のエアシリンダ28のシリンダロツド28aに回転筒27が連結されている。図示しないが、洗浄ノズル18には、洗浄液圧送機構に接続された配管が接続されている。上述の構成により、回転台2の上面に向けて洗浄液を噴出する回転台洗浄手段が構成されている。
【0040】
上記構成により、蓋17が閉じ位置にある非洗浄状態では、洗浄ノズル18を開口19の上方よりも外れた非洗浄位置に位置きせておき、そして、蓋17が開き位置にある洗浄状態では、第2のエアシリンダ24により回転して洗浄ノズル18を開口19の上方箇所に位置させた後に、第3のエアシリンダ28を伸長して洗浄ノズル18を下降させ、その吹き出し口18aから回転台2の上面に向けて洗浄液を噴出する洗浄位置に変位できるようになっている。上記洗浄ノズル18を洗浄位置と非洗浄位置とに駆動変位させるための第2および第3のエアシリンダ24、28から成る構成をして駆動機構と総称する。
【0041】
固定支持部材16の下方側支持プレート16bは環状に形成され、その内周面側に寄った上面の周方向所定の4箇所それぞれに、山形状の係合突起29が設けられ、一方、下方側支持プレート18bよりも上方に位置するように、上部支持板4に取付部材30・・・を介して環状プレート31が取り付けられるとともに、その環状プレート31の周方向所定の4箇所それぞれに、係合突起29を嵌入する筒体32が設けられ、前記上部回転板3を着脱する際に、係合突起29・・・を筒体32・・・に嵌入することにより、固定支持部材16で吊り下げることができるように構成されている。
【0042】
以上の構成により、先ず、塗布処理に際しては、固定支持部材16を筒状カバー15から取り外すとともに上部支持板4を回転台2から取り外し、固定支持部材16で吊り下げて上部回転板3を上方に外して角型基板1を回転台2の基板支持ピン8・・・上に所定の姿勢で載置する。
【0043】
次に、図示しない塗布液供給手段としての塗布液供給ノズルを角型基板1の中央上方に移動させ、所定量の塗布液を滴下供給する。その後、固定支持部材16で吊り下げて上部支持板4を搬入し、上部支持板4をリングプレート10上に、そして、固定支持部材16を筒状カバー15上にそれぞれ取り付け、図6の要部の正面図に示すように、第1のエアシリンダ20を伸長して蓋17を駆動変位し、上部回転板aの開口19を閉じておくとともに洗浄ノズル18を非洗浄位置に変位しておく。
【0044】
その後、電動モータ7を起動して回転台2、上部支持板4、上部回転板3および角型基板1を一体に水平回転させる。この回転によって角型基板1上の塗布液は遠心力によって外方に拡散流動して角型基板1上面に薄く塗布される。この場合、回転台2と上部回転板3との間に形成された偏平な塗布処理空間Sの空気層も一体に回転し、角型基板1上に気流が発生しない状態で塗布液の拡散流動が行われる。
【0045】
角型基板1上を流動して外周に到達した余剰塗布液は角型基板1の周縁から流出し、塗布処理空間Sの外周全域から飛散してゆく。そして、飛散した塗布液はスペーサリング9の上下に形成されている間隙を通って廃液回収ケース5内に流出して回収される。
【0046】
所定回数の回転塗布処理が行われると、固定支持部材16を筒状カバー15から取り外すとともに上部支持板4を回転台2から取り外し、固定支持部材16で吊り下げて上部回転板3を上方に外して角型基板1を取り出してから、上部支持板4をリングプレート10上に、そして、固定支持部材16を筒状カバー15上にそれぞれ取り付け、その後に、第1のエアシリンダ20を短縮して蓋17を開き位置に駆動変位する。
【0047】
しかる後、第2のエアシリンダ24を作動して洗浄ノズル18を開口19の上方位置まで回転変位し、その状態から第3のエアシリンダ28を伸長して洗浄ノズル18を下降させ、開ロ19を通じて、図5に示すように、上部回転板3の下方の洗浄位置まで変位する。その状態で、電動モータ7を起動して回転台2、上部支持板4、上部回転板3を一体に水平回転させながら、洗浄ノズル18から回転台2の上面に洗浄液を噴出供給し、遠心力を利用して、回転台2の上面に付着した塗布液のミストを洗浄除去する。
【0048】
図7は、本発明に係る回転式塗布装置の第2実施形態を示す全体概略正面図であり、第1実施例と異なるところは次の通りである。
【0049】
回転台2の回転軸2aの下端と電動モータ33の駆動軸33aの上端とがベルト式伝動機構34を介して連動連結されるとともに、回転台2の回転軸2aに、その回転軸芯を通る貫通孔35が形成され、その貫通孔35内に、上端に洗浄ノズル36を取り付けた洗浄液パイプ37が挿入されるとともに、洗浄ノズル36が回転台2の上方に位置されて固定状態で設けられ、回転台2の上面に向けて洗浄液を噴出するように回転台洗浄手段が構成されている。他の構成は第1実施形態と同様であり、同一図番を付すことにより、その説明を省略する。
【0050】
図8は、本発明に係る回転式塗布装置の第3実施形態を示す全体概略正面図であり、第1実施形態と異なるところは次の通りである。
【0051】
回転台2の周囲の固定フレーム15a上の所定箇所に、支持ブラケット38を介して洗浄ノズル39が取り付けられ、上部回転板3を取り外した状態で回転台2の上面に向けて洗浄液を噴出するように回転台洗浄手段が構成されている。他の構成は第1実施形態と同様であり、同一図番を付すことにより、その説明を省略する。
【0052】
本発明としては、角型基板1に限らず円形基板の回転式塗布装置にも適用できる。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、回転台と離れた状態にある上部板の不所望な回転を防止し、回転台と上部板の結合状態を常に一定に保つことができて安定した基板処理が可能である。
【0054】
また、上部板と固定支持部材との相対昇降動作に応動して塗布処理空間形成部材の位置決めと解除の動作を行うので、位置決めや解除動作用の駆動源等を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る回転式塗布装置の第1実施形態の全体の概略構成を示す縦断正面図である。
【図2】
要部の拡大正面図である。
【図3】
要部の平面図である。
【図4】
要部の平面図である。
【図5】
要部の側面図である。
【図6】
回転塗布状態を示す要部の正面図である。
【図7】
本発明に係る回転式塗布装置の第2実施形態を示す全体概略正面図である。
【図8】
本発明に係る回転式塗布装置の第3実施形態を示す全体概略正面図である。
【符号の税明】
1・・・角型基板
2・・・回転台
3・・・上部回転板
4・・・上部支持板
5・・・廃液回収ケース
15・・・筒状カバー
16・・・固定支持部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-01-22 
結審通知日 2008-01-25 
審決日 2008-02-05 
出願番号 特願2000-143640(P2000-143640)
審決分類 P 1 113・ 537- ZA (B05C)
P 1 113・ 536- ZA (B05C)
P 1 113・ 121- ZA (B05C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森内 正明
末政 清滋
登録日 2000-08-25 
登録番号 特許第3103358号(P3103358)
発明の名称 回転式塗布装置および回転式塗布方法  
代理人 青木 健二  
代理人 森川 聡  
代理人 小山 卓志  
代理人 杉谷 勉  
代理人 片寄 武彦  
代理人 杉谷 勉  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 田中 貞嗣  
代理人 米澤 明  
代理人 戸高 弘幸  
代理人 戸高 弘幸  

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