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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1176148
審判番号 無効2006-80278  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-12-27 
確定日 2008-03-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3110416号発明「角型基板用基板端縁洗浄装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3110416号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3110416号(以下、「本件特許」という。)の出願は、平成5年4月26日に特許出願された特願平5-123538号(以下、この特許出願を、「原出願」という。)の一部を新たな特許出願として平成11年2月15日に分割出願した特願平11-35999号(以下、「本件分割特許出願」という。)であって、その請求項1ないし請求項7に係る発明について平成12年9月14日に設定登録され、その後、本件無効審判請求人の株式会社エイブル(以下、「請求人」という。)により上記本件特許の請求項1ないし請求項7に係る発明の特許に対して平成18年12月27日に本件無効審判〔無効2006-80278〕が請求されたものであり、無効審判被請求人の大日本スクリーン製造株式会社(以下、「被請求人」という。)により指定期間内の平成19年4月2日付けの審判事件答弁書及び同日付けの訂正請求書が提出され、前記審判事件答弁書副本及び訂正請求書副本を前記請求人に送付したところ、前記請求人により指定期間内の平成19年5月29日付けの審判事件弁駁書が提出され、請求人の主張する無効理由に新たな証拠方法として甲第7号証〔平成17年(行ケ)第10796号審決取消請求事件に関する平成18年11月30日判決言渡の判決文〕が追加されたものである。
その後、当審は、平成19年10月26日に口頭審理を開廷すべく、前記審判事件弁駁書副本を請求人に送付し、さらに、当審の職権による審理結果としての、本件分割特許出願に関する分割要件違反を前提として、平成19年4月2日付けの訂正請求書に基づく訂正請求後の訂正明細書の特許請求の範囲に記載されている請求項1ないし請求項6に係る発明についての特開平6-97067号公報、特開平6-310422号公報及び甲第1号証、並びに、甲第2ないし6号証の各刊行物に記載の各発明に基づく進歩性要件の欠如(特許法第29条第2項違反)と、前記訂正明細書における発明の明確性の要件、サポート要件及び実施可能要件の各要件の欠如(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)を内容とする無効理由通知(後記の「第3 当審の審理」欄の「3」及び「4」を参照。)を、請求人及び被請求人の両当事者双方に対して平成19年8月14日にファクシミリにより送信した上で、前記口頭審理の期日の2週間前までに、前記審判事件弁駁書及び当審の職権による無効理由通知に関する請求人及び被請求人からの意見等を纏めた口頭審理陳述要領書の提出を求めたところ、被請求人から平成19年10月12日付けの口頭審理陳述要領書及び同日付けの訂正請求書が提出され、また請求人から平成19年10月26日付けの口頭審理陳述要領書が提出されたものである。
そして、当審により平成19年10月26日の期日に口頭審理が公開で開廷され、請求人は平成18年12月27日付け審判請求書、平成19年5月29日付け審判事件弁駁書及び平成19年10月26日付け口頭審理陳述要領書に基づいて陳述し、また、被請求人は、平成19年4月2日付け審判事件答弁書並びに平成19年10月12日付け口頭審理陳述要領書及び同日付け訂正請求書に基づいて陳述をした。
なお、平成19年10月26日期日の口頭審理における、審判事件弁駁書における請求人の主張に対する被請求人の意見、被請求人による平成19年10月12日付けの訂正請求に対する請求人の意見、並びに、当審の職権による無効理由通知に関する請求人及び被請求人の意見を含む両当事者の陳述は、第1回口頭審理調書に記載のとおりである。

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、「特許第3110416号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、下記の甲第1号証ないし甲第6号証を提出して、以下の無効理由を主張する。その無効理由の要点は、次のとおりである。
〔無効理由1〕:本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当して特許を受けることができないか、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基づいて、出願前当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第1号証:特開平6-310423号公報〔原出願である特願平5-123538号の公開特許公報〕

〔無効理由2〕:本件特許の請求項5ないし7に係る発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第2号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、出願前当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第2号証:特開平4-65115号公報
甲第3号証:特開昭63-190679号公報
甲第4号証:特開昭64-61917号公報
甲第5号証:特開平4-206626号公報
甲第6号証:特開平1-298720号公報

〔無効理由3〕:本件特許の明細書及び図面の記載と特許請求の範囲の記載は、それぞれ特許法第36条第4項第1号と同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2 被請求人の主張
被請求人は、請求人の前記主張に対し、平成19年4月2日付けの訂正請求書(以下、これを「第1訂正請求書」といい、その訂正請求を「第1訂正請求」という。)を提出するとともに、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、「本件特許に係る分割出願は適法であって、本件請求項1から6に係る発明は特許法第123条第1項第2号に該当せず、また、本件特許は全ての請求項1から6について特許法第123条第1項第4号に該当しない。よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。」旨を主張した。

第3 当審の審理
1 第1訂正請求の適否についての判断
当審が本件無効審判事件について審理をした結果、本件分割特許出願の特許査定時の明細書又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)についての第1訂正請求による訂正は、特許請求の範囲の請求項7を削除することによる特許請求の範囲の減縮及び請求項7の削除に伴う本件特許明細書等の中の明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるので、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法第1条の規定による改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)第134条第2項ただし書第1号及び第3号に該当し、さらに、前記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてした訂正であるので、平成6年改正前特許法第134条ただし書に適合する。また、前記訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、平成6年改正前特許法第134条第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合する。
また、本件の特許無効審判の請求の趣旨に係る特許発明は、請求項1ないし請求項7に係る発明であり、また、特許無効審判の請求がされている請求項7に係る発明についての訂正が、前述のとおり、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当しているところ、特許法第134条の2第5項において読み替えて準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第1項ただし書第1号又は第2号の場合は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」の規定に該当する、本件の特許無効審判の請求の趣旨から除外されている請求項が、第1訂正請求に係る特許請求の範囲に存在していないから、当審は、第1訂正請求の訂正後の請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かの、いわゆる独立特許要件の有無について、検討をする必要を認めない。

2 審判事件弁駁書の要旨の変更についての判断
請求人が審判事件弁駁書において提出した新たな証拠方法としての甲第7号証〔平成17年(行ケ)第10796号審決取消請求事件に関する平成18年11月30日判決言渡の判決文〕を含む、請求人が主張する新たな無効理由は、請求の理由の要旨を変更するものではあるが、当審の審理を不当に遅延させるおそれはなく、また前記新たな無効理由の主張が、被請求人の訂正請求により補正の必要が生じたものであるので、請求人が主張する新たな無効理由は、許可できるものである。

3 当審の職権による無効理由通知
しかして、当審が本件無効審判事件を審理した結果、請求人が主張していない技術事項〔「第3 当審の審理」欄の「4」を参照。〕について、本件分割特許出願は分割要件を満たしていないとした上で、前記分割要件の欠如を前提に、さらに、第1訂正請求後の訂正明細書の特許請求の範囲に記載されている請求項1ないし請求項6に係る発明に関して職権により審理をした結果として、請求人が提出した甲第1号証ないし甲第6号証の各刊行物に加えて、当審が職権により探知した特開平6-97067号公報及び特開平6-310422号公報の各刊行物の証拠方法を以て、第1訂正請求後の訂正明細書の特許請求の範囲に記載されている請求項1ないし請求項6に係る発明は、前記証拠方法に記載の各発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の進歩性要件の欠如(特許法第29条第2項違反)を内容とする無効理由通知、及び、本件分割特許出願が分割要件の欠如を惹起する要因である特許請求の範囲の中の技術事項について、本件訂正明細書における発明の明確性の要件、サポート要件及び実施可能要件の各要件の欠如(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)を内容とする無効理由通知(「第3 当審の審理」欄の「4」を参照。)を、請求人及び被請求人の両当事者双方に対してファクシミリの送信により通知した。

4 当審の職権による無効理由通知の内容の要点
前記当審の職権による無効理由通知の内容の要点は、請求人及び被請求人の両当事者双方に対して平成19年8月14日に送信した下記に示すファクシミリにおける「第1 被請求人に対する事項」欄の「2.」ないし「4.」項の部分に示すとおりである。

『無効審判事件(2006-80278)に関し、当審が口頭審理において審理する予定の下記の事項について、当事者は、意見等をあらかじめ「口頭審理陳述要領書」にまとめて、口頭審理期日の少なくとも2週間前までに提出してください。

第1 被請求人に対する事項
1. 請求人が提出した弁駁書の副本を被請求人に送付しますので、その弁駁書における請求人の主張に対する被請求人の意見。
2. 請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)に関連して、当審が職権により、本件分割特許出願の分割要件の有無について審理する場合において、本件分割特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7及び訂正請求後の請求項1ないし請求項6に記載の
ア.「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」、
イ.「ガイド機構」、
ウ.「前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の少なくとも互いに隣り合う2つの端縁にそれぞれ設けられ」
の各技術事項について、原出願(特願平5-123538号)の願書に最初に添付した明細書及び図面におけるそれらの記載の根拠又はそれらの明細書の記載からの自明性についての説明。
3. 本件分割特許出願の分割要件の有無について、上記2.のア.ないしウ.に記載した各技術事項に関する当審の審理結果を踏まえて、本件分割特許出願が特許法第44条に規定する分割要件を満たしていないと当審が判断する場合において、本件第3110416号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項6に係る特許発明は、本件分割特許出願の現実の特許出願日前に頒布された特開平6-97067号公報、特開平6-310422号公報及び甲第1号証、並びに、甲第2ないし6号証の各刊行物に記載の各発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるという、当審の職権による無効理由通知(特許法第29条第2項違反)に対する、被請求人の意見。
4. 請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由3(特許法第36条第4項及び同条第6項第2号違反)に関連して、当審が職権により、本件分割特許出願の記載要件の有無について審理する場合において、上記2.のア.ないしウ.に記載した各技術事項について、本件分割特許出願は、訂正明細書の特許請求の範囲の各請求項に係る発明の明確性の要件、訂正明細書の発明の詳細な説明における記載のサポート要件及び実施可能要件の各要件を満たしていないという、当審の職権による無効理由通知(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)に対する、被請求人の意見。

第2 請求人に対する事項
1. 請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)に関して、本件第3110416号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項6に係る特許発明の各構成要素と、甲第1号証刊行物に記載の発明の各構成要素との個々の具体的な対応関係についての説明。
2. 請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由2(特許法第29条第2項違反)に関して、本件第3110416号特許の訂正請求後の請求項5ないし請求項6に係る特許発明の各構成要素と、甲第2ないし6号証に記載の各発明の引用すべき各構成要素との個々の具体的な対応関係についての説明。
3. 上記「第1 被請求人に対する事項」欄の3.において指摘した当審の職権による無効理由通知(特許法第29条第2項違反)に対する、請求人の意見。
4. 上記「第1 被請求人に対する事項」欄の4.において指摘した当審の職権による無効理由通知(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)に対する、請求人の意見。』

第4 第2訂正請求の訂正の適否についての判断
1 第2訂正請求の内容
被請求人は、当審の職権による無効理由通知に対して、平成19年10月12日付の訂正請求書(以下、これを「第2訂正請求書」といい、その訂正請求を「第2訂正請求」という。)を提出し、その第2訂正請求の内容は、第2訂正請求書に添付された全文訂正明細書及び図面(以下、これを「本件訂正明細書等」という。)に記載された次のとおりのものである。
なお、第2訂正請求書の提出により、第1訂正請求は、取り下げられたものとみなされた(特許法第134条の2第4項の規定を参照。)。
(1)〔訂正事項1〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】 表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、
前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設けたことを特徴とする角型基板用基板端縁洗浄装置。」
の記載を、
「【請求項1】 表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、
前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設け、
前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、
各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うことを特徴とする角型基板用基板端縁洗浄装置。」
と訂正する。

(2)〔訂正事項2〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項2ないし請求項7を削除する。

(3)〔訂正事項3〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0006】の、
「【0006】【課題を解決するための手段】 本発明は、上述のような目的を達成するために、次のような構成を採る。
すなわち、請求項1記載の発明は、表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設けたことを特徴とする。」
の記載を、
「【0006】【課題を解決するための手段】 本発明は、上述のような目的を達成するために、次のような構成を採る。
すなわち、請求項1記載の発明は、表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設け、前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うことを特徴とする。」
と訂正する。

(4)〔訂正事項4〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0007】ないし【0012】の記載を削除する。

(5)〔訂正事項5〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0014】の記載を削除する。

(6)〔訂正事項6〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0015】の、
「【0015】 請求項3記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁の全てに個別に設けられた溶剤吐出手段が、角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側となる一方の端点から他方の端点に向かって移動するので、各溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく全ての端縁を洗浄することができる。」
の記載を、
「【0015】 請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁の全てに個別に設けられた溶剤吐出手段が、角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側となる一方の端点から他方の端点に向かって移動するので、各溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく全ての端縁を洗浄することができる。」
と訂正する。

(7)〔訂正事項7〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0016】の、
「【0016】 請求項4記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁ごとに設けられた溶剤吐出手段が角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うので、各溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく各端縁を同時に洗浄することができる。」
の記載を、
「【0016】 請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁ごとに設けられた溶剤吐出手段が角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うので、各溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく各端縁を同時に洗浄することができる。」
と訂正する。

(8)〔訂正事項8〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0017】ないし【0019】の記載を削除する。

(9)〔訂正事項9〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0026】の記載を削除する。

(10)〔訂正事項10〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0064】の記載を削除する。

(11)〔訂正事項11〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0065】の、
「【0065】 請求項3記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁の全てに個別に設けられた溶剤吐出手段が、角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく全ての端縁を洗浄することができる。」
の記載を、
「【0065】 請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁の全てに個別に設けられた溶剤吐出手段が、角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく全ての端縁を洗浄することができる。」
と訂正する。

(12)〔訂正事項12〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0066】の、
「【0066】 請求項4記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁ごとに設けられた溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく各端縁を同時に洗浄することができる。」
の記載を、
「【0066】 請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁ごとに設けられた溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく各端縁を同時に洗浄することができる。」
と訂正する。

(13)〔訂正事項13〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0067】ないし【0069】の記載を削除する。

(14)〔訂正事項14〕 本件特許明細書等の【図3】中の2個所の符号「4b」を削除する訂正をする。

2 第2訂正請求の訂正の目的の適否について
(1)上記〔訂正事項1〕の訂正は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1に係る発明に、請求項3及び請求項4に記載されていた「前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、」及び「各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行う」の発明特定事項を加えることにより請求項1に係る発明を限定して、その構成を特定する訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

(2)上記〔訂正事項2〕の訂正は、請求項2ないし請求項7を削除する訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

(3)上記〔訂正事項3〕、〔訂正事項6〕、〔訂正事項7〕、〔訂正事項11〕及び〔訂正事項12〕の訂正は、〔訂正事項1〕の訂正に伴い、本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0006】、【0015】、【0016】、【0065】及び【0066】の記載を、第2訂正請求の訂正後の請求項1に係る発明の構成に整合させるための訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第3号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

(4)上記〔訂正事項4〕、〔訂正事項5〕、〔訂正事項8〕、〔訂正事項9〕〔訂正事項10〕及び〔訂正事項13〕の訂正は、〔訂正事項2〕の訂正に伴い、本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0007】ないし【0012】、【0014】、【0017】ないし【0019】、【0026】、【0064】、【0067】ないし【0069】の記載を、請求項2ないし請求項7を削除した第2訂正請求の訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるための訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第3号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

(5)上記〔訂正事項14〕の訂正は、〔訂正事項9〕の訂正に伴い、段落【0026】の記載が削除されたことにより、本件特許明細書等の記載と図面の記載とを整合させるための訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第3号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

(6)したがって、上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項14〕の訂正は、いずれも平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。

3 新規事項の有無及び実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
(1)第2訂正請求により、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1に「前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、」及び「各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行う」の発明特定事項を加える上記〔訂正事項1〕の訂正、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項2ないし請求7を削除する上記〔訂正事項2〕の訂正、そして、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0006】の記載に「前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、」及び「各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行う」の事項を加える上記〔訂正事項3〕の訂正、さらには、その他の〔訂正事項4〕ないし〔訂正事項14〕の明りようでない記載を釈明する訂正は、いずれも本件特許明細書等、すなわち本件分割特許出願の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であると認める。
したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項14〕の訂正は、いずれも平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書の規定に適合する。

(2)また、本件訂正の上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項14〕の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項14〕の訂正は、いずれも特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合する。

4 第2訂正請求に対する独立特許要件の有無について
本件の特許無効審判の請求の趣旨に係る特許発明は、請求項1ないし請求項7に係る発明であり、また、特許無効審判の請求がされている請求項1に係る発明についての訂正が、上記「2 第2訂正請求の訂正の目的の適否について」欄の「(1)」に前述したとおり、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当しているところ、特許法第134条の2第5項において読み替えて準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第1項ただし書第1号又は第2号の場合は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」の規定に該当する、本件の特許無効審判の請求の趣旨から除外されている請求項が、第2訂正請求に係る特許請求の範囲に存在していないから、当審は、第2訂正請求の訂正後の請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かの、いわゆる独立特許要件の有無について、検討をする必要を認めない。

5 むすび
当審が本件無効審判事件における第2訂正請求について審理をした結果は、以上のとおりであり、本件特許明細書等についての第2訂正請求による訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書、同ただし書各号及び特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の各規定に適合する。
よって、第2訂正請求の訂正を認める。

第5 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討
1 本件特許の請求項1に係る発明
上記のとおり、第2訂正請求の訂正が認められたので、本件特許の請求項1に係る発明は、第2訂正請求書に添付された本件訂正明細書等の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、これを「本件発明1」という。)である。
「【請求項1】 表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、
前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設け、
前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、
各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うことを特徴とする角型基板用基板端縁洗浄装置。」

2 分割要件の有無についての検討
(1)本件発明1の技術事項についての分割の根拠についての検討
本件発明1は、上記「1 本件特許の請求項1に係る発明」欄に前掲したとおりのものであるが、上記「第3 当審の審理」欄の「4 当審の職権による無効理由通知の内容の要点」に示した「第1 被請求人に対する事項」の「2.」に指摘してあるとおり、本件発明1には、「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」及び「ガイド機構」の技術事項が記載されている。
しかして、特許法第44条には、
第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、願書に添附した明細書又は図面について補正をすることができる時又は期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十9条の2に規定する他の特許出願又は実用新案法第3条の2に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用並びに第三十条第四項、第四十1条第4項並びに前条第一項及び第二項の規定の適用については、この限りでない。』
と規定されている
そこで、前記の技術事項を有する発明が本件分割特許出願のもとの出願である原出願(特願平5-123538号)に包含されていたか否かについて検討する。換言すれば、前記の技術事項が、前記原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、これを「原出願の当初明細書等」という。)に包含されていた発明の技術事項として記載されていたか否か、あるいは、原出願の当初明細書等における記載から自明であるか否かについて、次に検討する。

(2)原出願の当初明細書等における記載事項
ア 「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」の技術事項についての検討
(ア)まず、原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平6-310423号公報〕には、前記「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」に関連する技術事項として、次のa?kの事項が記載されている。
a 「【請求項3】 請求項1または2に記載の四個の溶剤吐出手段のうちの一個の溶剤吐出手段の移動位置を検出する移動位置検出手段を設け、前記移動位置検出手段による検出結果に基づいて駆動機構を制御する制御手段を備えた基板端縁洗浄装置。」
b 「【0009】 また、請求項3に係る発明の基板端縁洗浄装置は、上述のような目的を達成するために、請求項1または2に係る発明の基板端縁洗浄装置における四個の溶剤吐出手段のうちの一個の溶剤吐出手段の移動位置を検出する移動位置検出手段を設け、その移動位置検出手段による検出結果に基づいて駆動機構を制御する制御手段を備えて構成する。」
c 「【0012】 また、請求項3に係る発明の基板端縁洗浄装置の構成によれば、四個の溶剤吐出手段のうちの一個の溶剤吐出手段に対する移動位置に基づいて制御することにより、それと一体的に移動する他の溶剤吐出手段の移動をも制御することができる。」
d 「【0020】 角型基板1の所定の一辺に対応する箇所において、支持アーム13に当接してひとつのノズルブロック12が原点位置に移動したことを検出するノズルブロック原点検出センサ21が設けられるとともに、そのノズルブロック原点検出センサ21に近い位置に、ノズルブロック12が原点位置側に移動していくときに、原点に到達する直前の所定位置に到達したことを検出するノズルブロックドックセンサ22が設けられている。」
e 「【0031】 また、CPU33には、端点A,B設定手段36が接続され、角型基板1のサイズに応じ、ノズルブロック12の移動する距離を設定するようになっている。角型基板1を入口側アーム8によって基板保持手段2上に搬送するときに、角型基板1のサイズにかかわらず、常に、角型基板1の長辺側の中央が基板保持手段2の所定位置に位置するように搬送される。このことに着目して、ノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置を、上述所定位置からの距離により設定して表すようになっている。そして、スピンコータ6において、角型基板1のサイズが測定されるとともに、そのサイズデータがCPU33に入力されるようになっていて、既知の原点位置とノズルブロック12の幅とサイズデータとから端点AおよびBの位置を自動的に演算して設定するとともに表示するようになっている。この表示値は、微調整のために手動により変更可能である。この端点A,B設定手段36によって設定される端点Aと端点Bとにわたる移動量と原点から端点Aにわたる移動量は、前記ノズルブロック原点検出センサ21によって検出される原点位置に基づき、それを基準にして電動モータ16の回転量から検出するようになっており、この構成をして移動位置検出手段と称する。」
f 「【0037】 その後に、ノズルブロック駆動手段40により電動モータ16を駆動し、ノズルブロック12を原点位置から端点Aに移動させる(S11)とともに、ガスノズル制御手段42による窒素ガスの供給とリンス液ノズル制御手段41によるリンス液の吐出とを開始し(S12、S13)、更に、入口側アーム8を回転し、基板端縁洗浄装置5の上方から外れた退避位置へ退避させる(S14)とともに、電動モータ16を所定のタイミングで正逆転して、ノズルブロック12を端点Aから端点Bに(S15)、そして、端点Bから端点Aに(S16)と往復移動させて角型基板1の端縁全周を洗浄処理する。」
g 「【0039】 設定回数のスキャンが終了した後には、リンス液ノズル制御手段41によるリンス液の吐出とガスノズル制御手段42による窒素ガスの供給とを停止する(S19、S20)とともに、ノズルブロック駆動手段40により電動モータ16を駆動してノズルブロック12を端点Aから原点位置まで移動し(S21)、かつ、基板吸着制御手段39により、真空吸着を解除する(S22)。」
h 「【0040】 そして、ノズルブロックドックセンサ22でノズルブロック12が所定のドック位置に移動したことを検出する(S23)に伴い、電動モータ16の回転速度を低下し(S24)、オーバーランを防止する。次いで、ノズルブロック原点検出センサ21により原点位置を検出する(S25)までノズルブロック12を移動し、原点位置を検出してから電動モータ16の駆動を停止してノズルブロック12の移動を停止する(S26)。」
i 「【0050】 第1実施例における、駆動プーリー18と遊転プーリー19…とワイヤー20とから成る構成、ならびに、第2実施例におけるネジ軸43…とベベルギア機構44…とから成る構成をして、四個の溶剤吐出手段3…を一体的に移動するための連係機構と総称する。」
j 「【0055】 また、請求項3に係る発明の基板端縁洗浄装置によれば、一個の溶剤吐出手段に対する移動位置に基づいて制御するだけで、四個の溶剤吐出手段すべての移動を制御できるから、制御構成を簡単にできるようになった。」
k 甲第1号証の【図4】の記載では、ひとつのノズルブロック12が原点位置に移動したことを検出する「ノズルブロック原点検出センサ21」は、角型基板1の短辺に対応する箇所に設けられており、また、ノズルブロック12が原点位置側に移動していくときに、原点に到達する直前の所定位置に到達したことを検出する「ノズルブロックドックセンサ22」も、ノズルブロック原点検出センサ21に近い位置の角型基板1の短辺に対応する箇所に設けられている。

(イ)そうすると、かかる甲第1号証の上記a?kの技術事項から、甲第1号証には、
「四個のノズルブロック12のうちの一個のノズルブロック12(以下、一個のノズルブロック12を「特定ノズルブロック12」という。)が角型基板1の短辺に対応する箇所の原点位置に移動したことを検出するノズルブロック原点検出センサ21と、特定ノズルブロック12が前記原点位置側に移動していくときに、角型基板1の短辺に対応する箇所の原点に到達する直前の所定位置に到達したことを検出するノズルブロックドックセンサ22とからなる特定ノズルブロック12の移動位置を検出する移動位置検出手段を設け、前記移動位置検出手段による検出結果に基づいて特定ノズルブロック12の駆動機構を制御する制御手段を備えた基板端縁洗浄装置において、
前記ノズルブロック原点検出センサ21が角型基板1の短辺に対応する箇所に設けられ、前記ノズルブロックドックセンサ22もノズルブロック原点検出センサ21に近い位置の角型基板1の短辺に対応する箇所に設けられており、
ノズルブロック12の移動する距離の設定は、端点A,B設定手段36が接続されたCPU33により、角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置からの距離により設定され表わされるノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置が、搬送される角型基板1のサイズに応じて、特定ノズルブロック12の既知の前記原点位置と、ノズルブロック12の幅と、CPU33に入力された角型基板1のサイズデータとから自動的に演算して設定され、
前記移動位置検出手段による検出結果に基づいて特定ノズルブロック12を駆動させる駆動機構により、
まず、特定ノズルブロック12を原点位置から端点Aに移動させ、
次に、特定ノズルブロック12を端点Aから端点Bに、そして、端点Bから端点Aにと往復移動させて角型基板1の端縁全周を洗浄処理し、
それから、ノズルブロック駆動手段40により電動モータ16を駆動して特定ノズルブロック12を端点Aから原点位置まで移動し、
最後に、ノズルブロック原点検出センサ21により原点位置を検出するまで特定ノズルブロック12を移動し、原点位置を検出してから電動モータ16の駆動を停止して特定ノズルブロック12の移動を停止するように制御して、
四個のノズルブロック12のうちの一個の特定ノズルブロック12に対する移動位置に基づいて制御するだけで、一体的に移動する四個のノズルブロック12すべての移動を制御できる基板端縁洗浄装置」
の実施例の記載が認められる。

(ウ)しかして、甲第1号証に記載されている前記「基板端縁洗浄装置」は、一方で、四個のノズルブロック12のうちの一個の特定ノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置が、「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置からの距離により設定され表わされるもの」でありながら、他方では、同じ前記端点AおよびBの位置が、「搬送される角型基板1のサイズに応じて、四個のノズルブロック12のうちの一個の特定ノズルブロック12が移動したことをノズルブロック原点検出センサ21により検出される角型基板1の短辺に対応する箇所の既知の原点位置と、ノズルブロック12の幅と、CPU33に入力された角型基板1のサイズデータとに基づいて自動的に演算して設定されるもの」とされている。
しかも、ノズルブロック原点検出センサ21及びノズルブロックドックセンサ22からなる移動位置検出手段により、四個のノズルブロック12のうちの一個の特定ノズルブロック12に対する移動位置の検出結果に基づいて駆動制御される特定ノズルブロック12を、まず、特定ノズルブロック12を角型基板1の短辺側にある原点位置から端点Aに移動させてから、端点Aから端点Bに、そして端点Bから端点Aにと往復移動させて角型基板1の端縁全周を洗浄処理した後、端点Aから原点位置まで移動するように駆動制御することにより、特定ノズルブロック12と連携機構により一体的に移動する四個のノズルブロック12すべての移動を制御できるものとされている。

(エ)しかしながら、甲第1号証の前記「基板端縁洗浄装置」の端点Aおよび端点Bの位置の設定の場合には、角型基板1の短辺に対応する箇所に設けられているノズルブロック原点検出センサ21が検出するところの、特定のノズルブロック12が移動する既知の原点位置が角型基板1の短辺側にあるにも拘わらず、角型基板1の短辺側にある既知の原点位置に基づいて演算設定される特定ノズルブロック12の移動における端点Aおよび端点Bの位置を、角型基板1の短辺側の中央に位置する基板保持手段2の所定位置からの距離ではなく、角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置からの距離により設定して表わし、また、特定ノズルブロック12を駆動制御する場合には、角型基板1の短辺側にある既知の原点位置、端点A及び端点Bの位置の3点間を移動させるというものであるから、甲第1号証の前記「基板端縁洗浄装置」では、端点Aおよび端点Bの位置を設定する場合には、端点A及び端点Bについての設定時の基準として、「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置」と「角型基板1の短辺側にある既知の原点位置」を採用して端点A,B設定手段36が接続されたCPU33により演算される一方で、特定ノズルブロック12を駆動制御する場合には、駆動制御時の基準として、「角型基板1の短辺側にある既知の原点位置」を採用して、特定ノズルブロック12を、短辺側の端点A及び端点Bの間で往復移動させることとしている。
そうすると、端点Aおよび端点Bの位置の設定と、特定ノズルブロック12の短辺側の端点A及び端点Bの間の往復移動との両者に共通する「端点Aおよび端点B」の位置に関しては、「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置」と「角型基板1の短辺側にある既知の原点位置」との間には、角型基板1の長辺側の基準である「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置」と、角型基板1の短辺側の基準である「角型基板1の短辺側にある既知の原点位置」とを関連づける手段について、甲第1号証に何らも開示されていないから、両者の基準については整合性が欠けていて、不明というべきである。
そうしてみると、甲第1号証において、端点Aおよび端点Bの2つの端点の位置が角型基板のサイズに応じて定められることについての記載は認められるが、端点Aおよび端点Bの2つの端点の位置が角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって角型基板のサイズに応じて定められることについての記載は、認めることができない。また、端点Aおよび端点Bの2つの端点の位置が角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって角型基板のサイズに応じて定められることが、甲第1号証の記載から自明であるということもできない。

(オ)そして、甲第1号証においては、ノズルブロック12とガイド15,15が角型基板1の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられていることについては、その記載が認められるが、前記端点A及び端点Bが、各ガイド15,15ごとに定められることについては、全く記載がなく、その示唆もない。

(カ)そうしてみると、本件分割特許出願のもとの出願である原出願の当初明細書等である上記甲第1号証には、本件発明1における上記「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」の技術事項が記載されていたということができないばかりでなく、「前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点」の技術事項も前記甲第1号証に記載されていたということができない。
そして、本件発明1の前記「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」及び「前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点」の技術事項が、本件分割特許出願のもとの出願である原出願の当初明細書等である前記甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。
したがって、本件分割特許出願のもとの出願である原出願には、「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」及び「前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点」の技術事項をその発明特定事項とする本件発明1が包含されていたということができない。

(キ)ここで、被請求人の主張について検討する。
a 被請求人は、口頭審理陳述要領書の7頁22?13頁13行において、根拠1ないし根拠4を挙げて、「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」の技術事項は、甲第1号証に記載されていたか、あるいは甲第1号証に記載されていた事項から自明である旨を主張する。

b しかして、前記甲第1号証の記載では、「ノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置を、角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置からの距離により設定して表すようになっている」にもかかわらず、端点A、Bの位置を設定するのに、「角型基板1の短辺側にあるノズルブロック原点検出センサ21によって検出される既知の原点位置とノズルブロック12の幅とサイズデータとから端点AおよびBの位置を、端点A,B設定手段36によって自動的に演算して設定する」とされているのであり、そして、「端点Aと端点Bとにわたる移動量と原点から端点Aにわたる移動量は、前記ノズルブロック原点検出センサ21によって検出される前記既知の原点位置に基づき、それを基準にして電動モータ16の回転量から検出する」としている。

c しかしながら、甲第1号証には、角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置からの距離により設定して表すようになっているノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置(前者)と、端点A,B設定手段36が、角型基板1の短辺側にあるノズルブロック原点検出センサ21によって検出される既知の原点位置とノズルブロック12の幅とサイズデータとから自動的に演算して設定する端点AおよびBの位置(後者)とでは、前者が角型基板1の長辺側の中央を基準としているのに対して、後者は、角型基板1の短辺側にあるノズルブロック原点検出センサ21によって検出される既知の原点位置を基準としていることが記載されているのであり、仮にスピンコータ6において測定される角型基板1のサイズデータにより、角型基板1の長辺と短辺の長さの値が既知であり、また「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置」が既知であるとしても、後者における端点AおよびBの設定の基準となるべき「角型基板1の短辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置」については、甲第1号証には何らの説明もない。

d そうすると、角型基板1の短辺側の諸データに基づいて端点AおよびBの位置が設定される後者の場合において、角型基板1の短辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置からの距離により設定して表すようになっているノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置の基準としては、その基準位置が全く不明であり、また、「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置」と、「角型基板1の短辺側にあるノズルブロック原点検出センサ21によって検出される既知の原点位置」とは、スピンコータ6において測定される角型基板1のサイズデータによる、角型基板1の長辺と短辺の長さにより互いに関連づけることもできないから、後者の「端点A,B設定手段36が、角型基板1の短辺側にあるノズルブロック原点検出センサ21によって検出される既知の原点位置とノズルブロック12の幅とサイズデータとから自動的に演算して端点AおよびBの位置」を設定する場合には、前者の「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置からの距離により設定して表すようになっているノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置」のデータを、そのまま利用することができないものとなっている。

e しかも、被請求人が、口頭審理陳述要領書の11頁22?25行において主張する「なお、端点A、Bの位置を設定するのに、既知の原点位置のデータも用いているのは、基板保持手段2の所定位置からの距離として設定された端点A、Bの位置を、原点位置を基準とした位置データに変換しているからである。このことも当業者にとって自明である。」の根拠となるべき「基板保持手段2の所定位置からの距離として設定された端点A、Bの位置を、原点位置を基準とした位置データに変換している」ことの説明については、甲第1号証にその記載を認めることができず、また、前記「基板保持手段2の所定位置からの距離として設定された端点A、Bの位置を、原点位置を基準とした位置データに変換している」ことが、甲第1号証の記載から自明であるということもできない。

f したがって、「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」の技術事項は、甲第1号証に記載されていたか、あるいは甲第1号証に記載されていた事項から自明である旨の被請求人の主張は、根拠がなく到底採用することができないものである。

イ 「ガイド機構」の技術事項についての検討
(ア)また、原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平6-310423号公報〕には、前記「ガイド機構」に関連する技術事項として、次のl?sの事項が記載されている。
l 「【0016】 溶剤吐出手段3…それぞれは、図3の要部の拡大側面図、および、図4の平面図に示すように、吸引部材4の吸引口4aを挟んだ上下方向の上側に第1のリンス液ノズル10aと第1のガスノズル11aとを設け、一方、下側に第2のリンス液ノズル10bと第2のガスノズル11bとを設けて構成されている。」
m 「【0017】 前記第1および第2のリンス液ノズル10a,10bと第1および第2のガスノズル11a,11b、ならびに、吸引部材4がノズルブロック12に一体的に取り付けられ、そのノズルブロック12を取り付けた支持アーム13が、固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15を介して、角型基板1の端縁に沿って移動可能に設けられている。」
n 「【0018】 基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に、正逆転可能な駆動機構としての電動モータ16を設けたモータブラケット17が立設されるとともに、電動モータ16の駆動軸に駆動プーリー18が連動連結されている。」
o 「【0019】 基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に1個の遊転プーリー19が、そして、他の3箇所の角部に対応する箇所に2個づつの遊転プーリー19,19がそれぞれ設けられ、前記駆動プーリー18と遊転プーリー19…とにわたって一対のワイヤー20,20が巻回され、そのワイヤー20,20の所定の四箇所それぞれに支持アーム13が連結され、電動モータ16の正逆転により、四個の溶剤吐出手段3…、吸引部材4…それぞれを角型基板1の各辺に沿わせて往復移動し、角型基板1の端縁を洗浄できるように構成されている。」
p 「【0047】 上述した移動位置検出手段により検出したノズルブロック12の位置、すなわち、溶剤吐出手段3の位置に基づいてノズルブロック駆動手段40の動作を制御する構成をして制御手段と称する。」
q 「【0048】 図9は、本発明に係る基板端縁洗浄装置の第2実施例の概略平面図であり、基板保持手段2に載置された角型基板1の各辺それぞれと平行にネジ軸43が回転可能に設けられるとともに、各ネジ軸43…それぞれに支持アーム13が螺合されている。」
r 「【0049】 ネジ軸43…のうちの所定のひとつに電動モータ16aが連動連結され、そのネジ軸43と他の2本のネジ軸43,43とがベベルギア機構44を介して連動連結されるとともに、そのうちの1本のネジ軸43と残りの1本のネジ軸43とが別のベベルギア機構44を介して連動連結され、単一の電動モータ16の正逆転により、溶剤吐出手段3…および吸引部材4…それぞれを一体的に往復移動して角型基板1の端縁全周に対する洗浄処理を一挙に行うことができるように構成されている。」
s 「【0050】 第1実施例における、駆動プーリー18と遊転プーリー19…とワイヤー20とから成る構成、ならびに、第2実施例におけるネジ軸43…とベベルギア機構44…とから成る構成をして、四個の溶剤吐出手段3…を一体的に移動するための連係機構と総称する。」

(イ)そうすると、上記甲第1号証には、その段落【0017】に「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」についての記載があるのみであり、他のガイドについての記載は一切ないことが認められる。

(ウ)しかして、前記「ガイド機構」という文言は、「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」という具体的構成の上位概念であるということができ、「ガイド機構」の文言は、前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」の具体的構成だけではなく、ガイド機能を有する他の構成によるガイドをも包含する拡張された一般的な概念であり、「ガイド機構」の文言が、必ずしも前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」のみを一義的に意味するものでないことは明らかなことであるから、前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」が「ガイド機構」に該当するということはいえるが、逆に、「ガイド機構」の文言が前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」のみを意味することにはならないので、前記「ガイド機構」は、原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証に記載されている事項を超えている記載であるといえる。
したがって、前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」を離れた「ガイド機構」を含む発明が、甲第1号証に記載されているとすることはできず、また、明示の記載はなくとも実質的に記載されているとみることもできない。

(エ)そうしてみると、本件分割特許出願のもとの出願である原出願の当初明細書等である上記甲第1号証には、本件発明1における上記「ガイド機構」の技術事項が記載されていたということができないばかりでなく、「ガイド機構」の技術事項が、本件分割特許出願のもとの出願である原出願の当初明細書等である前記甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。
したがって、本件分割特許出願のもとの出願である原出願には、「ガイド機構」の技術事項をその発明特定事項とする本件発明1が包含されていたということができない。

(3)分割要件の有無についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件分割特許出願は、特許法第44条に規定されているところの、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願としたものということができない。
したがって、本件分割特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなすことができないから、本件分割特許出願の出願日は、実際に特許出願された平成11年2月15日である。
そして、上述した理由により、本件分割特許出願を、以下においては、「本件特許出願」という。

第6 当審の職権による無効理由1(特許法第29条第2項違反)についての検討
1 甲号各証の記載事項
(1)甲第1号証〔特開平6-310423号公報〕の記載事項
甲第1号証には、「基板端縁洗浄装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に薄膜が形成された角型基板を載置保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた基板端縁洗浄装置であって、
前記溶剤吐出手段を、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の四辺それぞれごとにその端縁に沿って移動可能に設けるとともに、前記四個の溶剤吐出手段を一体的に移動可能に連係機構を介して連動連結し、かつ、前記連係機構に、前記四個の溶剤吐出手段を一体的に移動する単一の駆動機構を設けたことを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項2】 請求項1に記載の連係機構が、一個の駆動プーリーと遊転プーリーとにわたって前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の外周縁に沿うようにループ状に巻回されたワイヤーであり、前記駆動機構が、前記駆動プーリーに連動連結された正逆転可能な一個の電動モータである基板端縁洗浄装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載の四個の溶剤吐出手段のうちの一個の溶剤吐出手段の移動位置を検出する移動位置検出手段を設け、前記移動位置検出手段による検出結果に基づいて駆動機構を制御する制御手段を備えた基板端縁洗浄装置。」
「【0001】【産業上の利用分野】
本発明は、フォトレジスト液や感光性ポリイミド樹脂やカラーフィルター用の染色剤などから成る薄膜が表面に塗布された液晶用ガラス基板やフォトマスク用ガラス基板やサーマルヘッド製造用のセラミック基板などの角型基板に対し、その薄膜塗布後に角型基板の端縁に付着した不要薄膜を溶解除去するために、表面に薄膜が形成された角型基板を載置保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた基板端縁洗浄装置に関する。
【0002】【従来の技術】 上述のような基板端縁洗浄装置としては、従来、特公平3-78777号公報に開示されているものがあった。
この従来例によれば、表面に薄膜が形成された基板の周縁部の上面と下面に対向して第1の管と第2の管が設けられるとともに、第1および第2の管の間の間隙部でかつ基板端部の延長上に第3の管が設けられ、第1および第2の管から基板の周縁部の上面と下面に溶剤を供給するとともに、それらの溶剤ならびに溶解除去された不要薄膜を第3の管から吸引排出できるように構成されている。
【0003】 そして、第3の管から不要薄膜を吸引排出することにより溶剤が基板の中心側に侵入していくことを回避し、基板を低速で回転させながら第1、第2および第3の管を基板の回転中心から遠近する方向に移動させることにより、オリエンテーションフラットのある基板とか液晶用ガラス基板のような角型基板に対しても、その端縁の不用薄膜を溶解除去できるように構成されている。
【0004】【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、角型基板の回転に伴う回転中心からの距離の変化に対応できるように、第1、第2および第3の管を基板の回転中心から遠近する方向に移動するためには、極めて高精度な制御を必要とし、また、基板を高速で回転することができないために処理効率が大幅に低下し、上述の従来例の装置によって角型基板の端縁を洗浄することは実用的ではない。
【0005】 そこで、角型基板の一辺または二辺に、角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段を設け、回転を停止した状態の角型基板に対して、その端縁に沿って溶剤吐出手段を移動させるように構成したものが提案されているが、溶剤吐出手段を一辺に対して設ける場合であれば、一辺の洗浄が終わる度に90°づつ回転させなければならず、また、二辺に対して設ける場合であれば、二辺の洗浄が終わる度に 180°づつ回転させなければならず、処理効率の面で未だ改善の余地があった。
【0006】 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明の基板端縁洗浄装置は、構成的に簡単にできながら、角型基板の端縁全周を短時間で効率良く洗浄できるようにすることを目的とし、また、請求項2に係る発明の基板端縁洗浄装置は、溶剤吐出手段の駆動系のスペースを小さくできるようにすることを目的とし、また、請求項3に係る発明の基板端縁洗浄装置は、制御構成を簡単にできるようにすることを目的とする。
【0007】【課題を解決するための手段】 請求項1に係る発明の基板端縁洗浄装置は、上述のような目的を達成するために、表面に薄膜が形成された角型基板を載置保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた基板端縁洗浄装置において、溶剤吐出手段を、基板保持手段によって保持された角型基板の四辺それぞれごとにその端縁に沿って移動可能に設けるとともに、四個の溶剤吐出手段を一体的に移動可能に連係機構を介して連動連結し、かつ、連係機構に、四個の溶剤吐出手段を一体的に移動する単一の駆動機構を設けて構成する。
【0008】 また、請求項2に係る発明の基板端縁洗浄装置は、上述のような目的を達成するために、上述した請求項1に係る発明の基板端縁洗浄装置における連係機構を、一個の駆動プーリーと遊転プーリーとにわたって基板保持手段によって保持された角型基板の外周縁に沿うようにループ状に巻回したワイヤーで構成し、かつ、駆動機構を、駆動プーリーに連動連結した正逆転可能な一個の電動モータで構成する。
【0009】 また、請求項3に係る発明の基板端縁洗浄装置は、上述のような目的を達成するために、請求項1または2に係る発明の基板端縁洗浄装置における四個の溶剤吐出手段のうちの一個の溶剤吐出手段の移動位置を検出する移動位置検出手段を設け、その移動位置検出手段による検出結果に基づいて駆動機構を制御する制御手段を備えて構成する。
【0010】【作用】 請求項1に係る発明の基板端縁洗浄装置の構成によれば、単一の駆動機構の駆動により、角型基板の四辺それぞれに対応させて設けた溶剤吐出手段を角型基板の端縁に沿わせて一体的に移動させ、角型基板の四辺を一挙に洗浄することができる。
【0011】 また、請求項2に係る発明の基板端縁洗浄装置の構成によれば、四個の溶剤吐出手段を連動連結した一本のワイヤーを、電動モータによる駆動プーリーの正逆転によって往復移動し、角型基板の四辺それぞれに対応させて設けた溶剤吐出手段を角型基板の端縁に沿わせて一体的に移動することができる。
【0012】 また、請求項3に係る発明の基板端縁洗浄装置の構成によれば、四個の溶剤吐出手段のうちの一個の溶剤吐出手段に対する移動位置に基づいて制御することにより、それと一体的に移動する他の溶剤吐出手段の移動をも制御することができる。
【0013】【実施例】 次に、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0014】 図1は、本発明の第1実施例に係る基板端縁洗浄装置の全体概略側面図、図2は一部切欠全体概略平面図であり、回転塗布によって表面に薄膜が形成された角型基板1を載置して真空吸着により保持する基板保持手段2の周囲4箇所それぞれに、角型基板1の表裏両面に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段3…と、溶剤および溶解した不要薄膜を吸引する吸引部材4…とが備えられて、基板端縁洗浄装置5が構成されている。
【0015】 基板端縁洗浄装置5の一側方にフォトレジスト液を塗布するスピンコータ6が設けられるとともに、他側方に乾燥用のオーブン7が設けられ、かつ、スピンコータ6と基板端縁洗浄装置5との間に基板搬送用の入口側アーム8が設けられ、一方、基板端縁洗浄装置5と乾燥用のオーブン7との間に基板搬送用の出口側アーム9が設けられている。
【0016】 溶剤吐出手段3…それぞれは、図3の要部の拡大側面図、および、図4の平面図に示すように、吸引部材4の吸引口4aを挟んだ上下方向の上側に第1のリンス液ノズル10aと第1のガスノズル11aとを設け、一方、下側に第2のリンス液ノズル10bと第2のガスノズル11bとを設けて構成されている。
【0017】 前記第1および第2のリンス液ノズル10a,10bと第1および第2のガスノズル11a,11b、ならびに、吸引部材4がノズルブロック12に一体的に取り付けられ、そのノズルブロック12を取り付けた支持アーム13が、固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15を介して、角型基板1の端縁に沿って移動可能に設けられている。
【0018】 基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に、正逆転可能な駆動機構としての電動モータ16を設けたモータブラケット17が立設されるとともに、電動モータ16の駆動軸に駆動プーリー18が連動連結されている。
【0019】 基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に1個の遊転プーリー19が、そして、他の3箇所の角部に対応する箇所に2個づつの遊転プーリー19,19がそれぞれ設けられ、前記駆動プーリー18と遊転プーリー19…とにわたって一対のワイヤー20,20が巻回され、そのワイヤー20,20の所定の四箇所それぞれに支持アーム13が連結され、電動モータ16の正逆転により、四個の溶剤吐出手段3…、吸引部材4…それぞれを角型基板1の各辺に沿わせて往復移動し、角型基板1の端縁を洗浄できるように構成されている。
【0020】 角型基板1の所定の一辺に対応する箇所において、支持アーム13に当接してひとつのノズルブロック12が原点位置に移動したことを検出するノズルブロック原点検出センサ21が設けられるとともに、そのノズルブロック原点検出センサ21に近い位置に、ノズルブロック12が原点位置側に移動していくときに、原点に到達する直前の所定位置に到達したことを検出するノズルブロックドックセンサ22が設けられている。
【0021】 図5のブロック図に示すように、前記入口側アーム8に付設されている、入口側アームin検出センサ23、入口側アームdown検出センサ24、入口側アームopen検出センサ25、入口側アームup検出センサ26、入口側アームout検出センサ27、ならびに、出口側アーム9に付設されている、出口側アームin検出センサ28、出口側アームdown検出センサ29、出口側アームclose検出センサ30、出口側アームup検出センサ31、出口側アームout検出センサ32、および、前記ノズルブロック原点検出センサ21、ノズルブロックドックセンサ22がCPU33に接続され、更に、基板保持手段2が角型基板1を真空吸着保持したことを検出する基板吸着確認センサ34がCPU33に接続されている。
【0022】 入口側アームin検出センサ23は、スピンコータ6内に置かれた角型基板1を把持した入口側アーム8が基板端縁洗浄装置5内の所定位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0023】 入口側アームdown検出センサ24は、角型基板1を把持した入口側アーム8が基板端縁洗浄装置5の基板保持手段2上に角型基板1を載置する位置まで下降したことを検出するようになっている。
【0024】 入口側アームopen検出センサ25は、角型基板1を基板保持手段2上に載置する位置まで下降した入口側アーム8の爪が開いて、角型基板1の把持を解除したことを検出するようになっている。
【0025】 入口側アームup検出センサ26は、角型基板1の把持を解除した入口側アーム8が爪を開いたままで所定位置まで上昇したことを検出するようになっている。また、入口側アームout検出センサ27は、所定位置まで上昇した入口側アーム8がスピンコータ6側の退避位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0026】 出口側アームin検出センサ28は、端縁洗浄処理が終了した角型基板1を把持してオーブン7に搬送するための出口側アーム9が基板端縁洗浄装置5内の所定位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0027】 出口側アームdown検出センサ29は、角型基板1を把持した出口側アーム9が基板端縁洗浄装置5の基板保持手段2上に載置された角型基板1を把持可能な下降位置まで下降したことを検出するようになっている。
【0028】 出口側アームclose検出センサ30は、基板保持手段2上に載置された角型基板1を把持可能な位置まで下降した出口側アーム9の爪が閉じて、角型基板1を把持したことを検出するようになっている。
【0029】 出口側アームup検出センサ31は、角型基板1を把持した出口側アーム9が爪を閉じたままで所定位置まで上昇したことを検出するようになっている。また、出口側アームout検出センサ32は、所定位置まで上昇した出口側アーム9がオーブン7側の所定の退避位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0030】 また、CPU33には、スキャン回数n設定手段35が接続され、1枚の角型基板1に対し、ノズルブロック12を往復させる回数を手動(キーボードなど)により入力して設定するようになっている。
【0031】 また、CPU33には、端点A,B設定手段36が接続され、角型基板1のサイズに応じ、ノズルブロック12の移動する距離を設定するようになっている。角型基板1を入口側アーム8によって基板保持手段2上に搬送するときに、角型基板1のサイズにかかわらず、常に、角型基板1の長辺側の中央が基板保持手段2の所定位置に位置するように搬送される。このことに着目して、ノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置を、上述所定位置からの距離により設定して表すようになっている。そして、スピンコータ6において、角型基板1のサイズが測定されるとともに、そのサイズデータがCPU33に入力されるようになっていて、既知の原点位置とノズルブロック12の幅とサイズデータとから端点AおよびBの位置を自動的に演算して設定するとともに表示するようになっている。この表示値は、微調整のために手動により変更可能である。この端点A,B設定手段36によって設定される端点Aと端点Bとにわたる移動量と原点から端点Aにわたる移動量は、前記ノズルブロック原点検出センサ21によって検出される原点位置に基づき、それを基準にして電動モータ16の回転量から検出するようになっており、この構成をして移動位置検出手段と称する。
【0032】 フォトレジスト液が塗布された角型基板1を基板端縁洗浄装置5に搬送する入口側アーム8の動作(アームの回転、昇降、爪の開閉)を制御する入口側アーム制御手段37、端縁洗浄処理が終了した角型基板1をオーブン7に搬送する出口側アーム9の動作(アームの回転、昇降、爪の開閉)を制御する出口側アーム制御手段38、基板保持手段2により角型基板1を真空吸着保持するための吸着動作を制御する基板吸着制御手段39、電動モータ16の回転方向および速度を制御してノズルブロック12の移動方向および速度を制御するノズルブロック駆動手段40、第1および第2のリンス液ノズル10a…,10bからのリンス液の吐出と停止とを行うリンス液ノズル制御手段41、ならびに、第1および第2のガスノズル11a…,11bからの窒素ガスの吹き出しと停止とを行うガスノズル制御手段42それぞれがCPU33に接続されている。なお、吸引部材4からの吸気は常に行われている。
【0033】 以上の構成により、基板端縁洗浄装置5への角型基板1の搬入と搬出、および、端縁洗浄が自動的に行うようになっており、次に、図6のタイムチャートと、図7および図8のフローチャートを用いて説明する。
【0034】 先ず、スピンコータ7でフォトレジスト液が塗布された角型基板1を入口側アーム8に保持させた後、その入口側アーム8を回転させ、角型基板1を基板端縁洗浄装置5上に搬送し(S1)、所定位置まで搬送されたかどうかを入口側アームin検出センサ23で検出する(S2)。
【0035】 所定位置まで搬送された後に入口側アーム8を下降させ(S3)、角型基板1を基板保持手段2に載置する位置まで入口側アーム8が下降したかどうかを入口側アームdown検出センサ24により検出した(S4)後に、基板吸着制御手段39により基板保持手段2による真空吸着を開始する(S5)とともに、入口側アーム8の爪を開く(S6)。
【0036】 入口側アーム8の爪が開いたことを入口側アームopen検出センサ25により検出して(S7)から、入口側アーム8を上昇させる(S8)。その後、入口側アームup検出センサ26で入口側アーム8が所定位置まで上昇したことを検出してから(S9)、基板吸着確認センサ34で基板保持手段2が角型基板1を真空吸着保持したことを検出させる(S10)。
【0037】 その後に、ノズルブロック駆動手段40により電動モータ16を駆動し、ノズルブロック12を原点位置から端点Aに移動させる(S11)とともに、ガスノズル制御手段42による窒素ガスの供給とリンス液ノズル制御手段41によるリンス液の吐出とを開始し(S12、S13)、更に、入口側アーム8を回転し、基板端縁洗浄装置5の上方から外れた退避位置へ退避させる(S14)とともに、電動モータ16を所定のタイミングで正逆転して、ノズルブロック12を端点Aから端点Bに(S15)、そして、端点Bから端点Aに(S16)と往復移動させて角型基板1の端縁全周を洗浄処理する。
【0038】 そのノズルブロック12の一回のスキャンが終了した時点でカウント(n=n-1)して(S17)から、そのカウント値が設定回数になったかどうかを判断し(S18)、設定回数になっていなければ、ステップS15に戻し、再度ノズルブロック12を往復移動させて角型基板1の端縁全周を洗浄処理する。ここではスキャン設定回数を二回に設定している(図6参照)。
【0039】 設定回数のスキャンが終了した後には、リンス液ノズル制御手段41によるリンス液の吐出とガスノズル制御手段42による窒素ガスの供給とを停止する(S19、S20)とともに、ノズルブロック駆動手段40により電動モータ16を駆動してノズルブロック12を端点Aから原点位置まで移動し(S21)、かつ、基板吸着制御手段39により、真空吸着を解除する(S22)。
【0040】 そして、ノズルブロックドックセンサ22でノズルブロック12が所定のドック位置に移動したことを検出する(S23)に伴い、電動モータ16の回転速度を低下し(S24)、オーバーランを防止する。次いで、ノズルブロック原点検出センサ21により原点位置を検出する(S25)までノズルブロック12を移動し、原点位置を検出してから電動モータ16の駆動を停止してノズルブロック12の移動を停止する(S26)。
【0041】 その後、入口側アームout検出センサ27により、入口側アーム8が退避位置に移動したことを確認する(S27)とともに、角型基板1の真空吸着が解除されていることを確認した(S28)後、出口側アーム9を回転させ、基板端縁洗浄装置5上の所定の搬出位置に移動させる(S29)。ここで、入口側アーム8の退避確認は、出口側アーム9と入口側アーム8との干渉を防止するためであり、また、吸着解除の確認は、吸着状態の角型基板1に出口側アーム9が作用して角型基板1が破損することを防止するためである。
【0042】 その後、出口側アーム9が基板端縁洗浄装置5上の所定の搬出位置に移動したかどうかを出口側アームin検出センサ28で検出し(S30)、その所定位置まで搬送された後に出口側アーム9を下降させ(S31)、真空吸着を解除した状態で基板保持手段2に保持されている角型基板1を把持可能な位置まで下降したかどうかを出口側アームdown検出センサ29で検出する(S32)。
【0043】 所定位置まで下降した後に、出口側アーム9の爪を閉じて角型基板1を把持させ(S33)、その爪を閉じて角型基板1を把持したことを出口側アームclose検出センサ30で検出した(S34)後、出口側アーム9を上昇させる(S35)。
【0044】 その後、出口側アームup検出センサ31で出口側アーム9が所定位置まで上昇したことを検出して(S36)から、出口側アーム9を回転してオーブン7側の所定の退避位置に移動させる(S37)。
【0045】 出口側アーム9が所定の退避位置に移動したかどうかを出口側アームout検出センサ32で検出し(S38)、その退避を確認した後に、連続処理するかどかを判断し(S39)、連続処理であればステップS1に戻して、上述処理を繰り返し、一方、連続処理で無ければ、処理を終了する。
【0046】 以上の動作により、スピンコータ6から基板端縁洗浄装置5への角型基板1の搬入、端縁洗浄処理、および、基板端縁洗浄装置5からオーブン7への角型基板1の搬出を自動的に行うことができる。
【0047】 上述した移動位置検出手段により検出したノズルブロック12の位置、すなわち、溶剤吐出手段3の位置に基づいてノズルブロック駆動手段40の動作を制御する構成をして制御手段と称する。
【0048】 図9は、本発明に係る基板端縁洗浄装置の第2実施例の概略平面図であり、基板保持手段2に載置された角型基板1の各辺それぞれと平行にネジ軸43が回転可能に設けられるとともに、各ネジ軸43…それぞれに支持アーム13が螺合されている。
【0049】 ネジ軸43…のうちの所定のひとつに電動モータ16aが連動連結され、そのネジ軸43と他の2本のネジ軸43,43とがベベルギア機構44を介して連動連結されるとともに、そのうちの1本のネジ軸43と残りの1本のネジ軸43とが別のベベルギア機構44を介して連動連結され、単一の電動モータ16の正逆転により、溶剤吐出手段3…および吸引部材4…それぞれを一体的に往復移動して角型基板1の端縁全周に対する洗浄処理を一挙に行うことができるように構成されている。
【0050】 第1実施例における、駆動プーリー18と遊転プーリー19…とワイヤー20とから成る構成、ならびに、第2実施例におけるネジ軸43…とベベルギア機構44…とから成る構成をして、四個の溶剤吐出手段3…を一体的に移動するための連係機構と総称する。
【0051】 本発明としては、吸引部材4…を備えずに、溶剤吐出手段3…だけを備える基板端縁洗浄装置にも適用できる。
【0052】 また、上記実施例では、角型基板端縁の表裏両面に溶剤を吐出するように構成しているが、例えば、回転可能に保持された角型基板1の下方側に溶剤を供給し、角型基板1の裏面に回り込んで形成される薄膜を溶解除去するように構成した裏面洗浄タイプの回転塗布装置で裏面を洗浄しながら回転塗布により薄膜が形成された角型基板1に対しては、角型基板1の端縁の表面側にのみ溶剤を吐出するように構成するとか、あるいは、角型基板1の端縁の裏面側にのみ溶剤を吐出して表面張力により表面側に回り込ませるように構成するなど、本発明としては、角型基板1の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出するように構成するものであれば良い。
【0053】【発明の効果】 以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発明の基板端縁洗浄装置によれば、単一の駆動機構と四個の溶剤吐出手段とを連係機構を介して連動連結するだけで、その駆動機構の駆動により、基板保持手段に載置保持された角型基板の四辺の端縁を一挙に洗浄するから、例えば、各溶剤吐出手段それぞれに駆動機構を連動連結する場合に比べて駆動機構の個数を減らせるのみならず、その設置スペースも小さくでき、また、例えば、一辺を洗浄した後に、角型基板を90°回転させ、次の一辺を洗浄するような場合に比べて1/4以下の時間で洗浄でき、また、二辺づつ洗浄するような場合に比べて1/2以下の時間で洗浄でき、構成的に簡単にできながら、角型基板の端縁全周を短時間で効率良く洗浄できるようになった。
【0054】 また、請求項2に係る発明の基板端縁洗浄装置によれば、電動モータによって正逆転される駆動プーリーと遊転プーリーとに巻回した一本のワイヤーに四個の溶剤吐出手段を連動連結し、角型基板の四辺それぞれに対応させて設けた溶剤吐出手段を角型基板の端縁に沿わせて一体的に移動するから、例えば、ベルトのように幅の有る部材を用いる場合に比べて、溶剤吐出手段の駆動系のスペースを小さくでき、また、フェルト製のベルトを使用する場合に比べて発塵の問題を抑制できる。
【0055】 また、請求項3に係る発明の基板端縁洗浄装置によれば、一個の溶剤吐出手段に対する移動位置に基づいて制御するだけで、四個の溶剤吐出手段すべての移動を制御できるから、制御構成を簡単にできるようになった。」

そして、甲第1号証に添付された図4には、「単一の電動モータ16の駆動力が駆動プーリー18を介して角型基板1の4辺の各端縁に対応する4個所の一対のプーリー19に巻回されたワイヤ20に伝達され、角型基板1の各端縁ごとに前記ワイヤ20に結合されて設けられる前記各溶剤吐出手段3が、角型基板1の各端縁の一方側の位置に配置された各溶剤吐出手段3の移動始点となる端点と、前記移動始点となる端点とは反対側の前記角型基板1の各端縁の他方側の位置に配置された前記各溶剤吐出手段3の移動終点となる端点との間を、単一の電動モータ16の正逆転により角型基板1の各端縁に沿って往復移動して、前記各溶剤吐出手段3が角型基板1の4辺の各端縁を洗浄する角型基板用基板端縁洗浄装置」が図示されている。
また、甲第1号証に添付された図9にも、図4に図示の角型基板用基板端縁洗浄装置とは駆動機構だけが相違する「単一の電動モータ16aの駆動力がベベルギア機構44を介して角型基板1の4辺の各端縁に対応するネジ軸43に伝達され、角型基板1の各端縁ごとに前記ネジ軸43に螺合された支持アーム13に設けられる前記各溶剤吐出手段3が、角型基板1の各端縁の一方側の位置に配置された各溶剤吐出手段3の移動始点となる端点と、前記移動始点となる端点とは反対側の前記角型基板1の各端縁の他方側の位置に配置された前記各溶剤吐出手段3の移動終点となる端点との間を、単一の電動モータ16aの正逆転により角型基板1の各端縁に沿って往復移動して、前記各溶剤吐出手段3が角型基板1の4辺の各端縁を洗浄する角型基板用基板端縁洗浄装置」が図示されている。

そうしてみると、上記甲第1号証の摘記事項及び添付図面に図示された技術事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、これを、「引用発明1」という。)の記載が認められる。
「表面に薄膜が形成された角型基板1を保持する基板保持手段2と、その基板保持手段2によって保持された前記角型基板1の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段3とを備える基板端縁洗浄装置5において、
前記溶剤吐出手段3と前記溶剤吐出手段3を前記端縁に沿って移動案内するガイド15,15とが前記角型基板1の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、
単一の電動モータ16の駆動力が駆動プーリー18を介して角型基板1の4辺の各端縁に対応する4個所の一対のプーリー19に巻回されたワイヤ20に伝達されるとともに、
前記各溶剤吐出手段3が角型基板1の各端縁ごとに前記ワイヤ20に結合されて角型基板1の各端縁に沿って移動することにより角型基板1の4辺の各端縁を洗浄するように構成され、
前記各溶剤吐出手段3が、角型基板1の各端縁の一方側の位置に配置された各溶剤吐出手段3の移動始点となる端点Aと、前記移動始点となる端点Aとは反対側の前記角型基板1の各端縁の他方側の位置に配置された前記各溶剤吐出手段3の移動終点となる端点Bとの間を、前記電動モータ16の正逆転により前記角型基板1の各端縁に沿って往復移動することにより、前記各溶剤吐出手段3が、前記基板保持手段2によって保持された前記角型基板1の洗浄すべき各端縁に沿って移動し、溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行い、
端点A,B設定手段36により角型基板1のサイズに応じて設定される前記溶剤吐出手段3のノズルブロック12の移動する距離は、前記端点A及び端点Bが、角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置と角型基板1の短辺側にある既知の原点位置とから演算して設定されるようにした基板端縁洗浄装置」

(2)甲第2号証〔特開平4-65115号公報〕の記載事項
甲第2号証には、「不要レジスト除去装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「[実施例]
第1図には本発明に係る不要レジスト除去装置の一実施例の平面図が示されている。
同図において、11は中央に基板aよりも一回り小さな基台としての固定テーブル12を有する処理槽で、処理槽11の各側壁には、基板aの端面の接線延長線上にシリンダ20がそれぞれピン13を支点として水平面内回転可能に取り付けられている。そして、上記各エアシリンダ20のピストンロッド20aの先端には、第2図に拡大して示すようなL字形断面を有するパッド21aと、これを保持するベース21bとからなるクリーニングヘッド21が、基板の側面から底面にかけて接触可能な状態で装着されている。上記パッド21aは、例えばブチルゴムなどの高分子材からなるスポンジゴムのような弾力性のある材料により構成されている。
また、各パッド21aを保持するベース21bの上面には複数のノズル23aを有するパイプ23が配設されており、各ノズル23aはパッド21aの上面に、アセトンようなレジスト除去液を供給できるように先端が下向きに形成されている。なお、上記パイプ23の先端は閉塞されているとともに、パイプ23の始端にはフレキシブルなチューブ24が接続されており、図示しないポンプからレジスト除去液が輸送されるようになっている。
さらに、上記各エアシリンダ20のシリンダ部と処理槽11の側壁との間には、上記ピン13を支点としてエアシリンダ20を回動させるための第2のエアシリンダ30がそれぞれ介挿されている。
次に、上記不要レジスト除去装置の動作を説明する。
第3図に示すレジスト塗付装置により表面にフォトレジストが塗付されたガラス基板aは、第1図に2点鎖線A?Dで示すように、全エアシリンダ20を外側に回転させた状態で不要レジスト除去装置の固定テーブル12上に載置され、図示しない真空吸着手段により固定される。次に、第2のエアシリンダ30を作動させて4つのエアシリンダ20を第1図に実線で示されるような位置まで回動させる。それから、パイプ23に設けられたノズル23aよりレジスト除去液を滴下させながら、エアシリンダ20に圧縮空気を送ってシリンダロッド20aを往復動させる。すると、パッド22a[当審注:「パッド21a」の明らかな誤記と認める。]が基板aの側面から底面にかけて接触したままこすられるように移動するため、基板aの側面から底面にかけて付着した不要なレジストがパッド22a[当審注:「パッド21a」の明らかな誤記と認める。]によってこすりとられて脱落し、基板の周縁が清浄化される。」(2頁左下欄19行?3頁右上欄9行)

(3)甲第3号証〔特開昭63-190679号公報〕の記載事項
甲第3号証には、「塗布材料の塗布装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「次に動作について説明する。チャック3上に、吸着されたウエハ1上にレジスト吐出ノズル6よりレジストを滴下し、チャック3を回転させレジストを基板上に均一に塗布する。次にチャック3を回転させながらレジスト溶剤吐出手段5よりレジスト溶剤を吐出し、ウエハ周辺および裏面のレジストを除去する。」(1頁右欄7?13行)
「次に動作について説明する。従来の装置と同様にして、ウエハ1上にレジストを均一に塗布する。次に基板のプリアライメントを行ないウエハカバー2形状に合うようオリフラを合わせてウエハカバー2にはめる。次にウエハ1を回転させながらレジスト溶剤をレジスト溶剤吐出手段5より数秒間小量吐出する。次に回転させたままレジスト溶剤の吐出を止め、その後回転速度を上げレジスト溶剤を乾燥させる。」(2頁右上欄3?11行)

(4)甲第4号証〔特開昭64-61917号公報〕の記載事項
甲第4号証には、「基板端部の塗布膜除去装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「このような問題が生じないようにするため従来基板端部に形成された塗布膜を除去する方法および装置が種々知られており、第4図および第5図に基づいてその一例を説明する。シリコン1の表面には回転塗布法によりポジ型フォトレジスト2が約1μmの厚さに塗布されているものとする。この時前述したように基板1の表面端部には厚く盛り上がるように塗布され、かつ基板1の裏面にも囲り込みが生じている。基板1をはさみ込むように上下から2本の管3,4を約10mmの間隙5を有するように対向させて配置し、この間隙5の間に前述した厚さ0.6mmの塗布済シリコン基板1を挿入し、管3,4からフォトレジスト2の溶剤6を供給して基板1の端部に形成されたフォトレジスト2を溶解して除去するようにしている。」(2頁左上欄19行?同右上欄13行)
次に基板端部のレジスト除去について説明すると、第1、第2の管21,22からレジスト溶剤28を供給し、第3の管24は排気装置またはダクトに連結する。まず基板27の周縁部を2mmほど間隙23内に挿入し、第1、第2の管21,22より溶剤28を供給し、基板27端部のレジスト26を溶解させ、第3の管24より溶剤と溶解物とを排出させるようにする。」(3頁右上欄6?13行)

(5)甲第5号証〔特開平4-206626号公報〕の記載事項
甲第5号証には、「周辺レジスト除去方法」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「上記のチャンバ1内の上方周辺位置に周辺除去用のノズル6を設け、スピンチャック2を低速回転(例えば1rpm以下)させて上記したレジスト膜の溶剤をこのノズル6より外周側に供給、例えば噴射して第1図に示した矢印7の方向に溶剤を吸引し、第3図に示すようにウエハ3周辺部のレジスト液5膜の表面層を除去して周辺のレジスト膜5の厚さを中央部の厚さより薄く減少させると共に、ウエハ3のオリフラ部3Aの周辺部のレジスト膜も薄くできるように、オリフラ部3Aで上記ノズル6を側縁に沿って移動させるようにしている。」(2頁左下欄6?17行)

(6)甲第6号証〔特開平1-298720号公報〕の記載事項
甲第6号証には、「ウエハ裏面への回り込みレジストの除去・乾燥方法」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「この装置は、第6図に示すように、ノズル13,14及び壁部材26をブロック40に取り付けてユニット化し、このユニット41を、ウエハ10の上方にウエハ10を囲むように設けた環状のガイドレール42に沿って移動可能に設けた構成である。
レジスト洗浄除去工程は、第7図に併せて示すように、ウエハ10は回転させずに、ノズル13よりレジスト剥離液を噴射させながら、ユニット41をガイドレール42に沿って矢印A方向及びB方向に略-周毎交互に往復移動させて行なう。」(4頁左上欄5?15」行)

(7)当審の職権の無効理由通知において提示した本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献1〔特開平6-97067号公報〕の記載事項
上記引用文献1には、「基板端縁洗浄装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【0020】 前記基板端縁洗浄具3は、洗浄具本体10と、それを角型基板1の端縁に沿わせて直線移動する移動手段11と、洗浄具本体10を角型基板1の端縁に対して遠近変位する位置調整手段12とから構成されている。
【0021】 前記基台Bに取り付けられた支持台13に、一対の第2のガイド14,14を介して角型基板1の端縁に沿う方向に移動可能に移動台15が設けられ、かつ、支持台13に、主動プーリー16と従動プーリー17とが取り付けられ、両プーリー16,17にベルト18が巻回されるとともに主動プーリー16に電動モータ19が連動連結され、そして、ベルト18に移動台15が一体的に取り付けられ、洗浄具本体10を角型基板1の端縁に沿わせて直線移動するように前記移動手段11が構成されている。」
「【0028】 以上の構成により、回転塗布によって表面に薄膜が形成された角型基板1を基板保持手段2に保持させ、角型基板1の各辺それぞれに対応するように洗浄具本体10を移動させ、その状態で、溶剤とガスを吐出するとともに排気しながら洗浄具本体10を各辺それぞれに沿わせて移動させ、角型基板1の各辺それぞれの表裏両面と周端面の不要薄膜を溶解除去することができる。」
「【0035】 また、上記実施例では、洗浄具本体10を角型基板1の四辺に対応させられるように、全体として四個設けているが、本発明としては、洗浄具本体10を一個あるいは二個設け、角型基板1を回転して異なる辺部分をも洗浄できるように構成しても良い。」

(8)当審の職権の無効理由通知において提示した本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献2〔特開平6-310422号公報〕の記載事項
上記引用文献2には、「基板端縁洗浄装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【0013】 前記溶剤ノズル3,3および排気管4がノズルブロック7に一体的に取り付けられ、そのノズルブロック7を取り付けた支持アーム8が、固定フレーム9に付設した上下一対のガイド10,10を介して、角型基板1の端縁に沿って移動可能に設けられている。
【0014】 基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に、正逆転可能な駆動機構としての電動モータ11を設けたモータブラケット12が立設されるとともに、電動モータ11の駆動軸に駆動プーリー13が連動連結されている。
【0015】 基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に1個の遊転プーリー14が、そして、他の3箇所の角部に対応する箇所に2個づつの遊転プーリー14,14がそれぞれ設けられ、駆動プーリー13と遊転プーリー14…とにわたって一対のワイヤー15,15が巻回され、そのワイヤー15,15の所定の四箇所それぞれに支持アーム8が連結され、電動モータ11の正逆転により、四個の溶剤ノズル3…、排気管4…それぞれを角型基板1の各辺に沿わせて往復移動し、角型基板1の端縁を洗浄できるように構成されている。」
「【0019】 また、上記実施例では、基板保持手段2に保持された角型基板1の4辺それぞれに対応して溶剤ノズル3と排気管4とを設けているが、本発明としては、1辺にのみ対応させて設けるものでも良い。」

2 当審の判断
(1)本件発明1と引用発明1との対比
ア ここで、本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「表面に薄膜が形成された角型基板1を保持する基板保持手段2」、「その基板保持手段2によって保持された前記角型基板1の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段3」、「基板端縁洗浄装置5」及び「前記溶剤吐出手段3を前記端縁に沿って移動案内するガイド15,15」のそれぞれが、本件発明1の「表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段」、「その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段」、「角型基板用基板端縁洗浄装置」及び「前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構」のそれぞれに相当することは、明らかである。

イ そして、引用発明1の「前記溶剤吐出手段3と前記溶剤吐出手段3を前記端縁に沿って移動案内するガイド15,15とが前記角型基板1の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、」が、本件発明1の「前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、」に相当する。
さらに、引用発明1の「角型基板1の各端縁の一方側の位置に配置された各溶剤吐出手段3の移動始点となる端点A」及び「前記移動始点となる端点Aとは反対側の前記角型基板1の各端縁の他方側の位置に配置された前記各溶剤吐出手段3の移動終点となる端点B」は、本件発明1の「前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点」及び「前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点」に相当する。

ウ そうすると、引用発明1の「前記各溶剤吐出手段3が、角型基板1の各端縁の一方側の位置に配置された各溶剤吐出手段3の移動始点となる端点Aと、前記移動始点となる端点Aとは反対側の前記角型基板1の各端縁の他方側の位置に配置された前記各溶剤吐出手段3の移動終点となる端点Bとの間を、前記電動モータ16の正逆転により前記角型基板1の各端縁に沿って往復移動することにより、前記各溶剤吐出手段3が、前記基板保持手段2によって保持された前記角型基板1の洗浄すべき各端縁に沿って移動し、溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行い」の構成と、本件発明1の「各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行う」構成との間の相違は、表現上の形式的な相違であって、実質的な構成上の相違ではないから、両者は実質的に同一の構成である。

エ さすれば、引用発明1の「前記各溶剤吐出手段3が、角型基板1の各端縁の一方側の位置に配置された各溶剤吐出手段3の移動始点となる端点Aと、前記移動始点となる端点Aとは反対側の前記角型基板1の各端縁の他方側の位置に配置された前記各溶剤吐出手段3の移動終点となる端点Bとの間を、前記電動モータ16の正逆転により前記角型基板1の各端縁に沿って往復移動する」構成と、本件発明1の「前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動する」構成とは、2つの端点の設定位置を「延長線上であって」とする点を除いて、両者は少なくとも「前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動する構成」である点で共通する。

オ そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、
前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設け、
前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、
各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行う角型基板用基板端縁洗浄装置」
である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
[相違点1]:2つの端点の位置設定を、本件発明1が「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって」としているのに対し、引用発明1は「角型基板1の各端縁の一方側の位置と他方側の位置」としている点。
[相違点2]:本件発明1では「各々2つの端点が、前記各ガイド機構ごとに定められる」としているのに対し、引用発明1では、端点A,B設定手段36により角型基板1のサイズに応じて設定される前記溶剤吐出手段3のノズルブロック12の移動する距離は、前記端点A及び端点Bが、角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置と角型基板1の短辺側にある既知の原点位置とから演算して設定される点。

2 相違点についての検討
ア 相違点1について
(ア)甲第2号証には、次の技術事項a及びbが記載されている。
a 「第1図には本発明に係る不要レジスト除去装置の一実施例の平面図が示されている。同図において、11は中央に基板aよりも一回り小さな基台としての固定テーブル12を有する処理槽で、処理槽11の各側壁には、基板aの端面の接線延長線上にシリンダ20がそれぞれピン13を支点として水平面内回転可能に取り付けられている。」
b 「第3図に示すレジスト塗付装置により表面にフォトレジストが塗付されたガラス基板aは、第1図に2点鎖線A?Dで示すように、全エアシリンダ20を外側に回転させた状態で不要レジスト除去装置の固定テーブル12上に載置され、図示しない真空吸着手段により固定される。次に、第2のエアシリンダ30を作動させて4つのエアシリンダ20を第1図に実線で示されるような位置まで回動させる。それから、パイプ23に設けられたノズル23aよりレジスト除去液を滴下させながら、エアシリンダ20に圧縮空気を送ってシリンダロッド20aを往復動させる。すると、パッド21aが基板aの側面から底面にかけて接触したままこすられるように移動するため、基板aの側面から底面にかけて付着した不要なレジストがパッド21aによってこすりとられて脱落し、基板の周縁が清浄化される。」

(イ)そうすると、甲第2号証の上記記載及び添付図面の第1図の記載からみて、甲第2号証には、「レジスト塗付装置により表面にレジストが塗付されたガラス基板aが不要レジスト除去装置の固定テーブル12上に載置されて、前記ガラス基板aの端面の接線延長線上の処理槽11の各側壁にエアシリンダ20がそれぞれピン13を支点として水平面内回転可能に取り付けられていて、ノズル23aよりレジスト除去液を滴下させながら、4つのエアシリンダ20に圧縮空気を送ってシリンダロッド20aを往復動させることにより、パッド21aが前記ガラス基板aに接触したまま移動して、ガラス基板aに付着した不要なレジストがパッド21aによってこすりとられて脱落し、基板の周縁を清浄化する基板周縁の不要レジスト除去装置」の発明の記載が認められる。

(ウ)そして、甲第2号証に記載の発明においては、前記パッド21aが、ガラス基板aの端面の接線延長線上にあるシリンダロッド20aの往復動により、前記ガラス基板aに接触したまま移動させられるのであるから、前記パッド21aは、少なくともガラス基板aの端面の接線上を摺動していることが明らかである。しかも、前記パッド21aが、前記ガラス基板aに付着した不要なレジストをこすりとることにより脱落させるのであるから、ガラス基板aの端面の接線上を摺動している前記パッド21aの折り返し点の位置は、ガラス基板aの端面の接線延長線上にあることは明らかである。

(エ)かかる甲第2号証に記載の発明から、「ガラス基板aの端面の接線延長線上において、ガラス基板aに付着した不要なレジストを除去するために前記ガラス基板aの端面に接触したまま不要レジスト除去手段を往復動させること」は、本件特許出願前の刊行物に記載された公知の技術手段であるといえる。

(オ)そうすると、甲第2号証に記載の前記「ガラス基板aの端面の接線延長線上において、ガラス基板aに付着した不要なレジストを除去するために前記ガラス基板aの端面に接触したまま不要レジスト除去手段を往復動させること」の技術手段を引用発明1に適用することにより、引用発明1の角型基板1の各端縁の一方側の位置と他方側の位置にある2つの端点の設定位置を、本件発明1の前記相違点1に係る「前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であ」るように変更することは、甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が格別の技術力を要せずに容易に想到できることである。

イ 相違点2について
(ア)移動始点と移動終点の2つの端点間を溶剤吐出手段が角型基板の端縁に沿って移動する場合の前記2つの端点の位置設定が、溶剤吐出手段の移動精度及び角型基板の端縁の洗浄精度に密接に関連する事項であることを勘案すれば、前記溶剤吐出手段の移動精度及び角型基板端縁の洗浄精度についての精度設計は、要求される精度に応じて好適な結果が得られるように当業者が適宜に決定する事項であるといえる。

(イ)ところで、例えば、洗浄具本体10の設置個数の設定例では、上記引用文献1〔特開平6-97067号公報〕(上記「2 甲号各証の記載事項」欄の(7)を参照。)の段落【0035】に、洗浄具本体10を、角型基板1の四辺に対応させられるように四個設けるか、あるいは、一個あるいは二個設けるかは、当業者が適宜採用できる設計事項であることが記載されている。
また、溶剤ノズル3と排気管4の設置個数の設定例では、上記引用文献2〔特開平6-310422号公報〕(上記「2 甲号各証の記載事項」欄の(8)を参照。)の段落【0019】に、溶剤ノズル3と排気管4を、基板保持手段2に保持された角型基板1の4辺それぞれに対応して設けるか、あるいは、1辺にのみ対応させて設けるかは、当業者が適宜採用できる設計事項であることが記載されている。

(ウ)かかる引用文献1及び引用文献2の例示からみて、数量・個数の設定は、設計事項にすぎないことが明らかである。
さすれば、かかる2つの端点の位置設定を、角型基板の洗浄すべき4辺の端縁の内の1辺の端縁に基づいて設定するか、あるいは、角型基板の洗浄すべき4辺の端縁の2辺の端縁に基づいて設定するか、あるいはまた角型基板の洗浄すべき4辺の端縁の全辺の端縁に基づいて設定するかの精度設計の方針の相違は、すぐれて設計事項に属する事項であるといえる。

(エ)そうすると、引用発明1のように、ガイド15,15が角型基板1の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられている場合に、溶剤吐出手段3が移動する2つの端点A,Bの位置設定に際して、「角型基板の洗浄すべき4辺の端縁の全辺の端縁に基づいて設定する」設計方針を採用することにより、本件発明1の前記相違点2に係る「各々2つの端点が、各ガイド機構ごとに定められる」とすることは、当業者が必要に応じて適宜採用できる設計事項にすぎないことである。

そして、本件発明1の奏する作用効果は、引用発明1及び甲第2号証に記載された発明、並びに引用文献1及び引用文献2の例示から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

3 まとめ
以上のとおりであり、本件発明1は、引用発明1及び甲第2号証に記載された発明、並びに引用文献1及び引用文献2の例示に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第7 当審の職権による無効理由2(特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号違反)についての検討
1 本件発明1の「端点Aおよび端点Bの位置の設定の仕方」について
(1)甲第1号証に記載されている「端点Aおよび端点Bの位置の設定の仕方」については、上記「第5 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討」欄の「2(2)ア(エ)」に前述したとおりである。
そして、本件特許出願は、上記甲第1号証に係る特願平5-123538号を原出願とする分割出願であるから、本件発明1の「端点Aおよび端点Bの位置の設定の仕方」については、上記甲第1号証に記載されている技術事項の範囲内にとどまるものであるといえる。
そうすると、甲第1号証に記載されている「端点Aおよび端点Bの位置の設定の仕方」についてと同様に、本件発明1の「端点Aおよび端点Bの位置の設定の仕方」は、端点Aおよび端点Bの位置の設定と、特定ノズルブロック12の短辺側の端点A及び端点Bの間の往復移動との両者に共通する「端点Aおよび端点B」をめぐって、「角型基板1の長辺側の中央が位置する基板保持手段2の所定位置」と「角型基板1の短辺側にある既知の原点位置」との間には、何らの脈絡も存在していないから、両者の基準については、整合性が欠けているというべきである。

(2)しかも、本件訂正明細書等には、本件発明1の構成要件である「前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上の前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点を、前記各ガイド機構ごとに定め」る場合の設定方法が記載されていない。

(3)そうすると、本件発明1の「前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点」及び「各々2つの端点が、前記各ガイド機構ごとに定められる」の各構成要件が本件訂正明細書等に記載されてなく、また、前記各構成要件について、当業者が実施できる程度に本件訂正明細書等の発明の詳細な説明に記載されているということができないばかりでなく、前記各構成要件を含む本件発明1の構成が、明確でないものとなっている。

2 本件発明1の「ガイド機構」について
(1)本件特許出願は、上記甲第1号証に係る特願平5-123538号を原出願とする分割出願であるから、本件発明1の「ガイド機構」については、上記甲第1号証に記載されている「ガイド15,15」についての、上記「第5 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討」欄の「2(2)イ」の(イ)及び(ウ)に前述したとおりの技術事項の範囲内にとどまるものであるといえる。

(2)しかして、前記「ガイド機構」という文言は、「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」という具体的構成の上位概念であり、前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」の具体的構成だけではなく、ガイド機能を有する他の構成による機構をも包含する拡張された一般的な概念であるから、「ガイド機構」の文言が、必ずしも前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」のみを一義的に意味するものでないことは明らかである。
したがって、前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」が「ガイド機構」に該当するということはいえるが、逆に、「ガイド機構」の文言が前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」のみを意味することにはならないので、前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」を離れた本件発明1の「ガイド機構」は、前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」を超えた構成であって、本件訂正明細書等の発明の詳細な説明に明示の記載がなく、また示唆する記載もないので、明確でないものとなっている。

(3)そうすると、本件訂正明細書等に開示されている前記「固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15」を超えた構成である、本件発明1の「ガイド機構」の構成が、本件訂正明細書等に記載されてなく、また、前記構成について、当業者が実施できる程度に本件訂正明細書等の発明の詳細な説明に記載されているということができないばかりでなく、前記構成を含む本件発明1の構成も明確でない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1の特許は、特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

第8 むすび
以上のとおり、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、当審の職権による無効理由1により無効とすべきものである。
また、本件発明1の特許は、特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、当審の職権による無効理由2により無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
角型基板用基板端縁洗浄装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、
前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設け、
前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、
各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うことを特徴とする角型基板用基板端縁洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、フォトレジスト液や感光性ポリイミド樹脂やカラーフィルター用の染色剤などから成る薄膜が表面に塗布された液晶用ガラス基板やフォトマスク用ガラス基板やサーマルヘッド製造用のセラミック基板などの角型基板に対し、その薄膜塗布後に角型基板の端縁に付着した不要薄膜を溶解除去するために、表面に薄膜が形成された角型基板を載置保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、基板端縁洗浄装置としては、従来、特公平3-78777号公報に開示されているものがあった。
この従来例によれば、表面に薄膜が形成された基板の周縁部の上面と下面に対向して第1の管と第2の管が設けられるとともに、第1および第2の管の間の間隙部でかつ基板端部の延長上に第3の管が設けられ、第1および第2の管から基板の周縁部の上面と下面に溶剤を供給するとともに、それらの溶剤ならびに溶解除去された不要薄膜を第3の管から吸引排出できるように構成されている。
【0003】
そして、第3の管から不要薄膜を吸引排出することにより溶剤が基板の中心側に侵入していくことを回避し、基板を低速で回転させながら第1、第2および第3の管を基板の回転中心から遠近する方向に移動させることにより、オリエンテーションフラットのある基板とか液晶用ガラス基板のような角型基板に対しても、その端縁の不用薄膜を溶解除去できるように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、角型基板の回転に伴う回転中心からの距離の変化に対応できるように、第1、第2および第3の管を基板の回転中心から遠近する方向に移動するためには、極めて高精度な制御を必要とし、また、基板を高速で回転することができないために処理効率が大幅に低下し、上述の従来例の装置によって角型基板の端縁を洗浄することは実用的ではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構成的に簡単にできながら、角型基板の端縁を短時間で効率良く洗浄することができる角型基板用基板端縁洗浄装置を提供することを主たる目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述のような目的を達成するために、次のような構成を採る。
すなわち、請求項1記載の発明は、表面に薄膜が形成された角型基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段によって保持された前記角型基板の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段とを備えた角型基板用基板端縁洗浄装置であって、前記溶剤吐出手段が、前記基板保持手段によって保持された前記角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって前記角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を前記端縁に沿って移動するように、前記溶剤吐出手段を移動案内するガイド機構を設け、前記溶剤吐出手段と前記ガイド機構は前記角型基板の洗浄すべき端縁の全てにそれぞれ設けられ、前記各ガイド機構ごとに定められる各々2つの端点は、前記各溶剤吐出手段の移動始点となる端点が前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になり、同様に前記各溶剤吐出手段の移動終点となる端点も同じ側になるように設定され、各端縁ごとに設けられた前記溶剤吐出手段は、前記角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たとき同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うことを特徴とする。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【作用】
請求項1記載の発明によれば、溶剤吐出手段は、ガイド機構に案内されることにより、基板保持手段によって保持された角型基板の洗浄すべき端縁の延長線上であって角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を基板端縁に沿って移動しながら溶剤を吐出して基板端縁の不要薄膜を溶解除去する。そして待機状態において、溶剤吐出手段は2つの端点のいずれか一方の端点位置にある。これらの端点は、角型基板の端縁の延長線上、すなわち角型基板の端縁の両端角部から外側へ外れた位置にあるので、基板保持手段に対して角型基板を搬入・搬出する際に、端点上にある溶剤吐出手段がその妨げになることがない。また、不要薄膜の除去処理に際しては、溶剤吐出手段がガイド機構に案内されて一方の端点から他方の端点へ直線移動するという簡単な移動動作だけによって、洗浄処理を行うことができる。
【0014】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁の全てに個別に設けられた溶剤吐出手段が、角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側となる一方の端点から他方の端点に向かって移動するので、各溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく全ての端縁を洗浄することができる。
【0016】
請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁ごとに設けられた溶剤吐出手段が角型基板の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ方向に移動しながら溶剤を吐出して各端縁の洗浄を行うので、各溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく各端縁を同時に洗浄することができる。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施例に係る角型基板用の基板端縁洗浄装置の全体概略側面図、図2は一部切欠全体概略平面図であり、回転塗布によって表面に薄膜が形成された角型基板1を載置して真空吸着により保持する基板保持手段2の周囲4箇所それぞれに、角型基板1の表裏両面に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出手段3…と、溶剤および溶解した不要薄膜を吸引する吸引部材4…とが備えられて、基板端縁洗浄装置5が構成されている。
【0022】
基板端縁洗浄装置5の一側方にフォトレジスト液を塗布するスピンコータ6が設けられるとともに、他側方に乾燥用のオーブン7が設けられ、かつ、スピンコータ6と基板端縁洗浄装置5との間に基板搬送用の入口側アーム8が設けられ、一方、基板端縁洗浄装置5と乾燥用のオーブン7との間に基板搬送用の出口側アーム9が設けられている。
【0023】
溶剤吐出手段3…それぞれは、図3の要部の拡大側面図、および、図4の平面図に示すように、吸引部材4の吸引口4aを挟んだ上下方向の上側に第1のリンス液ノズル10aと第1のガスノズル11aとを設け、一方、下側に第2のリンス液ノズル10bと第2のガスノズル11bとを設けて構成されている。
【0024】
前記第1および第2のリンス液ノズル10a,10bと第1および第2のガスノズル11a,11b、ならびに、吸引部材4がノズルブロック12に一体的に取り付けられ、そのノズルブロック12を取り付けた支持アーム13が、固定フレーム14に付設した上下一対のガイド15,15を介して、角型基板1の端縁に沿って移動可能に設けられている。
【0025】
図3に示されているように、支持アーム13は、角型基板1の中心側からみて溶剤吐出手段3よりも外側で、かつ下側に向けて延出されている。また、ガイド15は、角型基板1の中心側からみて溶剤吐出手段3よりも外側で、かつ下側に配置されている。このように構成することにより、隣り合う溶剤吐出手段3同士や支持アーム13同士が角型基板1の角部で干渉することがないようにするとともに、ガイド15で発生した塵埃によって角型基板1が汚染されないようにしている。
【0026】
【0027】
基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に、正逆転可能な駆動機構としての電動モータ16を設けたモータブラケット17が立設されるとともに、電動モータ16の駆動軸に駆動プーリー18が連動連結されている。
【0028】
基板保持手段2に保持された角型基板1のひとつの角部に対応する箇所に1個の遊転プーリー19が、そして、他の3箇所の角部に対応する箇所に2個づつの遊転プーリー19,19がそれぞれ設けられ、前記駆動プーリー18と遊転プーリー19…とにわたって一対のワイヤー20,20が巻回され、そのワイヤー20,20の所定の四箇所それぞれに支持アーム13が連結され、電動モータ16の正逆転により、四個の溶剤吐出手段3…、吸引部材4…それぞれを角型基板1の各辺に沿わせて往復移動し、角型基板1の端縁を洗浄できるように構成されている。
【0029】
角型基板1の所定の一辺に対応する箇所において、支持アーム13に当接してひとつのノズルブロック12が原点位置に移動したことを検出するノズルブロック原点検出センサ21が設けられるとともに、そのノズルブロック原点検出センサ21に近い位置に、ノズルブロック12が原点位置側に移動していくときに、原点に到達する直前の所定位置に到達したことを検出するノズルブロックドックセンサ22が設けられている。
【0030】
図5のブロック図に示すように、前記入口側アーム8に付設されている、入口側アームin検出センサ23、入口側アームdown検出センサ24、入口側アームopen検出センサ25、入口側アームup検出センサ26、入口側アームout検出センサ27、ならびに、出口側アーム9に付設されている、出口側アームin検出センサ28、出口側アームdown検出センサ29、出口側アームclose検出センサ30、出口側アームup検出センサ31、出口側アームout検出センサ32、および、前記ノズルブロック原点検出センサ21、ノズルブロックドックセンサ22がCPU33に接続され、更に、基板保持手段2が角型基板1を真空吸着保持したことを検出する基板吸着確認センサ34がCPU33に接続されている。
【0031】
入口側アームin検出センサ23は、スピンコータ6内に置かれた角型基板1を把持した入口側アーム8が基板端縁洗浄装置5内の所定位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0032】
入口側アームdown検出センサ24は、角型基板1を把持した入口側アーム8が基板端縁洗浄装置5の基板保持手段2上に角型基板1を載置する位置まで下降したことを検出するようになっている。
【0033】
入口側アームopen検出センサ25は、角型基板1を基板保持手段2上に載置する位置まで下降した入口側アーム8の爪が開いて、角型基板1の把持を解除したことを検出するようになっている。
【0034】
入口側アームup検出センサ26は、角型基板1の把持を解除した入口側アーム8が爪を開いたままで所定位置まで上昇したことを検出するようになっている。また、入口側アームout検出センサ27は、所定位置まで上昇した入口側アーム8がスピンコータ6側の退避位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0035】
出口側アームin検出センサ28は、端縁洗浄処理が終了した角型基板1を把持してオーブン7に搬送するための出口側アーム9が基板端縁洗浄装置5内の所定位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0036】
出口側アームdown検出センサ29は、角型基板1を把持した出口側アーム9が基板端縁洗浄装置5の基板保持手段2上に載置された角型基板1を把持可能な下降位置まで下降したことを検出するようになっている。
【0037】
出口側アームclose検出センサ30は、基板保持手段2上に載置された角型基板1を把持可能な位置まで下降した出口側アーム9の爪が閉じて、角型基板1を把持したことを検出するようになっている。
【0038】
出口側アームup検出センサ31は、角型基板1を把持した出口側アーム9が爪を閉じたままで所定位置まで上昇したことを検出するようになっている。また、出口側アームout検出センサ32は、所定位置まで上昇した出口側アーム9がオーブン7側の所定の退避位置まで移動したことを検出するようになっている。
【0039】
また、CPU33には、スキャン回数n設定手段35が接続され、1枚の角型基板1に対し、ノズルブロック12を往復させる回数を手動(キーボードなど)により入力して設定するようになっている。
【0040】
また、CPU33には、端点A,B設定手段36が接続されている。この端点A,B設定手段36によって、角型基板1の延長線上に角型基板のサイズに応じた2つの端点A,Bを定めて、ノズルブロック12の移動する距離を設定するようになっている。角型基板1を入口側アーム8によって基板保持手段2上に搬送するときに、角型基板1のサイズにかかわらず、常に、角型基板1の長辺側の中央が基板保持手段2の所定位置に位置するように搬送される。このことに着目して、ノズルブロック12の移動における端点AおよびBの位置を、上述所定位置からの距離により設定して表すようになっている。そして、スピンコータ6において、角型基板1のサイズが測定されるとともに、そのサイズデータがCPU33に入力されるようになっていて、既知の原点位置とノズルブロック12の幅とサイズデータとから端点AおよびBの位置を自動的に演算して設定するとともに表示するようになっている。この表示値は、微調整のために手動により変更可能である。この端点A,B設定手段36によって設定される端点Aと端点Bとにわたる移動量と原点から端点Aにわたる移動量は、前記ノズルブロック原点検出センサ21によって検出される原点位置に基づき、それを基準にして電動モータ16の回転量から検出するようになっており、この構成をして移動位置検出手段と称する。
【0041】
フォトレジスト液が塗布された角型基板1を基板端縁洗浄装置5に搬送する入口側アーム8の動作(アームの回転、昇降、爪の開閉)を制御する入口側アーム制御手段37、端縁洗浄処理が終了した角型基板1をオーブン7に搬送する出口側アーム9の動作(アームの回転、昇降、爪の開閉)を制御する出口側アーム制御手段38、基板保持手段2により角型基板1を真空吸着保持するための吸着動作を制御する基板吸着制御手段39、電動モータ16の回転方向および速度を制御してノズルブロック12の移動方向および速度を制御するノズルブロック駆動手段40、第1および第2のリンス液ノズル10a…,10bからのリンス液の吐出と停止とを行うリンス液ノズル制御手段41、ならびに、第1および第2のガスノズル11a…,11bからの窒素ガスの吹き出しと停止とを行うガスノズル制御手段42それぞれがCPU33に接続されている。なお、吸引部材4からの吸気は常に行われている。
【0042】
以上の構成により、基板端縁洗浄装置5への角型基板1の搬入と搬出、および、端縁洗浄が自動的に行うようになっており、次に、図6のタイムチャートと、図7および図8のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
先ず、スピンコータ7でフォトレジスト液が塗布された角型基板1を入口側アーム8に保持させた後、その入口側アーム8を回転させ、角型基板1を基板端縁洗浄装置5上に搬送し(S1)、所定位置まで搬送されたかどうかを入口側アームin検出センサ23で検出する(S2)。
【0044】
所定位置まで搬送された後に入口側アーム8を下降させ(S3)、角型基板1を基板保持手段2に載置する位置まで入口側アーム8が下降したかどうかを入口側アームdown検出センサ24により検出した(S4)後に、基板吸着制御手段39により基板保持手段2による真空吸着を開始する(S5)とともに、入口側アーム8の爪を開く(S6)。
【0045】
入口側アーム8の爪が開いたことを入口側アームopen検出センサ25により検出して(S7)から、入口側アーム8を上昇させる(S8)。その後、入口側アームup検出センサ26で入口側アーム8が所定位置まで上昇したことを検出してから(S9)、基板吸着確認センサ34で基板保持手段2が角型基板1を真空吸着保持したことを検出させる(S10)。
【0046】
その後に、ノズルブロック駆動手段40により電動モータ16を駆動し、ノズルブロック12を原点位置から端点Aに移動させる(S11)とともに、ガスノズル制御手段42による窒素ガスの供給とリンス液ノズル制御手段41によるリンス液の吐出とを開始し(S12、S13)、更に、入口側アーム8を回転し、基板端縁洗浄装置5の上方から外れた退避位置へ退避させる(S14)とともに、電動モータ16を所定のタイミングで正逆転して、ノズルブロック12を端点Aから端点Bに(S15)、そして、端点Bから端点Aに(S16)と往復移動させて角型基板1の端縁全周を洗浄処理する。
【0047】
角型基板1のサイズに応じて設定される端点A,Bは、角型基板1の中心側からそれぞれの端縁を見たときに同じ側になるように設定されている(すなわち、図4に示した例では、移動始点となる端点Aは角型基板1の中心側からそれぞれの端縁を見たときに左側に、移動終点となる端点Bは右側に位置している)ので、隣り合う溶剤吐出手段3が角型基板1の角部で干渉することがない。端点A,Bをこのように設定してあるので、各溶剤吐出手段3は角型基板1の周囲を同一方向回りで移動する。
【0048】
そのノズルブロック12の一回のスキャンが終了した時点でカウント(n=n-1)して(S17)から、そのカウント値が設定回数になったかどうかを判断し(S18)、設定回数になっていなければ、ステップS15に戻し、再度ノズルブロック12を往復移動させて角型基板1の端縁全周を洗浄処理する。ここではスキャン設定回数を二回に設定している(図6参照)。
【0049】
設定回数のスキャンが終了した後には、リンス液ノズル制御手段41によるリンス液の吐出とガスノズル制御手段42による窒素ガスの供給とを停止する(S19、S20)とともに、ノズルブロック駆動手段40により電動モータ16を駆動してノズルブロック12を端点Aから原点位置まで移動し(S21)、かつ、基板吸着制御手段39により、真空吸着を解除する(S22)。
【0050】
そして、ノズルブロックドックセンサ22でノズルブロック12が所定のドック位置に移動したことを検出する(S23)に伴い、電動モータ16の回転速度を低下し(S24)、オーバーランを防止する。次いで、ノズルブロック原点検出センサ21により原点位置を検出する(S25)までノズルブロック12を移動し、原点位置を検出してから電動モータ16の駆動を停止してノズルブロック12の移動を停止する(S26)。
【0051】
その後、入口側アームout検出センサ27により、入口側アーム8が退避位置に移動したことを確認する(S27)とともに、角型基板1の真空吸着が解除されていることを確認した(S28)後、出口側アーム9を回転させ、基板端縁洗浄装置5上の所定の搬出位置に移動させる(S29)。ここで、入口側アーム8の退避確認は、出口側アーム9と入口側アーム8との干渉を防止するためであり、また、吸着解除の確認は、吸着状態の角型基板1に出口側アーム9が作用して角型基板1が破損することを防止するためである。
【0052】
その後、出口側アーム9が基板端縁洗浄装置5上の所定の搬出位置に移動したかどうかを出口側アームin検出センサ28で検出し(S30)、その所定位置まで搬送された後に出口側アーム9を下降させ(S31)、真空吸着を解除した状態で基板保持手段2に保持されている角型基板1を把持可能な位置まで下降したかどうかを出口側アームdown検出センサ29で検出する(S32)。
【0053】
所定位置まで下降した後に、出口側アーム9の爪を閉じて角型基板1を把持させ(S33)、その爪を閉じて角型基板1を把持したことを出口側アームclose検出センサ30で検出した(S34)後、出口側アーム9を上昇させる(S35)。
【0054】
その後、出口側アームup検出センサ31で出口側アーム9が所定位置まで上昇したことを検出して(S36)から、出口側アーム9を回転してオーブン7側の所定の退避位置に移動させる(S37)。
【0055】
出口側アーム9が所定の退避位置に移動したかどうかを出口側アームout検出センサ32で検出し(S38)、その退避を確認した後に、連続処理するかどかを判断し(S39)、連続処理であればステップS1に戻して、上述処理を繰り返し、一方、連続処理で無ければ、処理を終了する。
【0056】
以上の動作により、スピンコータ6から基板端縁洗浄装置5への角型基板1の搬入、端縁洗浄処理、および、基板端縁洗浄装置5からオーブン7への角型基板1の搬出を自動的に行うことができる。
【0057】
上述した移動位置検出手段により検出したノズルブロック12の位置、すなわち、溶剤吐出手段3の位置に基づいてノズルブロック駆動手段40の動作を制御する構成をして制御手段と称する。
【0058】
図9は、本発明に係る基板端縁洗浄装置の第2実施例の概略平面図であり、基板保持手段2に載置された角型基板1の各辺それぞれと平行にネジ軸43が回転可能に設けられるとともに、各ネジ軸43…それぞれに支持アーム13が螺合されている。
【0059】
ネジ軸43…のうちの所定のひとつに電動モータ16aが連動連結され、そのネジ軸43と他の2本のネジ軸43,43とがベベルギア機構44を介して連動連結されるとともに、そのうちの1本のネジ軸43と残りの1本のネジ軸43とが別のベベルギア機構44を介して連動連結され、単一の電動モータ16の正逆転により、溶剤吐出手段3…および吸引部材4…それぞれを一体的に往復移動して角型基板1の端縁全周に対する洗浄処理を一挙に行うことができるように構成されている。
【0060】
第1実施例における、駆動プーリー18と遊転プーリー19…とワイヤー20とから成る構成、ならびに、第2実施例におけるネジ軸43…とベベルギア機構44…とから成る構成をして、四個の溶剤吐出手段3…を一体的に移動するための連係機構と総称する。
【0061】
本発明としては、吸引部材4…を備えずに、溶剤吐出手段3…だけを備える基板端縁洗浄装置にも適用できる。
【0062】
また、上記実施例では、角型基板端縁の表裏両面に溶剤を吐出するように構成しているが、例えば、回転可能に保持された角型基板1の下方側に溶剤を供給し、角型基板1の裏面に回り込んで形成される薄膜を溶解除去するように構成した裏面洗浄タイプの回転塗布装置で裏面を洗浄しながら回転塗布により薄膜が形成された角型基板1に対しては、角型基板1の端縁の表面側にのみ溶剤を吐出するように構成するとか、あるいは、角型基板1の端縁の裏面側にのみ溶剤を吐出して表面張力により表面側に回り込ませるように構成するなど、本発明としては、角型基板1の端縁の表裏両面の少なくともいずれか一方に溶剤を吐出するように構成するものであれば良い。
【0063】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば次の効果を奏する。
請求項1記載の発明によれば、角型基板のサイズに応じて定められた2つの端点間を溶剤吐出手段がガイド機構に案内されて直線移動しながら溶剤を吐出するという簡単な構成によって角型基板の端縁洗浄を行うことができる。
また、待機状態において、溶剤吐出手段は角型基板の端縁の延長線上の端点位置にあるので、基板保持手段に対して角型基板を搬入・搬出する際に、端点上にある溶剤吐出手段がその妨げになることがない。そして、角型基板の搬入・搬出に際して、溶剤吐出手段を角型基板から離れた位置に退避させるための特別な機構を必要としないので、それだけ装置構成が簡単になる。
さらに、待機状態から端縁洗浄処理に移る際に、角型基板から遠ざけた溶剤吐出手段を角型基板に近づけるなどの過程を必要としないので、待機状態から洗浄処理に移る時間が短くなり、それだけ端縁洗浄処理を効率よく行うことができる。
【0064】
【0065】
請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁の全てに個別に設けられた溶剤吐出手段が、角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく全ての端縁を洗浄することができる。
【0066】
請求項1記載の発明によれば、角型基板の洗浄すべき端縁ごとに設けられた溶剤吐出手段が角型基板の端縁端部(角型基板の角部)で干渉することなく各端縁を同時に洗浄することができる。
【0067】
【0068】
【0069】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例に係る基板端縁洗浄装置の全体概略側面図である。
【図2】
一部切欠全体概略平面図である。
【図3】
要部の拡大側面図である。
【図4】
要部の拡大平面図である。
【図5】
ブロック図である。
【図6】
タイムチャートである。
【図7】
フローチャートである。
【図8】
フローチャートである。
【図9】
本発明の第2実施例に係る基板端縁洗浄装置の全体概略側面図である。
【符号の説明】
1…角型基板
2…基板保持手段
3…溶剤吐出手段
5…基板端縁洗浄装置
16…駆動機構としての電動モータ
18…駆動プーリー
19…遊転プーリー
20…ワイヤー
21…ノズルブロック原点検出センサ
【図面】









 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-01-22 
結審通知日 2008-01-25 
審決日 2008-02-05 
出願番号 特願平11-35999
審決分類 P 1 113・ 537- ZA (H01L)
P 1 113・ 536- ZA (H01L)
P 1 113・ 121- ZA (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 禎治岩本 勉  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 末政 清滋
森内 正明
登録日 2000-09-14 
登録番号 特許第3110416号(P3110416)
発明の名称 角型基板用基板端縁洗浄装置  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 片寄 武彦  
代理人 田中 貞嗣  
代理人 杉谷 勉  
代理人 戸高 弘幸  
代理人 青木 健二  
代理人 戸高 弘幸  
代理人 杉谷 勉  
代理人 森川 聡  
代理人 小山 卓志  
代理人 米澤 明  

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