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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B05C
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B05C
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B05C
管理番号 1176149
審判番号 無効2006-80279  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-12-27 
確定日 2008-03-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3470890号発明「処理液塗布装置及び方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3470890号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3470890号(以下、「本件特許」という。)の出願は、平成5年8月31日に特許出願された特願平5-215340号(以下、このもとの特許出願を、「原出願」という。)の一部を分割して、新たな特許出願として平成12年8月31日に出願した特願2000-262599号(以下、「本件分割特許出願」という。)であって、その請求項1ないし請求項4に係る発明について平成15年9月12日に設定登録され、その後、本件無効審判請求人の株式会社エイブル(以下、「請求人」という。)により上記本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明の特許に対して平成18年12月27日に本件無効審判〔無効2006-80279〕が請求されたものであり、無効審判被請求人の大日本スクリーン製造株式会社(以下、「被請求人」という。)により指定期間内の平成19年4月2日付けの審判事件答弁書及び同日付けの訂正請求書が提出され、前記審判事件答弁書副本及び訂正請求書副本を前記請求人に送付したところ、前記請求人により指定期間内の平成19年5月29日付けの審判事件弁駁書が提出され、請求人の主張する無効理由に新たな証拠方法として甲第4号証〔特開平4-300673号公報〕が追加されたものである。
その後、当審は、平成19年10月26日に口頭審理を開廷すべく、前記審判事件弁駁書副本を請求人に送付し、さらに、当審の職権による審理結果としての、本件分割特許出願に関する分割要件違反を前提として、訂正請求後の本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る各発明(以下、請求項順に「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)についての、特開平6-338447号公報、特開平11-285663号公報、特開平11-267574号公報及び甲第1号証、並びに、甲第2ないし4号証の各刊行物に記載の各発明に基づく進歩性要件の欠如(特許法第29条第2項違反)と、本件訂正明細書における発明の明確性の要件、サポート要件及び実施可能要件の各要件の欠如(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)を内容とする無効理由通知〔後記の「第3 当審の審理」欄の「3」及び「4」を参照。〕を、請求人及び被請求人の両当事者双方に対して平成19年8月14日にファクシミリにより送信した上で、前記口頭審理の期日の2週間前までに、前記審判事件弁駁書及び当審の職権による無効理由通知に関する請求人及び被請求人からの意見等を纏めた口頭審理陳述要領書の提出を求めたところ、被請求人から平成19年10月12日付けの口頭審理陳述要領書が提出され、また請求人から平成19年10月26日付けの口頭審理陳述要領書が提出されたものである。
そして、当審により平成19年10月26日の期日に口頭審理が公開で開廷され、請求人は平成18年12月27日付け審判請求書、平成19年5月29日付け審判事件弁駁書及び平成19年10月26日付け口頭審理陳述要領書に基づいて陳述し、また、被請求人は、平成19年4月2日付け審判事件答弁書、平成19年4月2日付け訂正請求書及び平成19年10月12日付け口頭審理陳述要領書に基づいて陳述をした。
なお、平成19年10月26日期日の口頭審理における、審判事件弁駁書における請求人の主張に対する被請求人の意見、並びに、当審の職権による無効理由通知に関する請求人及び被請求人の意見を含む両当事者の陳述は、第1回口頭審理調書に記載のとおりである。

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、「特許第3470890号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、下記の甲第1号証ないし甲第3号証を提出して、以下の無効理由を主張する。その無効理由の要点は、次のとおりである。
〔無効理由1〕:本件分割特許出願は、分割要件を満たしていないことにより、本件分割特許出願の出願日が実際の出願日である平成12年8月31日に繰り下がることを前提に、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当して特許を受けることができないか、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基づいて、出願前当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第1号証:特開平7-66108号公報〔原出願である特願平5-215340号の公開特許公報〕

〔無効理由2〕:本件分割特許出願は、分割要件を満たしていないことにより、本件分割特許出願の出願日が実際の出願日である平成12年8月31日に繰り下がることを前提に、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、出願前当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第2号証:特開昭63-248471号公報
甲第3号証:特開平1-135564号公報

〔無効理由3〕:本件特許の明細書及び図面の記載と特許請求の範囲の記載は、それぞれ特許法第36条第4項第1号と同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2 被請求人の主張
被請求人は、請求人の前記主張に対し、平成19年4月2日付けの訂正請求書を提出するとともに、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、「本件特許に係る分割出願は適法であって、本件請求項1ないし4に係る発明は特許法第123条第1項第2号に該当せず、また、本件特許は全ての請求項1ないし4について特許法第123条第1項第4号に該当しない。よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。」旨を主張した。

第3 当審の審理
1 訂正請求の訂正の適否についての判断
(1)訂正請求の内容
被請求人は、請求人の無効審判請求書副本の送付を受けて、平成19年4月2日付の訂正請求書を提出し、その訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)に記載された次のとおりのものである。
ア 〔訂正事項1〕 本件分割特許出願の特許査定時の明細書又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】 回転可能に設けられて、上面に基板が搭載される基板搭載部と、
前記基板搭載部の周囲に位置して前記基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が前記基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置された周端部材と、
前記基板搭載部及び前記周端部材を回転させる回転駆動源と、
前記基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する処理液供給手段とを備え、
前記基板搭載部は前記周端部材に対して上下動可能に設けられていることを特徴とする処理液塗布装置。」
の記載を、
「【請求項1】 回転可能に設けられて、上面に基板が搭載される基板搭載部と、
前記基板搭載部の周囲に位置して前記基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が前記基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置された周端部材と、
前記基板搭載部の下方に平行に配置され、前記周端部材と固定されている下部回転板と、
前記下部回転板上に固定され、前記周端部材の外周側に配置されたリング部材と、
前記基板搭載部と前記周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に配置される上部回転板であって、前記リング部材上に着脱可能かつ係止可能に配置され、装着時に前記下部回転板と一体回転可能である上部回転板と、
前記基板搭載部及び前記周端部材を回転させる回転駆動源と、
前記基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースと、
前記下部ケースに連通する排気ダクトと、
を備え、
前記基板搭載部は前記周端部材に対して上下動可能に設けられており、 前記上部回転板と前記下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成し、
前記下部回転板の端面に対向する前記リング部材の内周面には、液溜め空間が形成されていることを特徴とする処理液塗布装置。」
と訂正する。

イ 〔訂正事項2〕 本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項4の、
「【請求項4】 基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程と、
基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程と、
基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程と、
基板搭載部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させる工程と、
を備えたことを特徴とする処理液塗布方法。」
の記載を、
「【請求項4】 基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程と、
基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程と、
基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程と、
基板搭載部の下方に平行に下部回転板が配置されており、
下部回転板に周端部材と、周端部材の外周側に配置されたリング部材とが固定されており、
下部回転板の端面に対向するリング部材の内周面には、液溜め空間が形成されており、
基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に上部回転板が配置されており、
上部回転板はリング部材上に着脱可能かつ係止可能であって、装着時に下部回転板と一体回転可能であり、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースに排気ダクトが連通されており、
基板搭載部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置し、かつ、前記上部回転板を前記リング部材上に係合して上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させ、基板からの余剰の処理液を液溜空間に溜める工程と、
を備えたことを特徴とする処理液塗布方法。」
と訂正する。

ウ 〔訂正事項3〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0008】の、
「【0008】【課題を解決するための手段】 請求項1に記載の処理液塗布装置は、基板搭載部と、周端部材と、回転駆動源と、処理液供給手段とを備えている。基板搭載部は、回転可能に設けられて、上面で基板を保持する。周端部材は、基板搭載部の周囲に位置して基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置されている。回転駆動源は基板搭載部及び周端部材を回転させる。処理液供給手段は、基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する。そして、基板搭載部は、周端部材に対して上下動可能に設けられていることを特徴とする。」
の記載を、
「【0008】【課題を解決するための手段】 請求項1に記載の処理液塗布装置は、基板搭載部と、周端部材と、下部回転板と、リング部材と、上部回転板と、回転駆動源と、処理液供給手段と、下部ケースと、排気ダクトと、を備えている。基板搭載部は、回転可能に設けられて、上面で基板を保持する。周端部材は、基板搭載部の周囲に位置して基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置されている。下部回転板は、基板搭載部の下方に平行に配置され、周端部材と固定されている。リング部材は、下部回転板上に固定され、周端部材の外周側に配置される。上部回転板は、基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に配置されるものであって、リング部材上に着脱可能かつ係止可能に配置され、装着時に下部回転板と一体回転可能である。回転駆動源は基板搭載部及び周端部材を回転させる。処理液供給手段は、基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する。下部ケースは、下部回転板の下方に沿うとともにリング部材の周囲を覆う。排気ダクトは、下部ケースに連通する。そして、基板搭載部は、周端部材に対して上下動可能に設けられていることを特徴とする。」
と訂正する。

エ 〔訂正事項4〕 本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0011】の、
「【0011】 請求項4に記載の処理液塗布方法は、以下の工程を備えたことを特徴とする。
◎基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程。
◎基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程。
◎基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程。
◎基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させる工程。
本発明に係る処理液塗布装置及び方法では、基板の端部側下面と周端部材の上面との間に僅かな隙間が確保されているため、基板の裏面に処理液が付着しにくい。」
の記載を、
「【0011】 請求項4に記載の処理液塗布方法は、以下の工程を備えたことを特徴とする。
◎基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程。
◎基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程。
◎基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程。
◎基板搭載部の下方に平行に下部回転板が配置されており、下部回転板に周端部材と、周端部材の外周側に配置されたリング部材とが固定されており、下部回転板の端面に対向するリング部材の内周面には、液溜め空間が形成されており、基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に上部回転板が配置されており、上部回転板はリング部材上に着脱可能かつ係止可能であって、装着時に下部回転板と一体回転可能であり、前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースに排気ダクトが連通されており、基板搭載部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置し、かつ、前記上部回転板を前記リング部材上に係合して上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させ、基板からの余剰の処理液を液溜空間に溜める工程。
本発明に係る処理液塗布装置及び方法では、基板の端部側下面と周端部材の上面との間に僅かな隙間が確保されているため、基板の裏面に処理液が付着しにくい。」
と訂正する。

(2)本件訂正請求の訂正の目的の適否について
ア 上記〔訂正事項1〕の訂正は、本件特許明細書等の請求項1を限定することにより特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法第1条の規定による改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

イ 上記〔訂正事項2〕の訂正は、本件特許明細書等の請求項4を限定することにより特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

ウ 上記〔訂正事項3〕の訂正は、〔訂正事項1〕の訂正に伴い、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0008】の記載を、本件訂正請求の訂正後の請求項1に係る発明の構成に整合させるための訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第3号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

エ 上記〔訂正事項4〕の訂正は、〔訂正事項2〕の訂正に伴い、本件特許明細書等の発明の詳細な説明欄の段落【0011】の記載を、本件訂正請求の訂正後の請求項4に係る発明の構成に整合させるための訂正であるから、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第3号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

オ したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項4〕の訂正は、いずれも平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。

(3)新規事項の有無及び実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
ア 本件訂正請求により、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1及び請求項4を限定により特許請求の範囲を減縮する上記〔訂正事項1〕及び〔訂正事項2〕の訂正、並びに、上記〔訂正事項3〕及び〔訂正事項4〕の明りようでない記載を釈明する訂正は、いずれも本件特許明細書等、すなわち本件分割特許出願の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であると認める。
したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項4〕の訂正は、いずれも平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書の規定に適合する。

イ また、本件訂正請求の上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項4〕の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、本件訂正請求における上記〔訂正事項1〕ないし〔訂正事項4〕の訂正は、いずれも特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合する。

(4)本件訂正請求に対する独立特許要件の有無について
本件の特許無効審判の請求の趣旨に係る特許発明は、請求項1ないし請求項4に係る発明であり、また、特許無効審判の請求がされている請求項1及び請求項4に係る発明についての訂正が、上記「(2)本件訂正請求の訂正の目的の適否について」欄の「ア」及び「イ」に前述したとおり、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当しているところ、特許法第134条の2第5項において読み替えて準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第1項ただし書第1号又は第2号の場合は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」の規定に該当する、本件の特許無効審判の請求の趣旨から除外されている請求項が、訂正請求に係る特許請求の範囲に存在していないから、当審は、訂正請求の訂正後の請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かの、いわゆる独立特許要件の有無について、検討をする必要を認めない。

(5)むすび
当審が本件無効審判事件における本件訂正請求について審理をした結果は、以上のとおりであり、本件特許明細書等についての本件訂正請求による訂正は、特許請求の範囲の請求項1及び請求項4を限定することによる特許請求の範囲の減縮、及び請求項1及び請求項4の特許請求の範囲の減縮に伴う本件特許明細書等の中の明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるので、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号及び第3号に該当し、さらに、前記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてした訂正であるので、平成6年改正前特許法第134条ただし書に適合する。また、前記訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合する。
よって、本件訂正請求の訂正を認める。

2 審判事件弁駁書の要旨の変更についての判断
請求人が審判事件弁駁書において提出した新たな証拠方法としての甲第4号証〔特開平4-300673号公報〕を含む、請求人が主張する新たな無効理由は、請求の理由の要旨を変更するものではあるが、当審の審理を不当に遅延させるおそれはなく、また前記新たな無効理由の主張が、被請求人の訂正請求により補正の必要が生じたものであるので、請求人が主張する新たな無効理由は、許可できるものである。

3 当審の職権による無効理由通知
しかして、当審が本件無効審判事件を審理した結果、請求人が主張していない技術事項〔「第3 当審の審理」欄に後記する「4」を参照。〕について、本件分割特許出願は分割要件を満たしていないとした上で、前記分割要件の欠如を前提に、さらに、本件訂正請求後の本件発明1ないし本件発明4に関して職権により審理をした結果として、請求人が提出した甲第1号証ないし甲第4号証の各刊行物、並びに、特開平6-338447号公報、特開平11-285663号公報、特開平11-267574号公報の刊行物の証拠方法を以て、本件訂正請求後の本件発明1ないし本件発明4は、前記証拠方法に記載の各発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の進歩性要件の欠如(特許法第29条第2項違反)を内容とする無効理由通知、及び、本件分割特許出願が分割要件の欠如を惹起する要因である特許請求の範囲の中の技術事項について、本件訂正明細書における発明の明確性の要件、サポート要件及び実施可能要件の各要件の欠如(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)を内容とする無効理由通知〔「第3 当審の審理」欄に後記する「4」を参照。〕を、請求人及び被請求人の両当事者双方に対してファクシミリの送信により通知した。

4 当審の職権による無効理由通知の内容の要点
前記当審の職権による無効理由通知の内容の要点は、請求人及び被請求人の両当事者双方に対して平成19年8月14日に送信した下記に示すファクシミリにおける「第1 被請求人に対する事項」欄の「2.」ないし「4.」項の部分に示すとおりである。

『無効審判事件(2006-80279)に関し、当審が口頭審理において審理する予定の下記の事項について、当事者は、意見等をあらかじめ「口頭審理陳述要領書」にまとめて、口頭審理期日の少なくとも2週間前までに提出してください。

第1 被請求人に対する事項
1. 請求人が提出した弁駁書の副本を被請求人に送付しますので、その弁駁書における請求人の主張に対する被請求人の意見。
2. 請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)に関連して、当審が職権により、本件分割特許出願の分割要件の有無について審理する場合において、本件分割特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4及び訂正請求後の請求項1ないし請求項4に記載の「基板搭載部」の技術事項について、原出願(特願平5-215340号)の願書に最初に添付した明細書及び図面におけるその記載の根拠又はその明細書の記載からの自明性についての説明。
3. 本件分割特許出願の分割要件の有無について、上記2.に記載した「基板搭載部」の技術事項に関する当審の審理結果を踏まえて、本件分割特許出願が特許法第44条に規定する分割要件を満たしていないと当審が判断する場合において、本件第3470890号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項4に係る特許発明は、本件分割特許出願の現実の特許出願日前に頒布された特開平6-338447号公報、特開平11-285663号公報、特開平11-267574号公報及び甲第1号証、並びに、甲第2ないし4号証の各刊行物に記載の各発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるという、当審の職権による無効理由通知(特許法第29条第2項違反)に対する、被請求人の意見。
4. 請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由3(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)に関連して、当審が職権により、本件分割特許出願の記載要件の有無について審理する場合において、上記2.に記載した「基板搭載部」の技術事項について、本件分割特許出願は、訂正明細書の特許請求の範囲の各請求項に係る発明の明確性の要件、訂正明細書の発明の詳細な説明における記載のサポート要件及び実施可能要件の各要件を満たしていないという、当審の職権による無効理由通知(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)に対する、被請求人の意見。

第2 請求人に対する事項
1. 請求人が審判請求書及び弁駁書において主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項違反)に関して、本件第3470890号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項4に係る特許発明の各構成要素と、甲第1号証刊行物に記載の発明の各構成要素との個々の具体的な対応関係についての説明。
2. 請求人が審判請求書において主張する無効理由2(特許法第29条第2項違反)に関して、本件第3470890号特許の訂正請求後の請求項1ないし請求項4に係る特許発明の各構成要素と、甲第2号証及び甲第3号証刊行物に記載の各発明の引用すべき各構成要素との個々の具体的な対応関係についての説明。
3. 上記「第1 被請求人に対する事項」欄の3.において指摘した当審の職権による無効理由通知(特許法第29条第2項違反)に対する、請求人の意見。
4. 上記「第1 被請求人に対する事項」欄の4.において指摘した当審の職権による無効理由通知(特許法第36条第4項及び同条第6項第1号及び第2号違反)に対する、請求人の意見。』

第4 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討
1 本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明
上記のとおり、本件訂正請求の訂正が認められたので、本件特許の請求項1に係る発明(本件発明1)ないし請求項4に係る発明(本件発明4)は、訂正請求書に添付された本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 回転可能に設けられて、上面に基板が搭載される基板搭載部と、
前記基板搭載部の周囲に位置して前記基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が前記基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置された周端部材と、
前記基板搭載部の下方に平行に配置され、前記周端部材と固定されている下部回転板と、
前記下部回転板上に固定され、前記周端部材の外周側に配置されたリング部材と、
前記基板搭載部と前記周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に配置される上部回転板であって、前記リング部材上に着脱可能かつ係止可能に配置され、装着時に前記下部回転板と一体回転可能である上部回転板と、
前記基板搭載部及び前記周端部材を回転させる回転駆動源と、
前記基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースと、
前記下部ケースに連通する排気ダクトと、
を備え、
前記基板搭載部は前記周端部材に対して上下動可能に設けられており、
前記上部回転板と前記下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成し、
前記下部回転板の端面に対向する前記リング部材の内周面には、液溜め空間が形成されていることを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】 前記基板搭載部は基板を吸着保持するものであることを特徴する請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】 前記周端部材は基板の下方位置から基板端縁よりもさらに外側まで延在するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理液塗布装置。
【請求項4】 基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程と、
基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程と、
基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程と、
基板搭載部の下方に平行に下部回転板が配置されており、
下部回転板に周端部材と、周端部材の外周側に配置されたリング部材とが固定されており、
下部回転板の端面に対向するリング部材の内周面には、液溜め空間が形成されており、
基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に上部回転板が配置されており、
上部回転板はリング部材上に着脱可能かつ係止可能であって、装着時に下部回転板と一体回転可能であり、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースに排気ダクトが連通されており、
基板搭載部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置し、かつ、前記上部回転板を前記リング部材上に係合して上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させ、基板からの余剰の処理液を液溜空間に溜める工程と、
を備えたことを特徴とする処理液塗布方法。」

2 分割要件の有無についての検討
(1)本件発明1ないし本件発明4の技術事項についての分割の根拠についての検討
本件発明1ないし本件発明4は、上記「1 本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明」欄に前掲したとおりのものであるが、上記「第3 当審の審理」欄の「4 当審の職権による無効理由通知の内容の要点」に示した「第1 被請求人に対する事項」の「2.」に指摘してあるとおり、本件発明1ないし本件発明4には、「基板搭載部」の技術事項が記載されている。
しかして、特許法第44条には、
第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、願書に添附した明細書又は図面について補正をすることができる時又は期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十9条の2に規定する他の特許出願又は実用新案法第3条の2に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用並びに第三十条第四項、第四十1条第4項並びに前条第一項及び第二項の規定の適用については、この限りでない。』
と規定されている。
そこで、前記「基板搭載部」の技術事項を有する発明が本件分割特許出願のもとの出願である原出願(特願平5-215340号)に包含されていたか否かについて、換言すれば、前記「基板搭載部」の技術事項が、前記原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「原出願の当初明細書等」という。)に包含されていた発明の技術事項として記載されていたか否か、あるいは、原出願の当初明細書等における記載から自明であるか否かについて、次に検討する。

(2)原出願の当初明細書等における記載事項
ア 「基板搭載部」の技術事項についての検討
(ア)まず、原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平7-66108号公報〕の記載を精査すると、前記甲第1号証の明細書及び図面には、本件発明1ないし本件発明4の構成要件である前記「基板搭載部」の文言が記載されておらず、また、それを示唆する記載も前記甲第1号証の中に認めることができない。

(イ)そこで、被請求人が口頭審理陳述要領書において前記「基板搭載部」に相当する部材であると主張する「基板吸着部10」に関する技術事項の記載について精査すると、甲第1号証〔特開平7-66108号公報〕の中に、次のa?gの事項が記載されている。
a 「【0010】 基板保持部2は、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状であり、中央部に配置された基板吸着部10と、基板吸着部10の周囲に配置されたリング状の周端部11とから構成されている。基板吸着部10の上面には、同心円上に複数の吸着溝12が形成されている。また、放射状に複数の吸着溝13も形成されている。さらに、基板吸着部10の中心には、負圧経路20の先端が開口している。」
b 「【0011】 基板吸着部10の裏面中央には、図2及び図3に示すように、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定されている。回転継手14には、中心軸15の先端が固定されている。中心軸15の中心には、負圧経路20が形成されている。この負圧経路20は、回転継手14を介して基板吸着部10の上面に開口している。中心軸15の中間部外周にはスプライン溝(図示せず)が形成されており、これらのスプライン溝は、上下に間隔を隔てて配置された2つのボールスプライン軸受16,17に係合している。ボールスプライン軸受16,17は、筒状回転軸18の内周側に固定されている。また、筒状回転軸18は、上下に間隔を隔てて配置された軸受21,22により装置フレーム23に回転自在に支持されている。この結果、中心軸15は、筒状回転軸18と一体的に回転し、かつ筒状回転軸18に対して上下動自在である。」
c 「【0012】 筒状回転軸18は上部にフランジ部を有しており、このフランジ部には、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定されている。下部回転板24上には、周端部11と、周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されている。周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されている。この結果、基板吸着部10は、周端部11と一体回転し、かつ周端部11に対して上下動可能となっている。リング部材25の下部回転板24の端面に対向する内周面には、図4に示すように、液溜め空間26が形成されている。液溜め空間26は、僅かな隙間で下部回転板24の上面に連通しており、かつ下方に開口している。液溜め空間26には、処理液塗布時に基板Wから流出した余剰の処理液が貯溜され、貯溜された処理液は下方に排出される。」
d 「【0015】 回転継手部35は、L字状の昇降ブラケット40の先端(上端)に取り付けられている。昇降ブラケット40の基端には、ロッド固定型の昇降シリンダ41のシリンダ本体41aが取り付けられている。昇降シリンダ41のロッド41bの上下端は、装置フレーム23の下部に取り付けられたコ字状の支持フレーム27に固定されている。この昇降シリンダ41により、中心軸15が上下駆動される。この結果、中心軸15の上端に固定された基板吸着部10が昇降し、基板Wを図2に2点鎖線で示す搬入・搬出位置に配置することが可能となる。」
e 「【0025】 基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置する。そして図示しない搬送機構から基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする。この結果、基板Wが吸着保持される。そして昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させる。続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を基板Wの中心位置の上方に配置する。続いて、基板Wに対して処理液(たとえばフォトレジスト液)を所定量供給する。処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着する。これにより、上部回転板3はリング部材25上に係合され、下部回転板24と一体回転可能となる。続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させる。そして基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、基板W上に処理液を均一に塗布する。基板Wからの余剰の処理液は、リング部材25に形成された液溜め空間26に徐々に溜まり、液溜め空間26から液溜め部42に滴下されて廃液配管43から排出される。」
f 「【0027】 このフォトレジスト液塗布工程を何回か繰り返すと、周端部11の上面や上部回転板3の下面にはフォトレジスト液のミストが付着する。そこで、処理部を洗浄する。周端部11の上面を洗浄する際には、まず、上面洗浄部7を進出させる。そして、上面洗浄ノズル82を揺動させかつ周端部11に向かって洗浄液を供給しつつモータ32を回転させ、周端部11を洗浄する。この洗浄の際には、窒素ガス弁38を開き真空弁39を閉じる。この結果、負圧経路20には加圧窒素ガスが導入され、基板吸着部(負圧経路20)10は正圧となる。このため、上面洗浄ノズル82から洗浄液が供給されても負圧経路20に洗浄液が混入しない。そして、洗浄液の供給を停止した後に上面洗浄部7を退避させるとともにモータ32を停止して上部ケース5を装着する。続いて、モータ32を高速回転させて液切り乾燥を行う。このときにも窒素ガス弁38を開き、負圧経路20を正圧にする。」
g 甲第1号証の処理液塗布装置の一実施例を示す【図1】ないし【図4】に、「上面に同心円上に複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10が中央部に配置され、該基板吸着部10の周囲にリング状の周端部11が配置されて構成される、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2において、前記基板吸着部10の裏面中央に、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定され、該回転継手14に、中心に負圧経路20が形成されていて、昇降シリンダ41により上下駆動される中心軸15の先端が固定されていて、基板吸着部10の上面に前記負圧経路20が回転継手14を介して開口しており、前記中心軸15は、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定されているフランジ部を有する筒状回転軸18と一体的に回転し、かつ筒状回転軸18に対して上下動自在であり、前記下部回転板24上に、周端部11と該周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されていて、前記周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されていて、基板吸着部10は、周端部11と一体回転しかつ周端部11に対して上下動可能となっており、モータ32の回転駆動により、下部回転板24、基板吸着部10及びリング部材25上に係合される上部回転板3が一体回転するように構成された処理液塗布装置」が図示されている。

(ウ)しかして、かかる甲第1号証の上記a?gの技術事項から、甲第1号証には、「上面に同心円上に複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10が中央部に配置され、該基板吸着部10の周囲にリング状の周端部11が配置されて構成される、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2において、前記基板吸着部10の裏面中央に、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定され、該回転継手14に、中心に負圧経路20が形成されていて、昇降シリンダ41により上下駆動される中心軸15の先端が固定されていて、基板吸着部10の上面に前記負圧経路20が回転継手14を介して開口しており、前記中心軸15は、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定されているフランジ部を有する筒状回転軸18と一体的に回転し、かつ筒状回転軸18に対して上下動自在であり、前記下部回転板24上に、周端部11と該周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されていて、前記周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されていて、基板吸着部10は、周端部11と一体回転しかつ周端部11に対して上下動可能となっており、モータ32の回転駆動により、下部回転板24、基板吸着部10及びリング部材25上に係合される上部回転板3が一体回転するように構成され処理液塗布装置」の実施例の記載を認めることができる。

(エ)しかしながら、(カ)に後述する理由により、甲第1号証の記載からは、前記「基板吸着部10」が「基板搭載部」である、とはいえない。

(オ)したがって、被請求人の主張するところの「基板吸着部10」が「基板搭載部」であることの根拠となる記載を、甲第1号証の中に認めることができない。また、「基板搭載部」の技術事項が、甲第1号証の記載から自明であるということもできない。

(カ)ここで、被請求人の主張について検討する。
a 被請求人は、口頭審理陳述要領書の5頁14?21行において、「上記各記載には、『基板吸着部10は、その上面に基板Wを吸着するための吸着溝12、13が形成されている』事項、および、『基板吸着部10は、その上面で基板を吸着保持する』事項が明示されている。また、図1、図2、図4には、『基板吸着部10の上面に基板Wが当接している』事項が明示されている。以上より、技術事項『基板搭載部』は、甲第1号証に記載される基板吸着部10に相当するものであって、原出願(特願平5-151567号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に明示的に記載されている。」と主張し、「基板搭載部」の技術事項は、甲第1号証に記載されていた事項から自明である旨を主張する。

b しかして、前記甲第1号証には、「上面に同心円上に複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10が中央部に配置され、該基板吸着部10の周囲にリング状の周端部11が配置されて構成される、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2において、前記基板吸着部10の裏面中央に、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定され、該回転継手14に、中心に負圧経路20が形成されていて、昇降シリンダ41により上下駆動される中心軸15の先端が固定されていて、基板吸着部10の上面に前記負圧経路20が回転継手14を介して開口しており、前記中心軸15は、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定されているフランジ部を有する筒状回転軸18と一体的に回転し、かつ筒状回転軸18に対して上下動自在であり、前記下部回転板24上に、周端部11と該周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されていて、前記周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されていて、基板吸着部10は、周端部11と一体回転しかつ周端部11に対して上下動可能となっており、モータ32の回転駆動により、下部回転板24、基板吸着部10及びリング部材25上に係合される上部回転板3が一体回転するように構成され処理液塗布装置」が記載されていることは、上記「(2)原出願の当初明細書等における記載事項」欄の「ア」の「(ウ)」に前述したとおりであり、前記甲第1号証の図1ないし図4に図示されている前記「基板吸着部10」を、被請求人は、「基板搭載部」であると主張する。

c しかしながら、前記「基板搭載部」という文言は、「基板吸着部10」という具体的構成を一般化した上位概念であると考えられ、前記「基板吸着部10」の具体的構成だけではなく、他の構成の「基板搭載部」としての概念をも包含する拡張された一般的な概念であると認められるところ、前記「基板搭載部」の文言が、必ずしも前記「基板吸着部10」のみを一義的に意味するものでないことは明らかである。

d 例えば、被請求人の特許出願に係る特願平3-91264号の公開特許公報である特開平4-300673号公報〔甲第4号証参照〕の段落【0010】に「【実施例】以下、図面を参照し本発明に係る回転式塗布装置の一実施例を説明する。図1は本実施例に係る回転式塗布装置の全体の概略構成を示す縦断面図である。この回転式塗布装置は、角形の基板1を搭載して縦軸心P周りに水平回転する回転台2と、その上方において回転台2と平行に設置されて回転台2と一体に回転する上部回転板3と、この上部回転板3を支持する上部支持板4と、これら回転部材の下方及び周辺部を外囲するように固定配置された廃液回収ケース5と、縦向き回転軸としての出力軸6を立設したモータ7とを備えている。」と記載されてあり、また、段落【0011】に「回転台2は、基板1の外形形状より充分大きい外形円板として構成されていて、その上面に立設した多数の基板支持ピン8群上に基板1が水平に搭載支持されるようになっている。また、図2に示すように、回転台2上には基板1の四隅に係合する一対づつの係合ピン9が4組設けられていて、これらピン9によって基板1が回転台2と一体に水平回転される。」と記載されてある。
そして、前記甲第4号証の添付図面の図1、図2及び図3の記載から明らかなように、前記「多数の基板支持ピン8群」は、縦軸心P周りに水平回転する回転台2の上面に立設されていて、角形の基板1が、多数の基板支持ピン8群上に水平に搭載支持されるものとして記載されている。
そうすると、特開平4-300673号公報〔甲第4号証参照〕に開示されている場合の「基板搭載部」は、「縦軸心P周りに水平回転する回転台2の上面に立設されている多数の基板支持ピン8群」を意味することとなる。
したがって、「基板搭載部」の文言が、被請求人が主張するような「基板吸着部10」ばかりではなく、例えば「縦軸心P周りに水平回転する回転台2の上面に立設されている多数の基板支持ピン8群」をも指し示し得るものであることが明らかであり、さらに「基板搭載部」の文言を広く敷衍すれば、「基板を搭載しさえするもの」であれば何でも該当し得ることが、前記甲第4号証の記載の例から明らかである。

e このように、被請求人が主張するように、前記「基板吸着部10」が「基板搭載部」に該当するということはいえるが、逆に、「基板搭載部」の文言が必ずしも前記「基板吸着部10」のみを意味することにはならないので、前記「基板吸着部10」を離れた本件発明1ないし本件発明4の「基板搭載部」の技術事項は、前記「基板吸着部10」を超える意味内容の構成であることが明らかである。

f さらに言えば、請求項1に記載されている本件発明1の「基板搭載部」が、請求項2に記載されている本件発明2では、「前記基板搭載部は基板を吸着保持するものである」と限定されていることからみても、本件発明1の「基板搭載部」が、本件発明2の「基板を吸着保持する基板搭載部」とは、別異のものであることが明らかである。
そして、引用発明1の「基板吸着部10」が、本件発明2の「基板を吸着保持する基板搭載部」に該当することは明らかである。
しかしながら、本件発明1の「基板搭載部」が、引用発明1の「基板吸着部10」に必ずしも該当するものではないことは、本件発明1の「基板搭載部」が、本件発明2の「基板を吸着保持する基板搭載部」の上位概念であることから、明らかなことである。
このように、被請求人は、その本件訂正明細書の作成に際して、すでに、本件発明1の「基板搭載部」が、本件発明2の「基板を吸着保持する基板搭載部」とは、別異のものとして認識していたこと、及び、本件発明1の「基板搭載部」が、本件発明2の「基板を吸着保持する基板搭載部」の上位概念であることを認識していたことが、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載から、明らかである。

g また、本件発明1ないし本件発明4の構成要件である「基板搭載部」の中の「搭載」の文言は、『広辞苑〔第五版〕、株式会社岩波書店発行』によれば、「船・車・飛行機などに資材を積みこむこと。」という意味であり、その使用例文として、「核兵器を搭載する」が例示されていることからみて、「搭載」の文言は、何らかの搬送手段に資材を積み込む時に使用される用語であることが明らかである。
そこで、かかる「搭載」の意味に照らして「基板搭載部」を解釈すれば、前記「基板搭載部」の文言は、「基板を積み込む搬送手段の部分」の意味となる。

h しかしながら、甲第1号証には、「基板を積み込む搬送手段の部分」の意味内容の用語として、前記「基板吸着部10」の文言が記載されあるいは使用されているということができない。すなわち、甲第1号証には、「基板Wを積み込む何らかの搬送手段の部分」という技術事項については、全く記載がなく、それを示唆する記載も前記甲第1号証の中に認めることができない。

i 一方、甲第1号証に記載されている「基板吸着部10」については、上記「(2)原出願の当初明細書等における記載事項」欄の「ア」の「(ウ)」に前述したように、「上面に同心円上に複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10」が記載されているのであり、前記「基板吸着部10」は、負圧により基板Wを吸着させるために設けられている、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2の一部分であって、基板Wを搬送するためのものでないことは明らかである。

j 以上のとおりであり、甲第1号証に記載されている「基板吸着部10」は、被請求人が主張する「基板搭載部」ということができない。
そして、甲第1号証の明細書又は図面の記載を精査しても、前記「基板吸着部10」が「基板搭載部」に相当することが、甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。
したがって、前記「基板搭載部」は、原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証に記載されている事項を超える意味内容の記載であるといえる。

k そうすると、「基板搭載部」の技術事項は、甲第1号証に記載されてなく、また、甲第1号証に記載されていた事項から自明でないことが明らかである。
したがって、「基板搭載部」の技術事項は、甲第1号証に記載されていた事項から自明である旨の被請求人の主張は、根拠がなく到底採用することができないものである。

(キ)そうしてみると、本件分割特許出願のもとの出願である原出願の当初明細書等である上記甲第1号証には、本件発明1ないし本件発明4における上記「基板搭載部」の技術事項が記載されていたということができない。
そして、本件発明1ないし本件発明4の前記「基板搭載部」の技術事項が、本件分割特許出願のもとの出願である原出願の当初明細書等である前記甲第1号証に記載されていた事項から自明であるということもできない。
したがって、本件分割特許出願のもとの出願である原出願には、「基板搭載部」の技術事項をその構成要件とする本件発明1ないし本件発明4が包含されていたということができない。

3 分割要件の有無についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件分割特許出願は、特許法第44条に規定されているところの、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願としたものということができない。
したがって、本件分割特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなすことができないから、本件分割特許出願の出願日は、実際に特許出願された平成12年8月31日である。
そして、上述した理由により、本件分割特許出願を、以下においては、「本件特許出願」という。

第5 当審の職権による無効理由1(特許法第29条第2項違反)についての検討
1 甲号各証の記載事項
(1)甲第1号証〔特開平7-66108号公報〕の記載事項
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、「処理液塗布装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、塗布装置、特に、基板の主面に処理液を塗布する処理液塗布装置に関する。
【0002】【従来の技術】 半導体製造工程や液晶表示装置の製造工程において、フォトプロセスでパターンを形成する際には、基板にフォトレジスト液を塗布する工程や基板に現像液を塗布する工程等、処理液の塗布工程が不可欠である。この種の処理液塗布工程に用いられる塗布装置として、特開平4-300673号公報に開示されたものが知られている。この処理液塗布装置は、基板を水平状態で機械的に保持して回転させる基板保持部と、この基板保持部の上方に平行に配置され基板保持部と一体に回転する上部回転板と、上部回転板の下面に向けて洗浄液を吹き出す洗浄ノズルとを備えている。
【0003】 この処理液塗布装置では、処理液の塗布が適宜回数行われる毎に洗浄処理が実行される。この洗浄処理では、基板を保持していない状態で上部回転板を基板保持部とともに回転駆動し、この状態で洗浄ノズルに洗浄液を供給して洗浄ノズルから上部回転板の下面に向けて洗浄液を吹きつける。そして、洗浄液を上部回転板下面に沿って延伸流動させる。これにより、先の塗布処理中に上部回転板の下面に付着した処理液を洗い流して上部回転板の下面の汚染を防止する。
【0004】【発明が解決しようとする課題】 従来の処理液塗布装置では、基板を機械的に保持している。しかし最近では基板の大型化や薄型化が進んでおり、この場合には基板を損傷するおそれがある。そこで、大型の基板を真空吸着により保持する構成とすることが考えられる。真空吸着を行う場合には、基板保持部の上面に吸着面を形成し、吸着面を真空配管に接続して負圧状態を作りだす必要がある。
【0005】 ところが、このような真空吸着を採用すると、上部回転板の下面の洗浄時に洗浄液が真空配管に混入する。洗浄液が真空配管に混入すると、基板保持の際に吸着面が負圧状態にならず、吸着面で基板を保持できなくなる。従って、真空吸着によって基板を保持する構成では、上部回転板の洗浄が困難である。本発明の目的は、真空吸着により基板を保持する構成であっても基板処理部内を洗浄できるようにすることにある。
【0006】【課題を解決するための手段】 本発明に係る処理液塗布装置は、基板の主面に処理液を塗布する装置である。この装置は、基板処理部と処理液塗布手段と洗浄手段と圧力切換手段とを備えている。基板処理部は、基板を吸着保持する基板保持部を有している。処理液塗布手段は、基板処理部内で基板保持部に保持された基板の主面に処理液を塗布する。洗浄手段は、基板処理部内を洗浄する。圧力切換手段は、基板保持部を負圧及び正圧に択一的に切り換える。
【0007】【作用】 本発明に係る処理液塗布装置では、まず、圧力切換手段が基板保持部を負圧に切り換える。この状態で、基板保持部に基板が吸着保持される。そして、処理液塗布手段が、基板保持部に保持された基板の主面に処理液を塗布する。この処理液塗布手段による処理液の塗布を複数回繰り返した後、基板が保持されていない状態で、洗浄手段が基板処理部内を洗浄する。この洗浄の際には、圧力切換手段が基板保持部を正圧に切り換える。
【0008】 ここでは、基板処理部内の洗浄の際には基板保持部が正圧に切り換えられるので、たとえば基板吸着用の負圧経路に洗浄液が混入しにくい。このため、基板を吸着保持する構成であっても基板処理部内を洗浄できる。
【0009】【実施例】 図1において、本発明の一実施例による処理液塗布装置1は、角型基板(以下基板と記す)Wにフォトレジスト液(処理液の一例)を塗布するものである。処理液塗布装置1は、角型基板Wを保持して回転させる基板保持部2と、基板保持部2の上方に基板保持部2と平行に配置された上部回転板3と、基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された下部ケース4及び上部ケース5と、基板保持部2に保持された基板Wにフォトレジスト液を供給するための処理液供給部6と、基板保持部2の上面を洗浄するための上面洗浄部7と、上部回転板3の下面を洗浄するための下面洗浄部8とを主に有している。
【0010】 基板保持部2は、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状であり、中央部に配置された基板吸着部10と、基板吸着部10の周囲に配置されたリング状の周端部11とから構成されている。基板吸着部10の上面には、同心円上に複数の吸着溝12が形成されている。また、放射状に複数の吸着溝13も形成されている。さらに、基板吸着部10の中心には、負圧経路20の先端が開口している。
【0011】 基板吸着部10の裏面中央には、図2及び図3に示すように、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定されている。回転継手14には、中心軸15の先端が固定されている。中心軸15の中心には、負圧経路20が形成されている。この負圧経路20は、回転継手14を介して基板吸着部10の上面に開口している。中心軸15の中間部外周にはスプライン溝(図示せず)が形成されており、これらのスプライン溝は、上下に間隔を隔てて配置された2つのボールスプライン軸受16,17に係合している。ボールスプライン軸受16,17は、筒状回転軸18の内周側に固定されている。また、筒状回転軸18は、上下に間隔を隔てて配置された軸受21,22により装置フレーム23に回転自在に支持されている。この結果、中心軸15は、筒状回転軸18と一体的に回転し、かつ筒状回転軸18に対して上下動自在である。
【0012】 筒状回転軸18は上部にフランジ部を有しており、このフランジ部には、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定されている。下部回転板24上には、周端部11と、周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されている。周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されている。この結果、基板吸着部10は、周端部11と一体回転し、かつ周端部11に対して上下動可能となっている。リング部材25の下部回転板24の端面に対向する内周面には、図4に示すように、液溜め空間26が形成されている。液溜め空間26は、僅かな隙間で下部回転板24の上面に連通しており、かつ下方に開口している。液溜め空間26には、処理液塗布時に基板Wから流出した余剰の処理液が貯溜され、貯溜された処理液は下方に排出される。
【0013】 筒状回転軸18の下端は、図2に示すように、連結部材31を介してプーリ30に連結されている。プーリ30は、軸受により装置フレーム23に回転自在に支持されている。プーリ30と、駆動モータ32の出力軸に取り付けられたプーリ33とにはベルト34が掛け渡されている。この結果、駆動モータ32の駆動力は、プーリ33、ベルト34、プーリ30、連結部材31を介して筒状回転軸18に伝達される。そして、ポールスプライン軸受16,17を介して中心軸15に伝達される。
【0014】 中心軸15の下端には、図2に示すように、バキュームシールや磁性シール等の回転継手部35が取り付けられている。回転継手部35には、窒素ガス配管36と真空配管37とが接続されている。窒素ガス配管36には窒素ガスの供給をオンオフする窒素ガス弁38が、真空配管37には、真空配管37を開閉する真空弁39がそれぞれ配置されている。
【0015】 回転継手部35は、L字状の昇降ブラケット40の先端(上端)に取り付けられている。昇降ブラケット40の基端には、ロッド固定型の昇降シリンダ41のシリンダ本体41aが取り付けられている。昇降シリンダ41のロッド41bの上下端は、装置フレーム23の下部に取り付けられたコ字状の支持フレーム27に固定されている。この昇降シリンダ41により、中心軸15が上下駆動される。この結果、中心軸15の上端に固定された基板吸着部10が昇降し、基板Wを図2に2点鎖線で示す搬入・搬出位置に配置することが可能となる。
【0016】 上部回転板3は、図2に示すように、リング部材25上に着脱可能かつ係止可能に配置され得るものであり、装着時に下部回転板24と一体回転可能である。この上部回転板3と下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成することより、回転時における空気の流れが少なくなり、処理液の飛散を防止できる。上部回転板3の中心部には、図5に示すように、開口60が形成されている。
【0017】 下部ケース4は、図4に示すように、下部回転板24の下方に沿って配置され、その両端部に下方に絞り込まれた液溜め部42を有する底部材4aと、底部材4aの周縁部に取り付けられ、リング部材25の周囲を覆う側部材4bとから構成されている。液溜め部42には、図2に示すように、溜められた処理液を排出するための廃液配管43が接続されている。また、底部材4aには、リング状の排気ダクト44が連通している。排気ダクト44により下部ケース4と上部ケース5とで囲まれる空間内の空気が排気される。また、底部材4aの外周部には、液溜め空間26及び下部回転板24の下面を洗浄するための複数の洗浄ノズル45が配置されている。
【0018】 上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置される。上部ケース5の中心部には、図5及び図6に示すように、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されている。両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されている。上方側支持プレート61a上面には、エアシリンダ62とエアロータリーアクチュエータ63とが、下面にはエアシリンダ71(図6)がそれぞれ取り付けられている。エアシリンダ62のシリンダロッド62aの先端には、ブロック64が取り付けられているとともに、ブロック64に昇降及び回転自在に有底筒状の蓋65が吊り下げ保持されている。蓋65は、エアシリンダ62の進退動作により上部回転板3の中心に形成された開口60を開閉可能である。
【0019】 ブロック64の下面には、第1の磁石66aが固定され、また、蓋65の底面には、第1の磁石66aと同極の第2の磁石66bが固定されている。ここでは、蓋65をエアシリンダ62により閉じ位置に移動させた状態で、磁石66a,66bの反発作用によりブロック64を蓋65と非接触状態で閉じ位置に維持できるようになっている。この結果、開口60を閉じながら蓋65のみを上部回転板3と一体回転できるようになっている。
【0020】 エアロータリーアクチュエータ63は垂直軸回りに90°の範囲で回転可能なものであり、エアシリンダ62の側方に配置されている。このアクチュエータ63のロッドには、スプライン軸67が連結されている。スプライン軸67には、昇降自在かつ回転不能にスプライン筒68が取り付けられている。スプライン筒68の外周には、回転のみ可能に回転筒69が取り付けられている。スプライン筒68の下端には、下面洗浄部8を構成する洗浄ノズル70が一体的に取り付けられている。洗浄ノズル70は、洗浄位置にあるとき、上部回転板3の下面を洗浄し得る位置に洗浄液を噴出する。回転筒69には、エアシリンダ71のシリンダロッド71aが連結されている。エアシリンダ71は、ロータリーアクチュエータ63の奥側(図6上方)に配置されている。
【0021】 ここでは、洗浄を行わないときには蓋65は閉じ位置に移動されており、洗浄ノズル70は開口60の上方よりも外れた非洗浄位置に配置される。また、洗浄を行う場合は、蓋65は開き位置に上昇させられる。そして、ロータリーアクチュエータ63によりスプライン筒68を回転して洗浄ノズル70を開口60の上方に位置させた後、エアシリンダ71を進出させて回転筒69及びスプライン筒68を介して洗浄ノズル70を下降させる。この状態では、洗浄ノズル70の吹き出し口から洗浄液を噴出させれば、上部回転板3の下面を洗浄可能である。
【0022】 固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられている。また、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられている。環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられている。この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、係合突起72が筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっている。
【0023】 処理液供給部6は、図1に示すように、旋回及び昇降するアーム80を有している。アーム80の先端には、処理液供給ノズル81が下向きに配置されている。アーム80は、上部ケース5が取り外された処理液供給時には、処理液供給ノズル81が基板Wの中心上に対向配置される供給位置に配置され、それ以外のときは、実線で示す退避位置に配置される。
【0024】 上面洗浄部7は、揺動及び進退する二股に分かれた上面洗浄ノズル82を有している。上面洗浄部81は、上部ケース5が取り外された洗浄液供給時において、基板保持部2の周端部11上に進出して揺動する。それ以外のときは下部ケース4外方の退避位置に配置される。
次に、上述の実施例の動作について説明する。
【0025】 基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置する。そして図示しない搬送機構から基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする。この結果、基板Wが吸着保持される。そして昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させる。続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を基板Wの中心位置の上方に配置する。続いて、基板Wに対して処理液(たとえばフォトレジスト液)を所定量供給する。処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着する。これにより、上部回転板3はリング部材25上に係合され、下部回転板24と一体回転可能となる。続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させる。そして基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、基板W上に処理液を均一に塗布する。基板Wからの余剰の処理液は、リング部材25に形成された液溜め空間26に徐々に溜まり、液溜め空間26から液溜め部42に滴下されて廃液配管43から排出される。
【0026】 フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させる。すると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱される。そして昇降シリンダ41により基板Wを上昇させ、図示しない搬送機構により次の工程に基板Wを搬送する。
【0027】 このフォトレジスト液塗布工程を何回か繰り返すと、周端部11の上面や上部回転板3の下面にはフォトレジスト液のミストが付着する。そこで、処理部を洗浄する。周端部11の上面を洗浄する際には、まず、上面洗浄部7を進出させる。そして、上面洗浄ノズル82を揺動させかつ周端部11に向かって洗浄液を供給しつつモータ32を回転させ、周端部11を洗浄する。この洗浄の際には、窒素ガス弁38を開き真空弁39を閉じる。この結果、負圧経路20には加圧窒素ガスが導入され、基板吸着部(負圧経路20)10は正圧となる。このため、上面洗浄ノズル82から洗浄液が供給されても負圧経路20に洗浄液が混入しない。そして、洗浄液の供給を停止した後に上面洗浄部7を退避させるとともにモータ32を停止して上部ケース5を装着する。続いて、モータ32を高速回転させて液切り乾燥を行う。このときにも窒素ガス弁38を開き、負圧経路20を正圧にする。
【0028】 一方、上部回転板3の下面を洗浄する際には、上部ケース5を下部ケース4に装着する。そして上部ケース5を装着した状態で、エアシリンダ62を退入させ、蓋65を開口60から離脱させる。そして、エアロータリーアクチュエータ63によりノズル70を90°回転させ、さらにエアシリンダ71によりノズル70を下降させる。この結果、図5に実線で示す洗浄位置にノズル70が配置される。そしてモータ32により下部回転板24と共に上部回転板3を回転させ、洗浄液を上部回転板3の下面に吹き付けて洗浄する。このときにも同様に、窒素ガス弁38を開いて真空弁39を閉じる。この結果、負圧経路20には加圧された窒素ガスが導入され、洗浄ノズル70から洗浄液を噴出しても負圧経路20に洗浄水が混入しない。
【0029】 続いて、モータ32を停止後にエアシリンダ71によりノズル70を上昇させ、さらにエアロータリーアクチュエータ63により90°回転させてノズル70を非洗浄位置(図6に2点鎖線で示す位置)に配置する。そして、エアシリンダ62を進出させ、蓋65を開口60に装着して開口60を閉止する。最後に、モータ32を高速回転させて液切り乾燥を行う。このときにも窒素ガス弁38を開き、負圧経路20を正圧にする。
【0030】〔他の実施例〕
(a) フォトレジスト液を塗布する処理液塗布装置に代えて、現像液を塗布する処理液塗布装置で本発明を実施してもよい。
(b) 窒素ガスを供給する構成に代えて、清浄な空気を負圧経路20に供給する構成でもよい。
【0031】【発明の効果】 本発明に係る処理液塗布装置では、基板吸着時には、圧力切換手段により基板保持部を負圧に切り換え、洗浄時には、基板保持部を正圧に切り換えることにより、たとえば負圧経路に洗浄液が混入しにくい。このため、基板を吸着保持する構成であっても、基板処理部内を洗浄できる。」

そして甲第1号証に添付された図面には、「水平回転可能に角型基板Wを保持する基板保持部2が設けられ、前記基板保持部2の上方に、基板保持部2と平行に上部回転板3が配置されるとともに、前記基板保持部2に電動モータ32が連結されていて、前記上部回転板3が基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられ、前記基板保持部2と上部回転板3を囲むように下部ケース4が設けられ、さらに前記下部ケース4の開口を覆うように設けられる上部ケース5が、前記下部ケース4の上部に着脱可能に取り付けられていて、前記上部ケース5の中心部に配置された一対の固定支持部材61の環状の下方側支持プレート61b上面に設けられた固定支持部材61側の係合突起72を、上部回転板3に取付部材73を介して取り付けられる環状プレート74に設けられた上部回転板3側の筒体75に係合することにより、固定支持部材61の下方側支持プレート61bで前記上部回転板3を吊り下げ支持することができるように構成された処理液塗布装置」が図示されている。

そうしてみると、上記甲第1号証の摘記事項及び添付図面に図示された技術事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、これを、「引用発明1」という。)の記載が認められる。
「角型基板Wを水平回転可能に吸着保持して回転させる基板吸着部10が中央部に配置されている基板保持部2と、基板保持部2の上方に基板保持部2と平行に配置された上部回転板3と、基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された上部が開口する下部ケース4と、下部ケース4の開口を覆うように着脱可能に取り付けられる上部ケース5と、下部ケース4に連通する排気ダクト44と、基板保持部2に保持された角型基板Wにフォトレジスト液を供給するための処理液供給部6と、基板保持部2の上面を洗浄するための上面洗浄部7と、上部回転板3の下面を洗浄するための下面洗浄部8とを備え、基板吸着部10が周端部11に対して上下動可能に設けられ、下部回転板24の端面に対向するリング部材25の内周面に液溜め空間26が形成されている角型基板Wにフォトレジスト液を塗布する処理液塗布装置1において、
前記基板保持部2は、角型基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状であって、上面に同心円上の複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10が中央部に配置されるとともに、該基板吸着部10の周囲にリング状の周端部11が配置されて構成されており、
前記基板保持部2の前記基板吸着部10の裏面中央にフランジ部を上端に有する回転継手14が固定され、回転継手14に中心に負圧経路20が形成されていて、昇降シリンダ41により上下駆動される中心軸15の先端が固定されていて、基板吸着部10の上面に前記負圧経路20が回転継手14を介して開口しており、前記基板保持部2の中央部に配置される基板吸着部10の上面に形成されている同心円上の複数の吸着溝12と放射状の複数の吸着溝13と前記基板吸着部10の中心に先端が開口している負圧経路20とにより醸成される負圧によって、角型基板Wが基板吸着部10の上面に吸着されるようになっており、
筒状回転軸18の上部のフランジ部に、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定され、前記下部回転板24上に、周端部11と、周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されていて、前記周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されていて、前記基板吸着部10は、周端部11と一体回転し、かつ周端部11に対して上下動可能となっており、
昇降シリンダ41により、中心軸15が上下駆動される結果、中心軸15の上端に固定された基板吸着部10が昇降し、角型基板Wを搬入・搬出位置に配置することが可能となり、
前記上部回転板3は、基板保持部2の上方に前記基板保持部2と平行に着脱可能かつ係止可能に配置され、電動モータ32により基板保持部2に一体的に回転可能に取り付けられていて、下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成するものとされ、
前記上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置され、前記上部ケース5の中心部に、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されていて、両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されているとともに、
前記固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっていて、
基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置し、そして搬送機構から角型基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする結果、角型基板Wが吸着保持されて、昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させ、続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を角型基板Wの中心位置の上方に配置し、続いて、角型基板Wに対してフォトレジスト液を所定量供給し、処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり、続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させて、角型基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、角型基板W上に処理液を均一に塗布し、フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱され、そして昇降シリンダ41により角型基板Wを上昇させ、搬送機構により次の工程に角型基板Wを搬送するようにした処理液塗布装置」

(2)甲第4号証〔特開平4-300673号公報〕の記載事項
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、「回転式塗布装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、液晶表示パネル用のガラス基板、半導体ウエハ、半導体製造装置用のマスク基板などの基板の表面にフォトレジスト液などの塗布液を薄膜状に塗布する際に用いる回転式塗布装置に関する。」
「【0010】【実施例】 以下、図面を参照し本発明に係る回転式塗布装置の一実施例を説明する。図1は本実施例に係る回転式塗布装置の全体の概略構成を示す縦断面図である。この回転式塗布装置は、角形の基板1を搭載して縦軸心P周りに水平回転する回転台2と、その上方において回転台2と平行に設置されて回転台2と一体に回転する上部回転板3と、この上部回転板3を支持する上部支持板4と、これら回転部材の下方及び周辺部を外囲するように固定配置された廃液回収ケース5と、縦向き回転軸としての出力軸6を立設したモータ7とを備えている。
【0011】 回転台2は、基板1の外形形状より充分大きい外形円板として構成されていて、その上面に立設した多数の基板支持ピン8群上に基板1が水平に搭載支持されるようになっている。また、図2に示すように、回転台2上には基板1の四隅に係合する一対づつの係合ピン9が4組設けられていて、これらピン9によって基板1が回転台2と一体に水平回転される。
【0012】 また、図3に示すように、回転台2の外周上面には、回転台2と同外径のスペーサリング10およびリングプレート11が同心円線上の場所に複数箇所で連結されるとともに、このリングプレート11に前記上部支持板4がノブボルト12を介して着脱自在に装着され、上部支持板4を取り外すことで、リングプレート11の中央開口から基板1を出し入れすることができるようになっている。
【0013】 前記スペーサリング10は、断面形状が台形状に構成されたものであり、連結ボルト13に外嵌した上下の座金14の厚さに相当する廃液流出用の間隔15が上下に形成されている。前記上部回転板3は基板1の外形形状より大径の円板に構成されて、前記上部支持板4の下面にカラー16を介してボルト連結されている。前記廃液回収ケース5の底部は絞り込まれ、その下端に廃液排出口17が形成されるとともに、周方向の複数箇所には塗布液から蒸発した溶剤ガスや塗布液ミストを排出する排気口18が形成されている。
【0014】 この回転式塗布装置は基本的には以上のように構成されたものであり、塗布処理に際しては、先ず上部支持板4を取り外して基板1を回転台2の基板支持ピン8群上に所定の姿勢で搭載セットする。
【0015】 次に、図示しない塗布液供給ノズルを基板1の中央上方に移動させ、所定量の塗布液を滴下供給する。その後、上部支持板4をリングプレート11上に装着固定した上でモータ7を起動して回転台2、上部支持板4、上部回転板3および基板1を一体に水平回転させる。この回転によって基板1上の塗布液は遠心力によって外方に拡散流動して基板1上面に薄く塗布される。この場合、回転台2と上部回転板3との間に形成された偏平な塗布処理空間Sの空気層も一体に回転し、基板1上に気流が発生しない状態で塗布液の拡散流動が行われる。
【0016】基板1上を流動して外周に到達した余剰塗布液は基板1の周縁から流出し、塗布処理空間Sの外周全域から飛散してゆく。そして、飛散した塗布液はスペーサリング10の上下に形成されている間隙15を通って廃液回収ケース5内に流出して回収される。」

2 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)ここで、本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「角型基板W」、「フォトレジスト液」、「液溜め空間26」及び「処理液塗布装置1」のそれぞれが、本件発明1の「基板」、「処理液」、「液溜め空間」及び「処理液塗布装置」のそれぞれに相当することは、明らかである。

(イ)そして、引用発明1の「リング部材25」、「下部ケース4」及び「排気ダクト44」のそれぞれが、本件発明1の「前記下部回転板上に固定され、前記周端部材の外周側に配置されたリング部材」、「前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケース」及び「前記下部ケースに連通する排気ダクト」のそれぞれに相当する。

(ウ)一方、本件発明1では、基板が基板搭載部の上面に搭載されるのに対して、引用発明1では、上面に同心円上に複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10が中央部に配置され、該基板吸着部10の周囲にリング状の周端部11が配置されて構成される、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2を備える処理液塗布装置において、前記基板吸着部10の裏面中央に、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定され、該回転継手14に中心に負圧経路20が形成されていて、昇降シリンダ41により上下駆動される中心軸15の先端が固定されていて、基板吸着部10の上面に前記負圧経路20が回転継手14を介して開口しており、前記基板保持部2の中央部に配置される基板吸着部10の上面に形成されている同心円上の複数の吸着溝12と、放射状の複数の吸着溝13と、前記基板吸着部10の中心に先端が開口している負圧経路20とにより醸成される負圧によって、角型基板Wが基板吸着部10の上面に吸着されるようになっている点において、両者は、基板を配置する構成が相違するが、いずれにしても、本件発明1と引用発明1との両者は、少なくとも「上面に基板が配置される基板配置部」を備える点において共通しているから、引用発明1の「上面に基板が配置される基板配置部としての基板吸着部10」が、本件発明1の「上面に基板が配置される基板配置部としての基板搭載部」に対応しているといえる。

(エ)そうすると、引用発明1の「基板吸着部10」が本件発明1の「基板搭載部」に対応することを前提にすると、引用発明1の「周端部11」、「下部回転板24」、「基板保持部2」、「上部回転板3」、「電動モータ32」、「処理液供給部6」、のそれぞれが、本件発明1の「前記基板搭載部の周囲に位置して前記基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が前記基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置された周端部材」、「前記基板搭載部の下方に平行に配置され、前記周端部材と固定されている下部回転板」、「前記基板搭載部と前記周端部材とから構成される基板保持部」、「前記基板搭載部と前記周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に配置され、前記リング部材上に着脱可能かつ係止可能に配置され、装着時に前記下部回転板と一体回転可能である上部回転板」、「前記基板搭載部及び前記周端部材を回転させる回転駆動源」、「前記基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する処理液供給手段」のそれぞれに対応しているといえる。

(オ)さすれば、引用発明1でも、上部回転板3と下部回転板24とリング部材25とが半密閉の空間を形成しているから、引用発明1は、本件発明1の「前記上部回転板と前記下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成し、」と同等の構成を有している。
そしてまた、引用発明1の「液溜め空間26」は、下部回転板24の端面に対向するリング部材25の内周面に形成されているから、引用発明1は、本件発明1の「前記下部回転板の端面に対向する前記リング部材の内周面には、液溜め空間が形成されている」と同等の構成を有しているといえる。

(カ)また、引用発明1においても、上面に基板が配置される基板配置部としての基板吸着部10が、周端部11に対して上下動可能に設けられているから、引用発明1における上面に基板が配置される基板配置部としての基板吸着部10は、本件発明1の「前記基板搭載部は前記周端部材に対して上下動可能に設けられており、」の構成を有しているといえる。

(キ)そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「回転可能に設けられて、上面に基板が配置される基板配置部と、
前記基板配置部の周囲に位置して前記基板配置部と同期して回転可能で、かつ上面が前記基板配置部の上面よりも僅かに低い位置に配置された周端部材と、
前記基板配置部の下方に平行に配置され、前記周端部材と固定されている下部回転板と、
前記下部回転板上に固定され、前記周端部材の外周側に配置されたリング部材と、
前記基板配置部と前記周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に配置される上部回転板であって、前記リング部材上に着脱可能かつ係止可能に配置され、装着時に前記下部回転板と一体回転可能である上部回転板と、
前記基板配置部及び前記周端部材を回転させる回転駆動源と、
前記基板配置部に配置されている基板に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースと、
前記下部ケースに連通する排気ダクトと、
を備え、
前記基板配置部は前記周端部材に対して上下動可能に設けられており、
前記上部回転板と前記下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成し、
前記下部回転板の端面に対向する前記リング部材の内周面には、液溜め空間が形成されている処理液塗布装置」
である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
[相違点1]:上面に基板が配置される基板配置部が、本件発明1では、「上面に基板が搭載される基板搭載部」であるのに対して、引用発明1では、「角型基板Wが上面に吸着される基板吸着部10」とされていて、角型基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2の中央部に配置される基板吸着部10の上面に形成されている同心円上に複数の吸着溝12と、放射状に複数の吸着溝13と、前記基板吸着部10の中心に先端が開口している負圧経路20とにより醸成される負圧により、角型基板Wが、基板吸着部10の上面に吸着されるものである点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
a 甲第4号証の段落【0010】に、「この回転式塗布装置は、角形の基板1を搭載して縦軸心P周りに水平回転する回転台2と、その上方において回転台2と平行に設置されて回転台2と一体に回転する上部回転板3と、この上部回転板3を支持する上部支持板4と、これら回転部材の下方及び周辺部を外囲するように固定配置された廃液回収ケース5と、縦向き回転軸としての出力軸6を立設したモータ7とを備えている。」が記載されている。
また、同段落【0011】に、「回転台2は、基板1の外形形状より充分大きい外形円板として構成されていて、その上面に立設した多数の基板支持ピン8群上に基板1が水平に搭載支持されるようになっている。」が記載されている。
そして、段落【0014】にも、「この回転式塗布装置は基本的には以上のように構成されたものであり、塗布処理に際しては、先ず上部支持板4を取り外して基板1を回転台2の基板支持ピン8群上に所定の姿勢で搭載セットする。」が記載されている。
してみると、甲第4号証には、「角形の基板1の外形形状より充分大きい外形円板として構成されている回転台2の上面に、多数の基板支持ピン8群を立設し、前記多数の基板支持ピン8群上に角形の基板1を水平に搭載支持して、回転台2を縦軸心P周りに水平回転させる回転式塗布装置」の発明の記載が認められる。

b そうすると、引用発明1の処理液塗布装置における「角型基板Wが上面に吸着される基板吸着部10」に代えて、甲第4号証に記載されている前記「回転式塗布装置」の発明の「角形の基板1の外形形状より充分大きい外形円板として構成されている回転台2の上面に、多数の基板支持ピン8群を立設し、前記多数の基板支持ピン8群上に角形の基板1を水平に搭載支持する技術手段」を採用することにより、本件発明1の相違点1に係る上記「上面に基板が搭載される基板搭載部」の構成に変更することは、当業者が容易に想到できることである。

c したがって、本件発明1の相違点1に係る前記「上面に基板が搭載される基板搭載部」の構成は、引用発明1に甲第4号証に記載されている発明を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである。

そして、本件発明1の奏する作用効果は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明1は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(2)本件発明2について
ア 対比
(ア)本件発明2と引用発明1とを対比する前に、請求項2に係る本件発明2と請求項1に係る本件発明1とを比較すると、本件発明2は請求項1に係る本件発明1を引用する発明であるから、本件発明2と本件発明1とは、請求項1に記載されている構成が共通し、その余の点で構成が相違することは明らかである。
そして、本件発明2の本件発明1と共通する構成については、すでに上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」、並びに「イ 相違点についての検討」欄の「(ア)相違点1について」において前述したとおりである。

(イ)そうすると、ここで、本件発明2と引用発明1とを対比した場合の両者の構成上の相違は、上記「(1)本件発明1について」欄において前述した本件発明1と引用発明1との構成上の相違である相違点1を含み、かつ、本件発明2と本件発明1と構成が共通していない「前記基板搭載部は基板を吸着保持するものである」ことは明らかである。

(ウ)したがって、本件発明2と引用発明1とは、
「請求項1に記載の処理液塗布装置」
である点で一致し、上記「(1)本件発明1について」欄において前述した上記相違点1の他に、次の点で両者の構成が相違する。
[相違点2]:本件発明2が、「前記基板搭載部は基板を吸着保持するものである」のに対し、引用発明1は、前記構成であるか否か明確でない点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
本件発明2と引用発明1との構成上の相違である相違点1は、本件発明1と引用発明1との構成上の相違である相違点1と共通しており、前記相違点1については、上記「(1)本件発明1について」欄の「イ 相違点についての検討」の「(ア)相違点1について」において、すでに前述したとおりであるので、重複を避けるために、ここでは繰り返さない。

(イ)相違点2について
a 引用発明1は、上記「1 甲号各証の記載事項」欄の「(1)」に前掲したとおりのものであり、引用発明1の「基板吸着部10」が、本件発明1の「基板搭載部」に対応する関係にあることは、すでに上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」の「(エ)」において前述したとおりであり、本件発明1と引用発明1との両者は、少なくとも「上面に基板が配置される基板配置部」を備える点において共通しているから、本件発明2についても本件発明1と同様に、本件発明2と引用発明1とでは、引用発明1の「上面に基板が配置される基板配置部としての基板吸着部10」が、本件発明2の「上面に基板が配置される基板配置部としての基板搭載部」に対応している。

b しかしながら、上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」の「(エ)」において前述したように、引用発明1における角型基板Wは、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2の中央部に配置される基板吸着部10の上面に形成されている同心円上に複数の吸着溝12と、放射状に複数の吸着溝13と、前記基板吸着部10の中心に先端が開口している負圧経路20とにより醸成される負圧によって、基板吸着部10の上面に吸着されるようになっているものであることから、引用発明1の前記「基板吸着部10」は、本件発明2の「基板搭載部」と同様に、基板を吸着保持するものであるといえる。

c そうすると、本件発明2の引用発明1に対する相違点2は、本件発明2の引用発明1に対する相違点1に係る構成を限定する関係にあるものであるところ、引用発明1は、本件発明2の相違点2に係る前記「前記基板搭載部は基板を吸着保持するものである」の構成を実質的に備えているから、本件発明2と引用発明1との間には、前記相違点1及び相違点2についての構成上の相違を認めることができない。

d したがって、本件発明2は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本件発明2の奏する作用効果は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明1は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3)本件発明3について
ア 対比
(ア)本件発明3と引用発明1とを対比する前に、請求項3に係る本件発明3と請求項1に係る本件発明1とを比較すると、本件発明3は、少なくとも請求項1に係る本件発明1を引用する発明であるから、本件発明3と本件発明1とは、請求項1に記載されている構成が共通し、その余の点で構成が相違することは明らかである。
そして、本件発明3の本件発明1と共通する構成については、すでに上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」及び「イ 相違点についての検討」において前述したとおりである。

(イ)そうすると、ここで、本件発明3と引用発明1とを対比した場合の両者の構成上の相違は、上記「(1)本件発明1について」欄において前述した本件発明1と引用発明1との構成上の相違である相違点1を含み、かつ、本件発明3と本件発明1とで構成が共通していない「前記周端部材は基板の下方位置から基板端縁よりもさらに外側まで延在するものである」構成であることは明らかである。

(ウ)したがって、本件発明3と引用発明1とは、
「請求項1に記載の処理液塗布装置」
である点で一致し、上記「(1)本件発明1について」欄において前述した上記相違点1の他に、次の点で両者の構成が相違する。
[相違点3]:本件発明3が、「前記周端部材は基板の下方位置から基板端縁よりもさらに外側まで延在するものである」のに対し、引用発明1は、前記構成であるか否か明確でない点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
本件発明3と引用発明1との構成上の相違である相違点1は、本件発明1と引用発明1との構成上の相違である相違点1と共通しており、前記相違点1については、上記「(1)本件発明1について」欄の「イ 相違点についての検討」の「(ア)相違点1について」において、すでに前述したとおりであるので、重複を避けるために、ここでは繰り返さない。

(イ)相違点3について
a 引用発明1は、上記「1 甲号各証の記載事項」欄の「(1)」に前掲したとおりのものであり、引用発明1の「周端部11」が、本件発明1の「前記基板搭載部の周囲に位置して前記基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が前記基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置された周端部材」に対応する関係にあることは、すでに上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」の「(オ)」において前述したとおりである。

b しかして、上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」の「(エ)」において前述したように、引用発明1の処理液塗布装置1は、上面に同心円上に複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10が中央部に配置され、該基板吸着部10の周囲にリング状の周端部11が配置されて構成される、角型基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2を備えている。
これによれば、引用発明1の前記基板保持部2は、中央部に配置される基板吸着部10の周囲に、リング状の周端部11が配置されて構成されていることが明らかであり、さらに、前記円形状の基板保持部2は、角型基板Wの対角線長さより長い直径を有していることが明らかである。

c そして、甲第1号証に添付された、引用発明1の処理液塗布装置の斜視図を表した図1には、リング状の周端部11が、円形状の基板保持部2の中央部に配置される基板吸着部10の周囲にリング状に配置されていて、角型基板Wが、円形状の基板保持部2の中心部にある前記基板吸着部10と、円形状の基板保持部2の周縁部にあるリング状の前記周端部11とに跨って、かつ、角型基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2の領域内に納まるように配置されている図が示されている。

d また、引用発明1の周端部11の上面が基板吸着部10の上面よりも僅かに低い位置に配置されていることについては、甲第1号証に添付された、引用発明1の処理液塗布装置の縦断面部分図を表した図4に、円形状の基板保持部2の中央側に配置される基板吸着部10が、下部回転板24の上面よりも上方位置に位置するとともに、円形状の基板保持部2の周縁側に配置される周端部11が、前記基板吸着部10に接するように配置されていて、前記基板吸着部10の上面が、前記周端部11の上面よりも上位位置に位置するようにして、下部回転板24の上に配置されている図が示されていることからも、明らかである。

e したがって、甲第1号証の図1の記載により、引用発明1における前記周端部11は、角型基板Wの端縁よりもさらに外側まで延在していることが明らかであり、さらに、甲第1号証の図4の記載により、引用発明1における前記周端部11は、角型基板Wの端縁の位置よりも下方位置に位置していることが明らかであるから、引用発明1における前記周端部11は、角型基板Wの下方位置から角型基板Wの端縁よりもさらに外側まで延在していることが明らかである。

f そうすると、引用発明1は、本件発明3の相違点3に係る前記「前記周端部材は基板の下方位置から基板端縁よりもさらに外側まで延在するものである」の構成を実質的に備えているから、本件発明3と引用発明1との間には、相違点1を除いて、前記相違点3に係る構成上の相違を認めることができない。

g そして、上記「イ 相違点についての検討」欄の「(ア)相違点1について」において言及したように、本件発明3の前記相違点1については、本件発明1の相違点1と同様であるから、本件発明3は、引用発明1に甲第2号証に記載の発明を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明3の奏する作用効果は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明3は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(4)本件発明4について
ア 対比
(ア)引用発明1は、上記「1 甲号各証の記載事項」欄の「(1)」に前掲したとおりのものである。

(イ)しかして、本件発明4は処理液塗布方法の発明であり、引用発明1は処理液塗布装置の発明である点で、両者の「発明のカテゴリー」が相違する。
しかしながら、両者の「発明のカテゴリー」の相違を除けば、引用発明1の「処理液塗布装置」と、本件発明4の「処理液塗布方法」とは、いずれも「処理液の塗布に関する発明」である点で共通するといえる。

(ウ)そして、本件発明4と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「角型基板W」、「フォトレジスト液」及び「液溜め空間26」のそれぞれが、本件発明4の「基板」、「処理液」及び「液溜め空間」のそれぞれに相当することは、上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」に前述した本件発明1の場合と同様である。

(エ)また、引用発明1の「リング部材25」、「下部ケース4」及び「排気ダクト44」のそれぞれが、本件発明4の「下部回転板に周端部材と、周端部材の外周側に配置されたリング部材とが固定されており」、「前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケース」及び「下部ケースに排気ダクトが連通されており」のそれぞれに相当することも、上記「(1)本件発明1について」欄の「ア 対比」に前述した本件発明1の場合と同様である。

(オ)一方、本件発明4では、基板の下面中央部を基板搭載部に搭載するのに対して、引用発明1では、上面に同心円上に複数の吸着溝12と放射状に複数の吸着溝13とが形成され、中心に負圧経路20の先端が開口している基板吸着部10が中央部に配置され、該基板吸着部10の周囲にリング状の周端部11が配置されて構成される、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2を備える処理液塗布装置において、前記基板吸着部10の裏面中央に、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定され、該回転継手14に中心に負圧経路20が形成されていて、昇降シリンダ41により上下駆動される中心軸15の先端が固定されていて、基板吸着部10の上面に前記負圧経路20が回転継手14を介して開口しており、前記基板保持部2の中央部に配置される基板吸着部10の上面に形成されている同心円上の複数の吸着溝12と、放射状の複数の吸着溝13と、前記基板吸着部10の中心に先端が開口している負圧経路20とにより醸成される負圧によって、角型基板Wが基板吸着部10の上面に吸着されるようになっている点において、両者は、基板を配置する構成が相違するが、いずれにしても、本件発明4と引用発明1との両者は、少なくとも「上面に基板が配置される基板配置部」を備える点において共通しているから、引用発明1の「上面に基板が配置される基板配置部としての基板吸着部10」が、本件発明4の「上面に基板が配置される基板配置部としての基板搭載部」に対応しているといえる。

(カ)そうすると、引用発明1の「基板吸着部10」が本件発明4の「基板搭載部」に対応することを前提にすると、引用発明1の「周端部11」、「下部回転板24」、「基板保持部2」及び「上部回転板3」のそれぞれが、本件発明4の「周端部材」、「基板搭載部の下方に平行に下部回転板が配置されており」、「基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部」及び「基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に上部回転板が配置されており」のそれぞれに対応しているといえる。

(キ)さすれば、引用発明1でも、上部回転板3と下部回転板24とリング部材25とが半密閉の空間を形成しているから、引用発明1は、本件発明4の「上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で」と同等の構成を有している。
そしてまた、引用発明1の「液溜め空間26」は、下部回転板24の端面に対向するリング部材25の内周面に形成されているから、引用発明1は、本件発明4の「下部回転板の端面に対向するリング部材の内周面には、液溜め空間が形成されており、」と同等の構成を有しているといえる。

(ク)そしてまた、引用発明1においても、上面に基板が配置される基板配置部としての基板吸着部10が、周端部11に対して上下動可能に設けられているから、引用発明1における上面に基板が配置される基板配置部としての基板吸着部10は、本件発明4の「基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程」を担保する構成を有しているといえる。

(ケ)さらに、引用発明1は、固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれに係合突起72が設けられ、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられていて、環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられていて、この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、固定支持部材61側の係合突起72が上部回転板3側の筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっていて、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り下げて、固定支持部材61側の係合突起72を上部回転板3側の筒体75から離脱させると、上部回転板3をリング部材25に対して装着できる状態となるものである。
そして、引用発明1の「続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり」の工程は、引用発明1の前記「図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り下げて、固定支持部材61側の係合突起72を上部回転板3側の筒体75から離脱させると、上部回転板3をリング部材25に対して装着できる状態」に引き続き行われる工程であるから、引用発明1の前記「続いて上部ケース5を下部ケース4に装着すると、上部回転板3はリング部材25上に係合されて下部回転板24と一体回転可能となり」の工程が、本件発明4の「上部回転板はリング部材上に着脱可能かつ係止可能であって、装着時に下部回転板と一体回転可能であり」及び「前記上部回転板を前記リング部材上に係合して」に相当するといえる。

(コ)そして、引用発明1の「まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置し、そして搬送機構から角型基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする結果、角型基板Wが吸着保持されて、昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させ」る工程が、本件発明4の「基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程」と「基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程」に対応する。

(サ)また、引用発明1では、「筒状回転軸18の上部のフランジ部に、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定され、前記下部回転板24上に、周端部11と、周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されていて、前記周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されていて、前記基板吸着部10は、周端部11と一体回転し、かつ周端部11に対して上下動可能となって」いて、昇降シリンダ41により中心軸15が上下駆動されると、中心軸15の上端に固定された基板吸着部10が昇降して、前記周端部11の上面が基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されていることにより、周端部11が角型基板Wの端部側下面に対して僅かに低い位置に近接して配置されることになり、これにより、基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置し、そして搬送機構から角型基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする結果、角型基板Wが吸着保持されて、昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させることから、引用発明1の「前記周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されてい」る構成に基づく「昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させる」工程が、本件発明4の「基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程」及び「基板搭載部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置し、」に相当する。

(シ)そして、引用発明1の「続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体回転させて、角型基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、角型基板W上に処理液を均一に塗布」する工程が、本件発明4の「上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させ、基板からの余剰の処理液を液溜空間に溜める工程」に対応する。

(ス)そうすると、本件発明4と引用発明1とは、
「基板配置部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程と、
基板の下面中央部を基板配置部に配置する工程と、
基板配置部を周端部材に対して下降させて基板配置部に配置された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程と、
基板配置部の下方に平行に下部回転板が配置されており、
下部回転板に周端部材と、周端部材の外周側に配置されたリング部材とが固定されており、
下部回転板の端面に対向するリング部材の内周面には、液溜め空間が形成されており、
基板配置部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に上部回転板が配置されており、
上部回転板はリング部材上に着脱可能かつ係止可能であって、装着時に下部回転板と一体回転可能であり、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースに排気ダクトが連通されており、
基板配置部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置し、かつ、前記上部回転板を前記リング部材上に係合して上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で基板配置部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させ、基板からの余剰の処理液を液溜空間に溜める工程と、
を備えた回転式塗布に関する発明」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
[相違点4]:本件発明4が、「処理液塗布方法」の発明であるのに対し、引用発明1は「処理液塗布装置」の発明である点。
[相違点5]:上面に基板が配置される基板配置部が、本件発明4では、「上面に基板が搭載される基板搭載部」であるのに対して、引用発明1では、「角型基板Wが上面に吸着される基板吸着部10」とされていて、角型基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状の基板保持部2の中央部に配置される基板吸着部10の上面に形成されている同心円上に複数の吸着溝12と、放射状に複数の吸着溝13と、前記基板吸着部10の中心に先端が開口している負圧経路20とにより醸成される負圧により、角型基板Wが、基板吸着部10の上面に吸着されるものである点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点4について
a 引用発明1の物の発明を、方法の発明に、発明のカテゴリーを変更することは、当業者が何らの格別の技術力を要することなく、文言を変更することにより容易になし得ることである。

b したがって、本件発明4の相違点4に係る前記構成は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

(イ)相違点5について
a 本件発明4の相違点5は、本件発明1の相違点1と実質的にも形式的にも同一の相違点であるところ、前記本件発明1の前記相違点1についての判断は、すでに上記「本件発明1について」欄の「(ア)相違点1について」の「a」ないし「c」に前述したとおりであり、本件発明4の相違点5が、本件発明1の相違点1と同一の相違点である以上、本件発明4の相違点5についても、本件発明1の相違点1の判断と同様である。

b したがって、本件発明4の相違点5に係る前記「上面に基板が搭載される基板搭載部」の構成は、引用発明1に甲第4号証に記載されている発明を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである。

そして、本件発明4の奏する作用効果は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本件発明4は、引用発明1及び甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 当審の職権による無効理由2(特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号違反)についての検討
1 本件発明1ないし本件発明4の「基板搭載部」について
(1)被請求人が原出願の当初明細書等が記載されている甲第1号証〔特開平6-338447号公報〕に記載されていると主張する本件発明1ないし本件発明4の「基板搭載部」について、甲第1号証の記載からは、甲第1号証に記載の「基板吸着部10」が、本件発明1ないし本件発明4の「基板搭載部」であるとはいえないことは、上記「第4 当審の職権による無効理由の前提となる分割要件の有無についての検討」欄の「2(2)ア」に前述したとおりである。
そして、本件特許出願が、上記甲第1号証に係る特願平5-215340号を原出願とする分割出願であるとされていたことから、「基板吸着部10」についての本件訂正明細書における記載は、上記甲第1号証に記載されている技術事項の範囲内にとどまり、甲第1号証と同様に、本件訂正明細書の記載からは、前記「基板吸着部10」が、本件発明1ないし本件発明4の「基板搭載部」であるとはいえない。

(2)したがって、「基板吸着部10」が「基板搭載部」であることの根拠となる記載を、本件訂正明細書の中に認めることができない。また、「基板搭載部」の技術事項が、本件訂正明細書の記載から自明であるということもできない。

(3)しかも、前記「基板搭載部」という文言は、「基板吸着部10」という具体的構成の上位概念であり、前記「基板吸着部10」の具体的構成だけではなく、他の構成の「基板搭載部」としての概念をも包含する拡張された一般的な概念であるから、「基板搭載部」の文言が、必ずしも前記「基板吸着部10」のみを一義的に意味するものでないことは明らかである。
したがって、前記「基板吸着部10」が「基板搭載部」に該当するということはいえるが、逆に、「基板搭載部」の文言が前記「基板吸着部10」を意味することにはならないので、前記「基板吸着部10」を離れた本件発明1ないし本件発明4の「基板搭載部」は、前記「基板吸着部10」を超える意味内容の構成であって、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に明示の記載がなく、また示唆する記載もないので、明確でないものとなっている。

(4)そうすると、本件発明1ないし本件発明4の前記「基板搭載部」の構成要件が、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されてなく、また、前記構成要件について、当業者が実施できる程度に本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができないばかりでなく、前記構成要件を含む本件発明1ないし本件発明4の構成が、明確でないものとなっている。

2 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし本件発明4の特許は、特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明4の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対して、または、特許法第29条第2項の規定に違反してされた発明に対してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、当審の職権による無効理由1により無効とすべきものである。
また、本件発明1ないし本件発明4の特許は、特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、当審の職権による無効理由2により無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
処理液塗布装置及び方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】回転可能に設けられて、上面に基板が搭載される基板搭載部と、
前記基板搭載部の周囲に位置して前記基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が前記基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置された周端部材と、
前記基板搭載部の下方に平行に配置され、前記周端部材と固定されている下部回転板と、
前記下部回転板上に固定され、前記周端部材の外周側に配置されたリング部材と、
前記基板搭載部と前記周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に配置される上部回転板であって、前記リング部材上に着脱可能かつ係止可能に配置され、装着時に前記下部回転板と一体回転可能である上部回転板と、
前記基板搭載部及び前記周端部材を回転させる回転駆動源と、
前記基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースと、
前記下部ケースに連通する排気ダクトと、
を備え、
前記基板搭載部は前記周端部材に対して上下動可能に設けられており、
前記上部回転板と前記下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成し、
前記下部回転板の端面に対向する前記リング部材の内周面には、液溜め空間が形成されていることを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】前記基板搭載部は基板を吸着保持するものであることを特徴する請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】前記周端部材は基板の下方位置から基板端縁よりもさらに外側まで延在するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理液塗布装置。
【請求項4】基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程と、
基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程と、
基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程と、
基板搭載部の下方に平行に下部回転板が配置されており、
下部回転板に周端部材と、周端部材の外周側に配置されたリング部材とが固定されており、
下部回転板の端面に対向するリング部材の内周面には、液溜め空間が形成されており、
基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に上部回転板が配置されており、
上部回転板はリング部材上に着脱可能かつ係止可能であって、装着時に下部回転板と一体回転可能であり、
前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースに排気ダクトが連通されており、
基板搭載部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置し、かつ、前記上部回転板を前記リング部材上に係合して上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させ、基板からの余剰の処理液を液溜め空間に溜める工程と、
を備えたことを特徴とする処理液塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布装置及び方法、特に、基板の主面に処理液を塗布する処理液塗布装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程や液晶表示装置の製造工程において、フォトプロセスでパターンを形成する際には、基板にフォトレジスト液を塗布する工程や基板に現像液を塗布する工程等、処理液の塗布工程が不可欠である。
【0003】
この種の処理液塗布工程に用いられる塗布装置として、特開平4-300673号公報に開示されたものが知られている。この処理液塗布装置は、基板を水平状態で機械的に保持して回転させる基板保持部と、この基板保持部の上方に平行に配置され基板保持部と一体に回転する上部回転板と、上部回転板の下面に向けて洗浄液を吹き出す洗浄ノズルとを備えている。
【0004】
この処理液塗布装置では、処理液の塗布が適宜回数行われる毎に洗浄処理が実行される。この洗浄処理では、基板を保持していない状態で上部回転板を基板保持部とともに回転駆動し、この状態で洗浄ノズルに洗浄液を供給して洗浄ノズルから上部回転板の下面に向けて洗浄液を吹きつける。そして、洗浄液を上部回転板下面に沿って延伸流動させる。これにより、先の塗布処理中に上部回転板の下面に付着した処理液を洗い流して上部回転板の下面の汚染を防止する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平4-300673号公報に開示された処理液塗布装置での基板保持構造についてさらに詳細に説明する。基板保持部としての回転台の上面には多数の基板支持ピンが設けられ、その上に角型基板が載置支持されている。すなわち基板は回転台上に直接載置されていない。これは、基板が回転台に接触するように配置されている場合は、基板の端面に回り込んだ処理液が毛管現象で隙間に入り込み、基板裏面を汚染するからである。
【0006】
しかし、この基板保持構造では、角型基板の下面と回転台の上面との間には基板支持ピンの長さに相当する十分に大きな隙間が確保されている。したがって、処理液供給時に処理液ミストが飛散し、基板の裏面の周辺部に回り込んで付着しやすい。
【0007】
本発明の目的は、基板処理液装置において処理液による基板裏面の汚染を減らすことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の処理液塗布装置は、基板搭載部と、周端部材と、下部回転板と、リング部材と、上部回転板と、回転駆動源と、処理液供給手段と、下部ケースと、排気ダクトと、を備えている。基板搭載部は、回転可能に設けられて、上面で基板を保持する。周端部材は、基板搭載部の周囲に位置して基板搭載部と同期して回転可能で、かつ上面が基板搭載部の上面よりも僅かに低い位置に配置されている。下部回転板は、基板搭載部の下方に平行に配置され、周端部材と固定されている。リング部材は、下部回転板上に固定され、周端部材の外周側に配置される。上部回転板は、基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に配置されるものであって、リング部材上に着脱可能かつ係止可能に配置され、装着時に下部回転板と一体回転可能である。回転駆動源は基板搭載部及び周端部材を回転させる。処理液供給手段は、基板搭載部に搭載されている基板に処理液を供給する。下部ケースは、下部回転板の下方に沿うとともにリング部材の周囲を覆う。排気ダクトは、下部ケースに連通する。そして、基板搭載部は、周端部材に対して上下動可能に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の処理液塗布装置では、請求項1において、基板搭載部は、基板を吸着保持するものであることを特徴する。
【0010】
請求項3に記載の処理液塗布装置では、請求項1又は2において、周端部材は、基板の下方位置から基板端縁よりもさらに外側まで延在するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の処理液塗布方法は、以下の工程を備えたことを特徴とする。
◎基板搭載部をその周囲に配置された周端部材に対して上昇させる工程。
◎基板の下面中央部を基板搭載部に搭載する工程。
◎基板搭載部を周端部材に対して下降させて基板搭載部に搭載された基板の端部側下面に対して僅かに低い位置に周端部材を近接配置する工程。
◎基板搭載部の下方に平行に下部回転板が配置されており、下部回転板に周端部材と、周端部材の外周側に配置されたリング部材とが固定されており、下部回転板の端面に対向するリング部材の内周面には、液溜め空間が形成されており、基板搭載部と周端部材とから構成される基板保持部の上方にこの基板保持部と平行に上部回転板が配置されており、上部回転板はリング部材上に着脱可能かつ係止可能であって、装着時に下部回転板と一体回転可能であり、前記下部回転板の下方に沿うとともに前記リング部材の周囲を覆う下部ケースに排気ダクトが連通されており、基板搭載部で保持した基板の端部側下面に対して周端部材を近接配置し、かつ、前記上部回転板を前記リング部材上に係合して上部回転板と下部回転板とリング部材とによって半密閉の空間を形成した状態で基板搭載部と周端部材とを回転させることにより、基板の上面に供給された処理液を回転の径方向外周に拡散させ、基板からの余剰の処理液を液溜め空間に溜める工程。
本発明に係る処理液塗布装置及び方法では、基板の端部側下面と周端部材の上面との間に僅かな隙間が確保されているため、基板の裏面に処理液が付着しにくい。
【0012】
【実施例】
図1において、本発明の一実施例による処理液塗布装置1は、角型基板(以下基板と記す)Wにフォトレジスト液(処理液の一例)を塗布するものである。処理液塗布装置1は、角型基板Wを保持して回転させる基板保持部2と、基板保持部2の上方に基板保持部2と平行に配置された上部回転板3と、基板保持部2及び上部回転板3を囲むように配置された下部ケース4及び上部ケース5と、基板保持部2に保持された基板Wにフォトレジスト液を供給するための処理液供給部6と、基板保持部2の上面を洗浄するための上面洗浄部7と、上部回転板3の下面を洗浄するための下面洗浄部8とを主に有している。
【0013】
基板保持部2は、基板Wの対角線長さより長い直径を有する円形状であり、中央部に配置された基板吸着部10と、基板吸着部10の周囲に配置されたリング状の周端部11とから構成されている。基板吸着部10の上面には、同心円上に複数の吸着溝12が形成されている。また、放射状に複数の吸着溝13も形成されている。さらに、基板吸着部10の中心には、負圧経路20の先端が開口している。
【0014】
基板吸着部10の裏面中央には、図2及び図3に示すように、フランジ部を上端に有する回転継手14が固定されている。回転継手14には、中心軸15の先端が固定されている。中心軸15の中心には、負圧経路20が形成されている。この負圧経路20は、回転継手14を介して基板吸着部10の上面に開口している。中心軸15の中間部外周にはスプライン溝(図示せず)が形成されており、これらのスプライン溝は、上下に間隔を隔てて配置された2つのボールスプライン軸受16,17に係合している。ボールスプライン軸受16,17は、筒状回転軸18の内周側に固定されている。また、筒状回転軸18は、上下に間隔を隔てて配置された軸受21,22により装置フレーム23に回転自在に支持されている。この結果、中心軸15は、筒状回転軸18と一体的に回転し、かつ筒状回転軸18に対して上下動自在である。
【0015】
筒状回転軸18は上部にフランジ部を有しており、このフランジ部には、基板吸着部10の下方に平行に配置された下部回転板24が固定されている。下部回転板24上には、周端部11と、周端部11の外周側に配置されたリング部材25とが固定されている。周端部11の上面は、基板吸着部10の上面より僅かに低い位置に配置されている。この結果、基板吸着部10は、周端部11と一体回転し、かつ周端部11に対して上下動可能となっている。リング部材25の下部回転板24の端面に対向する内周面には、図4に示すように、液溜め空間26が形成されている。液溜め空間26は、僅かな隙間で下部回転板24の上面に連通しており、かつ下方に開口している。液溜め空間26には、処理液塗布時に基板Wから流出した余剰の処理液が貯溜され、貯溜された処理液は下方に排出される。
【0016】
筒状回転軸18の下端は、図2に示すように、連結部材31を介してプーリ30に連結されている。プーリ30は、軸受により装置フレーム23に回転自在に支持されている。プーリ30と、駆動モータ32の出力軸に取り付けられたプーリ33とにはベルト34が掛け渡されている。この結果、駆動モータ32の駆動力は、プーリ33、ベルト34、プーリ30、連結部材31を介して筒状回転軸18に伝達される。そして、ポールスプライン軸受16,17を介して中心軸15に伝達される。
【0017】
中心軸15の下端には、図2に示すように、バキュームシールや磁性シール等の回転継手部35が取り付けられている。回転継手部35には、窒素ガス配管36と真空配管37とが接続されている。窒素ガス配管36には窒素ガスの供給をオンオフする窒素ガス弁38が、真空配管37には、真空配管37を開閉する真空弁39がそれぞれ配置されている。
【0018】
回転継手部35は、L字状の昇降ブラケット40の先端(上端)に取り付けられている。昇降ブラケット40の基端には、ロッド固定型の昇降シリンダ41のシリンダ本体41aが取り付けられている。昇降シリンダ41のロッド41bの上下端は、装置フレーム23の下部に取り付けられたコ字状の支持フレーム27に固定されている。この昇降シリンダ41により、中心軸15が上下駆動される。この結果、中心軸15の上端に固定された基板吸着部10が昇降し、基板Wを図2に2点鎖線で示す搬入・搬出位置に配置することが可能となる。
【0019】
上部回転板3は、図2に示すように、リング部材25上に着脱可能かつ係止可能に配置され得るものであり、装着時に下部回転板24と一体回転可能である。この上部回転板3と下部回転板24とリング部材25とによって半密閉の空間を形成することより、回転時における空気の流れが少なくなり、処理液の飛散を防止できる。上部回転板3の中心部には、図5に示すように、開口60が形成されている。
【0020】
下部ケース4は、図4に示すように、下部回転板24の下方に沿って配置され、その両端部に下方に絞り込まれた液溜め部42を有する底部材4aと、底部材4aの周縁部に取り付けられ、リング部材25の周囲を覆う側部材4bとから構成されている。液溜め部42には、図2に示すように、溜められた処理液を排出するための廃液配管43が接続されている。また、底部材4aには、リング状の排気ダクト44が連通している。排気ダクト44により下部ケース4と上部ケース5とで囲まれる空間内の空気が排気される。また、底部材4aの外周部には、液溜め空間26及び下部回転板24の下面を洗浄するための複数の洗浄ノズル45が配置されている。
【0021】
上部ケース5は、下部ケース4の側部材4b上に着脱可能に配置される。上部ケース5の中心部には、図5及び図6に示すように、下面洗浄部8を支持するための1対の固定支持部材61が配置されている。両固定支持部材61は上方側支持プレート61a及び下方側支持プレート61bで連結されている。上方側支持プレート61a上面には、エアシリンダ62とエアロータリーアクチュエータ63とが、下面にはエアシリンダ71(図6)がそれぞれ取り付けられている。エアシリンダ62のシリンダロッド62aの先端には、ブロック64が取り付けられているとともに、ブロック64に昇降及び回転自在に有底筒状の蓋65が吊り下げ保持されている。蓋65は、エアシリンダ62の進退動作により上部回転板3の中心に形成された開口60を開閉可能である。
【0022】
ブロック64の下面には、第1の磁石66aが固定され、また、蓋65の底面には、第1の磁石66aと同極の第2の磁石66bが固定されている。ここでは、蓋65をエアシリンダ62により閉じ位置に移動させた状態で、磁石66a,66bの反発作用によりブロック64を蓋65と非接触状態で閉じ位置に維持できるようになっている。この結果、開口60を閉じながら蓋65のみを上部回転板3と一体回転できるようになっている。
【0023】
エアロータリーアクチュエータ63は垂直軸回りに90°の範囲で回転可能なものであり、エアシリンダ62の側方に配置されている。このアクチュエータ63のロッドには、スプライン軸67が連結されている。スプライン軸67には、昇降自在かつ回転不能にスプライン筒68が取り付けられている。スプライン筒68の外周には、回転のみ可能に回転筒69が取り付けられている。スプライン筒68の下端には、下面洗浄部8を構成する洗浄ノズル70が一体的に取り付けられている。洗浄ノズル70は、洗浄位置にあるとき、上部回転板3の下面を洗浄し得る位置に洗浄液を噴出する。回転筒69には、エアシリンダ71のシリンダロッド71aが連結されている。エアシリンダ71は、ロータリーアクチュエータ63の奥側(図6上方)に配置されている。
【0024】
ここでは、洗浄を行わないときには蓋65は閉じ位置に移動されており、洗浄ノズル70は開口60の上方よりも外れた非洗浄位置に配置される。また、洗浄を行う場合は、蓋65は開き位置に上昇させられる。そして、ロータリーアクチュエータ63によりスプライン筒68を回転して洗浄ノズル70を開口60の上方に位置させた後、エアシリンダ71を進出させて回転筒69及びスプライン筒68を介して洗浄ノズル70を下降させる。この状態では、洗浄ノズル70の吹き出し口から洗浄液を噴出させれば、上部回転板3の下面を洗浄可能である。
【0025】
固定支持部材61の下方側支持プレート61bは環状に形成され、その内周部上面の周方向4か所それぞれには係合突起72が設けられている。また、下方側支持プレート61bよりも上方に位置するように、上部回転板3に取付部材73を介して環状プレート74が取り付けられている。環状プレート74の外周部には、4つの係合突起72のそれぞれに係合する筒体75が設けられている。この結果、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げると、係合突起72が筒体75に係合し、上部回転板3をリング部材25に対して着脱できる構成となっている。
【0026】
処理液供給部6は、図1に示すように、旋回及び昇降するアーム80を有している。アーム80の先端には、処理液供給ノズル81が下向きに配置されている。アーム80は、上部ケース5が取り外された処理液供給時には、処理液供給ノズル81が基板Wの中心上に対向配置される供給位置に配置され、それ以外のときは、実線で示す退避位置に配置される。
【0027】
上面洗浄部7は、揺動及び進退する二股に分かれた上面洗浄ノズル82を有している。上面洗浄部81は、上部ケース5が取り外された洗浄液供給時において、基板保持部2の周端部11上に進出して揺動する。それ以外のときは下部ケース4外方の退避位置に配置される。
【0028】
次に、上述の実施例の動作について説明する。基板処理時には、まず昇降シリンダ41により、基板吸着部10を上昇させ、搬入・搬出位置に配置する。そして図示しない搬送機構から基板Wが搬送されると、真空弁39を開き、基板吸着部10を負圧にする。この結果、基板Wが吸着保持される。そして昇降シリンダ41により基板吸着部10を周端部11と対向する位置に下降させる。続いて処理液供給部6のアーム80を旋回し、処理液ノズル81を基板Wの中心位置の上方に配置する。続いて、基板Wに対して処理液(たとえばフォトレジスト液)を所定量供給する。処理液の供給が終了すると、処理液アーム80を退避させ、続いて上部ケース5を下部ケース4に装着する。これにより、上部回転板3はリング部材25上に係合され、下部回転板24と一体回転可能となる。続いてモータ32を回転駆動し、下部回転板24、基板吸着部10及び上部回転板3を一体 回転させる。そして基板Wに滴下されたフォトレジスト液を径方向外周に拡散させ、基板W上に処理液を均一に塗布する。基板Wからの余剰の処理液は、リング部材25に形成された液溜め空間26に徐々に溜まり、液溜め空間26から液溜め部42に滴下されて廃液配管43から排出される。
【0029】
フォトレジスト液の塗布が終了すると、モータ32の駆動を停止し、図示しない吊り上げ手段により上部ケース5を吊り上げ、下部ケース4から離脱させる。すると、上部ケース5によって、上部回転板3もリング部材25から離脱される。そして昇降シリンダ41により基板Wを上昇させ、図示しない搬送機構により次の工程に基板Wを搬送する。
【0030】
このフォトレジスト液塗布工程を何回か繰り返すと、周端部11の上面や上部回転板3の下面にはフォトレジスト液のミストが付着する。そこで、処理部を洗浄する。周端部11の上面を洗浄する際には、まず、上面洗浄部7を進出させる。そして、上面洗浄ノズル82を揺動させかつ周端部11に向かって洗浄液を供給しつつモータ32を回転させ、周端部11を洗浄する。この洗浄の際には、窒素ガス弁38を開き真空弁39を閉じる。この結果、負圧経路20には加圧窒素ガスが導入され、基板吸着部(負圧経路20)10は正圧となる。このため、上面洗浄ノズル82から洗浄液が供給されても負圧経路20に洗浄液が混入しない。そして、洗浄液の供給を停止した後に上面洗浄部7を退避させるとともにモータ32を停止して上部ケース5を装着する。続いて、モータ32を高速回転させて液切り乾燥を行う。このときにも窒素ガス弁38を開き、負圧経路20を正圧にする。
【0031】
一方、上部回転板3の下面を洗浄する際には、上部ケース5を下部ケース4に装着する。そして上部ケース5を装着した状態で、エアシリンダ62を退入させ、蓋65を開口60から離脱させる。そして、エアロータリーアクチュエータ63によりノズル70を90°回転させ、さらにエアシリンダ71によりノズル70を下降させる。この結果、図5に実線で示す洗浄位置にノズル70が配置される。そしてモータ32により下部回転板24と共に上部回転板3を回転させ、洗浄液を上部回転板3の下面に吹き付けて洗浄する。このときにも同様に、窒素ガス弁38を開いて真空弁39を閉じる。この結果、負圧経路20には加圧された窒素ガスが導入され、洗浄ノズル70から洗浄液を噴出しても負圧経路20に洗浄水が混入しない。
【0032】
続いて、モータ32を停止後にエアシリンダ71によりノズル70を上昇させ、さらにエアロータリーアクチュエータ63により90°回転させてノズル70を非洗浄位置(図6に2点鎖線で示す位置)に配置する。そして、エアシリンダ62を進出させ、蓋65を開口60に装着して開口60を閉止する。最後に、モータ32を高速回転させて液切り乾燥を行う。このときにも窒素ガス弁38を開き、負圧経路20を正圧にする。
【0033】
〔他の実施例〕
(a)フォトレジスト液を塗布する処理液塗布装置に代えて、現像液を塗布する処理液塗布装置で本発明を実施してもよい。
(b)窒素ガスを供給する構成に代えて、清浄な空気を負圧経路20に供給する構成でもよい。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係る処理液塗布装置及び方法では、基板の端部側下面と周端部材との間に僅かな隙間が確保されているため、基板の裏面に処理液が付着しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例による処理液塗布装置の斜視図。
【図2】
その縦断面図。
【図3】
図2の縦断面部分図。
【図4】
図2の縦断面部分図。
【図5】
図2の縦断面部分図。
【図6】
図5の平面図。
【符号の税明】
1 処理液塗布装置
2 基板保持部
3 上部回転板
6 処理液供給部
7 上面洗浄部
8 下面洗浄部
10 基板吸着部(基板搭載部)
11 周端部材
38 窒素ガス弁
39 真空弁
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-01-22 
結審通知日 2008-01-25 
審決日 2008-02-05 
出願番号 特願2000-262599(P2000-262599)
審決分類 P 1 113・ 537- ZA (B05C)
P 1 113・ 536- ZA (B05C)
P 1 113・ 121- ZA (B05C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 元人岩本 勉  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森内 正明
末政 清滋
登録日 2003-09-12 
登録番号 特許第3470890号(P3470890)
発明の名称 処理液塗布装置及び方法  
代理人 杉谷 勉  
代理人 杉谷 勉  
代理人 片寄 武彦  
代理人 戸高 弘幸  
代理人 森川 聡  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 戸高 弘幸  
代理人 田中 貞嗣  
代理人 小山 卓志  
代理人 米澤 明  
代理人 青木 健二  

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