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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1177243
審判番号 不服2005-17728  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-15 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 平成11年特許願第 50949号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月12日出願公開、特開2000-245897〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成11年2月26日の出願であって、平成17年8月9日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月15日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月14日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年10月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、具体的には補正前請求項1及び同請求項3における「前記視覚的報知手段は、前記報知態様により、遊技者が停止させるべき図柄を示唆する」との記載を「前記視覚的報知手段は、前記報知態様により、遊技者が停止させるべき図柄の基調とする色を示唆する」と補正することを含んでいる。
上記補正事項は、示唆の具体的内容が「図柄の基調とする色」であることを限定した点においては特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号該当)に該当する(そのため、補正後の請求項1又は3に係る発明については、独立特許要件の判断を行う。)が、同色で異なる図柄があり得るから、「図柄の基調とする色を示唆」しても「図柄を示唆」したことには必ずしもならない。
そうである以上、上記補正事項が特許請求の範囲の減縮のみを目的とすると認めることはできず、上記補正事項は請求項削除、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明の何れにも該当しないから、結局のところ、上記補正事項を含む本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反している。

2.新規事項追加
上記補正事項の「図柄の基調とする色を示唆する」につき検討する。
願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)には、「3色LEDの発光色の「赤色」、「橙色」、「緑色」は、それぞれ、特定のシンボルの色を示唆するものである。」(段落【0091】)を初めとして段落【0091】?【0095】に、発光色によって特定のシンボルの色を示唆することが記載されていることは認める。
しかし、これは「図柄の基調とする色」が発光色として遊技者に認識されることをいうにとどまり、発光色以外であっても、色の変化による示唆は発光色と等価であり、当初明細書に記載されているに等しいと認めることができるものの、「図柄の基調とする色を示唆する」態様としては、色の変化以外にも、言葉で示唆する態様も含まれるところ、そのような態様は当初明細書に記載されていないし、自明の事項でもない。ましてや、請求項1,3を択一的に引用する請求項5に「前記報知態様の変化は、前記視覚的報知手段における色の変化であることを特徴とする」との限定があることからすると、同限定のない請求項1,3は、報知態様の変化が色の変化である場合に限られないと解さねばならない。
すなわち、上記補正事項は当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものではないから、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反している。

3.補正発明の認定
本件補正後の請求項3に係る発明(以下「補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項3】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技に必要な複数の図柄を可変表示する可変表示手段と、該可変表示手段の可変表示を制御する制御手段とを備えた遊技機において、
前記制御手段により、前記可変表示の停止時に表示すべき態様を決定し、その決定に基づいて前記可変表示手段を停止制御するが、遊技中所定の発生条件が成立してから所定の解除条件が成立するまでの期間中は、予め定めた第1の入賞役についてのみ前記決定に基づいた停止制御を行い、予め定めた第2の入賞役については前記決定に基づいた停止制御を行なわず、遊技者の停止操作に応じて前記可変表示を停止制御するように構成されると共に、
前記期間中に遊技者が獲得した遊技媒体の数から遊技のために消費した遊技媒体の数を差し引いて得られる純増数が所定の数に達すると、その数に応じて報知態様が変化する視覚的報知手段を備え、
前記視覚的報知手段は、前記報知態様により、遊技者が停止させるべき図柄の基調とする色を示唆することを特徴とする遊技機。」

4.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「パチスロ攻略マガジン」6月号,6?10頁(株式会社双葉社,1998年6月1日発行。以下「引用例1」という。)には、パチスロ「ウルトラマン倶楽部3」の紹介記事が掲載されており、以下の記載又は図示がある。
ア.「CTの終了条件は3つ。まず純増枚数(・・・)が200枚を1枚でもオーバーしてしまった場合。そして99プレイを消化した場合だ。当然CT中にBIGを引けば、CTは終了する。CT中にCTBIGを引いても、残りのCTは累積されない。」(6頁右下部)
イ.「普通のパチスロは成立フラグ絵柄を最大4コマまで引き込む制御があるのだが、この機種のCT中のリール制御は、全リール1コマもスベらずに停止する。但し、BIG&リプレイ図柄は狙っても揃わない。逆にフラグが成立した時は引き込み制御が働く。」(6頁右下部)
ウ.「小役はどうなのか?実はCT中に小役の抽選は一切行っていない。よって狙えば、15枚小役だろうが5枚小役だろうが構わず揃ってしまうのである。」(7頁下段)
エ.「CTにおいて一番重要なのは「純増枚数が200枚を越えてしまうとCTが終了する」という点だ。・・・理想的な打ち方が左上の「小役狙い+調整」だ。まず3枚掛けで15枚の払い出しを16回連続で狙い、速攻で純増枚数を192枚にする(・・・)。次に純増枚数が丁度200枚になるように、3枚掛けで7枚小役を狙うのだ。その後は2枚小役×2プレイ+5枚小役でクレジットを調整しながら純増枚数200枚付近を維持する。最後に99プレイ目は15枚小役を獲得しCT終了、という訳だ。この打法ならばいつBIGが入っても損はなく、CTを最大限に活用できるぞ!」(8頁の本文)
オ.「ある程度の純増枚数は「効果ランプ」で知ることが出来るが、表示枚数が大まかなので、正確な数値を知るには手間がかかる。
そこで開発されたのが左下の「実践向けCT消化手順」だ。この手順のメリットはクレジットで純増枚数を知ることができること。」(9頁中央部分の本文)
カ.7頁左部分には、「リール配列」と題する図が示され、左中右の各列に21個の絵柄が描かれている。
キ.7頁中央部分には、「BIG」、「小役」及び「リプレイ」につき、通常時はすべて抽選するが、CT中には「小役」のみ抽選しないことを示す表が記載されている。

5.引用例1記載の発明の認定
記載又は図示ア?キを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「通常時とCT中のプレイが可能なパチスロ機であって、
通常時には、BIG、小役及びリプレイのすべてについて抽選を行い、CT中にはBIG及びリプレイについては抽選を行うが、小役については抽選を行わず、
抽選により入賞した場合には最大4コマまで引き込む制御を行い、CT中の小役については全リール1コマもスベらずに停止するような制御を行い、
大まかな純増枚数を表示する効果ランプを備え、
CTは、純増枚数が200枚をオーバーした場合、99プレイを消化した場合又はBIGに入賞した場合に終了するパチスロ。」(以下「引用発明1」という。)

6.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1はパチスロ(補正発明の「遊技機」に相当)であるから、「遊技に必要な複数の図柄を可変表示する可変表示手段」を備える(記載又は図示カの左中右のリールがこれに相当)ことは明らかである。
引用発明1における「抽選により入賞した場合には最大4コマまで引き込む制御」と補正発明の「前記可変表示の停止時に表示すべき態様を決定し、その決定に基づいて前記可変表示手段を停止制御」に相違はなく、同じく「全リール1コマもスベらずに停止するような制御」と「前記決定に基づいた停止制御を行なわず、遊技者の停止操作に応じて前記可変表示を停止制御」にも相違はない。
したがって、引用発明1の「BIG及びリプレイ」が補正発明の「予め定めた第1の入賞役」に、同じく「小役」が「予め定めた第2の入賞役」にそれぞれ相当する。引用発明1の「CT」が遊技中所定の発生条件が成立することにより開始することは明らかであって、所定の解除条件(純増枚数が200枚をオーバー等の3条件)が成立することにより終了するから、結局のところ、「可変表示手段の可変表示を制御する制御手段とを備え」ること、及び「前記制御手段により、前記可変表示の停止時に表示すべき態様を決定し、その決定に基づいて前記可変表示手段を停止制御するが、遊技中所定の発生条件が成立してから所定の解除条件が成立するまでの期間中は、予め定めた第1の入賞役についてのみ前記決定に基づいた停止制御を行い、予め定めた第2の入賞役については前記決定に基づいた停止制御を行なわず、遊技者の停止操作に応じて前記可変表示を停止制御するように構成される」ことは補正発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1の「効果ランプ」は、大まかなCT中の純増枚数(補正発明の「前記期間中に遊技者が獲得した遊技媒体の数から遊技のために消費した遊技媒体の数を差し引いて得られる純増数」に等しい。)を表示するものであるから、補正発明の「前記期間中に遊技者が獲得した遊技媒体の数から遊技のために消費した遊技媒体の数を差し引いて得られる純増数が所定の数に達すると、その数に応じて報知態様が変化する視覚的報知手段」と異ならない。
したがって、補正発明と引用発明1は、
「遊技に必要な複数の図柄を可変表示する可変表示手段と、該可変表示手段の可変表示を制御する制御手段とを備えた遊技機において、
前記制御手段により、前記可変表示の停止時に表示すべき態様を決定し、その決定に基づいて前記可変表示手段を停止制御するが、遊技中所定の発生条件が成立してから所定の解除条件が成立するまでの期間中は、予め定めた第1の入賞役についてのみ前記決定に基づいた停止制御を行い、予め定めた第2の入賞役については前記決定に基づいた停止制御を行なわず、遊技者の停止操作に応じて前記可変表示を停止制御するように構成されると共に、
前記期間中に遊技者が獲得した遊技媒体の数から遊技のために消費した遊技媒体の数を差し引いて得られる純増数が所定の数に達すると、その数に応じて報知態様が変化する視覚的報知手段を備える遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉補正発明が「視覚的報知手段は、前記報知態様により、遊技者が停止させるべき図柄の基調とする色を示唆する」と限定するのに対し、引用発明1にはこの限定がない点。

7.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
引用例1の記載エは、引用発明1の構成を示したものでなく、引用発明1のCTを最大限有効に利用する打法についての解説である。それによれば、CT中は、最後の99プレイ目を除けば、純増枚数が200枚を越えないように遊技すること、及び純増枚数を200枚に近づけることが共に重要であり、そのため、純増枚数が200枚に近いかどうかにより、狙うべき小役が異なることが理解できる。
本件出願前に頒布された特開平11-33166号公報(原査定の拒絶の理由に引用された文献の1つである。)に「パチンコ遊技の進行あるいは状態に応じて狙い目となる入賞装置(特定入賞装置120、回転入賞装置132、大入賞装置136、始動入賞装置138)が変遷する場合に、その変遷に応じて変色域ア、イ、ウを変色させることで、狙い目となっている入賞装置の場所を示すことができる。このため、遊技者としては、変色域ア、イ、ウの変色に応じて狙い場所を変えて行けばよいわけで、複雑なパチンコ遊技でも戸惑うことなく楽しむことができる。」(段落【0044】)と、
実公平1-31259号公報(原査定の拒絶の理由に引用された文献の1つである。)に「第2図に示したゲームの成功パターンを得るためには、操作レバー5が所定の許容時間内にしかも所定の方向に操作されなければならないが、その許容時間の計数が開始された時点から、その許容時間が経過するまでの間、矢印表示6がなされるようになつている。従つて、遊戯者はゲーム画面を観察しながら、前記矢印表示6が現れた時点からその矢印表示6が消えるまでの間に、操作レバー5をその表示通りの方向に操作すればよいことになる。この結果、初心者にとつてゲームの成功確率を高められるようになる。」(3欄33?42行)と、
特開平5-84344号公報(原査定の拒絶の理由に引用された文献の1つである。)に「入賞装置の状態に合致した遊技方法を遊技者に指示するための遊技方法表示器」(【請求項1】)と、
特開平7-148310号公報(原査定の拒絶の理由に引用された文献の1つである。)に「遊技者が、遊技手順表示指示手段(例えばヘルプスイッチ160)を操作すると、遊技手順表示手段(例えば液晶表示装置30)に、自摸牌判断手段(352)の判断結果である目標自摸牌、または捨牌判断手段(353)における判断結果である目標捨牌を表示する。したがって、遊技者は、遊技手順表示手段30に表示された遊技手順に従って遊技を行えばよいので、麻雀遊技を全く知らなかったりあるいは麻雀知識が乏しい初心者であっても、雀球遊技機における遊技を楽しむことができ、遊技の興趣を損なうことがない。」(段落【0009】)と、
特開平10-277206号公報(原査定の拒絶の理由に引用された文献の1つであり、以下「引用例2」という。)に「報知手段が、解除条件の成立前すなわちCTの終了前に、遊技者に有利な停止操作(例えば、複数のリールに対応した複数の停止ボタンの操作順序)を知らせるように構成した場合には、未熟練の遊技者でも、CT遊技を有利に実行することができる。」(段落【0040】)と、及び
特開平11-47352号公報(以下「引用例3」という。)に「請求項2に記載された図柄組合せ遊技機は、上記した請求項1に記載された特徴点に加えて、タイミング報知手段が、入賞態様の種類に個別に対応した発光色により、許可された入賞態様の種類を報知可能なLEDにより構成されている。具体的には、例えば、ストップスイッチの近傍に、赤色、緑色、黄色の3色発光が可能なLEDを配置して、赤色「7」が3つ揃うビッグボーナスゲームの発生が許可されている場合には、LEDを赤色で点滅させ、青色「7」が3つ揃うビッグボーナスゲームの発生が許可されている場合には、LEDを緑色で点滅させ、「BAR」が3つ個揃うレギュラーボーナスゲームの発生が許可されている場合には、LEDを黄色で点滅させることにより、入賞態様の種類と、ストップスイッチの操作タイミングとを報知する。」(段落【0010】)とそれぞれ記載されているように、遊技者の利益に結びつくように、遊技者が行うべき操作を報知することは遊技機における周知技術と認めることができる。
引用発明1のCT中においては、前示のとおり、純増枚数が200枚に近いかどうかにより、狙うべき小役が異なるのだから、狙うべき小役を報知することが遊技者の利益に結びつくことは明らかであり、とりわけ上記引用例2には、報知内容こそ補正発明と異なるものの、「CTの終了前に、遊技者に有利な停止操作」を報知することが記載されているのだから、上記周知技術を採用して、純増枚数に応じて狙うべき小役を報知することは当業者にとって想到容易である。ここで、純増枚数が200枚に近いかどうかにより狙うべき小役が異なる以上、「所定の数に達すると、その数に応じて報知態様が変化する」ことは当然の結果であり、小役を報知することは「遊技者が停止させるべき図柄を示唆する」ことにほかならない。
そして、報知をするに当たっては、視覚的又は聴覚的な報知が用いられることが多く、引用発明1は「視覚的報知手段」を備えていることを考慮すれば、視覚的報知とすることは設計事項に属する。
残る検討項目は、「遊技者が停止させるべき図柄の基調とする色を示唆する」点である。上記引用例3においては、「赤色「7」が3つ揃うビッグボーナスゲーム」と「LEDを赤色で点滅」が対応し、「青色「7」が3つ揃うビッグボーナスゲーム」と「LEDを緑色で点滅」が対応している。後者におけるLEDが青色でない理由は定かでないが、ビッグボーナスゲームの図柄が赤・青の2色であれば、赤・緑の発光色でも十分に区別できることは明らかであって、図柄の基調とする色と発光色を対応づける技術思想は引用例3から十分読み取れる。そして、引用例3の「図柄組合せ遊技機」はパチスロであり、例えば、赤色「7」が3つ揃うビッグボーナスゲームの発生が許可されている場合に遊技者が停止させるべき図柄は当然「赤色「7」」であるから、パチスロにおける上記周知技術として、「遊技者が停止させるべき図柄の基調とする色を示唆する」ことは、引用例3に記載されている。
また、パチスロの図柄は通常着色されているから、引用発明1において、CT中に狙うべき小役図柄を異なる色に着色することには何の問題もない。
以上のとおりであるから、引用発明1を出発点として、上記周知技術を採用して、小役図柄を異なる色に着色するとともに、視覚的報知手段を「遊技者が停止させるべき図柄の基調とする色を示唆する」ように「前記期間中に遊技者が獲得した遊技媒体の数から遊技のために消費した遊技媒体の数を差し引いて得られる純増数が所定の数に達すると、その数に応じて報知態様が変化する」手段とすること、すなわち、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1及び周知技術(とりわけ、周知技術であることを立証する証拠でもある引用例2,3記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上によれば、本件補正は特許法17条の2第3項の規定、平成18年改正前の同法同条4項の規定及び同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月13日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項3】に記載された事項によって特定されるものである。ところで、請求項3には「遊技に必要な枚数の図柄」との記載があるところ、請求人は「遊技に必要な複数の図柄」の誤記であるとして、本件訂正において補正を行ったが、上記のとおり本件補正は却下された。
当審も、「遊技に必要な枚数の図柄」が「遊技に必要な複数の図柄」の趣旨であること及び「枚数」よりも「複数」の方が適切であると認める。
そこで、「枚数」を「複数」に訂正し、補正発明を次のとおり認定する。
「遊技に必要な枚数の図柄を可変表示する可変表示手段と、該可変表示手段の可変表示を制御する制御手段とを備えた遊技機において、
前記制御手段により、前記可変表示の停止時に表示すべき態様を決定し、その決定に基づいて前記可変表示手段を停止制御するが、遊技中所定の発生条件が成立してから所定の解除条件が成立するまでの期間中は、予め定めた第1の入賞役についてのみ前記決定に基づいた停止制御を行い、予め定めた第2の入賞役については前記決定に基づいた停止制御を行なわず、遊技者の停止操作に応じて前記可変表示を停止制御するように構成されると共に、
前記期間中に遊技者が獲得した遊技媒体の数から遊技のために消費した遊技媒体の数を差し引いて得られる純増数が所定の数に達すると、その数に応じて報知態様が変化する視覚的報知手段を備え、
前記視覚的報知手段は、前記報知態様により、遊技者が停止させるべき図柄を示唆することを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
「第2[理由]6」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明1の一致点は、補正発明と引用発明1の一致点と同一であり、相違点は次の点である。
〈相違点〉本願発明が「視覚的報知手段は、前記報知態様により、遊技者が停止させるべき図柄を示唆する」と限定するのに対し、引用発明1にはこの限定がない点。
そこで検討するに、「第2[理由]6」で述べたように、引用例1の記載エに基づいて、純増枚数が200枚に近いかどうかにより、狙うべき小役が異なり、かつ、遊技者の利益に結びつくように、遊技者が行うべき操作を報知することが遊技機における周知技術であり、とりわけ引用例2には報知内容こそ補正発明と異なるものの、「CTの終了前に、遊技者に有利な停止操作」を報知することが記載されているのだから、上記周知技術を採用して、「視覚的報知手段」により「報知態様により、遊技者が停止させるべき図柄を示唆する」ことは当業者にとって想到容易である。
したがって、本願発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-12 
結審通知日 2008-03-18 
審決日 2008-03-27 
出願番号 特願平11-50949
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 土屋 保光
渡部 葉子
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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