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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1177360
審判番号 不服2007-7440  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-13 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 特願2000-155359「機能性発光再帰反射シート」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月7日出願公開、特開2001-337213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年(2000年)5月25日に出願された特願2000-155359号の出願に係り、原審における平成17年11月28日付の拒絶理由通知に対し、平成18年2月1日付で意見書とともに同日付の手続補正書が提出されたところ、平成19年1月29日付で拒絶査定され、その後、前記拒絶査定を不服として、平成19年3月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年4月9日付の手続補正書が提出されたものである。

第2 平成19年4月9日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年4月9日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成19年4月9日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成18年2月1日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の、
「【請求項1】 少なくとも多数の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(プリズム層)と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射シートにおいて、プリズム層の下層に機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層、受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質及び樹脂成分、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる機能性発光層の順に積層されていることを特徴とする機能性発光再帰反射シート。
【請求項2】 該実質的に透明な結合剤層を形成する樹脂が、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂から選ばれる樹脂を含む樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の機能性発光再帰反射シート。」
の記載を、
「【請求項1】 少なくとも多数の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(プリズム層)と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射シートにおいて、プリズム層の下層に機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層、受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる機能性発光層の順に積層されており、結合剤層中には実質的に光を遮るものが存在せず、結合剤層と機能性発光層が直接積層されていることを特徴とする機能性発光再帰反射シート。
【請求項2】 該実質的に透明な結合剤層を形成する樹脂が、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂から選ばれる樹脂を含む樹脂であることを特徴とする請求項1記載の機能性発光再帰反射シート。」
と補正することを含むものである。

2 補正の適否の検討
(1)新規事項の追加禁止要件についての検討
本件補正が、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてした補正であると認めることができるので、本件補正は、いわゆる新規事項の追加の禁止要件に違背する補正ではないから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

(2)補正の目的要件についての検討
つぎに、本件補正が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否か、すなわち、同法第17条の2第1項第4号の規定により、拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内になされた特許請求の範囲についてする補正が、同法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に掲げる補正の目的に該当する補正であるか否かについて検討する。

ア 本件補正における補正の目的要件についての判断
(ア)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、特許請求の範囲の本件補正前の請求項1(以下、本件補正前の請求項1を「旧請求項1」といい、本件補正後の請求項1を「新請求項1」などということがある。請求項2についても同様。)の発明特定事項である「機能性発光層」について、「受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質及び樹脂成分、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる機能性発光層」との記載を、本件補正により「受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる機能性発光層」と補正するものである。
しかしながら、前記補正事項1の補正は、旧請求項1の「受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質及び樹脂成分、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる機能性発光層」の発明特定事項から、「及び樹脂成分」の文言を欠落させることにより、「受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる機能性発光層」のように、むしろ特許請求の範囲を拡張することとなる補正であるから、特許法第17条の2第4項の第2号に掲げるところの「特許請求の範囲の減縮」の事項を目的とする補正に該当する補正であるということができない。
そしてまた、前記補正事項1の補正は、同法第17条の2第4項の第1号、第3号及び第4号に掲げるところの「請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明」のいずれかの事項を目的とする補正に該当する補正であるということもできない。

(イ)補正事項2について
一方、本件補正の補正事項2は、特許請求の範囲の旧請求項1の発明特定事項である「実質的に透明な結合剤層」について、本件補正により「結合剤層中には実質的に光を遮るものが存在せず、」との限定を付加することにより、前記「実質的に透明な結合剤層」を限定することを目的とする、特許法第17条の2第4項の第2号に掲げるところの「特許請求の範囲の減縮」の事項を目的とする補正に該当する補正であるといえる。

(ウ)補正事項3について
そして、本件補正の補正事項3も、特許請求の範囲の旧請求項1の発明特定事項である「実質的に透明な結合剤層」について、本件補正により「結合剤層と機能性発光層が直接積層されている」との限定を付加することにより、前記「実質的に透明な結合剤層」を限定することを目的とする、特許法第17条の2第4項の第2号に掲げるところの「特許請求の範囲の減縮」の事項を目的とする補正に該当する補正であるといえる。

イ まとめ
以上のとおりであり、本件補正のうちの補正事項2及び補正事項3の補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」の事項を目的とする補正に該当するので、補正の目的要件については適法であるといえる。
しかし、本件補正のうちの補正事項1の補正は、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げるいずれかの事項を目的とする補正に該当するということができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する補正の目的要件に違反しているので、適法ということができない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正が、特許法第17条の2第4項に規定する補正の目的要件に違反しているから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」欄に前述した理由により、平成19年4月9付の手続補正が却下されたので、当審が審理すべき本願発明は、平成18年2月1日付手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特にその請求項1に係る発明(以下、これを「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである(上記「第2」の「1 補正の内容」欄を参照)。
「【請求項1】 少なくとも多数の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(プリズム層)と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射シートにおいて、プリズム層の下層に機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層、受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質及び樹脂成分、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる機能性発光層の順に積層されていることを特徴とする機能性発光再帰反射シート。」

2 引用刊行物及び記載事項
(1)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である特開平11-15415号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「自発光可能な再帰性反射シートおよびその製造方法」に関し、図面の記載とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、自発光可能な再帰性反射シートおよびその製造方法に関し、さらに詳しくはエレクトロルミネッセンス(EL)素子と、プリズム型再帰性反射体とを組み合わせた再帰性反射シートおよびその製造方法に関する。」
「【0004】 しかしながら、この様な反射シートは、外部から照射された光を反射して初めて観察者によって視認されるので、自動車のヘッドライト等の限られた光源(照明源)しか存在しない環境(近くに街灯がない道路脇など。)では、夜間の視認性の向上にも自ずと限界がある。従って、上記の様な環境では、歩行者に情報を知らせるための標識や看板としては不十分である。
【0005】 そこで、この様な問題を解決するために、反射シートとEL素子とを組み合わせた構成に関するいくつかの提案が、たとえば、特表平8-502131号公報(米国特許5,315,491号及び米国特許5,300,783号に対応)、国際出願公開WO92/14173(米国特許5,243,457号及び米国特許5,237,448に対応)等においてなされている。
これらの公報には、キューブコーナープリズム型再帰性反射材と、EL素子または/および燐光層とからなる面状発光体とを組み合わせ、比較的薄型の自発光可能な反射シートが開示されている。」
「【0008】 一方、EL素子の代わりに、燐光を発する裏打ちフィルムを、プリズム型再帰性反射材の背面に配置した反射シートも知られており、たとえば、米国特許5,415,911号、特開平7-218708号等の公報に開示されている。しかしながら、EL素子を用いたほどの発光輝度が得られない。」
「【0009】【発明が解決しようとする課題】 再帰性反射が生じない場合、すなわち、再帰性反射シートへの外部からの照明がほとんどない状態で、歩行者等の外部光源を持たない観察者が観察する場合の再帰性反射シートの輝度(自発光輝度)を高めることは、道路標識や屋外看板等の表示体の用途においては重要な課題の1つである。しかしながら、上記従来の反射シートでは、十分な再帰性反射性能を有しつつEL素子自らの発光輝度を高めることは困難であった。
そこで、本発明の目的は、十分な再帰性反射性(反射輝度)を有し、かつ外部光源からの照明がなくて再帰性反射が生じない場合でも、夜間の視認性が十分である様に発光輝度を高めた、自発光可能な再帰性反射シートを提供することにある。
【0010】【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明は、
A)(i)略平坦な表面、および複数のプリズム突起が配列された裏面を有する光透過性の再帰性反射体(1)と、
(ii)光透過性の樹脂からなるフィルムであって、背面側からのエンボス加工により隆起され、上記プリズム突起を、その表面が空気との界面を有した状態で密封する様に部分的に再帰性反射体(1)の裏面と接着し、複数の気密室(23)を形成するシール突部(21)を表面に有する裏打ちフィルム(2)とを含んでなる再帰性反射材(10)、並びに
B) 略平坦な発光面(31)が裏打ちフィルム(2)の背面ほぼ全体に亙って延在する様に配置されたエレクトロルミネッセンス素子(3)を含んでなる再帰性反射シート(100)において、
裏打ちフィルム(2)の背面のエンボス跡に相当する陥没部(22)を充塞しつつ裏打ちフィルム(2)の背面ほぼ全体に亙って密着し、かつエレクトロルミネッセンス素子(3)の発光面(31)ともほぼ全体に亙って密着した、光透過性のコンタクト層(4)をさらに含んでなる、自発光可能な再帰性反射シートを提供する。」
「【0011】 本発明の再帰性反射シートの一例を図1に示す。
本発明の再帰性反射シート(100)において、コンタクト層(4)は、EL素子(3)の略平坦な発光面(31)と裏打ちフィルム(2)の背面との間にエンボス跡に相当する陥没部(22)から形成される空洞が存在しないように、EL素子(3)と裏打ちフィルム(2)とを全面に亙って密着させる。
もしこの様な空洞が存在すると、EL素子(3)と裏打ちフィルム(2)との間に空気界面を形成し、この空気界面においてEL素子(3)からの光が反射され、裏打ちフィルム(2)(すなわち、再帰性反射材(10))へ到達する光量が減少する。すなわち、本発明の再帰性反射シートでは、この様な空気界面での反射による、EL素子(3)から再帰性反射材(10)へ到達する光量の減少を効果的に防止し、発光輝度を高めることができる。
また、裏打ちフィルム(2)の背面に透明導電層が直接密着し、陥没部(22)に応じた凹みを有する透明導電層が形成された場合、その透明導電層に密着した発光層に厚みムラが発生し、電界発光効率を低下させるおそれがあるが、コンタクト層(4)はこの様な発光効率の低下を防止し、発光輝度の低下を効果的に防止することができる。
【0012】 プリズム型再帰性反射体(1)(以下、単に「再帰性反射体」と呼ぶこともある。)は、プリズム突起をその表面が空気との界面を有した状態で密封する様に形成された複数の微小な気密室の部分において、高輝度で再帰性反射する。また、シール突部(21)は光透過性なので、EL素子(3)の発光光線が再帰性反射体(1)の全体(シール突部(21)が接着した領域及び気密室(23)がある領域)を透過し、シート全面が発光する。
【0013】 コンタクト層、裏打ちフィルム、および再帰性反射体は、光透過性の材料から形成する。これら3者からなる積層体の光透過率は、通常30%以上、好適には40%以上、特に好適には45%以上である。
コンタクト層、裏打ちフィルム、および再帰性反射体のうち、少なくとも1つが拡散反射性粒子を含み、かつこれらの積層体の光透過率が、好適には30?70%、特に好適には40?65%の範囲である場合、輝度の均一性が高められる。一方、拡散発光による輝度の均一性よりも、EL素子の自発光による輝度の向上効果を高めたい場合は、この積層体の光透過率を、好適には70%以上、特に好適には80%以上にする。なお、上記積層体の光透過率は、コンタクト層側からの光透過率(コンタクト層から再帰性反射体へ向かう光の透過率)である。
本明細書における、EL素子の構成材料を除く、再帰性反射材、コンタクト層等の「光透過率」は、JIS K 7105に準拠して測定された全光線透過率を意味する。またEL素子の構成材料の「光透過率」は、日本分光(株)社製の紫外/可視分光光度計「U best V-560」を使用し、550nmの光を用いて測定した光線透過率を意味する。
【0014】 上記3者それぞれの光透過率は、3者の積層体の光透過率が上記範囲になる様に適宜選択される。通常、それぞれの形成材料を、再帰性反射体は通常70%以上、裏打ちフィルムは通常20%以上、コンタクト層は通常30%以上、の光透過率を有するものから選択し、3者の積層体の光透過率が30%以上である様に構成する。なお、再帰性反射体の光透過率は、裏面からの光透過率(裏面から表面に向かう光線の透過率)である。
【0015】 一方、気密室を形成するためのシール突部が再帰性反射体の裏面に接着されるので、再帰性反射体の表面をほぼ全面に亙って略平坦にすることができる。再帰性反射体の表面がほぼ全面に亙って略平坦であると、その表面に、通常の印刷手段により標識表示を設けることが容易である。すなわち、本発明の再帰性反射シートは、反射性標識の構成材料として好ましく用いることができる。」
「【0017】【発明の実施形態】 再帰性反射シート 本発明の再帰性反射シートの好適な形態を、図1を参照して説明する。
再帰性反射シート(100)は、プリズム型の再帰性反射材(10)、EL素子(3)、およびそれらの間に介在するコンタクト層(4)を含んでなる。
プリズム型の再帰性反射材(10)は、(i)略平坦な表面、および複数のプリズム突起(24)が配列された裏面を有する光透過性の再帰性反射体(1)と、(ii)光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)とを含んでなり、両者が部分的に接着され、複数の微小な気密室(23)が形成されている。
プリズム突起(24)の表面は空気界面を有した状態で密封されている。シール突部(21)は、裏打ちフィルム(2)の前駆体である樹脂フィルムに、その背面側からエンボス加工を施し、樹脂を表面側に隆起させて形成し、再帰性反射体(1)と部分的に接着する。したがって、裏打ちフィルム(2)の背面には、エンボス加工の痕跡に相当する陥没部(22)が存在する。
EL素子(3)は、発光面(31)が裏打ちフィルム(2)の背面ほぼ全体に亙って延在する様に配置されている。EL素子の詳細は後述する。
【0018】
コンタクト層(4)は、陥没部(22)を充塞しつつ裏打ちフィルム(2)の背面ほぼ全体に亙って密着し、かつ、平坦面(41)においてEL素子(3)の発光面(31)ともほぼ全体に亙って密着している。
一方、再帰性反射材(10)は、再帰性反射体(1)の表面に積層された保護フィルム(5)をさらに有することができる。また、再帰性反射シート(100)をアルミニウム標識板等の基板へ貼り付ける作業を容易にするために、接着剤層(6)を、EL素子(3)の背面(発光面(31)と対向する反対面)に設けることができる。
【0019】
本発明の再帰性反射シートは、たとえば、予め製造された再帰性反射材(エンボス加工後)の背面にまずコンタクト層を形成し、続いてコンタクト層の上に透明導電層を形成し、引き続き、透明導電層の上に発光層等のEL素子の構成部材を順に積層して、コンタクト層上にEL素子を配置することにより製造する。この場合、透明導電層の表面(コンタクト層との密着面)が、上記発光面に相当する。また、完成した再帰性反射材の裏打ちフィルムの背面と、完成したEL素子の発光面とを、コンタクト層を介して接着することによっても製造できる。
【0020】 プリズム型再帰性反射体 プリズム型再帰性反射体は、通常光透過率が70%以上、好適には80%以上、特に好適には90%以上の樹脂から形成される。この様なプリズム型再帰性反射体は、再帰性反射体の透明性を低下させる様な金属反射膜を用いることなく、高い反射輝度を実現でき、かつEL素子の発光と再帰性反射との相乗効果により、シート全面の輝度を均一に向上させることができる。
この様なプリズム型再帰性反射体の製造方法は、特開昭60-100103号、特表平6-50111号、米国特許4,775,219等に開示の方法が採用できる。たとえば、所定の形状および配列を有する金型を用い、樹脂を成形して作製することができる。
【0021】 再帰性反射体のプリズム突起の好ましい形状は、「キューブコーナー」と呼ばれる三角錐である。「キューブコーナー」は、再帰性反射体の反射輝度と広角度観測性とを容易に高める。三角錐状素子の好ましい寸法は、底面の辺が0.1?3.0mm、高さが25?500μmの範囲である。底面の三角形は、通常、正三角形または二等辺三角形である。
再帰性反射体の樹脂としては、屈折率が1.4?1.7の範囲の透明性の高いものが好ましい。たとえば、アクリル系樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、ポリカーボネート等である。また、本発明の効果を損なわない限り、上記樹脂は、紫外線吸収剤、吸湿剤、着色剤(蛍光染料を含む)、燐光物質、熱安定剤、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0022】 裏打ちフィルム 裏打ちフィルムは、通常光透過率が20%以上、好適には30%以上の樹脂フィルムから形成する。裏打ちフィルムを拡散部材としての機能させる場合は、光透過率は20?80%、好適には25?75%の範囲である。一方、拡散発光による輝度の均一性よりも、EL素子の自発光による輝度の向上効果を高めたい場合、光透過率は、好適には80%以上、特に好適には90%以上である。
樹脂フィルムには、ポリエステル、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリブチレート等を含んでなるフィルムが使用できる。また、本発明の効果を損なわない限り、上記樹脂は、紫外線吸収剤、吸湿剤、着色剤(蛍光染料を含む)、燐光物質、熱安定剤、拡散反射性粒子等の添加剤を含有していてもよい。たとえば、拡散反射性粒子としては、二酸化チタン等の白色無機粒子、ポリスチレン等のポリマー粒子が使用できる。
【0023】 裏打ちフィルムの厚みは、通常10?1,000μmの範囲である。フィルムの軟化点は、通常80?250℃の範囲である。
樹脂フィルムは、たとえば押出法により製造する。また、本発明の効果を損なわない限り、樹脂フィルムとして、2以上の層を含む多層フィルムを用いることができる。」
「【0049】【実施例】
実施例1 本実施例の再帰性反射シートは、図2に示した構造の積層型EL素子(3)と、図1に示した構造の再帰性反射材(10)とを、コンタクト層(4)を介して密着した構造を有する。」
「【0059】
比較例1 コンタクト層を形成しない以外は、実施例1と同様にして本比較例の再帰性反射シートを作製した。この反射シートの発光輝度および反射輝度を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0060】
比較例2 コンタクト層を用いず、かつITO層を次に示すペーストを塗布して形成した以外は、実施例1と同様にして本比較例の再帰性反射シートを作製した。
本比較例で使用したITOペーストは、東北化工(株)社製「SC-109」であり、これを、裏打ちフィルムの背面にバーコータを用いて塗布、乾燥してITO層を形成した。この方法で形成したITO層は、裏打ちフィルム背面の陥没部を埋めることはできたが、陥没部から形成された空洞が多数存在していた。この反射シートの発光輝度および反射輝度を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0061】【表1】 再帰性反射シートの発光輝度および反射輝度
実施例 EL素子点灯時の自発光輝度 EL素子未点灯時の反射輝度
番号 [cd/m^(2)] [cd/lux/m^(2)] 実施例1 33.77 543
比較例1 11.73 546
比較例2 9.66 541
【0062】 【発明の効果】 本発明によれば、十分な再帰性反射輝度(たとえば、500cd/lux/m^(2))を有し、かつ外部光源からの照明がなく再帰性反射が生じない場合でも、夜間の視認性が十分であるレベルまで発光輝度が高められた、自発光可能な再帰性反射シートを提供することができる。」

そうしてみると、引用刊行物1の上記摘記事項及び図面の図示からみて、前記引用刊行物1には、次の発明(以下、これを「引用発明1」という。)の記載が認められる。
「プリズム型の再帰性反射体(1)を含む再帰性反射材(10)とエレクトロルミネッセンス素子(3)とを組み合わせた自発光可能な再帰性反射シート(100)において、
前記再帰性反射材(10)が、略平坦な表面と複数のプリズム突起が配列された裏面とを有する光透過性のプリズム型の再帰性反射体(1)と、前記再帰性反射体(1)の表面に積層された保護フィルム(5)と、前記再帰性反射体(1)の前記プリズム突起の表面が空気との界面を有した状態で密封されるように部分的に前記再帰性反射体(1)の裏面の前記プリズム突起の表面と接着し、複数の気密室(23)を形成する光透過性のシール突部(21)をその表面に有する光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)及び光透過性のコンタクト層(4)とで構成されるとともに、
前記光透過性のコンタクト層(4)が、前記裏打ちフィルム(2)の背面のエンボス跡に相当する陥没部(22)を充塞しつつ裏打ちフィルム(2)の背面ほぼ全体に亙って密着し、かつほぼ全体に亙って略平坦な発光面(31)が延在するように配置されたエレクトロルミネッセンス素子(3)の前記発光面(31)ともほぼ全体に亙って密着する平坦面(41)を有してなる、十分な再帰性反射性(反射輝度)を有し、かつ外部光源からの照明がなくて再帰性反射が生じない場合でも夜間の視認性が十分であるように発光輝度を高めた自発光可能な再帰性反射シート」

(2)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3036060号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「再帰反射装置」に関し、図面の記載とともに、次の技術事項が記載されている。
「【0001】【考案の属する技術分野】 この考案は、光を光源に返す再帰反射装置に関する。」
「【0002】【従来の技術】 従来の再帰反射装置としては、図10に示すように、裏材100の上に空気層101を介在させてマイクロプリズムシート102を設けたものが知られている。マイクロプリズムシート102はシートの裏面に微小なプリズム、すなわちマイクロプリズムを多数形成したものであり、入射光がプリズムの3つの面をはね返り、入射方向に反射するようになっている。
【0003】【考案が解決しようとする課題】 従来の装置の反射輝度は優れたものであるが、光が当らない状態では当然反射光を見ることができない。
【0004】 そこで、この考案は、光が入射したときは勿論のこと、光が入射しない暗闇でも発光させることのできる再帰反射装置を提供することを目的とする。
【0005】【課題を解決するための手段】 上述の目的を達成するため、この考案は、可撓性を有する裏材層上に蓄光塗料を塗布又は蓄光塗料を上面に塗布し若しくは配合したフィルムを重ねて蓄光層を形成し、蓄光層上に光がプリズムの3つの面をはね返り入射方向に反射するとともに可撓性並びに光の透過性を有し上面平坦で下面に多数の微小なプリズムを有する再帰反射層を形成したものである。」
「【0006】【考案の実施の形態】 以下に、この考案の好適な実施例を図面を参照にして説明する。
【0007】 図1に示す実施例では、可撓性を有する裏材層1上に蓄光塗料を塗布又は蓄光塗料を上面に塗布し若しくは配合したフィルムを重ねて蓄光層2を形成し、蓄光層2上に光がプリズムの3つの面をはね返り入射方向に反射するとともに可撓性並びに光の透過性を有し上面平坦で下面に多数の微小なプリズム3Aを有する再帰反射層3を形成したものである。この再帰反射層3の下面にプリズム3Aが存在するので蓄光層2との間に空気層が形成される。
【0008】 図2は、再帰反射層3のプリズム3Aの個所における再帰反射作用を説明するための図であり、光源からの入射光はプリズム3Aに入射して再び光源へ再帰反射光として戻るようになっている。この再帰反射層3は、1cm^(2)あたり4,00?8,000個のプリズム3Aを形成した塩化ビニル樹脂から形成してある。この再帰反射層3を耐候性のある塩化ビニル樹脂で形成したものでは、鮮やかな色彩を施すこともでき、高輝度性を有し衝撃に強く、柔軟性にも富むものである。また、この塩化ビニル樹脂で形成された再帰反射層3は光の透過性を有し、雨の日も昼夜も性能的な劣化が生じない。
【0009】 蓄光層2を形成するための蓄光塗料中に含まれる螢光体は、ストロンチウムアルミネートを母体結晶とし、発光中心形成のための付活剤として、ヨーロピウムとデスプロシウムを含むものである。この螢光体は光を吸収蓄積して発光するものであり、250nm?400nmの波長範囲の紫外線で良く光る特性を有している。上述したような螢光体は、還元性雰囲気の中で1200℃に3時間加熱して得られた焼結体を粉砕し、篩別分級して作られるものである。従来の夜光塗料の螢光体に比較して、この螢光体は、放射性物質を含まずとも1晩中光り、輝度が10倍以上明るく、しかも10倍以上長く光るものである。また、照射する光が強い程よく光り、耐光性が強く、屋外でも使用することができる。
【0010】 図3は、裏材層1を塩化ビニルフィルムから形成し、再帰反射層3を軟質塩化ビニル樹脂から形成し、これらの間に蓄光塗料を塗布したフィルム(蓄光層2)を高周波ウェルダーを用いて封入したものを示す。溶着部分を符号Wで示す。」
「【0012】 従来の硫化亜鉛螢光体とは全く異なる組成の螢光体として、前述したようにストロンチウムアルミネートを母体結晶とし、発光中心形成のための付活剤として、ヨーロピウムとデスプロシウムを含む螢光体で、還元性雰囲気の中で1200℃に3時間加熱して得られた焼結体を、粉砕し、篩別分級して作られたものを使用した蓄光層2は、残光特性が図7に示す実線のように従来(点線で示す)のものに比べて著しく向上した。光の照射をやめた後の蓄光塗料の発光を残光といい、この残光特性が蓄光塗料の生命である。この図7に示す実験データは、200mg/cm^(2)の厚さの試料に、常用光源D_(65)の200ルクスの光を4分間照射した後、その残光輝度を測定したものである。10分後の輝度はこの蓄光塗料では200mcd/m^(2)であるのに対し、従来のものは20mcd/m^(2)であった。」

3 当審の判断
(1)対比
本願発明1と上記引用発明1とを対比すると、引用発明1における「複数のプリズム突起」、「前記再帰性反射体(1)の表面に積層された保護フィルム(5)」、「再帰性反射材(10)」及び「自発光可能な再帰性反射シート(100)」のそれぞれが、本願発明1の「多数の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(プリズム層)」、「反射素子層の上層に設置された表面保護層」、「三角錐型キューブコーナー再帰反射シート」及び「機能性発光再帰反射シート」のそれぞれに相当することは明らかである。
そして、引用発明1の「略平坦な表面と複数のプリズム突起が配列された裏面とを有する光透過性のプリズム型の再帰性反射体(1)」は、「複数のプリズム突起」と該「複数のプリズム突起」を支持する略平坦な表面を有する部分とから成っていることから、引用発明1の前記「複数のプリズム突起を支持する略平坦な表面を有する部分」が、本願発明1の「保持体層」に相当し、引用発明1の前記「略平坦な表面と複数のプリズム突起が配列された裏面とを有する光透過性のプリズム型の再帰性反射体(1)」が、本願発明1の「反射素子層」に相当する。
また、引用発明1の「エレクトロルミネッセンス素子(3)」は、本願発明1の「機能性発光層」と同様に、外部光源からの照明がなくて再帰性反射が生じない場合でも発光輝度を高めて夜間の視認性が十分であるように自発光をさせる機能部分であるから、引用発明1の「エレクトロルミネッセンス素子(3)」と本願発明1の「機能性発光層」の両者は、ともに「機能性発光層」である点で一致する。
しかして、引用発明1では、「前記再帰性反射体(1)の前記プリズム突起の表面が空気との界面を有した状態で密封されるように部分的に前記再帰性反射体(1)の裏面の前記プリズム突起の表面と接着し、複数の気密室(23)を形成する光透過性のシール突部(21)をその表面に有する光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)及び光透過性のコンタクト層(4)」における前記「光透過性のコンタクト層(4)」の部分が、裏打ちフィルム(2)の背面のエンボス跡に相当する陥没部(22)を充塞しつつ裏打ちフィルム(2)の背面ほぼ全体に亙って密着し、かつほぼ全体に亙って略平坦な発光面(31)が延在するように配置されたエレクトロルミネッセンス素子(3)の前記発光面(31)ともほぼ全体に亙って密着する平坦面(41)を有してなるとされていることから、引用発明1の前記「光透過性のコンタクト層(4)」は、引用発明1の「機能性発光層」であるエレクトロルミネッセンス素子(3)の発光面(31)の全面を覆っていることになるので、引用発明1の「光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)及び光透過性のコンタクト層(4)」が、本願発明1の「機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層」に対応しているといえる。

そうすると、本願発明1と引用発明1とは、
「少なくとも多数の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(プリズム層)と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射シートにおいて、プリズム層の下層に実質的に透明な結合剤層、機能性発光層の順に積層されている機能性発光再帰反射シート」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点1:プリズム層の下層に積層される実質的に透明な結合剤層が、本願発明1では「機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層」であるのに対し、引用発明1では「光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)及び光透過性のコンタクト層(4)」である点。
相違点2:機能性発光層が、本願発明1では「受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質及び樹脂成分、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる」ものであるのに対し、引用発明1では「エレクトロルミネッセンス素子(3)」である点。

(2)相違点についての検討
ア 相違点1について
(ア) 引用発明1の「裏打ちフィルム(2)」と「コンタクト層(4)」は、光透過性のプリズム型の再帰性反射体(1)と機能性発光層であるエレクトロルミネッセンス素子(3)との間に介在しているものであるが、前記「裏打ちフィルム(2)」と「コンタクト層(4)」は、いずれも光透過性であるから、機能性発光層であるエレクトロルミネッセンス素子(3)からの発光の際に光の出射を阻害する要因にならないことが明らかである。
しかも、引用発明1の「コンタクト層(4)」は、裏打ちフィルム(2)の背面のエンボス跡に相当する陥没部(22)を充塞しつつ裏打ちフィルム(2)の背面ほぼ全体に亙って密着し、かつほぼ全体に亙って略平坦な発光面(31)が延在するように配置されたエレクトロルミネッセンス素子(3)の前記発光面(31)ともほぼ全体に亙って密着する平坦面(41)を有してなるものであり、そして、前記「コンタクト層(4)」は、裏打ちフィルム(2)の背面にあるエンボス跡に相当する陥没部(22)をコンタクト層(4)で充塞して、裏打ちフィルム(2)の不均一な厚みを平坦化することにより、機能性発光層であるエレクトロルミネッセンス素子(3)から発光する光を、裏打ちフィルム(2)の背面のエンボス跡に相当する陥没部(22)の部分で散乱させずに透過させる役割を担っているものであるといえる。
さすれば、引用発明1における光透過性のプリズム型の再帰性反射体(1)と機能性発光層であるエレクトロルミネッセンス素子(3)との間に介在されている前記「裏打ちフィルム(2)」と「コンタクト層(4)」とは、「一体化された光透過層」であるといえるものである。そして、引用発明1は、かかる「一体化された光透過層」により、機能性発光層であるエレクトロルミネッセンス素子(3)と、光透過性のプリズム型の再帰性反射体(1)との間の光の透過を円滑にする機能を有しているといえるから、「一体化された光透過層」として把握できる引用発明1の「光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)及び光透過性のコンタクト層(4)」は、とりもなおさず、本願発明1の「プリズム層の下層に積層されるとともに機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層」に他ならないものであるといえる。

(イ) ところで、引用刊行物1には、引用発明1に係る実施例1の記載の他にも、比較例1として、その段落【0059】に、「コンタクト層を形成しない以外は、実施例1と同様にして本比較例の再帰性反射シートを作製した。この反射シートの発光輝度および反射輝度を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。」が記載されている。
かかる引用刊行物1の比較例1に係る発明は、引用発明1における「コンタクト層(4)」を省いたものに相当し、前記比較例1に係る発明は、引用発明1から「コンタクト層(4)」を省いたところの「プリズム型の再帰性反射体(1)を含む再帰性反射材(10)とエレクトロルミネッセンス素子(3)とを組み合わせた自発光可能な再帰性反射シート(100)において、前記再帰性反射材(10)が、略平坦な表面と複数のプリズム突起が配列された裏面とを有する光透過性のプリズム型の再帰性反射体(1)と、前記再帰性反射体(1)の表面に積層された保護フィルム(5)と、前記再帰性反射体(1)の前記プリズム突起の表面が空気との界面を有した状態で密封されるように部分的に前記再帰性反射体(1)の裏面の前記プリズム突起の表面と接着し、複数の気密室(23)を形成する光透過性のシール突部(21)をその表面に有する光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)とで構成されるとともに、前記光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)が、ほぼ全体に亙って略平坦な発光面(31)が延在するように配置されたエレクトロルミネッセンス素子(3)の前記発光面(31)とほぼ全体に亙って接してなる、十分な再帰性反射性(反射輝度)を有し、かつ外部光源からの照明がなくて再帰性反射が生じない場合でも夜間の視認性が十分であるように発光輝度を高めた自発光可能な再帰性反射シート」の構成を有するものである。
そうすると、比較例1に係る発明における前記「光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)」は、本願発明1の「プリズム層の下層に積層されるとともに機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層」に他ならない。

(ウ) こうしてみると、上記「(ア)」欄に先述した引用発明1の構成、及び、上記「(イ)」欄に前述した引用刊行物1における比較例1に係る発明の構成からみて、引用発明1の「光透過性の樹脂からなる裏打ちフィルム(2)及び光透過性のコンタクト層(4)」を、本願発明1の「プリズム層の下層に積層されるとともに機能性発光層全面を覆う実質的に透明な結合剤層」に変更することは、引用刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易に導くことができたものといえる。

イ 相違点2について
上記引用刊行物2に、「可撓性を有する裏材層上に蓄光塗料を塗布又は蓄光塗料を上面に塗布し若しくは配合したフィルムを重ねて蓄光層を形成し、蓄光層上に光がプリズムの3つの面をはね返り入射方向に反射するとともに可撓性並びに光の透過性を有し上面平坦で下面に多数の微小なプリズムを有する再帰反射層を形成した光を光源に返す再帰反射装置」が記載されている。
また、上記引用刊行物1の段落【0005】に、「キューブコーナープリズム型再帰性反射材と、EL素子または/および燐光層とからなる面状発光体とを組み合わせ、比較的薄型の自発光可能な反射シート」について記載されており、そして、上記引用刊行物1の段落【0008】にも、「EL素子の代わりに、燐光を発する裏打ちフィルムを、プリズム型再帰性反射材の背面に配置した反射シート」について記載されている。
そうしてみると、引用発明1の「機能性発光層」としての「エレクトロルミネッセンス素子(3)」に代えて、引用刊行物2に記載されている「可撓性を有する裏材層上に蓄光塗料を塗布又は蓄光塗料を上面に塗布し若しくは配合したフィルムを重ねて形成した蓄光層」、あるいは、引用刊行物1に記載されている「燐光層とからなる面状発光体」または「燐光を発する裏打ちフィルム」を採用することにより、引用発明1の「機能性発光層」を、本願発明1の前記相違点2に係る「受光した光を蓄光して徐々に放出発光する蓄光性発光物質及び樹脂成分、または、受光した光によって励起され蛍光を発する蛍光発光物質及び樹脂成分を含有してなる」ものとすることは、当業者が容易に想到できることである。

そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明1及び引用刊行物2に記載の発明から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

ウ まとめ
したがって、本願発明1は、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用刊行物2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-06 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願2000-155359(P2000-155359)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 勝久下村 一石森口 良子  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森内 正明
安田 明央
発明の名称 機能性発光再帰反射シート  

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