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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 B60S |
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管理番号 | 1178046 |
審判番号 | 無効2006-80242 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-11-22 |
確定日 | 2008-04-07 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3786597号「洗車装置」の特許無効審判事件についてされた平成19年5月25日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成19年(行ケ)第10245号、平成19年10月5日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件特許第3786597号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成13年10月30日に出願され、平成18年3月31日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。 (2)これに対し、請求人(タケウチテクノ株式会社)より、請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする趣旨の審判請求がなされ、以下の理由を挙げて、請求項1ないし3に係る発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とすべきである旨主張すると共に、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。 ・理由1 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証のいずれかに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 ・理由2 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第5号証のいずれかに記載された発明及び甲第6号証または甲第7号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 ・理由3 請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第5号証のいずれかに記載された発明及び甲第6号証または甲第7号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3)被請求人(株式会社ヤスヰ)は、平成19年2月9日付けで本件特許明細書の訂正の請求(以下、「先の訂正の請求」という。)をした。 (4)当審より訂正拒絶理由が通知された後、平成19年5月25日付けで、請求項1ないし3に係る発明の特許を無効とする審決がなされた。 (5)これに対し、被請求人より、平成19年7月4日付けで知的財産高等裁判所に該審決に対する訴えが提起されると共に、上記訴えの提起から90日以内の平成19年10月1日付けで訂正審判(訂正2007-390112)が請求された。 (6)その後、知的財産高等裁判所において、特許法第181条第2項の規定に基づく審決取消の決定(平成19年(行ケ)第10245号、平成19年10月5日決定)がなされ、この決定が確定した。 (7)当審での再度の審理にあたり、被請求人に対し、特許法第134条の3第2項の規定による訂正の請求のための期間指定通知をしたが、被請求人からは指定された期間内に訂正の請求がなされなかったため、同条第5項の規定により、上記訂正審判の訂正請求書に添付した訂正明細書を同条第3項の規定により援用した同条第1項の訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求がされたものとみなすと共に、上記訂正審判の請求は同条第4項の規定により取り下げられたものとみなし、さらに、上記先の訂正の請求は同法第134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなすこととなった。 (8)一方、請求人に対しては、上記本件訂正の請求に対し、期間を指定して弁駁書を提出する機会を与えたが、請求人からは何等の応答もなされなかった。 (9)被請求人が求めた本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、即ち、以下のa)ないしk)のとおりに訂正しようとするものである。 a)特許請求の範囲の請求項1の「車両検出手段を洗車機に設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させるための制御手段を有してなり、」を、 「車両検出手段と、車形を検出するための車形検出器とを洗車機に設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させ、且つ、車形検出器の検出した車形に応じて、洗車を行うための制御手段を有してなり、」に訂正する。 b)同請求項1の「検出状態を切替え可能にし、前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置した」を、 「検出状態を切替え可能にし、前側スイッチは、車形検出器を共用し、前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置し、」に訂正する。 c)同請求項1の「ことを特徴とする洗車装置。」を、 「制御手段が前側スイッチと後側スイッチの検出結果に基づき、車両を正規停止位置に停止させたとき、車形検出器は車両の前端側の検出域にあり、制御手段はフレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付けてからフレームを再度前進させて車形検出器による車形の検出に入るように制御することを特徴とする洗車装置。」に訂正する。 d)同請求項2を削除する。 e)同請求項3を削除する。 f)明細書の段落【0008】における「請求項1の発明は、洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車装置において、車両の前端部が正規停止位置とその前後の2位置のいずれかにあるかを検出するための車両検出手段を洗車機に設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させるための制御手段を有してなり、車両検出手段が、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチと後側スイッチとからなり、前側スイッチと後側スイッチは車両の前端部が正規停止位置を通過するときにそれらの検出状態を切替え可能にし、前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置したものである。」を、 「請求項1の発明は、洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車装置において、車両の前端部が正規停止位置とその前後の2位置のいずれかにあるかを検出するための車両検出手段と、車形を検出するための車形検出器とを洗車機に設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させ、且つ、車形検出器の検出した車形に応じて、洗車を行うための制御手段を有してなり、車両検出手段が、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチと後側スイッチとからなり、前側スイッチと後側スイッチは車両の前端部が正規停止位置を通過するときにそれらの検出状態を切替え可能にし、前側スイッチは、車形検出器を共用し、前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置し、制御手段が前側スイッチと後側スイッチの検出結果に基づき、車両を正規停止位置に停止させたとき、車形検出器は車両の前端側の検出域にあり、制御手段はフレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付けてからフレームを再度前進させて車形検出器による車形の検出に入るように制御するものである。」に訂正する。 g)同段落【0009】を削除する。 h)同段落【0010】における「請求項3の発明は、請求項1の発明において更に、」を、「参考例は、前側スイッチが車形検出器を共用するのではなく、」に訂正する。 i)同段落【0015】における「請求項2の発明によれば」を、「また、請求項1の発明によれば」に訂正する。 j)同段落【0017】における「請求項3の発明」を、「参考例」に訂正する。 k)同段落【0019】、【0052】、【0053】、【0056】、【0057】、【0058】及び【図面の簡単な説明】における「第2実施形態」を、「参考例」に訂正する。 2.本件訂正の適否に対する判断 (1)これらの訂正事項について以下検討する。 ・上記a)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「洗車機」に「設置」する対象構成として、「車両検出手段」の他に「車形を検出するための車形検出器」を追加限定すると共に、「制御手段」が「車形検出器の検出した車形に応じて、洗車を行う」ことを追加限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、かつ、本件特許明細書の段落【0021】の「洗車機11は、走行位置検出器16、車形検出器17、制御装置18を有している。」、段落【0023】の「車形検出器17は車両1の車形を検出する。」及び段落【0024】の「制御装置18は、・・・車形検出器17の検出結果を参照して上述の出力機器の作動を車形に応じて制御し、車両1の車体及び装着品の洗車を行なう。」の各記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。 ・上記b)の訂正は、同請求項1の「前側スイッチ」について、「車形検出器を共用」するスイッチに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、かつ、本件特許明細書の段落【0028】の「具体的には、前側スイッチ31は、前述した車形検出器17を共用し、」の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。 ・上記c)の訂正は、同請求項1の「制御手段」について、「制御手段が前側スイッチと後側スイッチの検出結果に基づき、車両を正規停止位置に停止させたとき、車形検出器は車両の前端側の検出域にあり、制御手段はフレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付けてからフレームを再度前進させて車形検出器による車形の検出に入るように制御する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、かつ、本件特許明細書の段落【0040】の「尚、本実施形態の洗車装置10にあっては、上述(1)、(2)により車両1を正規停止位置に停止させてから、洗車機11により洗車開始するとき、まず車形検出器17による車形の検出に入るに際し、車形検出器17たる前側スイッチ31が既に車両1の前端側の検出域にある。従って、フレーム11Aを車両1に対し一旦後退させて車形検出器17を車両1の前端より後方に位置付け、車形検出器17が車両1を全く検出しなくなった位置からフレーム11Aを再度前進させて車形検出器17による車形の検出に入る必要がある。」の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。 ・上記d)及びe)の訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、かつ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。 ・上記f)ないしk)の訂正は、上記a)ないしe)の訂正との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、かつ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。 そして、上記いずれの訂正も、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 (2)よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。 3.本件発明に対する判断 (1)本件発明 本件発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車装置において、 車両の前端部が正規停止位置とその前後の2位置のいずれかにあるかを検出するための車両検出手段と、車形を検出するための車形検出器とを洗車機に設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させ、且つ、車形検出器の検出した車形に応じて、洗車を行うための制御手段を有してなり、 車両検出手段が、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチと後側スイッチとからなり、前側スイッチと後側スイッチは車両の前端部が正規停止位置を通過するときにそれらの検出状態を切替え可能にし、 前側スイッチは、車形検出器を共用し、 前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置し、 制御手段が前側スイッチと後側スイッチの検出結果に基づき、車両を正規停止位置に停止させたとき、車形検出器は車両の前端側の検出域にあり、制御手段はフレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付けてからフレームを再度前進させて車形検出器による車形の検出に入るように制御することを特徴とする洗車装置。」 (2)甲号証 a)甲第1号証(特開昭57-158150号公報)には、「洗車設備」に関し、図面と共に、次の事項が記載されている。 ・「本発明は・・・、車両進入通路の進入口および/または退出部付近に固定設置した車両外部洗浄装置と、・・・車両進入通路に沿って配置した複数の車両検知器と、車両進入通路の側部に配置した車両誘導用の案内指示灯と、マイクロコンピュータ内蔵の制御装置とを含み、該制御装置は車両検知器からの情報に基づき車両の進入・退出およびその他の動作状況を判断して車両外部洗浄装置・・・の作動を制御するとともに案内指示灯を介し車両に対して誘導指令を発し、車両の運転者のみの操作による洗車作業を行なえるようにしたことを特徴とする、ごみ収集車用洗車設備を提供せんとするものである。」(2頁右上欄9行?同頁左下欄3行) ・「1は車両進入通路で、左右に適宜離間して前後方向に突設した左・右突出部1a・1bによりごみ収集車W(以後、車両Wと呼称する」に対する案内を行っている。」(2頁左下欄8?11行) ・「P1?P5は第1?第5車両検知器としての直接反射型光電管で、各々投光部と受光部を内蔵しており、このうち光電管P1,P2・P3,P5はそれぞれ前記進入口1c,中央平坦部1eの前方および後方位置,および退出口1dにおいて左突出部1aに立設したポスト35・36・37・38上端に取付け、右方水平方向に光線を投射し、車両進入通路1を通過する車両Wを検知するごとくしてある。」(3頁左下欄7?15行) ・「39・40は第1および第2案内指示灯で、それぞれ前記進入口1c並びに前記第2外部洗浄装置7より若干後方位置において右突出部1bに立設したポスト41・42上端に固設してある。 このうち・・・第2案内指示灯40は「前進して下さい」,「停止して下さい」・・・「退出して下さい」の6個の表示ランプL3・L4・L5・L6・L7・L8をもっている。」(3頁右下欄4?16行) ・「43はマイクロコンピュータ内蔵の制御装置で、前記光電管P1?P5およびポテンショメータ18等から情報を入力し、前記第1および第2案内指示灯39・40・・・に対する種々の作動指令を発し、洗車設備全体を総合的に制御するものである。」(3頁右下欄17行?4頁左上欄3行) ・「(5) 車両Wの前部が所定停止位置に達したかを判断する。光電管P2から車両検知の情報を入力して「YES」と判断し、前記表示ランプL3に消灯指令を、また表示ランプL4「停止して下さい」に対し点灯指令をそれぞれ与える。」(4頁左下欄5?9行) ・「尚、前述実施例において車両検知器として直接反射型の光電管P1?P5を使用したが、投光部と受光部を左右に離間して設けた光電管でもよく、また光電管に代えて直接反射型の超音波発生管を使用してもよい。」(5頁左下欄15?19行) ・「また前述実施例において、車両Wが所定位置に停止したことを再確認するために前記光電管P2より若干距離前方位置に新たに光電管P2′(第1図二点鎖線)を設け、さらに前記第2案内指示灯40に新たに「若干後退して下さい」の表示ランプを設ければ、車両Wの前部が光電管P2とP2′との間に正確に停止するように制御装置43を介して車両Wを正確に誘導することができる。」(5頁右下欄16行?6頁左上欄3行) ・また、第1図には、洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車設備において、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに光電管P2と光電管P2′を設置した構成が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車設備において、 車両の前部が所定停止位置に達したかを検知する車両検知器をポストに設け、車両検知器からの情報に基づき、案内指示灯に対し車両を洗車位置に停止するように誘導するための制御装置を有してなり、 車両検知器が、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した光電管P2と光電管P2′とからなり、光電管P2と光電管P2′は車両の前部が所定停止位置に停止するように誘導するための情報を出力し、 光電管P2と光電管P2′を洗車設備の車両進入通路に沿って配置した洗車設備。」 b)甲第2号証(特開平11-59341号公報)には、「洗車設備」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0019】また、上記ステップ-3において光電スイッチ4がオンしたとき、報知ランプ11へ駆動信号を出力して、報知ランプ11を点灯させる(ステップ-8)。ドライバは、この報知ランプの点灯により被洗浄車両2が規定位置に到達したことに気付き、迅速に被洗浄車両2を停止させる。」 ・また、図1には、車両検出手段である光電スイッチ4を洗車機本体1の側面視で、そのフレームの内部に配置した構成が示されている。 c)甲第3号証(特開平11-20627号公報)には、「洗車機」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0024】17a・bおよび18a・bは本体1の前後にそれぞれ備えられる車体検出器で、洗車スペースを挾むように発光器17a・18aと受光器17b・18bとをそれぞれに対向させ、両者間で授受されるビーム信号が自動車によって遮断されたのを検知して車体検出を行う。」 ・また、図2には、車両検出手段である発光器17a・18aと受光器17b・18bを洗車機本体1の側面視で、そのフレームの内部に配置した構成が示されている。 d)甲第4号証(特開平10-138880号公報)には、「洗車装置」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0016】11は本体1前面に設けられる進入誘導灯、・・・16a・bおよび17a・bは本体1の前後にそれぞれ備えられる車体検出器で、洗車スペースを挾んむように発光器16a・17aと受光器16b・17bとをそれぞれに対向させ、両者間で授受されるビーム信号が自動車によって遮断されたのを検知して車体検出を行う。」 ・また、図3及び図4には、車両検出手段である発光器16aと受光器16bを洗車装置本体1の側面視で、そのフレームの内部に配置した構成が示されている。 e)甲第5号証(特開平6-219243号公報)には、「洗車装置」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0013】7は本体1前面に設けられる進入誘導灯、・・・12a・bおよび13a・bは本体1の前後にそれぞれ備えられる車体検出器で、洗車スペースを挾んむように発光器12a・13aと受光器12b・13bとをそれぞれに対向させ、両者間で授受されるビーム信号が自動車によって遮断されたのを検知して車体検出を行う。」 ・また、図2及び図3には、車両検出手段である発光器12a・13aと受光器12b・13bを洗車装置本体1の側面視で、そのフレームの内部に配置した構成が示されている。 f)甲第6号証(特開平8-276830号公報)には、「洗車装置」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0014】図3において、14・15・16・17は前記洗車処理装置よりも先行する洗車機本体1の前方に取り付けられる光電スイッチで、車体を挾むように対向して配設される発光部Aと受光部Bの透光及び遮光の状態により洗車する自動車の車高や車種を検出するものである。床面からH_(1)の高さに設けられる光電スイッチ14は主に車体の有無を確認するものであり、床面からH_(2)の高さに設けられる光電スイッチ15は普通車のルーフ位置を、床面からH_(3)の高さに設けられる光電スイッチ16はワゴン車,軽トラック等のルーフ位置を、床面からH_(4)の高さに設けられる光電スイッチ17は洗車不適合の車高をそれぞれ検出するものである。尚、H_(1)?H_(4)までの高さは、使用目的により適宜決定されるものである。」 ・「【0016】次に上記洗車機の動作について説明する。ここでは特にトラック型車両の洗車について例示している。洗車開始に伴い各洗車処理装置に先行する光電スイッチ14?17により洗車する車両の上面形状が認識される。 【0017】まず、図5に示される洗車機本体1が洗車開始位置にあるとき、すなわち洗車機のリミットスイッチ6がドッグ7でスイッチングされる位置にいるとき、車両が所定の停止位置に停車されているか否かを光電センサ14によって確認される。」 ・「【0018】洗車機が走行し、光電センサ15が遮光されると、その時点での洗車機の走行距離と、光電スイッチ14及び15の間隔とにより乗用車であるかハイルーフ車であるかを判断する。トラック型車両の場合、図5に示されるように洗車機が車体のL1まで走行した段階で光電スイッチ15が遮光されることになるので、この検出した時点の本体走行位置をメモリ20に記憶するとともにこのL1までの走行距離lと光電スイッチの間隔hにより算出される傾斜勾配θが大きくなりハイルーフ車であることが検出される。」 g)甲第7号証(特開平8-80818号公報)には、「洗車機」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0013】この制御装置36’の要部の動作を図2のフローチャートにしたがって説明する。・・・次に車両2の先端が洗車機本体1内に位置するように所定位置に乗入れられ、よって車高センサ17により車両2が確認されると(ステップ-4)、」 (3)対比・判断 本件発明と甲1発明とを比較すると、後者における「洗車設備」がその作用・機能からみて前者における「洗車装置」に相当し、以下同様に、「車両の前部が所定停止位置に達したかを検知する車両検知器」が「車両の前端部が正規停止位置とその前後の2位置のいずれかにあるかを検出するための車両検出手段」に、「車両検知器からの情報」が「車両検出手段の検出結果」に、「案内指示灯に対し車両を洗車位置に停止するように誘導するための制御装置」が「車両を洗車位置に誘導して停止させるための制御手段」に、「光電管P2と光電管P2′」が「前側スイッチと後側スイッチ」に、「車両の前部が所定停止位置に停止するように誘導するための情報を出力し」が「車両の前端部が正規停止位置を通過するときにそれらの検出状態を切替え可能にし」に、それぞれ相当する。 そして、後者における「車両検知器をポストに設け」と前者における「車両検出手段を洗車機に設置し」とは、「車両検出手段を設置し」との概念で共通し、後者における「洗車設備の車両進入通路に沿って配置」と前者における「洗車機の側面視でフレームの内部に配置」とは、「洗車装置内に配置」という概念で共通している。 したがって、両者は、 「洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車装置において、 車両の前端部が正規停止位置とその前後の2位置のいずれかにあるかを検出するための車両検出手段を設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させ(る)ための制御手段を有してなり、 車両検出手段が、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチと後側スイッチとからなり、前側スイッチと後側スイッチは車両の前端部が正規停止位置を通過するときにそれらの検出状態を切替え可能にし、 前側スイッチと後側スイッチを洗車装置内に配置した洗車装置。」 である点で一致している。 その一方で、少なくとも、本件発明は「制御手段が前側スイッチと後側スイッチの検出結果に基づき、車両を正規停止位置に停止させたとき、車形検出器は車両の前端側の検出域にあり、制御手段はフレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付けてからフレームを再度前進させて車形検出器による車形の検出に入るように制御する」構成を有しているのに対し、甲1発明は、かかる構成を備えていない点(以下、「相違点」という。)で、両者は相違している。 そこで、上記相違点について以下検討する。 甲第2号証ないし甲第7号証には、そのいずれにも、上記相違点に係る本件発明の構成について記載あるいは示唆がされていない。 即ち、甲第2号証ないし甲第5号証は、車両検出手段を洗車機の側面視でフレームの内部に配置した構成を、また、甲第6号証は、洗車機本体の前方に取り付けられ洗車機の側面視でフレームの内部に配置した車高や車種を検出する複数の光電スイッチ(「車形検出器」に相当)の一部が、車両が所定の停止位置に停車されているか否かを確認するスイッチ(「車両検出手段」に相当)を共用している構成を、さらに、甲第7号証は、洗車機の正面視でフレームの内部に配置した車高センサ(「車形検出器」に相当)が、車両の先端が洗車機本体内に位置する所定位置に乗入れられたことを確認する手段(「車両検出手段」に相当)を共用している構成を、それぞれ開示しているにすぎない。 そうすると、甲1発明に甲第2号証ないし甲第7号証に記載の発明を組み合わせたとしても、上記相違点に係る本件発明の構成に至らないことは明らかであると共に、請求人からは、甲1発明において上記の構成とすることが当業者にとって容易想到であると認めるに足る根拠は何ら示されていない。 そして、本件発明は、上記の相違点に係る構成により、車両を正規位置に正しく停止させ、車両のその前端から確実に車形を検出して洗車を行うことができるという効果を奏するものと認められる。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明が、上記甲各号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、請求人が主張する理由1ないし理由3のいずれも理由がないというべきである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 洗車装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車装置において、 車両の前端部が正規停止位置とその前後の2位置のいずれかにあるかを検出するための車両検出手段と、車形を検出するための車形検出器とを洗車機に設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させ、且つ、車形検出器の検出した車形に応じて、洗車を行うための制御手段を有してなり、 車両検出手段が、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチと後側スイッチとからなり、前側スイッチと後側スイッチは車両の前端部が正規停止位置を通過するときにそれらの検出状態を切替え可能にし、 前側スイッチは、車形検出器を共用し、 前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置し、 制御手段が前側スイッチと後側スイッチの検出結果に基づき、車両を正規停止位置に停止させたとき、車形検出器は車両の前端側の検出域にあり、制御手段はフレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付けてからフレームを再度前進させて車形検出器による車形の検出に入るように制御することを特徴とする洗車装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は洗車装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 車両を洗車作業場の洗車位置に停止させるための手段として、洗車作業場の床面に踏込みスイッチを設置し、洗車作業場に進入してくる車両の前輪が正規停止位置に到達したことを踏込みスイッチの前輪検出状態により検知し、その検知結果に基づいて車両の運転者により該車両を停止させるものがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 従来技術には以下の問題点がある。 ▲1▼進入してくる車両の前輪を踏込みスイッチの前輪検出状態により検知したとき、車両の運転者により該車両を停止させるものである。従って、運転者の停止操作の遅れにより車両の前輪が正規停止位置から行き過ぎると、踏込みスイッチはその前輪検出状態を喪失してしまい、その後、前輪の正しい位置を認識できなくなる。 【0004】 ▲2▼前輪の正しい位置が上述▲1▼により一旦認識できなくなると、車両をその後洗車位置に誘導することができなくなる。 【0005】 ▲3▼踏込みスイッチを床面(地上高600mm以下)に設置するものであり、消防法の規制により防爆仕様の高コストのものを採用する必要があるし、電気配線やその保護を現地施工する必要があって施工工数が多く高コストになる。 【0006】 尚、洗車装置にあっては、洗車機の施工性、作業性、占有スペースの小型化、外観性の向上が望まれる。 【0007】 本発明の課題は、洗車機をコンパクトにするとともに、現地施工工数を削減して低コスト化しながら、車両の位置を正しく認識し、車両を洗車位置に誘導することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 請求項1の発明は、洗車作業場の洗車位置に車両を停止させて洗車する洗車装置において、車両の前端部が正規停止位置とその前後の2位置のいずれかにあるかを検出するための車両検出手段と、車形を検出するための車形検出器とを洗車機に設置し、車両検出手段の検出結果に基づき、車両を洗車位置に誘導して停止させ、且つ、車形検出器の検出した車形に応じて、洗車を行うための制御手段を有してなり、車両検出手段が、洗車作業場における車両の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチと後側スイッチとからなり、前側スイッチと後側スイッチは車両の前端部が正規停止位置を通過するときにそれらの検出状態を切替え可能にし、前側スイッチは、車形検出器を共用し、前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置し、制御手段が前側スイッチと後側スイッチの検出結果に基づき、車両を正規停止位置に停止させたとき、車形検出器は車両の前端側の検出域にあり、制御手段はフレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付けてからフレームを再度前進させて車形検出器による車形の検出に入るように制御するものである。 【0010】 参考例は、前側スイッチが車形検出器を共用するのではなく、後側スイッチが車形検出器を共用したものである。 【0011】 【作用】 請求項1の発明によれば下記▲1▼?▲4▼の作用がある。 ▲1▼車両検出手段を構成する前側スイッチと後側スイッチを洗車機の側面視でフレームの内部に配置したから、これらのスイッチがフレームの外方に配置されない。従って、これらのスイッチの電気配線をフレームの内部に納めることができ、施工性を向上できる。また、これらのスイッチをフレームの外方に配置するためのステー等をフレームの外方に突出する必要がなく、洗車場での作業性、洗車機の占有スペースの小型化、外観性の向上を図ることができる。 【0012】 ▲2▼車両検出手段を構成する前側スイッチと後側スイッチの組合せにより、洗車作業場に進入してきた車両が正規停止位置とその前後の2位置のいずれにあるかを簡易に正しく認識できる。 【0013】 ▲3▼制御手段は、車両検出手段の検出結果に基づき、車両の位置を上述▲2▼の如くに正しく認識し、車両の現在位置を正しく認識できるから、結果として、車両の現在位置と洗車位置との相対位置を把握し、車両を現在位置から洗車位置に誘導できる。 【0014】 ▲4▼車両検出手段を洗車機のフレームに設置するものであり、これを床面に設置する場合に比して、防爆仕様のものを採用することを必須としないし、電気配線やその保護を現地施工する必要もなく、現地施工工数を削減して低コスト化できる。 【0015】 また、請求項1の発明によれば下記▲5▼、▲6▼の作用がある。 ▲5▼前側スイッチとして車形検出器を共用化することにより、検出機器類の簡素を図ることができる。 【0016】 ▲6▼車形検出器を前側スイッチとして用い、このスイッチを洗車機のフレームの手前側に配置した。従って、車形検出器が車両の前端から車形を走査して車両の上下方向突起物の存在を検出するに必要なフレームの一定走行ストローク範囲を、該車形検出器に後続してフレームに設置されるトップブラシ等の出力機器との間に確保するに際し、後側スイッチをその一定ストローク範囲の中に納めるものになる。従って、フレームの前後方向長さを必要最小限にし、洗車機のコンパクトを図ることができる。 【0017】 参考例によれば下記▲7▼、▲8▼の作用がある。 ▲7▼後側スイッチとして車形検出器を共用化することにより、検出機器類の簡素を図ることができる。 【0018】 ▲8▼車形検出器を後側スイッチとして用い、このスイッチを洗車機のフレームの奥側に配置した。従って、車両を正規停止位置に停止させてから車形の検出に入るときには、車形検出器は未だ車両の前端のより後方、換言すれば未だ車形を検出していない位置にある。よって、フレームを車両に対し一旦後退させて車形検出器を車両の前端より後方に位置付ける無駄な走行時間を不要とし、フレームを車両に対し直ちに前進させて車形の検出に入ることができ、洗車時間を短縮化できる。 【0019】 【発明の実施の形態】 図1は第1実施形態の洗車装置を示す斜視図、図2は洗車装置を示す側面図、図3は洗車装置を示す平面図、図4は車両検出手段を示す斜視図、図5は表示手段を示す正面図、図6は参考例の洗車装置を示す側面図、図7は洗車装置を示す平面図、図8は車両検出手段を示す斜視図である。 【0020】 (第1実施形態)(図1?図5) 図1?図3はドライブスルー式の洗車装置10を示し、門型洗車機11を走行レール12に沿って走行可能とし、洗車機11の走行範囲で該洗車機11に囲まれる領域を洗車作業場10Aとし、車両1を洗車作業場10Aの前方の入口から入場させて洗車作業場10Aの洗車位置に停止させ、この車両1に対し洗車機11を走行させて洗車可能とし、洗車された車両1を洗車作業場10Aの後方の出口から退場させるものである。13は洗車機11の門型フレーム11Aの走行のためのガイドレール、14は洗車受付装置、15は遮断機である。 【0021】 洗車機11は、走行位置検出器16、車形検出器17、制御装置18を有している。 【0022】 走行位置検出器16は洗車機11の走行レール12上での現在位置を検出する。具体的には、走行位置検出器16は、洗車機11の走行モータの出力軸に設けたロータリエンコーダにて構成される。 【0023】 車形検出器17は車両1の車形を検出する。具体的には、車形検出器17は、洗車機11の前端寄りで、洗車作業場10Aを挟む門型フレーム11Aの左右の両側に投光センサ17Aと受光センサ17Bのそれぞれを配置して構成される。投光センサ17Aと受光センサ17Bは、それらの検出ライン上の全域に多数の検出光軸(N1、N2…Nn)を配置し、フレーム11Aの走行の過程で投光センサ17Aの各検出光軸からの投光が車両1に遮られるか否かを受光センサ17Bで検出することにより、検出ライン上での車両1の有無を検出する。 【0024】 制御装置18は、マイクロコンピュータを備え、洗車受付装置14で受付けた洗車メニューに応じて、洗車機11の門型フレーム11Aに設置してある走行モータ、洗浄液ノズル21、22、洗車用トップブラシ23、洗車用サイドブラシ24、乾燥用トップエアノズル25、乾燥用サイドエアノズル26等の出力機器をそれぞれ所定のタイミングで駆動して洗車を開始するとともに、走行位置検出器16や車形検出器17の検出結果を参照して上述の出力機器の作動を車形に応じて制御し、車両1の車体及び装着品の洗車を行なう。 【0025】 尚、本実施形態の車形検出器17は車両1の前端から車形を走査し、フレーム11Aが一定走行ストローク範囲Rを移動する間の、検出ライン上での車両1の有無により、車両1の上下方向突起物の存在を検出する。制御装置18は、この車形検出器17の検出結果を参照して上述のトップブラシ23、トップエアノズル25等の出力機器の車両1に対する昇降動作を車形に応じて制御するものであるから、車形検出器17とこれに後続するトップブラシ23の間には上述の一定走行ストローク範囲Rの距離が確保される。 【0026】 しかるに、制御装置18は、洗車作業場10Aの洗車機11に対して車両1を進入させ、該車両1を洗車位置に停止させて洗車を開始するに際し、洗車機11に設置してある車両検出装置30の検出結果に基づき、車両1からの正面視で洗車機11のフレーム11Aに囲まれる正面領域内に配置される表示装置40を用いて、車両1を洗車位置に誘導して停止させる。 【0027】 車両検出装置30は、図4に示す如く、洗車作業場10Aにおける車両1の進退方向に沿う前後、換言すれば車両1の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチ31と後側スイッチ32とからなり、前側スイッチ31と後側スイッチ32は車両1が正規停止位置を通過するときに、車両1の前端部(車体又は装着品)を検知してそれらの検出状態(オンとオフ)を切替える。これにより、洗車作業場10Aに入場してきた車両1が、正規停止位置とその前後の2位置のいずれにあるかを検出する。このとき、前側スイッチ31と後側スイッチ32を洗車機11の側面視でフレーム11Aの内部に配置してある。 【0028】 具体的には、前側スイッチ31は、前述した車形検出器17を共用し、車形検出器17の投光センサ17A、受光センサ17Bの検出光軸のうち、最下段の検出光軸N1を用い、投光センサ17Aからの投光が車両1に遮られるか否かを受光センサ17Bで検出することにより、検出光軸N1上での車両1の有無を検出する。検出光軸N1は水平に対して斜めをなすようにセットされ、前側スイッチ31による車両1の検出可能高さ範囲を巾広化している。 【0029】 後側スイッチ32は、前側スイッチ31に後続し、洗車作業場10Aを挟む左右の両側に投光センサ32Aと受光センサ32Bのそれぞれを配置して構成される。投光センサ32Aと受光センサ32Bは、単一の検出光軸Kを有し、投光センサ32Aからの投光が車両1に遮られるか否かを受光センサ32Bで検出することにより、検出光軸K上での車両1の有無を検出する。検出光軸Kは水平に対して斜めをなすようにセットされ、後側スイッチ32による車両1の検出可能高さ範囲を巾広化している。 【0030】 車両検出装置30は、車両1の前端部が前側スイッチ31と後側スイッチ32に挟まれる検出範囲L(図4)にあるとき、車両1が正規停止位置にあるものとする。そして、前側スイッチ31、後側スイッチ32の検出状態は、車両1の位置に応じて以下の如くに切替わる(表1)。 【0031】 (A)車両1の前端部が前側スイッチ31の前方(検出範囲Lの前方)にあるときには、前側スイッチ31も後側スイッチ32もそれらの投光を遮られず、前側スイッチ31、後側スイッチ32の検出状態はともに「オン、オン」になる。 【0032】 (B)車両1の前端部が前側スイッチ31と後側スイッチ32の間(検出範囲Lの間)に入ったときには、前側スイッチ31の投光は遮られ、後側スイッチ32の投光は遮られず、前側スイッチ31、後側スイッチ32の検出状態は、「前側スイッチ31がオフ、後側スイッチ32がオン」になる。 【0033】 (C)車両1の前端部が後側スイッチ32の後方(検出範囲Lの後方)に行き過ぎたときには、前側スイッチ31も後側スイッチ32もそれらの投光を遮られ、前側スイッチ31、後側スイッチ32の検出状態はともに「オフ、オフ」になる。 【0034】 【表1】 ![]() 【0035】 表示装置40は、洗車機11のフレーム11Aに設置された移動装置50に取着され、移動装置50は表示装置40をフレーム11Aの天井側の側傍の待機位置から前記正面領域内の誘導作業位置に設定される。 【0036】 本実施形態では、移動装置50を防水カーテン51からなるものとしており、防水カーテン51は巻取機52により洗車用ブラシ23、24と乾燥用エアノズル25、26の間で昇降可能とされる。防水カーテン51は、洗車の開始に際して表示装置40を上述の誘導作業位置に設定するために待機位置から下降し、その後、再び待機位置に戻り、洗車中の乾燥工程で洗車用ブラシ23、24の飛散水が乾燥用エアノズル25、26による車両1の乾燥域に及ぶことを防止するために待機位置から再下降して防水機能を果たす。 【0037】 表示装置40は、図5に示す如く、防水カーテン51の下端側における、車両1の進入側に臨む表面上で、車両1の運転者の目視レベルに、車両1の運転者に前進を促す青色回転灯41A、停止を促す赤色回転灯41B、後退を促す黄色回転灯41Cを固定化され、各回転灯41A?41Cの上部に前進、停止、後退の文字表示部42A?42Cを付帯する。尚、表示装置40は、各回転灯41A?41Cの点灯に連動してそれらの案内を音声出力する音声出力装置43を付帯し、音声出力装置43をフレーム11Aに設置することもできる。 【0038】 従って、制御装置18による車両1の誘導停止動作は以下の如くなされる。 (1)車両1の運転者が洗車受付装置14で洗車メニューを選択し、受付けが完了すると、遮断機15が上がり、車両1の入場を許す。同時に、表示装置40は移動装置50(防水カーテン51)の下降により、車両1からの正面視で洗車機11のフレーム11Aに囲まれる正面領域内に設定される。このとき、車両検出装置30の検出状態は前述(A)であり、表示装置40は車両1の前進を促す青色回転灯41Aを表示し、音声出力装置43によって「ゆっくり前進して下さい」の音声も流す。これにより、運転者が車両1を前進させて車両1が正規停止位置に入ると、車両検出装置30の検出状態が前述(B)になり、表示装置40は車両1の停止を促す赤色回転灯41Bに変わり、音声出力装置43によって「停止して下さい」の音声も流し、運転者をして車両1をその正規停止位置に停止せしめる(停止告知)。車両検出装置30の前述(B)の検出状態が一定時間以上保持されたことを条件に、洗車機11をして洗車開始せしめる。 【0039】 (2)車両1が正規停止位置を越えて後方に行き過ぎると、車両検出装置30の検出状態が前述(C)に変わり、表示装置40は車両1の後退を促す黄色回転灯41Cを表示し、音声出力装置43によって「ゆっくり後退して下さい」の音声も流す。これにより、運転者が車両1を後退させ、車両1を正規停止位置に入れると、車両検出装置30の検出状態が前述(B)になり、表示装置40は車両1の停止を促す赤色回転灯41Bになり、音声出力装置43によって「停止して下さい」の音声も流し、運転者をして車両1をその正規停止位置に停止させる(停止告知)。車両検出装置30の前述(B)の検出状態が一定時間以上保持されたことを条件に、洗車機11をして洗車開始せしめる。 【0040】 尚、本実施形態の洗車装置10にあっては、上述(1)、(2)により車両1を正規停止位置に停止させてから、洗車機11により洗車開始するとき、まず車形検出器17による車形の検出に入るに際し、車形検出器17たる前側スイッチ31が既に車両1の前端側の検出域にある。従って、フレーム11Aを車両1に対し一旦後退させて車形検出器17を車両1の前端より後方に位置付け、車形検出器17が車両1を全く検出しなくなった位置からフレーム11Aを再度前進させて車形検出器17による車形の検出に入る必要がある。車両1に対するフレーム11Aの上述の後退走行時間は洗車準備期間として活用でき、この間に、洗浄液ノズル21からの洗浄液の吐出、サイドブラシ24の前進等の操作がなされる。 【0041】 本実施形態によれば以下の作用がある。 ▲1▼車両検出装置30を構成する前側スイッチ31と後側スイッチ32を洗車機11の側面視でフレーム11Aの内部に配置したから、これらのスイッチ31、32がフレーム11Aの外方に配置されない。従って、これらのスイッチ31、32の電気配線をフレーム11Aの内部に納めることができ、施工性を向上できる。また、これらのスイッチ31、32をフレーム11Aの外方に配置するためのステー等をフレーム11Aの外方に突出する必要がなく、洗車作業場10Aでの作業性、洗車機11の占有スペースの小型化、外観性の向上を図ることができる。 【0042】 ▲2▼車両検出装置30を構成する前側スイッチ31と後側スイッチ32の組合せにより、洗車作業場10Aに進入してきた車両が正規停止位置とその前後の2位置のいずれにあるかを簡易に正しく認識できる。 【0043】 ▲3▼制御装置18は、車両検出装置30の検出結果に基づき、車両の位置を上述▲2▼の如くに正しく認識し、車両の現在位置を正しく認識できるから、結果として、車両の現在位置と洗車位置との相対位置を把握し、車両を現在位置から洗車位置に誘導できる。 【0044】 ▲4▼車両検出装置30を洗車機11のフレーム11Aに設置するものであり、これを床面に設置する場合に比して、防爆仕様のものを採用することを必須としないし、電気配線やその保護を現地施工する必要もなく、現地施工工数を削減して低コスト化できる。 【0045】 ▲5▼前側スイッチ31として車形検出器17を共用化することにより、検出機器類の簡素を図ることができる。 【0046】 ▲6▼車形検出器17を前側スイッチ31として用い、このスイッチを洗車機11のフレーム11Aの手前側に配置した。従って、車形検出器17が車両の前端から車形を走査して車両の上下方向突起物の存在を検出するに必要なフレーム11Aの一定走行ストローク範囲Rを、該車形検出器17に後続してフレーム11Aに設置されるトップブラシ23等の出力機器との間に確保するに際し、後側スイッチ32をその一定ストローク範囲の中に納めるものになる。従って、フレーム11Aの前後方向長さを必要最小限にし、洗車機11のコンパクトを図ることができる。 【0047】 尚、本実施形態には以下の作用もある。 (1)表示装置40が、車両1からの正面視で洗車機11のフレーム11Aに囲まれる正面領域内に配置されたから、運転者は車両1からの正面視で表示装置40を見ながら操車でき、車両1を洗車作業場10Aに直進状態で整然と進入させることができる。 【0048】 (2)車両1の進入方法である洗車機11のフレーム11Aに囲まれる正面領域内に表示装置40が配置されるから、運転者は正面の表示装置40に必ず注意するものとなり、車両1を洗車作業場10Aの外まで通り抜けさせてしまうことがない。 【0049】 (3)表示装置40が洗車機11のフレーム11Aに設置された移動装置50に取着され、移動装置50によって、フレーム11Aに囲まれる正面領域内に設定可能とされる。従って、車両1の誘導必要段階で表示装置40を上記正面領域内に配置できる。また、表示装置40を洗車機11の外部の床面等に現地据付して設置する必要がなく、工場施工段階で洗車機11に組込むことができ、工場生産性を向上できる。 【0050】 (4)洗車機11において、洗車用ブラシ23、24の飛散水が車両1の乾燥用エアノズル25、26による乾燥域に及ぶことを防止する防水カーテン51に表示装置40を取着することにより、上述▲3▼の移動装置50として防水カーテン51を利用でき、洗車機11の構成の簡素を図ることができる。 【0051】 (5)車両検出装置30は車両1が正規停止位置とその前後の2位置のいずれにあるかを検出し、表示装置40は車両1の前進を促す青色回転灯41A、停止を促す赤色回転灯41B、後退を促す黄色回転灯41Cを有することにより、運転者に対する操車指示を明瞭化し、誘導のスムースを図ることができる。 【0052】 (参考例)(図6?図8) 参考例が第1実施形態と異なる点は、図6?図8に示す如く、車両検出装置30を前側スイッチ61と後側スイッチ62の組合せにより構成するに際し、車形検出器17を後側スイッチ62と共用したことのみにある。 【0053】 即ち、参考例の車両検出装置30も、洗車作業場10Aにおける車両1の進退方向に沿う前後、換言すれば車両1の進入側から見て手前側と奥側の前後の2位置のそれぞれに設置した前側スイッチ61と後側スイッチ62とからなり、前側スイッチ61と後側スイッチ62は車両1が正規停止位置を通過するときに、車両1の前端部(車体又は装着品)を検知してそれらの検出状態(オンとオフ)を切替える。これにより、洗車作業場10Aに入場してきた車両1が、正規停止位置とその前後の2位置のいずれにあるかを検出する。このとき、前側スイッチ61と後側スイッチ62を洗車機11の側面視でフレーム11Aの内部に配置してある。 【0054】 そして、前側スイッチ61は、洗車作業場10Aを挟む左右の両側に投光センサ61Aと受光センサ61Bのそれぞれを配置して構成される。投光センサ61Aと受光センサ61Bは、単一の検出光軸Kを有し、投光センサ61Aからの投光が車両1に遮られるか否かを受光センサ61Bで検出することにより、検出光軸K上での車両1の有無を検出する。検出光軸Kは水平に対して斜めをなすようにセットされ、前側スイッチ61による車両1の検出可能高さ範囲を巾広化している。 【0055】 また、後側スイッチ62は、前述した車形検出器17を共用し、車形検出器17の投光センサ17A、受光センサ17Bの検出光軸のうち、最下段の検出光軸N1を用い、投光センサ17Aからの投光が車両1に遮られるか否かを受光センサ17Bで検出することにより、検出光軸N1上での車両1の有無を検出する。検出光軸N1は水平に対して斜めをなすようにセットされ、後側スイッチ62による車両1の検出可能高さ範囲を巾広化している。 【0056】 参考例の車両検出装置30は、第1実施形態におけると同様に、車両1の前端部が前側スイッチ61と後側スイッチ62に挟まれる検出範囲L(図8)にあるとき、車両1が正規停止位置にあるものとする。そして、前側スイッチ61、後側スイッチ62のそれぞれの検出状態は、車両1の位置に応じて第1実施形態における表1の前側スイッチ31、後側スイッチ32のそれぞれと同様に切替る。 【0057】 そして、参考例の制御装置18による車両1の誘導停止動作も、車両検出装置30の検出結果を用いて、第1実施形態において前述したと同様になされる。 【0058】 従って、参考例によれば、第1実施形態において前述した▲1▼?▲4▼の作用を奏するとともに、下記▲1▼、▲2▼の作用がある。 【0059】 ▲1▼後側スイッチ62として車形検出器17を共用化することにより、検出機器類の簡素を図ることができる。 【0060】 ▲2▼車形検出器17を後側スイッチ62として用い、このスイッチ62を洗車機11のフレーム11Aの奥側に配置した。従って、車両を正規停止位置に停止させてから車形の検出に入るときには、車形検出器17は未だ車両の前端のより後方、換言すれば未だ車形を検出していない位置にある。よって、フレーム11Aを車両に対し一旦後退させて車形検出器17を車両の前端より後方に位置付ける無駄な走行時間を不要とし、フレーム11Aを車両に対し直ちに前進させて車形の検出に入ることができ、洗車時間を短縮化できる。 【0061】 以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、車両検出装置30の前側スイッチ31と後側スイッチ32は、投受光方式によるものに限らず、他の検出方式によるものでも良い。 【0062】 【発明の効果】 以上のように本発明によれば、洗車機をコンパクトにするとともに、現地施工工数を削減して低コスト化しながら、車両の位置を正しく認識し、車両を洗車位置に誘導することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 図1は第1実施形態の洗車装置を示す斜視図である。 【図2】 図2は洗車装置を示す側面図である。 【図3】 図3は洗車装置を示す平面図である。 【図4】 図4は車両検出手段を示す斜視図である。 【図5】 図5は表示手段を示す正面図である。 【図6】 図6は参考例の洗車装置を示す側面図である。 【図7】 図7は洗車装置を示す平面図である。 【図8】 図8は車両検出手段を示す斜視図である。 【符号の説明】 1 車両 10 洗車装置 10A 洗車作業場 11 洗車機 11A フレーム 17 車形検出器 18 制御装置(制御手段) 30 車両検出装置(車両検出手段) 31、61 前側スイッチ 32、62 後側スイッチ |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2008-02-08 |
結審通知日 | 2008-02-13 |
審決日 | 2008-02-26 |
出願番号 | 特願2001-333409(P2001-333409) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(B60S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関 裕治朗 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
仁木 浩 田良島 潔 |
登録日 | 2006-03-31 |
登録番号 | 特許第3786597号(P3786597) |
発明の名称 | 洗車装置 |
代理人 | 仁木 一明 |
代理人 | 落合 健 |
代理人 | 塩川 修治 |
代理人 | 塩川 修治 |