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審決分類 |
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 B21D |
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管理番号 | 1178058 |
審判番号 | 無効2007-800216 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-10-04 |
確定日 | 2008-04-28 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2967482号発明「鋼管曲げ加工装置及び方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 平成10年 7月 2日 本件出願 平成11年 8月20日 設定登録(特許第2967482号) 平成19年10月 4日 無効審判請求 平成20年 1月 4日 答弁書 平成20年 3月 3日 両者・口頭審理陳述要領書、口頭審理、 無効理由通知 平成20年 3月 7日 訂正請求書 第2.訂正請求について 1.訂正請求の内容 被請求人が求めた訂正の内容は、(ア)請求項1ないし6の「鋼管の偏心軸線上」を「鋼管内の偏心軸線上」にそれぞれ訂正、(イ)段落0029?0031、0033?0036、0068を(ア)の訂正に整合させる、というものである。 2.訂正請求についての当審の判断 訂正請求について検討する。 訂正事項(ア)は、無効理由通知に対応して、「鋼管の偏心軸線」、「作用点」を明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 訂正事項(イ)は、訂正事項(ア)に伴い、発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、同条第5項で準用する特許法第126条第3項、第4項の規定にも適合するので、上記訂正を認める。 第3.本件発明 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、訂正された明細書によれば、以下のとおりである。 「【請求項1】 鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。 【請求項2】 鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段と、鋼管をその軸線方向前側へ移動させたとき、その前端部を鋼管の曲げ方向へ旋回させる旋回手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。 【請求項3】 鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段と、鋼管にその曲げ方向の押圧力を付与する押圧力付与手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。 【請求項4】 鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与することにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。 【請求項5】 鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に付与する引張り力と、鋼管が前進したとき、その前端部に付与する鋼管の曲げ方向への旋回力とにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。 【請求項6】 鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に付与する引張り力と、鋼管に付与する鋼管の曲げ方向への押圧力とにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。」 第4.請求人の主張 請求人は、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を無効とするとの審決を求めている。 その理由は、審判請求書によれば、(理由1)特許法第29条第1項、(理由2)特許法第29条第2項、(理由3)特許法第36条第4項又は第6項、(理由4)特許法第38条、の規定に違反するというものである。 これらのうち、理由1、理由4、理由2の甲第2号証?甲第8号証に基づく主張は、口頭審理陳述要領書により、取り下げられた。 また、理由2の残余の主張、理由3の一部の主張は、口頭審理において、被請求人による訂正請求を前提に取り下げるとされ(口頭審理調書の請求人の3)、前記第2のとおり、前提が満たされたため、取り下げられた。 その結果、請求人が主張する理由は、理由3の「請求項1及び4に係る特許発明は、旋回アームや押圧手段を備えた構成を除外するものではな」いから、「従来例のような、旋回アーム(旋回手段)やプッシャー(押圧力付与手段)を備えていない構成であるため、装置の小型化や可搬性を実現できる」なる作用効果との対応関係が不明確(第36条違反)というものである(請求書第26?27ページ)。 第5.被請求人の主張 これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。 その理由は、(ア)特許明細書段落0069に「引張り力のみを加えるようにしたから」と明記されており、旋回手段や押圧力付与手段は必要に応じて採用できる手段である(陳述要領書第5ページ)、(イ)請求項2、5の旋回手段は、曲げ力を付与するものではないから図4の従来例の旋回アーム6とは機能が異なる(口頭審理調書)、というものである。 第6.当審の判断 従来例において必要とされる旋回アーム(図4の旋回アーム6)、プッシャー(図5のプッシャー14)は、これにより曲げ力を付与するものである(段落0010?0011、0016?0017)。 請求人が、旋回アーム(旋回手段)やプッシャー(押圧力付与手段)を備えていると主張する図2、図3の実施例について、図面を参照しつつ検討する。 図2、図3の実施例は、曲げ力は、引張り力付与手段(チェーン引張り装置25)により付与されており、図2の旋回手段(旋回アーム6)、図3の押圧力付与手段(プッシャー14)は、「曲げ加工精度を高精度に保持」(段落0057、0065)するためのものである。 したがって、請求項1及び4に係る特許発明が、必要により有する「旋回アームや押圧手段」は、従来例のような曲げ力を付与するためのものではないから、作用効果との対応関係が不明確であるとは認められない。 第7.むすび 以上、請求人が、審判請求書に記載した理由によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を無効とすることはできない。 また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を無効とすべき理由を発見しない。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 鋼管曲げ加工装置及び方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。 【請求項2】鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段と、鋼管をその軸線方向前側へ移動させたとき、その前端部を鋼管の曲げ方向へ旋回させる旋回手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。 【請求項3】鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段と、鋼管にその曲げ方向の押圧力を付与する押圧力付与手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。 【請求項4】鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与することにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。 【請求項5】鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に付与する引張り力と、鋼管が前進したとき、その前端部に付与する鋼管の曲げ方向への旋回力とにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。 【請求項6】鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に付与する引張り力と、鋼管に付与する鋼管の曲げ方向への押圧力とにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、鋼管曲げ加工装置及び方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 (従来例1) 図2は、従来例1の鋼管曲げ加工装置を示す。この装置を使用する鋼管の曲げ加工は、次の要領で行われている。 【0003】 (1)図4に示すように、曲げようとする鋼管1をサポートローラー2の上に置き、プッシャー4側の後端部をテールストック3でつかみ、前端部をピボット5を中心として旋回する旋回アーム6のアームクランプ7でつかむ。 【0004】 (2)鋼管1を、左右一対のガイドローラー8,9で案内しながら、プッシャー4でその軸線方向へ押し、加熱コイル10方向へ前進させ、同コイル10の中を通過させる。 【0005】 このとき、加熱装置11により加熱コイル10へ通電する。 【0006】 すると、鋼管1は加熱コイル10からの誘導電流によって順次加熱されていく。加熱コイル10は、環状のコイルであるから、鋼管1の周囲はその軸線を中心軸として環状に加熱される。 【0007】 この環状加熱部kは、加熱コイル10内の環状流路10aに導かれ、加熱コイル10に環状に配列して設けた多数の穴hから噴出する冷却水12によって順次前側から冷却されていく。加熱コイル10の穴hは環状に設けられているから、上記冷却部は鋼管1の軸線を中心軸とする環状冷却部cとなる。上記環状加熱部は、この環状冷却部cによって前側から環状に冷却されていく。 【0008】 その結果、鋼管1には、軸線を中心軸とする環状の局部加熱部Kが、鋼管1の前進に伴って、順次形成される。すなわち、局部加熱部Kは、鋼管1の前進に伴って、その軸線方向へ移動(後進)する。 【0009】 上記環状の局部加熱部Kは、再結晶温度以上の温度である。図3に示す炭素鋼の鋼管の例で言えば、軸線方向の幅Wの加熱帯の温度がそれで、760℃?900℃である。 【0010】 (3)一方、鋼管1がプッシャー4で押されて前進して行くと、旋回アーム6が旋回する。旋回すると、鋼管1の前端部はアームクランプ7によって固定されているので、鋼管1に曲げモーメントが発生し、鋼管1の曲げ加工が連続的に進行する。 【0011】 このとき、プッシャー4による鋼管1の前進速度より旋回アーム6の旋回速度を相対的に遅くして、鋼管1の前進に制動をかけるようにすれば、鋼管1に圧縮力が作用するので、鋼管1の曲げ加工による減肉をある程度抑えることができる。 【0012】 (従来例2) 図5は、従来例2の鋼管曲げ加工装置を示す。この装置を使用する鋼管の曲げ加工は、次の要領で行われている。 【0013】 (1)図5に示すように、曲げようとする鋼管1をサポートローラー2の上に置き、プッシャー4側の後端部をテールストック3でつかみ、前端部の側面にプッシャー14によって駆動するプッシュローラー13を当てる。 【0014】 (2)鋼管1を、左右一対のガイドローラー8,9で案内しながら、プッシャー4で鋼管1の軸線方向へ押し、加熱コイル10方向へ前進させ、同コイル10の中を通過させる。 【0015】 このとき、環状の局部加熱部Kは、従来例1の場合と同様に形成される。 【0016】 (3)この過程で、前進する鋼管1の前端部をプッシュローラー13で押圧する。このようにすると、鋼管1に曲げモーメントが発生し、鋼管1の曲げ加工が連続的に進行する。 【0017】 このときの鋼管1の曲率は、プッシュローラー13のプッシャー14による押圧力または進出量によって決まる。 【0018】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来の鋼管曲げ加工装置には、次のような問題点がある。 【0019】 (1)曲げモーメントに抗するために剛性を大きくするから、装置が大型となり、重量も重くなる。このため、従来の装置は、施工現場から離れた工場に据え付けられ、装置の可搬性に欠ける。 【0020】 可搬性に欠けるため、次のような問題が発生している。 【0021】 ▲1▼曲げようとする鋼管を特定の曲げ工場に輸送し、曲げ加工を行ってから国内外の所定の場所へトラックあるいは船で輸送せねばならない。ところが、曲げ鋼管は、かさばるため、輸送効率が悪く、輸送費がかさむ。 【0022】 ▲2▼プラント建設現場あるいはパイプライン敷設現場では、工事の進み遅れ、配管設計の変更や追加工事が発生するが、現場から離れた管曲げ工場では、上記の変化に速やかに対応するのが困難である。 【0023】 ▲3▼曲げ加工装置1台で1日に曲げられる曲げ加工本数に限界がある。その理由は、多品種少量製品に伴い正味曲げ加工時間よりも段取りの時間の方が多いためである。曲げ加工装置を増やせば問題はないが、装置が大型で高価であるため、増設することは困難である。 【0024】 (2)鋼管に曲げによる減肉が生ずる。従来例2の場合には、鋼管の曲げ加工の過程で、鋼管の前進に旋回アームで制動をかけることにより、鋼管に圧縮力を付与することができるから、減肉はある程度抑えることができる。 【0025】 しかし、旋回アームで制動をかけるためには、装置の剛性を大幅に上げねばならないから、設備費用が過大となるし、装置が大型化する。 【0026】 この発明は、このような技術的背景の下になされたもので、装置の可搬性に優れ、かつ鋼管の曲げ加工による減肉を充分に抑制することができる鋼管曲げ加工装置及び方法を提供することを目的とする。 【0027】 また、この発明は、鋼管の曲げ加工による減肉を充分に抑制することができる鋼管曲げ加工装置及び方法を提供することを目的とする。 【0028】 【課題を解決するための手段】 この発明が提供する鋼管曲げ加工装置は、次の(1)?(3)に記載のものである。 【0029】 (1)鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置(以下、第1の装置という。)。 【0030】 (2)鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段と、鋼管をその軸線方向前側へ移動させたとき、その前端部を鋼管の曲げ方向へ旋回させる旋回手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置(以下、第2の装置という。)。 【0031】 (3)鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段と、鋼管にその曲げ方向の押圧力を付与する押圧力付与手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置(以下、第3の装置という。)。 【0032】 また、この発明が提供する鋼管曲げ加工方法は、次の(1)?(3)に記載のものである。 【0033】 (1)鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与することにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法(以下、第1の方法という。)。 【0034】 (2)鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に付与する引張り力と、鋼管が前進したとき、その前端部に付与する鋼管の曲げ方向への旋回力とにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法(以下、第2の方法という。)。 【0035】 (3)鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、これを鋼管の軸線方向へ鋼管と相対移動させながら、同加熱部に曲げモーメントを加えて鋼管を曲げ加工する際に、前記曲げモーメントを、鋼管内の偏心軸線上に設定した前記環状の局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に付与する引張り力と、鋼管に付与する鋼管の曲げ方向への押圧力とにより、加えることを特徴とする鋼管曲げ加工方法(以下、第3の方法という。)。 【0036】 【作用】 (1)第1?第3の装置と第4?第6の方法においては、鋼管に曲げモーメントを加える際に、鋼管内の偏心軸線上に設定した2つの力の作用点の間に引張り力を加え、鋼管を長さ方向に圧縮するから、鋼管の曲げ加工による減肉を抑制することができる。 【0037】 (2)第1の装置と第4の方法に置いては、鋼管に曲げモーメントを加える際に、引張り力のみを加えるから、装置が小型となり、重量も軽くなる。これは、従来例1における旋回アーム(旋回手段)や従来例2におけるプッシャー(押圧力付与手段)のように、大きな曲げモーメントに抗する必要から、装置を大型にして、重量を重くする必要がないためである。このため、装置の施工現場への運搬、据え付けが容易になる。 【0038】 【発明の実施の形態】 以下、この発明の実施の形態を実施例によって説明する。 【0039】 (実施例1) 図1は第1の装置の実施例を示す。第4の方法の実施例はこの実施例の鋼管曲げ加工装置によって実現される。 【0040】 図1において、1は炭素鋼の鋼管、2は鋼管1を支持するサポートローラーである。10は加熱コイル、11は加熱装置で、従来例1,2におけるものと同じ構造と機能を有している。細部構成は図6に示すとおりである。加熱コイル10は、レール21上を移動する駆動装置22に取り付けられ、この装置の移動によって、銅管1の軸線方向へ移動するようになっている。 【0041】 23と24は、それぞれ鋼管1の前端部と後端部に被着した前部挟圧板と後部挟圧板である。 【0042】 25は、油圧シリンダ25aとチェーン25bとで構成されたチェーン引張り装置である。油圧シリンダ25aのロッドbは後部挟圧板24に固定され、チェーン25bの前端部aは前部挟圧板23に固定されている。 【0043】 ロッドbと固定点とチェーンの固定点は、鋼管1の偏心軸線上にあり、加熱コイル10による環状加熱部kを挟んでその両側に位置するように設定されている。両固定点は、油圧シリンダ25aを駆動して前、後部挟持板23,24を引き寄せるときのチェーン引張り装置25による引張り力の作用点となる。 【0044】 26は、後部挟持板24部分において鋼管1を固定する保持台である。保持台による鋼管1の固定状態においては、加熱コイル10の中心軸は、鋼管1のそれと一致するようになっている。 【0045】 加熱コイル10の温度と駆動装置22の移動と冷却水12の温度及び量と油圧シリンダ25aの油圧の制御は、図外の制御手段によってなされる。 【0046】 次に、上記構成に基づく作用を説明する。 【0047】 (1)油圧シリンダ25aを駆動して、チェーン引張り装置25の両端の固定点の間に引張り力を加えると、両固定点は鋼管1の偏心軸線上にあるから、鋼管1はその偏心軸線方向の圧縮力を受けながら、順次移動する環状の局部加熱部K(図6参照)において、連続して固定点側へ曲がっていく。 【0048】 このように、実施例1においては、局部加熱部Kに曲げモーメントを加える際に、銅管1にその偏心軸方向に働く圧縮力を加えるから、鋼管1が曲がるときの減肉を低減することができる。 【0049】 (2)鋼管に曲げモーメントを加える際に、チェーン引張り装置25で引張り力のみをを加える構成となっているから、装置が小型となり、重量も軽くなり、運搬し易くなる。したがって、施工現場の近くに運んで据え付けることができる。 【0050】 このため、曲げようとする鋼管をその施工現場で加工することができ加工前後の鋼管の輸送をしなくて済むようになる。また、工事の進行の遅れや配管設計の変更が発生しても速やかに対応できる。さらに、曲げ加工の段取りに時間がかからなくなるから、1日に曲げられる鋼管の本数も多くなる。 【0051】 (実施例2) 図2は第2の装置の実施例を示す。第5の方法の実施例は、この実施例の鋼管曲げ加工装置によって実現される。 【0052】 実施例2の鋼管曲げ加工装置は、従来例1の装置(図4)と実施例1の装置(図1)を組み合わせた構成のものである。したがって、図1及び図4におけると同一または相当部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。 【0053】 図2において、1は鋼管、2はサポートローラー、10は加熱コイル、11は加熱装置、23は前部挟持板、24は後部挟持板である。25はチェーン引張り装置で、油圧シリンダ25aチェーン25bとより構成されている。 【0054】 6は、クランプ7で鋼管1の前端部をつかみ、ピボット5を中心にして旋回する旋回アームである。8,9は鋼管1のガイドローラーある。4は鋼管1のプッシャーで、後部挟持板24を介してテールストック3でつかんだ鋼管1をその軸線方向へ前進駆動する。したがって、実施例2では、上記加熱コイル10は定位置に設置されている。 【0055】 加熱コイル10の温度と冷却水12の温度及び量とプッシャー4及び油圧シリンダー25aの油圧の制御は、図外の制御装置によってなされる。 【0056】 実施例2においては、実施例1の場合と同様、環状の局部加熱部Kに曲げモーメントを加える際に、鋼管1にその偏心軸方向に働く圧縮力を加えるから、鋼管1が曲がるときの減肉を抑制することができる。 【0057】 また、旋回アーム6によって鋼管1の前端部に一定の曲率半径で旋回力を加えるから、鋼管1の曲げ加工精度を高精度に保持できる。 【0058】 (実施例3) 図3は第3の装置の実施例を示す。第6の方法の実施例は、この実施例の鋼管曲げ加工装置によって実現される。 【0059】 実施例3の鋼管曲げ加工装置は、従来例2の装置(図5)と実施例1の装置(図1)を組み合わせた構成のものである。したがって、図1及び図5におけると同一または相当部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。 【0060】 図3において、1は鋼管、2はサポートローラー、10は加熱コイル、11は加熱装置、23は前部挟持板、24は後部挟持板、25はチェーン引張り装置で、油圧シリンダ25aとチェーン25bとより構成されている。 【0061】 13は、プッシャー14に押されて、鋼管1を曲げ方向(チェーン引張り装置側)へ押圧するプッシュローラー、8,9は鋼管1のガイドローラーである。 【0062】 4は鋼管1のプッシャーで、後部挟持板24を介してテールストック3でつかんだ鋼管1をその軸線方向へ前進駆動する。したがって、実施例3では、加熱コイル10は定位置に設置されている。 【0063】 加熱コイル10の温度と冷却水12の温度及び量とプッシャー4とプッシャー14及び油圧シリンダー25aの油圧の制御は、図外の制御装置によってなされる。 【0064】 実施例3においても、実施例1の場合と同様、局部加熱部Kに曲げモーメントを加える際に、鋼管1にその偏心軸方向に働く圧縮力を加えるから、鋼管1が曲がるときの減肉を抑制することができる。 【0065】 また、プッシュローラー13によって鋼管1の前端部に一定の進出量で押圧力を加えるから、鋼管1の曲げ加工精度を高精度に保持できる。 【0066】 なお、実施例1においては、鋼管1を定位置に固定し、加熱コイル10を移動させる構成にしたが、その反対の構成にしてもよいし、両者1,10を同時に相対移動させる構成としてもよい。実施例2,3においては、加熱コイル10を定位置に固定する構成としたが、鋼管1に対し相対移動させる構成としても良い。 【0067】 また、実施例1?3においては、加熱手段(加熱コイル10)に冷却手段(冷却水12の環水流路10aと穴h)を一体に設けたが、それぞれ独立した手段とし、それぞれの移動を別々に制御する構成とすることもできる。 【0068】 【発明の効果】 (1)第1?第3の装置と第4?第6の方法においては、上述のように、鋼管に曲げモーメントを加える際に、鋼管内の偏心軸線上に設定した2つの力の作用点の間に引張り力を加え、鋼管を長さ方向に圧縮するようにしたから、鋼管の曲げ加工による伸びを抑え、鋼管の減肉を抑制することができる。 【0069】 (2)第1の装置と第4の方法においては、上述のように、鋼管に曲げモーメントを加える際に、引張り力のみを加えるようにしたから、装置が小型、軽量になり、装置の施工現場への運搬、据え付けが容易になる。このため、工事の進行、設計変更に即応した効率のよい鋼管の曲げ加工が可能になる。 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例1の鋼管曲げ加工装置の横断面図である。 【図2】実施例2の鋼管曲げ加工装置の横断面図である。 【図3】実施例3の鋼管曲げ加工装置の横断面図である。 【図4】従来例1の鋼管曲げ加工装置の平面図である。 【図5】従来例2の鋼管曲げ加工装置の平面図である。 【図6】図4及び図5における加熱コイルと鋼管の拡大断面図と鋼管の局部加熱部の温度分布曲線である。 【符号の説明】 1 鋼管 2 サポートローラー 3 テールストック 4,14 プッシャー 5 ピボット 6 旋回アーム 7 アームクランプ 8,9 ガイドローラー 10 加熱コイル 10a 環状流路 h 穴 11 加熱装置 12 冷却水 k 環状加熱部 c 環状冷却部 K 環状の局部加熱部 13 プッシュローラ 21 レール 22 駆動装置 23 前部挟圧板 24 後部挟圧板 25 チェーン引張り装置 25a 油圧シリンダ 25b チェーン 26 保持台 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2008-03-18 |
結審通知日 | 2008-03-19 |
審決日 | 2008-03-25 |
出願番号 | 特願平10-187468 |
審決分類 |
P
1
113・
536-
YA
(B21D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野村 亨 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
福島 和幸 菅澤 洋二 |
登録日 | 1999-08-20 |
登録番号 | 特許第2967482号(P2967482) |
発明の名称 | 鋼管曲げ加工装置及び方法 |
代理人 | 佐々木 敦朗 |