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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20061739 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1178294 |
審判番号 | 不服2004-15152 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-21 |
確定日 | 2008-06-05 |
事件の表示 | 特許権存続期間延長登録願2000-700166「抗菌剤」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本件特許及び本件特許発明 特許第1997968号(以下、「本件特許」という。)は、平成2年2月9日に出願され(特願平2-29960号、優先権主張 平成元年2月10日、平成元年9月15日、日本国)、平成7年12月8日に特許権の設定登録がされたものであって、その特許発明は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものである。 【請求項1】 「式 〔式中、R^(1)は水素、メトキシまたはトリフルオロメチルを、R^(2)およびR^(3)は同一または異なって水素またはメチルを、R^(4)はフッ素化された炭化水素残基を、nは0または1をそれぞれ示す。〕で表される化合物またはその塩を含有してなる抗菌剤。」 (請求項2は省略する。以下これを「本件特許発明」という。) 2.本件特許権存続期間の延長登録出願 本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、「本件出願」という。)は、平成12年12月21日に出願され、平成16年6月10日付けで拒絶査定がされ、平成16年7月21日に審判請求がされたものである。 本件出願は、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったとして、4年3月22日の特許権存続期間の延長を求めるものであり、その政令で定める処分として、以下の内容を特定している(以下、「本件処分」という)。 (1)延長登録の理由となる処分 薬事法第14条第6項に規定する医薬品の製造の承認事項の一部変更に係る同項の承認 (2)処分を特定する番号 承認番号20400AMZ01104000号 (3)処分を受けた日 平成12年9月22日 (4)処分の対象となった物 ランソプラゾール (5)処分の対象となった物について特定された用途 胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助 3.原審の拒絶理由の概要 原審の拒絶の理由は、「この出願に係る特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、この出願は、特許法第67条の3第1項第1号に該当する。」というものであり、より具体的には、本件処分の対象となったランソプラゾールについて新たに特定された「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ(以下、「Hp」という。)の除菌の補助」という用途は、本件特許発明の「抗菌剤」という用途と相違するから、本件処分を受けた医薬を製造することは本件特許発明の実施に該当せず、本件特許発明を実施するために本件処分を受けることが必要であったとは認められないというものである。 4.当審の判断 (4-1)特許法第68条の2は、「特許権の存続期間が延長された場合・・・の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となった第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」と規定しており、この規定に照らすと、延長登録が認められるためには、政令で定める当該処分の範囲と延長登録出願の対象である特許発明の範囲とが重複していることが必要である。 (4-2)これを本件についてみるに、本件出願の添付資料である、平成2年11月29日付け医薬品製造承認申請書(販売名タケプロンカプセル15)、その別紙(1)、(2)及び別紙「ランソプラゾール基準品の規格及び試験方法」、並びに平成11年2月16日付け医薬品製造承認事項一部変更承認申請書(販売名タケプロンカプセル15)によれば、本件処分の対象となった物は「ランソプラゾール」であって、本件特許発明の化合物においてR^(1)=水素、R^(2)=メチル、R^(3)=水素、R^(4)=トリフルオロエチル、n=1としたものと一致するから、本件特許発明の物と重複している。 (4-3)一方、本件処分においてランソプラゾールに追加された用途は、上記添付資料によれば、「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHpの除菌の補助」であり、本件特許発明の用途である「抗菌(剤)」とは文言上一致していない。 (4-4)そこで、本件処分で追加された「・・・Hpの除菌の補助」という用途が、「抗菌(剤)」という本件特許発明の用途と、文言は相違しても実質的に重複するか否かについて、以下に検討する。 一般に、「抗菌」は「除菌」を包含する広い概念又は上位概念を示す用語であることが認められる。したがって、本件処分で追加された「・・・Hpの除菌の補助」という用途が「・・・Hpの除菌」という用途と実質的に同一である限りにおいては、「抗菌(剤)」が「除菌の補助」をも包含し、両用途は重複することとなる。しかしながら、本件処分で追加された「・・・Hpの除菌の補助」という用途は、「・・・Hpの除菌」という用途と同一視することはできない。その理由は以下のとおりである。 平成16年3月25日付け意見書に参考資料1として添付された「タケプロンカプセル15及び同30の添付文書情報」の【薬効薬理】の欄には、「3.ヘリコバクター・ピロリ除菌の補助作用・・・(1)(省略)(2)アモキシシリン及びクラリスロマイシンとの3剤療法におけるランソプラゾールの役割は胃内pHを上昇させることにより、アモキシシリン及びクラリスロマイシンの抗菌活性を高めることにあると考えられる。」と記載され、ランソプラゾールの除菌の補助が該成分自身の抗菌作用に由来する効能効果でないことが明らかである(クラリスロマイシン、アモキシシリン及びランソプラゾールを、以下単に「3剤」ということがある)。 また上記添付文書の記載の基礎となったランソプラゾールの承認申請の審査結果に係る国立医薬品食品衛生研究所の「審査報告書」(衛研発第2701号)の14頁16?19行及び28頁1?9行によれば、当該承認申請の審査においては、ランソプラゾールが弱いHp抗菌作用を持つという事実は認識しながらも、3剤併用時のランソプラゾールの作用効果は、あくまで他の2剤の抗菌力を高めたり分解を抑制したりすることによって「除菌の補助(胃内pHの調節)」を行うものとして確認されている。 さらに上記報告書の「審査結果」の項の6?7頁によれば、3剤併用療法において新たに追加された各薬剤の用途(効能・効果)については、ランソプラゾールが「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHpの除菌の補助」と記載されているのに対し、アモキシシリン及びクラリスロマイシンは「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHp感染」と記載されている。また同報告書の「新医薬品第四調査会における審査の概要」の項の19頁26?32行をみても、各薬剤が奏する作用に関し「Hpの除菌」と「除菌の補助(胃内pHの調節)」とは区別して記載されている。すなわち同報告書では、3剤併用療法においてランソプラゾールについて認められた「・・・Hpの除菌の補助」という用途は、Hpに対して除菌又は抗菌作用を発揮する役割を果たす他の2剤の用途とは相違するものとして認識されていることが明らかである。 そうすると、これら添付文書及びその基礎となった審査報告書の記載内容からみて、承認申請の審査で3剤併用療法において新たに認められたランソプラゾールの「・・・Hpの除菌の補助」という用途は、「・・・Hpの除菌」という用途と実質的に同一とみることはできないから、結局、本件処分で追加されたランソプラゾールの「・・・Hpの除菌の補助」という用途は、他の2剤の用途とは異なり、本件特許の「抗菌剤」という用途と実質的に重複すると言うことはできない。 (4-5)この点に関し請求人は、平成16年11月18日付けの審判請求書の手続補正書において、本件処分で新たに認められたランソプラゾールの用途が文言上「Hpの除菌の補助」という表現であっても、これは3剤併用療法におけるランソプラゾールがそれ自体としての抗菌作用の発揮以上に他の抗菌剤の抗菌力の向上や分解の防止という主要な役割を果たすことが当局に重視されたに過ぎず、ランソプラゾール自体が単独でHpに対する選択的抗菌作用を有することを当局は認めた上で承認を与えているのであるから、本件処分で追加された「Hpの除菌の補助」という用途は「Hpの除菌」という用途と実質的に同義であるか、又は「Hpの除菌」若しくは「3剤の組合せによる抗菌剤」という用途の下位概念であることを主張するとともに、平成17年3月22日付けのFAXによる審尋書に対する平成17年4月15日付け回答書において、本件処分の審査では「除菌」という用語は菌に対する作用の程度(強さ)に関して「抗菌」という用語と区別して使用されていることを考慮すれば、「審査報告書」にランソプラゾールが「除菌」効果を有しないという記載があったとしても、そのことは「抗菌」効果がないことを意味せず、むしろランソプラゾールがHpに対する「抗菌」作用を持つことを当局は否定していないのであるから、「抗菌剤」に係る本件特許発明を実施するためには本件処分が必要であったことを主張している。 (4-6)しかしながら、たとえランソプラゾールがそれ自体単独で「抗菌」作用を有することが事実であっても(そもそも「抗菌剤」に係る本件特許が存在すること自体、ランソプラゾールが「抗菌」作用を有することを前提としているから、このことは当然の事実であることは措くとして)、本件出願に係る延長登録が認められるためには、あくまで本件処分の範囲(物と用途)と本件特許発明の範囲(物と用途)とが重複していることが必要であることは上記(4-1)で述べたとおりであり、本件処分で追加されたランソプラゾールの「・・・Hpの除菌の補助」という用途が、本件特許発明の「抗菌剤」という用途と文言上一致していないばかりか、実質的にも重複しないことは、上記(4-3)及び(4-4)で述べたとおりであって、本件処分は本件特許発明の「抗菌剤」という用途についてされたものということはできないから、ランソプラゾールがそれ自体単独でHpに対する抗菌作用を有するか否かにかかわりなく、「抗菌剤」の用途に係る本件特許発明を実施するために「Hpの除菌の補助」の用途を追加する本件処分が必要であったとは認められない。 5.むすび したがって、本件処分は、本件出願に係る特許発明の実施に必要な処分であったとは認められないから、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号の規定に該当し、本件特許権存続期間の延長登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-05-26 |
結審通知日 | 2005-05-31 |
審決日 | 2005-06-13 |
出願番号 | 特願2000-700166(P2000-700166) |
審決分類 |
P
1
8・
71-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 荒木 英則 |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
中野 孝一 森田 ひとみ |
発明の名称 | 抗菌剤 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 高橋 秀一 |