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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1178386
審判番号 不服2006-13594  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-29 
確定日 2008-05-21 
事件の表示 特願2004- 20871「軸受装置の流体潤滑剤注入方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-156787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯の概要
本願は、平成7年3月31日に出願した特願平7-99742号の一部を平成16年(2004年)1月29日に新たな特許出願としたものであって、平成18年5月9日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年6月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年6月29日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年6月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
流体潤滑剤を介してスリーブとこのスリーブに挿入されたシャフトとが相対回転支持される軸受装置に対し、前記スリーブと前記シャフトとの間の軸受間隙に前記流体潤滑剤を注入する注入方法であって、
前記軸受間隙を該軸受間隙の軸方向一方側を閉塞した状態で軸方向他方側から減圧し、この減圧状態で前記軸受間隙に軸方向他方側から液体潤滑剤を注入することを特徴とする軸受装置の液体潤滑剤注入方法。」
と補正された。(なお、下線は、請求人が付与した本件補正による補正箇所を示す。)

上記特許請求の範囲の請求項1に係る補正は、出願当初の明細書の記載に基づき、軸受間隙の減圧について「該軸受間隙の軸方向一方側を閉塞した状態で軸方向他方側から」との限定を付加するとともに、軸受間隙への液体潤滑剤の注入方向について「軸方向他方側から」との限定を付加するものであって、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する平成6年改正前の特許法第126条第3項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載事項
<刊行物1>
本願の原出願日前に頒布された刊行物である特開昭54-137543号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「流体軸受装置の組立方法」に関して、下記の事項ア?ウが図面とともに記載されている。
ア;「本発明は、回転ヘッド型磁気録画再生装置(VTR)の回転ヘッドシリンダ部等の回転部を支持する流体軸受の組立方法に関するもので、組立の最終段階において容易に潤滑剤を注入できるようにしたものである。」(第1頁右下欄1行?5行)

イ;「第5図は、潤滑油供給のための油圧,空気圧回路である。
50は真空ポンプ、51は消音器、52はフィルタ、53は空圧制御弁である。
54は油圧ポンプ、55はリリーフ弁、56は油圧制御弁、57は潤滑油タンク、58は真空圧ゲージである。
さて、第3図,第5図から、VTRシリンダへの潤滑油の供給方法の手順を説明する。
第3図のごとく、装置組立後ネジ部43に、油圧配管用継手44を介してパイプ45を連結する。中心固定軸止めネジ32をゆるめ、シリンダ上部から、第3図の矢印で示される方向に静かに荷重(W=5Kg?10Kg)を加える。
すると、回転スリーブ14の底辺部はoリング40と密着した状態となる。この状態を維持しつつ、第5図における真空ポンプ50を作動させる。
空気の真空達成度を、ゲージ58で確認後、制御弁53,56を切り換え、油圧ポンプを作動させる。
かくして潤滑油タンク57よりの潤滑油は、パイプ45を通じて、流体潤滑部30に充満される。潤滑剤封じ込め作業が終了後、中心固定軸47を上方に持ち上げて元の位置にもどし、中心固定軸止めネジ32でもって、中心固定軸19を下部ハウジング22に締結する。」(第5頁左上欄11行?右上欄17行)

ウ;「さて、本発明の効果を列記すると、次の通りである。
(1)シリンダ装置組立後に、潤滑油の注入が出来る。
シリンダ組立作業には、ヘッド位置合わせ,DDモータのギャップ調整,部材の心出し、等の複雑な工程があり、途中各部品がオイルによって汚染されると、部品を洗浄せねばならず組立作業に大きな支障をきたす。しかし本発明を用いるならば、周囲の環境をオイルで汚染することなく簡易にオイルの注入作業を行うことが出来る。
(2)潤滑油の補給,交換が容易である。
VTR装置を長時間使用後、オイルの交換,補充を行う場合でも、本方法を用いるならばシリンダ・アセンブリを分解しなくてもシリンダをVTR装置に取り付けた状態のままで、容易にオイルの注入作業が出来る。
(3)潤滑油に空気が混入しない。
オイル注入の際、空気が混入すると、流体軸受の潤滑効果が低減し、負荷容量が低下するだけでなく、回転数以下の低い周波数成分を持つ不安定現象(うねり)が発生したりする。
流体軸受の油膜部のクリアランスは、10μ?50μ程度であるが、空気を完全に排斥し、オイルを軸受の各細部まで浸透させることは、従来困難であった。
本発明を用いるならば、ポンプの真空達成度さえ十分ならば外部から空気の混入する余地がなく、軸受油膜部に均一にオイルを浸透させることが出来る。
従来潤滑流体を組立時に、装置に封じ込めるためには多くの問題点があった。
例えば、漏洩による潤滑効果の低下,他部品への汚染,及び検出部汚染によるドロップ・アウト(信号検出ミス),テープとシリンダ間のオイル付着による摩擦力変化によるテンション・コントロールの調整ズレは、流体軸受構造によるVTR装置の最大のネック・ポイントであったが、本発明によってこれらの問題点は解消することが出来た。
以上、VTRに流体軸受を適用した場合について、潤滑流体の封じ込め方法と構造を説明してきたが他の流体軸受の適用が考えられる装置についても本発明は適用することが出来る。」(第6頁右下欄14行?第7頁右上欄18行)

刊行物1に記載された上記記載事項ア?ウ及び図面の記載からみて、刊行物1には、本願補正発明の記載に倣えば、下記の発明が記載されているものと認めることができるものである。
「潤滑油を介して回転スリーブ14とこの回転スリーブ14に挿入された中心軸47とが相対回転支持される流体軸受装置に対し、前記回転スリーブ14と前記中心軸47との間の流体潤滑部30(軸受間隙)に前記潤滑油を注入する注入方法であって、
前記流体潤滑部30を該流体潤滑部30の一方側を回転スリーブ14の底辺部をoリング40と密着した状態(軸方向一方側を閉塞した状態)で潤滑油流通路42の一端側(軸方向の他端側)から減圧し、この減圧状態で前記流体潤滑部30に潤滑油流通路42の一端側(軸方向の他端側)から潤滑油を注入する流体軸受装置の潤滑油注入方法。」

(3)対比・判断
刊行物1に記載された発明の潤滑油注入方法において、「流体軸受装置」は本願補正発明の「軸受装置」に機能的に相当し、以下同様に、「潤滑油」は「流体潤滑剤」に、「回転スリーブ14」は「スリーブ」に、「中心軸47」は「シャフト」に、「流体潤滑部30」は「軸受間隙」に機能的に相当するものと認めることができるものである。
そして、刊行物1に記載された発明でも「流体潤滑部30」はその一端部を回転スリーブ14の底辺部をoリング40と密着した状態とされることにより軸方向一方側を閉塞した状態とされ、その軸方向他方側を中心軸47に形成した潤滑油流通路42の一端部と流通可能に構成し、この潤滑油流通路42を介して流体潤滑部30の他端側から流体潤滑部30を減圧するとともに、この流体潤滑部30に潤滑油を注入するように構成されているものと認めることができるものである。

そこで、本願補正発明の用語を使用して本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、「流体潤滑剤(潤滑油)を介してスリーブ(回転スリーブ14)とこのスリーブに挿入されたシャフト(中心軸47)とが相対回転支持される軸受装置(流体軸受装置)に対し、前記スリーブと前記シャフトとの間の軸受間隙(流体潤滑部30)に前記流体潤滑剤を注入する注入方法であって、前記軸受間隙を該軸受間隙の軸方向一方側を閉塞した状態(流体潤滑部30の一方側を回転スリーブ14の底辺部をoリング40と密着した状態)で軸方向他方側(流体潤滑部30の他方側で、中心軸47の形成した潤滑油流通路42と接続した側)から減圧し、この減圧状態で前記軸受間隙に軸方向他方側から液体潤滑剤を注入する軸受装置の液体潤滑剤注入方法。」で一致しており、実質的に構成上相違する点は認めることができないものである。
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

たとえ、流体潤滑部30(軸受間隙)の閉塞構造等において、本願補正発明と刊行物1に記載された発明との間で一部構成上の相違点が存在するとしても、これらの構成上の相違点については、当業者であれば刊行物1に記載された発明から必要に応じて容易に想到することができる程度の事項であって、格別創意を要することではない。
また、本願補正発明の効果について検討しても、刊行物1に記載された事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する平成6年改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明3
平成18年6月29日付けの手続補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項11に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載されたとおりのものであるところ、その請求項3に係る発明(以後、「本願発明3」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項3】
流体潤滑剤を介してスリーブとこのスリーブに挿入されたシャフトとが相対回転支持される軸受装置に対し、前記スリーブと前記シャフトとの間の軸受間隙に前記流体潤滑剤を注入する注入方法であって、
前記軸受間隙に第1のバルブを介して減圧手段を接続すると共に、前記軸受間隙に第2のバルブを介して液体潤滑剤が貯留された貯留槽を接続し、第2のバルブを閉じた状態で前記第1のバルブを開いて前記減圧手段により前記軸受間隙を減圧し、減圧の後、第1のバルブを閉じ、次に第2のバルブを開いて前記軸受間隙に前記貯留槽の液体潤滑剤を引き込ませることで注入することを特徴とする軸受装置の液体潤滑剤注入方法。」

(2)引用刊行物の記載事項
<刊行物2>
原査定の拒絶理由に引用された、本願の原出願日前に頒布された刊行物である実願昭61-113757号(実開昭63-19472号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、動力舵取装置等の油圧装置を実車に装着する際にその油圧装置内にオイルを注入する「オイル注入装置」に関して、下記の事項カ?ケが図面とともに記載されている。
カ;「<考案が解決しようとする問題点>
かかる従来のオイル注入方法によると、回路を構成する管が細く、また上記作業が全て手作業で行なわれているため、注入作業に時間がかかり、しかもオイル中のエア抜きが十分に行なわれず、作業不良の要因となっていた。
<考案の効果>
本考案はかかる従来の問題点を解消するためになされたもので、前記オイル注入装置を、オイルを注入すべきリザーバの注入口に脱着されるキャップと、前記リザーバ内のエアを前記キャップならびに連通管を介して吸引してリザーバ内を真空にするバキューム装置と、このバキューム装置と前記オイルタンクとを連通する連通管上に介挿され前記バキューム装置による吸引を制御する第1弁装置と、前記リザーバ内へ補給するオイルを貯蔵しかつこのオイルを連通管を介して前記リザーバ内に補給するオイルタンクと、このオイルタンクとリザーバを連通する連通管上に介挿されオイルの流出を制御する第2弁装置とより構成したことを特徴とするものである。
<問題点を解決するための手段>
本考案は上記のごとく構成されているため、先ずバキューム装置にてリザーバ内のエアを吸引して真空にし、その後管路をバキューム装置からオイルタンク側に切換え、このオイルタンクよりオイルを補充することで、リザーハ、ポンプ、動力舵取装置本体ならびにこれらの間を接続する管路系の全てにオイルが充満される。」(明細書第3頁1行?第4頁9行)

キ;「第1図において10は実車に装着状態の動力舵取装置のリザーバを示し、このリザーバ10を含む動力舵取装置の回路系にオイルを注入するために本考案のオイル注入装置が使用される。このオイル注入装置10は、キャップ11と、バキューム装置12と、オイルタンク13とを主要構成とし、これら構成要素が管路を介して接続されている。
前記キャップ11は可撓管14,管路15ならびに管路16を介してバキューム装置12と接続され、バッキューム時にはこのキャップ11を前記リザーバ10の注入口10aに液密的に装着することによってエアの吸引が行なわれるようになっている。そしてこの管路15,16の途中には前記吸引されたエア中のオイルを除去するオイル除去タンク18と、前記バッキューム装置12による吸引を制御する第1弁装置19と、真空圧を測定する負圧計20が介挿されている。
またキャップ11には同じく可撓管14、連通管21を介してオイルタンク13が接続され、その連通管21上に配設された第2弁装置22を操作することでこのオイルタンク13内に貯蔵されたオイルを前記リザーバ10内へ流出させるようになっている。」(明細書第4頁12行?第5頁14行)

ク;「<作用>
上記構成において、リザーバ10を含む動力舵取装置の回路内にオイルを注入するには、先ず実車に装着状態にあるリザーバ10の注入口10aに対してキャップ11を装着し、しかる状態においてバッキューム装置12を起動する。このとき、第1弁装置19は開状態にあり、また第2弁装置21は閉状態にあるため、リザーバ10を含む回路系のエアは、キャップ11、可撓管14、連通管15、第1弁装置19、オイル除去タンク18、連通管16を介して吸引され、リザーバ10内は徐々に真空にされる。リザーバ10内の負圧の変化を負圧計20にて監視し、所定の負圧になると同時に第1弁装置19を閉止し、続いてバキューム装置12の作動を停止する。
その後第2弁装置22を操作して開状態にすると、前記リザーバ10内は負圧状態にされているため、オイルタンク13内のオイルは勢いよくリザーバ10ならびに動力舵取装置の回路系へ流入し、注入作業が終了すると同時に第2弁装置22を閉止する。」(明細書第6頁2行?第7頁2行)

ケ;「<考案の効果>
以上述べたように本考案は、リザーバを含む動力舵取装置の油圧系を真空状態にしておき、その後弁装置の切換えによってオイルタンク内のオイルを前記負圧を利用して注入するようにしたもので、短時間にオイルを注入することができ、しかも、オイル内へのエアの混入もなくなる利点を有する。」(明細書第7頁16行?第8頁3行)

刊行物2に記載された上記記載事項カ?ケ及び図面の記載からみて、本願発明3の記載に倣えば、刊行物2には、下記の発明が記載されていると認めることができるものである。
「リザーバ10に対し、オイルを注入する注入方法であって、リザーバ10の注入口10aに第1弁装置19を介してバキューム装置12を接続すると共に、前記注入口10aに第2弁装置22を介してオイルが貯留されたオイルタンク13を接続し、第2弁装置22を閉じた状態で前記第1弁装置19を開いて前記バキューム装置12によりリザーバ10内を減圧し、減圧の後、第1弁装置19を閉じ、次に第2弁装置22を開いて前記リザーバ10に前記オイルタンク13のオイルを引き込ませること(負圧状態)で注入するオイルの注入方法。」

(3)対比・判断
刊行物2に記載された発明のオイル注入方法からみて、オイルの用途とオイルが注入される対象物は相違するものの、「オイルの注入方法」としては、刊行物2に記載された発明の「第1弁装置19」は本願発明3の「第1のバルブ」に機能的に相当し、以下同様に、「バキューム装置12」は「減圧手段」に、「第2弁装置22」は「第2のバルブ」に、「オイルタンク13」は「貯留槽」に機能的に相当するものと認めることができるものであり、また、本願発明3の「流体潤滑剤」も「オイル」であることでは刊行物2に記載された発明の「オイル」に相当するといい得るものであり、本願発明3の「軸受間隙」も「オイルが注入される減圧された空間(間隙)」であることでは刊行物2に記載された「リザーバ10の空間」に相当するといい得るものである。

そこで、本願発明3の用語を使用して本願発明3と刊行物2に記載された発明とを対比すると、両者は、「オイルが注入される空間(軸受間隙又はリザーバ10の空間)に対し、前記オイルが注入される空間にオイルを注入する注入方法であって、前記オイルが注入される空間に第1のバルブを介して減圧手段を接続すると共に、前記オイルが注入される空間に第2のバルブを介してオイルが貯留された貯留槽を接続し、第2のバルブを閉じた状態で前記第1のバルブを開いて前記減圧手段により前記オイルが注入される空間を減圧し、減圧の後、第1のバルブを閉じ、次に第2のバルブを開いて前記オイルが注入される空間に前記貯留槽のオイルを引き込ませることで注入するオイル注入方法。」で一致しており、下記の点で相違している。

相違点;本願発明3では、オイルが流体潤滑剤であって、この流体潤滑剤を介してスリーブとこのスリーブに挿入されたシャフトとが相対回転支持される軸受装置の前記スリーブと前記シャフトとの間の軸受間隙に前記流体潤滑剤を注入するものであるのに対して、刊行物2に記載された発明では、オイルは、動力舵取装置の回路系に用いられるものであって、動力舵取装置の回路系のリザーバ10にオイルを注入するものである点。

上記相違点について検討するに、スリーブとこのスリーブに挿入されたシャフトとが相対回転支持される軸受装置の前記スリーブと前記シャフトとの間の軸受間隙に流体潤滑剤(潤滑油)を注入する方法として、前記軸受間隙を減圧状態にし、この減圧状態とされた軸受間隙にオイルを引き込ませて注入することは、本願出願前(本願の原出願日前)当業者に周知の軸受装置の軸受間隙へのオイル注入方法の一つにすぎないものである。(もし必要であれば、特開昭54-137543号公報等参照)
そして、上記周知の軸受装置の軸受間隙へのオイル注入方法を知り得た当業者であれば、上記刊行物2に記載されたオイル注入方法を軸受装置の軸受間隙へのオイル注入方法として採用することを妨げる格別の事情がないことは普通に理解できる程度の事項と認められるものである。
してみると、刊行物2に記載された発明及び上記本願出願前周知の軸受装置の軸受間隙へのオイル注入方法を知り得た当業者であれば、刊行物2に記載された発明のオイル注入方法を軸受装置の軸受間隙へのオイル注入方法に採用して上記相違点に係る本願発明3の構成とすることは、必要に応じて容易に想到することができる程度の事項であって、格別創意を要することではない。

また、本願発明3の効果について検討しても、刊行物2に記載された発明及び上記本願出願前周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別創意を要することではない。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明(本願発明3)は、刊行物2に記載された発明及び本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願の請求項3に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-31 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-10 
出願番号 特願2004-20871(P2004-20871)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨岡 和人  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 山岸 利治
水野 治彦
発明の名称 軸受装置の流体潤滑剤注入方法  

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