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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800004 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  G08G
審判 全部無効 特38条共同出願  G08G
管理番号 1178569
審判番号 無効2005-80270  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-09-08 
確定日 2008-05-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第3437101号「車間距離保持不足違反の違反証拠作成システムとその車間距離の測定方法」の特許無効審判事件についてされた平成18年7月3日付け審決に対し,東京高等裁判所において審決取消しの判決(平成20年2月7日判決言渡し,平成18年(行ケ)第10369号)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 特許第3437101号の請求項1ないし9に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 第1. 手続の経緯
本件特許第3437101号発明についての出願は,平成10年9月18日に,発明者を「安田」,「千枝」の2名とし,出願人を「株式会社測研」として特許出願されたものであって,平成15年6月6日に特許権の設定の登録がなされたものである。
その後,平成17年9月8日に請求人・パルシステム株式会社より本件特許無効審判の請求がなされたところ,平成17年11月28日付けで被請求人・株式会社測研より答弁書の提出がなされ,平成18年2月23日に口頭審理を行ったものであって,平成18年7月3日付けで「本件審判の請求は成り立たない。」との審決がなされた。
本件審判事件の請求人はこれを不服として知的財産高等裁判所に同審決の取消しを求める訴えを提起した(平成18年(行ケ)第10369号)ところ,平成20年2月7日に同審決を取り消す旨の判決がなされた。

第2. 本件特許発明
本件特許第3437101号の請求項1ないし9に記載された発明(以下,全請求項に係る場合を「本件特許発明」といい,各請求項に係る場合を「本件特許発明1」などという。)は,その出願に係る明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。そして,その請求項1,2には次のとおり記載されている。
「【請求項1】 レーザー光線を用いて照射ポイントまでの距離を計測する一方向又は同時二方向の距離測定機(1)と,その計測場所の経緯度を測定するGPS経緯度測定機(2)と,その測定時の時刻を特定する時計(3)と,違反車の速度を計測する速度計(4)と,関係車両の車両登録番号を入力する番号入力装置(5)と,前記距離測定機(1),GPS経緯度測定機(2),時計(3),速度計(4)及び番号入力装置(5)から得られた電子情報をプログラム処理するコンピュータ(6)と,そのコンピュータ(6)で情報処理されたデータをプログラムされた所定様式の違反キップ(K)に出力するプリンタ(7)とが電子的に接続されて成る違反証拠作成装置(S)を,取締りパトロールカー(A)に搭載し,同一車線を走る前走車(C)と車間距離保持不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る前記パトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記違反証拠作成装置(S)によって前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を,前記パトロールカー(A)に搭載した距離測定機(1)によってそのレーザー照射位置(Z)を中心に計測した距離データを基に前記レーザー照射ポイント(X)(Y)(Z)を三角形の三点とする三角測量法から算出し,前記距離測定機(1)による計測と同時的に連動して前記違反証拠作成装置(S)により得られた車間距離(L)データ,経緯度位置データ,時刻データ及び速度データをコンピュータ(6)に取り込むとともにそれらの計測データとは別に人為的に入力した車両登録番号データを前記コンピュータ(6)で情報処理して前記プリンタ(7)から前記違反キップ(K)に出力できるようにしたことを特徴とする車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。
【請求項2】 レーザー光線を用いて照射ポイントまでの距離を計測する距離計測機構(15)とそのレーザー照射ポイントをマーキングした写真に撮影するCCDカメラ機構(16)とを備えた一方向又は同時二方向の距離測定機(1)と,その計測場所の経緯度を測定するGPS経緯度測定機(2)と,その測定時の時刻を特定する時計(3)と,違反車の速度を計測する速度計(4)と,関係車両の車両登録番号を入力する番号入力装置(5)と,前記距離測定機(1),GPS経緯度測定機(2),時計(3),速度計(4)及び番号入力装置(5)から得られた電子情報をプログラム処理するコンピュータ(6)と,そのコンピュータ(6)で情報処理されたデータをプログラムされた所定様式の違反キップ(K)に出力するプリンタ(7)とが電子的に接続されて成る違反証拠作成装置(S)を,取締りパトロールカー(A)に搭載し,同一車線を走る前走車(C)と車間距離保持不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る前記パトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記違反証拠作成装置(S)によって前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を,前記パトロールカー(A)に搭載した距離測定機(1)によってそのレーザー照射位置(Z)を中心に計測した距離データを基に前記レーザー照射ポイント(X)(Y)(Z)を三角形の三点とする三角測量法から算出し,前記距離測定機(1)による計測と同時的に連動して前記違反証拠作成装置(S)により得られた車間距離(L)データ,CCDカメラ画像データ,経緯度位置データ,時刻データ及び速度データをコンピュータ(6)に取り込むとともにそれらの計測データ及び画像データとは別に人為的に入力した車両登録番号データを前記コンピュータ(6)で情報処理してその処理された文字及び画像を前記プリンタ(7)から前記違反キップ(K)に出力できるようにしたことを特徴とする車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。」

第3. 請求人及び被請求人の主張概要
1. 請求人の主張概要
請求人は,甲第1号証ないし17号証を提出して次にように主張した。
(1) 本件特許出願においては,その発明者が「安田」,「千枝」の2名とされているが,本件特許に係る発明は,さらに「鈴木」,「小林」の2名を加えた4名によってなされたものである。即ち,本件特許発明のシステムは,「鈴木」が構想したものであり,また,本件特許の請求項2に係る発明の「マーキング」に関し,これをソフトウエアによって画像に形成することは,「小林」が発案したのであるから,この両名も共同発明者である。
(2) 本件特許発明についての特許を受ける権利は,請求人と被請求人の共有に係るものであるにも拘わらず,被請求人は単独で特許出願を行った。本件特許は,特許法第38条(共同出願)の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきものである。
(3) 本件特許出願の出願人である被請求人は,「鈴木」,「小林」から本件特許発明について特許を受ける権利を承継していない。本件特許は,発明者でないものであってその発明について特許を受ける権利を承継していないものの特許出願に対してされたものであって,同法第123条第1項第6号に該当し,無効とされるべきものである。

2. 被請求人の主張概要
本件特許に係る発明の発明者は,「安田」,「千枝」の2名であり,他の者は発明者ではないので,請求人の主張する無効理由はないとして,乙第1号証ないし7号証を提出した。
なお,被請求人は,訴訟段階で請求人適格を争ったが,請求人に利害関係があることは明らかである。

第4. 認定事実
知的財産高等裁判所平成20年2月7日判決(平成18年(行ケ)第10369号)における理由中で認定した事実は次のとおりである。
1. 基礎となる事実
判決においては,訴訟段階における証拠(甲1の2,甲2?4,6?9,21,25?30,33,40?42,44,51,乙9,原告代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨から次の事実を認めた。
以下はその概要である。
(1) 栃木県警の高速道路交通警察隊の管理係に所属していた「安田」は,平成10年度の警察装備コンクールに向けて,車両の距離測定器を利用した取締装置の出品を考えていたが,いまだ着想の段階にとどまっていた。平成10年6月初旬ころ,距離測定器を取り扱っている被告の代表者である「千枝」と会った。「千枝」は,「安田」から,速度取締りのために,走行中のパトカーから先行車との間の距離を測定し,その結果を印刷する装置を製作したいとの構想を聞き,そのような装置を製作するためにはソフトウェアの開発が必要であると考えて,知り合いの「鈴木」に相談した。
(2) 「千枝」と「鈴木」は,6月22日,栃木県警に赴いて「安田」らと面会し,再度,「安田」の考えている距離測定記録器の仕様を尋ねた。「千枝」及び「鈴木」は,「安田」と協力して,コンクール出品のための試作機を製作することとなり,「鈴木」は,ソフトウェアの開発を担当することとなった。
(3) 7月初旬の会合で,「鈴木」は,適合するハードウェアとして松下電器産業製のモバイルパソコンを使用することを提案し,その採用が決まった。「千枝」は,レーザ距離計を選定し,このレーザ距離計と小型のプリンタをモバイルパソコンに接続することにした。
(4) 7月下旬の会合で,「安田」は,取締場所の特定をキロポスト表(キロポストごとの住所一覧表)で行っていることを説明し,「千枝」がGPSを利用することを提案した。
(5) 「鈴木」は,8月1日から同月末にかけて,GPSを利用するとすると,モバイルパソコンへの入力のチャンネル数を増やす必要があり,データ連結装置の開発も必要であったので,知り合いのロングワードの「小林」に協力を要請し,ハードウェア及びソフトウェアの面から検討して,9月初めころまでに,コンクール用距離測定装置の試作機を製作した。その間の8月5日ころには,測定距離と日時をプリントアウトするのみの試作機を製作するとともに,距離測定器,モバイルパソコン,プリンタで構成されたシステム構成図と車間距離算出方法の略図(甲16添付の図面)を作成し,この試作機で,高速道路で測定テストを行った。さらに,8月20日ころには,距離測定器,GPS,データ連結装置,モバイルパソコン,プリンタで構成され,位置住所表示用マスタ等の記載されたシステム構成図と車間距離算出方法の略図(甲2資料)を作成した。
(6) 9月4日までに,「鈴木」・「千枝」・「安田」は,GPSデータ取込み部分を除く車間距離測定装置,すなわち,コンクール用試作機の製作を終わっていた。
GPSデータ取り込み部分については,「鈴木」は,9月初めに,「小林」にGPSデータ取込みソフトの作成を依頼し,GPS接続のためのRS232C/2chカードをメーカーに発注していた。
(7) 「鈴木」・「千枝」は,9月4日,「安田」に同行して警察庁に赴き,持参したコンクール用試作機について説明をしたところ,警察庁の担当者から,どこの距離を測定したかが不明である,後続車(被疑車両)の位置が不明であるとの2点で証拠能力に欠けるとの指摘を受けた。この対策としてCCDカメラと赤外線センサーを採用することになり,「鈴木」は,9月6日,「小林」に対し,カメラのデータ取得ソフト,GPSデータ取込みプログラム及びレーザ照射ポイントをソフトウェアによる写真へのマーキングで行うモジュール開発を依頼し,モジュールプログラムは同月27日に完成した。
(8) 栃木県警は,9月17日のコンクールへの出品で試作機が大きな反響を呼んだので,平成11年度のコンクールに向けて本格的に装置開発に乗り出すこととなり,10月中旬までに,コンクール用試作機を捜査用の機器として完成させるためにプロジェクトチームを結成し,完成機を完成させるに至った。平成11年秋のコンクールで,完成機は警察庁長官賞を受賞した。完成機は,「ホーク・アイ」の名称で商品化が進められ,平成12年度の科学技術庁長官賞を受賞した。
(9) 被告は,9月18日に「千枝」・「安田」を発明者とする本件出願をした。

2. 判決理由中の認定事実
上記(1)ないし(9)の事実関係から,判決理由においては,次の事実を認定した。
「『安田』の発案に係り,これに『鈴木』・『千枝』が協力して製作したコンクール用試作機は,既存の距離測定機,GPS,データ連結装置,モバイルパソコン,プリンタ等から構成されるものであり,開発の中心は各機器の接続関連のハード面と全体の機能を制御するソフト面の開発にあったこと,平成10年9月4日の時点で,甲3資料に記載されているとおり理論上のモデルは完成しており,コンクール用試作機はGPSの組込み部分を除いて基本的に完成しており,しかも,その部分は発注済みであり,9月27日ころに最終的に完成したことが認められる。そうすると,本件特許発明1に係る試作は,平成10年9月4日ころの時点で基本的に完了していたものというべきである。なお,本件特許発明2は,CCDカメラ等を組み込んでいる点で本件特許発明1と異なるが,それ以外の点では,本件特許発明1と同様であり,本件特許発明1又は2を包含する本件特許発明3?9も同様である。前記のとおり,本件特許発明が「技術的思想の創作」といい得るためには,単なる着想にとどまらず,試作あるいはテストを積み重ねて課題を解決し,着想を具体化していなければならないものであるところ,上記のとおり,『鈴木』・『千枝』・『安田』が協力して,6月から9月までの約3か月間に,試作機の製作,その改良を重ね,テストを行って,本件出願日前の9月4日までに試作機を基本的に完成させているのであるから,本件特許発明1に係る創作に関与したのは,『鈴木』・『千枝』・『安田』」の3名である。」

第5.むすび
以上,判決における認定事実によれば,本件特許発明は,「鈴木」・「千枝」・「安田」の共同発明であり,本件出願は,請求人が「千枝」・「安田」のみを発明者とし,「鈴木」を除外してした出願であるから,本件特許はすべての請求項につき無効といわざるをえない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-15 
結審通知日 2008-04-03 
審決日 2008-04-15 
出願番号 特願平10-283527
審決分類 P 1 113・ 152- Z (G08G)
P 1 113・ 151- Z (G08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 柿崎 拓
柴沼 雅樹
登録日 2003-06-06 
登録番号 特許第3437101号(P3437101)
発明の名称 車間距離保持不足違反の違反証拠作成システムとその車間距離の測定方法  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 平木 祐輔  
代理人 関谷 三男  
代理人 大塩 剛  
代理人 平山 俊夫  
代理人 飯田 房雄  

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