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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B |
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管理番号 | 1178669 |
審判番号 | 不服2004-16903 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-12 |
確定日 | 2008-05-30 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第257836号「異方性導電膜及び接続体」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月17日出願公開、特開平 8-124424〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判に係る出願は、平成6年10月24日に出願されたものであって、その願書に添付した明細書又は図面についての平成15年10月27日付け及び平成16年2月23日付け手続補正がなされた後、平成16年7月8日付けで拒絶査定されたものである。 そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたものであって、上記明細書又は図面についての平成16年9月13日付け手続補正がなされたが、該手続補正は、平成19年12月14日付けで補正の却下の決定がなされると共に、同日付け拒絶理由通知書が発送され、これに対して平成20年2月18日付け意見書が提出されると共に、上記明細書又は図面についての同日付け手続補正がなされている。 なお、上述した、補正の却下の決定は、確定している。 2.拒絶理由の内容 平成19年12月14日付け拒絶理由通知書で示した拒絶理由は、概要、以下の拒絶理由A及びBを含むものである。 拒絶理由A;この出願は、平成6年改正前の特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない。 拒絶理由B;平成16年2月23日付け手続補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第2項の規定により準用する同法第17条第2項の規定を満たしていない。 そして、上記拒絶理由通知書には、拒絶理由Aに関して、以下の記載が認められる。 「請求項1に記載の発明は、加熱加圧が終了したときのDSC反応率が60%未満で、放置した後のDSC反応率が60%以上であることを、発明特定事項としているが、その技術的意義も不明確である。例えば、比較例5は、この要件を満たすものとして記載されているものであるが、本件発明の課題といえるリペアー性が良好でないと評価されており、上記要件に如何なる技術的意義があるのかが不明となっている。」 また、同じく、拒絶理由Bに関して、以下の記載が認められる。 「本件補正後の請求項1及び2に記載の発明は、本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。以下、同様。))に記載があったということはできないから、本件補正は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。」 3.当審の判断 3-1.拒絶理由Aの妥当性について 1)特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下、「本件発明1」という。)は、同請求項1に記載のとおりのもので、本件の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の特許請求の範囲請求項1の記載は、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 熱硬化性の絶縁性接着剤と、表面処理されてマイクロカプセル化された硬化剤成分及び樹脂成分を含む潜在性硬化剤とを含有し、少なくとも導電性粒子が分散されてなる異方性導電膜において、 上記絶縁性接着剤は、エポキシ当量が2000?4000のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、 上記潜在性硬化剤の樹脂成分は、エポキシ当量180?200のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、 上記絶縁性接着剤の樹脂成分量と上記潜在性硬化剤の樹脂成分量との総量100重量部に対して上記潜在性硬化剤の硬化剤成分が10?40重量部配合されており、140℃、40kgf/cm^(2)で20秒間加熱加圧した直後のDSC反応率が60%未満で、上記加熱加圧後、常温中に24時間放置したときのDSC反応率が60%以上であることを特徴とする異方性導電膜。」 そして、本件発明1は、「140℃、40kgf/cm^(2)で20秒間加熱加圧した直後のDSC反応率が60%未満で、上記加熱加圧後、常温中に24時間放置したときのDSC反応率が60%以上である」と記載した事項(以下、「本件事項A」という。)を、その構成要件とするものであるが、以下に詳述するように、本件事項Aの技術的意義が不明である。 1-1)本件明細書等には、以下の記載ア?オが認められる。 ア;「【0010】 しかしながら、従来の異方性導電膜においては、加熱により硬化が急速に進み、接続後に剥すことは困難で、リペアー性が低い。また、加熱温度を低く設定すると、硬化の進みが遅すぎて確実な接続を行うことが困難である。 【0011】 そこで本発明は、従来の実情に鑑みて提案されたものであり、比較的低温で硬化を開始し、確実な接続を行うことができ、且つリペアー性も高い異方性導電膜、及びこの異方性導電膜を用いた接続体を提供することを目的とする。」(段落【0010】?【0011】) イ;「【0025】 【作用】 本発明の異方性導電膜においては、加熱加圧直後のDSC反応率が60%未満であることから、加熱加圧により急激に硬化することはなく、また加熱加圧後、常温中に24時間放置したときのDSC反応率が60%以上であり、硬化は加熱終了後に除々に進むこととなる。従って、これを用いて端子間等の接続を行った場合、加熱加圧して接続した後に剥離することができ、リペアー性が高い。また、硬化が十分になされることから端子間が確実に接続される。」(段落【0025】) ウ;「【0026】 【実施例】 以下、本発明を適用した具体的な実施例について実験結果に基づいて説明する。本実験例においては、絶縁性接着剤と潜在性硬化剤の種類及び分量を変えて異方性導電膜を製造し、これらの加熱加圧直後のDSC反応率及び加熱加圧後に常温中で24時間放置した後のDSC反応率、異方性導電膜の保存安定性、これらを用いて端子間の接続を行った場合の導通信頼性,ピール強度,リペアー性について調査した。 【0027】 先ず、異方性導電膜の製造を行った。絶縁性接着剤としてエポキシ当量が2000?4000のBPA型エポキシ樹脂(EP1009:商品名、油化シェルエポキシ社製)とエポキシ当量が180?200のBPA型エポキシ樹脂(EP828:商品名、油化シェルエポキシ社製)とを用意した。なお、前者の樹脂を樹脂A、後者の樹脂を樹脂Bと称する。 【0028】 一方、潜在性硬化剤としては、イミダゾール系の潜在性硬化剤であり、表面処理されてマイクロカプセル化されたノバキュアHX3741(商品名、旭化成社製、以下硬化剤aと称する。)及びノバキュアHX3921HP(商品名、旭化成社製、以下硬化剤bと称する。)、アミキュアPN-23(商品名:味の素社製、以下硬化剤cと称する。)、ACRハードナーH-3615(商品名:ACR社製、以下硬化剤dと称する。)を用意した。また、比較のために硬化剤としてイミダゾール系硬化剤であるキュアゾール2E4MZ(商品名:四国化成社製、以下硬化剤eと称する。)を用意した。なお、潜在性硬化剤a,bは硬化剤成分と樹脂B成分が1:2の割合で配合されているものである。 【0029】 そしてこれら樹脂及び潜在性硬化剤,硬化剤を表1に示すような分量で混合し実施例1?5及び比較例1?5を用意した。さらに、表1中には実施例1?5及び比較例1?5における樹脂成分量と硬化剤成分量も併せて示す。なお、表1中の数値の単位はそれぞれ重量部である。」(段落【0026】?【0029】)及び、 「比較例5」に対応する、「樹脂A」、「樹脂B」、「硬化剤a」、「硬化剤b」、「硬化剤c」、「硬化剤d」、「硬化剤e」、「樹脂成分量」及び「硬化剤成分量」の欄に、それぞれ、「40」、「60」、「-」、「-」、「-」、「-」、「30」、「100」及び「30」と記載された【表1】(段落【0030】) エ;「【0031】 続いて、上記実施例1?5及び比較例1?5のそれぞれとトルエンを混合して固形分70wt%に調整し、これらに粒径5?10μmの導電用粒子を5wt%の割合で混合し、これらを厚さ25μmに調整して異方性導電膜を製造した。なお、便宜上、実施例1?5及び比較例1?5を用いた異方性導電膜をそれぞれ実施例1?5及び比較例1?5と称することとする。 【0032】 次に、上記実施例1?5及び比較例1?5の異方性導電膜を用い、TAB型端子とガラス基板上に形成されたITO膜よりなるピッチ0.2mmの端子間の接続を行った。なお、上記接続は140℃に加熱し、40kgf/cm^(2) の強さで20秒間圧着して行った。 【0033】 また、上記実施例1?5及び比較例1?5の異方性導電膜の加熱加圧直後のDSC反応率と加熱加圧後に常温で24時間放置した後のDSC反応率を測定した。なお、上記加熱加圧は140℃で40kgf/cm^(2) の圧力を加えて20秒間行い、放置は25℃の常温下で行うものとし、DSC反応率の測定は前述の測定方法により行った。 【0034】 ・・・ 【0035】 さらに、実施例1?5及び比較例1?5の異方性導電膜を用いて接続したTAB型端子とITO膜よりなる端子間の導通信頼性,ピール強度,リペアー性を測定した。 【0036】 ・・・ 【0037】 上記ピール強度は、接続後、常温中にて12時間放置したもののTAB端子をガラス基板から引張速度50mm/分で直角方向で剥したときの強度を測定し、この種の異方性導電膜を使用して端子間の接続を行った場合には500gf/cmのピール強度が必要とされることから、ピール強度が500gf/cm以上のものを○、500gf/cm未満のものを×として評価した。 【0038】 上記リペアー性は、接続後に常温中にて12時間放置したもののTAB端子をガラス基板から剥した後に、ガラス基板上に残存する異方性導電膜をアセトンを十分に染み込ませた綿棒で100往復擦って調査し、残存する異方性導電膜が剥がれたものを○、剥がれなかったものを×として評価した。 【0039】 上述の各特性の結果を表2に示す。なお、ピール強度についてはピール強度の数値も併せて示す。」(段落【0031】?【0039】)及び、 「比較例5」に対応する、「DSC反応率(%)加熱加圧後」及び「DSC反応率(%)放置後」の欄に、それぞれ、「50」及び「60」と記載された【表2】(段落【0040】) オ;「【0045】 さらにまた、比較例5においては、硬化剤として潜在性硬化剤ではなく、通常の硬化剤を使用しており、加熱加圧直後、急速に硬化が進むため、リペアー性が良好ではなかった。」(段落【0045】) 1-2)記載アには、従来の異方性導電膜は、加熱により硬化が急速に進み、接続後に剥すことは困難で、リペアー性が低いこと、また、加熱温度を低く設定すると、硬化の進みが遅すぎて確実な接続を行うことが困難であり、このような実情から、本件明細書等において開示しようとする発明は、比較的低温で硬化を開始し、確実な接続を行うことができ、且つリペアー性も高い異方性導電膜を提供することを目的としていることが記載されている。 そして、記載イには、本件事項Aの作用効果が記載され、140℃、40kgf/cm^(2)で20秒間加熱加圧した直後のDSC反応率(以下、「直後反応率」という。)が60%未満であること、及び、上記加熱加圧後、常温中に24時間放置したときのDSC反応率(以下、「24時間後反応率」という。)が60%以上である異方性導電膜を用いて端子間等の接続を行った場合、端子間が確実に接続されること、すなわち、確実な接続を行うことができ、且つリペアー性の高いことが作用効果として記載され、これらのことが本件事項Aの技術的意義ということができる。 その一方で、本件明細書等には、比較例5が記載され、比較例5の異方性導電膜は、記載ウ及びエによれば、概要、エポキシ当量が2000?4000のビスフェノールA型エポキシ樹脂である、熱硬化性の絶縁性接着剤と、キュアゾール2E4MZ(商品名:四国化成社製)である硬化剤とを含有し、少なくとも導電性粒子が分散されてなる異方性導電膜であって、更に、エポキシ当量180?200のビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有し、上記2種のビスフェノールA型エポキシ樹脂量100重量部に対して上記硬化剤が30重量部配合されており、直後反応率が50%で、24時間後反応率が60%であることが認められ、比較例5の異方性導電膜は、少なくとも、本件事項Aを充足するものであるが、記載オによれば、リペアー性が良好でないと評価されており、このことは、上述した本件事項Aの技術的意義を矛盾するものであり、結果として、本件事項Aの技術的意義が不明確になっている。 1-3)本件事項Aは、先に「1-2)」で述べたように、確実な接続を行うことができ、且つリペアー性が高いことを作用効果としているものであるが、ここで、これら作用効果の詳細について見てみることにする。 まず、リペアー性については、記載エによれば、実施例1?5及び比較例1?5の具体例において、TAB型端子とガラス基板上に形成されたITO膜よりなるピッチ0.2mmの端子間の接続を、各具体例の異方性導電膜を用い、140℃に加熱し、40kgf/cm^(2) の強さで20秒間圧着して行い、その後、常温中にて12時間放置してから、TAB型端子をガラス基板から剥し、ガラス基板上に残存する異方性導電膜をアセトンを十分に染み込ませた綿棒で100往復擦って調査し、残存する異方性導電膜が剥がれたか、あるいは、剥がれなかったかによって、リペアー性を評価したものであることが窺える。 一方、確実な接続を行うことができることについては、本件明細書等の記載全体の趣旨からして、ピール強度を評価することによって行われていると認められ、上記具体例において、上記接続を行い、その後、常温中にて12時間放置してから、TAB型端子をガラス基板から引張速度50mm/分で直角方向で剥したときの強度を測定し、評価していることが窺える。 してみると、リペアー性についても、また、確実な接続を行うことができることについても、共に、上記接続を行った後、すなわち、異方性導電膜を加熱加圧後、常温中にて12時間放置してからのものについて評価しているということができる。 そこで、本件事項Aについてみると、該事項は、140℃、40kgf/cm^(2)で20秒間加熱加圧した直後のもの、及び、この加熱加圧後、常温中に24時間放置したときの、異方性導電膜の物性に係るものであって、加熱加圧後、常温中にて12時間放置した時点での上述したリペアー性や確実な接続を行うことができることについての評価が、果たして、本件事項Aの作用効果、すなわち、加熱加圧した直後に関する直後反応率や、加熱加圧後、常温中に24時間放置したときに関する24時間後反応率の作用効果を裏付けているのかといった疑問が生じることを禁じ得ず、このことからも、本件事項Aの技術的意義が不明確になっている。 2)以上述べたように、本件事項Aの技術的意義が不明確であり、そうである以上、本件事項Aが特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項であるということはできず、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項に区分してあることに適合しているとはいえない。 よって、本件出願は、平成6年改正前の特許法第36条第5項に規定する要件を満たさないものであって、拒絶理由Aは、妥当である。 3-2.拒絶理由Bの妥当性について 3-2-1.補正の内容 願書に添付した明細書又は図面についての平成20年2月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項2の記載を、以下のとおりにするものと認める。 「【請求項2】 熱硬化性の絶縁性接着剤と、表面処理されてマイクロカプセル化された硬化剤成分及び樹脂成分を含む潜在性硬化剤とを含有し、少なくとも導電性粒子が分散されてなる異方性導電膜を用いた接続体において、 上記絶縁性接着剤は、エポキシ当量が2000?4000のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、 上記潜在性硬化剤の樹脂成分は、エポキシ当量180?200のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、 上記異方性導電膜は、上記絶縁性接着剤の樹脂成分量と上記潜在性硬化剤の樹脂成分量との総量100重量部に対して上記潜在性硬化剤の硬化剤成分が10?40重量部配合され、 上記異方性導電膜は、加熱加圧直後のDSC反応率が60%未満の状態で接続され、加熱加圧後、常温中に24時間放置したときのDSC反応率が60%以上の状態で接続されていることを特徴とする接続体。」 3-2-2.補正の検討 特許請求の範囲の請求項2に記載の発明(以下、「本件発明2」という。)は、以下に詳述するように、本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「本件当初明細書等」という。)に記載があったということはできないから、本件補正は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 1)本件発明2は、接続体を対象とするものであり、「異方性導電膜は、加熱加圧直後のDSC反応率が60%未満の状態で接続され、加熱加圧後、常温中に24時間放置したときのDSC反応率が60%以上の状態で接続されている」と記載した事項を、その構成要件とするものである。 そして、上記事項は、その記載振りからして、異方性導電膜において、該膜同士が接続されていること、及び、異方性導電膜が、他の物体間を接続することなく、単に他の物体と接続されていることを包含する概念であるが、該事項を有する接続体に係る発明が本件当初明細書等に記載があったとする根拠は見当たらない。 2)これに対し、請求人は、平成20年2月18日付け意見書において、上記根拠を明らかにしていないが、以下に、補足する。 本件当初明細書等には、以下の記載が認められる。 「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、フレキシブルプリント基板の端子や、いわゆるTAB型の端子等の電気的、機械的接続に用いられる異方性導電膜に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 各種電子機器におけるフレキシブルプリント基板の端子や、液晶表示装置におけるTAB型の端子と液晶パネルのガラス基板上に形成されたITO膜よりなる端子等を電気的、機械的に接続する場合においては、異方性導電膜が多用されている。」(段落【0001】?【0002】) 「【0046】 【発明の効果】 以上の説明からも明らかなように、本発明は、熱硬化性の絶縁性接着剤中に少なくとも導電性粒子が分散されてなる異方性導電膜において、上記異方性導電膜の加熱加圧直後のDSC反応率が60%未満であることから、加熱加圧により急激に硬化することはなく、加熱加圧後、常温中に24時間放置したときのDSC反応率が60%以上であり、硬化は加熱終了後に除々に進むこととなる。従って、これを用いて端子間等の接続を行った場合、加熱加圧して接続した後に剥離することができ、リペアー性が高い。また、硬化が十分になされることから端子間が確実に接続される。」(段落【0046】) これらの記載には、異方性導電膜が端子間を接続することは、記載されていたと認められるものの、異方性導電膜において該膜同士が接続されていること、及び、異方性導電膜が、他の物体間を接続することなく、単に他の物体と接続されていることを包含する接続体に係る発明について記載されていたということはできない。 3-2-3.まとめ 本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第2項の規定により準用する同法第17条第2項の規定を満たしておらず、拒絶理由Bは妥当である。 これに対し、請求人は、平成20年2月18日付け意見書において、要するに、本件補正前の請求項2を削除したから、拒絶理由Bは解消した旨を主張するが、これまで述べたことから明らかなように、解消できていないし、本件発明2は、先に「3-2-2」の「1)」で述べたように、接続体を対象とする発明であるが、本件当初明細書等、平成15年10月27日付け、平成16年2月23日付け又は同年9月13日付け手続補正により補正された後の、願書に添付した明細書のいずれにおいても、接続体を対象とする発明は、特許を受けようとする発明として特許請求の範囲に記載されておらず、拒絶理由Bの通知に対する本件補正によって、はじめて、特許請求の範囲に記載されたとの経緯を鑑みると、拒絶理由Bは相当とせざると得ない。 4.むすび 本件出願は、平成6年改正前の特許法第36条第5項に規定する要件を満たしておらず、また、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第2項の規定により準用する同法第17条第2項の規定を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-26 |
結審通知日 | 2008-04-01 |
審決日 | 2008-04-14 |
出願番号 | 特願平6-257836 |
審決分類 |
P
1
8・
534-
WZ
(H01B)
P 1 8・ 55- WZ (H01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前田 寛之 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
吉水 純子 坂本 薫昭 |
発明の名称 | 異方性導電膜及び接続体 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 伊賀 誠司 |
代理人 | 田村 榮一 |