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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1178687
審判番号 不服2005-23580  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-08 
確定日 2008-05-30 
事件の表示 平成11年特許願第270497号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月 3日出願公開、特開2001- 87532〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願は、平成11年9月24日の出願であって、平成17年4月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成17年7月11日付けで手続補正がされ、平成17年11月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成17年12月8日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年12月26日付けで手続補正がされたものである。

第2.平成17年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「遊技に必要な図柄その他の画像を表示する表示手段と、
所定の入力信号に基づいて遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かの判定を行い、その判定結果に応じて前記画像の表示態様を決定する主制御手段と、
該主制御手段からの命令に基づいて前記表示手段を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記主制御手段からの命令の受信に異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するために必要なデータを有し、前記異常があるとき、前記データを読み出し、前記異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように前記表示手段を制御し、
前記主制御手段からの命令の受信の異常は、予め定めた複数の命令が、所定の時間内に送られていないことと、前記表示制御手段が受信した命令の順序が予め定められた順序と異なることと、を含み、
前記表示制御手段は、前記受信した命令の順序が予め定められた順序と異なる異常があったとき、前記予め定めた複数の命令が前記所定の時間内に送られているか否かの判別を行うことなく前記異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように前記表示手段を制御することを特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「主制御手段からの命令の受信の異常」について「前記表示制御手段が受信した命令の順序が予め定められた順序と異なること」「を含み」と限定するものであり、同「表示制御手段」が「前記受信した命令の順序が予め定められた順序と異なる異常があったとき、前記予め定めた複数の命令が前記所定の時間内に送られているか否かの判別を行うことなく前記異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように前記表示手段を制御する」と限定するものであり、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-182850号公報(公開日:平成9年7月15日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1-1
「表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に遊技者にとって有利な遊技状態になる遊技機であって、
前記遊技機の遊技状態を制御するとともに前記可変表示装置を表示制御するための指令信号を出力する遊技制御手段と、
該遊技制御手段からの指令信号を受けて前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段とを含み、
該可変表示制御手段は、前記指令信号の変化が適正な変化パターンとなっているか否かを判別する指令信号判別手段を含むことを特徴とする、遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

・記載事項1-2
「遊技領域24内には、液晶表示装置(LCD)等からなる可変表示装置1と可変入賞球装置4とが配設されている。遊技領域24内に打込まれたパチンコ玉が始動入賞領域の一例の始動入賞口3に入賞すれば、可変表示装置1の左可変表示部2a,中可変表示部2b,右可変表示部2cが一斉に可変開始して図柄等からなる識別情報が上方から下方に向かってスクロール表示され、その後左可変表示部2aが停止制御され次に右可変表示部2cが停止制御され最後に中可変表示部2bが停止制御される。そして、可変表示装置1の表示結果が予め定められた特定の表示態様(たとえば777等からなる特定の識別情報)となれば、可変入賞球装置4の開閉板9が開成して打玉が入賞しやすい遊技者にとって有利な第1の状態となる。」(段落【0011】)

・記載事項1-3
「図2は、パチンコ遊技機に用いられる制御回路を示すブロック図である。パチンコ遊技機の制御回路は、各種機器を制御するためのプログラムに従って遊技制御を行なうための基本回路30を有する。この基本回路30は、制御中枢としてのCPU,制御用のプログラムを記憶しているROM,制御データを記憶するRAM,I/Oポート等を備えている。さらに、電源投入時に基本回路30をリセットするための初期リセット回路33と、基本回路30に対し定期的(たとえは2msec毎)にリセットパルスを与え、所定のゲーム制御用プログラムを先頭から繰返し実行するための定期リセット回路34と、基本回路30から与えられるアドレス信号をデコードし、基本回路30内に含まれるROM,RAM,I/Oポート等のいずれか1つを選択するための信号を出力するためのアドレスデコード回路35とがさらに設けられている。」(段落【0015】)

・記載事項1-4
「パチンコ玉が始動入賞口3に入賞してその始動入賞玉が始動入賞玉検出スイッチ25により検出されれば、その検出信号が入力回路31を介して基本回路30に入力される。」(段落【0015】)

・記載事項1-5
「始動入賞玉検出スイッチ25の検出信号を受けた基本回路30は、LCD回路32を介して、可変表示装置1を構成しているLCD表示器2に、可変表示制御用のコマンドデータCD0?CD7,割込信号INTを出力する。」(段落【0019】)

・記載事項1-6
「図3は、LCD表示器2に設けられている表示制御用の制御回路を示すブロック図である。図2に示した遊技制御回路は、図3に示すコントロール基板50に設けられている。この図3に示す可変表示制御回路は、システムコントローラ51と、CPU53と、プログラムROM54と、ワークRAM55と、ビデオRAM56と、キャラクタROM57と、パレットRAM58と、インタフェース回路LCD59と、リセット回路62と、発振回路63とを含む。プログラムROM54は、CPU53による制御動作プログラムを記憶している。ワークRAM55は、CPU53のワーキングエリアに対して機能するものであり、CPU53の制御に伴う制御データがこのワークRAM55に記憶される。(中略)システムコントローラ51は、ビデオ制御用プロセッサ,ROM,RAM等を内蔵しており、CPU53からの指令信号に従ってLCD表示器2を表示制御するためのものである。」(段落【0020】)

・記載事項1-7
「コントロール基板50とシステムコントローラ51とがコネクタ52を介して接続されており、コントロール基板50に設けられている前記LCD回路32から、表示制御用のコマンドデータCD0?CD7,INTがコネクタ52を介してシステムコントローラ51に入力される。またコントロール基板50のLCD回路32から+12V,+5Vの電圧がコネクタ52を介して表示制御回路に与えられる。」(段落【0021】)

・記載事項1-8
「図5(a)に示すように、WC RND1は、特定遊技状態(大当り状態)を発生させるか否かを事前決定するためのランダムカウンタであり、2msec毎に1ずつ加算更新される。」(段落【0027】)

・記載事項1-9
「高確率ではない通常遊技状態のときに、WC RND1の抽出値が「7」のときには大当りを発生させることが事前決定され、WC RNDLの計数値を抽出して、その抽出値(乱数)に相当する種類の図柄を左可変表示部2a,右可変表示部2c,中可変表示部2bそれぞれに停止表示される制御がなされる。これにより、左,右,中の各可変表示部2a,2c,2bの停止表示図柄がぞろめの図柄となり、大当りが発生する図柄の組合せが表示されることとなる。一方、WC RND1の抽出値が「7」以外のときには、WC RNDL,C,Rの各抽出値により、左可変表示部2a,中可変表示部2b,右可変表示部2cを停止表示させる。なお、この場合に、偶然ぞろめとなり大当り図柄と一致した場合には、WC RND1を1減算して、中可変表示部2bの予定停止図柄を1図柄だけずらして停止表示制御する。」(段落【0031】)

・記載事項1-10
「コマンドデータは、前述したように8ブロックのデータから構成されており、その内訳は、comH,com0,com1,com2,com3,com4,com5,comCである。(中略)com0は、メインステータスのデータである。可変表示装置1の可変表示状態は、遊技機の遊技状態に応じて変化するのであり、その遊技機の遊技状態に応じた可変表示装置1の大まかな可変表示状態を指令して特定するためのデータがこのメインステータスデータである。このメインステータスデータcom0は、00h?7Fhの範囲内のデータであり、80h?FFhは未使用の領域となっている。」(段落【0034】)

・記載事項1-11
「com0のデータが0xh(xは後述するように0?Fの16進数のうちの任意の値である)の場合には、可変表示装置1のLCD表示器2の画像表示をオフ状態にする指令信号となる。(中略)2xhの場合には、ゲームモードが指定されることとなる。」(段落【0035】)

・記載事項1-12
「ゲームモードである2xhにおいて、x=0の場合には識別情報(図柄)の変動前の動作状態であることが指定され、x=1の場合には左可変表示部と右可変表示部と中可変表示部とのすべての可変表示部が変動中であることが指定され、x=2の場合には左可変表示部に表示される左図柄が停止状態であることが指定され、x=3の場合には右図柄が停止状態であることが指定され、x=4の場合には中図柄が停止状態であることが指定される。」(段落【0036】)

・記載事項1-13
「com1は、可変表示装置1の左可変表示部2aにより停止表示される予定となっている予定停止図柄を特定する左図柄ナンバーを指定するためのコマンドデータである。この左図柄ナンバーは00h?0Chのデータの範囲内で特定されて送信される。また0Dh?FFhのデータ領域は未使用となっている。
com2は、中可変表示部2bにより停止表示される予定となっている予定停止図柄を特定するための中図柄ナンバーを指定するコマンドデータである。この中図柄ナンバーは、00h?0Fhのデータ領域により特定されて送信され、10h?FFhのデータ領域は未使用と定められている。」(段落【0040】)

・記載事項1-14
「com3は、右可変表示部2cにより停止表示される予定となっている予定停止図柄を特定するための右図柄ナンバーを指定するコマンドデータである。この右図柄ナンバーは、00h?0Chのデータ領域で特定されて送信され、0Dh?FFhのデータ領域は未使用と定められている。」(段落【0041】)

・記載事項1-15
「図9は、図2に示した遊技制御回路の基本回路30の動作を示すメインフローチャートである。図8以降に示すフローチャートにおいて、各ステップの端に示されたアルファベットおよび数字は、そのステップのプログラムが記憶されているアドレスを16進数で示したものである。」(【0043】)

・記載事項1-16
「図20(a)は、図19(a)のF007Hに示した第1種始動口スイッチ処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。このサブルーチンプログラムは、第1種始動口スイッチすなわち始動入賞玉検出スイッチ25のスイッチの入賞判定を行ない、ランダム格納処理を実行するものである。」(段落【0060】)

・記載事項1-17
「次にF038Hに進み、入賞記憶が最大値以上になっているか否かの判断がなされ、電動役物入賞カウンタのカウント値が最大値である「4」以上になっている場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、なっていない場合にはF03EHに進み、ランダム格納バンクを算出し、F046Hにより、その算出された格納バンクにWC RND1の抽出値(乱数)を格納する処理がなされる。WC RND1は、始動入賞玉検出スイッチ25の検出信号が入力されたときに抽出されて、その始動入賞玉検出スイッチの検出信号に伴う始動入賞記憶に対応させてその抽出値(乱数)が格納されるのである。また、始動入賞記憶は、古い順に最大「4」まで記憶可能となっており、WC RND1の抽出値(乱数)もそれに対応して古い順に4個格納可能に構成されている。その格納場所がF03EHにより算出されてその算出された格納場所に抽出値(乱数)が格納される(F046H)。」(段落【0061】)

・記載事項1-18
「図31は、図24のF23BHに示した通常時処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。このサブルーチンプログラムは、プロセス処理中に使用するワークのクリア、短縮モード判定、大当り判定処理、図柄設定処理、バンクシフト処理を行なうものである。」(段落【0079】)

・記載事項1-19
「そして未だにテーブル終了コードを検出していない場合にはF283Hに進み、当り判定用ランダムカウンタWC RND1の抽出値とテーブルに記憶されている当り判定値とが一致したか否かの判定が行なわれる。そして一致していない場合には直接F28BHに進み、ランダムチェック値テーブルアドレスを「2」加算更新して、当り判定値テーブルの次のアドレスに記憶されている記憶データとWC RND1の抽出値とを比較する処理がなされる。そして、その比較処理の最中において、WC RND1の抽出値と当り判定値テーブルに記憶されている当り判定値とが一致すればF283Hには、NOの判断がなされ、F288Hに進み、大当りフラグがセットされることとなる。この比較処理を順次実行し、テーブル終了コードが検出されればF27BHによりYESの判断がなされて、図32に示したF28FHに進む。」(段落【0083】)

・記載事項1-20
「F28FHでは、図柄設定処理がなされる。これにより、大当りフラグが「1」となっている場合にはぞろめの図柄が揃うように予定停止図柄を事前決定し、大当りフラグが「0」となっている場合には、それぞれの図柄決定用ランダムカウンタにより予定停止図柄が事前決定される。」(段落【0084】)

・記載事項1-21
「次に、図3に示した制御回路の動作を図56以降に示すフローチャートに基づいて説明する。」(段落【0143】)

・記載事項1-22
「図67(c)は、0444Hの判断の結果「22H」の場合に実行される左図柄停止処理のサブルーチンプログラムである。まず04B6Hにより、コマンド順序が正しいか否かの判断がなされる。コマンドデータのメインステータスであるcom0は、基本回路30による遊技制御動作によって進行制御される遊技機の遊技状態の進行に応じて変化するものであり、その変化のパターンは所定の順序となるように予め決められている。そしてその所定の順序になっているか否かがコマンド順序判定データに従って04B6Hにより判断される。com0が「2xH」の場合には、可変表示動作は、まず図柄変動前準備処理がなされ、次に全図柄変動処理がなされ、次に左図柄停止処理がなされ、その段階でリーチが成立していなければ中図柄停止処理がなされる。」(段落【0170】)

・記載事項1-23
「一方、S1によりコマンド順序は正しくないと判断された場合にはS3に進み、コマンド順序エラーカウンタを「1」加算更新し、S4に進み、コマンド順序エラーカウンタが「20」以上になったか否かの判断がなされ、以上になっていないと判断された場合には前記コマンドエラーにジャンプする。一方、コマンド順序エラーカウンタが20以上になったと判断された場合にはS5に進み、順序エラーフラグをセットし、S6に進み、「順序異常メッセージ」をセットし、スクリーン描画処理を行なって前記順序異常メッセージを可変表示装置1により表示するための制御を行なう。そして前記エラーウエイトのプログラムにジャンプする。」(段落【0331】)

・記載事項1-24
【図面の簡単な説明】の【図9】?【図55】には、「図2に示した制御回路の動作を示すフローチャートである。」と記載されている。

・記載事項1-25
【図面の簡単な説明】の【図56】?【図166】には、「図3に示した制御回路の動作を示すフローチャートである。」と記載されている。

以上の記載事項において、上記記載事項1-15及び1-24によれば、上記記載事項1-16?1-20は、「図2に示した遊技制御回路の基本回路30の動作」を記載したものであって、当該基本回路30は、上記記載事項1-3の「図2は、パチンコ遊技機に用いられる制御回路を示すブロック図である。パチンコ遊技機の制御回路は、各種機器を制御するためのプログラムに従って遊技制御を行なうための基本回路30を有する。この基本回路30は、制御中枢としてのCPU,制御用のプログラムを記憶しているROM,制御データを記憶するRAM,I/Oポート等を備えている。さらに、電源投入時に基本回路30をリセットするための初期リセット回路33と、基本回路30に対し定期的(たとえは2msec毎)にリセットパルスを与え、所定のゲーム制御用プログラムを先頭から繰返し実行するための定期リセット回路34と、基本回路30から与えられるアドレス信号をデコードし、基本回路30内に含まれるROM,RAM,I/Oポート等のいずれか1つを選択するための信号を出力するためのアドレスデコード回路35とがさらに設けられている。」との記載によれば、引用文献1の特許請求の範囲に記載された「遊技機の遊技状態を制御する遊技制御手段」に相当することは明らかである。
また、上記記載事項1-21及び1-25によれば、上記記載事項1-22及び1-23は、「図3に示した制御回路の動作」を記載したものであって、当該制御回路は、上記記載事項1-6の「図3は、LCD表示器2に設けられている表示制御用の制御回路を示すブロック図である。図2に示した遊技制御回路は、図3に示すコントロール基板50に設けられている。この図3に示す可変表示制御回路は、システムコントローラ51と、CPU53と、プログラムROM54と、ワークRAM55と、ビデオRAM56と、キャラクタROM57と、パレットRAM58と、インタフェース回路LCD59と、リセット回路62と、発振回路63とを含む。プログラムROM54は、CPU53による制御動作プログラムを記憶している。ワークRAM55は、CPU53のワーキングエリアに対して機能するものであり、CPU53の制御に伴う制御データがこのワークRAM55に記憶される。(中略)システムコントローラ51は、ビデオ制御用プロセッサ,ROM,RAM等を内蔵しており、CPU53からの指令信号に従ってLCD表示器2を表示制御するためのものである。」との記載によれば、引用文献1の特許請求の範囲に記載された「可変表示装置を制御する可変表示制御手段」に相当することは明らかである。
そうすると、以上の記載事項1-1?1-25及び図1?166によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「図柄等からなる識別情報が上方から下方に向かってスクロール表示される可変表示装置1と、
始動入賞玉検出スイッチ25の検出信号が入力されたときに抽出される当り判定用ランダムカウンタWC RND1の抽出値とテーブルに記憶されている当り判定値とが一致したか否かの判定を行って、一致すれば大当りフラグをセットするとともに、大当りフラグが「1」となっている場合にはぞろめの図柄が揃うように予定停止図柄を事前決定し、大当りフラグが「0」となっている場合には、それぞれの図柄決定用ランダムカウンタにより予定停止図柄を事前決定する遊技制御手段と、
遊技制御手段からの指令信号を受けて可変表示装置1を制御する可変表示制御手段とを備え、
可変表示制御手段は、コマンド順序エラーカウンタが20以上になったと判断された場合には、スクリーン描画処理を行なって前記順序異常メッセージを可変表示装置1により表示させ、
コマンド順序エラーカウンタは遊技制御手段からのコマンド順序が正しくないと判断された場合に「1」加算更新されるものである、遊技機。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-47150号公報(公開日:平成6年2月22日)(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項2-1
「映像表示判定は、映像表示装置20の映像制御状態を監視するもので、図29のように電源投入時に表示監視タイマをスタート、表示実行信号の立上げ、立下げ毎に表示監視タイマをリセット、スタートする。」(段落【0125】)

・記載事項2-2
「この際、表示実行信号の立上げ、立下げがなく、そのまま表示監視タイマがタイムアップしたときは、異常[2]、つまり画像出力制御が実行されない表示装置非作動と判定する(21.01?21.08)。」(段落【0126】)

・記載事項2-3
「映像表示装置20の映像が正常かどうかを監視するために、遊技制御装置75から管理装置90に大当たり情報が、映像制御装置45から管理装置90に、遊技制御装置75からの受信コマンドに該当する表示態様情報、受信無しコード、断線コードならびに画像出力毎に表示実行信号が送られる。」(段落【0157】)

・記載事項2-4
「映像制御装置45からの表示態様情報は、映像制御装置45の故障時には、受信無しコード、断線コードを含め送信できなくなるため、これらの情報が所定時間受信されない場合も、異常と判定するようにして良い。」(段落【0163】)

3.対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「可変表示装置1」は本願補正発明の「表示手段」に相当し、以下同様に、
「停止図柄」は「画像の表示態様」に、
「大当り」は「遊技者にとって有利な特別遊技状態」に、
「遊技制御手段」は「主制御手段」に、
「可変表示制御手段」は「表示制御手段」に、
「指令信号」及び「コマンド」は「命令」に、
相当する。
そして、引用発明1について、以下のことがいえる。
(1)「図柄等からなる識別情報が上方から下方に向かってスクロール表示される」が本願補正発明における「遊技に必要な図柄その他の画像を表示する」に相当することは明らかであるから、引用発明1は本願補正発明の備える「遊技に必要な図柄その他の画像を表示する表示手段」に相当する手段を備えているといえる。
(2)「始動入賞玉検出スイッチ25の検出信号が入力されたときに」は、本願補正発明の「所定の入力信号に基づいて」に相当することは明らかである。また、「当り判定用ランダムカウンタWC RND1の抽出値とテーブルに記憶されている当り判定値とが一致したか否かの判定を行って、一致すれば大当りフラグをセットする」は、抽出値によって大当たりを発生させるか否かの判定を行っていることを意味している。更に、引用発明1では、判定結果である大当りであるか否か応じて「予定停止図柄」を決定している。
したがって、引用発明1は、実質上、本願補正発明を特定する「所定の入力信号に基づいて遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かの判定を行い、その判定結果に応じて画像の表示態様を決定する主制御手段」なる構成を具備している。
(3)「遊技制御手段からの指令信号を受けて可変表示装置を制御する可変表示制御手段」は、本願補正発明の「主制御手段からの命令に基づいて表示手段を制御する表示制御手段」に相当する。
(4)引用発明1では、遊技制御手段からのコマンド順序が20回以上正しくないときにスクリーン描画処理を行なって前記順序異常メッセージを可変表示装置1により表示させているが、これは遊技制御手段からのコマンドの受信に異常が生じたことを遊技者に報知することを意味している。そして、遊技機の表示において画像を表示するために必要なデータを保持し、表示する際にそのデータを読み出して画像を表示するようにすることは、例を挙げるまでもなく周知慣用手段である。
したがって、引用発明1は、実質上、本願補正発明を特定する「表示制御手段は、主制御手段からの命令の受信に異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するために必要なデータを有し、異常があるとき、データを読み出し、異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように表示手段を制御し、主制御手段からの命令の受信の異常は、表示制御手段が受信した命令の順序が予め定められた順序と異なることを含む」なる構成を実質的に具備している。

そうすると、両者は、
「遊技に必要な図柄その他の画像を表示する表示手段と、
所定の入力信号に基づいて遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かの判定を行い、その判定結果に応じて画像の表示態様を決定する主制御手段と、
主制御手段からの命令に基づいて表示手段を制御する表示制御手段と、を備え、
表示制御手段は、主制御手段からの命令の受信に異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するために必要なデータを有し、異常があるとき、データを読み出し、異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように表示手段を制御し、
主制御手段からの命令の受信の異常は、表示制御手段が受信した命令の順序が予め定められた順序と異なることを含む、遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
主制御手段からの命令の受信の異常が、本願補正発明では予め定めた複数の命令が、所定の時間内に送られていないことをも含むのに対し、引用発明1ではそのような構成を有していない点。
<相違点2>
本願補正発明では、表示制御手段は、受信した命令の順序が予め定められた順序と異なる異常があったとき、予め定めた複数の命令が前記所定の時間内に送られているか否かの判別を行うことなく異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように表示手段を制御するのに対し、引用発明1ではそのような構成を有していない点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
引用文献2には、表示監視タイマがタイムアップするまでに表示実行信号の立上げ、立下げがない場合には異常と判定する旨の記載(上記記載事項2-1、2-2)、所定時間内に表示態様情報,受信無しコード,断線コードが受信されない場合に異常と判定する旨の記載(上記記載事項2-3、2-4)があるから、上記引用文献2には信号が所定時間内に送られていないことを異常とすることが記載されているということができる。なお、信号の立上げ、立下げもそれぞれ信号と見ることができ、表示実行信号の立上げ、立下げ、表示態様情報,受信無しコード,断線コードは、予め(入力されることが)定められた信号ということができるとともに、一般に制御装置における命令は信号の一種である。
そして、引用発明1では主制御手段から表示制御手段への命令の送受信の異常を判断報知しようとする課題を有するものであるから、引用発明1の当該命令を対象として上記引用文献2に記載された技術事項を付加する、すなわち、予め定めた命令が所定時間内に送られていないことを異常とすることを付加することにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得ることである。
そして、引用発明1では、全図柄の変動、左図柄の停止、右図柄の停止、中図柄の停止について命令が送受信されるものであり、全図柄の変動、左図柄の停止、右図柄の停止、中図柄の停止により可変表示という一連の処理が終了するものであるから、一つの命令が送られてこないことが異常であるのと同様に、一連の処理を行うための複数の命令が送られてこないことは異常である。そうすると、命令の受信の異常の判定において、上記のように複数の命令で一つの処理が完結する場合、複数の命令が所定時間内に送られていないことを異常とするか、一つの命令が所定時間内に送られてこないことを異常とするかは単なる設計事項に過ぎない。
<相違点2>について
特定の異常判定において異常があったとき、他の異常の判定を行うことなく、異常が生じたことを報知することは、特開昭61-143085号公報(第4図、第5図参照)、実願昭62-67738号(実開昭63-176487号)のマイクロフィルム(第3図参照)等に示されるように従来周知慣用の技術手段である。
そうすると、上記「<相違点1>について」で検討したように、予め定めた複数の命令が所定時間内に送られていないことを異常とし、受信した命令の順序が予め定められた順序と異なることを異常とする際に、受信した命令の順序が予め定められた順序と異なる異常があったとき、予め定めた複数の命令が所定の時間内に送られているか否かの判別を行うことなく前記異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するようにすることは、単なる設計事項に過ぎないものである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成17年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年7月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「遊技に必要な図柄その他の画像を表示する表示手段と、
所定の入力信号に基づいて遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かの判定を行い、その判定結果に応じて前記画像の表示態様を決定する主制御手段と、
該主制御手段からの命令に基づいて前記表示手段を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記主制御手段からの命令の受信に異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するために必要なデータを有し、前記異常があるとき、前記データを読み出し、前記異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように前記表示手段を制御し、
前記主制御手段からの命令の受信の異常は、予め定めた複数の命令が所定の時間内に送られていないことである遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「前記表示制御手段が受信した命令の順序が予め定められた順序と異なること」「を含み」、及び「前記表示制御手段は、前記受信した命令の順序が予め定められた順序と異なる異常があったとき、前記予め定めた複数の命令が前記所定の時間内に送られているか否かの判別を行うことなく前記異常が生じたことを遊技者に報知する画像を表示するように前記表示手段を制御する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-19 
結審通知日 2008-03-25 
審決日 2008-04-11 
出願番号 特願平11-270497
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太鉄 豊郎  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 太田 恒明
中槙 利明
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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