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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61M
管理番号 1179069
異議申立番号 異議2003-73424  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2008-07-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2008-04-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3423317号「抗-血管形成性組成物およびそれにより被覆されたステント」の請求項1、2、6ないし27、31ないし45に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3423317号の請求項1、5ないし25、29ないし43に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3423317号は、平成6年7月19日(パリ条約による優先権主張1993年7月19日、米国)の出願であって、平成15年4月25日に設定の登録がなされ、同年7月7日にその特許掲載公報が発行された後、テルモ株式会社より特許異議の申立てがなされ、当審より取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年12月5日に特許異議の意見書の提出とともに訂正請求がなされ、更にこの訂正請求に対し当審より訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成17年12月28日に当該訂正請求の手続補正がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
特許権者は本件特許明細書の記載を訂正明細書のとおりに訂正することを求めており、その具体的内容は以下のとおりである。

A.訂正前の特許請求の範囲の請求項1、22?24及び26において「該抗血管形成ファクタがタキソールであり、かつ、該ステントが該身体通路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される」点を追加する。
(なお、平成17年12月28日付け手続補正書により補正された訂正請求書の「(4)請求の原因、(4-1)訂正事項A」第1行目には、「請求項1、22、23および24において」と記載されているが、同訂正請求書「(3)訂正の要旨」、及び同訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲からみて、訂正前の請求項26についても訂正の対象となっていることは明らかである。)

B.上記の訂正事項Aの訂正に伴い、本件特許異議の申立ての対象となっている、訂正前の特許請求の範囲の請求項2及び27を削除する。
また、本件特許異議の申立ての対象となっていない、訂正前の特許請求の範囲の請求項3、4、28及び29につき、引用形式であったものを独立形式として、それぞれ訂正後の特許請求の範囲の請求項2、3、26及び27とする。

C.特許明細書第13ページ第26欄第46行の「再発生」を「再発性」とする。

2-2.訂正の適否
訂正事項Aは、訂正前の請求項1、22?24及び26に係る発明を特定する「抗血管形成ファクタ」が「タキソール」であり、かつ、同じく訂正前の請求項1、22?24及び26に係る発明を特定する「ステント」が「身体通路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される」ことを限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正事項Aは願書に添付した明細書の第6ページ第17?26行目、及び第28ページ第9?15行目に記載されている。
訂正事項Bの、請求項3、4、28及び29につき、引用形式であったものを独立形式とする訂正は、形式的なものであり、実質的な内容の訂正はない。
訂正事項Cは誤記の訂正である。そして、当該特許明細書の訂正箇所に対応する、願書に添付された明細書第28ページ第13行目には「再発性」と記載されている。

上記の訂正事項はいずれも願書に添付した明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記の訂正は特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3-1.特許異議の申立ての概要
異議申立人は、証拠として下記の甲第1?8号証、並びに参考資料1及び2を提出し、
訂正前の請求項1、22及び23に係る発明は、甲第1号証記載の発明と同一であるか、又は、甲第1号証及び甲第4号証、又は甲第1号証及び甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項2、6?8及び15に係る発明は、甲第1号証、甲第4?6号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項9?14、16、20及び21に係る発明は、甲第1号証、甲第4?7号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項17?19に係る発明は、甲第1号証、甲第4?8号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項24に係る発明は、甲第2号証、及び甲第4号証又は甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項25、31、32及び39に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項26に係る発明は、甲第3?5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項27に係る発明は、甲第1?6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項33?38及び40に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第7号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項41?43に係る発明は、甲第1?8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
同請求項44及び45に係る発明は、甲第1?7号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許を取り消すべきである旨主張している。

証拠及び参考資料
甲第1号証:特表平5-502179号公報
甲第2号証:特開平1-299550号公報
甲第3号証:国際公開第92/11896号パンフレット
甲第4号証:国際公開第92/15286号パンフレット
甲第5号証:国際公開第92/12717号パンフレット
甲第6号証:国際公開第93/11120号パンフレット
甲第7号証:特表平3-502053号公報
甲第8号証:国際公開第90/13332号パンフレット
参考資料1:特表平6-503984号公報
参考資料2:特表平8-502719号公報

3-2.本件発明
前記のとおり訂正が認められたので、本件異議申立ての対象となっている請求項に係る発明は、訂正前の請求項の番号でいうと1、2、6?27、31?45であるが、訂正前の請求項2及び27が削除されたことを考慮しつつ、上記訂正の内容AおよびBによって訂正前後の請求項に係る発明を対応付けると、最終的に、本件異議申立ての対象となっている請求項に係る発明は、訂正後の請求項の番号でいうところの、請求項1、5?25、29?43に係る発明であると認められる。
訂正後の特許請求の範囲の請求項1、5?25、29?43に係る発明(以下、「本件発明1、5?25、29?43」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、5?25、29?43に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントであって、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成ファクタで被覆されている、ほぼ管状の構造を有する、ステントであって、該抗血管形成ファクタがタキソールであり、かつ、該ステントが該身体通路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステント。
【請求項5】前記抗血管形成ファクタが、1つ以上のポリマーをさらに含む、請求項1?4のいずれか1項に記載のステント。
【請求項6】前記ポリマーが生分解性のポリマーである、請求項5に記載のステント。
【請求項7】前記ポリマーが非生分解性のポリマーである、請求項5に記載のステント。
【請求項8】前記ポリマーがアルブミンまたはゼラチンである、請求項5に記載にステント。
【請求項9】前記ポリマーがセルロースである、請求項5に記載のステント。
【請求項10】前記ポリマーが多糖類である、請求項5に記載のステント。
【請求項11】前記ポリマーがポリ(D,Lラクチド)である、請求項5に記載のステント
【請求項12】前記ポリマーがポリ(グリコリド)である、請求項5に記載のステント。
【請求項13】前記ポリマーがポリ(カプロラクトン)である、請求項5に記載のステント。
【請求項14】前記ポリマーがEVAコポリマーである、請求項5に記載のステント。
【請求項15】前記ポリマーがシリコーンまたはポリ(メチルメタクリレート)である、請求項5に記載のステント。
【請求項16】前記ステントが血管ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項17】前記ステントが胆管ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項18】前記ステントが尿道ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項19】前記ステントが食道ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項20】前記ステントが気管/気管支ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項21】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を直接固定する工程を包含し、該抗血管形成性組成物が、タキソールを含み、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項22】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物で被覆された糸を織り込む工程を包含し、該抗血管形成性組成物が、タキソールを含み、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項23】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、ステントをスリーブまたはメッシュ中に挿入する工程を包含し、該スリーブまたはメッシュが、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を含むか、または抗血管形成性組成物で被覆されており、該抗血管形成性組成物が、タキソールを含み、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項24】前記抗血管形成性組成物が、抗血管形成ファクタおよびポリマーを含む、請求項21?23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、ステントを抗血管形成ファクタを吸収する物質で被覆する工程、および該抗血管形成ファクタを該ステントに吸収させる工程を包含し、ここで該抗血管形成ファクタが該ステントの閉塞を防止し、該抗血管形成ファクタがタキソールであり、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項29】前記ポリマーが生分解性のポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項30】前記ポリマーが非生分解性のポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項31】前記ポリマーがアルブミンまたはゼラチンである、請求項24に記載の方法。
【請求項32】前記ポリマーがセルロースである、請求項24に記載の方法。
【請求項33】前記ポリマーが多糖類である、請求項24に記載の方法。
【請求項34】前記ポリマーがポリ(D,Lラクチド)である、請求項24に記載の方法。
【請求項35】前記ポリマーがポリ(グリコリド)である、請求項24に記載の方法。
【請求項36】前記ポリマーがポリ(カプロラクトン)である、請求項24に記載の方法。
【請求項37】前記ポリマーがEVAコポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項38】前記ポリマーがシリコーンまたはポリ(メチルメタクリレート)である、請求項24に記載の方法。
【請求項39】前記ステントが血管ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】前記ステントが胆管ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】前記ステントが尿道ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】前記ステントが食道ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】前記ステントが気管/気管支ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。」

3-3.取消理由通知で引用された刊行物に記載された事項
3-3-1.刊行物1
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(特表平5-502179号公報、異議申立人の提出した甲第1号証)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

(a)「再狭窄は、以前に拡張、融除、もしくはレーザー処置された末梢のもしくは冠状の管の封入であると定義される。」(第2ページ右上欄第8?9行)

(b)「この再狭窄の問題を評価するために近年開発されたのが血管内のステントである。ステントは金属製の装置で、永久的に末梢もしくは冠状血管内へ膨らんだ状態で埋め込まれるものである。このステントの目的は、長期間にわたって血管の狭窄に対抗する足場となることである。その理論としては、血管内部から支持すれば、血管は閉塞したり再狭窄したりすることがない、というものである。しかしながら治療上埋め込まれたステントについての初期的なデータが示すものは、残念ながらこの金属製の装置では再狭窄が目だって少なくなるということがないというものである。」(第2ページ右上欄第15?23行)

(c)「本発明は、血管等の管状器官内に挿入され、処置を必要とする部位に近接する器官の壁に固定される装具を提供するものである。最も典型的なものとしては、器官は再狭窄をおこす人体の血管構造の一部である。しかしながら、本発明の方法及び装置は、いかなる器官、排泄管、胆嚢管、前立腺、気管、気管支及び肝臓等のすべての管状の器官で、外科的処置なしに投薬できない箇所を含むものである。本発明は、急性、慢性を問わず血管等の管状器官の閉鎖もしくは再閉鎖に適用されるものである。」(第2ページ左下欄第15?22行)

(d)「再狭窄を防止するには、平滑化筋細胞の増殖を止めなければならない。既に述べたように、これは生物化学的なもので物理的に扱うことができないものである。生物化学的に再狭窄を止めるための仮説が現在いくつか存在している。それらのうちの幾つかは以下のようなものである。
1.動脈損傷箇所における血小板の癒合と凝結とを減らす。
2.成長因子とその受容器の発現をブロッキングする。
3.上記成長因子の拮抗物を発現させる。
4.受容器とそれに対応する分子間のシグナリングを妨害する。
5.平滑筋増殖に体する自然の抑制体を発見する。
・・・(省略)・・・
血小板の癒合と凝結を防止するには少なくとも二つの異なるやり方がある。一つの方法は抗血小板剤を用いることであり、他の方法は抗凝結物質を用いることである。
抗血小板剤にはアスピリンやジビリダモールが含まれる。
・・・(省略)・・・
抗凝血剤にはヘパリン、マクリン、ブロタミン及びヒルジンが含まれる。
・・・(省略)・・・
細胞の複製を阻害する薬剤としては数種のものがある。細胞分裂阻止性物質(細胞障害性剤)は直接的に細胞分裂(複製)を阻止するように働き、一方代謝拮抗物質はDNA合成を阻止して複製を阻害するように働く。これら細胞分裂阻止性物質と代謝拮抗物質の作用は類似のものであり、一つのカテゴリーに入るものである。このカテゴリーは抗複製剤として知られている。
抗複製剤には、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン、ミュータマイシンがある。」(第3ページ右下欄第27行?第4ページ左下欄第2行)

(e)「ステント10は単一のフィラメントからなるもので、図1に示すように単一フィラメントをメッシュ状に編んで形成したものである。16本のフィラメント12からなり、そのうちの8本は-の方向へ螺旋状に旋回し、他の8本が反対の方向へ旋回している。このステント10は一定径まで自己拡張性を有する。ステント10の外径は長手方向へ引っ張ることにより簡単に小さくなる。この減径した状態で、血管中へ導入するためのカテーテルに取付けることができる。
図2及び図4に示すステント20は、柔軟な金属製のもので、バルーンカテーテルによって管状器官の壁に押し付けられ、そこに固定されるようになっている。金属フィラメント22の外側表面は、既に述べたような薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティング14を備えている。ポリマーは生物安定性のもの、もしくは生物吸収性のものである。もし生物安定性のものであれば、薬剤はポリマーから放散される。
図1及び図2に示す実施例に示されるステントの形態変化は、本発明の装具が管状器官の壁にしっかりと固定されなければならないこと、及び薬剤溶出性のポリマーを備えていなければならないことを示している。
ステント10の構成については多くの変形が有り得る。フィラメント12の角度αは主な変更点である。角度αは0度から180度まで可変できる。図示の例のものにおける角度は60度ないし90度の範囲のものとしである。
薬剤溶出ステントを編み上げるには多くの選択肢がある。第一には16本すべてのフィラメントを薬剤溶出可能なものとすることである。また、16本のうちの幾本かを薬剤溶出可能なものとすることもできる。」(第4ページ右下欄第3行?第5ページ左上欄第1行)

(f)「生物吸収性装具(ステント)の材料
生物吸収性のポリマーを通しての制御された遊離は、希望する治療箇所における処置の間の薬剤レベルを保つ。ステントの場合は、装具が生物吸収性のポリマー構造体であっても生物分解性のポリマー構造体であっても、少なくとも2週間もしくは血管の壁に一体化されるまで血管を支える。
生物吸収性及び薬剤含浸可能性有りと考えられている公知の幾つかの重合体化合物は、本発明の装具を形成するのに有用である。このようの化合物には、ポリ-1-乳酸/ポリグリコール酸(poly-1-lactic acid/Polyglycolic acid)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、及びポリ燐酸塩エステルがある。」(第5ページ右上欄第5?15行)

上記(a)?(f)の記載事項(以下、「刊行物1記載事項(a)?(f)」という。)のうち、刊行物1記載事項(a)?(d)を総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。

「人体の管状器官の管腔の開放状態を維持するためのステントであって、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤で被覆されている、ほぼ管状の構造を有するステントであって、該ステントが該人体の管状器官の再狭窄を処置または予防するために使用される、ステント。」(以下、「第1引用発明」という。)

また、上記刊行物1記載事項(e)から、刊行物1に記載されたステントは、その製造工程として、少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する工程を有していることは明らかであるから、上記刊行物1記載事項(a)?(d)を総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。

「人体の管状器官の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する工程を有し、該ステントが該人体の管状器官の再狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。」(以下、「第2引用発明」という。)

3-3-2.刊行物2
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物2(特開平1-299550号公報、異議申立人の提出した甲第2号証)には、第5図及び6図と共に、以下の事項が記載されている。

(g)「本発明は身体通路(body passageway)又は管(duct)内で使用するための伸張可能な管腔内移植片(expandable intraluminal graft)に関するものであり、更に特定的には疾患により狭くなった又は閉塞した血管を修復するための特に有用な伸張可能な管腔内脈管移植片(expandable vascular graft)移植片及び伸張可能な管腔内移植片を移植するための方法及び装置に関する。・・・(省略)・・・
従来管腔内脈管移植片として使用されてきた構造物には、ステンレス鋼コイルバネ;伸張可能な感熱性材料から製造されたら旋状に巻かれたコイルバネ;及びジグザグパターンにステンレス鋼ワイヤから形成された伸張性ステンレス鋼ステント(stents)が包含されていた。」(第3ページ左上欄第14行?同ページ右上欄第17行)

(h)「第5図及び6図を参照すると、第1A図及び1B図に関連して先に記載したプロテーゼ又は移植片70が示されており、そして移植片又はプロテーゼ70の管状部材71は管状の形状の部材71の壁表面74上に生物学的に不活性な又は生物学的に適合性のある被覆90が配置されている。適当な生物学的に不活性な被覆の例は、多孔性ポリウレタン、テフロン又は他の慣用的な生物学的に不活性なプラスチック材料である。被覆90はプロテーゼ又は移植片70の所望の伸張及び変形を妨害しないように薄く且つ高度に弾性的でなければならない。・・・(省略)・・・。該吸収性重合体は又被覆90が吸収され、又は溶解されるにつれて、薬品が徐々に身体通路中に放出されるような、各種の形式の薬品を含むことも可能である。」(第10ページ右下欄第7行?第11ページ左上欄第18行)

上記刊行物2記載事項(g)及び(h)を総合し要約すると、刊行物2には以下の発明が記載されている。
「多孔性ポリウレタン等の、薄く且つ高度に弾性的な、生物学的に不活性なプラスチック材料よりなる被覆(90)を、ステントの壁表面(74)に配置し、該被覆(90)に薬品が徐々に身体通路中に放出されるような、各種の形式の薬品を含ませた、ステント。」(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)

3-3-3.刊行物5
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物5(国際公開第92/12717号パンフレット、異議申立人の提出した甲第5号証)には、以下の事項が記載されている。

(i)「The tetracyclines can be administered alone or in combination with, either before, simultaneously, or subsequently to treatment using conventional chemotherapeutic or radiation therapy. A preferred embodiment is the systemic administration, either by injection or implantation of polymeric encapsulated drug, of minocycline in combination with a chemotherapeutic such as β- cyclodextrin, in a ratio of between 0.5 and 2.0 to 1,β-cyclodextrin to minocycline.Other chemotherapeutics include carmustine(BCNU), 5-fluorouracil,β- cyclodextrin, vinca allcaloids such as vincristin, taxol and vinblastin, ・・・immunotoxins.
Pharmaceutical compositions are prepared using the antibiotic as the active agent to inhibit angiogenesis based on the specific application. Application is either topical, localized, or systemic. Any of these compositions may also include preservatives, antioxidants, antibiotics, immunosuppressants, and other biologically or pharmaceutically effective agents which do not exert a detrimental effect on the antibiotic or cells. For treatment of tumors, the composition may include a cytotoxic agent which selectively kills the faster replicating tumor cells, many of which areknown and clinically in use.」
(テトラサイクリンは、従来の化学療法または放射線療法を用いた治療の前、該治療と同時、または該治療の後のいずれかに単独または該治療薬との組み合わせで投与されうる。好適な実施例は、注射またはポリマー被包薬剤の植込みのいずれかにより、ミノサイクリンをβ-サイクロデキストリン等の化学療法薬と、β-サイクロデキストリンとミノサイクリンとを0.5?2.0対1の範囲内の比で組み合わせて全身的に投与する方法である。その他の化学療法薬には、カルムスチン(BCNU)、5-フルオロウラシン、β-サイクロデキストリン、ビンクリスチンやタキソールおよびビンブラスチン等のビンカアルカロイド、・・・が含まれる。
薬剤組成物は、抗生物質を有効成分として用いて調整されて、特定の施用に基いて血管形成を抑制する。適用は、局所的、局部的または全身的のいずれかである。組成物には、抗腐食剤、抗酸化剤、抗生物質、免疫抑制剤その他、生物学的または薬学的効果を有し、抗生物質や細胞に対して害を及ぼさないものが含まれる。腫瘍の治療においては、その組成物は、急速に複製される腫瘍を選択的に殺傷する、公知の臨床的に用いられる多くのものが含まれる。)(第9ページ第22行?第10ページ第13行、括弧内は当審による仮訳)

(j)「In a preferred form, the composition is administered in combination with a biocompatible polymeric implant which releases the antibiotic over a controlled period of time at a selected site.
Examples of preferred biodegradable polymeric materials include polyanhydrides, polyorthoesters, polyglycolic acid, polylactic acid, polyethylene vinyl acetate, and copolymers and blends thereof.
Examples of preferred non-biodegradable polymeric materials include ethylene vinyl acetate copolymers.」
(好適な形態において、前記組成物は、所定の部位において調整された期間にわたって抗生物質を放出する生体適合性ポリマー埋設物との組み合わせで投与される。
好適な生分解性ポリマー材料の例には、ポリアンヒドリド類、ポリオルトエステル類、ポリグリコール酸類、ポリ乳酸、ポリエチレン酢酸ビニルおよびこれら共重合体および混合物が含まれる。
好適な非生分解性ポリマー材料の例には、エチレン酢酸ビニル共重合体が含まれる。)(第11ページ第20?27行、括弧内は当審による仮訳)

上記刊行物5記載事項(i)及び(j)をまとめると、刊行物5には以下の事項が記載されている。
「テトラサイクリンとタキソールを組み合わせた薬剤組成物を含有し、血管形成を抑制する、人体に埋設するためのポリマー埋設物」(以下、「刊行物5に記載された発明」という。)

3-3-4.刊行物6
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物6(国際公開第93/11120号パンフレット、異議申立人の提出した甲第6号証)には、以下の事項が記載されている。

(k)「Drugs that prevent or reduce the proliferation of pathological cell types are essential to the treatment and control of various diseases involving undesirable or uncontrolled cell proliferation. But antiproliferatives, by definition, must be toxic to certain cell types. It is often not feasible to administer these drugs systemically, because the amounts needed to control the diseased cell types may be toxic or deadly to the patient's normal cells. This difficulty could be circumvented by administering antiproliferative agents directly to the site of the undesired cell proliferation. A mechanism is also needed for retaining antiproliferative agents at the disease site, so that they may effectively control the proliferation of undesired cells, while being restrained from migrating and damaging normal cell types.
Specific diseases and conditions for which site-specific delivery and retention of antiproliferatives would be particularly effective are briefly described below. Each of these conditions involves the proliferation of a particular undesirable cell type, and systemic administration of drug therapy for their treatment has not yielded optimal results.
1. Post-Angioplasty Reocclusion and Restenosis
・・・(省略)・・・
2. Rheumatoid Arthritis
・・・(省略)・・・
3. Ovarian Cancer
・・・(省略)・・・
4. Psoriasis」
(病的細胞種の増殖を防止あるいは低減する薬物は、有害あるいは制御不可能な細胞増殖を伴う様々な疾患の治療と制御に不可欠なものである。しかし、抗増殖物質はその定義上、ある種の細胞にとって毒物とならざるをえない。疾患細胞種を制御するために必要な分量が、患者の正常な細胞にとって有毒あるいは致命的になることがあるため、これらの薬物の全身的投与はしばしば実現不可能である。この困難は、有害細胞の増殖部位に抗増殖物質を直接投与することによって避けることができる。また、正常な細胞種の移動および損傷を制限しながら有害な細胞の増殖を効果的に制御するために、疾患部位に抗増殖薬を保持するための機構が必要である
抗増殖物質の部位特異的な供給と保持が特に効果的な特定の疾患と状態について、以下に簡潔に記述する。これらの各状態は、特に有害な細胞種の増殖を含み、治療のための全身投与による薬物療法が最適な結果を生んでいないものである。
1.血管形成術後の再閉塞および再狭窄
・・・(省略)・・・
2.慢性関節リウマチ
・・・(省略)・・・
3.卵巣癌
・・・(省略)・・・
4.乾癬)
(国際公開パンフレットの第2ページ第8行?第7ページ第27行、訳文は、同パンフレットの日本国公表公報である特表平8-502719号公報の第14ページ右上欄21行?第19ページ左下欄第6行、以下同様。)

(l)「In accordance with the present invention, the above-described compounds are used for siteselective delivery of therapeutic agents, and retention thereof at the selected site. According to a preferred aspect of the invention, the therapeutic agent has an anti-proliferative action, useful for the treatment of diseases or other pathological conditions involving cell proliferation.
・・・(省略)・・・
Such chemotherapeutic substances may be selected, for example, from the group consisting of colchicine, vinca alkaloids, taxol and derivatives thereof, which exhibit their bio-effect only upon release from the compounds.」
(本発明に従って上述の化合物は、治療薬の選択的な供給と、選択した部位へのその保持のために使用する。本発明の好ましい側面に従って、治療薬は、細胞増殖を伴う疾患あるいは他の病的状態の治療に有効な抗増殖作用を備える。
・・・(省略)・・・
これらの化学治療物質は、例えば、化合物から放出された場合のみにそのバイオ作用を示すコルヒチン、ビンカアルカロイド、タキソールおよびその誘導体で構成される群から選択することができる。)(国際公開パンフレットの第10ページ第16行?第11ページ第4行、訳文は、同パンフレットの日本国公表公報の第21ページ左上欄第5?16行)

上記刊行物6記載事項(k)および(l)を総合すると、刊行物6には以下の医学的見識(1)及び(2)(以下、「刊行物6に記載されたタキソールに関する医学的見識(1)及び(2)」という。)が記載されていると認められる。

(1)タキソールが細胞増殖を伴う疾患、例えば、血管形成術後の再閉塞および再狭窄、慢性関節リウマチ、卵巣癌及び乾癬の治療に有効な抗増殖作用を備える薬剤であること。
(2)上記(1)において、タキソールを有害細胞の増殖部位に直接投与し保持することで、全身投与による副作用を避け、効果的な治療が可能なこと。

3-3-5.刊行物7
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物7(特表平3-502053号公報、異議申立人の提出した甲第7号証)には、以下の事項が記載されている。

(m)「この発明は、体腔に導入される医療用具に関するものであり、この発明の用具は上記体腔の中に挿入するよう構成されたその一端に、活性物質が埋封され、かつ予め定められた速度で放出されるマトリックスを備え、そのマトリックスは水を全く浸透しないかごく僅か浸透しうる物質で構成されている。またこの用具は上記体腔中に液体の排出及び/または供給のための管及び/または棒で構成されているのが好ましい。」(第4ページ左上欄第7?14行)

(n)「またこの発明は、上に記載し、並びに次記にこの発明を詳細に開示した医療用具を、体腔中に、好ましくは悪性であることが発見された体腔中に挿入し、マトリックス中に埋封された活性物質が抗腫瘍剤及び細胞増殖抑制剤から選ばれたものであることからなるガンまたは悪性腫瘍の予防または治療法に関する。」(第4ページ左下欄最終行?同ページ右下欄第4行)

(o)「マトリックス物質の具体例としては、上記定義の浸食性物質を含み、この目的に有用であるものは、ポリマー(例、ポリアミド、ポリウレタン、シリコン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ボリセタール、ポリカプロラクトン)、ポリアルキレングリコール(例、ポリエチレングリコールまたはポリアルキレングリコール)、ポリアルキレン(例、ポリエチレン)、ポリアルキレンオキシド(例、ポリエチレンオキシド、ポリ(オルト)エステル)、ペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質(例、コラーゲンもしくはゼラチン)、多糖類(例、澱粉もしくは澱粉誘導体、セルロースもしくはセルロース誘導体)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、またはその誘導体、混合物もしくはコポリマー:高級アルカン(例、C_(14)以上のアルカン):高級アルケン(例、C_(18)以上のアルケン):脂肪酸もしくは脂肪酸アルコールもしくは脂肪酸エステル:またはステロイド(例、コレステロール及びその誘導体)、もしくはその組合わせが挙げられる。(第5ページ右上欄第13行?同ページ左下欄第4行)

上記刊行物7に記載された事項(m)ないし(o)をまとめると、刊行物7には以下の発明が記載されている。
「体腔に導入され、体腔中に液体の排出及び/または供給のための管及び/または棒で構成されている医療用具を、抗腫瘍剤及び細胞増殖抑制剤を含浸させて、含浸した薬剤を予め定められた速度で放出するマトリックスにて構成し、該マトリックスを、ポリマー(例、ポリアミド、ポリウレタン、シリコン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ボリセタール、ポリカプロラクトン)、ポリアルキレングリコール(例、ポリエチレングリコールまたはポリアルキレングリコール)、ポリアルキレン(例、ポリエチレン)、ポリアルキレンオキシド(例、ポリエチレンオキシド、ポリ(オルト)エステル)、ペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質(例、コラーゲンもしくはゼラチン)、多糖類(例、澱粉もしくは澱粉誘導体、セルロースもしくはセルロース誘導体)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、またはその誘導体ゼラチン等とする医療用具。」(以下、「刊行物7に記載された発明」という。)

3-3-6.刊行物8
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物8(国際公開第90/13332号パンフレット、異議申立人の提出した甲第8号証)には、以下の事項が記載されている。

(p)「Abstract
A mechanical support or stent containing pharmaceutical agents. The stent can be placed in the wall of a blood vessel where it releases pharmaceutical agents to prevent arterial thromboses, platelet aggregation and/or excessive endothelial cell proliferation at the placement site. The stent may also be placed in a blood vessel, bile duct, ureter, or fallopian tube or other duct or vessel, so that it delivers drugs to specific body sites or organs. 」
(アブストラクト
薬剤成分を含有する機械的支持体またはステント。このステントは、血管壁内に配置されて、配置部位において薬剤成分を放出して、動脈血栓症、血小板凝集および/または過剰な内皮細胞の増殖を防ぎ得る。このステントは、さらにまた、血管、胆管、尿管またはファロピウス管またはその他の管または脈管内配置されて、特定の身体部位または器官に薬物が送給されるようにし得る。)(国際公開パンフレットのアブストラクト欄、括弧内は当審による仮訳)

(q)「Detailed Description of The Invention
The mechanical support or stent of this invention may be formed from any of the materials employed in the prior art that are non-toxic to the blood and body tissue and otherwise biocompatable. The stent may be in the form of any structure that successfully preserves the luminal diameter of a vessel or duct, and may operate by any mechanism known in the art.
The pharmaceutical agents suitable to be employed in this invention are too numerous to list. The agents may be anticoagulants, antiplatelet substances, antispasmodics or drugs that inhibit excessive endothelial cell growth, or they may be antimicrobial agents, hormones or anticancer drugs, or any combination of these agents, or any others to accomplish any other localized purpose. The precise coating or impregnating of the stent with the pharmaceutical agent will vary depending on the form and material of the stent, and upon the pharmaceutical agent employed.」
(詳細な発明の詳細な説明
この発明の機械的保持体またはステントは、従来技術として公知の材料のうちのどれからも形成され、それは血液および身体組織に無毒で、そして生体適合性の物質である。ステントは、血管や流路といった管腔直径を持続的に保持するための形状ないし構造を備え、従来技術として公知の機構により作動する。
この発明で使用されるものとして適切な薬剤は、あまりにも多数なので、列記することができない。薬剤は、抗凝血剤、抗血小板剤、鎮痙剤あるいは過度の内皮細胞成長を禁じる薬、あるいは、抗菌薬、ホルモンまたは抗癌剤、またはこれらの薬剤の任意のコンビネーション、あるいは他の局所的な目的を遂行する任意の他のものを含む。ステントに対する薬剤のコーティングまたは含浸は、ステントの形状や材質、更には用いられている薬剤に応じて適宜変更される。)(第5ページ第22行?第6ページ第5行、括弧内は当審による仮訳)

上記刊行物8記載事項(p)及び(q)をまとめると、刊行物8には以下の発明が記載されている。
「血管や流路といった管腔直径を持続的に保持するための形状ないし構造を備え、抗癌剤をコーティングまたは含浸したステント」(以下、「刊行物8に記載された発明」という。)

3-4.対比・判断
3-4-1.本件発明1について
本件発明1と第1引用発明とを対比すると、本件発明1の「身体通路」とは、本件特許明細書全体の記載からみて、人体の管状器官を意味していることは明らかである。そして、第1引用発明の「人体の管状器官」は「身体通路」と言い換えることができる。また、本件発明1の「血管形成ファクタ」と第1引用発明の「平滑筋細胞の増殖を防止する薬剤」は、共に薬剤である点で共通しているから、両者は、
「身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントであって、
該ステントの閉塞を防止するための薬剤で被覆されている、
ほぼ管状の構造を有する、ステント。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明1は、ステントを被覆している薬剤が「抗血管形成ファクタ」であって、「該抗血管形成ファクタがタキソール」であり、この薬剤で被覆されたステントが身体通路の「再発性狭窄」を処置または予防するものであるのに対し、第1引用発明は、ステントを被覆している薬剤が「平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤」であり、この薬剤で被覆されたステントが、身体通路の「再狭窄」を処置または予防するものである点。(以下「相違点1」という。)

ところで、上記相違点1について検討の前提として、本件発明1を特定するために必要な事項である、「身体通路の再発性狭窄」及び「抗血管形成ファクタ」の技術的意義について、並びに本件発明1のステントの作用について検討する。
(検討1)「身体通路の再発性狭窄」について
本件発明1の「身体通路の再発性狭窄」とは、それ自体で、かならずしも意味が明らかでないが、特に本件特許明細書第4ページ第7欄第13?38行の記載を参酌して解釈すると、「身体通路の癌性の閉塞」を意味するものと認められる。なお、そのような「身体通路の癌性の閉塞」は「癌および他の血管形成-依存性疾患」において所見される症状であることは、同明細書に記載されるとおりであり、且つよく知られた事項である。

(検討2)「抗血管形成ファクタ」について
本件発明1の「血管形成」とは、それ自体で、かならずしも意味が明らかでないが、特許明細書全体の記載を参酌して解釈すると、「癌および他の血管形成-依存性疾患」の進行或いは再発の原因となる細胞の増殖が、血管形成に端を発するという意味においての血管形成であると認められる。そして、本件発明1の「抗血管形成ファクタ」は、この血管形成を阻害する作用機序を備えたファクタであると認められる。

(検討3)本件発明1のステントの作用について
本件発明1のステントは、このステントを身体通路の管腔に挿入することで、該身体通路の壁を「物理的に解放状態に維持する」(特許明細書第11ページ第22欄第29?30行)(以下、「本件発明1の作用1」という。)とともに、ステントが上記検討2に記載した「抗血管形成ファクタ」で被覆されているから、上記抗血管形成ファクタの作用機序により、血管形成を阻害し得る(以下、「本件発明1の作用2」という。)ものであると認められる。この本件発明1の作用2は、詳細には、特に特許明細書第4ページ第7欄第22?24行を参酌すると、再発性狭窄を処置または予防処置するために、身体通路にステントを留置した場合における、「ステントの間隙を通しての腫瘍または炎症性物質の内部成長を、該ステントは阻止しない」という問題を解消し得ること(以下、「本件発明1の作用2a」という。)、及び再発性狭窄の処置または予防のために、身体通路にステントを留置したこと自体によって発生する、「体内でのステントの存在は、反応性または炎症性の組織(例えば、血管、繊維芽細胞、白血球)の、該ステント内腔への侵入を誘発」(特許明細書第4ページ第7欄第27?29行)するという問題を解消し得ること(以下、「本件発明1の作用2b」という。)であると認められる。

(相違点1についての検討)
以上の検討1?3をふまえ、本件発明1と第1引用発明との相違点1について検討する。
(1)抗血管形成ファクタ及びタキソールの適用容易性について
まず、第1引用発明のステントに被覆されている平滑筋の増殖を防止する薬剤に換えて、抗血管形成ファクタを適用すること、及び抗血管形成ファクタとしてタキソールを適用することの容易性について検討する。
「抗血管形成ファクタ」の技術的意義は、上記(検討2)で検討したとおりであるところ、刊行物6に記載されたタキソールに関する医学的見識(1)に例示された疾病は、いずれも血管形成-依存性疾患であることから、刊行物6には、抗血管形成ファクタとしてタキソールが記載されていることは明らかである。これに加えて、同タキソールに関する医学的見識(2)では、タキソールを有害細胞の増殖部位に直接投与し保持することで、全身投与による副作用を避け、血管形成依存性疾患の効果的な治療が可能なことが示され、更に、刊行物5及び8に記載された発明によって、血管形成の抑制を目的とする人体への埋設物薬剤にタキソールを含有させること及びステントに抗癌剤を被覆することが公知であることを考慮すれば、第1引用発明の、ステントを被覆する平滑筋の増殖を防止する薬剤に換えて、抗血管形成ファクタを適用すること、及び抗血管形成ファクタとしてタキソールを選択することは当業者が容易に想到することである。

(2)身体通路の再発性狭窄を処置または予防する点について
本件発明1における「身体通路の再発性狭窄」の技術的意義及びステントの作用は、上記(検討1)及び(検討3)で検討したとおりであるところ、刊行物1記載事項(a)ないし(d)によると、第1引用発明のステントも、身体通路に適用して、該通路を内部から支持するという物理的作用と、被覆された薬剤による生物化学的作用によって、身体通路における再発の可能性のある狭窄を処置または予防するものであることは、本件発明1と共通するものである。
一方、刊行物6記載事項(k)に記載されるような、「癌および他の血管形成-依存性疾患」に類する疾患において、身体通路の再発性狭窄という症状が所見されることはよく知られたことである。
また、刊行物1記載事項(b)並びに刊行物8記載事項(p)及び(q)にも記載されるように、そもそもステントは管腔の狭窄を防止するものである。
更に、上記「(1)抗血管形成ファクタ及びタキソールの適用容易性について」で検討した検討過程及び検討結果を考慮すると、第1引用発明のステントにおいて、ステントを被覆する平滑筋の増殖を防止する薬剤に換えて、抗血管形成ファクタとしてタキソールを適用し、刊行物6記載事項(k)に記載されるような、「癌および他の血管形成-依存性疾患」において当然予測される、身体通路の再発性狭窄を処置または予防に用いようとすることは当業者が容易に想到することである。

そして、上記(検討3)で挙げた本件発明1のステントの作用1、2a及び2bは、刊行物1記載事項(a)ないし(d)、刊行物6記載事項(k)、刊行物5記載事項(i)、並びに刊行物8記載事項(p)及び(q)に記載されたもの、又はこれら記載事項から、当業者が当然予測し得るものであって、格別のものではない。

(3)相違点1についての検討のむすび
したがって、本件発明1の相違点1に係る構成は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本件発明1は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-2.本件発明5について
本件発明5は、本件発明1に、「前記抗血管形成ファクタが、1つ以上のポリマーをさらに含む」という事項(以下、「本件発明5付加事項」という。)を付加したものであるが、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備えることが記載されているから、上記付加事項は刊行物1に記載されたものである。
したがって、本件発明5は、本件発明1についてと同様の理由により、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-3.本件発明6について
本件発明6は、本件発明5に、「前記ポリマーが生分解性のポリマーである」という事項(以下、「本件発明6付加事項」という。)を付加したものであるが、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物吸収性のものであることが記載されており、生物吸収性のものは生分解性のものといえるから、上記付加事項は刊行物1に記載されたものである。
したがって、本件発明6は、本件発明1についてと同様の理由により、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-4.本件発明7について
本件発明7は、本件発明5に、「前記ポリマーが非生分解性のポリマーである」という事項(以下、「本件発明7付加事項」という。)を付加したものであるが、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物安定性のものであることが記載され、生物安定性のものは非生分解性といえるから、上記付加事項は刊行物1に記載されたものである。
したがって、本件発明7は、本件発明1についてと同様の理由により、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-5.本件発明8について
本件発明8は、本件発明5に、「前記ポリマーがアルブミンまたはゼラチンである」という事項(以下、「本件発明8付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明8と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明8付加事項を備えていない点(以下、「相違点2」という。)で相違している。
そこで、上記相違点2について検討する。
前記「3-4-1」及び前記「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第1引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにゼラチンを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明8の相違点2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明8は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-6.本件発明9について
本件発明9は、本件発明5に、「前記ポリマーがセルロースである」という事項(以下、「本件発明9付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明9と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明9付加事項を備えていない点(以下、「相違点3」という。)で相違している。
そこで、上記相違点3について検討する。
前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第1引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにセルロースを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明9の相違点3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明9は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-7.本件発明10について
本件発明10は、本件発明5に、「前記ポリマーが多糖類である」という事項(以下、「本件発明10付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明10と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明10付加事項を備えていない点(以下、「相違点4」という。)で相違している。
そこで、上記相違点4について検討する。
前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第1引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスに多糖類を用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明10の相違点4に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明10は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-8.本件発明11について
本件発明11は、本件発明5に、「前記ポリマーがポリ(D,Lラクチド)である」という事項(以下、「本件発明11付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明11と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明11付加事項を備えていない点(以下、「相違点5」という。)で相違している。
そこで、上記相違点5について検討する。
前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物吸収性のものであること、更に同記載事項(f)には、ステントを薬剤含浸可能性のあるポリ-1-乳酸にて構成することが記載されていることを考慮すれば、本件発明11の相違点5に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明11は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-9.本件発明12について
本件発明12は、本件発明5に、「前記ポリマーがポリ(グリコリド)である」という事項(以下、「本件発明12付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明12と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明12付加事項を備えていない点(以下、「相違点6」という。)で相違している。
そこで、上記相違点6について検討する。
前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物安定性のもの、もしくは生物吸収性のものであること、更に同記載事項(f)には、ステントを薬剤含浸可能性のあるポリグリコールにて構成することが記載されていることを考慮すれば、本件発明12の相違点6に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明12は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-10.本件発明13について
本件発明13は、本件発明5に、「前記ポリマーがポリ(カプロラクトン)である」という事項(以下、「本件発明13付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明13と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び前記「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明13付加事項を備えていない点(以下、「相違点7」という。)で相違している。
そこで、上記相違点7について検討する。
前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第1引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにポリカプロラクトンを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明13の相違点7に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明13は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-11.本件発明14について
本件発明14は、本件発明5に、「前記ポリマーがEVAコポリマーである」という事項(以下、「本件発明14付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明14と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明14付加事項を備えていない点(以下、「相違点8」という。)で相違している。
そこで、上記相違点8について検討する。
前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物5記載事項(j)には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第1引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることが記載されていることを考慮すれば、本件発明14の相違点8に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明14は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-12.本件発明15について
本件発明15は、本件発明5に、「前記ポリマーがシリコーンである」という事項(以下、「本件発明15付加事項」という。)を付加したものであるから、本件発明15と第1引用発明とを比較すると、前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した相違点に加え、第1引用発明では前記本件発明15付加事項を備えていない点(以下、「相違点9」という。)で相違している。
そこで、上記相違点9について検討する。
前記「3-4-1」及び「3-4-2」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第1引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにポリマーとしてのシリコン、即ちシリコーンを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明15の相違点9に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明15は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-13.本件発明16ないし20について
本件発明16は、本件発明1に、「前記ステントが血管ステントである」という事項(以下、「本件発明16付加事項」という。)を付加したものであり、同じく本件発明17は、「前記ステントが胆管ステントである」という事項(以下、「本件発明17付加事項」という。)を、同じく本件発明18は、「前記ステントが尿道ステントである」という事項(以下、「本件発明18付加事項」という。)を、同じく本件発明19は、「前記ステントが食道ステントである」という事項(以下、「本件発明19付加事項」という。)を、同じく本件発明20は、「前記ステントが気管/気管支ステントである」という事項(以下、「本件発明20付加事項」という。)を付加したものであるが、刊行物1記載事項(c)には、「排泄管、胆嚢管、前立腺、気管、気管支及び肝臓等のすべての管状の器官」に適用するものとしてステントを構成することが記載されているから、上記付加事項は刊行物1に記載されたものである。
したがって、本件発明16ないし20は、本件発明1についてと同様の理由により、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-14.本件発明21について
本件発明21と第2引用発明とを対比すると、本件発明21の「身体通路」及び「身体経路」とは、本件特許明細書全体の記載からみて、人体の管状器官を意味していることは明らかである。そして、第2引用発明の「人体の管状器官」は「身体通路」又は「身体経路」と言い換えることができる。また、本件発明21の「抗血管形成組成物」と第2引用発明の「平滑筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」は、共に薬剤含有物である点で共通している。
更に、第2引用発明の、「少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する工程」と、本件発明21の、「ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を直接固定する工程」とは、ステントに薬剤含有物を付与するという限りで共通しているといえる。
そうすると、両者は、
「身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための薬剤含有物を付与する工程を有する、ステントの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明21は、ステントに付与される薬剤含有物が「抗血管形成組成物」であって、「該抗血管形成組成物がタキソールを含む」ものであり、この薬剤含有物を付与されたステントが身体経路の「再発性狭窄」を処置または予防するものであるのに対し、第2引用発明は、ステントに付与された薬剤含有物が「平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」であり、この薬剤含有物を付与されたステントが、身体経路の「再狭窄」を処置または予防するものである点。(以下、「相違点10」という。)

また、ステントに対する薬剤含有物の付与工程について、本件発明21はステントに抗血管形成組成物を直接固定するのに対し、第2引用発明は、少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する点。(以下、「相違点11」という。)

(相違点10についての検討)
「抗血管形成組成物」の技術的意義の解釈については、特に本件特許明細書第4ページ第7欄第39?41行の記載を参酌すると、「抗血管形成ファクタ」とポリマー坦体を併せて含むものと認められるところ、抗血管形成ファクタ及びタキソールの適用容易性、並びに身体経路の再発性狭窄を処置または予防する点の容易性については、前述の「3-4-1」で検討したとおりである。したがって、第2引用発明のステントにおいても、ステントに付与される平滑筋の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーに換えて、抗血管形成組成物を付与し、抗血管形成組成物としてタキソールを含有させ、刊行物6記載事項(k)に記載されるような、「癌および他の血管形成-依存性疾患」において当然予測される、身体通路の再発性狭窄の処置または予防に用いようとすることは当業者が容易に想到することである。

よって、本件発明21の相違点10に係る構成は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点11についての検討)
第2引用発明の、ステントを構成するフィラメントに対して薬剤含有物を含有するポリマーをコーティングすることは、ステントに対して薬剤含有物を直接固定しているということができる。そして、薬剤として抗血管形成性組成物を用いることは上記「(相違点10についての検討)」で述べたとおり当業者が容易に想到することである。

したがって、本件発明21の相違点11に係る構成は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本件発明21は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-15.本件発明22について
本件発明22と第2引用発明とを対比すると、本件発明22の「身体通路」及び「身体経路」とは、本件特許明細書全体の記載からみて、人体の管状器官を意味していることは明らかである。そして、第2引用発明の「人体の管状器官」は「身体通路」又は「身体経路」と言い換えることができる。また、本件発明22の「抗血管形成組成物」と第2引用発明の「平滑筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」は、共に薬剤含有物である点で共通している。
更に、第2引用発明の、「少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する工程」と、本件発明22の、「ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物で被覆された糸を織り込む工程」とは、ステントに薬剤含有物を付与するという限りで共通しているといえる。
そうすると、両者は、
「身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための薬剤含有物を付与する工程を有する、ステントの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明22は、ステントに付与される薬剤含有物が「抗血管形成組成物」であって、「該抗血管形成組成物がタキソールを含む」ものであり、この薬剤含有物を付与されたステントが身体経路の「再発性狭窄」を処置または予防するものであるのに対し、第2引用発明は、ステントに付与された薬剤含有物が「平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」であり、この薬剤含有物を付与されたステントが、身体経路の「再狭窄」を処置または予防するものである点。(以下、「相違点12」という。)

また、ステントに対する薬剤含有物の付与工程について、本件発明22はステントに抗血管形成組成物で被覆された糸を織り込むのに対し、第2引用発明は、少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する点。(以下、「相違点13」という。)

(相違点12についての検討)
相違点12は、上記「3-4-14」で検討した相違点10と同じなので、上記「(相違点10についての検討事項)」で述べたとおりの理由により、本件発明22の相違点12に係る構成は 刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点13についての検討)
第2引用発明の、少なくともその幾本かが薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する工程において、組織の一態様として織り込みを採用することは、当業者が適宜選択しうる程度のことである。そして、薬剤として抗血管形成性組成物を用いることは上記「(相違点12についての検討)」で述べたとおり当業者が容易に想到することである。

したがって、本件発明22の相違点13に係る構成は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本件発明22は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-16.本件発明23について
本件発明23と第2引用発明とを対比すると、本件発明23の「身体通路」及び「身体経路」とは、本件特許明細書全体の記載からみて、人体の管状器官を意味していることは明らかである。そして、第2引用発明の「人体の管状器官」は「身体通路」又は「身体経路」と言い換えることができる。また、本件発明22の「血管形成組成物」と第2引用発明の「平滑筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」は、共に薬剤含有物である点で共通している。
更に、第2引用発明の、「ステントのフィラメントに該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングする工程」と、本件発明23の、「ステントをスリーブまたはメッシュ中に挿入する工程を包含し、該スリーブまたはメッシュが、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を含むか、または抗血管形成性組成物で被覆され」る工程は、ステントに薬剤含有物を付与するという限りで共通しているといえる。

そうすると、両者は、
「身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための薬剤含有物を付与する工程を有する、ステントの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明23は、ステントに付与される薬剤含有物が「抗血管形成組成物」であって、「該抗血管形成組成物がタキソールを含む」ものであり、この薬剤含有物を付与されたステントが身体経路の「再発性狭窄」を処置または予防するものであるのに対し、第2引用発明は、ステントに付与された薬剤含有物が「平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」であり、この薬剤含有物を付与されたステントが、身体経路の「再狭窄」を処置または予防するものである点。(以下、「相違点14」という。)

また、ステントに対する薬剤含有物の付与工程について、本件発明23は、「ステントをスリーブまたはメッシュ中に挿入する工程を包含し、該スリーブまたはメッシュが、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を含むか、または抗血管形成性組成物で被覆され」るのに対し、第2引用発明は、少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する点。(以下、「相違点15」という。)

(相違点14についての検討)
相違点14は、上記「3-4-14」で検討した相違点10と同じなので、上記「(相違点10についての検討)」で述べたとおりの理由により、本件発明23の相違点14に係る構成は刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点15についての検討)
刊行物2には、「多孔性ポリウレタン等の、薄く且つ高度に弾性的な、生物学的に不活性なプラスチック材料よりなる被覆(90)を、ステントの壁表面(74)に配置し、該被覆(90)に薬品が徐々に身体通路中に放出されるような、各種の形式の薬品を含ませた、ステント。」(前記「刊行物2に記載された発明」参照)が記載されている。
刊行物2に記載された発明の「被覆(90)をステントの壁表面(74)に配置する」工程において、該被覆(90)をスリーブまたはメッシュの構成としておいて、これにステントを挿入する工程とすることは当業者にとって特に創作能力を要することではない。そして、薬剤として抗血管形成性組成物を用いることは上記「(相違点14についての検討)」で述べたとおり当業者が容易に想到することである。
したがって、本件発明23の相違点15に係る構成は、刊行物1、2、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本件発明23は、刊行物1、2、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-17.本件発明24について
本件発明24は、本件発明21に、「抗血管形成組成物が、抗血管形成ファクタ及びポリマーを含む」という事項(以下、「本件発明24付加事項」という。)を付加したものであるが、前記「3-4-14」では既に「抗血管形成組成物が、抗血管形成ファクタ及びポリマーを含む」という前提で検討を行ったから、本件発明24は前記「3-4-14」の「(相違点10についての検討)及び(相違点11についての検討)」で述べたとおりの理由により、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-18.本件発明25について
本件発明25と第2引用発明とを対比すると、本件発明25の「身体通路」及び「身体経路」とは、本件特許明細書全体の記載からみて、人体の管状器官を意味していることは明らかである。そして、第2引用発明の「人体の管状器官」は「身体通路」又は「身体経路」と言い換えることができる。また、本件発明22の「血管形成組成物」と第2引用発明の「平滑筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」は、共に薬剤含有物である点で共通している。
更に、第2引用発明の、「少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する工程」と、本件発明25の「ステントを抗血管形成ファクタを吸収する物質で被覆する工程、および該抗血管形成ファクタを該ステントに吸収させる工程」」は、ステントに薬剤含有物を付与するという限りで共通しているといえる。

そうすると、両者は、
「身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための薬剤含有物を付与する工程を有する、ステントの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明25は、ステントに付与される薬剤含有物が「抗血管形成ファクタ」であって、「該抗血管形成ファクタがタキソール」であり、この薬剤含有物を付与されたステントが身体経路の「再発性狭窄」を処置または予防するものであるのに対し、第2引用発明は、ステントに付与された薬剤含有物が「平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマー」であり、この薬剤含有物を付与されたステントが、身体経路の「再狭窄」を処置または予防するものである点。(以下、「相違点16」という。)

また、ステントに対する薬剤含有物の付与工程について、本件発明25は、「ステントを抗血管形成ファクタを吸収する物質で被覆する工程、および該抗血管形成ファクタを該ステントに吸収させる工程」であるのに対し、第2引用発明は、少なくともその幾本かが、該ステントの閉塞を防止するための平滑化筋細胞の増殖を防止する薬剤を含有するポリマーをコーティングされた複数のフィラメントを組織してステントを構成する点。(以下、「相違点17」という。)

(相違点16についての検討)
相違点16は、上記「3-4-1」で検討した相違点1と同じなので、上記「(相違点1についての検討)」で述べたとおりの理由により、本件発明25の相違点16に係る構成は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点17についての検討)
刊行物2には、「多孔性ポリウレタン等の、薄く且つ高度に弾性的な、生物学的に不活性なプラスチック材料よりなる被覆(90)を、ステントの壁表面(74)に配置し、該被覆(90)に薬品が徐々に身体通路中に放出されるような、各種の形式の薬品を含ませた、ステント。」(前記「刊行物2に記載された発明」参照)が記載されている。
刊行物2に記載された発明の、多孔性ポリウレタン等の、薄く且つ高度に弾性的な、生物学的に不活性なプラスチック材料よりなる被覆(90)が、薬剤を吸収しやすい物質であることは明らかであるから、刊行物2に記載された発明において、「被覆(90)を、ステントの壁表面(74)に配置し、該被覆(90)に薬品が徐々に身体通路中に放出されるような、各種の形式の薬品を含ませ」る工程を、「薬剤を吸収する物質で被覆する工程、および該薬剤を該ステントに吸収させる工程」とすることは当業者にとって特に創作能力を要することではない。そして、薬剤として抗血管形成ファクタとしてタキソールを用いることは上記「(相違点16についての検討)」で述べたとおり当業者が容易に想到することである。
したがって、本件発明25の相違点17に係る構成は、刊行物1、2、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本件発明25は、刊行物1、2、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-19.本件発明29について
本件発明29は、本件発明24に、「前記ポリマーが生分解性のポリマーである」という事項(以下、「本件発明29付加事項」という。)を付加したものであるが、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物吸収性のものであることが記載されており、生物吸収性のものは生分解性のものといえるから、上記付加事項は刊行物1に記載されたものである。
したがって、本件発明29は、本件発明24についてと同様の理由により、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-20.本件発明30について
本件発明30は、本件発明24に、「前記ポリマーが非生分解性のポリマーである」という事項(以下、「本件発明30付加事項」という。)を付加したものであるが、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物安定性のものであることが記載され、生物安定性のものは非生分解性といえるから、上記付加事項は刊行物1に記載されたものである。
したがって、本件発明30は、本件発明24についてと同様の理由により、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-21.本件発明31について
本件発明31は、本件発明24に、「前記ポリマーがアルブミンまたはゼラチンである」という事項(以下、「本件発明31付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明31と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明31付加事項を備えていない点(以下、「相違点18」という。)で相違している。

そこで、上記相違点18について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第2引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにゼラチンを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明31の相違点18に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明31は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-22.本件発明32について
本件発明32は、本件発明24に、「前記ポリマーがセルロースである」という事項(以下、「本件発明32付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明32と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明32付加事項を備えていない点(以下、「相違点19」という。)で相違している。
そこで、上記相違点19について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第2引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにセルロースを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明32の相違点19に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明32は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-23.本件発明33について
本件発明33は、本件発明24に、「前記ポリマーが多糖類である」という事項(以下、「本件発明33付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明33と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明32付加事項を備えていない点(以下、「相違点20」という。)で相違している。

そこで、上記相違点20について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第2引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスに多糖類を用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明33の相違点20に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明33は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-24.本件発明34について
本件発明34は、本件発明24に、「前記ポリマーがポリ(D,Lラクチド)である」という事項(以下、「本件発明34付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明34と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明34付加事項を備えていない点(以下、「相違点21」という。)で相違している。

そこで、上記相違点21について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物吸収性のものであること、更に同記載事項(f)には、ステントを薬剤含浸性のあるポリ-1-乳酸にて構成することが記載されていることを考慮すれば、本件発明34の相違点21に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明34は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-25.本件発明35について
本件発明35は、本件発明24に、「前記ポリマーがポリ(グリコリド)である」という事項(以下、「本件発明35付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明35と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明35付加事項を備えていない点(以下、「相違点22」という。)で相違している。

そこで、上記相違点22について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物1記載事項(e)には、ステントが薬剤溶出可能なポリマーからなるコーティングを備え、ポリマーは生物吸収性のものであること、更に同記載事項(f)には、ステントを薬剤含浸性のあるポリグリコールにて構成することが記載されていることを考慮すれば、本件発明35の相違点22に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明35は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-26.本件発明36について
本件発明36は、本件発明24に、「前記ポリマーがポリ(カプロラクトン)である」という事項(以下、「本件発明36付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明36と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明36付加事項を備えていない点(以下、「相違点23」という。)で相違している。

そこで、上記相違点23について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第2引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにポリカプロラクトンを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明36の相違点23に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明36は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-27.本件発明37について
本件発明37は、本件発明24に、「前記ポリマーがEVAコポリマーである」という事項(以下、「本件発明37付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明37と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明37付加事項を備えていない点(以下、「相違点24」という。)で相違している。

そこで、上記相違点24について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物5記載事項(j)には、体内に導入されて薬剤を放出する医療品という点で同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることが記載されていることを考慮すれば、本件発明37の相違点24に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明37は、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-28.本件発明38について
本件発明38は、本件発明24に、「前記ポリマーがシリコーンである」という事項(以下、「本件発明38付加事項」という。)を付加したものであるから、前記「3-4-17」で検討した事項を踏まえ、本件発明38と第2引用発明とを比較すると、前記「3-4-14」で検討した相違点10及び11に加え、第2引用発明では前記本件発明38付加事項を備えていない点(以下、「相違点25」という。)で相違している。

そこで、上記相違点25について検討する。
前記「3-4-14」及び「3-4-17」で検討した事項に加え、刊行物7には、体内に導入された状態で薬剤を放出する医療品という点で第2引用発明と同一の技術分野に属する発明であって、薬剤を放出するマトリックスにポリマーとしてのシリコン即ち、シリコーンを用いること(「刊行物7に記載された発明」参照)が記載されていることを考慮すれば、本件発明38の相違点25に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明38は、刊行物1、5、6、7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-29.本件発明39ないし43について
本件発明39は、本件発明21に、「前記ステントが血管ステントである」という事項(以下、「本件発明39付加事項」という。)を付加したものであり、同じく本件発明40は、「前記ステントが胆管ステントである」という事項(以下、「本件発明40付加事項」という。)を、同じく本件発明41は、「前記ステントが尿道ステントである」という事項(以下、「本件発明41付加事項」という。)を、同じく本件発明42は、「前記ステントが食道ステントである」という事項(以下、「本件発明42付加事項」という。)を、同じく本件発明43は、「前記ステントが気管/気管支ステントである」という事項(以下、「本件発明43付加事項」という。)を付加したものであるが、刊行物1記載事項(c)には、「排泄管、胆嚢管、前立腺、気管、気管支及び肝臓等のすべての管状の器官」に適用するものとしてステントを構成することが記載されているから、上記付加事項は刊行物1に記載されたものである。
したがって、本件発明39ないし43は、本件発明21についてと同様の理由により、刊行物1、5、6及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.以上のとおり、本件発明1、5?25、及び29?43は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
抗-血管形成性組成物およびそれにより被覆されたステント
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、一般的に癌および他の血管形成-依存性疾患を治療するための組成物および方法に関し、より詳しくは抗-血管形成ファクタおよびポリマー担体を含む組成物、該組成物で被覆されているステント並びにこれらステントおよび組成物の利用法に関するものである。
発明の背景
癌は米国における第二の主な死因であり、全死亡率の1/5以上に及ぶ。簡単に言えば、癌は細胞群の制御不可能な分裂によって特徴付けられ、該分裂は、最も典型的には1種以上の腫瘍の形成に導く。一般的に、癌は過去におけるよりもより一層容易に診断されるが、初期に検出されたとしても、多くの種類は依然として治癒不能である。
例えば、種々の外科的処置を含めて、様々な方法が現時点において癌の治療に利用されている。しかしながら、外科手術のみで治療した場合には、多くの患者(特に、乳癌、脳癌、結腸癌および肝臓癌等の幾つかの型の癌に冒された患者)は、該癌の再発を経験するであろう。外科手術に加えて、多くの癌は、また細胞毒性をもつ化学療法剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスプラチン、メトトレキセート、5-FU等)および/または放射線療法を含む治療法との組み合わせで治療される。しかしながら、この方法の難点の一つは、放射線療法および化学療法剤が正常な細胞に対しても有害であり、しばしば生命に危機を及ぼす副作用を生ずる。更に、これらの方法は、しばしば極端に高い不治/寛解率を有する。
外科手術、化学および放射線療法に加えて、他の研究者は癌細胞を排除するために、各個体自体の免疫を利用することを試みた。例えば、幾人かの研究者はアジュバントとして細菌またはウイルス由来の成分を使用して、該免疫系を刺激して、腫瘍細胞を破壊することを示唆している(一般的には、Principles of Canser Biotherapy,Oldham(ed.),Raven Press,N.Y,,1987を参照のこと)。このような薬物は、一般的に動物腫瘍モデルにおけるアジュバントとしておよび非特異的刺激剤として有用であったが、ヒトにおいて一般的に有効なものであることは未だ立証されていない。
リンホカインも癌の治療に利用されている。簡単にいえば、リンホカインは種々の細胞によって分泌され、また一般的に免疫応答の発生において、特定の細胞に対するある効果をもつ。リンホカインの例はインターロイキン(IL)-1、-2、-3および-4並びにコロニー刺激ファクタ、例えばG-CSF、GM-CSFおよびM-CSFを包含する。近年、或る研究グループは、末梢血細胞を刺激するのにIL-2を使用し、腫瘍細胞に対して細胞毒性をもつ大量の細胞を増殖並びに生成した(Rosenberg等,N.Engl.J.Med.,1985,313:1485-1492)。
他の研究者は癌の治療における抗体の使用を示唆した。簡単に言えば、抗体は正常な細胞に比して、癌細胞に対して固有のあるいはより支配的な幾つかの細胞表面抗原を識別して発現し得る。これらの抗体または「マジックビュレット(magic bullets)」は単独であるいは毒素と組み合わせて使用して、特異的に腫瘍細胞を攻撃しかつ殺すことができる(Dillman,“Antibody Therapy”,Principles of Cancer Biotherapy,Oldham(ed.),Raven Press Ltd.,N.Y.,1987)。しかしながら、殆どのモノクローナル抗体は二十日ネズミ由来のものであり、従って二十日ネズミ抗体に対する過敏性が、特に反復的治療後には、その有効性を制限するという一つの難点がある。共通の副作用は、発熱、発汗および悪寒、皮膚発疹、関節炎および神経麻痺を含む。
これら方法のもう一つの付随的な難点は、局所的再発および局所的疾患の抑制が、悪性疾患の治療における主な難題として残されていることである。特に、発表の時点で、年間の全体として630,000名の患者(米国において)が局所的疾患をもち(遠位転移の拡がりに関する確証はない)、このことはこれら全患者の64%が悪性疾患であると診断されたことを示している(これは転移しない非メラノーマ性の皮膚癌を含まない)。これら患者の大多数について、該疾患の外科切除は、最大の治癒の可能性を示し、事実428,000名が初期治療後に治癒するであろう。428,000。不幸にして、202,000(あるいは局所的疾患をもつ全患者の32%)は初期治療後に再発するであろう。これらの再発患者の中で、該疾患の局所的再発による再発症例数は年間133,000(あるいは局所的疾患をもつ全患者の21%)名である。該疾患の遠位転移による再発症例数は68,000名(あるいは局所的疾患をもつ全患者の11%)である。年間のその他の102,139名の患者は、該疾患の局所的成長の抑制が不可能であった直接的な結果として死亡している。
この問題は乳癌においてより一層明白であり、乳癌は米国において年間186,000名の婦人を冒し、その死亡率は50年間に渡り不変である。乳房根治切除術、改良乳房根治切除術または局所部分切除術による該疾患の外科的切除は、この状態の治療の主力となっている。不幸なことに、局所部分切除術のみによって治療されたものの39%は該疾患の局所的再発を生じ、しかも驚くべきことに、その25%において、該切除縁部が組織学的に腫瘍に冒されていることが明らかである。これら局所的再発の90%もが以前に切除した部位の2cm以内の部分で再発しているであろう。
同様に、1991年には、北部アメリカだけで、113,000名を越える死者および238,600名の肝臓転移の新規な症例が報告されている。肝臓に転移した患者の平均生存期間は、一旦肝臓に病巣が生じると、僅かに6.6カ月に過ぎない。肝臓転移に対する非-外科的治療は、全身的な化学療法、放射線療法、化学的塞栓形成(chemoembolization)、肝動脈化学療法および動脈内放射線療法を包含する。しかしながら、かかる治療が一時的に該肝臓病巣のサイズを減じ得る(例えば、全身的な化学療法および肝動脈化学療法は、初期にそれぞれ患者の病巣を15-20%および80%減ずる)という証拠があるにも拘らず、該病巣は常に再生した。肝臓転移部の外科的切除が唯一の治癒の可能性を示すが、かかる処置は転移をもつ患者の僅かに5%において、かつ最初に肝臓癌に罹った患者の僅かに15-20%において可能であるに過ぎない。
限られた成功率をもつ、腫瘍の治療のために試みられた方法の一つは、治療的塞栓形成法である。この方法では、簡単に言えば、腫瘍を増進する血管が、該血管に塞栓形成物質を注入することにより意図的に遮断される。この点に関連して、オートロガス物質、例えば脂肪、血液凝固物、および細断した筋肉フラグメント並びに人工的物質、例えばウール、綿、スチールボール、プラスチックまたはガラスビーズ、タンタル粉末、シリコーン化合物、放射性粒子、滅菌した吸収性ゼラチンスポンジ(ステリスポン(Sterispon)、ジェルフォーム)、酸化セルロース(オキシセル(Oxycel))、スチールコイル、アルコール、凍結乾燥したヒト硬膜(ライオデュラ(Lyodura))、微細繊維コラーゲン(アビテン(Avitene))、コラーゲンフィブリル(タコトップ(Tachotop))、ポリビニルアルコールスポンジ(PVA;イバロン(Ivalon))、バリウム-含浸珪素球(ビス(Biss))および取り外し可能な気球等を包含する種々の物質が試みられた。肝臓転移部のサイズは、かかる方法の利用により一時的に減少するが、腫瘍は典型的には、新たな血管内での腫瘍の成長を生ずることにより応答する。
腫瘍形成に関連する問題は、体液通路、例えば胆管、気管、食道、脈管系および尿道を介する物質の流動を阻害する癌性の閉塞を生ずることである。腫瘍または他の物質により閉塞された通路を解放状態に維持するために、ある装置、即ちステントが開発されている。一般的なステントの代表例はウォールステント(Wallstent)、ストレッカーステント(Strecker stent)、ジャイアンツルコステント(Gianturco stent)およびパルマツステント(Palmaz stent)を包含する。しかしながら、ステントに係わる主な問題は、該ステントの間隙を通しての腫瘍または炎症性物質の内部成長を、該ステントは阻止しないことにある。この物質がステントの内部に達し、かつ該ステント内腔を汚した場合、該ステントが挿入されている該体液通路を閉塞する恐れがある。更に、体内でのステントの存在は、反応性または炎症性の組織(例えば、血管、繊維芽細胞、白血球)の、該ステント内腔への侵入を誘発し、結果として該ステントの部分的または完全な閉塞をもたらす可能性がある。
本発明は、上で論じた処置に関連する諸問題を解決し、更に他の関連する利点を与える、癌および他の血管形成-依存性疾患を治療するのに適した組成物および方法を提供する。
発明の概要
簡単に言えば、本発明は抗-血管(または脈管)形成組成物、並びに該組成物を癌および他の血管形成-依存性疾患の治療に利用する方法および装置を提供する。本発明の一局面においては、組成物(以下「抗-血管形成組成物」と呼ぶ)が提供され、該組成物は(a)抗-血管形成ファクタおよび(b)ポリマー担体を含む。本発明の範囲内において、この抗-血管形成ファクタとしては、例えば抗-浸潤ファクタ(Anti-Invasive Factor)、レチノイン酸およびその誘導体、タキソール、タキソール類似体およびタキソール誘導体、並びにスラミン(Suramin)、TIMP-1(メタロプロテイナーゼ-1の組織阻害剤(Tissu Inhibitor of Metalloproteinase-1))、TIMP-2、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター-1およびプラスミノーゲンアクチベータインヒビター-2からなる群の構成員等を包含する広範囲の分子が利用可能である。同様に、広範囲のポリマー担体が利用でき、その代表的な例は40%の酢酸ビニルで架橋したポリ(エチレン-酢酸ビニル)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、40%の酢酸ビニルで架橋したポリ(エチレン-酢酸ビニル)とポリ乳酸とのコポリマーおよびポリ乳酸とポリカプロラクトンとのコポリマーを包含する。本発明の一態様においては、該組成物は15?200μmの平均粒径を有する。
本発明のもう一つの局面においては、血管の塞栓形成法が提供され、該方法は該血管に、治療上有効な量の(上記の)抗-血管形成組成物を放出して、該血管を効果的に閉塞する工程を含む。その一態様においては、該抗-血管形成性組成物は腫瘍を増進する血管に放出される。
更に別の本発明の局面においては、ステントが提供され、該ステントは一般的に管状構造を含み、その表面は1種以上の抗-血管形成性組成物で被覆されている。本発明の他の局面においては、体液通路の内腔を拡張する方法が提供され、該方法はステントを該通路に挿入する工程を含み、ここで該ステントは一般的に管状構造を含み、該構造の表面は上記の如き抗-血管形成性組成物で被覆されており、かくして該通路は拡張される。本発明の種々の態様においては、胆管ステントを胆汁通路に挿入する工程を含む、胆管障害を排除する方法、尿道ステントを尿道に挿入する工程を含む、尿道障害を排除する方法、食道ステントを食道に挿入する工程を含む、食道障害を排除する方法、および気管/気管支ステントを気管または気管支に挿入する工程を含む、気管/気管支障害を排除する方法を提供する。これら態様の各々において、該ステントは一般的に管状の構造をもち、その表面は上記の如き抗-血管形成性組成物で被覆されている。
本発明の他の局面においては、腫瘍切除部位の治療法を提供し、該方法は腫瘍の切除に引き続き、該部位における局所的癌の再発および新たな血管の形成を阻害するように、該腫瘍切除縁部に上記の抗-血管形成性組成物を投与することを含む。更に他の本発明の局面においては、角膜新血管形成を治療する方法を提供し、該方法は、血管形成を阻害するように、該角膜に上記の如き抗-血管形成性組成物を有効量で投与することを含む。一態様においては、該抗-血管形成性組成物は、更に局所性のコルチコステロイドをも含有する。
本発明の他の局面においては、非-腫瘍性の血管形成依存性の疾患に罹った患者における血管形成を阻害する方法を提供し、該方法は、新たな血管の形成を阻害するように、非-腫瘍性の血管形成依存性の疾患に罹った患者に、タキソールを含有する組成物を、治療上有効な量で投与することを含む。他の局面において、非-腫瘍性の血管形成依存性の疾患における、血管を閉塞する方法を提供し、該方法は、該血管が効果的に閉塞されるように、タキソールを含有する組成物の治療上有効な量を、該血管に放出することを含む。
更に他の本発明の局面においては、体液通路の内腔を拡張する方法を提供し、該方法は、該通路が拡張するように、ステントを該通路内に挿入する工程を含み、該ステントは一般的に管状構造を有し、該構造の表面はタキソールを含有する組成物で被覆されている。本発明の種々の態様においては、胆管ステントを胆汁通路に挿入する工程を含む、胆管障害を排除する方法、尿道ステントを尿道に挿入する工程を含む、尿道障害を排除する方法、食道ステントを食道に挿入する工程を含む、食道障害を排除する方法、および気管/気管支ステントを気管または気管支に挿入する工程を含む、気管/気管支障害を排除する方法を提供する。これら態様の各々において、該ステントは一般的に管状の構造をもち、該構造の表面はタキソール含有組成物で被覆されている。
本発明の他の局面においては、腫瘍切除部位の治療法を提供し、該方法は腫瘍の切除に引き続き、該部位における局所的癌の再発および新たな血管の形成を阻害するように、該腫瘍切除縁部にタキソール含有組成物を投与することを含む。更に他の本発明の局面においては、角膜新血管形成を治療する方法を提供し、該方法は、新たな血管形成を阻害するように、該角膜にタキソール含有組成物を治療上有効な量で投与することを含む。
更に別の本発明の局面においては、医薬製品が提供され、該製品は(a)容器内のタキソールと、(b)薬物の製造、使用または販売を規制する行政機関によって指定された方式での、該容器に付帯する注意書とを含み、該注意書は非-腫瘍形成性の血管形成-依存性疾患の治療のための、ヒトまたは獣医学的投与に関する、該タキソールの該機関による承認を反映する。簡単に説明すれば、フェデラルロー(Federal Law)は、ヒトの治療における薬剤の使用が、フェデラルガバメントの機関により承認されることを要求する。(米国における)その施行責任はフード&ドラッグアドミニストレーション(Food and Drug Administration)にあり、そこでは21 U.S.C.§ §301-392に詳述されている、かかる承認を保証するための適当な規則を発行している。動物組織から作られた製品を含む生物物質に対する規制も、42 U.S.C.§262の下で与えられている。同様な承認は多くの国々によっても必要とされている(規制は国毎に異なる可能性があるが)。
本発明のこれらのおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付図面を参照することにより明らかとなろう。更に、幾つかの処置または組成物をより詳細に説明している様々な参考文献を以下に示し、その全体を本発明の参考とする。
図面の簡単な説明
第1A図は、6日目の殻のない卵の培養物を示す写真である。第1B図は、生きた未染色の毛細管の、立体顕微鏡によって撮影した、ディジタル化コンピュータ-表示した像である(1040x)。第1C図は、大きな下部の血管により供給されたCAM微小脈管を示す侵食キャスティング(corrosion casting)(矢印;1300x)である。第1D図は、該CAMを貫通して横方向に切断され、かつ光学顕微鏡レベルで記録された、厚み0.5mmのプラスチック部分を図示したものである。この写真は該CAMの組成を示しており、外部二重層外胚葉(Ec)、毛細管(矢印)および散乱する外膜を含む中胚葉(M)、および単層の内胚葉(En)(400x)を含む。第1E図は、電子顕微鏡レベル(3500x)の写真であり、そこには典型的な毛細管構造が示され、薄い壁の内皮細胞(矢印先端)および関連する周皮細胞を示している。
第2A、2B、2Cおよび2D図は、タキソールに48時間暴露した後に撮影した4種の異なる未染色のCAMの、一連のディジタル化した像を示す。
第3A、3Bおよび3C図は、該無血管領域における異なる3つの位置で、タキソール処理したCAMを貫通して横方向に切断した、厚み0.5mmのプラスチック部分の一連の写真である。
第4A、4Bおよび4C図は、それぞれ上記の第3A、3Bおよび3C図に示したものと同様な位置から撮影した一連の電子顕微鏡写真である。
第5図は、数によって示された微小球の粒径分布(5%PVA中の10mgナトリウムスラミンを含有する5%ELVAX)を示す棒グラフである。
第6図は、重量で示された微小球の粒径分布(5%PVA中の10mgナトリウムスラミンを含有する5%ELVAX)を示す棒グラフである。
第7図は、1mlの5%ELVAX中に封入したナトリウムスラミンの重量を示す線グラフである。
第8図は、ELVAX中に封入したナトリウムスラミンの百分率を示す線グラフである。
第9図は、10%のNaClを含有する5%PVA中で作成した、10mgのナトリウムスラミンを含有する5%ELVAX微小球の粒径分布を示す棒グラフである。
第10図は、10%のNaClを含む5%PVA中で作成した、10mgのナトリウムスラミンを含有する5%PLL微小球の、重量で表した粒径分布を示す棒グラフである。
第11図は、10%のNaClを含有する5%PVA中で作成した、10mgのナトリウムスラミンを含有する5%PLL微小球の、数で表した粒径分布を表示した棒グラフである。
第12図はナトリウムスラミン放出の経時変化を描写した線グラフである。
第13図は、肝臓腫瘍塞栓形成の代表的態様を例示した図である。
第14図は、本発明の抗-血管形成性組成物で被覆した代表的なステントの挿入を説明する図である。
第15A図は、中心体凝集に及ぼすEVA:PLAポリマーブレンド比の作用を示すグラフである。第15B図は、「小さな」微小球のサイズを示す走査型電子顕微鏡写真である。第15C図は、「大きな」微小球のサイズを示す走査型電子顕微鏡写真である。第15D図は、0.6%w/vの50:50 EVA:PLAポリマーブレンド微小球からのリン酸緩衝塩水(pH 7.4)内への37℃におけるインビトロタキソール放出の経時変化を描写した図である。白丸は「小さな」微小球、黒丸は「大きな」微小球を表す。第15E図は、微小球(“MS”)によるタキソール放出の結果を示すCAMの写真である。第15F図は、高倍率における、第15E図と同様な写真である。
第16図は、37℃における、リン酸緩衝塩水中への、1%、2%、5%または10%のタキソールを含有するポリカプロラクトン微小球からの放出率プロフィールを示すグラフである。第16B図は、コントロール微小球で処理したCAMを示す写真である。第16C図は、5%のタキソールを担持した微小球で処理したCAMを示す写真である。
第17Aおよび17B図は、それぞれEVAフィルムからのタキソールの放出および時間の経過に伴うこれら同一の膜中に残されるタキソールの割合を示す2つのグラフである。第17C図は、タキソールを含まないEVA/F127フィルムの時間の経過に伴う膨潤を示す図である。第17D図は、タキソールを含まないEVA/Span 80フィルムの時間の経過に伴う膨潤を示す図である。第17E図は、種々のEVA/F127ブレンドに関する応力対歪曲線を描写したグラフである。
第18Aおよび18B図は、処方中における%MePEGの関数としての、PCL/MePEGポリマーブレンドの融点(18A)および該処方中におけるMePEGの量の関数としての、PCLペーストが60℃において固化し始めるのに必要とされる、時間で表した増加の割合(18B)を示す2つのグラフである。第18C図は、種々のPCL/MePEGポリマーブレンドの脆弱性を描写したグラフである。第18D図は、種々のMePEG濃度をもつポリマーブレンドに関する、時間の経過に伴う重量変化の割合を示すクラブである。第18E図は、1%のタキソールを担持させた種々のポリマーブレンドからの、経時のタキソール放出率を示すグラフである。第18Fおよび18G図は、種々の量のタキソールの、20%MePEG/PCLブレンドから放出された全タキソール量に及ぼす効果を示すクラブである。第18H図は、MePEG/PCLポリマーの引張強さに及ぼすMePEGの効果を示すグラフである。
第19A図は、CAM上のコントロール(未担持の)サーモペースト(thermopaste)を示す写真である。第19B図は、CAM上の20%タキソール担持サーモペーストを示す写真である。
第20Aおよび20B図は、コントロール(未担持の)サーモペーストで処理した腫瘍を有するCAMの二つの写真である。第20Cおよび20D図は、タキソール担持サーモペーストで処理した腫瘍を有するCAMの二つの写真である。
第21A図は、腫瘍の成長に及ぼすタキソール/PCLの効果を示すグラフである。第21Bおよび21C図は、腫瘍の成長に及ぼす、コントロール、10%および20%タキソール担持サーモペーストの効果を示す二つの写真である。
第22A図は、PBSを注入した関節由来の滑膜の写真である。第22B図は、微小球を注入した関節由来の滑膜の写真である。第22C図は、PBSを注入した関節由来の軟骨の写真であり、また第22D図は、微小球を注入した関節由来の軟骨の写真である。
発明の詳細な説明
上記の如く、本発明は抗-血管形成ファクタを利用する方法および組成物を提供する。簡単に言えば、本発明の範囲内において、抗-血管形成ファクタは、血管の成長を阻害するように作用する蛋白質、ペプチド、化学的または他の分子を包含するものと理解すべきである。所定のファクタの該抗-血管形成活性を測定するのに、例えばヒヨコ漿尿膜(“CAM”)アッセイを包含する種々の方法を容易に利用することができる。簡単に言えば、以下の実施例2Aおよび2Cにおいてより詳細に説明するように、新たに受精した鶏卵から殻の一部を除去し、テストすべき該抗-血管形成ファクタのサンプルを含むメチルセルロースディスクを該膜上に配置する。数日(例えば、48時間)後に、該テストすべきサンプルによる血管成長の阻害を、該メチルセルロースディスクを包囲する領域における該ヒヨコ漿尿膜の可視化によって容易に測定することができる。血管成長の阻害は、また例えばコントロールメチルセルロースディスクとの比較で、該メチルセルロースディスクを包囲する血管の数およびサイズを決定することにより、定量的に測定することも可能である。本発明において使用するのに適した、特に好ましい抗-血管形成ファクタは、上記アッセイにおいて新たな血管の形成を完全に阻害する。
インビボでの抗-血管形成ファクタの有効性を決定するのに種々のアッセイが使用でき、例えばこの目的のために開発したマウスモデルを包含する(Robertson等,Cancer.Res.,1991,51:1339-1344を参照のこと)。更に、ここに記載する本発明の種々の局面に関連する種々の代表的なインビボアッセイを、以下の実施例5?7および17?19により詳細に記載する。
上記の如く、本発明は抗-血管形成ファクタと、ポリマー担体とを含む組成物を提供する。簡単に言えば、広範囲の抗-血管形成ファクタが本発明の範囲内で容易に利用できる。その代表的な例は、抗-浸潤ファクタ(Anti-Invasive Factor)、レチノイン酸およびその誘導体、タキソール;およびスラミン、TIMP-1、TIMP-2、プラスミノーゲンアクチベータインヒビタ-1(Plasminogen Activator Inhibitor-1)およびプラスミノーゲンアクチベータインヒビタ-2からなる群の構成員を包含する。これらのおよび他の抗-血管形成ファクタは、以下においてより詳細に記載されるであろう。
簡単に言えば、軟骨の抽出物から調製される抗-浸潤ファクタ即ち“AIF”は、新たな血管の成長を阻害する原因となる成分を含むことが知られている。これらの成分は7種の低分子量(<50,000ダルトン)タンパク質群を含有し(Kuettner & Pauli,「軟骨ファクタによる新血管形成の阻害(Inhibition of neovascularization by a cartilage factor)」、血管系の発生(Development of the Vascular System),Pitman Books(シバファウンデーションシンポジウム(Ciba Foundation Symposium)100),pp.163-173,1983)、該成分は種々のプロテアーゼに対する阻害効果を有する種々のタンパク質を含有する(Eisentein等,Am.J.Pathol.,1975,81:337-346;Langer等,Science,1976,193:70-72;およびHorton等,Science,1978,199:1342-1345)。本発明において使用するのに適したAIFは当分野で公知の技術(例えば、Eisentein等の上記文献、Kuettner & Pauliの上記文献およびLanger等の上記文献)を利用して容易に調製できる。AIFの精製した成分、例えば軟骨-由来の阻害剤(“CDI”)(Moses等,Science,1990,248:1408-1410を参照のこと)も、容易に調製でき、かつ本発明において使用できる。
レチノイン酸は細胞外マトリックス成分の代謝を変更して、血管形成の阻害を生ずる。プロリン、アンギオスタチン系ステロイドまたはヘパリンの添加を、トランスレチノイン酸の該抗-血管形成効果を相乗的に高めるために利用することができる。レチノイン酸並びに本発明において使用することのできるその誘導体は、例えばシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(#R2625)を包含する販売元から容易に得ることができる。
タキソールはタクスズブレビフォリア(Taxus brevifolia)(パシフィックユー(Pacific Yew))の樹皮およびパシフィックユー(Pacific Yew)のタキソマイセスアンドレアナエ(Taxomyces Andreanae)およびエンドフィチックフンガス(Endophytic Fungus)から得られる(Stierle等,Science,1993,60:214-216)高度に誘導されたジテルペノイドである。一般的に、タキソールはチューブリン(tubulin)に結合することにより微小管状構造を安定化し、異常な有糸分裂性紡錘体を形成するように作用する。「タキソール」(ここではタキソールの類似体および誘導体、例えばバッカチン(Baccatin)およびタキソテール(taxotere)をも包含するものと理解すべきである)は、当分野で公知の技術を利用して容易に調製できる(WO 94/07882、WO 94/07881、WO 94/07880、WO 94/07876、WO 93/23555、WO 93/10076、米国特許第5,294,637号、同第5,283,253号、同第5,279,949号、同第5,274,137号、同第5,202,448号、同第5,200,534号、同第5,229,526号およびEP 590,267号をも参照のこと)か、あるいは例えばシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリー(タクスズブレビフォリア由来のT7402)を包含する種々の製造元から得ることもできる。スラミンは典型的には殺トリパノソーマ剤として使用されているポリスルホン化ナフチルウレア化合物である。簡単に言えば、スラミンは種々の成長因子、例えば血小板由来の成長因子(“PDGF”)、表皮性の成長因子(“EGF”)、転換成長因子(“TGF-β”)、インシュリン-様成長因子(“IGF-1”)および繊維芽細胞成長因子(“βFGF”)等の特異的細胞表面結合を阻害する。スラミンは公知の方法に従って調製できるか、あるいは例えばモーバイケミカル社(Mobay Chemical Co.,),N.Y.を包含する種々の製造元から容易に得ることができる(Gagliardi等,Cancer Res.,1992,52:5073-5075;Coffey,Jr.等,J.of Cell.Phys.,1987,132:143-148を参照のこと)。
メタロプロテイナーゼ-1の組織阻害剤(TIMP)は、MTPアーゼをも分泌する内皮細胞によって分泌される。TIMPはグリコシル化されており、28.5 KdAなる分子量を有する。TIMP-1は活性化されたメタロプロテイナーゼに結合することにより血管形成を調節し、それにより血管の細胞外マトリックスへの侵入を抑制する。メタロプロテイナーゼ-2の組織阻害剤(TIMP-2)も、血管形成を阻害するのに使用できる。簡単に説明すると、TIMP-2は21 kDaの非グリコシル化タンパク質であって、活性なおよび潜在的なプロ酵素型両者におけるメタロプロテイナーゼに結合する。TIMP-1およびTIMP-2両者はシネルゲン(Synergen)、ブルダー、コロラド等の販売元から入手できる。
プラスミノーゲンアクチベータインヒビタ-1(PA)は50 kDaの糖タンパク質であり、これは血小板中に存在し、また内皮細胞および筋肉細胞によっても合成し得る。PAI-1はt-PAおよび内皮のバソラテラル(basolateral)サイトにおけるウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベータを阻害し、かつ付随的にフィブリン溶解過程を調節する。プラスミノーゲンアクチベータインヒビタ-2(PAI-2)は、一般的に妊娠中および腫瘍が存在する等の幾つかの状況下でのみ血液中に見出される。簡単に説明すれば、PAI-2は56 kDaのタンパク質であって、単核細胞およびマクロファージによって分泌される。これはフィブリン溶解活性を調節するものと考えられ、かつ特にウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベータおよび組織プラスミノーゲンアクチベータを阻害し、それによりフィブリン溶解を阻害する。
他の広範な抗-血管形成ファクタも、本発明において使用できる。その代表的な例は、血小板因子4(シグマケミカル社、#F1385)、プロタミンサルフェート(Protamine Sulphate)(クルペイン(Clupeine))(シグマケミカル社、#P4505)、硫酸化キチン誘導体(クイーンクラブシェル(queen crab shells)から調製)(シグマケミカル社、#C3641;Murata等,Cancer Res.,1991,51:22-26)、硫酸化ポリサッカライドペプチドグリカン錯体(SP-PG)(この化合物の機能は、ステロイド、例えばエストロゲンおよびタモキシフェンシトレートの存在により高めることができる)、スタウロスポリン(Staurosporine)(シグマケミカル社、#S4400)、例えばプロリン類似体を包含するマトリックス代謝の調節剤(Modulators of Matrix Metabolism)(L-アゼチジン-2-カルボン酸(LACA)(シグマケミカル社、#A0760)、シスヒドロキシプロリン、d,L-3,4-デヒドロプロリン(シグマケミカル社、#D0265)、チアプロリン(シグマケミカル社、#T0631))、α,α-ジピリジル(シグマケミカル社、#D7505)、β-アミノプロピオニトリルフマレート(シグマケミカル社、#A3134))、MDL 27032(4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3H)-オキサゾロン、メリオンメレルダウリサーチインスティチュート(Merion Merrel Dow Research Institute))、ミトキサントロン(Mitoxantrone)(Polverini and Novok,Biochem.Biophys.Res.Comm.,140:901-907)、、インターフェロン(例えば、シグマケミカル社、#13265)、2マクログロブリン-血清(シグマケミカル社、#M7151)、ChIMP-3(Pavloff等,J.Bio.Chem.1992,267:17321-17326)、キモスタチン(シグマケミカル社、#C7268;Tomkinson等,Biochem.J.,1992,286:475-480)、β-シクロデキストリンテトラデカサルフェート(シグマケミカル社、#C4767)、エポネマイシン、エストラマスチン(シグマケミカル社から入手可能、Wang & Stearns,Cancer Res.,1988,48:6262-6271)、フマギリン(シグマケミカル社、#F6771;カナダ特許第2,024,306号、Ingber等,Nature,1990,348:555-557)、金ナトリウムチオマレート(“GST”;シグマ社、G4022;Matsubara & Ziff,J.Clin.Invest.,1987,79:1440-1446)、D-ペニシラミン(“CDPT”;シグマケミカル社、#P4875またはP5000(HCl))、β-1-アンチコラーゲナーゼ-血清、α2-アンチプラスミン(シグマケミカル社、A0914;Holmes等,J.Biol.Chem.,1987,262(4):1659-1664)、ビスアントレン(ナショナルキャンサーインスティチュート(National Cancer Institute)、ロベンザリットジナトリウム(N-(2)-カルボキシフェニル-4-クロロアンスロニル酸ジナトリウムまたは“CCA”;Takeuchi等,Agents Actions,1992,36:312-316)、サリドマイド、アンギオスタティックステロイド、AGM-1470、カルボキシアミノイミダゾール、メタロプロテイナーゼ阻害剤、例えばBB94およびペプチドCDPGYIGSR-NH_(2)(シーケンス(SEQUENCE)ID No.1)(イワキガラス、東京、日本)を包含する。
本発明の抗-血管形成組成物は、該抗-血管形成ファクタおよびポリマー担体に加えて、更に広範な化合物を含むことができる。例えば、本発明の抗-血管形成組成物は、本発明の幾つかの態様においては、1種以上の抗生物質、抗-炎症剤、抗-ウイルス剤、防黴剤および/または抗-原虫薬をも含むことができる。本明細書に記載する組成物中に含まれる抗生物質の代表的な例は、ペニシリン、セファロスポリン類、例えばセファドロキシル、セファゾリンおよびセファクロール、アミノグリコシド類、例えばゲンタマイシンおよびトブラマイシン、スルホンアミド類、例えばスルファメトキサゾール、およびメトロニダゾールを包含する。抗-炎症剤の代表的な例は、ステロイド類、例えばプレドニソン、プレドニソロン、ヒドロコルチゾン、アドレノコルチコトロピックホルモンおよびスルファサラジン、および非-ステロイド系抗-炎症薬(“NSAIDS”)、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノポルフェン、インドメタシンおよびフェニルブタゾンを含む。抗-ウイルス剤の代表的な例は、アシクロビル、ガンシクロビルおよびジドブジンを包含する。代表的な防黴剤の例はナイスタチン、ケトコナゾール、グリセオフルビン、フルシトシン、ミコナゾールおよびクロトリマゾールを含む。抗-原虫薬の代表的な例は、ペンタミジン、イセチオネートキニン、クロロキンおよびメフロキンを含む。
本発明の抗-血管形成組成物は、また1種以上のホルモン、例えば甲状腺ホルモン、エストロゲン、プロゲステロン、コルチゾンおよび/または成長ホルモン、他の生物学的に活性な分子、例えばインシュリン、並びにT_(H1)(例えば、インターロイキン-2、-12および-15、γインターフェロンまたはT_(H2)(例えば、インターロイキン-4および-10)サイトカイン類をも含むことができる。
本発明の抗-血管形成組成物は、また付随的な成分、例えば界面活性剤(親水性または疎水性、実施例13を参照のこと)、抗-新生物剤または化学療法剤(例えば、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ドキシルビシン、アドリアマイシンまたはタモシフェン)、放射性薬物(例えば、Cu-64、Ga-67、Ga-68、Zr-89、Ru-97、Tc-99m、Rh-105、Pd-109、In-111、I-123、I-125、I-131、Re-186、Re-188、Au-198、Au-199、Pb-203、At-211、Pb-212およびBi-212)あるいはトキシン(例えば、リシン、アブリン、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、ゲロニン(gelonin)、ヨウシュヤマゴボウの抗-ウイルスタンパク、トリチン(tritin)、シゲラトキシンおよびシュウドモナス外毒素A)をも含有することができる。
上記のように、本発明の抗-血管形成組成物は、抗-血管形成ファクタおよびポリマー担体を含む。上記の多数の抗-血管形成ファクタおよび上で論じた他の化合物に加えて、本発明の抗-血管形成組成物は広範なポリマー担体、例えば生分解性および非-生分解性組成物両者を含むことができる。生分解性組成物の代表的な例は、アルブミン、ゼラチン、澱粉、セルロース、デストラン類(destrans)、多糖類、フィブリノーゲン、ポリ(d,l-ラクチド)、ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコライド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)およびポリ(オルトエステル)(一般的には、Illum,L.,Davids,S.S.(ed.),“Polymers in controlled Drug Delivery”,Wright,Bristol,1987;Arshady,J.Controlled Release,1991,17:1-22;Pitt,Int.J.Phar.,1990,59:173-196;Holland等,J.Controlled Release,1986,4:155-0180を参照のこと)。非-生分解性ポリマーの代表的な例は、EVAコポリマー、シリコーンゴムおよびポリ(メチルメタクリレート)を含む。特に好ましいポリマー担体はEVAコポリマー(例えば、ELVAX 40,40%の酢酸ビニルで架橋したポリ(エチレン-酢酸ビニル)、デュポン(DuPont)社から入手可能)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、40%の酢酸ビニルで架橋したポリ(エチレン-酢酸ビニル)とポリ乳酸とのコポリマーおよびポリ乳酸とポリカプロラクトンとのコポリマーを包含する。
ポリマー担体は種々の形状、例えばナノ球(nanosphere)または微小球、棒状、ペレット、スラブまたはカプセル形状で使用できる(例えば、Goodell等,Am.J.Hosp.Pharm.,1986,43:1454-1461;Langer等,“Controlled release of macromolecules from polymers”,Biomedical Polymers,Polymeric materials and pharmaceuticals for biomedical use,Goldberg,E.P.,Nakagim,A.(ed.),Academic Press,pp.113-137,1980;Rhine等,J.Pharm.Sci.,1980,69-265-270;Brown等,J.Pharm.Sci.,1983,72:1181-1185;Bawa等,J.Controlled Release,1985,1:259-267を参照のこと)。
好ましくは、本発明の抗-血管形成組成物(これは1種以上の抗-血管形成ファクタおよびポリマー担体を含む)は、意図した用途に適した様式で作成することができる。本発明の好ましい局面においては、該抗-血管形成組成物は生分解性であるべきであり、また数週間乃至数カ月の機関に渡り1種以上の抗-血管形成ファクタを放出すべきである。更に、本発明の抗-血管形成組成物は、好ましくは数カ月に渡り安定であり、かつ滅菌条件下で製造し、かつ保存できるものであるべきである。
本発明の幾つかの局面においては、抗-血管形成組成物は、特定の用途に応じて、ナノ球乃至微小球(例えば、0.1?500μm)の範囲のサイズで作成できる。例えば、(以下で論じるように)腫瘍塞栓の目的で使用する場合、15?500μm、好ましくは15?200μm、最も好ましくは25?150μmの範囲の微小球として該抗-血管形成組成物を作成することが好ましい。このようなナノオーダーの粒子(ナノ粒子)は「スプレー」として容易に適用でき、フィルムまたは被膜として固化できる。ナノ粒子(「ナノ球」とも言う)は広範なサイズ、例えば0.1?3μm、10?30μmおよび30?100μm(実施例8参照)で調製できる。
抗-血管形成組成物は、また種々の他の用途(ここにその開示を与える)のために調製できる。例えば、角膜に該抗-血管形成組成物を投与するために、本発明の組成物はナノ粒子としてのポリマー中に配合できる(一般的には、Kreuter,J.Controlled Release,1991,16:169-176;Couvreur & Vauthier,J.Controlled Release,1991,17:187-198を参照のこと)。このようなナノ粒子は、また「スプレー」として容易に適用でき、フィルムまたは被膜として固化できる。ナノ粒子(「ナノ球」とも言う)は広範なサイズ、例えば0.1?3μm、10?30μmおよび30?100μm(実施例8参照)で調製できる。
本発明の抗-血管形成組成物は、また種々の「ペースト」またはゲル形状で調製することも可能である。例えば、本発明の一態様においては、抗-血管形成組成物は、ある温度(例えば、37℃を越える温度、例えば40℃、45℃、50℃、55℃または60℃)にて液体であり、かつ他の温度(例えば、周囲温度、体温または37℃未満の温度)にて固体または半-固体状のものとして与えられる。このような「サーモペースト」は、ここに与えられる開示によって容易に作成できる(例えば、実施例10および14を参照のこと)。
本発明の更に他の局面においては、本発明の抗-血管形成組成物は、フィルム形状で作成できる。好ましくは、このようなフィルムは、一般的に5、4、3、2または1mm未満、より好ましくは0.75または0.5mm未満、最も好ましくは500?100μm未満の厚みをもつ。かかるフィルムは好ましくは可撓性で良好な引張強さ(例えば、50を越える、好ましくは100を越える、およびより好ましくは150または200N/cm^(2)を越える)、および良好な接着性(即ち、湿ったまたは湿潤表面に容易に接着する)を有し、かつ制御された透過性をもつ。かかるフィルムの代表的な例は以下の実施例において示される(例えば、実施例13を参照)。
ポリマー担体等への抗-血管形成ファクタの配合の代表的な例は、以下で、実施例3、4および8?15において一層詳細に記載される。
動脈塞栓
上記組成物に加えて、本発明は種々の方法をも提供し、該方法は上記の抗-血管形成組成物を使用する。特に、本発明の一局面においては、血管を閉塞する方法を提供し、該方法は該血管が有効に閉塞されるように、(上記のような)抗-血管形成組成物の治療上有効な量を、該血管に供給する工程を含む。血管を閉塞するのに適当な治療上有効な量は、以下に与えられる開示および実施例6の記載のようにして容易に決定できる。特に好ましい態様において、該抗-血管形成組成物は、腫瘍を増進する血管に供給される(第13図参照)。
簡単に言えば、器官または領域に対する血液の供給を減じまたは停止することが望ましい幾つかの臨床的状況(例えば、出血、腫瘍の発現等)がある。以下により詳細に説明するように、これは本発明の抗-血管形成組成物を、選択的に配置されたカテーテル(第13図参照)を介して、所定の血管内に注入することにより達成できる。該組成物は、これが脈管内に嵌まり込んで、物理的にまたは化学的に該血管を閉塞するまで、該血流を通して移動する。この選択された領域に対して低減または停止された血流は梗塞(酸素および養分の供給不十分のための細胞の死)または損傷を受けた血管からの血液損失の低減をもたらす。
塞栓療法で使用するために、本発明の抗-血管形成組成物は、好ましくは無毒で、凝塊形成性であり、また血管カテーテルでの注入が容易であり、放射線不透過性で、その作用において迅速かつ永続的であり、無菌であり、かつ該処置の時点で種々の形状またはサイズで容易に入手できるものである。更に、該組成物は、好ましくは抗-血管形成ファクタの緩慢(理想的には、数週間乃至数カ月の機関に渡り)な放出を与える。特に好ましくは、抗-血管形成組成物は該血管系に注入された後に、15?200μmの予想可能なサイズをもつべきである。好ましくは、溶液中でまたは一旦注入された後に、これらは大きな粒子に凝集すべきではない。更に、好ましくは組成物は使用前の保存中に形状または物性の変化するものであってはならない。
塞栓療法は、新生物の制御において役立つ少なくとも3つの主な方法で、即ち(1)腫瘍(通常は良性のもの)の完全な治療、(2)手術前の塞栓、および(3)一時的な塞栓において利用できる。簡単に言えば、良性の腫瘍は、しばしば塞栓療法のみで首尾よく治療できる。このような腫瘍の例は、脈管起源の単純な腫瘍(例えば、血管腫)、内分泌腫、例えば甲状腺アデノーマおよび良性骨腫瘍を包含する。
他の腫瘍(例えば、腎腺癌)に対しては、手術前の塞栓を外科的切除の数時間または数日前に利用して、手術による血液の損失を減じ、該手術に要する時間を短縮し、かつ該腫瘍の外科処置による生きた悪性細胞の散々化を可能性を減ずることができる。多くの腫瘍が手術前に首尾よく塞栓でき、このような腫瘍は、例えば鼻咽頭腫瘍、頸静脈小体腫、髄膜腫、ヘモデクトーマおよび迷走神経腫を含む。
塞栓療法は、また手術不能な悪性疾患の初期治療として利用でき、進行した疾患に罹った患者の生存期間を延長できる。塞栓療法は、不快な症状、例えば出血、静脈性障害および気管圧迫を緩和することにより、悪性腫瘍に罹った患者の生存状態を大幅に改善することを可能とする。しかしながら、一時的な腫瘍塞栓の最大の利点は、悪性の内分泌腺腫の体液性の作用を受けた患者にみられ、そこではカルチノイド腫および他の内分泌腺新生物、例えばインスリノーマおよびグルカゴノーマからの転移は緩慢に成長し、かつこれらの生ずる内分泌腺症候群による重度の苦痛をも生ずる。
一般的に、本発明の抗-血管形成組成物を利用する塞栓療法は、典型的にはサイトには無関係に、同様な方法で実施される。簡単に言えば、塞栓すべき領域の血管造影法(血管のロードマップ)を、まずX-線撮影するために、動脈または静脈(塞栓すべきサイトに依存して)内に挿入されたカテーテルを介して放射線不透過性造影剤を注入することにより実施する。このカテーテルは皮下的にまたは外科手術によって挿入できる。次いで、該カテーテルを介して本発明の抗-血管形成組成物を、流動の停止が観測されるまで循環させることにより、血管を塞栓する。この血管造影を繰り返すことによって閉塞を確認できる。
塞栓療法は、一般的に処置すべき腫瘍または脈管集団の間隙全体に渡る、抗-血管形成ファクタを含有する組成物の分布をもたらす。動脈内腔を閉塞している該塞栓粒子の物理的嵩は、血液供給の閉塞をもたらす。この効果に加えて、抗-血管形成ファクタの存在は新たな血管の形成を阻止し、これにより該腫瘍または脈管集団への供給を阻止して、血液供給の遮断による不活性化効果を高める。
従って、広範な腫瘍が本発明の組成物を使用して塞栓可能であることは明らかである。簡単に言えば、腫瘍は、典型的には2つの群、即ち良性および悪性に分類できる。良性腫瘍においては、細胞はその分化特性を維持しており、かつ完全に制御不能な様式では分裂しない。更に、この腫瘍は局在化され、かつ非-転移性である。悪性腫瘍においては、細胞は分化不能となり、身体の成長およびホルモンシグナルに応答せず、かつ制御不能な様式で増殖し、この腫瘍は侵襲的で、遠位のサイトまで広がる(転移)ことができる。
本発明の一態様においては、肝臓の転移(二次的腫瘍)を、塞栓療法を利用して治療することを可能とする。簡単に言えば、カテーテルを大腿部または腕部動脈を介して挿入し、透視検査法による誘導の下で、該動脈系を介して該カテーテルを導くことにより、肝動脈まで前進させる。このカテーテルを、腫瘍に養分供給する血管の完全な閉塞を可能とするまで該肝動脈系に前進させ、一方でできる限り多くの動脈枝を正常な構造に養分供給するために残しておく。理想的には、これは肝動脈のセグメント血管枝であるが、胃十二指腸動脈の源から離れた全肝動脈、あるいは複数の別々の動脈さえも、腫瘍の程度およびその個々の血液供給に依存して、閉塞する必要があることもあり得る。一旦、所定のカテーテル位置を達成したら、閉塞すべき動脈中の流動が停止するまで、あるいは好ましくは5分間の観測後に、該動脈カテーテルを通して(上記のような)抗-血管形成組成物を注入することによって、該動脈を塞栓する。この動脈の閉塞は、該カテーテルを介して放射線不透過性造影剤を注入することにより確認でき、かつ透視検査法またはX-線フィルムによって、前に造影剤で満たされていた該血管が最早満たされていないことを立証することにより確認できる。同様な手順を繰り返して、閉塞すべき動脈に該組成物を供給することができる。
上記の如く、良性および悪性両腫瘍は本発明の抗-血管形成組成物を使用して塞栓治療できる。良性肝腫の代表的な例は、肝細胞アデノーマ、空洞性血管腫、および病巣小結節過形成を含む。より稀であり、臨床的な徴候をもたない他の良性腫瘍を治療することも可能である。このような腫瘍の例は、胆管アデノーマ、胆管のう腺腫、繊維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、および小結節再生性過形成を含む。
悪性肝腫は、一般的に2つのカテゴリー、即ち一次および二次に分類される。一次腫瘍は直接これらが発見された組織から生ずる。従って、一次肝腫は該肝臓組織を構成する細胞(例えば、肝細胞および胆嚢細胞)由来のものである。動脈塞栓によって治療できる一次肝臓悪性腫瘍の代表的な例は、肝細胞癌、胆管癌、血管肉腫、のう腫癌、偏平細胞癌および肝芽腫を包含する。
二次腫瘍、即ち転移腫瘍は身体のいたる部分に生じるが、遠位の器官にも広がる腫瘍である。転移の共通の経路は、隣接構造内での直接的成長、脈管系またはリンパ系を介しての拡がり、組織面および体腔(腹水、脳脊髄液等)に沿った移動である。二次肝腫は癌患者の死亡の最も共通した原因の一つであり、最も共通した肝腫の形態である。見掛け上は如何なる悪性疾患も肝臓に転移し得るが、最も肝臓に広がり易い腫瘍は、胃、結腸、および膵臓癌、メラノーマ、肺、中咽頭および膀胱腫、ホジキンおよび非-ホジキン型リンパ腫、乳房、卵巣および前立腺腫瘍を包含する。上記の一次腫瘍各々は、動脈塞栓によって治療可能な多数の腫瘍型を有する(例えば、卵巣癌には32を越える異なる型がある)。
上記の如く、本発明の抗-血管形成組成物を使用する塞栓療法は、また血管を閉塞することが望ましい種々の他の臨床的状況にも適用できる。本発明の一局面においては、動静脈の形成異常を、上記組成物の1種の投与により治療することができる。簡単に言えば、動静脈の形成異常(脈管形成異常)とは、動脈と静脈との間の少なくとも1種の異常な連絡が生じた、一群の疾患を意味し、支配的に血管を含む局所的な腫瘍-様集団を与える。このような疾患は先天性または後天性であり得る。
本発明の一態様においては、動静脈の形成異常を大腿または腕動脈を介してカテーテルを挿入し、供給源となる動脈内に透視検査法による誘導の下で該カテーテルを進行させることによって治療できる。このカテーテルを、脈管形成異常部に養分供給する血管の完全な閉塞を可能とするまで必要な限り前進させ、一方でできる限り多くの動脈枝を正常な構造に養分供給するために残しておく(理想的には、これは単一の動脈であるが、最も高頻度で、該脈管形成異常の程度およびその個々の血液供給の程度に応じて、複数の別々の動脈を閉塞する必要があることもあり得る)。一旦、所定のカテーテル位置を達成したら、本発明の抗-血管形成組成物を使用して、各動脈を塞栓することができる。
本発明のもう一つの局面においては、過度の出血状態を処置するために塞栓を行うことができる。例えば、月経過多(月経中の過度の出血)を、子宮動脈の塞栓により容易に治療できる。簡単に言えば、該子宮動脈は内部腸骨動脈の双方向の枝脈である。本発明の一態様によれば、大腿または腕動脈を介してカテーテルを挿入し、透視検査法による誘導の下で該動脈系を通して該カテーテルを誘導して、各子宮動脈内に進行させることによって挿入できる。このカテーテルを、該子宮に到る血管の完全な閉塞を可能とするまで必要な限り前進させ、一方でできる限り多くの該子宮動脈から派生する動脈枝を、正常な構造に養分供給するために残しておく。理想的には、各側の単一の子宮動脈を塞栓できるが、場合によっては、個々の血液供給に応じて、複数の別々の動脈を閉塞する必要があることもあり得る。一旦、所定のカテーテル位置を達成したら、上記の如き抗-血管形成組成物の投与により、各動脈を塞栓することができる。
同様にして、例えば急性出血、脈管異常、中枢神経系疾患および脾機能亢進等を包含する様々な他の状態においても、動脈塞栓を達成できる。
ステント用被膜としての抗-血管形成組成物の利用
上記の如く、本発明はまたステントをも提供し、該ステントは一般的に管状構造をもち(例えば、螺旋状の形状を含む)、その表面は上記のような組成物で被覆されている。簡単に言えば、ステントは、通常円筒状の形状の足場であり、疾患過程により狭窄した(例えば、腫瘍による内部成長)体液通路(例えば、胆管)内に挿入して、該通路の閉塞または再閉塞を防止することができる。ステントは、これらが挿入された体液通路の壁を物理的に解放状態に維持することにより機能する。
本発明においては、種々のステントを使用することができ、例えば食道ステント、脈管ステント、胆管ステント、膵管ステント、尿管および尿道ステント、涙腺ステント、ユースタキー管ステント、ファロピオ管ステントおよび気管/気管支ステント等を包含する。
ステントは、販売元から容易に入手できるか、あるいは周知の技術により構築できる。ステントの代表的な例は「膨脹性の管腔内移植片、および移植法並びに装置および膨脹性管腔内移植片」と題する米国特許第4,776,337号、「内在性ステント」と題する米国特許第5,176,626号、中空身体導管用のニチノール(Nitinol)ステント」と題する米国特許第5,147,370号、安定な軸長さをもつ自己-膨脹性プロテーゼ」と題する米国特許第5,064,435号、「内在性ステントおよびその利用法」と題する米国特許第5,052,998号、および脈管内ステントおよび放出系」と題する米国特許第5,041,126号に記載のものを包含する。これら全てを本発明の参考文献とする。
ステントは、種々の方法を使用して、本発明の抗-血管形成組成物または抗-血管形成ファクタで被覆できる。該方法は、例えば(a)該ステントに直接抗-血管形成組成物を固定(例えば、該ステントに噴霧して、ポリマー/薬物フィルムを固定するか、あるいは該ステントをポリマー/薬物溶液に浸漬することにより固定)する方法、(b)後に抗-血管形成組成物(または上記の抗-血管形成ファクタ)を吸収する、ヒドロゲル等の物質を該ステントに塗布する方法、(c)該ステント構造に、抗-血管形成組成物を被覆した糸(または該ポリマー自体を糸に形成したもの)を相互に織り込む方法、(d)該ステントを、抗-血管形成組成物を含むあるいは該組成物で被覆したスリーブまたはメッシュ中に挿入する方法、あるいは(e)該ステント自体を抗-血管形成組成物で構築する方法を包含する。本発明の好ましい態様においては、該組成物はその保存中および挿入時点で、該ステントにしっかりと接着しているべきであり、またその直径がその圧潰したサイズから十分に膨脹したサイズにまで膨脹した場合に、該ステントから脱落すべきではない。この抗-血管形成組成物は、また保存中に、挿入前に、あるいは身体内での膨脹後に体温に加温された場合に、劣化しないことが好ましい。更に、これは該ステントを滑らかにかつ平坦に被覆して、血管形成阻害剤の均一な分布をもち、一方で該ステントの輪郭を変えないものであることが好ましい。本発明の好ましい態様においては、該抗-血管形成組成物は、一旦配置されたら、該ステントを包囲する組織内に該抗-血管形成ファクタを、均一で予測可能な長い放出時間をもたらすべきである。脈管ステントについては、上記特性に加えて、該組成物は該ステントを凝塊形成性(血餅の形成を生ずる)とせず、もしくは過度の血流の乱れを(該ステント自体が、未被覆である場合に生ずるであろうと予想される以上に)生じないものであるべきである。本発明のもう一つの局面では、体液通路の内腔を拡張する方法を提供し、該方法はステントを該通路に挿入する工程を含み、該ステントは一般的に管状の構造をもち、該構造の表面は、該通路が拡張されるように、抗-血管形成組成物(または抗-血管形成ファクタのみ)で被覆されている。種々の態様が以下に記載され、そこでは体液通路の内腔を拡張して、胆管、食道、気管/気管支、尿道または脈管障害が排除される。更に、代表的な例を、以下の実施例7でより詳細に説明する。
一般的に、ステントは治療すべきサイトまたは疾患とは無関係に、類似の様式で挿入される。簡単に言えば、通常は診断的な想像上の手順で、内視鏡検査、あるいは外科手術の際の直接的可視化による挿入前実験を、一般にまず実施して、ステント挿入の適当な位置を決定する。次いでガイドワイヤーを、該病巣または挿入しようとするサイトを介して侵入させ、その後挿入すべきステントを圧潰形状に維持することを可能とする、送り出しカテーテルを通す。典型的には、ステントは圧縮可能であり、従って小さなカテーテルを介して小さな空洞を通して挿入でき、次いで該ステントが所定の位置に達したら、これを大きな径にまで膨脹させる。一旦膨脹すると、該ステントは物理的に該通路の壁を離された、解放状態に強制的に維持する。これら自体は小さな開口を通して挿入でき、かつ依然として大きな径の空洞または通路を解放状態に維持できる。このステントは自己-膨脹性であり(例えば、ウォールステントおよびジャイアンツルコステント)、気球膨脹性(例えば、パルマッツ(Palmaz)ステント、ストレッカー(Strecker)ステント)であり、または温度変化により移植可能(例えば、ニチノールステント)である。典型的には、放射線医学的または直接観察による制御下で、該ステントが処置すべき器官内の狭窄部を横切って正確に配置するように特別な注意を払いつつ、ステントを所定の位置に移動させる。次いで、送り出しカテーテルを除去し、該ステントを足場としてそれ自体の上に立たせておく。しばしば、挿入後の実験(通常はX-線実験)を利用して、適当に配置されていることを確認する。
本発明の好ましい態様においては、胆管障害を除去する方法を提供し、該方法は胆管ステントを胆汁通路内に挿入する工程を含み、該ステントは一般的に管状構造をもち、該構造の表面は、該胆管障害が排除されるように、上記のような組成物で被覆されている。簡単に言えば、該共通の胆管の腫瘍成長過多は、生体と適合しない、進行性の胆汁うっ滞性黄疸を生ずる。一般に、肝臓から十二指腸へ胆汁を排出する胆嚢系は、最もしばしば(1)胆管細胞からなる腫瘍(胆管癌)、(2)該胆管を侵襲する腫瘍(例えば、膵臓癌)または(3)該胆管に外来性の圧力または圧縮力を及ぼす腫瘍(例えば、巨大化したリンパ節)によって障害を受ける。
胆管枝の圧縮を生ずる一次胆管腫並びに他の腫瘍は本明細書に記載のステントを利用して治療できる。一次胆管腫の一例は腺癌であり(これは共通の肝管の分枝にみられる場合には、クラツキン(Klatskin)腫瘍とも呼ばれる)。これらの腫瘍は該胆管系の胆管癌、総胆管細胆管癌または腺癌とも呼ばれる。胆管に影響を与える良性の腫瘍(例えば、胆管系のアデノーマ)および稀な場合としての胆管の偏平細胞癌および胆嚢の腺癌は、胆管枝の圧迫を生じ、従って胆管障害を生ずる可能性がある。
胆管枝の圧迫は、最も一般的には肝臓および膵臓の腫瘍によるものであり、これら腫瘍は該胆管を圧迫し、結果としてこれに障害を及ぼす。膵臓由来の腫瘍の多くは、膵管の細胞から生ずる。これは、6カ月生存の平均で、癌の高い死亡率を与える型であり(癌による全死者の5%に相当し、米国では1年当たり26,000名の新たな患者がある)、1年生存率は僅かに10%である。これらの腫瘍が膵臓の頭部に局在した場合、胆管障害を高い頻度で生じ、これは患者生命の特性を大幅に損なう。全ての型の膵臓腫瘍は一般的に膵臓癌と呼ばれるが、細胞学的な亜種があり、腺癌、腺偏平細胞癌、嚢胞腺癌、および胞状細胞癌を包含する。上記のような肝腫も、胆管枝の圧迫を生じ、従って胆管の障害を生ずる。
本発明の一態様においては、胆管ステントは幾つかの方法の一つによって胆汁通路に挿入される。即ち、上端部から、腹部壁および肝臓を介して針を挿入することにより(皮下、経肝臓での胆管造影図、即ち“PTC”)、末端部から、口、胃または十二指腸を介して挿入された内視鏡を通して胆管にカニューレを挿入することにより(内視鏡逆行胆管造影図、即ち“ERCP”)あるいは外科手術中の直接的切開により挿入される。挿入前の実験、即ちPTC、ERCPまたは外科手術時点での直接的可視化は、一般にステント挿入のための適当な位置を決定するために行われるべきである。次いでガイドワイヤーを該病巣を介して進行させ、その後送り出しカテーテルを通して、該ステントを圧潰状態で挿入できるようにする。該診断的実験がPTCである場合、該ガイドワイヤーおよび送り出しカテーテルは腹部壁を介して挿入され、一方で元の実験がERCPである場合には、該ステントは口を介して配置される。次いで、放射線医学的、内視鏡的、または直接的可視化制御下で、該胆管中の狭窄部を正確に横切って配置するように特別な注意を払って、このステントを配置する。該送り出しカテーテルは除去され、該ステントは足場として立ったままとされ、かくして該胆管を解放状態に維持するであろう。もう一つの胆管造影図の撮影を実施して、該ステントが適当に配置されていることを実証する。
更に別の本発明の態様においては、食道障害を排除する方法を提供し、該方法は食道に食道ステントを挿入する工程を含み、該ステントは一般的に管状の構造をもち、該構造の表面は、該食道の障害が排除されるように、上記のような抗-血管形成組成物で被覆されている。簡単に言えば、食道は食物および液体を口から胃に輸送するための中空の管である。食道癌またはその隣接器官(例えば、胃または肺の癌)で生じた癌による侵襲は、食物または唾液の飲み込みを不能にする。この態様においては、一般的に挿入前の実験(通常はバリウムの飲用または内視鏡)を実施して、ステント挿入のための適当な位置を決定すべきである。次いで、カテーテルまたは内視鏡を口を通じて配置させ、ガイドワイヤーを該閉塞部を通して侵入させる。放射線医学的手法または内視鏡観測による制御下で、ステント送り出しカテーテルを該ガイドワイヤーに通し、該ステントを該食道の狭窄部を横切って正確に配置する。挿入後の実験(通常はバリウムの飲用またはX-線の使用)を、適当に配置されたことを確認するために利用できる。
本発明の他の態様においては、気管/気管支障害を排除する方法を提供し、該方法は気管または気管支に気管/気管支ステントを挿入する工程を含み、このステントは一般的に管状の構造をもち、その表面は、気管/気管支障害が排除されるように、上記のような抗-血管形成組成物で被覆されている。簡単に言えば、気管および気管支は口および鼻から肺に空気を運搬する管である。癌、隣接器官に生じた癌(例えば、肺癌)の侵襲による該気管の閉塞、または軟骨軟化症(軟骨リングの弱化)による該気管または気管支の圧潰は、呼吸不能を生ずる。本発明のこの態様においては、一般的に挿入前の実験(通常は内視鏡)を実施して、ステント挿入のための適当な位置を決定すべきである。次いで、カテーテルまたは内視鏡を口を通じて配置させ、ガイドワイヤーを該閉塞部を通して侵入させる。次いで、送り出しカテーテルを該ガイドワイヤー上に通して、圧潰されたステントの挿入を可能とする。このステントは、放射線医学的手法または内視鏡観測による制御下で配置して、該ステントを該狭窄部を横切って正確に配置する。次いで、該送り出しカテーテルを除去して、該ステントをそれ自体足場として立った状態としておく。挿入後の実験(通常は気管支鏡検査法)を、適当に配置されたことを確認するために利用できる。
本発明のもう一つの態様においては、尿道障害を排除する方法が提供され、該方法は尿道ステントを尿道内に挿入する工程を含み、該ステントは一般的に管状の構造をもち、該構造の表面は、該尿道障害を排除するように、上記のような抗-血管形成組成物で被覆されている。簡単に言えば、尿道はペニスを介して膀胱から排液するための管である。前立腺肥大による、尿道が該前立腺を通る際の該尿道の外因性の狭窄は見掛け上は60歳を越える全ての男性に生じ、段階的な排尿の困難性を引き起こす。この態様においては、一般的に挿入前実験(通常は内視鏡または尿道造影法)をまず実施して、ステント挿入の適当な位置を決定すべきである(該位置は下端部においては、外部尿道括約筋の上部であり、上端部においては膀胱頸部とほぼ平行な位置である)。次いで、内視鏡またはカテーテルを陰茎開口部を通して配置させ、かつガイドワイヤーを膀胱内に侵入させる。次いで、送り出しカテーテルを該ガイドワイヤー上に通し、ステントの挿入を可能とする。次に、該送り出しカテーテルを除去して、該ステントを所定の位置で膨脹させる。挿入後の実験(通常は内視鏡または逆行性尿道造影法)を、ステントが適当な位置にあることを確認するのに利用できる。
本発明の他の態様においては、脈管障害を排除する方法が提供され、該方法は血管に脈管ステントを挿入する工程を含み、該ステントは一般的に管状の構造をもち、該構造の表面は、該脈管障害が排除されるように、上記のような抗-血管形成組成物で被覆されている。簡単に言えば、ステントは動脈および静脈両者の広範な血管に配置して、誤った血管形成サイトにおける再発性狭窄症を防止し、血管形成により処置した場合には失敗するであろう狭窄の治療、および外科手術後の(例えば、裂開移植片狭窄)の治療を可能とする。適当なサイトの代表的な例は、腸骨、腎臓、および冠動脈、上大静脈および裂開移植片内部を包含する。一態様において、血管造影をまず実施して、ステントを配置するためのサイトを局在化する。これは、典型的にはX-線撮影の際に動脈または静脈内に挿入されたカテーテルを介して放射線不透過性造影剤を注入することにより達成される。次いで、カテーテルを、大腿部動脈、腕部動脈、大腿部静脈または腕部静脈内に、皮下的にまたは外科的に挿入し、透視検査法による誘導の下で、該脈管系を介して操作することにより、適当な血管内に侵入させる。次いで、ステントを該脈管狭窄を横切って配置させることができる。挿入後の血管造影を、ステントの適当な配置を確認するために利用することができる。
外科手術における抗-血管形成組成物の利用
上記の如く、抗-血管形成組成物は広範な外科手術において利用できる。例えば、本発明の一局面においては、抗-血管形成組成物(例えば、スプレーまたはフィルム形状の)を、腫瘍の除去前にある領域に噴霧または塗布して、正常な周辺の組織を悪性の組織から分離し、および/または周辺の組織への疾患の拡がりを防止することができる。本発明の他の局面においては、抗-血管形成組成物(例えば、スプレー形状の)を、内視鏡手法を介して分配して、腫瘍を被覆し、あるいは所定の局部の血管形成を阻害することができる。本発明の更に他の局面においては、本発明の抗-血管形成組成物で被覆されている外科メッシュを、これを使用する可能性のあるあらゆる手順において利用できる。例えば、本発明の一態様においては、抗-血管形成組成物で被覆されている外科メッシュを、腹部の癌の切除手術(例えば、結腸切除後)中に使用して、該構造に対する支持体を与え、かつ該抗-血管形成ファクタのある量を放出させることができる。
本発明の更なる局面においては、腫瘍切除サイトの治療法が提供され、該方法は、癌の局所的再発および該サイトにおける新たな血管形成を阻害するように、該切除に引き続き、腫瘍切除周辺部に上記の抗-血管形成組成物を投与することを含む。本発明の一態様においては、該抗-血管形成組成物(または抗-血管形成ファクタのみ)を、該腫瘍切除サイトに直接投与する(例えば、該組成物またはファクタを該腫瘍の切除部周辺にガーゼにより、刷毛によりあるいはその他の方法で塗布する)。あるいは、該抗-血管形成組成物またはファクタは、投与前に公知の外科用ペーストに配合することができる。本発明の特に好ましい態様においては、該抗-血管形成組成物を、悪性部の肝臓からの切除後または神経外科手術後に適用する。
本発明の一局面において、(上記のような)抗-血管形成組成物は、乳房、結腸、脳および肝癌を包含する広範な腫瘍の切除部周辺に投与できる。例えば、本発明の一態様においては、抗-血管形成組成物は切除に引き続き神経系の腫瘍サイトに投与して、該サイトにおける新たな血管の形成を阻害することができる。簡単に言えば、高度に機能的に局在化されており、即ち各特定の解剖学的領域は特定の機能を果たすように特定されている。従って、脳疾患の型よりもしばしば重要なのは脳病理の位置である。キー領域における比較的小さな病巣が、余り重要でない領域におけるより大きな病巣よりも破壊的であり得る。同様に、脳表面上の病巣を外科的に切除するのは容易であるが、脳の深部に位置する同一の腫瘍を外科的に切除するのは困難である(該腫瘍に到達するまでに余りに多くの生きた構造を通して切除する必要がある)。また、良性の腫瘍であっても、幾つかの理由から危険を伴う。即ち、これらはキー領域で成長し、しかも著しい損傷を生ずる可能性があり、これらは外科的な切除により治癒するかも知れないが、該切除は不可能であり、最後に未検査のまま放置すると、高い頭蓋内圧を生ずる可能性がある。頭蓋は膨脹不能な閉じた空間である。従って、ある位置で何物かが成長すると、他の何物かが他の位置を圧迫するはずであり、結果として頭蓋内に高い圧を生ずるか、あるいは高い頭蓋内圧を生ずる。このような状態を未処置のまま放置すると、生きた構造が圧迫され、死をもたらす可能性がある。CNS(中枢神経系)悪性疾患の発生率は100,000当たり8-16である。脳の一次悪性疾患の予後は悲惨な結果であり、外科的切除後においてさえ、その生存率メジアンは1年未満である。これらの腫瘍、特にグリオーマは、支配的な局所疾患であり、外科的切除後に該疾患の元の位置の2cm以内の部分に再発する。
本明細書に記載した組成物および方法を利用して治療できる脳腫瘍の代表的な例は、グリア腫瘍(例えば、未分化星状細胞腫、多形性グリア芽腫、毛様星状細胞腫、寡突起膠腫、上衣腫、粘液乳頭上衣腫、上衣下細胞腫および脈絡膜叢乳頭腫)、神経系腫(例えば、神経芽腫、神経節神経芽腫、神経節神経腫および髄芽腫)、松果腺腫(例えば、松果体芽細胞腫および松果体細胞腫)、髄膜腫(例えば、髄膜腫、髄膜血管外皮細胞腫、髄膜肉腫)、神経鞘細胞腫(例えば、シュワン鞘腫(神経繊維鞘腫)および神経繊維腫)、リンパ腫(例えば、ホジキンスおよび非-ホジキンスリンパ腫(多数の亜種、一次および二次両者を含む))、形成異常腫(例えば、クラニオファリンジオーマ、表皮様嚢胞、皮様嚢腫およびコロイド嚢胞)および転移性腫瘍(これらは実質上如何なる腫瘍からも生じ、最も一般的なものは肺、乳房、メラノーマ、腎臓および胃腸管腫瘍由来のものである)を包含する。
抗-血管形成組成物の他の治療上の利用
腫瘍の他にも、血管の異常な成長によって特徴付けられる非-腫瘍性の血管形成-依存性の多数の疾患も、本発明の抗-血管形成組成物または抗-血管形成ファクタで治療することができる。このような非-腫瘍性の血管形成-依存性の疾患の例は角膜の新血管形成、肥大性瘢痕およびケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、リューマチ性関節炎、動静脈形成異常(上で議論したもの)、アテローム硬化性プラク、遅延性創傷治癒、血友病関節症、非-結合性骨折、オスラー-ウエーバー(Osler-Weber)症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、硬皮症、トラコーマ、月経過多(既に議論した)および脈管癒着を包含する。
特に、本発明の一局面においては、角膜新血管形成(角膜移植片新血管形成を含む)の治療法が提供され、該方法は血管形成が阻害されるように、角膜に(上記のような)抗-血管形成組成物の治療上有効な量を投与する工程を含む。簡単に言えば、角膜は通常血管の不足した組織である。しかしながら、幾つかの病理的状態においては、毛細管が、角膜縁の角膜周囲血管叢から角膜に拡がる可能性がある。角膜が血管形成する場合、角膜が濁る恐れがあり、これは患者視覚の鋭敏さを低下する。角膜が完全に不透明となった場合には、完全に視覚喪失となる可能性がある。
新血管形成を誘発する過程に依存して、血管は種々のパターンおよび深度で角膜内に侵入できる。これらのパターンは、伝統的に眼科医によって以下の型で定義されている。即ち、トラコーマ性パンヌス、癩病性パンヌス、フリクテン性パンヌス、変性パンヌスおよび緑内障性パンヌス。角膜間質も、前毛様体動脈の分枝によっても侵襲され(間隙血管形成と呼ばれる)、これは幾つかの異なる臨床上の病巣、即ち末端ループ、「ブラシ-状」パターン、日傘状、格子状、間隙アーケード(強膜血管からの)、および異常に不規則な血管を生ずる。
広範な疾患が角膜新血管形成により生じ、例えば角膜感染症(例えば、トラコーマ、ヘルペス性単純角膜炎、リーシュマニア症および回旋糸状虫症)、免疫学的過程(例えば、移植片拒否反応およびスティーブンス-ジョンソン(Stevens-Johnson’s)症候群)、アルカリ焼け、トローマ、炎症(あらゆる原因による)、毒性および栄養欠乏状態およびコンタクトレンズ着用による合併症を包含する。
角膜新血管形成は様々な原因によるが、攻撃および後の血管内部成長に対する角膜の応答は、該原因とは無関係に類似している。簡単に言えば、傷害の位置は、角膜縁の臨界的距離範囲内に位置するこれらの病巣のみが血管形成応答を誘発する場合に重要になると思われる。これは、血管の侵襲を引き起こす該血管形成ファクタは該病巣サイトにおいて生成され、かつその効果を及ぼすように、(該角膜縁の)血管に最も近接するサイトまで拡散する必要があるという事実によるものと考えられる。角膜縁からある距離を越えると、これは最早不可能となり、また該縁部内皮は角膜への成長を誘発しないであろう。この過程には幾つかの血管形成ファクタが関与しており、その多くは炎症性応答をもつ生成物である。事実、角膜の新血管形成は炎症性細胞浸潤と関連して生ずるに過ぎないと思われ、また血管形成の程度は該炎症反応の程度に比例する。角膜浮腫は、更に角膜基質外郭構造を弛緩させることにより血管の内部形成を容易にし、毛細管が成長し得る「最小抵抗」の通路を与える。
この初期炎症反応に引き続き、角膜への毛細管の成長は、他の組織にみられるのと同様な様式で進む。該角膜縁部毛細管および細静脈の正常で不活発な内皮細胞が刺激されて、分裂しかつ移動する。該内皮細胞はその元の血管から張り出してそれを包囲する基部膜および組織を消化し、該膜および組織を介して移動し、かつ血管形成刺激の源に向かって移動する。このブラインド末端萌芽(blind ended sprouts)は内腔を獲得し、次いで一緒に融着されて、毛細管ループを形成する。最終的には、角膜間質内に脈管叢を確立する。
本発明の抗-血管形成組成物は血管形成プロモータの刺激作用を遮断し、内皮細胞分裂を減じ、内皮細胞の移動を減じ、かつ該内皮によって分泌されるタンパク分解酵素の活性を阻害することにより役立つ。
本発明の特定の好ましい態様においては、抗-血管形成ファクタは局所投与用の塩水溶液として調製でき(眼科用処方物において通常使用されている任意の保存剤および抗菌剤との組み合わせで)、点眼薬として投与できる。この抗-血管形成ファクタ溶液は、その純粋な形で調製され、1日当たり数回投与される。また上記の如く調製した抗-血管形成組成物も、角膜に直接投与できる。好ましい態様においては、該抗-血管形成組成物は角膜と結合する粘膜-接着性ポリマーを含むように調製される。更なる態様においては、該抗-血管形成ファクタおよび抗-血管形成組成物は、公知のステロイド療法の補助として利用できる。
血管形成応答(例えば、薬品焼け)を誘発する高い確率をもつものとして知られる角膜病巣においても、局所療法は予防的な意味から有用である。これらの例において、治療(ステロイドとの組み合わせにおいても)は、後の合併症の防止を助けるために、即座に実施することができる。
他の態様においては、上記の抗-血管形成組成物は、顕微鏡による誘導下で、眼科医により、角膜間質に直接注入することができる。注入すべき好ましいサイトは、個々の病巣の形態に応じて変化するが、該投与の最終目的は、該組成物を血管系の前進フロント部(即ち、血管と正常な角膜との間に散在する)に配置することである。多くの場合において、これは、前進する血管から角膜を「保護」するために角膜縁部周辺への注入を含むであろう。この方法は、また角膜の創傷後の短時間内に利用して、予防的に角膜新血管形成を防止することも可能である。この状況において、この物質を、該角膜病巣とその不当に高い縁部血液供給部との間に散在する角膜縁部周辺に注入できた。このような方法は、また移植角膜の毛細血管侵襲を防止するために、同様な様式で利用することができる。徐放性剤形では、注入は僅かに1年当たり2?3回必要とされるに過ぎない。該注入溶液にはステロイドを添加して、該注入自体に起因する炎症を減じることができる。
本発明の別の局面においては、肥大性瘢痕およびケロイドの治療方法が提供され、該方法は上記の抗-血管形成組成物の1種を肥大性瘢痕およびケロイドに投与する工程を含む。
簡単に言えば、創傷および瘢痕形成の治癒は、炎症、増殖および成熟の3段階で起こる。第一の段階、即ち炎症は、皮膚を破壊するのに十分な重度の創傷に応答して生ずる。3?4日間継続するこの段階中に、血液および組織流は、該創傷を受けた表面を結合するように機能する接着性のクロットおよび繊維素ネットワークを形成する。これに増殖段階が続き、この段階においては、該創傷端部からの毛細血管および結合組織の内部成長があり、かくして皮膚の損傷部が閉じられる。最後に、一旦毛細血管および繊維芽細胞の増殖は停止し、成熟段階が開始し、この段階において該瘢痕は収縮して、細胞数および血管数が減少し、平坦かつ白色となる。この最終段階は6?12カ月を要する可能性がある。
過度の結合組織が生成され、かつ該創傷が永続的に細胞過多状態を維持した場合、該瘢痕は赤く盛り上がった状態にある可能性がある。該瘢痕が元の創傷の境界部分に維持された場合、これは肥大性瘢痕と呼ばれるが、これが元の瘢痕を越えて、周辺の組織内に広がった場合には、該病巣はケロイドと呼ばれる。肥大型の瘢痕およびケロイドは瘢痕形成の該第二および第三段階に生成される。幾つかの創傷は、とりわけ内皮および繊維芽の過度の増殖を生ずる傾向があり、これらは火傷、開口性創傷、および感染性創傷を包含する。肥大性瘢痕については、ある程度の成熟が起こり、次第に改善される。しかしながら、ケロイドの場合、実際の腫瘍を形成し、これは極めて大きくなる可能性がある。このような場合、自然の改善は稀である。
従って、本発明の一態様においては、上記の抗-血管形成ファクタのみまたは抗-血管形成組成物を、直接肥大性瘢痕またはケロイド内に注入して、これら病巣の進行を阻止する。注入の頻度は、(存在する場合には)使用したポリマーの放出速度および臨床的な応答に依存するであろう。この治療法は、肥大性の瘢痕およびケロイドを発生することが知られている症状(例えば、火傷)の予防的治療において特に価値があり、また好ましくはその増殖段階が進行を開始した後に(最初の損傷後約14日)で、しかも肥大性の瘢痕またはケロイドが発生する前に開始される。
本発明の他の局面においては、新血管性緑内障の治療法が提供され、該方法は血管の形成を阻害するように、目に抗-血管形成組成物の治療上有効な量を投与する工程を含む。
簡単に言えば、新血管性緑内障は目の虹彩中に新たな毛細血管が発生した病理的状態である。この血管形成は、通常瞳孔縁部に位置する血管を由来とし、虹彩の基部を横切って、肉柱の網状構造に進む。繊維芽および他の結合性の組織要素が毛細血管の成長に関与し、繊維血管膜が発生し、これは虹彩の前方表面を横切って広がる。場合によって、この組織は、癒着を形成する前眼房角に達する。これらの癒着は結果的に融合、瘢痕および収縮を生じて、後に該前眼房角を閉塞してしまう。該瘢痕形成は、該角を介する水性体液の肉柱の網状構造への十分な排出を阻害し、結果として失明に導く可能性のある眼内圧の増大をもたらす。
新血管性緑内障は、一般的に網膜の出血が支配的である疾患の合併症として生ずる。特に、この疾患に罹った患者の約1/3は、糖尿病性網膜症をもち、またその28%は中心網膜静脈閉塞をもつ。他の原因は慢性網膜剥離、最終段階の緑内障、頸動脈障害疾患、後水晶体繊維増殖症、鎌状赤血球貧血、眼内腫、および頸動脈空洞性フィステルを包含する。初期段階において、新血管性緑内障は高倍率スリットランプ生物顕微鏡により診断でき、ここでは虹彩表面上の小さな、膨脹した、まとまりのない毛細血管(フルオレセインを漏らす)として出現する。細菌のゴニオスコピーは繊維血管性バンドによる前眼房角の進行性の遮断を立証している。この前眼房角は依然開放状態にあるが、伝統的な治療法が役立つかもしれない。しかしながら、該角が一旦閉塞されると、該圧を緩和するために、外科的な手段の介入を必要とする。
従って、本発明の一態様においては、抗-血管形成ファクタ(これ単独または上記のような抗-血管形成組成物として)を、目に局所的に投与して、初期の新血管性緑内障を治療することができる。
本発明の他の態様においては、該前眼房角の領域に抗-血管形成組成物を注入することにより、該組成物を移植することも可能である。これにより、抗-血管形成ファクタの持続的な局所的増大をもたらして、該領域における血管成長を阻止する。虹彩の前進性の毛細血管と該前眼房角との間に配置される、移植されたまたは注入された抗-血管形成組成物は、新血管形成からの開放角を「防御」できる。毛細血管は抗-血管形成組成物のかなりの半径領域内では成長しないであろうから、該角の開放性が維持できる。他の態様においては、該抗-血管形成ファクタが継続的に該水性体液内に放出されるような任意の位置に、抗-血管形成組成物を配置することも可能である。これにより、該体液中の該抗-血管形成ファクタ濃度が高められ、結果として虹彩の表面および該異常な毛細血管が該体液に浸漬され、かくして医薬を放出するもう一つのメカニズムが与えられる。これらの治療様式は予防的にも、また既存の治療との組み合わせにおいても有用であり得る。
本発明のもう一つの局面においては、増殖性の糖尿病性網膜症の治療法が提供され、該方法は血管の形成を阻害するように、目に抗-血管形成組成物を、治療上有効な量で投与する工程を含む。
簡単に言えば、糖尿病性網膜症の病理は、新血管性緑内障について上記したものと同様であると考えられている。特に背景となる糖尿病による網膜症は、網膜の低酸素症の影響下で、増殖性の糖尿病性網膜症に転化するものと考えられている。一般的に、新血管性組織は、視覚神経(通常端部の10mm以内)および組織灌流が不十分な領域における網膜表面から萌芽する。初めに、該毛細血管が網膜内部の限られた膜と硝子体の後部表面との間で成長する。場合により、該血管は該硝子体中でおよび該網膜内部の限られた膜を貫いて成長する。該硝子体が収縮されるにつれて、該血管に牽引力がかかり、該血管に剪断力を及ぼし、かつ出血のために該硝子体は遮蔽される。網膜における瘢痕形成による繊維性の牽引力は網膜剥離を生ずる可能性もある。
公知の治療法の選択は、網膜組織を減ずるための全網膜的な光凝固であり、これにより網膜の酸素要求量が減少する。初期には効果的であるが、高い再発率を有し、網膜の他の部分に新たな病巣が形成される。この治療法の複雑さは、患者の周辺視野の50%までの減少、角膜の機械的な磨滅、レーザ-照射に起因する白内障の形成、急性緑内障の発生、および網膜下新血管成長の刺激(これらは視野の喪失を結果する)等を含む。結果として、この方法は数種の危険因子が存在する場合、および危険-利益比が明らかに、該方法の利用にとって有利である場合にのみ実施される。
従って、本発明の特に好ましい態様においては、増殖性の糖尿病性網膜症は、該水性の体液または硝子体中に抗-血管形成ファクタ(または抗-血管形成組成物)を注入し、該網膜内の抗-血管形成ファクタの局所的濃度を高めることによって治療できる。好ましくは、この治療は光凝固処置を必要とする重度の疾患となる前に、開始すべきである。本発明の他の態様においては、該新血管性病巣に栄養供給する動脈を塞栓処理(上記のような抗-血管形成組成物を使用して)することもできる。
本発明の他の局面においては、後水晶体繊維増殖症の治療法が提供され、該方法は血管形成が阻害されるように、目に抗-血管形成ファクタ(または抗-血管形成組成物)を、治療上有効な量で投与する工程を含む。
簡単に言えば、後水晶体繊維増殖症は、酸素治療を受けた未熟児にみられる状態である。特に側頭部における末梢網膜血管形成が、胎児生活の終了時点までに十分に形成されない。過剰の酸素(その期間において生理的であるレベルにおいてさえ)および酸素フリーラジカルの形成は、この未熟児の網膜の血管に対して創傷を生ずることから、重要であると考えられている。これらの血管は収縮し、次いで酸素に暴露された際に構造的に消失してしまう。結果として、末梢網膜は血管形成せず、かつこれに続いて網膜虚血が生ずる。この虚血に応答して、新血管形成が、正常な網膜と該虚血性の網膜との接合部において誘起される。
この場合の75%において、これらの血管は自然に退化する。しかしながら、残りの25%においては、毛細血管の成長、繊維血管成分の収縮および該血管および該網膜両者に及ぼされる牽引力は持続する。これは硝子体の出血および/または網膜の剥離(これらは盲目に導く)を生ずる。新血管性角-閉塞緑内障も、この状態の合併症の一つである。
どの場合に自然に治癒し、またどの場合が重度の疾患に進行するかを決定することは、しばしば不可能であるので、公知の治療法(即ち、外科手術)は、一般的に確定された疾患および十分に進行した病理をもつ患者に対してのみ開始される。この「静観(wait and see)」法は初期の治療処置を不可能にし、合併症へと進行する25%の患者においては、該疾患は進行し続ける。従って、本発明の一態様においては、抗-血管形成ファクタ(または上記のような抗-血管形成組成物)の局所投与を、この状態に発展する高い危険性をもつ幼児に対して実施して、後水晶体繊維増殖症の進行の開始を遮断する。他の態様においては、抗-血管形成組成物の硝子体内注入および/または眼内移植を利用する。このような方法は、確立された疾患の場合に特に好ましく、外科手術の必要性を減ずる。
本発明の他の局面においては、リュウマチ性関節炎の治療法が提供され、該方法は血管形成を阻害するように、関節に抗-血管形成組成物を治療上有効な量で投与する工程を含む。
簡単に言えば、リュウマチ性関節炎における関節の損傷は、炎症(白血球および白血球生成物を含む)およびパンヌス組織の発生(新血管組織、結合性組織および炎症性細胞)の組み合わせによるものである。一般的に、慢性炎症自体は、該関節表面に損傷を与えるには不十分であるが、永久的欠損は、一旦繊維血管組織が軟骨組織を消化しさえすれば、生ずる。
本発明の好ましい態様においては、抗-血管形成ファクタ(上記のような抗-血管形成組成物を含む)を、外科用ペーストとして関節内注入するかあるいは経口薬品として投与して、該関節内における血管形成を阻害することができる。このような方法の代表的な例の一つは、以下の実施例19においてより詳細に説明される。
上記の如く、本発明の更に別の態様によれば、血管移植片が提供され、該移植片は合成管を含み、その表面は上記のような抗-血管形成組成物で被覆されている。簡単に言えば、血管移植片は、通常ダクロン(Dacron)またはゴルテックス(Gortex)製であり、外科手術的に動脈閉塞部、最も高頻度では大腿部から大動脈に、あるいは大動脈から膝窩までを短絡するために挿入される。特に込み入った主な問題は、大動脈-膝窩短絡移植片が新血管内膜過形成と呼ばれる、血管壁中での内皮下瘢痕-様反応を発生することであり、該過形成は該移植片の何れかの端部のおよびその近傍の内腔を狭窄し、かつ進行性であり得る。抗-血管形成ファクタ(または上記のような抗-血管形成組成物)で被覆したまたはこれを含有する移植片を使用して、該移植片の何れかの端部における新血管内膜過形成の発生を制限することができる。次いで、該移植片を公知の短絡技術により外科的に配置することができる。
本発明の抗-血管形成組成物は、また種々の他の様式で使用できる。例えば、縫合肉芽腫を防止するために、これらを外科用の縫合材に配合したり、月経過多の治療のために、あるいは女性の産児制限形式として、子宮(IUDと同様な様式で)に移植したり、子宮内膜症の治療のために、腹膜灌流液または腹膜移植として投与したり、全身的化学療法として、活性化内皮細胞に対するモノクローナル抗体に付着させたり、活性化内皮細胞を識別する放射線標識したモノクローナル抗体に付着した場合には、診断撮像において利用することができる。
以下の実施例は、本発明を例示する目的で与えられ、本発明を限定するためのものではない。
実施例
実施例1:抗-浸潤ファクタの調製
ホシザメから、胸帯および頭蓋を切除し、次いで外科用メスで擦って、該軟骨から全ての筋肉と関連する結合組織を除去する。次に、この軟骨を組織粉砕機でホモジナイズし、2.0Mのグアニジウム塩酸塩および0.02MのMESを含み、pH6.0の溶液中で2?5日間、室温にて連続的に攪拌することにより抽出する。
2?5日後に、該軟骨抽出物をガーゼのネットに通して、大きな構成物を除去する。次いで、この濾液をアミコン(Amicon)限外濾過装置に通す。該装置はカットオフ分子量100,000を有する螺旋状に巻いたカートリッジを使用する。(分子量100,000ダルトン未満のタンパク質を含む)この濾液を、3,000ダルトンを越える分子量をもつタンパク質を保持するアミコン限外濾過装置を使用して、0.02MのMESバッファー(pH6.0)に対して透析する。この方法を利用して、低分子量タンパク質および構成物質並びにグアニジウム塩酸塩を除去する。この透析により、最終濃度9mg/mlにまで濃縮する。
実施例2:抗-血管形成活性に関する種々の試薬の分析
A.ヒヨコ漿尿膜(“Cam”)アッセイ
受精した家禽胚を、殻を含まない培養前に、3日間インキュベートした。この手順において、該卵の内容物は、エアースペース(air space)の回りに位置する該殻を除去することにより空にした。次いで、内部殻膜を切断し、該殻の反対側の端部を穿孔して、該卵の内容物を徐々に尖っていない端部から流し出した。この卵内容物を丸底のガラスボウルにあけ、ペトリ皿カバーで覆った。次いで、これらを相対湿度90%および3%CO_(2)のインキュベータに入れ、3日間インキュベートした。
タキソール(シグマ社、セントルイス、MI)を、0.5%の水性メチルセルロース溶液と、該溶液10mlアリコート当たり1、5、10、30mgの濃度で混合した。タキソールは水に不溶であるから、ガラスビーズを使用して微粒子を生成した。この溶液の10μlアリコートをパラフィルム上で1時間乾燥させて、径2mmの円板を形成した。次に、この乾燥円板を含むタキソールを、インキュベーションの6日後に、各CAMの成長端部に注意して配置した。同一の経過時間に渡り、CAM上にタキソールを含まないメチルセルロース円板を配置することによりコントロールを得た。2日間放置後(インキュベーションの8日後)、立体顕微鏡を使用してその脈管構造について検査した。リポシン(Liposyn)II(白色の不透明な溶液)を該CAMに注入して、血管細部の視認性を高めた。未染色の生きた胚の脈管構造を、ビデオカメラ(Dage-MTI社,ミシガンシティー、IN)と連動するツァイス(Zeiss)の立体顕微鏡を使用して像形成した。次に、これらのビデオ信号を160倍の倍率で表示し、イメージ解析装置(Vidas,Kontron;Etching,Germany)を使用してデータを記録した。次に、ネガイメージをグラフレコーダー(Model 3000;マトリックスインスツルメンツ(Matrix Instruments),オレンジバーグ、NY)上に形成した。
8日-齢の殻をもたない胚の膜を0.1MNaカコジル酸塩バッファー中の2%グルタルアルデビドで満たし、付随的な固定液をCAMの下に注入した。その場で10分後に、該CAMを取り出し、室温にて、新たな固定液中に2時間置いた。次いで、この組織を、6%のスクロースを含有するカコジル酸塩バッファー中で、一夜洗浄した。興味のある領域を、4℃にて、1.5時間、1%の四酸化オスミウム溶液中で後固定した。次に、該組織を一連の秤量したエタノール中で脱水し、プロピレンオキシドで溶媒交換し、かつスパー(Spurr)樹脂内に埋設した。薄い切片をダイアモンドナイフで切取り、銅製格子上に配置し、染色し、ジョエル(Joel)1200EX電子顕微鏡で検査した。同様に、0.5mmの切片を切取り、光顕微鏡観察のためにトルエンブルーで染色した。
発生の11日目に、ヒヨコ胚を侵食キャスティング(corrosion casting)法で使用した。メルコックス(Mercox)樹脂(テッドペラ社(Ted Pella,Inc.),レッディング、CA)を、30-ゲージの皮下針を使用してCAM脈管構造中に注入した。このキャスティング材料は2.5gメルコックスCL-2Bポリマーと0.05gの触媒(55%ベンゾイルパーオキシド)とからなり、重合時間5分を有していた。注入後、このプラスチックをその場で1時間室温にて放置し、次いで65℃のオーブン中で一夜放置した。このCAMを、次に50%の水酸化ナトリウム水性溶液中に入れて全ての有機成分を消化した。このプラスチックキャストを蒸留水中で十分に洗浄し、風乾し、金/パラジウムで被覆し、フィリップス(Philips)走査型電子顕微鏡で観察した。
上記実験の結果を第1?4図に示す。簡単に説明すると、正常なヒヨコの殻を含まない卵培養物の一般的特徴は、第1A図に示されている。インキュベーションの6日目において、この胚は血管の放射状に広がった網状構造の中心部に位置しており、該CAMは該胚に隣接して発生する。これらの成長中の血管は表面近傍に位置し、容易に肉眼視でき、従ってこの系を血管形成の研究の理想的なモデルとする。該CAMの生きた、未染色の毛細血管網状構造は、立体顕微鏡により非-侵襲的に撮像できる。第1B図はこのような血管領域を示し、そこでは毛細血管内の細胞状血液要素がビデオ/コンピュータインターフェースの使用により記録された。このようなCAM毛細血管網状構造の3-次元構築物は侵食キャスティング法により示され、走査型電子顕微鏡によって観測される(第1C図)。これらのキャスティングは、血管が融着毛細血管の単層を形成している該CAM表面に向かって突出する下部血管を示している。
該CAMを通る横断面は外胚葉を示し、該外胚葉は二重細胞層、該外胚葉の下方に位置する毛細血管を含むより広い中胚葉層、外膜細胞、および内部の単一の内胚葉細胞層からなる(第1D図)。電子顕微鏡レベルで、該CAM毛細血管の典型的な構造上の細部が明らかにされている。典型的には、これらの血管は外胚葉の該内部細胞層と密に結合して存在している(第1E図)。
1、5、10または30mgの濃度のタキソールに48時間暴露した後、各CAMを、生きた状態で、ビデオ/コンピュータインターフェースを備えた立体顕微鏡で検査して、血管形成に及ぼす効果を評価した。この撮像条件設定を、160倍の倍率で使用した。この倍率は該毛細血管内の血液細胞の直接的視認を可能とし、結果として対象とする領域の血流を容易に捕らえかつ記録できた。この研究のために、血管形成の阻害を、径2?6mmの範囲の毛細血管網状構造をもたない該CAMの領域として定義した。阻害領域は血管血流に乏しく、かつタキソールを含有するメチルセルロースの実験条件下でのみ観測され、タキソールに乏しい円板のコントロール条件下では、毛細血管系の発生には何の効果も見られなかった。種々の濃度における、タキソールの効果のドーズ-依存性実験データを第II表に示す。


典型的なタキソール-処理したCAM(第2A図および第2B図)が図示され、そこには径6mmであると測定された、無血管領域上の中心に配置された透明なメチルセルロース円板がある。僅かに高い倍率において、このような無血管領域の周辺は全くはっきりしており(第2C図)、周辺の機能性の血管は、しばしば該タキソール源から方向を変えた(第2C図および第2D図)。このような血流の角の方向転換は、正常な条件下では全く観測されなかった。タキソールの効果のもう一つの特徴は、血液細胞の凝集を表す、該無血管領域内での血液の島の形成であった。
該タキソール-処理したCAMの関連する形態学的変更は、光および電子顕微鏡レベル両者において容易に明らかとなる。表示の便宜のために、正常な状態から該無血管状態への一般的な転移の3つの異なる段階を示す。該無血管領域の周辺部近傍で、該CAMは、3つの全ての胚芽層内の有糸分裂細胞の豊富さによって特徴付けられる(第3A図および第4A図)。この高い有糸分裂は毛細血管内皮細胞についての観察とも一致した。しかしながら、この内皮細胞は、接合的には完全のままであり、血液細胞の浸出を示さなかった。更なる退化によって、該CAMは破壊および毛細血管の溶解により特徴付けられる(第3B図および第4B図)。典型的には有糸分裂が阻止された、仮想的な内皮細胞は、依然として血液細胞と近接した空間関係を維持し、外胚葉の下に存在するが、これらの細胞は接合的に結合されていない。該無血管領域の最も中心部は厚い外胚葉および内胚葉層によって特徴付けられた(第3C図および第4C図)。これらの層は厚くなったが、細胞接合は完全であり、かつ該層はその構造上の特徴を維持していた。中胚葉内には、散在する有糸分裂の阻止された細胞が豊富であり、これら細胞は、前の段階で観測された内皮細胞分裂を示さなかった。また、この無血管領域全体に渡り、電子密度の高い液胞および細胞デブリスによって示されるように、変質細胞が一般的であった(第4C図)。
概して、この研究は、該CAMにタキソールを適用した後48時間において、血管形成が阻害されることを立証した。この血管形成阻害は無血管領域を形成し、該領域はタキソール効果の3つの転移段階によって表された。中心の最も影響を受けた該無血管ゾーンの領域は、赤血球の浸出を示す、分断された毛細血管を含んでおり、このことは内皮細胞間の細胞間接合がないことを示している。内胚葉および外胚葉の細胞はその細胞間接合を維持しており、従ってこれらの胚芽層は完全な状態に維持されるが、これらは僅かに厚くなっていた。正常な血管領域を調べると、血管はその接合的複合状態を維持しており、従ってこの場合も完全であった。タキソール-処理したゾーンの周辺において、更なる血管成長は阻害され、これは血管の典型的な方向転換または「湾曲(elbowing)」効果により明らかであった(第24D図)。
該タキソール-処理した無血管領域は、また該CAMの全ての3つの胚芽層における、豊富な有糸分裂の阻止された細胞の存在を示し、これはタキソールに固有のものであった。というのは、以前の研究の何れもこのような事象を示さなかったからである。有糸分裂が阻止されることにより、内皮細胞は、血管形成に関与するその正常な代謝機能を果たすことができなかった。比較として、スラミンおよびコルチゾンアセテートにより形成された無血管ゾーンは、該CAM内に有糸分裂が阻止された細胞を生成せず、これらは単に該処理領域における血管の更なる成長を阻害したに過ぎなかった。従って、これら試薬は抗-血管形成性ではあっても、血管形成過程を攻撃し得る多くの点がある。
我々は、また48時間の期間に渡るタキソールの効果をも観測し、血管形成の阻害が、その適用後9時間程度で生ずることを知った。組織学的切片は、第3a図および第4a図に示された48時間における該無血管領域の最初の転移段階に見られたものと同様の形態を示した。また、我々は前に観測された無血管領域における再血管形成過程を観測した。ヘパリンおよびアンギオスタティックステロイドによって形成される無血管ゾーンはその適用後60時間で再度血管形成することを見出した。我々の研究においては、タキソール-処理した無血管領域は適用後少なくとも7日間は再血管形成せず、より強力な長期に渡る効果を示した。
実施例3:スラミンの封入
1mlの5%ELVAX(5%の酢酸ビニルで架橋したポリ(エチレン-酢酸ビニル))のジクロロメタン(“DCM”)溶液を、サブ-ミクロンのオーダーに粉砕したナトリウムスラミンの一定量と混合する。この混合物を30mlの平底試験管中の、5mlの5%ポリビニルアルコール(“PVA”)水性溶液中に注入する。次いで、種々の重量の薬物を含有する管を、自動的に攪拌しつつ、40℃にて90分間、多重サンプル水浴に浮遊させる。これらの混合物を取り出し、粒度分析のために微小球サンプルを採取する。これら管を1000gにて5分間遠心処理する。PVA上澄を取り出し、分析のために保存する(非-封入薬物)。次いで、この微小球を5mlの水で洗浄(攪拌)する。この5mlの洗液を分析のために保存する(表面結合薬物)。次に、微小球を50μlのメタノールで湿潤し、1mlのDCM中で攪拌して、該ELVAXを溶解する。次いで、該微小球を40℃に加温し、50℃の水5mlを攪拌しつつ、ゆっくり添加する。この手順はDCMの迅速な蒸発を生じ、かくしてナトリウムスラミンは5mlの水中に放出される。次いで、全体で3つの5mlのサンプルを薬物の含有率につきアッセイした。
ナトリウムスラミンはλ_(max)312nmでuv/visを吸収する。この吸収は、水および5%PVA両者において、0?100μg/mlの範囲で線形である。該薬物は強力に蛍光発光し、312nmに最大励起波長をもち、かつ400nmに最大発光強度をもつ。この蛍光発光は0?25μg/mlの範囲で定量化可能である。
結果を第5?10図に示す。簡単に説明すると、微小球の粒度分布は、DCM中の薬物の吸収によって影響されないことが分かる(第5図および第6図参照)。20?60μmの範囲で微小球の良好な収率を得ることができる。
スラミンの封入は極めて低い(<1%)(第8図参照)。しかしながら、DCM中の薬物の重量が増すと、封入される薬物の総量は増大するが、%封入率は減少した。第7図に示した如く、50μgの薬物を50mgのELVAX中に封入できる。10%のNaClを含有する5%PVA中のナトリウムスラミンの封入を、第9?10図に示した。
実施例4:タキソールの封入
500μgのタキソールまたはバッカチン(タキソール類似体、インフラジムファーマシューティカルズ社(Inflazyme Pharmaceuticals Inc.)、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア、カナダから入手可能)を1mlの50:50ELVAX:ポリ-1-乳酸のDCM溶液中に溶解する。次いで、微小球を、溶解装置(6-スピンドル溶解テスター、ファンダーキャンプ、ファンケルインダストリーズ社(VanderKanp,Van Kell Industries Inc.),U.S.A.から入手可能)を使用して、3回、200rpmにて42℃で3時間処理して調製する。このようにして調製した微小球を2回水中で洗浄し、顕微鏡観察によりサイズ決定する。
タキソール封入の測定はuv/visアッセイ(uv/vis,λ_(max)237nm,励起波長237nm、発光波長325nmでの蛍光アッセイ、蛍光測定の結果は角括弧[]中に示す)により行う。上記の手順を使用して、58μg(+/-12μg)[75μg(+/-25μg)]のタキソールを、全体で500μgの出発物質から封入できる。これは12%(+/-2.4%)[15%(+/-5%)]の元の重量、または1.2%(+/-0.25%)[1.5%(+/-0.5%)](重量基準)のポリマーを表す。オーブン中で37℃での18時間のタンブリング後、10.3%(+/-10%)[6%(+/-5.6%)]の全タキソールが該微小球から放出された。
バッカチンについては、全体で500μgの出発物質から、100+/-15μg[83+/-23μg)]のバッカチンを封入できる。これは20%(+/-3%)[17%(+/-5%)]のバッカチンの元の重量、および2%(+/-0.3%)[1.7%(+/-0.5%)](重量基準)のポリマーを表す。オーブン中で37℃での18時間のタンブリング後、55%(+/-13%)[60%(+/-23%)]のバッカチンが該微小球から放出された。
実施例5:抗-血管形成組成物を含有する外科用ペーストの分析
体重約300gのフィッシャー(Fisher)ラットを麻酔し、横方向の上部腹部の1cmの切開を行う。生きた9L神経膠肉腫細胞1x10^(6)個を含む2/10mlの塩水(組織培養物から、使用の直前に溶出したもの)を、肝臓カプセルを介して27ゲージの針で1cmの孔を開けることにより、5個の肝葉のうちの2個に注入する。この傷害をもつ腹部を皮膚クリップを備えた6.0の再吸収性縫合糸で閉じ、このGAを停止する。
2週間後、腫瘍沈着物は約1cmであると測定される。この時点で、肝腫を切除し、かつ肝臓の剥き出し縁部を止血剤で包む。これらのラットを2群に分ける。即ち、その半分にはポリマー担体のみを投与し、残りの半分には抗-血管形成組成物を投与する。
肝臓の切除後2、7、14、21および84日目にラットを殺す。特に、尾の背側の静脈内にユータニル(Euthanyl)を注入することにより、安楽死させる。肝臓、脾臓および両方の肺を取り出し、組織学的分析を行って、該腫瘍を抗-血管形成活性について調べる。
実施例6:ラット動脈の塞栓
体重約300gのフィッシャー(Fisher)ラットを麻酔する。無菌手順を使用して、横方向の上部腹部の1cmの切開を行い、肝臓を同定する。生きた9L神経膠肉腫細胞1x10^(6)個を含む2/10mlの塩水(組織培養物から、使用の直前に溶出したもの)を、肝臓カプセルを介して27ゲージの針で1cmの孔を開けることにより、5個の肝葉のうちの2個に注入する。通常の塩水1/10mlを、針を抜き取る際に該針中に注入して、確実に腹腔内に細胞のこぼれがないことを保証する。ゲルフォームの綿撤子を、該穿刺サイト各々上に配置して、止血を確実にする。この傷害をもつ腹部を、皮膚クリップを備えた6.0の再吸収性縫合糸で閉じ、この麻酔を終了する。このラットを動物飼育設備に戻し、14日間標準的な食事を採らせる。この時点において、腫瘍沈着物は径約1cmであると測定される。ウエスター(Westar)ラットおよび結腸癌細胞系(ラジオロジックオンコロジー研究所(Radiologic Oncology Lab.),M.D.Anderson,ヒューストン、テキサス)を使用して、同様の手順を繰り返す。この例においては、該腫瘍沈着物各々の径を1cmとするのに、注入後3週間を要する。
ラット種に依存して、2または3週間後に、同一の一般的な麻酔処置を行い、中央腹部切開を行う。十二指腸を裏返して、胃十二指腸動脈を同定し、かつ分離する。該胃十二指腸動脈(GDA)の中央部分における切断サイトの上下に結び目を配置し、0.038インチのポリエチレン管を、手術用顕微鏡を使用して、回帰的様式で該動脈内に導入する。該挿入点下部の結び目は該動脈を結合し、一方その上方のものは該カテーテルを所定の位置に固定するであろう。X-線撮影のために、該カテーテルを介して0.5mlの60%放射線不透過性造影剤を注入することにより血管造影を行う。次いで、粒径15?200μmの粒子を、胃十二指腸動脈カテーテルを介して、該手術用顕微鏡で観察される流動が停止されるまで、少なくとも30秒間循環することにより、肝動脈を塞栓する。肝動脈の閉塞は、該GDAカテーテルを通しての血管造影を繰り返すことにより確認する。この手順を利用して、該ラットの半分に粒径15?200μmのポリマーのみを投与し、かつ残りの半分には粒径15?200μmのポリマー-抗-血管形成ファクタを含む組成物を投与する。上部GDA結紮糸を締めて、該GDAを閉塞し、該カテーテルを取り出して、止血を確実にし、(塞栓された)肝動脈を完全な状態にする。該腹部を6.0吸収性縫合糸および外科クリップで閉じる。
引き続き、塞栓後2、7、14、21および84日目に、該ラットを殺して、該抗-血管形成ファクタの有効性を決定する。簡単に説明すれば、麻酔して、無菌的な注意を払い、中央線切開を行う。該GDAを再度分離し、該GDAと該肝動脈との接合部近傍(即ち、前に切断したサイトのかなり上方)に結紮糸を配置した後、該血管の切断部を介して0.038インチのポリエチレン管を挿入し、かつ血管造影を行う。次いで、該ラットを、尾の背側の静脈内にユータニル(Euthanyl)を注入することにより、安楽死させる。一旦安楽死を確認し、胃、脾臓および両方の肺と共に、肝臓を一塊として取り出す。
ヘマトキシリンおよびエオシン(“HおよびE”)により染色した調製スライド上で組織学的分析を行う。簡単に説明すると、これらの肺を1センチ間隔で切開して、該肝静脈を介する、重患の右側における塞栓材料の通過を評価する。該胃および脾臓も切開し、腹腔での副次的循環の発生を導く粒子の逆流に由来する、不注意による固定化を評価する。
実施例7:ラットへの胆管ステントの移植
全身麻酔剤を、体重300gのフィッシャーラットに投与する。次いで、1cmの横方向の切開を、上部腹部について行い、肝臓を同定する。最も表層部の肝葉においては、9L神経膠肉腫細胞1x10^(6)個を含む0.2mlの塩水(組織培養物から、使用の直前に溶出したもの)を、肝臓カプセル中に1cmの深さまで27ゲージの針を介して注入する。ゲルフォームの綿撤子を、該穿刺サイトに配置して、該針の除去後の止血を達成する。塩水を、針を抜き取る際に注入して、確実に腹腔内または該針の軌跡に沿った細胞の漏れがないことを保証する。この全身麻酔を終了し、該動物を動物飼育センターに戻し、通常の食事を採らせる。
2週間後に、全身麻酔剤を投与し、無菌的な予備処置を利用して、腫瘍を含む該肝葉を、中線切開部を通して同定する。次いで、該肝臓被膜を通して該腫瘍内に16ゲージの血管造影針を挿入し、該針に0.038インチのガイドワイヤーを通し、該針を該ガイドワイヤーを介して引き出す。No.5フレンチ(French)拡張器を該ガイドを介して該腫瘍内に通し、引き出す。次に、No.5フレンチ(French)放出カテーテルを、自己-膨脹性ステンレススチールウォールステント(径5mmおよび長さ1cm)を含む該ワイヤー上に通す。このステントを該腫瘍内に配置し、該ガイドワイヤー送り出しカテーテルを除去する。該ラットの1/3は、該腫瘍中に挿入された公知のステンレススチールステントをもち、他の1/3はポリマーで被覆したステンレススチールステントをもち、残りの1/3はポリマー-抗-血管形成ファクタ化合物で被覆したステントを有する。全身麻酔を終了し、該ラットを動物飼育設備に戻す。
簡単な腹部X-線撮影を2日目に実施して、ステントの開放の程度を評価する。ユータニルの注入により、ステント挿入後2、7、14、28および56日目にラットを殺し、ラットの安楽死を確認して、その肝臓を一塊として取り出す。ホルムアルデヒド中で48時間固定した後、該肝臓を0.5mm間隔で切開し、各切開に対して新たな刃を使用して、該ステントを横方向にも切断する。HおよびEで染色した組織学的切片を、次に分析して、該ステント内腔への腫瘍の内部成長の程度を評価する。
実施例8:微小球の製造
以下に記載する微小球の製造にとって好ましい装置は、200mlのウォータジャケットを備えたビーカー(キマックス(Kimax)またはパイレックス(Pyrex))、ハーケ(Haake)循環型水浴、オーバーヘッド攪拌機および径2インチのコントローラー(4ブレード、プロペラ型ステンレススチール攪拌機-フィッシャー(Fisher)製)、500mlのガラスビーカー、ホットプレート/スターラー(コーニング(Corning)製)、4×50mlポリプロピレン遠心管(ナルゲン(Nalgene))、プラスチック挿入カップを備えたガラスシンチレーションバイアル、テーブルトップ型遠心分離機(GPR、ベックマン製)、高速遠心機-フロアーモデル(JS21、ベックマン製)、メトラー(Mettler)分析天秤(AJ 100,0.1mg)、メトラーディジタルトップ荷重天秤(AE 163,0.01mg)、自動ピペッター(ギルソン(Gilson)社製)を含む。試薬は、ポリカプロラクトン(“PCL”、分子量10,000?20,000、ポリサイエンスズ(Polysciences)社、ワーリントン、ペンシルバーニア、USA)、「洗浄した」エチレンビニルアセテート(BHT酸化防止剤を除去するために洗浄した“EVA”)、ポリ(DL)乳酸(“PLA”、分子量15,000?25,000,ポリサイエンスズ(Polysciences)社)、ポリビニルアルコール(“PVA”、分子量124,000?186,000,99%加水分解、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.),ミルウォーキー、WI,USA)、ジクロロメタン(“DCM”または「メチレンクロリド」、フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific))および蒸留水を含む。
A.5%(w/v)ポリマー溶液の調製
調製すべきポリマー溶液に依存して、1.00gのPCLまたはPLA、あるいは各0.50gのPLAおよび洗浄したEVAを、20mlのガラスシンチレーションバイアルに正確に秤り取る。次に、20mlのDCMを添加し、該バイアルにしっかりと栓をする。これらのバイアルを室温(25℃)にて1時間(場合によっては、振盪処理してもよい)あるいは該ポリマーが溶解(該溶液は透明となるはずである)するまで、保存する。この溶液を室温にて少なくとも2週間保存する。
B.PVAの5%(w/v)母液の調製
25gのPVAを直接600mlのガラスビーカーに量り取る。蒸留水500mlを、3インチのテフロン被覆した攪拌棒と共に添加する。このビーカーをガラスで覆い、蒸発による損失を低下させ、300mlの水を含む2000mlのガラスビーカー(これは水浴として機能する)中に配置する。このPVAを85℃および300rpmにて2時間あるいは完全に溶解するまで(コーニング(Corning)ホットプレート/攪拌機)攪拌する。該PVAの溶解は肉眼的検査によって決定できる。即ち、該溶液は透明になるはずである。次いで、この溶液をガラス栓付き保存容器に移し、4℃にて最長2カ月間保存する。しかしながら、この溶液は使用または希釈前に、室温まで加温すべきである。
C.微小球の製造法
製造すべき微小球のサイズに基づき(第1表参照)、100mlの該PVA溶液(濃度は第III表に与えた)を200mlのウォータジャケット付きビーカーに入れる。ハーケの循環型水浴をこのビーカーに接続し、その内容物を27℃(+/-10℃)にて10分間平衡化させる。製造すべき微小球のサイズに基づき(第III表参照)、該オーバーヘッド攪拌器の速度を設定し、該オーバーヘッド攪拌機の刃の半分を該PVA溶液に漬ける。次いで、この攪拌機を始動させ、10mlのポリマー溶液(ポリマー溶液は製造すべき微小球の型に基いて使用する)を、5mlの自動ピペッターを使用して、2分間に渡り、該攪拌されたPVAに滴下する。3分後に、該攪拌機の速度を調節(第III表参照)し、該溶液を更に2.5時間攪拌する。該攪拌ブレードを該微小球処方物から取り出し、10mlの蒸留水で洗浄し、その洗液を該微小球処方物に入れる。次に、この微小球処方物を500mlのビーカーに注ぎ込み、ジャケットを備えた水浴を70mlの蒸留水で洗浄し、この洗液も該微小球処方物に入れる。次に、180mlの該微小球処方物をガラス棒で攪拌し、等量の該処方物を4個の50mlポリプロピレン遠心管に注ぎ込む。次いで、該遠心管に栓をし、10分間遠心処理する(印加した遠心力は第1表に与えた)。次いで、5mlの自動ピペッターまたは真空吸引を利用して、各45mlの該PVA溶液から、各微小球ペレットを得る。


次いで5mlの蒸留水を、各遠心管に添加し、これを攪乱させて、該微小球を再懸濁させる。これら4種の微小球懸濁液を、次に20mlの蒸留水と共に1本の遠心管にプールし、更に10分間(遠心力は第1表に与えた)遠心する。この工程を更に2回繰り返し、全体として3回洗浄する。次に、該微小球を最終的な遠心処理に付し、10mlの蒸留水に再懸濁する。この最後の洗浄の後、該微小球処方物を、予め秤量したガラスシンチレーションバイアルに移す。このバイアルに栓をし、室温(25℃)にて一夜放置して、重力下で該微小球を沈降させる。サイズ範囲0.1?3μmに入る微小球は重力の作用下で沈降しない。従って、これらは10mlの懸濁液中に残される。
D.10?30μmまたは30?100μmの径をもつ微小球の乾燥
該微小球を室温にて一夜放置した後、5mlの自動ピペッターまたは真空吸引を利用して、上澄を除去して、沈降した微小球を回収する。この微小球を、1週間あるいはこれらが完全に乾燥する(バイアルが一定重量となるまで)まで、引出し中で、栓をしない状態で乾燥させる。ヒュームフード中で、緩慢な窒素ガス流の下で(流量約10ml/分)、栓をしてない該バイアルを放置することによりより迅速な乾燥を達成できる。完全に乾燥させた(バイアルは一定重量となる)後、該バイアルを秤量して、栓をする。ラベルを張り、栓をしたバイアルを室温にて引出し中で保存する。微小球は通常3カ月程度保存する。
E.径0.1?3μmの微小球の乾燥
このサイズ範囲の微小球は沈降しないので、4℃にて最長4週間懸濁状態に保たれる。10mlの該懸濁液の濃度を測定するために、該懸濁液200μlのサンプルをピペットで1.5mlの予め秤量した小型遠心管に取る。この管を、次いで10,000g(エッペンドルフ(Eppendorf)テーブルトップマイクロ遠心機)にて遠心処理し、上澄を除去し、50℃にて一夜乾燥させる。次いで、この管を再度秤量して、該管内の乾燥した微小球の重量を測定する。
F.タキソール担持微小球の製造
タキソール含有微小球を調製するために、適量の秤量したタキソール(封入すべきタキソールの割合に基づき決定)を、直接20mlのガラスシンチレーションバイアルに入れる。次に、10mlの適当なポリマー溶液を、このタキソールを含有する該バイアルに添加し、これを次に、タキソールが溶解するまで攪乱する。
かくして、タキソール含有微小球は、本質的に上記の工程(C)?(E)に従って製造できる。
実施例9:ステント被膜の製造
以下の実験で使用する試薬および装置は、種々の製造元から市販品として入手できる医学的等級のステント、例えば「ストレッカー(Strecker)」ステント)および支持装置、キャップ(プラスチック挿入型)を備えた20mlのガラスシンチレーションバイアル、TLCアトマイザー、窒素ガスタンク、ガラス試験管(1ml異常の種々のサイズのもの)、ガラスビーカー(種々のサイズのもの)、パスツール(Pasteur)ピペット、ピンセット、ポリカプロラクトン(“PCL”,分子量10,000?20,000,ポリサイエンスズ(Polysciences))、タキソール(シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.),セントルイス、Mo,純度95%)、エチレンビニルアセテート(“EVA”,洗浄したもの、前の説明参照)、ポリ(DL)乳酸(“PLA”,分子量15,000?25,000,ポリサイエンスズ)、ジクロロメタン(“DCM”-HPLC等級、フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific))を包含する。
A.ステントの噴霧塗装法
以下に長さ約3cmのステントを備え、クリンプをもつ径3mmの挟み込み金属ワイヤーを使用した典型的な方法を説明する。大きな径のステントに対しては、大容量のポリマー/薬物溶液を使用する。
十分な量のポリマーを直接20mlのガラスシンチレーションバイアルに量り取り、十分なDCMを添加して、2%w/vの溶液を得る。該バイアルに栓をして、該溶液を混合して、該ポリマーを溶解(手動で振盪する)する。このステントを縦方向に組み立てる。これは、一片のナイロンを使用し、かつ該ステントをレトルトスタンドに結び付けることにより達成できる。適当な支持体(例えば、転倒させた2000mlのガラスビーカー)上で、ヒュームフードフロアの6?12インチ上方に、該ステントを支持装置に配置させ、水平噴霧を可能とする。自動ピペットを使用して、適当な容量(最低5ml)の2%ポリマー溶液を20mlのガラスシンチレーションバイアルに移す。該溶液に適当な量のタキソールを添加し、栓をした該バイアルを手動で振盪して、これを溶解する。
噴霧のために、該バイアルの栓を取り外し、TLCアトマイザーのバーレル(のみ)を該ポリマー溶液に浸漬する。この方法では該アトマイザーの溜めを使用する必要がないことに注意すべきである。即ち、該20mlのガラスバイアルが溜めとして機能する。窒素タンクを該アトマイザーのガス導入口に接続する。霧化および噴霧が開始するまで、圧を徐々に高める。圧力を記録し、その圧をこの手順中ずっと使用する。該ステントを噴霧塗装するために、5秒間の振動噴霧と噴霧操作間の15秒間の乾燥時間とを使用する。5回の噴霧後、該ステントを90°回転し、該ステントのその部分を噴霧塗装する。該ステントの全ての側が噴霧塗装されるまでこの操作を繰り返す。該乾燥時間中、該ガス導入ラインを指で締め該噴霧の浪費を防止する。この噴霧を、適当量のポリマーが該ステント上に堆積するまで継続する。この量はインビボでの特定のステントの用途に応じて変えることができる。該量を決定するために、噴霧が完了し、該ステントが乾燥された後に、該ステントを秤量する。最終重量から、該ステントの元の重量を差引けば、これにより該ステントに適用されたポリマー(+タキソール)の量が得られる。この被覆ステントを密封容器内で保存する。
B.ステントの浸漬手順
以下に長さ約3cmのステントを備え、クリンプをもつ径3mmの挟み込み金属ワイヤーを使用した典型的な方法を説明する。大きな径のステントに対しては、大容量のポリマー/薬物溶液を使用する。
2gのEVAを20mlのガラスシンチレーションバイアルに量り取り、20mlのDCMを添加する。該バイアルに栓をし、2時間放置して、溶解する(該バイアルを手動で振盪して、該溶解工程を補佐する)。既知の重量のタキソールを直接1mlのガラス試験管に量り取り、0.5mlの該ポリマー溶液を添加する。ガラスパスツールピペットを使用して、該溶液の穏やかなポンピングによりタキソールを溶解する。一旦タキソールが溶解したら、該試験管をほぼ水平位置に維持する(粘着性のポリマー溶液は流出することはない)。ピンセットを使用して、該ステントを該管の底部まで完全に挿入する。該ポリマー溶液を、該管の口を水平以下の角度にし、次いで該試験管を水平よりも僅かに大きな角度に戻すことにより、該管の殆ど口まで流動させる。該管内のステントをゆっくり回転させながら、該ステントを徐々に取り出す(約30秒)。
該ステントを垂直位置に維持して、乾燥する。閉じた孔の幾つかが弾け(ポッピング)て、ポリマーの連続シートに孔を開ける可能性がある。これは、前の浸漬操作を繰り返すことにより修復できるが、該手順の繰り返しは、更なるポッピングを生じ、一般的には不均一なポリマーの生成をもたらす可能性がある。一般的に、該ステントを只1回浸漬するのがよく、ポッピングによる孔のないステント部分を切り取ることが好ましい。この浸漬処理したステントを封止した容器内に保存する。
実施例10:外科用「ペースト」の製造
上記の如く、本発明は、様々な臨床的状況で使用できる、種々のポリマー-含有薬物組成物を提供する。例えば、これら組成物は(1)流体として所定のサイトに適用され、かつ特定の温度(例えば、体温)において所定の形状の固体に固化する「サーモペースト(thermopaste)」として、(2)直接または特定の装置(例えば内視鏡)を介して所定のサイトに搬送でき、かつ後に固化することにより、これが適用された組織に付着する固体となるスプレー(即ち、「ナノスプレー(nanospray)」)として、(3)直接または特定の装置を介して所定のサイトに適用され、かつ好ましくはこれが適用されたサイトに付着する、接着性の、積層可能で、柔軟な血管形成阻害-ポリマーフィルムとして、および(4)適当な担持媒体中に微小球を分散させた懸濁物からなり、直接または特定の装置を介して所定のサイトに適用され、かつ該適用されたサイトに微小球の層を残す流体として、製造することができる。上記態様各々の代表的な例を以下により詳細に説明する。
A.サーモペーストの製造法
以下の実験で使用する試薬および装置は、無菌ガラスシリンジ(1ml)、コーニングホットプレート/攪拌機、20mlのガラスシンチレーションバイアル、鋳型(例えば、50μlのDSCパンまたは50mlの遠心管のキャップの内部部分)、小刀またはピンセット、ポリカプロラクトン(“PCL”,分子量10,000?20,000,ポリサイエンスズ(Polysciences),ワーリントン、ペンシルバニアUSA)、およびタキソール(シグマグレードの純度最低95%)を包含する。
5.00gのポリカプロラクトンを直接20mlのガラスシンチレーションバイアルに量り取る。このバイアルを50mlの水を含有する600mlのビーカーに配置する。該ビーカーを穏やかに65℃に加熱し、この温度に20分間維持する。これにより該ポリマーは融解する。65℃にて、既知量のタキソールまたは他の血管形成阻害剤を該融解ポリマーと十分に混合する。該融解ポリマーを、予め加熱(60℃のオーブン)した金型に流し込む。スパチュラを使用して、この流し込みを補佐する。該金型を冷却させて、該ポリマーを固化する。該ポリマーを小片に切断または破壊する(約2mm×2mmの寸法)。これらの小片は1mlのガラスシリンジに適合するはずである。該1mlのガラスシリンジからプランジャーを取り外し(先端からキャップを取らない)、これを秤上に配置する。該秤を零調節する。
0.5gの該小片を、直接該シリンジの開放端部に量り取る。このガラスシリンジを上向きに(栓をした先端を下側に)して、65℃(コーニングホットプレート)の水を含有する500mlのビーカー入れ、水がバレルに入らないようにする。このポリマーはこの装置内で10分以内に完全に溶融する。該ポリマー小片が溶融したら、該水浴から該バレルを取り出し、これを水平に保ち、キャップを外す。該バレルにプランジャーを挿入し、該溶融ポリマーを圧縮して、該バレルの先端部で粘着性の塊とする。該シリンジにキャップをし、室温まで冷却させる。
使用に際しては、該シリンジを60℃に再加熱して、液体として投与し、該液体は体温まで冷却した際に固化する。
B.ナノスプレーの製造法
ナノスプレーは、小さな微小球を塩水中に分散した懸濁液である。該微小球が極めて小さい場合(即ち、径1μm以下)、これらはコロイドを形成し、従って該懸濁液は重力下で沈降しない。以下でより詳細に説明されるように、0.1?1μmの微小球の懸濁液は、指の作用でポンプ輸送されるエーロゾルとして組織上に堆積するように作成できる。ナノスプレーを製造するのに使用できる装置および材料は、200mlのウォータジャケット付きビーカー(カイマックスまたはパイレックス)、ハーケの循環型水浴、径2インチのコントローラーおよびオーバーヘッド攪拌機(4ブレード、プロペラ型ステンレススチール攪拌機、フィッシャー製)、500mlのガラスビーカー、ホットプレート/攪拌機(コーニング製)、4×50mlのポリプロピレン遠心管(ナルゲン(Nalgene)製)、プラスチック製挿入式キャップを備えたガラスシンチレーションバイアル、テーブルトップ型遠心機(ベックマン製)、高速遠心-フロアーモデル(JS 21,ベックマン製)、メトラー分析天秤(AJ 100,0.1mg)、メトラーディジタルトップ荷重天秤(AE 163,0.01mg)、自動ピペッター(ギルソン(Gilson)製)、無菌ピペットチップ、ポンプ作用エーロゾル(ファイファーファーマシューティカルズ(Pfeiffer pharmaceuticals)、20ml層流フード、ポリカプロラクトン(“PCL”,分子量10,000?20,000,ポリサイエンスズ(Polysciences)、ワーリントン、ペンシルバニア、USA)、洗浄エチレンビニルアセテート(“EVA”,洗浄したもの、前の説明参照)、ポリ(DL)乳酸(“PLA”,分子量15,000?25,000,ポリサイエンスズ)、ポリビニルアルコール(“PVA”,分子量124,000?186,000,99%加水分解、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.),ミルウォーキー、WI,USA)、ジクロロメタン(“DCM”または「メチレンクロリド」、HPLC等級、フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific))、蒸留水、滅菌塩水(ベクトン&ディッケンソン(Becton and Dickenson)または等価なもの)を包含する。
1.5%(w/v)ポリマー溶液の調製
調製すべきポリマー溶液に依存して、1.00gのPCLまたはPLA、あるいは各0.50gのPLAおよび洗浄したEVAを、20mlのガラスシンチレーションバイアルに直接秤り取る。メスシリンダーを使用して、20mlのDCMを添加し、該バイアルにしっかりと栓をする。これらのバイアルを室温(25℃)にて1時間あるいは該ポリマーが溶解するまで(場合によっては、手動で振盪してもよい)放置する。該ポリマーの溶解は肉眼的検査によって決定できる。即ち、該溶液は透明となるはずである。該溶液の名称およびこれを調製した日付を該バイアルに表示する。この溶液を室温にて保存し、2週間以内に使用する。
2.PVAの3.5%(w/v)母液の調製
この溶液は以下に与えられる手順に従って、あるいは微小球の製造のために調製した5%(w/v)PVA母液(実施例8)を希釈することにより調製できる。簡単に説明すれば、17.5gのPVAを直接600mlのガラスビーカーに量り取る。蒸留水500mlを添加する。3インチのテフロン被覆した攪拌棒を該ビーカーに入れる。このビーカーをカバーガラスで覆い、蒸発による損失を減じる。300mlの水を含む2000mlのガラスビーカー中に、このビーカーを配置する。このPVAを85℃および300rpmにて(コーニング(Corning)ホットプレート/攪拌機)2時間あるいは完全に溶解するまで攪拌する。該PVAの溶解は肉眼的検査によって決定できる。即ち、該溶液は透明になるはずである。ピペットを使用して、この溶液をガラス栓付き保存容器に移し、4℃にて最長2カ月間保存する。この溶液は使用または希釈前に、室温まで加温すべきである。
3.ナノスプレーの製造法
ヒュームフード内に該攪拌装置を配置する。100mlの該3.5%PVA溶液を、200mlのウォータジャケット付きビーカーに入れる。該ハーケ水浴をこのビーカーに接続し、その内容物を27℃(+/-1℃)にて10分間平衡化させる。該オーバーヘッド攪拌機の出発速度を3000rpm(+/-200rpm)に設定する。該オーバーヘッド攪拌機のブレードを該PVA溶液の半分にまで入れ、該攪拌機を始動する。5mlの自動ピペッターを使用して、2分間に渡り、10mlのポリマー溶液(製造すべきナノスプレーの型に応じてこのポリマー溶液を使用する)を該攪拌されたPVA溶液に滴下する。3分後に、攪拌速度を2500rpm(+/-200rpm)に調節し、該アセンブリーを2.5時間そのまま維持する。2.5時間後に、該ナノスプレー処方物から該攪拌ブレードを除去し、10mlの蒸留水で洗浄する。該洗液は該ナノスプレー処方物に入るようにする。
この微小球処方物を500mlのビーカーに注ぎ込む。ジャケット付き水浴を70mlの蒸留水で洗浄する。この70mlの洗液を該微小球処方物に入るようにする。この180mlの微小球処方物をガラス棒で攪拌し、等量の該処方物を4つのポリプロピレン製の50ml遠心管に注ぎ込む。該管に栓をする。該栓をした管を10000g(+/-1000g)にて10分間遠心処理する。5mlの自動ピペットまたは真空吸引を利用して、微小球ペレットから45mlの該PVA溶液を抜き出し、捨てる。各遠心管に5mlの蒸留水を添加し、攪乱して各遠心管中の該微小球を再懸濁させる。20mlの蒸留水を使用して、1本の遠心管に該4つの微小球懸濁液をプールする。該微小球を洗浄するために、このナノスプレー処方物を10分間、10000g(+/-1000g)にて遠心処理する。該微小球ペレットから上澄を抜き取る。40mlの蒸留水を添加し、攪乱を使用して、該微小球を再懸濁させる。この手順を更に2回繰り返して、全体で3回洗浄する。4回目の洗浄を実施するが、該微小球を再懸濁する際に、(40mlではなく)10mlの蒸留水を使用する。この4回目の洗浄後、該微小球処方物を予め洗浄したガラスシンチレーションバイアルに移す。
該バイアルにキャップをし、室温(25℃)にて1時間放置し、重力作用下で径2?3μmの微小球を沈降させる。1時間後、5mlの自動ピペットを使用して、懸濁液の上部9mlを抜き出す。この9mlを、無菌的にキャップした50mlの遠心管に入れる。この懸濁液を10分間、10000g(+/-1000g)にて遠心処理する。上澄を捨て、ペレットを20mlの無菌塩水中に再懸濁させる。この懸濁液を10分間、10000g(+/-1000g)にて遠心処理する。上澄を捨て、ペレットを無菌塩水中に再懸濁させる。使用する塩水の特性は、最終的に必要とされる懸濁液濃度(通常10%w/v)に依存して変化する。無菌塩水中で該エーロゾル装置を十分に洗浄し、該ナノスプレー懸濁液を該エーロゾル装置に添加する。
C.タキソール担持ナノスプレーの製造
タキソールを含有するナノスプレーを製造するために、タキソール(シグマグレード、純度95%)を使用する。このポリマー薬物母液を調製するために、適当な量のタキソールを、直接20mlのガラスシンチレーションバイアルに量り取る。この適当な量は、該ナノスプレー中に存在させるべきタキソールの割合に基いて決定される。例えば、5%のタキソールを含有するナノスプレーが必要な場合、秤量すべきタキソールの量は25mgである。というのは、添加されるポリマーの量が該ポリマーの5%DCM溶液10ml(次の工程を参照)であるからである。
適当な5%ポリマー溶液10mlを、タキソールを含有する該バイアルに添加する。該バイアルに栓をし、攪乱または手動で掻き混ぜて、該タキソールを溶解させる(タキソールが溶解したかは、肉眼で検査する)。これを製造した日付を該バイアルにラベル表示する。これは、製造日に使用すべきである。
ポリマー/薬物(例えば、タキソール)母液を上記のポリマー溶液に代える以外は、上記手順に従う。
D.フィルムの製造手順
ここで、用語「フィルム」とは、多数の幾何的形状の一つに形成したポリマーを意味する。このフィルムは、薄い弾性のポリマーシート、または厚み2mmのポリマー円板であり得る。このフィルムは、露出した組織上に配置して、該組織サイトにおいて、長期間に渡り、該ポリマーから任意の封入された薬物を放出させるように設計される。フィルムは、例えば注型および吹付成形を包含する幾つかの方法によって作成できる。
該注型法において、ポリマーは溶融され、型に注ぎ込むか、あるいはジクロロメタンに溶解し、次いで型に注ぎ込まれる。次いで、該ポリマーは冷却に伴って固化するか、あるいは溶媒の蒸発に伴って固化する。該吹付成形法において、該ポリマーは溶媒に溶解され、ガラス上に吹き付けられ、該溶媒の蒸発に伴って、該ポリマーは該ガラス上で固化する。吹き付けを繰り返すことにより、該ポリマーを該ガラスから剥ぎ取ることの可能なフィルムとすることができる。
これらの実験で使用される試薬および装置は、小型ビーカー、コーニングホットプレート攪拌機、注型用金型(例えば、50ml遠心管のキャップ)および金型支持装置、キャップ(プラスチック挿入型)を備えた20mlのガラスシンチレーションバイアル、TLCアトマイザー、窒素ガスタンク、ポリカプロラクトン(“PCL”,分子量10,000?20,000,ポリサイエンスズ(Polysciences))、タキソール(シグマ、純度95%)、エタノール、「洗浄」(前の説明参照)エチレンビニルアセテート(“EVA”)、ポリ(DL)乳酸(“PLA”,分子量15,000?25,000,ポリサイエンスズ)、ジクロロメタン(“DCM”、HPLC等級、フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific))を包含する。
1.フィルムの製法-メルト注型法
既知量のPCLを直接小型ガラスビーカーに量りとる。該ビーカーを水を含有する大型のビーカー(水浴として機能する)に入れ、これを70℃にて15分間、または該ポリマーが完全に溶融するまで、ホットプレート上に置く。既知量の薬物を該溶融ポリマー上に添加し、この混合物を十分に攪拌する。該溶融PCL中への該薬物の分散を補助するために、該薬物を少量(該溶融PCLの体積の<10%)の100%エタノール中に懸濁/溶解することができる。次いで、このエタノール懸濁液を該溶融ポリマー中に混合する。この溶融ポリマーを金型中に注ぎ込み、冷却させる。冷却後、該フィルムを容器内で保存する。
2.フィルムの製造手順-溶媒注型法
既知量のPCLを直接20mlのガラスシンチレーションバイアルに量りとり、十分なDCMを添加して、10%w/v溶液を得る。該バイアルにキャップをし、該溶液を混合する。十分なタキソールを添加し、タキソールの所定の最終濃度を達成する。手動で振盪しまたは攪乱させて、該タキソールを該溶液中に溶解する。該溶液を1時間放置し(気泡の存在を最小化する)、次いでゆっくりと該溶液を金型に注ぎ込む。この使用する金型は必要な形状に依存する。該金型をヒュームフード中で一夜放置する。これによりDCMは蒸発するであろう。該フィルムを該金型中に放置もしくは保存するか、あるいはこれを剥ぎ取って、密封した容器内で保存する。
3.フィルムの製造手順-吹付成形法
十分量のポリマーを直接20mlのガラスシンチレーションバイアルに量り取り、十分なDCMを添加して、2%w/v溶液を得る。該バイアルにキャップをし、該溶液を混合して、該ポリマーを溶解する(手動の振盪)。ヒュームフード中で、適当な金型支持装置を使用して、垂直方向に該金型を組み立てる。適当な支持体(例えば、転倒させた2000mlのガラスビーカー)上で、該ヒュームフードフロアの上方6?12インチの位置にこの金型支持装置を配置する。自動ピペットを使用して、該2%のポリマー溶液の適当な体積(最小5ml)を、別の20mlのガラスシンチレーションバイアルに移す。該溶液に十分な量のタキソールを添加し、キャップした該バイアルを手動で振盪して、タキソールを溶解させる。吹付成形のために、該バイアルのキャップを外し、該ポリマー溶液に、TLCアトマイザーのバレル(のみ)を浸漬する。注:該アトマイザーの溜めは、この手順では使用しない。というのは、該20mlのバイアルが溜めとして機能するからである。
該窒素ガスタンクを、該アトマイザーのガス導入口に接続する。霧化および吹き付けが開始されるまで、圧力を徐々に高める。この圧を記録し、この手順中ずっとこの圧を使用する。該金型に吹き付けするために、5秒間の振動吹き付けと、該吹き付け操作間に15秒間の乾燥時間をとる。該乾燥時間中に、該ガス供給ラインを指で締めて該吹き付けの浪費を回避する。吹き付けは、該金型上に適当な厚みのポリマーが堆積するまで継続する。この厚みは要求に応じて決められる。吹き付けられたフィルムを該金型に付着したまま、密封した容器内で保存する。
E.ナノペーストの製造手順
ナノペーストは、親水性のゲル中に懸濁した微小球の懸濁物である。本発明の一局面においては、該ゲルまたはペーストは、ターゲット組織近傍に、薬物を担持する微小球を配置する方法として、該組織上に塗り付けることができる。水性ペーストである場合、該ペーストは直ぐに体液で希釈されて、該ペーストの粘着性が減少し、該微小球を隣接組織上に堆積する傾向をもつ。微小球に封入された薬物のプールは、かくしてターゲット組織近傍に配置される。
これらの実験で使用した試薬および装置は、ガラスビーカー、カルボポール(Carbopol)925(医薬等級、グッドイヤーケミカル社(Goodyear Chemical Co.))、蒸留水、水酸化ナトリウム水性溶液(1M)、水酸化ナトリウム水性溶液(5M)および20%w/vの0.1?3μmの粒径範囲の微小球の水性懸濁液(上記説明参照)を包含する。
1.5%w/vカルボポールゲルの調製
十分な量のカルボポールを1Mの水酸化ナトリウムに添加して、5%w/v溶液を得る。カルボポールを1Mの水酸化ナトリウムに溶解するために、該混合物を約1時間放置する。この期間中、ガラス棒を使用して、該混合物を攪拌する。1時間後に、該混合物のpHを測定する。低pHは、カルボポールが十分に溶解していないことを示す。達成したいpHが7.4である場合、該pHを調節するのに5Mの水酸化ナトリウム溶液を使用する。これは、5Mの水酸化ナトリウム溶液を該混合物に徐々に滴下し、該混合物を攪拌し、その混合物のpHを測定することにより達成される。pHを7.4に調節するのに、通常約1時間を要する。一旦pH7.4が達成されたら、該ゲルにカバーを被せ、2?3時間放置する。この期間の経過後、pHが依然として7.4にあることを確認するために、pHを検査する。pHが変化した場合には、再度5M水酸化ナトリウム溶液を使用して、pHを7.4に調節する。このゲルを数時間放置して、pHが7.4で安定であることを確認する。所定のpHが達成され、かつ安定するまで、この操作を繰り返す。該ゲルの名称およびその製造日を、容器のラベルに表示する。次の週迄に、このゲルをナノペーストの製造に使用する。
2.ナノペーストの製造手順
十分な量の0.1?3μmの微小球を水に添加して、20%の微小球懸濁液を生成する。8mlの5%w/vカルボポールゲル8mlをガラスビーカーに入れる。2mlの該20%微小球懸濁液を該ビーカーに添加する。ガラス棒または混合スパチュラを使用して、該混合物を攪拌して、該微小球を該ゲル全体に十分に分散させる。この操作は通常30分要する。一旦該微小球が該ゲル内に分散したら、この混合物を保存ジャー中に入れる。このジャーを4℃にて保存する。これは1カ月の期間内に使用すべきである。
実施例11:エチレン酢酸ビニルコポリマーとポリ(D,L乳酸)とのブレンドで作られた微小球からのタキソールの制御された放出、CAMアッセイでの微小球のインビボ試験
この実施例は生分解性ポリ(d,l-乳酸)(PLA)ポリマーと非-生分解性エチレン-酢酸ビニル(EVA)コポリマーとのブレンドから作られたタキソール担持微小球の調製について説明する。更に、CAM上に配置された該微小球からのタキソールインビトロ放出速度およびタキソール放出の抗-血管形成活性を証明する。
これら実験で使用した試薬はタキソール(これはシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(セントルイス,MO)から購入した)、PLA(分子量124,000 186,000,99%加水分解、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ミルウォーキー,WI)から購入した)およびジクロロメタン(HPLC等級、フィッシャーサイエンティフィック社(Fisher Scientific Co.)から購入)を含む。全体を通して蒸留水を使用する。
A.微小球の調製
溶媒蒸発法を使用して、本質的に実施例8に記載の如くして、微小球を調製する。簡単に説明すれば、20mlのDCM中の5%w/vポリマー溶液を、EVA:PLAの35:65?90:10の範囲のブレンドを使用して調製する。20mlのガラスバイアル中の、2.5%w/v PVA溶液5mlに、1mlの該ポリマー溶液を攪拌しつつ滴下する。6本の同様なバイアルを、溶解試験装置(ファンデルキャンプ(Vanderkamp))のオーバーヘッド攪拌機の6個の位置で組み立て、200rpmで攪拌する。該バイアルの温度を室温から40℃に、15分かけて高め、40℃にて2時間維持する。バイアルを500xgにて遠心処理し、該微小球を水中で3回洗浄する。幾つかのEVA:PLAポリマーブレンドにおいて、分散または乳化剤PVAの除去のために、該微小球サンプルは該洗浄段階中に凝集した。この凝集作用は、半-定量的に分析できた。というのは、凝集した微小球が融合し、該融合したポリマーの塊が洗浄水の表面上に浮遊したからである。この表面ポリマー層を、該洗浄処理中に捨て、残りのペレット化した微小球を秤量する。%凝集率は以下の式に基づき決定される:
%凝集率=[1-(ペレット化微小球の重量)×100]/(初期ポリマー重量)
タキソールを担持させた微小球(0.6%w/wタキソール)は、該タキソールをDCM5%w/vポリマー溶液中に溶解することにより調製される。使用したこのポリマーブレンドは50:50 EVA:PLAである。微小球の「大きな」粒径画分および「小さな」粒径画分を、それぞれ2.5%w/vPVAおよび5%w/vPVAに該タキソール/ポリマー溶液を滴下することにより製造する。これら分散液を40℃、200rpmにて2時間攪拌し、遠心処理し、上記のように水で3回洗浄する。微小球を風乾し、ステージマイクロメータを備えた光学顕微鏡を使用して、該サンプルの粒度を測定する。サンプル当たり300を越える微小球が計数される。コントロール微小球(タキソールを含まない)を調製し、上記のように粒度決定する。
B.封入効率
既知重量のタキソール担持微小球を1mlのDCM中に溶解し、50℃の40%アセトニトリル水溶液20mlを添加し、該DCMが蒸発するまで攪乱する。該40%アセトニトリル中のタキソール濃度を、移動相として水:メタノール:アセトニトリル(37:5:58)を流量1ml/分で使用し(ベックマンアイソクラチック(isocratic)ポンプ)、C8逆相カラム(ベックマン)および232nmのUV検出器を使用した、HPLCにより測定する。この抽出手順の回収率を決定するために、100-1000μgの既知量のタキソールを1mlのDCM中に溶解し、上記と同様な抽出手順を3回行う。回収率は、常に85%を越え、封入効率の値を適当に補正する。
C.薬物放出の研究
スクリュー式キャップを備えた15mlガラス管に10mlの10mMリン酸緩衝塩水(PBS;pH 7.4)および35mgのタキソールを担持した微小球を入れる。この管を、37℃にて所定の時間間隔でタンブリング処理し、1500xgにて5分間遠心処理し、得られる上澄を分析の目的で保存する。微小球ペレットを、37℃にて新たなPBS(10ml)中に再懸濁し、再度インキュベートする。タキソールの濃度は、1mlのDCMに抽出し、次いで窒素気流下で蒸発乾固し、1mlの40%アセトニトリル水性溶液中に再分散し、上記と同様にHPLCで分析する。
D.走査型電子顕微鏡(SEM)観察
サンプルホルダーに微小球を配置し、金でスパッター被覆し、15kVで稼働するフィリップス(Philips)の501BSEMを使用して顕微鏡写真を撮影する。
E.CAM研究
受精した家禽の胚を、殻を含まない培養の前に、4日間インキュベートする。この卵の内容物を90%相対湿度および3%CO_(2)にて2日間インキュベートする。インキュベーションの6日目に、0.6%のタキソールを担持したまたはコントロール(タキソールを含まない)微小球のアリコート1mgを、直接CAM表面上に配置する。2日間の放置後、ビデオカメラと連動する立体顕微鏡を使用してその血管形成を検査し、該ビデオ信号をコンピュータ上に表示し、かつビデオ撮影する。
F.結果
100%EVAから調製した微小球をPVA溶液に遊離状態で懸濁させたが、後の水洗の際に、PVAの除去のために強く凝集、凝結もしくは融合する。EVAを増大する量のPLAとブレンドすると、第15A図に示した如く、水で洗浄した場合に凝集、凝結を生ずる傾向の小さい微小球が生成される。50:50 EVA:PLAブレンドは良好な物理的安定性をもつ微小球を形成した。即ち、該微小球は分離状態で良好に懸濁しており、無視可能な程度の凝集、凝結を示すに過ぎなかった。
「小さな」粒径の微小球画分の粒径範囲は、該微小球サンプルの>95%(重量基準)について10?30mmであり、また「大きな」粒径の微小球画分の粒径範囲は、該微小球サンプルの>95%(重量基準)について30?100mmである。該「小さな」および「大きな」粒径範囲におけるタキソールを担持した50:50 EVA:PLA微小球の代表的な走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ第15Bおよび15C図に示した。該微小球は滑らかな表面をもつ球であり、また該微小球の表面上には固体薬物は全く存在しない。50:50 EVA:PLA微小球のタキソール担持効率は、ポリマー50mg当たりタキソール100-1000mgの範囲の初期タキソール濃度において、95-100%である。「小さな」および「大きな」微小球に対する封入効率間には有意な差は観測されない(スチューデントt-テスト;p<0.05)。
0.6%w/vタキソール担持50:50 EVA:PLA微小球からのタキソールの放出の経時変化を第15D図に示した。ここで、白丸は「小さな」粒径の微小球に対するものであり、黒丸は「大きな」粒径の微小球に対するものである。この放出速度の研究は3本の試験管中で3回の別々に実施した実験により実施する。放出プロフィールは2段階型であり、両粒径範囲の微小球に対して、初期の迅速なタキソール放出段階または最初の4日間に渡る「バースト」段階を含む。これに引き続き、より緩慢な放出段階が見られる。「小さな」および「大きな」粒径の微小球の放出速度の間には何等有意な差は見られない。該微小球の全タキソール含量の10-30%が50日以内に放出される。
このタキソールを担持した微小球(0.6%w/v担持)を、CAMアッセイを利用してテストし、その結果を第15E図に示した。このタキソール担持微小球は薬物を十分に放出して、その周辺の組織中に無血管領域を形成する(第15F図)。該微小球(第15E図および第15F図の“MS”)の極近傍は、血管が全くない領域(ゾーン1)であり、該微小球から先の領域は、破壊された、非-機能性の毛細血管領域(ゾーン2)であり、該微小球から約6mm離れた位置において初めて、該毛細血管は正常に戻る。コントロール微小球(タキソールを含まない)で処理されたCAMにおいては、正常な毛細血管の網状構造の構築が見られる。
議論
動脈の化学的塞栓は侵襲的な外科的技術である。従って、理想的には、タキソール等の抗-血管形成性および抗癌剤の化学塞栓処方物は、数カ月程度の長期間に渡り活性であるのに十分な濃度で、該腫瘍サイトに該薬物を放出すべきである。EVAは組織適合性非-分解性のポリマーであり、長期間(>100日)巨大分子を制御された様式で放出するのに広く利用されている。
EVAは、最初ポリマーマトリックス中に分散されたタキソールを含む微小球を調製するためのポリマー生体物質として選択される。しかしながら、100%EVAで調製した微小球は、洗浄段階中に殆ど完全に凝集かつ凝固してしまう。
乳酸およびグリコール酸を主体とするポリマーおよびコポリマーは生理的に不活性で生体適合性であり、加水分解により分解されて、毒物学的に許容される生成物を与える。乳酸とグリコール酸とのコポリマーはPLAよりも速い分解速度を有し、これらコポリマーを使用して作成した薬物担持微小球は、数カ月に及ぶ期間に渡り、持続的かつ制御された放出を達成するには不適当である。ドリンガー&サワン(Dollinger and Sawan)はPLAとEVAとをブレンドした場合、PLAの分解寿命が、該ブレンド中のEVAの割合の増大に伴って延びることを示した。かれらは、PLAとEVAとのブレンドが、PLAよりも良好な機械的安定性と、薬物放出速度の制御性とをもつポリマーマトリックスを与えるはずであることを示唆している。
第15A図は、該EVA:PLAブレンド中のPLAの比率を高めると、該微小球懸濁液の凝集の程度が減少することを示した。EVA:PLAマトリックス中に50%以下のEVAを含むブレンドは、水またはPBS中で物理的に安定な微小球懸濁液を生成した。後の全ての研究では、50:50 EVA:PLAブレンドを選択する。
微小球の種々の粒径範囲の画分を、該水性相中の乳化剤PVAの濃度を変えることにより、調製できた。「小さな」微小球は5%w/vなる高いPVA濃度で生成され、一方で「大きな」微小球は2.5%w/vにおいて生成される。全ての他の製造変量は両微小球粒径画分について同一である。乳化剤の高い濃度はより粘稠な水性分散媒体を与え、該水性相中に乳化されたポリマー/タキソール/DCMの小さな液滴を、即ちより小さな微小球を与える。該タキソール担持微小球は、該固体微小球内に封入された有機相に、最初に添加されたタキソールの95-100%を含んでいた。タキソールの低い水溶性は該ポリマーを含有する該有機相中への好ましい分配を生じた。
50:50 EVA:PLA微小球からのタキソールの放出速度は非常に低く、担持タキソールの15%未満が50日以内に放出される。薬物放出の初期のバースト段階は、該微小球の表面領域(該微小球の表面近傍)からの薬物の拡散によるものと考えられる。
非-分解性のポリマーマトリックス、例えばEVAからの薬物の放出メカニズムは、該ポリマーの分散した薬物相を介する水の拡散、該薬物の溶解および該一群の相互に接続された、流体で満たされた孔を介する溶質の拡散を包含すると考えられる。PLAとEVAとのブレンドは、PLA中のEVA濃度30?70%の範囲に渡り不混和性または二相性(bicontinuous)であることが示されている。誘導または遅延期間後に、37℃にてPBSバッファー中で実施した分解実験において、PLAは加水分解的に分解され、EVA:PLAポリマーブレンドマトリックスから分解されて、不活性なスポンジ-状の骨格を放出した。該ブレンドしたマトリックスからのPLAの劣化および分解の該誘導期間および速度は該マトリックス中のPLAの比率および工程の履歴に依存するが、40-50日後まではPLAの損失は全くまたは殆どみられない。
50:50 EVA:PLA微小球からのPLAの幾分かの分解が、インビトロでの放出速度の研究(第15C図)の50日以内に生ずるが、該ポリマーブレンドからの薬物放出の主なメカニズムは、該ポリマーマトリックス中の孔構造を介する溶質の拡散であると考えられる。
この放出速度の研究の結論として、該微小球は残留する薬物の量から分析される。50日間の微小球サンプルのインキュベーション中に残留するタキソールの割合についての値は、「大きな」および「小さな」粒径面分の微小球それぞれに対して、94%+/-9%および89%+/-12%である。
ポリマー1mg当たり6mg(0.6%)を担持した微小球は、ヒヨコ胚のCAM上に配置した場合に、血管形成に対する強い阻害性を与えた(第15Eおよび15F図)。
実施例12:ポリ(ε-カプロラクトン)微小球中へのタキソールの封入、タキソール担持微小球によるCAMアッセイに及ぼす血管形成阻害性
本実施例では、ポリ(ε-カプロラクトン)の生分解性微小球からのタキソールのインビトロ放出速度プロフィールを評価しおよび該CAM上に配置した際の、これら微小球から放出されるタキソールの抗-血管形成活性を証明する。
これら実験で使用した試薬は、ポリ(ε-カプロラクトン)(“PCL”;分子量35,000?45,000、ポリサイエンスズ(Polysciences)、ワーリントン、PAから購入したもの)、ジクロロメタン(“DCM”;カナダのフィッシャーサイエンティフィック社から購入したもの)、ポリビニルアルコール(PVP;分子量12,00?18,000、99%加水分解、ミルウォーキー,Wis.のアルドリッチケミカル社製)およびセイトルイス,MOのシグマケミカル社製のタキソールを包含する。特に述べない限り、全ての化学薬品および試薬は入手したままで使用する。全体を通じて、蒸留水を使用する。
A.微小球の調製
溶媒蒸発法を使用して、本質的に実施例8に記載のようにして、微小球を調製する。簡単に説明すれば、5%w/vのタキソールを担持した微小球を、10mgのタキソールと190mgのPCLとを、2mlのDCMに溶解し、100mlの1%PVP水性溶液を添加し、1000rpmにて、25℃で2時間攪拌する。この微小球の懸濁液を1000xgにて10分間遠心処理し(ベックマン、GPR)、上澄を除去し、得られる微小球を水で3回洗浄する。この洗浄した微小球を一夜風乾し、室温にて保存する。コントロール微小球(タキソールを含まない)を上記の如く調製する。1%および2%のタキソールを含有する微小球をも調製する。微小球の粒径を、ステージマイクロメーターを備えた光学顕微鏡を使用して決定する。
B.封入効率
既知量の薬物を担持した微小球(約5mg)を8mlのアセトニトリルに溶解し、2mlの蒸留水を添加して、該ポリマーを沈殿させる。この混合物を1000gにて10分間遠心分離し、封入されたタキソールの量を、232nmにて、UV分光光度計(ヒューレット-パッカード(Helett-Packard)8452Aダイオードアレイスペクトロフォトメーター(Diode Array Spectrophotometer))で測定された、該上澄の吸光度から算出する。
C.薬物放出の研究
約10mgのタキソール担持微小球を、スクリューキャップを備えた管中で、20mlの10mMのリン酸緩衝塩水(pH 7.4;PBS)中に懸濁させる。これらの管を37℃にて所定の時間間隔で上下にタンブリングして、19.5mlの上澄を除去(該微小球を底部に沈降させた後)し、0.45mmのフィルターで濾過し、タキソール分析のために保存する。各管において、等量のPBSで置換して、この研究を通してシンク状態を維持する。該濾液を3x1mlのDCMで抽出し、該DCM抽出液を窒素気流下で蒸発乾固させ、1mlのアセトニトリル中に再溶解し、移動相として水:メタノール:アセトニトリル(37:5:58)を1ml/分なる流量で使用(ベックマンアイソクラチックポンプ)し、またC8逆相カラム(ベックマン)、およびUV検出器(シマズ(Shimadzu)SPD A)を232nmにて使用した、HPLCによって分析する。
D.CAM研究
受精した家禽の胚を、殻を含まない培養の前に、4日間インキュベートする。インキュベーションの6日目に、5%タキソール担持またはコントロール(タキソールを含まない)微小球の1mgアリコートを、直接該CAMの表面上に配置する。2日間の該微小球への暴露後、ビデオカメラと連動する立体顕微鏡を使用して、その血管形成について検査し、該ビデオ信号を次にコンピュータ上に表示し、ビデオ撮影する。
E.走査型電子顕微鏡観察
微小球をサンプルホルダー上に配置し、金でスパッタ被覆し、次いで15kVで稼働するフィリップス501B走査型電子顕微鏡に設置する。
F.結果
該微小球サンプルの粒径範囲は30?100mmであるが、タキソール担持またはコントロール微小球バッチ全てにおいて、幾らかの微小球がこの範囲外にあることが分かっている。PCL微小球に対するタキソールの担持効率は、全ての薬物担持研究について、常に95%を越える。走査型電子顕微鏡観察は、該微小球が全て球形であり、その多くが粗いまたは多数の孔のある形状であることを示した。該微小球表面上には、固体状の薬物は存在しないことを示した。
1%、2%および5%担持PCL微小球からのタキソール放出の経時変化を第16A図に示した。この放出速度プロフィールは二段階型である。全ての薬物担持率において、タキソールの初期の迅速な放出または「バースト段階」が観測される。このバースト段階は1%および2%タキソール担持微小球では、1?2日間に渡り生じ、また5%担持微小球については3?4日間に渡り生じる。迅速放出の該初期段階はかなりゆっくりした薬物放出段階を伴う。1%または2%タキソールを含有する微小球については、21日後には最早薬物の放出は見られない。5%タキソール担持微小球については、該微小球は21日後にも全薬物含有率の約20%を放出している。
第16B図は、コントロールPCL微小球で処理したCAMを示し、また第16C図は5%タキソール担持微小球による処理を示す。該コントロール微小球で処理したCAMは正常な毛細血管網状構造の構築を示す。タキソール-PCL微小球で処理したCAMは顕著な血管の退化および毛細血管網状構造の内領域を示す。
G.議論
このタキソール担持微小球製造の溶媒蒸発法は、95-100%という極めて高いタキソール封入効率を達成した。これはタキソールの低い水に対する溶解性およびその疎水特性によるものであり、該特性は該ポリマーを含有する該有機相中へのタキソールの分配を有利にする。
タキソールの二段階型放出プロフィールは、生分解性ポリマーマトリックスからの多くの薬物の典型的な放出パターンである。ポリ(ε-カプロラクトン)は生理的条件下での加水分解によって分解し得る脂肪族ポリエステルであり、無毒かつ組織適合性である。PCLの分解は、乳酸およびグリコール酸の広範に研究されたポリマーおよびコポリマーの分解に比して著しく遅く、従って長期に及ぶ薬物放出系の設計に適している。タキソール放出の初期の迅速な段階またはバースト相は、該微小球の表面領域(該微小球の表面近傍)からの該薬物の拡散性の放出によるものと考えられている。該放出プロフィールの第二段階における(より遅い)タキソールの放出は、PCLの劣化または分解によるものとは考えられない。というのは、インビトロ条件下での水中では、7.5週間なる期間に渡り、PCLの大幅な重量損失または表面分解は見られないことが、研究によって示されたからである。このタキソール放出の遅い段階は、恐らく該ポリマーマトリックス中の流体で満たされた孔内の該薬物の溶解および該孔を介する該薬物の拡散によるものと考えられる。より高いタキソール担持率におけるより高い放出速度は、多分該ポリマーマトリックス中のより高度の孔の網状構造の結果であると考えられる。
5%の担持率をもつタキソール担持微小球は、CAM上に配置された場合に、十分な薬物を放出して、血管形成の強力な阻害をもたらすことが示された。この血管成長阻害は、第16C図に示された如く、無血管領域を与える。
実施例13:エチレン酢酸ビニルおよび界面活性剤を含む、タキソール担持ポリマーフィルム
本質的に実施例10に記載のようにして、2つの型のフィルム、即ちタキソールを担持したEVAフィルムおよびタキソールを担持したEVA/界面活性剤ブレンドフィルム(即ち、プルロニック(Pluronic)F127、スパン(Span)80およびプルロニックL101)を調製する。
調べたこれらの界面活性剤は、2種の疎水性界面活性剤(スパン 80およびプルロニックL101)および1種の親水性界面活性剤(プルロニック F127)である。該プルロニック界面活性剤はそれ自体ポリマーであり、EVAとブレンドして、その種々の薬物放出特性を最適化できることから、魅力的な特性を有するものである。スパン80は低分子であり、該ポリマーマトリックス中にある様式で分散しており、ブレンドを形成しない。
界面活性剤は、フィルムからのタキソールの放出速度を変調し、かつ該フィルムの物理的パラメータを最適化する上で有用である。薬物の放出速度を制御できることを示す、該界面活性剤をブレンドしたフィルムの一局面は、該化合物が水中で膨潤する速度およびその程度を変える能力である。水のポリマー-薬物マトリックスへの拡散は、該担体からの薬物の放出にとって臨界的なファクタである。第17Cおよび17D図は、該ブレンド中の界面活性剤濃度の変動に伴う、該フィルムの膨潤度を示す図である。純粋なEVAフィルムは2カ月間に渡り、何等有意な程度に膨潤しない。しかしながら、該EVAに添加する界面活性剤の濃度を増大することにより、該化合物の膨潤度を増大でき、また親水性を高めることによっても、膨潤度を増大し得る。
これらのフィルムに関する実験結果は以下の第17A-E図に示されている。簡単に説明すれば、第17A図は、純粋なEVAフィルムからのタキソール放出の経時変化を示している。第17B図は、同じフィルムに関する残留薬物の割合を示す。これら2つの図から明らかな如く、タキソールの担持量が増大すると(即ち、タキソールの重量%が高くなると)、薬物放出速度は増大し、これは予想された濃度依存性を示している。タキソール担持量が増大すると、該フィルム中に残留するタキソールの割合も増大し、このことはより高い担持率が、長期放出型処方物にとってより魅力的であることを示している。
該フィルムの物理的強度および弾性は第17E図で評価されている。簡単に説明すれば、第17E図は純粋なEVAおよびEVA-界面活性剤ブレンドフィルムについての、応力/歪曲線を示している。この応力の大雑把な測定は、該フィルムの弾性が、プルロニック F127の添加によって増大し、また引張強さ(破壊応力)が、プルロニック F127の添加によって、濃度に依存して増大することを立証している。弾性および強度は、該化合物の永続的な変形を生じることなく、特定の臨床的用途に対して取扱うことのできるフィルムを設計する際に考慮すべき重要な点である。
上記のデータは幾つかの界面活性剤添加物の、薬物放出速度を調節し、かつ該ビヒクルの物性を変える能力を立証している。
実施例14:メトキシポリエチレングリコール350(MePEG)をポリ(ε-カプロラクトン)に配合することによる、ペーストからのタキソールの制御された放出を達成する処方物の開発
これら実験において使用した試薬および装置はメトキシプロピレングリコール350(“MePEG”,ユニオンカーバイド社(Union Carbide),ダンバリー、CT)を含む。MePEGは室温で液体であり、かつ凝固点10?-5℃を有する。
A.MePEG/PCLタキソール含有ペーストの調製
MePEG/PCLペーストは、まず一定量のタキソールをMePEG中に溶解し、次いでこれを溶融したPCLに配合することにより調製される。この方法の一つの利点はDCMの使用を必要としないことである。
B.融点の分析
PCL/MePEGポリマーブレンドの融点は、30?70℃の範囲の、2.5℃/分なる加熱速度での走査型示唆熱分析により測定できる。この実験の結果を第18Aおよび18B図に示した。簡単に説明すると、第18A図に示した如く、このポリマーブレンドの(熱分析により決定される)融点は、濃度依存的に、MePEGによって減少する。MePEG濃度の関数としての、該ポリマーブレンドの融点を第18A図に示した。この低い融点は、また該ポリマーブレンドがメルトから固化するに要する長い時間を反映している(第18B図)。30:70 MePEG/PCLブレンドは、PCL単独のものよりも、流体メルトから固化するのに2倍以上の長い時間を要する。
C.脆弱さの測定
MePEGのPCLへの配合は、PCL単独のものと比較して、より脆弱性の低い固体を生成するように考えられる。このことを定量化する「大雑把」な方法の一つとして、秤量した針を、PCL中に0%?30%の範囲のMePEGを含有するポリマーブレンドに、等しい高さから落下させ、次いで該針が該固体中に侵入する距離を測定する方法がある。この結果を示すグラフを第18C図に示した。各点は4回の測定の平均+/-S.D.として与えられている。
比較の目的で、パラフィンワックスのサンプルをもテストしたが、該針は該ワックス中に距離7.25mm+/-0.3mm侵入した。
D.タキソール放出率の測定
ポリマーのペレット(0%、5%、10%または20%のMePEGを含有するPCL)を37℃にて、リン酸緩衝塩水(PBS,Ph7.4)中でインキュベートし、ポリマー重量における変化(%)を経時に測定する。第18D図に示した如く、重量損失量は、該ブレンド中に元々存在したMePEGの濃度に伴って増大する。この重量損失は、該ポリマーマトリックスから該インキュベーション流体へのMePEGの放出によるものと考えられる。このことは、タキソールがMePEG/PCLブレンドから容易に放出されることを示す。というのは、タキソールがPCLに配合される前に、まずMePEG中に溶解するからである。
E.MePEGの変動量の、タキソール放出に及ぼす効果
PCL中に0.8%および20%のMePEGを含有するサーモペーストを作成する。これらに1%のタキソールを担持させる。37℃における、時間の経過に伴う、10mgのペレットからのタキソールのPBSバッファー中への放出率をHPLCを使用して監視する。第18E図に示したように、該処方物中のMePEGの量は、放出されるタキソールの量に影響を与えない。
F.20% MePEG/PCLブレンドから放出されるタキソールの全量に及ぼす、タキソールの量の変化の影響
PCL中に20%のMePEGを含有するサーモペーストを調製し、0.2%?10%の範囲のタキソールを担持させる。時間の経過に伴うタキソールの放出を上記のように測定する。第18F図に示したように、時間の経過に伴うタキソールの放出量は、タキソールの担持量の増大に伴って増大する。しかしながら、放出された全タキソールの割合としてプロットすると、その順序は逆転する(第18G図)。これは、該ペースト中に残される残留タキソールに関する情報を与え、このデータの外挿が有効であると仮定すると、タキソールが20% MePEGサーモペーストから放出されるであろう期間に渡る、該量の推定が可能となる。
G.種々のMePEG/PCLブレンドの強度解析
CT-40機械強度テスターを使用して、径0.88cmおよび平均の厚み0.560cmをもつ、固体ポリマー「錠剤」の強度を測定する。このポリマー錠剤は、PCL中に0%、5%、10%または20%の濃度でMePEGを含有するブレンドである。
このテストの結果を第18H図に示したが、ここでは引張強さおよび破断時間両者を、該ブレンド中の%MePEGの関数としてプロットしてある。単一の変数ANOVAは、各群内の錠剤の厚みが異なっていないことを示した。第18H図から明らかな如く、PCLへのMePEGの添加は、得られる固体の硬さを減じた。
実施例15:インビボでの血管形成に及ぼす、タキソール担持サーモペーストの効果
受精した家禽の胚を、実施例2に記載のように、殻を含まない培養に付す前に4日間インキュベートした。この卵の内容物を該殻から取り出し、丸底の無菌ガラスボウルに入れ、ペトリ皿のカバーで覆う。
本質的に上記した(実施例10)如く、タキソールを5%、10%および20%(w/v)の濃度でサーモペーストに配合し、以下の実験で使用する。次いで、乾燥し、切断したサーモペーストを60℃に加熱し、パラフィルム2枚の間で加圧して、平坦にし、これを冷却させる。6個の胚には20%-タキソール担持サーモペーストを適用し、また6個の胚にはこのように調製した非担持のサーモペーストを適用した。各群における1個の胚が死亡し、コントロールおよび処理群各々において5個の胚は生き残った。
非担持のサーモペーストおよび20%-タキソールを含有するサーモペーストをも60℃に加熱し、インキュベーションの6日目に、各CAMの成長端上に置いた。各2個の胚をこの方法で処理した。
異なる投与法を使用して得た結果に観測可能な差異は見られなかった。このことは、適用時点での該ペーストの温度は、この結果におけるファクタではないことを示している。
10%のタキソールを含有するサーモペーストを11個のCAMに適用し、また5%のタキソールを担持するサーモペーストを10個のCAMに適用し、更に非担持サーモペーストを他の10個のコントロールCAMに適用した。2日間の暴露(インキュベーションの8日目)後に、立体顕微鏡を使用して、血管系を検査した。白色不透明溶液であるリポシン(Liposyn)IIを該CAMに注入して、該血管細部の視認性を高めた。5%タキソール担持ペーストで処理した胚においては、僅かに2匹の動物が血管形成の最大の阻害を示し、一方で残りの8匹の動物では周辺部にのみ影響が見られた。10%タキソール担持サーモペースト処置した動物のうち、僅かに2匹のみが最大の阻害を示し、一方で他の9匹の動物では周辺部にのみ影響が見られた。
20%-タキソール担持サーモペーストは、この処置を受けた5個のCAMの全てにおいて、広い無血管領域を示した(第19B図参照)。最大の阻害度は、寸法6mm×6mmの領域を覆う無血管領域として定義した。20%-タキソール担持サーモペーストで処置した全てのCAMが、この血管形成阻害度を示した。
比較のために、コントロール(非担持)サーモペーストは該CAM上の血管形成を阻害しなかった(第19A図参照)。この高倍率の視野(該ペーストの端部が該像の頂部に見られることに注目すべきである)は、該ペースト近傍の血管が該サーモペーストによって影響されないことを示している。このことは、観測された効果がタキソールの持続的な放出によるものであり、該ポリマー自体によるものでも、また該血管系の発生に及ぼすペーストの二次的な圧力効果によるものではないことを示唆している。
この研究は、サーモペーストが十分な量の血管形成阻害剤(この場合はタキソール)を放出して、該CAMの血管系の正常な発生を、阻害することを立証している。
実施例16:インビボでの、腫瘍の成長および腫瘍の血管形成に及ぼすタキソール担持サーモペーストの効果
受精した家禽の胚を、その殻を除去する前に、3日間インキュベートする。該卵の内容物を、エアースペースの回りに位置する該殻を除去し、内部殻膜を分離し、該殻の反対側の端部に孔を開け、該卵の内容物を穏やかに丸い端部から滑り出させることにより、取り出す。この内容物は、丸底の無菌ガラスボウルに取り出し、ペトリ皿のカバーで覆い、相対湿度90%および3%二酸化炭素(実施例2参照)にてインキュベートする。
MDAY-D2細胞(二十日ネズミのリンパ球様腫)をマウス中に注入し、0.5-1.0gの腫瘍に成長させる。該マウスを殺し、該腫瘍部位をアルコールで拭き、切除し、無菌組織培養培地に配置し、層流フードの下で1mm片に細断する。この細断した腫瘍を9日齢のヒヨコ胚上に設置する前に、CAM表面を30ゲージの針で穏やかに引っ掻いて、腫瘍の移植を確実にする。次いで、この腫瘍を、インキュベーションの8日後に該CAM上に配置し(脱殻の4日後)、4日間該CAM上で成長させて、血管分布を確立させる。この方法を利用して、4つの胚を調製し、各胚に3つの腫瘍を適用する。これらの胚について、1つの腫瘍には20%タキソール担持サーモペーストを与え、第二の腫瘍には非担持サーモペーストを与え、また第三の腫瘍には何等処置を施さなかった。この処置は、結果を記録する前に2日間続ける。
この移植したMDAY-D2腫瘍は、該腫瘍塊内における毛細血管(該CAMを由来とする)の内部成長を誘発する血管形成ファクタを分泌するが、所定のサイズまで成長させる。該腫瘍の血管全ては該CAMを由来とし、一方全ての腫瘍細胞は該移植片を由来とするので、これら2つの過程に及ぼす治療処置の効果を独立に評価することができる。このアッセイを使用して、タキソール担持サーモペーストの(a)該腫瘍の血管形成の阻害および(b)該腫瘍細胞自体の成長の阻害に関する有効性を決定した。
この研究により、固定された組織の直接的立体顕微鏡評価およびその組織各的検査は以下のことを立証している。即ち、20%タキソール担持サーモペーストで処置した腫瘍においては、コントロール腫瘍と比較して、該腫瘍に補給を行う血管の数における減少(第20C図および第20D図参照)、該腫瘍内の血管数の減少、および該腫瘍の周辺(固形腫瘍においては、典型的に最も高度に血管形成される領域)における血管数の減少が見られた。この研究を実施した2日間に、該腫瘍はそのサイズおよび量を減少し始めた。また、多数の内皮細胞の細胞分裂が停止されているように思われ、このことは内皮細胞の増殖が影響を受けていることを示している。腫瘍細胞は、またしばしば有糸分裂を停止しているように思われた。4種全ての胚は、20%タキソール担持サーモペーストが腫瘍の血管形成を抑制し、一方で非担持サーモペーストが何の効果も示さないという一致したパターンを示した。
比較すると、非担持サーモペーストで処置したCAMにおいては、該腫瘍は十分に血管形成し、正常な周辺の組織と比較した場合に、血管数およびその密度における増加を示し、タキソール担持ペーストで処置した腫瘍において観測されるよりも著しく多数の血管が見られる。新たに形成された血管があらゆる角度から該腫瘍に入り、車輪に取り付けられたスポークスのように見えた(第20Aおよび20B図参照)。コントロール腫瘍は、本研究中ずっと、そのサイズおよび量を増大し続けた。組織学的には、多数の広がった、壁の薄い毛細血管が該腫瘍の周辺で観察され、また幾つかの内皮は細胞分裂状態にあることが観察された。この腫瘍組織は十分に血管形成され、かつ十分に生存性であった。
一例として、同一のCAM上に配置された2つの同様なサイズ(移植時点の初期)腫瘍において、以下のデータが得られた。20%タキソール担持サーモペーストで処置した腫瘍については、該腫瘍のサイズは330nm×597nmであるものと測定され、該腫瘍の極周辺は14個の血管を有しており、一方で該腫瘍塊は僅かに3?4本の小さな毛細血管をもつに過ぎない。非担持サーモペーストで処置した腫瘍については、該腫瘍のサイズは623nm×678nmであり、該腫瘍の極周辺は54個の血管を有しており、一方で該腫瘍塊は12?14本の小さな毛細血管を有している。更に、回りのCAM自体は、タキソールで処置した腫瘍の回りの領域と比較して、より多くの血管を含んでいた。
この研究は、サーモペーストが十分な量の血管形成阻害剤(この場合はタキソール)を放出して、腫瘍の成長および発生を伴う病理的な血管形成を阻害することを立証している。これらの状況の下で、血管形成は、周辺組織から該腫瘍塊への毛細血管の内部成長を誘発することのできる、血管形成ファクタを生産する該腫瘍細胞によって最大限刺激される。20%タキソール担持サーモペーストはこの過程を遮断し、該腫瘍組織の、十分な血液供給を維持する能力を制限することができる。これは、該腫瘍細胞自体に対する細胞毒性作用と、該組織に対して、その成長並びに分裂に必要な養分を枯渇させることの両者によって、該腫瘍塊の縮小を結果する。
実施例17:二十日ネズミ腫瘍モデルにおける、インビボでの腫瘍の成長に及ぼす血管形成阻害剤-担持サーモペーストの効果
二十日ネズミのMDAY-D2腫瘍モデルを使用して、化学療法剤および血管形成阻害化合物、例えばタキソールの局所的徐放の、腫瘍成長、腫瘍転移、および動物の生存性に及ぼす効果を調べることができる。このMDAY-D2腫瘍細胞系を、αmem培地中に5%の子牛血清を含む細胞懸濁液中で成育させる。この細胞を37℃にて5%の二酸化炭素を補充した湿潤雰囲気中でインキュベートし、十分な細胞が得られるまで、3日毎に15倍に希釈する。このインキュベーション期間の経過後、該細胞を光顕微鏡により、その生存性について検査し、次いで1500rpmにて5分間遠心処理する。該細胞にPBSを添加して、1ml当たり1,000,000細胞となるように希釈する。
10週齢のDBA/2j雌マウスを、その入手後3?4日間馴化させる。次いで、各マウスに、その後方側腹部に、PBS 100ml中の100,000MDAY-D2細胞を皮下注射する。以前の研究により、この手順が3?4日以内に該注射部位に肉眼視可能な腫瘍を生成し、14日後には1.0-1.7gのサイズに達し、注射後19-25日目に肝臓内に肉眼視可能な転移を発生することが示された。研究の目的に応じて、この疾患の進行の任意の時点で治療的介入を実施できる。
上記動物モデルを使用して、20匹のマウスに140,000MDAY-D2細胞を皮下注射し、該腫瘍を成長させる。5日目に、該マウスを5つの群に分ける。麻酔下に、該腫瘍部分を外科的に開いて、局部を該薬物担持サーモペーストまたはコントロールサーモペーストで、既存の腫瘍組織を妨害せずに処置し、該傷口を閉じた。5つの群に、未処置(単に傷口を閉じる)、ポリマー(PCL)のみ、10%タキソール担持サーモペーストで処置し、あるいは20%タキソール担持サーモペースト(動物4匹のみに注射)を該腫瘍部位近傍に移植した。16日目に該マウスを殺し、該腫瘍を切除し、腫瘍成長、腫瘍転移、該処置に起因する局所的および全身的有害性、創傷治癒に及ぼす作用、腫瘍血管分布の影響、および該切開部に残留する該ペーストの状態について検査(全体的にかつ組織学的に)した。
各動物に関する該腫瘍の重量を以下の表に示す。

20%のタキソールを担持するサーモペーストは腫瘍成長を、コントロール動物(平均重量0.681)と比較して、85%以上(平均重量0.105)だけ減少させた。サーモペーストのみまたは10%のタキソールを含有するサーモペーストで処置した動物は、腫瘍の成長に対して限られた効果のみを有し、腫瘍重量はそれぞれ僅かに10%および35%だけ減少させた(第21A図)。従って、20%のタキソールを担持するサーモペーストは、10%のタキソールを含有するサーモペーストよりも高い腫瘍成長阻害効果を示した(第21C図参照、第21B図をも参照のこと)。
サーモペーストは、投与部位において幾つかの動物に検出された。0.026g?0.078gの範囲の重量の変化するポリマーが、15匹のマウスのうちの8匹中に検出された。20%のタキソールを担持するサーモペーストを含む群における各動物は幾らかの残留ポリマーを含み、このことは該ポリマーが溶解し難いことを示唆している。組織学的に、タキソール担持サーモペーストで処置した腫瘍は低い細胞充実性を含み、かつコントロール腫瘍よりも多くの組織壊死部を含んでいた。血管系は減少し、内皮細胞はしばしば細胞分裂を停止しているものと考えられた。該タキソール担持サーモペーストは、該腫瘍を取り巻く皮膚または組織の保全性または細胞充実性に影響を与えるとは考えられなかった。全体的には、創傷の治癒は影響されなかった。
実施例18:癌切除外科手術中の腫瘍細胞の医原性転移播種の予防における、血管形成-阻害剤担持外科フィルムの使用
無菌で、柔軟な、伸縮性の薬物-ポリマー化合物は癌切除手術において有用であるから、切除手術中に悪性疾患組織から正常な周囲の組織を分離して、癌細胞による不注意な汚染による、該疾患の隣接器官への医原性の拡がりを防止することが望ましい。薬物担持パラフィルムは、該腫瘍の取扱い前に、正常な組織を横切って拡げることができた。これは、腸癌の切除手術中に、肝臓および他の腹部内容物の回りに配置すれば、該疾患の肝臓への腹膜組織内での拡がりを防止する上で最も有用である。生分解性フィルムをその場に残して、継続的な保護を達成することが可能であった。
切除部位は、また手術後の悪性疾患の再発の一般的な位置でもある。これは外科手術中の腫瘍細胞による該創傷部位の汚染によるものと考えられる。これらの問題を検討するために、実験を実施して、血管形成阻害剤-担持フィルムの、この現象を防止する能力を調べる。
A.材料および方法
外科用フィルムの調製:外科用フィルムは、実施例10におけるようにして調製する。約1cm×1cmのこのフィルムは、ポリマーのみ(PCL)または5%のタキソールを担持するPCLを含有するように調製する。
ラット肝腫瘍モデル:初期の研究では、体重約300gのウイスター(Wistar)ラットを全身麻酔し、中線に沿って3?5cmの腹部切開を行う。最大の肝葉において、肝臓の柔組織に1cmの切開を行い、該肝臓端部の一部を切除する。100mlのリン酸緩衝塩水に懸濁した、1×10^(6)の濃度の生きた9L神経膠腫細胞(この手順の直前に、組織培養物から溶出する)を、30ゲージの針を使用して該切断した肝臓端部に堆積させる。次いで、外科用フィルムを、該腫瘍細胞を含有する該切断肝臓端部上に配置し、ジェルフォームで所定の場所に固定する。2匹の動物には5%のタキソールを担持するPCLフィルムを、また他の2匹の動物にはPCLのみを含むフィルムを適用した。腹部壁を3.0デキソン(Dexon)と皮膚クリップとで閉じる。全身麻酔を終了して、該動物を覚醒させる。10日後に、該動物を殺し、その肝臓を組織学的に検査した。
B.結果
ポリマーのみで処置した2個の肝臓には、局部的な腫瘍の成長がみられる。ポリマー+タキソールで処置した肝臓両者は、組織学的に検査した場合に、全く腫瘍を含まなかった。同様に重要なことは、肝臓被膜が再生され、該ポリマーフィルム上に完全に成長したことであり、肝臓の切開した表面は、該フィルムが創傷の治癒に対して有意な効果がないことを示している。該外科用フィルム(薬物-担持または薬物を含まないフィルム)の何れの回りも、局所的肝毒性を示す証拠はなかった。
C.議論
この研究は、外科手術中の正常な組織および切開部位の回りに配置された外科用フィルムが、悪性腫瘍の切除中に、正常な周囲の組織への腫瘍細胞の偶発的な転移の発生率を減じることができることを示している。これは、該疾患の手術後の局所的再発という重大な問題の発生率を低下するのに役立つ。
実施例19:関節炎の治療における、血管形成阻害剤担持生分解性微小球の関節内注入
関節炎における関節の損傷は炎症(WBCsおよびWBS生成物を含む)とパンヌス組織発生(新血管組織、接続組織および炎症細胞上の複合組織)との組み合わせによるものである。初期の研究ではタキソールを選択した。というのは、これが強力な新血管形成阻害剤であるからである。このようにして、局所的高濃度のタキソールが関節炎における疾患の改良剤であることが証明されるであろう。
微小球が関節に有害な作用を及ぼすか否かを決定するために、以下の実験を実施した。簡単に説明すれば、純粋なPCLおよびタキソール担持微小球を前に実施例8で説明したようにして調製する。
3匹のラビットに、全体積0.2ml(0.5mgの微小球を含有する)で、0.5-5.0μm、10-30μmまたは30-80μmの微小球を関節内注入する。該関節を肉眼(臨床)的に、毎日評価する。2週間後、該動物を殺し、該関節を炎症の徴候およびプロテオグリカンの減少について組織学的に検査した。
このラビットを、炎症性関節炎および骨関節炎モデルとして使用して、微小球の利用による骨膜炎および軟骨劣化の軽減を評価する。変性型関節炎は、膝部の十字形靱帯および半月の部分的な裂けにより誘発される。4?6週間後、該ラビットは、ヒトの骨関節炎に観測されるのと同様な軟骨の侵食を生じる。炎症性関節炎は完全フロインドアジュバント(CFA)中の牛血清アルブミン(BSA)によりラビットを免疫化することにより誘発される。3週間後に、高力価で抗-BSA抗体を含むラビットに、BSA(5mg)を関節内注射する。7日目に関節の膨れと顕著な骨膜炎が現れ、7?14日目にプロテオグリカンの減少が見られ、また軟骨の侵食が4?6週目に観測される。
炎症性関節炎は上記のようにして誘発される。4日後に、5%のタキソールまたはビヒクルを含有する微小球を注入する。一群の動物を14日後に、またその他の動物を28日後に殺す。その関節を、炎症および軟骨の減少につき組織学的に検査する。この実験は、タキソール担持微小球が関節の炎症および軟骨の減少に影響を与えるか否かを決定するように工夫されている。
血管形成阻害剤担持微小球を、更に骨関節炎モデルにおいて研究する。簡単に説明すれば、変質性関節炎を上記のようにラビット中に誘発し、4日目に、関節に微小球(5%のタキソールまたはビヒクルのみ)を関節内注入する。これらの動物を21日目および42日目に殺し、軟骨劣化の徴候につき該関節を組織学的に調べる。
軟骨保護剤としての血管形成阻害剤を関節内放出する微小球を評価するために研究を実施する。
結果
種々のサイズ(0.5-5.0μm、10-30μmまたは30-80μm)をもつ非-担持PCL微小球をラビットの膝関節に関節内注入した。これら実験の結果を第22A?D図に示した。簡単に説明すれば、第22A図はPBSを注入した関節由来の骨膜の写真である。第22B図は微小球を注入した関節の写真である。第22C図はPBSを注入した関節由来の軟骨の写真である。また、第22D図は微小球を注入した関節由来の軟骨の写真である。
これらの写真から理解されるように、組織学的には、微小球注入関節と注入されていない関節との間には違いはみられない。臨床的には、この実験を実施した14日間には、関節の炎症の徴候は見られなかった。全体的には、未処置の正常な関節と比較して、微小球を注入した関節中の関節の炎症または軟骨の損傷の徴候は見られない。
結論
微小球は、関節表面に認め得る何の変化を生ずることなく、関節内に注入できる。このことは、この方法が疾患に罹った関節に、疾患-改善薬を正確に持続的放出する有効な手段であり、一方でこのような生物学的に活性を化合物の全身的な投与に関連すると思われる毒性を最小化できることを示している。
上で論じた如く、微小球は、規定された薬物放出速度をもつ、特定のサイズで処方できる。タキソールが強力な血管形成阻害剤であり、かつCAMアッセイにおいて新血管形成を遮断するのに十分な量で微小球から放出されることも立証される。従って、血管形成阻害剤担持(例えば、タキソール担持)微小球の関節内投与は、疾患例えばリュウマチ性関節炎を生じ、該関節における軟骨の破壊に導く新血管形成を遮断できるはずである。このように、薬物担持微小球は「軟骨保護剤」として機能し、該薬物は、新血管性パンヌス組織の侵入に起因する不可逆的な破壊から、軟骨を保護する。
上記説明から、本発明の特定の態様を説明の目的で記載してきたが、本発明の精神並びに範囲を逸脱することなく、種々の改良が可能であると理解すべきである。従って、本発明は添付した請求の範囲によってのみ限定される。


(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントであって、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成ファクタで被覆されている、ほぼ管状の構造を有する、ステントであって、該抗血管形成ファクタがタキソールであり、かつ、該ステントが該身体通路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステント。
【請求項2】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントであって、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成ファクタで被覆されている、ほぼ管状の構造を有する、ステントであって、該抗血管形成ファクタがミトザントロンである、ステント。
【請求項3】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントであって、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成ファクタで被覆されている、ほぼ管状の構造を有する、ステントであって、該抗血管形成ファクタが、メタロプロテイナーゼ阻害剤である、ステント。
【請求項4】前記抗血管形成ファクタが、BB94である、請求項3に記載のステント。
【請求項5】前記抗血管形成ファクタが、1つ以上のポリマーをさらに含む、請求項1?4のいずれか1項に記載のステント。
【請求項6】前記ポリマーが生分解性のポリマーである、請求項5に記載のステント。
【請求項7】前記ポリマーが非生分解性のポリマーである、請求項5に記載のステント。
【請求項8】前記ポリマーがアルブミンまたはゼラチンである、請求項5に記載にステント。
【請求項9】前記ポリマーがセルロースである、請求項5に記載のステント。
【請求項10】前記ポリマーが多糖類である、請求項5に記載のステント。
【請求項11】前記ポリマーがポリ(D,Lラクチド)である、請求項5に記載のステント。
【請求項12】前記ポリマーがポリ(グリコリド)である、請求項5に記載のステント。
【請求項13】前記ポリマーがポリ(カプロラクトン)である、請求項5に記載のステント。
【請求項14】前記ポリマーがEVAコポリマーである、請求項5に記載のステント。
【請求項15】前記ポリマーがシリコーンまたはポリ(メチルメタクリレート)である、請求項5に記載のステント。
【請求項16】前記ステントが血管ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項17】前記ステントが胆管ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項18】前記ステントが尿道ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項19】前記ステントが食道ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項20】前記ステントが気管/気管支ステントである、請求項1?15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項21】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を直接固定する工程を包含し、該抗血管形成性組成物が、タキソールを含み、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項22】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物で被覆された糸を織り込む工程を包含し、該抗血管形成性組成物が、タキソールを含み、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項23】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、ステントをスリーブまたはメッシュ中に挿入する工程を包含し、該スリーブまたはメッシュが、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を含むか、または抗血管形成性組成物で被覆されており、該抗血管形成性組成物が、タキソールを含み、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項24】前記抗血管形成性組成物が、抗血管形成ファクタおよびポリマーを含む、請求項21?23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、ステントを抗血管形成ファクタを吸収する物質で被覆する工程、および該抗血管形成ファクタを該ステントに吸収させる工程を包含し、ここで該抗血管形成ファクタが該ステントの閉塞を防止し、該抗血管形成ファクタがタキソールであり、かつ、該ステントが該身体経路の再発性狭窄を処置または予防するために使用される、ステントの製造方法。
【請求項26】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該方法は、
(a)該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を直接固定する工程;または
(b)該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物で被覆された糸を織り込む工程;または
(c)ステントをスリーブまたはメッシュ中に挿入する工程であって、該スリーブまたはメッシュが、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を含むか、または抗血管形成性組成物で被覆されている、工程;または
(d)ステントを抗血管形成ファクタを吸収する物質で被覆して、該抗血管形成ファクタを該ステントに吸収させ、該抗血管形成ファクタによって該ステントの閉塞を防止する、工程;
を包含し、
工程(a)?(c)における該抗血管形成性組成物が、抗血管形成ファクタおよびポリマーを含み、
工程d)における抗血管形成ファクタがミトザントロンである、方法。
【請求項27】身体通路の管腔の開放状態を維持するためのステントの製造方法であって、該方法は、
(a)該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を直接固定する工程;または
(b)該ステントに該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物で被覆された糸を織り込む工程;または
(c)ステントをスリーブまたはメッシュ中に挿入する工程であって、該スリーブまたはメッシュが、該ステントの閉塞を防止するための抗血管形成性組成物を含むか、または抗血管形成性組成物で被覆されている、工程;または
(d)ステントを抗血管形成ファクタを吸収する物質で被覆して、該抗血管形成ファクタを該ステントに吸収させ、該抗血管形成ファクタによって該ステントの閉塞を防止する、工程;
を包含し、
工程(a)?(c)における該抗血管形成性組成物が、抗血管形成ファクタおよびポリマーを含み、
工程(d)における抗血管形成ファクタが、メタロプロテイナーゼ阻害剤である、方法。
【請求項28】前記抗血管形成ファクタが、BB94である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】前記ポリマーが生分解性のポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項30】前記ポリマーが非生分解性のポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項31】前記ポリマーがアルブミンまたはゼラチンである、請求項24に記載に方法。
【請求項32】前記ポリマーがセルロースである、請求項24に記載の方法。
【請求項33】前記ポリマーが多糖類である、請求項24に記載の方法。
【請求項34】前記ポリマーがポリ(D,Lラクチド)である、請求項24に記載の方法。
【請求項35】前記ポリマーがポリ(グリコリド)である、請求項24に記載の方法。
【請求項36】前記ポリマーがポリ(カプロラクトン)である、請求項24に記載の方法。
【請求項37】前記ポリマーがEVAコポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項38】前記ポリマーがシリコーンまたはポリ(メチルメタクリレート)である、請求項24に記載の方法。
【請求項39】前記ステントが血管ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】前記ステントが胆管ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】前記ステントが尿道ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】前記ステントが食道ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】前記ステントが気管/気管支ステントである、請求項21?38のいずれか1項に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2006-02-15 
出願番号 特願平7-504823
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (A61M)
最終処分 取消  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 一色 貞好
稲村 正義
登録日 2003-04-25 
登録番号 特許第3423317号(P3423317)
権利者 アンジオテック ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド ザ ユニヴァーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
発明の名称 抗-血管形成性組成物およびそれにより被覆されたステント  
代理人 魚住 高博  
代理人 山本 秀策  
代理人 竹本 松司  
代理人 山本 秀策  
代理人 湯田 浩一  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 手島 直彦  
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