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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20061739 審決 特許
不服200629059 審決 特許
判例 特許

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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1179902
審判番号 不服2007-22524  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-15 
確定日 2008-06-19 
事件の表示 特許権存続期間延長登録願2006-700067拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.本件特許及び本件発明
特許第2135990号(以下、「本件特許」という。)は、昭和62年特許願29997号(出願日 昭和62年2月12日)の一部を分割出願したものであって、平成8年3月13日に出願公告され、平成10年4月24日に特許権の設定登録がされたものである。
その特許に係る発明は、出願公告された明細書(特公平8-25905号公報)及び特許法(平成6年法律第116号による改正前。)第64条の規定により補正された特許請求の範囲の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1、10に記載された以下のとおりのものである。

【請求項1】
2-[[3-メチル-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-ピリジル]メチルスルフィニル]ベンツイミダゾールを含有してなる医薬固形組成物用であるマグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩からなる安定化剤。

【請求項10】
マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩を配合してなる2-[[3-メチル-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-ピリジル]メチルスルフィニル]ベンツイミダゾールの医薬固形組成物の安定化方法。

2.本件出願
本件特許権の存続期間延長登録の出願(以下「本件出願」という。)は平成18年9月4日に出願され、平成19年7月9日付けで拒絶査定がされ、平成19年8月15日に審判請求がされたものである。
本件出願の願書には、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったその政令で定める処分として、以下の内容が記載され、下記のa?eの資料が添付されている。

(1)延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認についての同条第7項に規定する医薬品製造承認事項一部変更承認
(2)処分を特定する番号
承認番号: 21400AMZ00223000
(3)処分を受けた日
平成18年(2006年)6月15日
(4)処分の対象となった物
ランソプラゾール
(5)処分の対象となった物について特定された用途
非びらん性胃食道逆流症

提出資料
a.平成8年特許出願公告第25905号公報写し
b.承認書
i) 医薬品製造承認事項一部変更承認書(平成18年6月15日承認)
21400AMZ00223000(含医薬品製造承認申請書、および別紙)該当部分写し
ii)医薬品製造承認書(平成4年10月2日承認)
承認番号(04AM)第1103号(含医薬品製造承認申請書、および別紙(1)、及び別紙(2)およびその別紙)該当部分写し
iii)医薬品製造承認書(平成4年10月2日承認)
承認番号(04AM)第1104号(含医薬品製造承認申請書、および別紙(1)、(2)および(3)およびその別紙、別紙規格(1)および(2))該当部分写し
iv)医薬品製造承認事項一部変更承認書(平成12年9月22日承認)
承認番号20400AMZ01104000(含医薬品製造承認申請書、およびその別紙)該当部分写し
v)医薬品製造承認書(平成14年3月11日承認)
承認番号21400AMZ00223000(含医薬品製造承認申請書)該当部分写し
c.治験計画届(AG-1749/CCT-206)写し
d.特許第2135990号特許登録原簿写し
e.タケプロンOD錠15の添付文書情報写し

また、請求人は原審および当審において以下の参考資料を提出した。

参考資料B:
武田社のホームページの医療用医薬品情報中、「ランソプラゾール発見の経緯と製剤化の工夫」の「4.製剤化における問題点とbreakthrought」を記載した頁のプリントアウト
参考資料C:
タケプロンOD錠15・30製品ブローシュア(製品カタログ)「Takepron」(武田医薬品工業株式会社発行)
参考資料D:
タケプロンOD錠15・30製品ブローシュア「タケプロンOD錠が誕生するまで」(武田薬品工業株式会社発行)
参考資料Y1:
「改正特許法解説」(新原浩朗著、有斐閣発行、昭和62年9月30日)第97頁の写し
参考資料Y2:
特許庁審査基準「第VI部 特許権の存続期間の延長」第5?6頁
参考資料Y3:
特許庁ホームページ「特許権の存続期間の延長制度に関するQ&A」第1?4頁

3.原審の拒絶の理由の概要
原査定の理由は、本件特許は、特許発明の実施について本件処分を受ける必要があったものであるとは認められないから、特許法67条の3第1項1号に該当し、延長登録を受けることができないというものである。

4.当審の判断

特許法第67条第2項には「特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、5年を限度として、延長登録の出願により延長することができる」と規定されている。
そして、「存続期間が延長された場合の特許権の効力」として同法68条の2第2項には
「特許権の存続期間が延長された場合(第67条の2第5項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第67条第2項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」
と規定されている。
してみれば、特許法67条の3第1項1号の「その特許発明の実施に第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき」とは「特許発明の実施について処分の対象となった物、用途の観点から処分を受ける必要があったとは認められないとき」を指すと解すべきである。すなわち、処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての実施の禁止が解除された範囲と特許発明の実施の範囲との重複が無い場合には、その処分は本件特許発明の実施に必要なものではないということになる。
そして、上記68条の2の「物」「用途」は、薬事法上の医薬品の製造承認(処分)の場合には、それぞれ「有効成分」「効能効果」を意味すると解釈すべきものであり(知財高裁平成17年(行ケ)第10345号審決取消請求事件判決、知財高裁平成18年(行ケ)10311号判決を参照)、67条の3第1項1号にいう「特許発明の実施」とは、同法第2条第3項に以下のように規定される行為をいうものと解される。

「この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
1.物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
2.方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
3.物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

そこで、まず、請求項1について検討する。
提出資料eの【有効成分に関する理化学的知見】の記載によれば、化学名が「2-[[3-メチル-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-ピリジル]メチルスルフィニル]ベンツイミダゾール」の化合物は一般名「ランソプラゾール」と同一の化合物であるから、請求項1に係る発明は「ランソプラゾールを含有してなる医薬固形組成物用であるマグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩からなる安定化剤。」と言い換えることができる。そして、これは「安定化剤」という物についての発明であるから、その実施とは、上記安定化剤の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為である。

一方本件処分は以下の薬事法第14条に基づく医薬品の承認である。
「 医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品及び第23条の2第1項の規定により指定する体外診断用医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)、厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品又は医療機器(一般医療機器及び同項の規定により指定する管理医療機器を除く。)の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」
そして、本件処分である、承認番号:21400AMZ00223000の対象となった有効成分(物)は「ランソプラゾール」であり、処分の対象となった物について特定された効能効果(用途)は「非びらん性胃食道逆流症」である。
そうすると、本件処分は「非びらん性胃食道逆流症」に使用される「ランソプラゾール」の実施についてその禁止を解除するものであるが、その実施の範囲は上述した請求項1に係る発明の実施の範囲となんら重複するところがなく、したがって、請求項1に係る発明の実施に当該処分が必要であったとすることはできない。

次に請求項10をみるに、当該発明は「マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩を配合してなるランソプラゾールの医薬固形組成物の安定化方法。」と言い換えることができる「方法の発明」である。したがって、その実施はマグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩を配合するというランソプラゾールの医薬固形組成物の安定化方法を使用する行為である。
しかし、上記のとおり、本件処分において解除されたのは、「非びらん性胃食道逆流症」に使用される「ランソプラゾール」についての実施であるから、請求項10に係る発明の上記の実施とは何ら重複するところはなく、したがって、当該発明の実施のために本件処分が必要であったとすることはできない。

請求人は、請求項10は、文言上、安定化方法と記載されているが、実質的には『マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩を配合してなるランソプラゾールの医薬固形組成物を安定化させた状態で製造する方法』という製造方法、より具体的には、ランソプラゾールを安定化させた状態で配合する工程を含むランソプラゾール含有医薬の製造方法に関する発明であるとし、参考資料Bによれば、「タケプロンOD錠15」の主薬層の安定化剤として「炭酸マグネシウム」が使用されていることは当業者には自明であるとする。
しかしながら、本件請求項10に係る発明が上記のとおり「方法の発明」であることはその文言から明らかであり、これを「医薬の製造方法」と解すべき理由はない。そして、本件の方法の発明が処分の対象となった医薬品の製剤化工程の一部に組み込まれているとしても、それをもって本件方法の発明を「医薬の製造方法」の発明ということはできないし、医薬の安定化方法の発明に医薬を製造する方法と同様の実施の範囲を認めるべき根拠とすることもできない。

したがって、本件処分は請求項1、10いずれの発明の実施においても必要であったということはできない。

5.結び
以上のとおり、本件出願に係る医薬品に対する処分は本件特許発明の実施に必要な処分であったとは認められないから、本件出願は、特許法第67条の3第1項第1号の規定に該当する。
 
審理終結日 2008-04-15 
結審通知日 2008-04-22 
審決日 2008-05-08 
出願番号 特願2006-700067(P2006-700067)
審決分類 P 1 8・ 71- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 明子齋藤 恵  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 塚中 哲雄
星野 紹英
発明の名称 医薬固形組成物用安定化剤および安定化方法  
代理人 小林 浩  

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