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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1180254
審判番号 不服2004-15553  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-26 
確定日 2008-06-25 
事件の表示 平成 6年特許願第147438号「証券取引処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月 7日出願公開、特開平 7- 36979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年6月29日の出願(パリ条約による優先権主張 1993年7月1日 イギリス国)であって、平成15年7月15日付けの拒絶理由通知がなされ、これに対して、平成16年1月21日付けで手続補正がなされたが、同年4月16日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年7月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年8月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年8月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
平成16年8月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を以下のように補正するものである。
「【請求項1】
複数種類の手書き情報を含む証券を受け付けて取引処理を行なう処理装置を備える取引処理装置であって、
当該取引処理装置において処理される前記複数種類の証券の証券特徴モデルを格納した証券定義ファイルと、
前記証券の画像データを作成する画像形成装置と、
前記画像データの図形的特徴を記憶する特徴識別ファイルと、
画像処理プログラムと、
前記証券の取引終了時に前記手書き情報を含む領収書を印刷する印字機構と、
制御ソフトウェアに基づいて前記取引処理を制御する処理手段と、を備え、
前記処理手段は、
(a)前記画像処理プログラムに基づいて、前記特徴識別ファイルに格納された処理すべき証券の図形的特徴を前記証券定義ファイルに格納された証券特徴モデルと比較することにより、当該証券の種類と前記取引処理装置によって行われる取引業務の種類を識別する処理と、
(b)前記取引業務の種類を表す取引データを作成して前記取引業務を実行する処理と、
(c)前記取引業務の種類を表す前記手書きの画像データの一定部分と前記取引業務の種類を表す前記取引データの一定部分を選択して、当該取引業務の領収書の印字データを作成する処理と、の各処理を行なうことを特徴とする取引処理装置。」

(2)本件補正に対する判断
(2-1)本件補正の前の特許請求の範囲は、平成16年1月21日付手続補正によるものであって、次のとおりのものである。
「【請求項1】
顧客が取引処理装置を用いて行う取引に関して、手書き情報を有する証券を受け付けて処理する処理装置を具備する取引処理装置において、
前記処理装置が、
前記証券から手書きの画像データを作成する画像形成装置と、
前記取引の終了時に前記顧客に対して前記取引処理装置から排出される領収書に前記手書きの画像データを印刷する印字機構と、
(a)処理中の証券の種類と前記取引処理装置によって行われる取引業務の種類を識別し、
(b)実行中の取引業務の種類を表す取引データを作成することにより、顧客が要求する種類の取引業務を実行し、
(c)実行中の取引業務の種類を表す前記手書きの画像データの一定部分を選択し、
(d)実行中の取引業務の種類を表す前記取引データの一定部分を選択し、
(e)選択された取引業務が前記取引処理装置によって実行されたことを前記顧客が確信できるように、前記手書きの画像データの前記一定部分と前記取引データの前記一定部分を前記領収書に印刷するために用いるプロセッサおよびオペレーティングソフトウェアと、からなることを特徴とする取引処理装置。
【請求項2】
単一の取引の一部として複数の証券を受け付けて処理し、前記複数の証券のそれぞれから引き出された複数の前記手書きの画像データを1つの前記領収書に対して印刷することを特徴とする請求項1に記載の取引処理装置。
【請求項3】
(a)取引処理装置(以下「装置」とする)のユーザを識別する段階と、
(b)前記装置に挿入された手書き情報を有する証券に関して顧客が実行を要求した取引業務の種類を指示する段階と、
(c)前記証券から手書きの画像データを作成する段階と、
(d)実行される取引業務の種類を表す取引データを作成することにより、前記顧客が要求した種類の取引業務を実行する段階と、
(e)実行された取引業務の種類を表す前記手書きの画像データの一定部分を選択する段階と、
(f)実行中の取引業務の種類を表す前記取引データの一定部分を選択する段階と、
(g)選択された取引業務が前記装置によって実行されたことを前記顧客が確信できるように、前記手書きの画像データの前記一定部分と前記取引データの前記一定部分を前記顧客に排出される領収書に印刷する段階と、からなる前記装置に挿入された前記証券に対して一定の取引が行われたことを確認する方法。
【請求項4】
単一の取引の一部として複数の証券を受け付けて処理し、前記複数の証券のそれぞれから引き出された複数の前記手書きの画像データを1つの前記領収書に対して印刷することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(a)取引処理装置(以下「装置」とする)に手書き情報を有する証券を挿入する段階と、
(b)前記証券に関して前記装置に要求された取引業務の種類を指示する段階と、
(c)要求された取引業務を実行する段階と、
(d)要求された種類の取引業務が前記装置によって実行されたことを前記装置のユーザが確信できるように、前記手書き情報を有する充分な画像データと充分な取引データを印刷した領収書を発行する段階と、からなる前記装置に挿入された前記証券に対して一定の取引が行われたことを確認する方法。
【請求項6】
単一の取引の一部として複数の証券を受け付けて処理し、前記複数の証券のそれぞれから引き出された複数の前記手書きの画像データを1つの前記領収書に対して印刷することを特徴とする請求項3に記載の方法。」

(2-2)検討
本件補正は前記のとおりのものであって、その補正の前後の内容を対比してみると、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明を補正したものと認められるが、前記請求項1に係る補正は、新たに発明の構成に欠くことができない事項である「取引処理装置において処理される前記複数種類の証券の証券特徴モデルを格納した証券定義ファイル」、「画像データの図形的特徴を記憶する特徴識別ファイル」、「画像処理プログラムに基づいて、前記特徴識別ファイルに格納された処理すべき証券の図形的特徴を前記証券定義ファイルに格納された証券特徴モデルと比較する」ことを追加するものである。
また、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である「(b)実行中の取引業務の種類を表す取引データを作成することにより、顧客が要求する種類の取引業務を実行し」を「(b)前記取引業務の種類を表す取引データを作成して前記取引業務を実行する」と補正するものであり、補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項である「顧客が要求する」ことを削除するものである。
よって、当該補正は特許法第17条の2第3項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を行う補正であって、請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において、その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定する補正には該当せず、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、上記各補正が、請求項の削除、誤記の訂正、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでないことも明らかである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年8月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至6に係る発明は、平成16年1月21日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりものであるところ、請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「(a)取引処理装置(以下「装置」とする)に手書き情報を有する証券を挿入する段階と、
(b)前記証券に関して前記装置に要求された取引業務の種類を指示する段階と、
(c)要求された取引業務を実行する段階と、
(d)要求された種類の取引業務が前記装置によって実行されたことを前記装置のユーザが確信できるように、前記手書き情報を有する充分な画像データと充分な取引データを印刷した領収書を発行する段階と、からなる前記装置に挿入された前記証券に対して一定の取引が行われたことを確認する方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4-314170号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。

(ア)「【請求項5】所定位置に金額が記入された小切手の紙面を読取って前記小切手の画像イメージを出力する小切手読取手段と、前記画像イメージから記入された前記金額をパターン認識によって判別して判別金額を得る記入金額判別手段と、前記画像イメージ及び前記判別金額を画面に表示する画像表示手段と、操作に応答して取込指令または取消指令を発生する指令信号発生手段と、前記取込指令に応じて前記判別金額を前記小切手に磁気インクで印字する印字手段と、前記取込指令に応じて少なくとも前記画像イメージ及び前記判別金額を情報記録媒体に記録する記録手段と、前記取込指令に応じて前記画像イメージの少なくとも一部及び前記判別金額を表示したレシートを発行するレシート発行手段と、前記取込指令に応じて前記判別金額が印字された前記小切手を保管容器に収納する収納手段と、前記取消指令に応じて投入された前記小切手を返却する返却手段とを備えたことを特徴とする自動小切手受付装置。」(【請求項5】)

(イ)「【0008】一方、顧客にしてみれば、封筒入金による小切手受付を行うと自己申告した金額のみを記入したレシートを受取るだけで具体的な小切手の明細が不明確である。このため、小切手処理段階でのトラブルに対する補償が十分に行われない可能性がある。また、営業店の窓口に持参し、レシートを受取るまで時間を要する。入金の確定も2?3日を要し、その間資金として活用することが出来ないので小切手処理の時間短縮が望まれる。」(段落【0008】)

(ウ)「【0021】図1は、小切手受付機1の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、同図において2は顧客が挿入したIDカードの記録情報を読取るカード読取機、3はマイクロプロセッサ等によって構成され、情報処理と各部機構の制御を行う制御部、4は制御部3からの指令によって開閉する小切手の投入口、5は投入口にセットされる小切手、6は小切手5のパターンを読取る画像読取機、7は小切手を一旦留めておき、キャンセルの指令がなされたときに返却口18に返却するための一時保留部、8は読取った小切手の画像、キーボード、入力金額、インフォメーション等を表示するCRT、9は金額、承認、非承認、金額訂正、金額OK等の指令を入力するタッチパネル、10はロール状になった感熱記録紙、11は感熱ヘッドによって構成され、受取小切手の縮小画像や手入力金額等を印字するレシート発行部、12は小切手に磁気インクで文字を印字する印字部、13は小切手に磁気インクで印字された文字、例えば小切手の振出銀行を読取るMICR、14は振出銀行毎に小切手の収納容器を選別するための切替器、15は複数の取出交換容易な小切手収納容器を持つ小切手収納部、16は顧客の投入した小切手を区分けするために、最後の小切手の後に挟み込むスリップを送り出すスリップ発行部であり、印字部12によって投入された小切手の合計金額等の所定事項がこのスリップに印字される。17は受付けた小切手の画像及び入力金額等を光磁気記録ディスクに記録する光磁気記憶装置、19は小切手を投入口4から一時保留部7へ、一時保留部7から小切手収納部15あるいは返却口18へ運ぶ図示しない搬送機構であり、重送防止機構、送りローラ対、ベルト、ペーパーガイド、バキューム、紙葉検出センサ等の周知搬送手段によって構成される。また、搬送機構19は、スリップ発行部16からスリップが送出されるとこれを小切手収納部15に搬送する。
【0022】制御部3は、上記した画像イメージを記憶する画像メモリ、タッチパネル9から供給された入力金額を記憶するメモリ、MICR13によって読取られた小切手の振出元を判別し、切替器14を制御して振出元に対応する収納容器に読取り小切手を投入させる振出元読取プログラム、画像イメージを処理して小切手に記載された手書金額を読取るパターン認識プログラム、光磁気記憶装置とデータを送受するインタフェース、外部のホストコンピュータとデータの送受を行うインタフェース等から構成される。
【0023】図2は、上記装置内に形成される機能をまとめたブロック図であり、IDカードの内容を読取ってこれを制御手段103に提供するカード読取り手段102はカード読取機2に、制御手段103による制御によって動作して小切手及びスリップを目的位置に搬送する搬送手段119は搬送機構19に、小切手の紙面を読取って得られる読取信号を制御手段103に供給してそのメモリに画像イメージを生成させる画像読取手段106は画像読取機6に、読取った画像イメージの金額記載領域部分に記載された手書数値を判別する金額数字認識手段113は制御手段103のMPUが実行するパターン認識プログラムにより実現される。顧客が入力した投入小切手の記載金額を制御手段103に転送する金額入力手段109はタッチパネル9に、顧客の手入力金額あるいはパターン認識によって判別した記載金額を小切手下部の所定位置に磁気インクで印字する印字手段112は印字部12に、制御手段103から転送される小切手の画像イメージ、入力金額、インデックス情報等を、例えばビデオ信号とデジタル信号とを担うビデオフォーマット信号として書替可能な光磁気ディスクに記録する記録手段117は光磁気記憶装置17により実現される。制御手段103からの指令に応じて小切手を分類して収納する収納手段115は切替器14及び小切手収納部15により実現される。投入した小切手の金額等の承認、非承認を制御手段103に指令する指定手段118はタッチパネル9に、小切手収納容器に積層して収納される小切手を顧客毎に区分けをするためのスリップを制御手段103の指令に応じて差し込む顧客区別用スリップ発行手段116はスリップ発行部16により実現される。
【0024】小切手受取装置の各部動作制御、信号処理、演算処理、画像表示制御、印字制御、外部装置とのデータ伝送等を行う制御手段103は、MPU、メモリ等によって構成される制御部3により実現される。制御手段103から供給される文字、画像等の二次元の情報を表示する表示手段はCRT8により実現される。制御手段103から供給される文字、数字、画像等の二次元の情報をレシートに印刷するレシート発行手段111は、感熱記録紙10及びレシート発行部11によって実現される。
【0025】次に、小切手受付装置1の動作を図3乃至図5に示されるフローチャートを参照して説明する。装置に電源が投入されエラーチェック等の初期動作が完了すると小切手受付装置1は待機状態となり、制御部3はIDカードの挿入を監視する(ステップS11)。顧客がカード読取装置2に予め装置を設置した銀行により発行されたIDカードを挿入すると(ステップS11)、制御部3は図示しないチェックプログラムを実行し、IDカードの真偽を確認する。小切手受付装置を利用できない者のIDカード等が挿入された場合には、カードを返却し(ステップS42)、待機状態に戻る(ステップS11)。
【0026】制御部3は、利用可能者のIDカードが挿入されるとガイド情報及びキーボード表示をCRT8に転送し、暗証番号を入力するように案内表示をさせる。
暗証番号がタッチパネル9から入力されると(ステップS13)、入力番号がIDカード記載の番号と一致するか照合する(ステップS14)。一致しない場合には(ステップS14)、カードを返却し(ステップS42)、待機状態に戻る暗証番号が一致すると(ステップS14)、制御部3は投入口4のシャッタを開け、スタッカに小切手を乗せるように案内をCRT8に表示させる。
顧客が小切手をスタッカに載置すると、図示しないセンサによって載置が検出される(ステップS15)。
【0027】制御部3が、小切手の載置を判別すると、投入口4のシャッタを閉め、スタッカ最下部の小切手の一枚を取込むように搬送機構19に指令する。搬送機構19はこの小切手を画像読取機6に運ぶ(ステップS16)。画像読取機6は、小切手を移動させてその画像を読取りセンサで走査し、読取信号を得る。画像イメージを担う上記読取信号が制御部3に供給されると、制御部3はこれを画像メモリに記憶する。この小切手の画像イメージは同期信号と共にCRT8に供給され、画面の一部に適当な大きさで表示される。画面の他の部分にはタッチパネルに触れて小切手記載の金額を入力するように案内が表示される(ステップS18)。制御部3は、図示しない数値入力プログラムによってタッチパネル9から記載金額が入力レジスタに設定されたことを判別すると(ステップS19)、入力金額記憶メモリに記憶させる。この金額はCRT8の小切手画像の近傍に照合が容易になるように表示される。顧客は入力をエラーしたとき、クリアエンタキーに触れて、一時記憶されている金額をクリアし、再度入力を繰り返す(ステップS19,S20)。上記載置を検知するセンサが小切手の残りがあることを検知していると(ステップS21)、制御部3は、ステップ16から21を繰り返して小切手の取込み、画像表示、金額入力の受入れを繰り返す。」(段落【0021】-【0027】)

(エ)「【0033】一方、ステップS33?S39の処理に平行して、制御部3は、画像メモリに記憶した各小切手の画像イメージ及び入力金額等のデータを光磁気記憶装置に17に転送する。これにより、受け付けた小切手の記録が光磁気記録ディスクに保存される。上記光磁気記録ディスクは磁気インクで記載された金額と小切手上の手書き金額が一致することを確認する為のプルーフ機にかけられた後一定期間保管され、必要に応じて記録内容が読み出される(ステップS40)。また、制御部3は、画像メモリに記憶した各小切手の画像イメージ及び入力金額、受付日時、取扱番号等のデータをレシート発行部11に順次転送し、上記小切手の画像イメージを縮小して記録紙に印刷させ、この画像の近傍にこの小切手の入力金額を印刷させる。従って、レシートには投入した小切手の全部の読取画像、入力金額、受付日時、照会の参考となる取扱番号等が印刷される。
【0034】上述したスリップ繰出し、ディスク記録、レシート発行が終了すると、小切手の取引記録データを磁気ディスク等の図示しない記憶装置に記録し、あるいはホストコンピュータに転送し、IDカードを返却する(ステップS42)。
【0035】こうして、小切手受付処理を終了すると待機状態(ステップS11)に戻り、次の顧客の利用を待つ。
【0036】光磁気記憶装置の情報記録媒体に蓄積された取引データは、バッチ処理により、あるいはオンラインによってホストコンピュータで処理される。小切手収納容器が搬入される銀行のプルーフセンタでは、オペレータは磁気インクで印字された小切手の金額をMICRに読取らせ、更に音声変換させる。そして、視認した小切手記載の手書金額と一致するかを確認し、顧客の金額入力エラーをチェックする。金額入力にエラーがあるものは、オペレータが訂正する。
【0037】上記構成において、顧客による金額入力を手書き文字パターン認識処理によって自動化し、取扱を容易化することが可能である。このような制御態様の例を図6を参照して説明する。
【0038】まず、同図に示されるステップS101?S106で図3に示されるステップS18?S20が置換される。即ち、読取った小切手の画像イメージが画像メモリに記憶されると(ステップS17)、制御部3のパターン認識プログラムが起動する。予め定められている上記画像メモリの金額記載領域においてパターン認識処理が行われて一定の判別結果を得る(ステップS101)。制御部3は、判別した数値をCRT18に転送し、これを小切手の読取り像と共に表示させる。このとき画面には金額を訂正する否かの案内が併せて表示される。顧客は、小切手に記載された金額と、機械が認識した金額とを比較する。顧客によって承諾を意味する「OK」の指令がタッチパネル9から発せられると(ステップS103、S104)、判別した金額が入力金額記憶メモリに転送される(ステップS106)。」(段落【0033】-【0038】)

上記摘記事項(ア)、(ウ)、(エ)の記載事項や技術常識に照らしてみれば、引用例には自動小切手受付装置が要求された取引業務を実行することが記載されていると認められる。

上記摘記事項(エ)には、「画像メモリに記憶した各小切手の画像イメージ及び入力金額、受付日時、取扱番号等のデータをレシート発行部11に順次転送し、上記小切手の画像イメージを縮小して記録紙に印刷させ、この画像の近傍にこの小切手の入力金額を印刷させる。従って、レシートには投入した小切手の全部の読取画像、入力金額、受付日時、照会の参考となる取扱番号等が印刷される」と記載されている。このレシートの発行は、要求された取引業務が自動小切手受付装置によって実行されたことをユーザが確信できるようにし、また、小切手に対して一定の取引が行われたことを確認するものであることは明らかであると認められる。
また、レシートに印刷される情報は、小切手の全部の読取画像、入力金額、受付日時、照会の参考となる取扱番号であり、これらの情報は、充分な画像データと充分な取引データであるといえる。

そうすると、引用例には、
「(a)自動小切手受付装置に手書金額を有する小切手を挿入する段階と、
(c)要求された取引業務を実行する段階と、
(d)要求された取引業務が前記装置によって実行されたことを前記装置のユーザが確信できるように、充分な画像データと充分な取引データを印刷したレシートを発行する段階と、からなる前記装置に挿入された前記小切手に対して一定の取引が行われたことを確認する方法。」
との発明(以下「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「レシート」は、本願発明の「領収書」に相当する。
また、引用例発明の小切手は有価証券の一種であり、小切手に書かれる手書金額は手書き情報であるから、引用例発明の「手書金額」、「小切手」は、本願発明の「手書き情報」、「証券」にそれぞれ相当する。
また、引用例発明の自動小切手受付装置は、顧客により取引業務の種類が要求されるものではないが、小切手という有価証券の取引処理をする装置であるから、本願発明の取引処理装置に対応するものであるといえる。

そうすると、本願発明と引用例発明とは、
「(a)取引処理装置(以下「装置」とする)に手書き情報を有する証券を挿入する段階と、
(c)要求された取引業務を実行する段階と、
(d)要求された取引業務が前記装置によって実行されたことを前記装置のユーザが確信できるように、充分な画像データと充分な取引データを印刷した領収書を発行する段階と、からなる前記装置に挿入された前記証券に対して一定の取引が行われたことを確認する方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点1]
前記方法が、本願発明では、「証券に関して装置に要求された取引業務の種類を指示する段階」を有し、「要求された種類の」取引業務が装置によって実行されるの対し、引用例発明ではそのような点についての開示がない点。

[相違点2]
上記充分な画像データが、本願発明では、「手書き情報を有する」のに対し、引用例発明ではそのような明示がない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
複数の取引業務を実行可能な取引処理装置において、顧客による選択操作によって要求された特定の取引業務を実行することは周知技術(特開昭63-172365号公報、特開昭59-168595号公報等参照)であるから、該周知技術を引用例発明に適用して、「証券に関して装置に要求された取引業務の種類を指示する段階」を設け、「要求された種類の」取引業務を実行する構成とすることは、当業者であれば容易になし得た事項である。

[相違点2]について
引用例発明では特に明示はないが、上記引用例の摘記事項(イ)には、自己申告した金額のみを記入したレシートを受取るだけでは具体的な小切手の明細が不明確であため、小切手処理段階でのトラブルに対する補償が十分に行われない可能性があるという課題が記載されていることを考慮すると、引用例発明でも、小切手処理において重要な情報である手書き情報(引用例発明でいう手書金額)を画像データが有するものであると解するのが相当である。そうすると、本願発明が上記相違点2において引用例発明と実質的に相違するとはいえない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、上記引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-15 
結審通知日 2008-01-24 
審決日 2008-02-05 
出願番号 特願平6-147438
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿波 進  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 森次 顕
小山 和俊
発明の名称 証券取引処理装置  
代理人 西山 善章  

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