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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G
管理番号 1180517
審判番号 不服2006-15607  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-20 
確定日 2008-07-03 
事件の表示 平成11年特許願第 49462号「ナンバ読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日出願公開、特開2000-251191〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成11年2月26日の出願であって、平成18年4月19日に明細書についての補正がなされたものの、同年6月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月18日に明細書についての補正がなされたものである。

2.平成18年8月18日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲における請求項1は、
「路上に設置されたカメラにより、設置地点を通過する車両の自動車のナンバプレートを読取り、当該読取られたナンバプレート情報を予め登録されたナンバプレート情報と照合するナンバ読取装置において、
上記車両の全面を照らす照明部と、
一定間隔で車両のナンバプレートを撮影するカメラと、
上記カメラの画像から車両を検出する車両検出部と、
上記車両検出部から車両を検出した信号を入力すると、上記カメラの画像からナンバプレートを検出し、検出されたナンバプレート情報に含まれる文字を読取りナンバ認識を行うナンバ認識部と、
上記ナンバ認識部からのナンバ認識結果を予め登録された車両のナンバプレート情報と照合するナンバプレート照合部と、
上記車両検出部から車両を検出した信号を入力すると、上記照明部に対して前記カメラの撮影タイミングと同期して所定の回数照明を連続発光させるための信号を出力すると同時に、上記ナンバ認識部に対して上記照明部の連続発光の回数分だけナンバ認識を実施するための信号を出力する照明点灯制御部と、
上記ナンバ認識部がナンバ認識を実施してナンバ認識結果が得られた場合に前記照明部に対して照明を消灯する信号を出力するとともに、上記ナンバ認識部の認識動作を停止するための信号を出力する照明消灯制御部と、を備えたことを特徴とするナンバ読取装置。」
と補正された。

本件補正は、実質的に、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するのに必要な事項である「車両のナンバプレートを撮影するカメラ」が「一定間隔で」撮影するものであることを特定し、同じく「ナンバ認識部」がナンバプレート情報に含まれる文字を読取「りナンバ認識を行う」ことを特定し、同じく「照明点灯制御部」が照明部に対して「カメラの撮影タイミングと同期して」所定の回数「照明を」連続発光させる「ための信号を出力する」ことを特定し、及び、同じく「ナンバ読取装置」が「ナンバ認識部がナンバ認識を実施してナンバ認識結果が得られた場合に照明部に対して照明を消灯する信号を出力するとともに、上記ナンバ認識部の認識動作を停止するための信号を出力する照明消灯制御部」を備えることを特定したものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-276379号公報(以下「引用例」という。)には、「車番自動読取装置」と題して、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「本発明は車番自動読取装置に関し、さらに詳細にいえば、走行中または停止中の車両のナンバープレートを自動識別する車番自動読取装置に関するものである。」(1ページ右欄9ないし12行)

・「〈発明が解決しようとする課題〉
・・・。昼間であれば、照明を行わなくとも画像処理に必要な程度の鮮明な画面を得ることかできるが、薄暮、夜間には常時照明(例えばストロボ照明する場合でもシャッタオンのタイミングごとにストロボを焚(注:「炊」は誤記)くこと)が必要になる。このための消費電力がかさみ、かつ照明装置にも発熱対策を施すことが必要となる。そのため、照明装置か大型化するか、複数台必要となる。
本発明の目的は、位置センサを設置せずに画像処理により車両の進入を検出する車番自動読取装置において、いずれの時間帯であっても、常時照明することなく車番を読み取ることのできる車番自動読取装置を提供することにある。」(2ページ左上欄20行ないし右上欄14行)

・「第2A図、第2B図は、車番自動読取装置の設置例を示す平面図および正面図である。車番自動読取装置は、車番自動読取装置本体1、ストロボ発光装置2、カメラ装置3、周囲の明るさを測定する照度センサ5等からなるものであり、カメラ装置3は、ストロボ発光装置2とともに道路上の設置ポール4のアーム上部に取り付けられている。」(2ページ右下欄17行ないし3ページ左上欄3行)

・「カメラ装置3は、カメラ装置3の視野が路上の所定領域Rに設定されるように、所定の伏角をもって取付けられている。」(3ページ左上欄8ないし10行)

・「第3図は、車番自動読取装置本体1の内部の回路構成を示すブロック図である。車番自動読取装置本体1は、A/D変換回路11、エツジ検出回路12、2値化回路13、第1メモリ14、画像処理プロセッサ15、第2メモリ16、汎用プロセッサ17、ストロボ発光装置2を駆動するストロボ発光回路18、カメラ装置3の電子シャッタ機能をON/OFFする電子シャッタ駆動回路19、照度センサ5からなる。」(3ページ左上欄16行ないし右上欄4行)

・「カメラによって取込まれた画像信号は、A/D変換回路11によりA/D変換される。変換されたデジタルデータはエッジ検出回路12に供給される。エッジ検出回路12は、画像の濃度変化のある部分(エッジ)を検出する。エッジ検出回路12の出力信号は、2値化回路13に入り、所定のしきい値を基準として2値化される。2値化された信号は前処理画像として第1メモリ14に蓄えられる。第1メモリ14に蓄えられたデータは、画像処理プロセッサ15に供給され、ここにおいて、プロファイル(垂直投影図)が作成される。このプロファイルは、第2メモリ16に蓄えられる。第2メモリ16に蓄えられたデータは、汎用プロセッサ17に入力され、ここにおいて車両の進入検出処理、プレート切出し処理、文字切出し処理、文字認識処理が行われる。」(3ページ右上欄5ないし20行)

・「汎用プロセッサ17の行う処理をフローチャート(第1図参照)を用いて説明する。」(3ページ左下欄10ないし11行)

・「そして、画像信号を取込み(ステップ(4))、第5B図のプロファイルを基にして車両の進入を検出する(ステップ(5))。」(3ページ左下欄20行ないし右下欄2行)

・「車両の進入が検出されると(ステップ(6))ステップ(1)で得た明るさにより処理の流れを変える(ステップ(7))。」(3ページ右下欄12ないし14行)

・「ステップ(7)において中間の明るさ、または最も暗い明るさを検出した場合、ステップ(8)に進み、カメラ装置3の電子シャッタ機能をONとする。そして、ストロボ発光回路18を通してストロボ発光装置2を駆動し(ステップ(9))、原画を再取込みする(ステップ(10))。この原画に基づいて、車頭の検出処理を行い(ステップ(11))、ステップ(12)の車番読取処理に進む。このステップ(11)の車頭検出処理の内容はステップ(5)の車両の進入検出処理の内容と同じであるが、ストロボを発光し、かつシャッタ機能をONした状態で撮影されたぶれのない鮮明な画像を基にして行うので正確に車頭の位置が決まり、かつ車番の識別には十分な画像が得られる。」(4ページ左上欄6ないし19行)

・「第4B図は、第1図のステップ(1)で最も暗い条件(夜間)と判定された場合の、処理の流れを示す。シャッタ機能は常にONであり、シャッタは各フィールドの初めに画像を取込む時点で開かれる。奇数フィールドで原画を取込むと続く偶数フィールドでステップ(5)の車両の進入検出処理を行う。もしヘッドライトの明りにより車両の進入を検出すると、次のフレームでは、ストロボ発光させてステップ(11)の車頭検出処理に入り、取込んだ画像に基づいて車番読取処理に入る。」(4ページ右上欄12行ないし左下欄1行)

・「以上のようにして、ステップ(1)?ステップ(5)の車両進入検出段階では、照度センサ5により測定される周囲の明るさに応じて電子シャッタ機能をONまたはOFFして画像を常時取込み、車両の進入検出を行う。この時はストロボ発光装置2を駆動しないので、消費電力を軽減することができる。
そして、車両の進入を検出した場合に、ステップ(7)?ステップ(12)の段階で、照度センサ5により測定される周囲の明るさに応じて、初めてストロボ発光装置2を駆動し車番読取りのための鮮明な原画を取込み車番読取処理を行う。」(4ページ左下欄10ないし右下欄1行)

・第2B図には、カメラ装置3によりナンバープレートを読み取られる車両が、カメラ装置3の設置地点を通過するものであること、及び、ストロボ発光装置2が車両を照らすものであることが示されているといえる。

・第4B図には、カメラ装置のシャッタが一定間隔で開くことが示されている。また、同図には、車両の進入が検出されると、カメラ装置のシャッタの開くタイミングと同期してストロボ発光装置を発光させることが示されている。

これらの記載事項及び図示内容によれば、引用例には、
「路上に設置されたカメラ装置により、設置地点を通過する車両の自動車のナンバープレートを読取る車番自動読取装置において、
上記車両を照らすストロボ発光装置と、
一定間隔でシャッタを開くカメラ装置と、
上記カメラ装置の画像信号から車両の進入を検出する検出手段と、
上記検出手段によって車両の進入が検出されると、上記カメラ装置の画像信号からナンバープレートを切出し、切出したナンバープレートから文字を切出し文字認識を行う車番読取処理手段と、
上記検出手段によって車両の進入が検出されると、上記カメラ装置のシャッタの開くタイミングと同期してストロボ発光装置を発光させ、車番読取処理手段に車番読取処理を実施させる汎用プロセッサと、
を備えた車番自動読取装置。」
という発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定することができる。

(2-2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-55296号公報(以下「引用例2」という。)には、「車両ナンバー読み取り装置」と題し、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「【0002】
【従来の技術】従来から、高速道路や主要道路等には、車両監視システムの一環を担う、車両ナンバー読み取り装置が設けられている。」

・「【0005】・・・、ITVカメラ34にて撮影され、車両ナンバー抽出部にて抽出された車両ナンバーデータが、伝送出力部からデータ通信回線を介して、遠方の管理本部の中央監視制御装置に入力されるようになっている。そして、この中央監視制御装置にて、例えばこの車両ナンバーデータと警察が保有する犯罪車両の車両ナンバーリストとが照合され、盗難車両や逃亡車両等の犯罪車両が割り出されることとなる。」

(2-3)特開平8-124083号公報(以下「引用例3」という。)には、「移動体撮影装置」と題し、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「【0005】・・・。また、位置L2にある車両検出器7により車両の後端(図15)又は前端(図16)が検出された後所定時間の間撮影を繰り返すようにすると、比較的低速で走行しており車両検出器7の応答遅れ時間内で位置L1より手前の位置までしか進まないような車両であっても、TVカメラ1によりそのナンバープレートを撮影することができる。すなわち、広いダイナミックレンジを得るためには、繰返し撮影が必要である
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した構成では、低速車両を撮影するため車両の後端又は前端の検出後撮影を繰り返す必要がある。しかし、撮影を開始した後何回目の撮影によりナンバープレートが撮影されたかは、予め知ることができない。従って、ナンバープレートが撮影されている画像を選択するためには、繰り返し撮影により得られている複数の映像全てについて、特開平4-169987号等に示される方法によってナンバープレート文字の切出等の画像処理を行わねばならない。」

(2-4)特開平10-261189号公報(以下「引用例4」という。)には、「車両検出装置」と題し、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「【0007】照明装置50は、夜間に制御部40が画像処理により車両を検知した場合にI/O回路44により駆動され、撮像対象領域を所定時間照明して画像処理に好適な画像を得るためのものである。この照明装置50には、例えば赤外線発光器を使用することができる。また、この照明装置50は所定時間の間に撮像動作(シャッタタイミング)に同期して間欠的に発光照明を繰り返すものでもよいし、連続点灯するものでも良い。」

(2-5)特開平9-54893号公報(以下「引用例5」という。)には、「車両認識装置」と題し、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「【0030】続いて、図2に戻って、S5以降の処理について説明する。S5では、文字認識部10において、前記S3でその存在が確認されたナンバープレート17の車番(ナンバー)が認識可能かどうか判断されるとともに、車番の認識が可能である場合にはその車番の認識が行われる。そして、ナンバープレート17中の車番が認識可能な場合(S6:YES)には、その認識された車番に関する認識結果が認識結果出力部11を介して外部のモニタ等に出力され(S7)、更に、PAN駆動部7を基準位置に戻して撮像カメラ2を基準位置(図3中、点線で示す撮像エリアBの位置)にセットした(S8)後、S1に戻る。
【0031】一方、ナンバープレート17中の車番の認識が不可能な場合(S6:NO)には、S9にてカウンタ部13に設定されているカウント値nが車番(ナンバー)検索最大数(本実施例の場合は6に設定されている)よりも大きいかどうか判断される。カウント値nが車番検索最大数よりも小さい場合(S9:NO)には、S10にてカウンタ部13のカウント値nを1だけインクリメントした後S2に戻って再度S2以降の処理が行われる。尚、S2、S3、S5、S6及びS9の処理は、S9の判断がYESとなるまで、即ち、カウンタ部13のカウント値nが車番検索最大数である6に到達するまで繰り返される。また、S9においてYESと判断された場合、S8にて前記のようにPAN駆動部7を基準位置に戻して撮像カメラ2を基準位置にセットした後、S1に戻る。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「カメラ装置」は本願補正発明の「カメラ」に相当する。
次に、引用発明の「ナンバープレートを読取る車番自動読取装置」と、本願補正発明の「ナンバプレートを読取り、当該読取られたナンバプレート情報を予め登録されたナンバプレート情報と照合するナンバ読取装置」とは、「ナンバプレートを読取るナンバ読取装置」という概念で共通する。
続いて、引用発明の「車両を照らすストロボ発光装置」と、本願補正発明の「車両の全面を照らす照明部」とは、「車両を照らす照明部」という概念で共通する。
また、引用発明のカメラ装置が「一定間隔でシャッタを開く」ことは、「シャッタを開く」ことが「撮影する」ことと同義といえ、かつ、引用発明のカメラ装置はナンバ読取(車番読取)のためのものであるから、本願補正発明の「一定間隔で車両のナンバプレートを撮影する」ことに相当する。
そして、引用発明の「画像信号から車両の進入を検出する検出手段」は、「車両の進入を検出する」ことが「車両を検出する」という概念に包含されるものであるから、本願補正発明の「画像から車両を検出する車両検出部」に相当する。
ここで、引用発明の「検出手段によって車両の進入が検出されると、カメラ装置の画像信号からナンバープレートを切出し、切出したナンバープレートから文字を切出し文字認識を行う車番読取処理手段」は、まず、車両の「検出」に伴って何らかの「信号」が出力され、その信号に基づいて車番読取処理手段を動作させるものと理解するのが自然であり、かつ、ナンバプレートを「切出」すことは即ちナンバプレートを「検出」することであるといえ、しかも、そのナンバプレートから「文字を切出し文字認識を行う」ことは、「文字を読取りナンバ認識を行う」ことに相当することから、本願補正発明の「車両検出部から車両を検出した信号を入力すると、カメラの画像からナンバプレートを検出し、検出されたナンバプレート情報に含まれる文字を読取りナンバ認識を行うナンバ認識部」に相当するといえる。
さらに、引用発明の「カメラ装置のシャッタの開くタイミングと同期してストロボ発光装置を発光させ、車番読取処理手段に車番読取処理を実施させる汎用プロセッサ」は、まず、「同期」させるためには汎用プロセッサからストロボ発光装置に対して同期のための何らかの信号が出力されているものと理解するのが自然であり、また、車番読取処理手段に対しても汎用プロセッサから車番読取処理を実施させるための何らかの信号が出力され、該信号を受けて車番読取処理を実施するものと理解するのが普通であるから、本願補正発明の「照明部に対してカメラの撮影タイミングと同期して所定の回数照明を連続発光させるための信号を出力すると同時に、ナンバ認識部に対して照明部の連続発光の回数分だけナンバ認識を実施するための信号を出力する照明点灯制御部」と、「照明部に対してカメラの撮影タイミングと同期して照明を発光させるための信号を出力し、ナンバ認識部に対してナンバ認識を実施するための信号を出力する照明点灯制御部」という概念で共通する。

そうすると、両者は、
「路上に設置されたカメラにより、設置地点を通過する車両の自動車のナンバプレートを読取るナンバ読取装置において、
上記車両を照らす照明部と、
一定間隔で車両のナンバプレートを撮影するカメラと、
上記カメラの画像から車両を検出する車両検出部と、
上記車両検出部から車両を検出した信号を入力すると、上記カメラの画像からナンバプレートを検出し、検出されたナンバプレート情報に含まれる文字を読取りナンバ認識を行うナンバ認識部と、
上記車両検出部から車両を検出した信号を入力すると、上記照明部に対して前記カメラの撮影タイミングと同期して照明を発光させるための信号を出力し、上記ナンバ認識部に対してナンバ認識を実施するための信号を出力する照明点灯制御部と、
を備えたナンバ読取装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

・相違点1
ナンバ読取装置について、本願補正発明では「読取られたナンバプレート情報を予め登録されたナンバプレート情報と照合する」ことが特定されているのに対し、引用発明ではかかる特定がなされていない点。

・相違点2
照明部が、本願補正発明では車両の「全面」を照らすと特定されるのに対し、引用発明ではかかる「全面」との特定がなされていない点。

・相違点3
本願補正発明は「ナンバ認識部からのナンバ認識結果を予め登録された車両のナンバプレート情報と照合するナンバプレート照合部」という構成を備えるものであるのに対し、引用発明はかかる構成を備えていない点。

・相違点4
照明点灯制御部が照明部に対して出力する信号が、本願補正発明では「所定の回数」照明を「連続」発光させるためのものであると特定されるのに対し、引用発明ではかかる「所定の回数」及び「連続」という特定がなされていない点。

・相違点5
照明点灯制御部における、照明部に対する信号とナンバ認識部に対する信号とを出力するタイミングが、本願補正発明では「同時」であると特定されているのに対し、引用発明ではかかるタイミングについての特定がなされていない点。

・相違点6
照明点灯制御部がナンバ認識部に対して出力する信号が、本願補正発明では「照明部の連続発光の回数分だけ」出力されると特定されるのに対し、引用発明ではかかる特定がなされていない点。

・相違点7
本願補正発明は「ナンバ認識部がナンバ認識を実施してナンバ認識結果が得られた場合に照明部に対して照明を消灯する信号を出力するとともに、ナンバ認識部の認識動作を停止するための信号を出力する照明消灯制御部」という構成を備えるものであるのに対し、引用発明はかかる構成を備えていない点。

(4)相違点についての判断
・相違点1及び3について
ナンバープレートの認識結果を予め登録されたナンバープレート情報と照合することは、引用例2に開示されるように周知の技術である。
そして、引用発明におけるナンバープレートの認識結果をどのように用いるかは当業者にとって適宜設定すればよく、かかる認識結果を周知の技術として示される「照合」に用いることは当業者が容易に想到できたことである。
そうすると、引用発明に周知の技術を適用することで相違点1及び3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
照明部が車両のどの部分を照らすかは、ナンバープレートの認識という目的を達する限りにおいて当業者にとって適宜設定し得る事項に過ぎず、その際、車両の「全面」を照らすようにすることに格別の困難性はないものと認められる。
そうすると、引用発明において相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点4ないし7について
ナンバプレートの認識をするために、所定の回数だけ連続して撮影し、撮影した全ての画像について認識処理を行うことが周知の技術である(引用例3参照)。
また、所定時間の間、カメラの撮影タイミングに同期して照明装置を繰り返し発光させることも周知の技術である(引用例4参照)。
さらに、ナンバープレートを認識できない場合は撮影及び認識動作を繰り返し、認識できた場合はそのナンバープレートに対する撮影及び認識動作を終了することも周知の技術である(引用例5参照)。
そうすると、引用発明において、上記周知の技術を参酌することで、ナンバープレートの認識のために行う「撮影」、「発光」及び「ナンバ認識」を所定の回数だけ連続して行うこと、及び、ナンバープレートの認識ができたら「撮影」及び「ナンバ認識」を終了させるのに加えて「撮影」と同期して行われる「発光」をも終了させることは、当業者が容易になし得たものである。
なお、「撮影」と「発光」とが同期して行われ、撮影結果の画像を「ナンバ認識」できる限りにおいて、照明部に対して出力する信号とナンバ認識部に対して出力する信号とをどのようなタイミングで出力するかは設計的事項に属するものといえるから、そのタイミングを「同時に」と特定することは当業者が適宜設定できる事項に過ぎない。
したがって、引用発明において周知の技術を参酌することで相違点4ないし7に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の全体構成から奏される効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明については、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する特許法126条5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年4月19日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「路上に設置されたカメラにより、設置地点を通過する車両の自動車のナンバプレートを読取り、当該読取られたナンバプレート情報を予め登録されたナンバプレート情報と照合するナンバ読取装置において、上記車両の全面を照らす照明部と、車両のナンバプレートを撮影するカメラと、上記カメラの画像から車両を検出する車両検出部と、この車両検出信号に応じて上記カメラの画像からナンバプレートを検出し、検出されたナンバプレート情報に含まれる文字を読取るナンバ認識部と、上記ナンバ認識部からのナンバ認識結果を予め登録された車両のナンバプレート情報と照合するナンバプレート照合部と、上記車両検出部から車両検出の信号を入力すると、上記照明に対して所定の回数連続発光させると同時に上記ナンバ認識部に対してこの所定の回数と同じ回数だけナンバ検出処理を実施させる照明点灯制御部とを備えたことを特徴とするナンバ読取装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から、実質的に、「車両のナンバプレートを撮影するカメラ」が「一定間隔で」撮影するものであるとの特定を省き、同じく「ナンバ認識部」がナンバプレート情報に含まれる文字を読取「りナンバ認識を行う」という特定を省き、同じく「照明点灯制御部」が照明部に対して「カメラの撮影タイミングと同期して」所定の回数「照明を」連続発光させる「ための信号を出力する」という特定を省き、及び、同じく「ナンバ読取装置」が「ナンバ認識部がナンバ認識を実施してナンバ認識結果が得られた場合に照明部に対して照明を消灯する信号を出力するとともに、上記ナンバ認識部の認識動作を停止するための信号を出力する照明消灯制御部」を備えるとの特定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願発明についても、上記省かれた特定事項に関する相違点7についての検討が不要になるほかは「2.(4)」に記載したとおりのことがいえるから、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、特許法49条2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-25 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-20 
出願番号 特願平11-49462
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08G)
P 1 8・ 575- Z (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 恭司  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 本庄 亮太郎
大河原 裕
発明の名称 ナンバ読取装置  
代理人 高橋 省吾  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  
代理人 中鶴 一隆  

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