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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F |
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管理番号 | 1180583 |
審判番号 | 不服2005-23208 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-01 |
確定日 | 2008-07-10 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第274130号「超音波伝搬時間の測定方法とそれを用いた超音波流量計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月23日出願公開、特開平11-108717〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年10月7日の出願であって、平成17年10月26日付け(発送日:同年11月1日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月16日付けで明細書又は図面についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 2.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正前の 「一対の超音波送受信器の送受信面を対向して備え、前記超音波送受信器内部を超音波が伝搬する時間を含まないで、一方の前記超音波送受信器の表面から超音波が送信された時刻を起点とし、他方の前記超音波送受信器の表面で前記超音波を受信した時刻を終点とする超音波伝搬時間の測定方法。」 から、補正後の 「一対の超音波送受信器の送受信面を対向して備え、前記超音波送受信器内部を超音波が伝搬する時間を含まないで、一方の前記超音波送受信器の表面から流体中に超音波が送信された時刻を起点とし、他方の前記超音波送受信器の表面で前記超音波を流体中から受信した時刻を終点とする超音波伝搬時間の測定方法。」に補正する補正事項を含むものである。 この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「超音波送受信器の表面から超音波が送信された時刻」及び「超音波送受信器の表面で前記超音波を受信した時刻」について、それぞれ、「流体中に」及び「流体中から」との限定をそれぞれ付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2)引用例記載の発明・事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭56-40716号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は、引用箇所を明示するために当審で付した。) (a)「第3図はこの発明による超音波流量計の一例を示し、第1図と対応する部分には同一符号を付けてある。この発明においては送受波器12の超音波媒体16に補助振動子21が更に取付けられ、この補助振動子21は、この例では振動子17よりの超音波が超音波媒体16と配管11との接触面で反射された超音波を受波するように取付けられている。即ち第4図に示すように超音波媒体16の配管11との接触面22と離れて超音波媒体16の両側部は斜目に互に対向するように・・・補助振動子21に受波される。 振動子17より超音波媒体16を通じて補助振動子21に到達する超音波の伝播時間は先のτ1に等しくなるようにされている。つまり接触面22から補助振動子21に達する反射超音波26の伝播時間は、他方の送受波器13の配管11との接触面より振動子19までの超音波伝播時間と等しくなるように超音波媒体16の形状が選定されている。第4図に示すように振動子17より放射された超音波が接触面22に到達する点27を含み接触面22と垂直な面に対して対称な構造となるように送受波器12が構成される。このようにしておけば送受波器13として送受波器12と同一形状のものを使用することができる。」(2頁右下欄15行?3頁右上欄4行) (b)「第3図において端子28よりの励振信号(第5図A)が超音波駆動回路29に供給され、これより超音波振動子17が励振され、超音波パルスが放射される。その超音波パルスは超音波媒体16を通じて配管11内の流体内に放射される。配管11との接触面でその超音波は一部反射され、その反射された超音波は補助振動子21に第5図Bに示すように、励振信号(第5図A)に対してτ1だけ遅れて受波される。補助振動子21の出力は検出回路31において増幅され、更に超音波パルスが検出され、第5図Cに示すようにその超音波パルスの立上がりよりτ2’だけ遅れて検出パルスPsを発生する。 一方振動子17より超音波媒体16を伝播し、更に配管11内の被測定流体を伝播し、送受波器13に達し、これよりその超音波媒体18を通り振動子19に第5図Dに示すように超音波パルスとして受波される。この超音波パルスはその立上がりよりτ2’だけ遅れて検出回路32において電気パルスPmとして第5図Eに示すように検出される。振動子19、21の特性はほぼ一致しているが、振動子19、21に得られる受信波形、即ち第5図B及びDの受信波形は途中の伝播終路による減衰を受けただけ、つまり振幅のみが異なり、全体の波形としては等しいものとなる。検出回路32と検出回路31とを同一特性のものを使用することによって検出時間の遅れ時間τ2’とτ2とを等しくすることができる。励振信号(第5図A)の立上りから検出回路32で検出されるまでの時間はT1+τ1+τ2となる。 従って変換回路33において端子28の励振信号の立上りから検出パルスPm が得られるまでの時間T1+τ1+τ2より、励振信号の立上りから検出回路31で検出パルスPsが得られる迄の時間τ1+τ2を引くことによって正しい時間T1 を変換回路33の出力端子34に得ることができる。」(3頁右上欄5行?3頁左下欄末行) (c)「振動子超音波媒体を介して配管に取付ける場合のみならず、例えば第9図に示すように配管11に孔を形成して送受波器を取付ける場合にもこの発明は適用される。その場合は振動子1 9と配管11内の流体との間は単なる空間となる場合やその一部に超音波媒体が設けられる場合などがあるが、振動子17よりの超音波が被測定流体と接触する面において反射し、その反射波を補助振動子21で受波するようにして同様に前記τ1+τ2と対応した時間を補償することができる。」(5頁右下欄末行?6頁左上欄9行) 上記記載(a)、(b)及び第3図ないし第5図によれば、測定により得られた超音波伝播時間T1は補助振動子21に係る検出パルスPsの立上がりから他方の振動子19に係る検出パルスPmが得られるまでの時間に等しいものであるところ、検出回路31と検出回路32とを同一特性のものを使用することにより検出時間の遅れ時間τ2とτ2’とは等しいものとされているから、該超音波伝播時間T1は補助振動子21が受信信号を得たときから他方の振動子19が受信信号を得たときまでの時間に等しいものとなる。 さらに、接触面22から補助振動子21に達する反射超音波26の伝播時間は、他方の送受波器13の配管11との接触面より振動子19までの超音波伝播時間と等しくなるように超音波媒体16の形状が選定されているから、結局、超音波伝播時間T1は超音波送受波器12の配管11との接触面22を超音波が送信された時点から、超音波送受波器13の配管11との接触面22を超音波が受信された時点までの時間に等しいものといえる。すなわち、測定により得られた超音波伝播時間T1は超音波媒体16、18を超音波が伝播する時間を含まないものである。 してみると、上記記載(a)、(b)及び第3図ないし第5図から、引用例には下記の発明が記載されているものと認められる。 「超音波送受波器12、13の送受信面を対向して備え、超音波媒体16、18を超音波が伝播する時間を含まないで、超音波送受波器12の配管11との接触面22を超音波が送信された時刻を起点とし、超音波送受波器13の配管11との接触面を超音波が受信された時刻を終点とした時間T1による超音波伝播時間の測定方法。」(以下、「引用例記載の発明」という。) (3)対比 本願補正発明と引用例記載の発明を対比する。 引用例記載の発明における「超音波送受波器12、13」、「配管11との接触面22」は、本願補正発明の「一対の超音波送受信器」、「表面」にそれぞれ相当する。 また、本願補正発明に係る実施例によれば、超音波送受信器3、4は共に、圧電セラミック5と音響整合層6とから構成されているから、引用例記載の発明における「超音波媒体16、18を超音波が伝播する時間」は、本願補正発明における「超音波送受信器内部を超音波が伝搬する時間」に相当するといえる。 してみると、両者は 「一対の超音波送受信器の送受信面を対向して備え、前記超音波送受信器内部を超音波が伝搬する時間を含まないで、一方の前記超音波送受信器の表面から超音波が送信された時刻を起点とし、他方の前記超音波送受信器の表面で前記超音波を受信した時刻を終点とする超音波伝搬時間の測定方法。」で一致し、以下の点で相違する。 相違点:超音波伝播時間について、 本願補正発明では、超音波は超音波送受波器の表面から「流体中に」送信され、「流体中から」受信されるものであることから、測定される超音波伝播時間は流体中を超音波が伝播した時間に等しいのに対し、引用例記載の発明は超音波送受波器が配管に設けられていることから、測定される超音波伝播時間は流体中を超音波が伝播した時間に配管の管壁を伝播する時間を加えたものとなっている点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 引用発明は、超音波送受波器を配管の外部に設けて流体の流量測定を行う、いわゆる「クランプオン形超音波流量計」であるが、他方、本願補正発明のような、超音波送受波器を直接流体に接触するように配置して流体の流量測定を行うことも、いわゆる「接液形超音波流量計」として周知なものである(例えば、財団法人 省エネルギーセンター発行 松山 裕著「実用 流量測定」1995年第1版、63頁?67頁参照のこと)。 そして、引用例には、引用発明が超音波送受波器を直接流体中に設ける「接液形」についてもそのまま適用できることが他の実施例として記載されている(前記記載事項(c)を参照のこと。)。 してみると、本願補正発明のように、超音波流量計として接液形のものを採用し、測定される超音波伝播時間を超音波が流体中を伝播する時間に等しいものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例記載の発明及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。 したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成17年12月16日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成17年9月21日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。 「一対の超音波送受信器の送受信面を対向して備え、前記超音波送受信器内部を超音波が伝搬する時間を含まないで、一方の前記超音波送受信器の表面から超音波が送信された時刻を起点とし、他方の前記超音波送受信器の表面で前記超音波を受信した時刻を終点とする超音波伝搬時間の測定方法。」(以下、「本願発明」という。) (1)引用例記載の発明・事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例記載の発明・事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「表面から流体中に超音波が送信された時刻」及び「表面で前記超音波を流体中から受信した時刻」についての限定事項である「流体中に」及び「流体中から」との発明特定事項をそれぞれ省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-12 |
結審通知日 | 2008-05-13 |
審決日 | 2008-05-27 |
出願番号 | 特願平9-274130 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森口 正治 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
山田 昭次 堀部 修平 |
発明の名称 | 超音波伝搬時間の測定方法とそれを用いた超音波流量計測装置 |
代理人 | 永野 大介 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 岩橋 文雄 |