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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1180611
審判番号 不服2006-13828  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-29 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 特願2001-356527「印画装置及び印画方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月30日出願公開、特開2003-158637〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成13年11月21日の出願であって、平成18年5月17日付けで、補正の却下の決定とともに拒絶査定がなされ、これに対して同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月31日に手続補正がなされたものである。

第2 平成18年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5は、
「【請求項5】
1画素で3階調以上の表現が可能な印画装置において、
注目画素の2階調のデータを、注目画素の周囲の画素のデータの値及びその配置情報が含まれたテーブルに基づき、前記3階調以上を含む多諧調のデータに変換する多値化手段と、
前記多値化手段からの多階調のデータに基づいた印画を行う記録ヘッド手段と
を備え、
ここで、
前記テーブルは、注目画素の周囲の複数n(nは3以上の整数)画素の2階調データ(0,1)をn桁の2進数の各桁に割り当てた値と、注目画素の2階調データ(0,1)とをパラメータとし、これに周囲画素のデータに基づいた注目画素のとるべき値を予め設定して構成され、
注目画素及び周囲画素の前記2階調データが相互に比較して高濃度/低濃度を表すものであり、注目画素の値が高濃度のとき、前記多値化手段は前記テーブルを参照することにより、周囲画素の上下左右斜め8画素のうち、高濃度の数に応じて、注目画素の値を設定することを特徴とする印画装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項5に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-154174号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項及び図面が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ディザ処理等によって多値画像データから変換された2値画像データを、再び多値画像データに変換するための2値/多値変換方法及びその画像処理装置に関する。」

イ 「【0004】しかしながら、面積変調による濃度表現は画像の解像力を低下させるから、高画素密度のプリンタの能力を十分に生かせない。そのため、画素毎に多値画像データの値に応じて濃度を制御することにより、解像力を低下させない濃度変調型のプリンタも市販されるようになってきた。」

ウ 「【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するため、画像データの2値/多値変換方法として、多値画像データを2値画像データに変換した後、該変換された2値画像データを、各注目画素毎にその2値データと該注目画素を囲む複数の周囲画素の2値データとを用いて多値データに変換して多値画像データとするものである。
(中略)
【0017】さらに、多値画像データを2値画像データに変換する第1の画像データ変換手段と、該手段によって変換された2値画像データを再び多値画像データに変換する第2の画像データ変換手段とを備えた画像処理装置において、第2の画像データ変換手段をそれぞれ次のようにしたものである。
【0018】すなわち、2値画像データの各注目画素をその2値データと該注目画素を囲む複数の周囲画素のうちその2値データが1である周囲画素の数とに応じて多値データに変換するように予め設定された変換テーブルを格納したメモリと、該メモリに格納された変換テーブルを用いて2値画像データを各注目画素毎に多値データに変換する2値/多値変換手段とにより構成したものである。」

エ 「【0051】つぎに、図1においてビットマップメモリ23上に形成された2値画像データは、1ライン毎にまとめてプリンタエンジン50に送り出される時に、MTC3によって各画素毎に2値データから多値データに再変換されて出力されることになるが、図5に示した2値画像データを例として、2ビット(0?3)の多値画像データに変換する方法を、画像処理装置の各実施例によって説明する。
【0052】2値データを多値データに変換する2値/多値変換方法のうちの第1の変換方法は、2値画像データのビットマップの各注目画素毎に、注目画素を中心とする3×3マトリックスを設定し、注目画素の2値データと、8個の周囲画素のうちその2値データが1である周囲画素の数とに応じて多値データに変換するものである。」

オ 「【0059】MTC3aが第1の変換方法を用いたものである場合は、テーブル回路34はディザテーブルのしきい値を入力する必要がなく、ラインメモリ31からの入力だけで変換処理を行う。図7は、注目画素の2値データと、8個の周囲画素に含まれる1の数とから多値データ(0?3)を得る変換テーブルの一例を示す図であり、図8は、図7に示した変換テーブルを用いて図5に示した2値画像データを変換した多値画像データを示す図である。
【0060】図7に示した変換テーブルによれば、注目画素の2値データが0の時は、周囲画素に含まれる1の数すなわち周囲画素の2値データの和が3以下であれば多値データは0、和が4乃至6であれば1、和が7又は8であれば2になる。また、注目画素が1の時は、和が0又は1であれば多値データは1、和が2乃至4であれば2、和が5以上であれば3になる。」

これらの記載及び図面によれば、引用例1には、
「2値画像データを多値データに変換し、プリンタエンジンに送り出す画像処理装置において、
2値画像データのビットマップの各注目画素毎に、注目画素を中心とする3×3マトリックスを設定し、注目画素の2値画像データと、8個の周囲画素のうちその2値画像データが1である周囲画素の数とから多値データ(0?3)を得る変換テーブルを用いて多値データに変換する画像処理装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された特表平6-506323号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「本発明は、ディザ化表示画像を連続階調表示画像へ変換するものであり、この変換を行なうために、ディザ化表示画像の複数の領域を、所定の複数のピクセル・パターンと比較するようにしている。」(5ページ左上欄2行?4行)

イ 「図1に示したウィンドウ2の中のウィンドウ抽出サンプル3は、十字形を成すように並んだ12個のピクセルから構成されている。このウィンドウ抽出サンプル3の中の各ピクセルは、それが白ピクセルであれば「0」の値のビットで、また、黒ピクセルであれば「1」の値のビットで表示される。
(中略)
更に、ウィンドウ抽出サンプル3の中の複数のビットを簡単に表わせるようにするために、それらビットを、図1に示した所定の順序で表わすようにしている。この点について詳しく説明すると、先ず、それらビットを表わすのに、グループ4a、4b、及び4cのように、バイナリ形式で表示した4ビツトのかたまりで表わすようにしている。
(中略)
そして更に、これらグループ4a、4b、4cの各々をより簡潔に表わすために、それらを夫々1つの16進数の数字6a、6b、6cで表わせるようにしている。この結果、ウィンドウ抽出サンプルの全内容が、16進数の3つの数字6a、6b、及び6cで表わすことが可能になっている。ただし、この独特の表わし方は、単にプログラム作成上の問題、ないしは表記法の問題に過ぎず、従って以下に説明する方法における必須の要素ではない。
図2には、1つの具体例のウィンドウ抽出サンプルと、そのウィンドウ抽出サンプルに対応した、そのウィンドウ抽出サンプルを符号化したビット・パターンとを示してある。ウィンドウ抽出サンプル3は一連のデータ・ビットから成り、それらデータ・ビットは、「0」(白ピクセルであることを表わす)か、或いは「1」(黒ピクセルであることを表わす)かの、いずれかの値を持つ。図2に示したウィンドウ抽出サンプル3は、各々が4ビツトから成る3つのビット・グループで表わされており、それらビット・グループの内訳は、第1グループ4aが「1010」、第2グループが「1001」、そして、第3グループが「1101」である。更に、これら3つのビット・グループを16進数表記で表わすと、夫々、「A」、「9」、「D」と表わすことができ、それらを1つに組み合わせて表わせば「A9D」となる。」(6ページ右下欄6行?7ページ左上欄14行)

これらの記載及び図面図1、図2によれば、引用例2には、
「ディザ化表示画像において、ウィンドウ抽出サンプル中の各ピクセルが白ピクセルの場合は「0」の値のビットで、黒ピクセルの場合は「1」の値のビットでそれぞれ表現し、ウィンドウ抽出サンプル中の複数のビットを、図1に示した所定の順序でバイナリ形式で表す技術。」
の発明が記載されていると認める。

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「2値画像データ」は、本願補正発明の「2階調のデータ」及び「2階調データ(0,1)」に、また、同じく「多値データ」は、3階調以上を含む「多諧調のデータ」に相当する。
(2)引用発明は、「2値画像データを多値データに変換し、プリンタエンジンに送り出す画像処理装置」であり、前記プリンタエンジンが、変換された多値データを印刷する「記録ヘッド手段」を備えることは明らかであるから、本願補正発明と同様に、「1画素で3階調以上の表現が可能な印画装置」を対象とし、「多値化手段からの多階調のデータに基づいた印画を行う記録ヘッド手段」を備えるといえる。
(3)引用発明は、「2値画像データのビットマップの各注目画素毎に、注目画素を中心とする3×3マトリックスを設定し、注目画素の2値画像データと、8個の周囲画素のうちその2値画像データが1である周囲画素の数とから多値データ(0?3)を得る変換テーブルを用いて多値データに変換する」ものであり、引用発明における「8個の周囲画素のうちその2値画像データが1である周囲画素の数」と本願補正発明の「注目画素の周囲の画素のデータの値及びその配置情報」は、いずれも「注目画素の周囲の画素のデータの情報」である点で共通する。
したがって、両者は、「注目画素の2階調のデータを、注目画素の周囲の画素のデータの情報が含まれたテーブルに基づき、前記3階調以上を含む多諧調のデータに変換する多値化手段」を備える点で一致する。
(4)引用発明の前記「テーブル」は、引用例1の図7を参照しつつ、本願補正発明の表現に対応させれば、「注目画素の周囲の8画素の2階調データ(0,1)が「1」である周囲画素の数と、注目画素の2階調データ(0,1)とをパラメータとし、これに周囲画素のデータに基づいた注目画素のとるべき値を予め設定して構成」されているということができる。
また、引用発明の「注目画素の周囲の8画素の2階調データ(0,1)が「1」である周囲画素の数」と本願補正発明の「注目画素の周囲の複数n(nは3以上の整数)画素の2階調データ(0,1)をn桁の2進数の各桁に割り当てた値」とは、いずれも「注目画素の周囲の複数n(nは3以上の整数)画素の2階調データ(0,1)の情報」ということができる。
したがって、両者は、「前記テーブルは、注目画素の周囲の複数n(nは3以上の整数)画素の2階調データ(0,1)の情報と、注目画素の2階調データ(0,1)とをパラメータとし、これに周囲画素のデータに基づいた注目画素のとるべき値を予め設定して構成」されている点で一致する。
(5)引用発明における2値画像データの「1」、「0」が、「相互に比較して高濃度/低濃度を表すもの」であり、前記「1」が「高濃度」を表すことは、技術常識から自明である。
また、引用発明の「周囲画素」は、「注目画素を中心とする3×3マトリックス」における8個の画素であるから、注目画素の「上下左右斜め8画素」であり、「周囲画素のうちその2値画像データが1である周囲画素の数」は、「周囲画素の上下左右斜め8画素のうち、高濃度の数」に他ならない。
そして、引用発明は、「注目画素の2値画像データと、8個の周囲画素のうちその2値画像データが1である周囲画素の数とから多値データ(0?3)を得る変換テーブルを用いて多値データに変換する」ものであり、注目画素の値が「1」、すなわち「高濃度」である場合においても、当然ながら、上記変換を行っている。
したがって、引用発明と本願補正発明とは、「注目画素及び周囲画素の2階調データが相互に比較して高濃度/低濃度を表すものであり、注目画素の値が高濃度のとき、多値化手段はテーブルを参照することにより、周囲画素の上下左右斜め8画素のうち、高濃度の数に応じて、注目画素の値を設定する」点で一致する。

以上の(1)ないし(5)から、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「1画素で3階調以上の表現が可能な印画装置において、
注目画素の2階調のデータを、注目画素の周囲の画素のデータの情報が含まれたテーブルに基づき、前記3階調以上を含む多諧調のデータに変換する多値化手段と、
前記多値化手段からの多階調のデータに基づいた印画を行う記録ヘッド手段と
を備え、
ここで、
前記テーブルは、注目画素の周囲の複数n(nは3以上の整数)画素の2階調データ(0,1)の情報と、注目画素の2階調データ(0,1)とをパラメータとし、これに周囲画素のデータに基づいた注目画素のとるべき値を予め設定して構成され、
注目画素及び周囲画素の前記2階調データが相互に比較して高濃度/低濃度を表すものであり、注目画素の値が高濃度のとき、前記多値化手段は前記テーブルを参照することにより、周囲画素の上下左右斜め8画素のうち、高濃度の数に応じて、注目画素の値を設定する印画装置」
【相違点】
「テーブル」に含まれるパラメータとしての「注目画素の周囲の画素のデータの情報」が、本願補正発明は、「注目画素の周囲の画素のデータの値及びその配置情報」であって、「注目画素の周囲の複数n(nは3以上の整数)画素の2階調データ(0,1)をn桁の2進数の各桁に割り当てた値」であるのに対し、引用発明は、「注目画素の周囲の8画素の2階調データ(0,1)が「1」である周囲画素の数」である点。

4.判断
以下、相違点について検討する。
画像処理の技術分野において、特定領域の複数画素の2階調データ(0,1)をn桁の2進数の各桁に割り当てた値で表現することにより、「データの値及びその配置情報」を表現する技術は、引用例2に記載されているように公知であった。
引用例2に記載された技術は、同引用例の図面図1及び図2を併せて参照すれば、「図1に示した所定の順序でバイナリ形式」で表された2進数により、ウィンドウ内の各ピクセルのウィンドウ内における位置、すなわち「配置情報」及び前記各ピクセルのビット値が「0」であるか「1」であるか、すなわち「データの値」が表現されており、「データの値及びその配置情報」を表現する技術といえる。
そして、前記表現によっても、特定領域の2階調データのうち、値が「1」、すなわち「高濃度」である画素の数の情報が得られることは自明である。
したがって、引用発明における「注目画素の周囲の8画素の2階調データ(0,1)が「1」である周囲画素の数」を表現するパラメータとして、引用例2に記載された上記技術を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用例1、2に記載された発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年7月31日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし22に係る発明は、平成17年5月30日付けの手続補正書により補正された本願明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 1画素で3階調以上の表現が可能な印画装置において、
注目画素の2階調のデータを、注目画素の周囲の画素のデータの値及びその配置情報が含まれたテーブルに基づき、前記3階調以上を含む多階調のデータに変換する多値化手段と、
前記多値化手段からの多階調のデータに基づいた印画を行う記録ヘッド手段と
を備えることを特徴とする印画装置。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、2及びその記載事項は、前記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3.」、「第2 4.」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-01 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-27 
出願番号 特願2001-356527(P2001-356527)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 板橋 通孝
廣川 浩
発明の名称 印画装置及び印画方法  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  

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