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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G |
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管理番号 | 1182243 |
審判番号 | 不服2005-23898 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-12 |
確定日 | 2008-08-07 |
事件の表示 | 特願2000- 54727「陳列棚等におけるローラーの架設装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月 4日出願公開、特開2001-240225〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本願は、平成12年2月29日の出願であって、平成17年7月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成17年10月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成17年11月10日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し平成17年12月12日付けで拒絶査定に対する審判が請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出され明細書が補正され、さらに平成18年1月10日付けで手続補正書が提出され、再度明細書が補正された。 [2]平成17年12月12日付け手続補正書でした補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論1〕 平成17年12月12日付け手続補正書でした補正を却下する。 〔理由〕 1.平成17年12月12日付け手続補正の内容 平成17年12月12日付け手続補正書でした補正(以下、「本件補正1」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正1により補正される前の(平成17年10月3日付け手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(a)に示す請求項1と補正するものである。 (a)本件補正1により補正された特許請求の範囲 「【請求項1】 複数のローラー列よりなる陳列棚において、枠板内へ、上面を平面にした、同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなる下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、前記各下部軸受け面の上部へ、同列と隣接列の隣接ローラー列のローラーのピッチを1/2?1/4ずらして各ローラーを架設し、前記下部軸受けの上部へ、下部軸受け上の各ローラー軸に夫々嵌合するピッチの凹入部を夫々下面に設けた上部軸受けを配置して、各ローラー軸を対応する凹入部に嵌合させて、前記上部軸受けと下部軸受けによりローラーの軸受けを構成したことを特徴とする陳列棚等におけるローラーの架設装置。」(下線部は、補正箇所を示す。) 2.本件補正1の適否 (1)本件補正1により補正された内容 本件補正1は、本件補正前の請求項1の記載を、次のa1)乃至c1)のように補正することを含むものである。 a1)「上面を平面にした下部軸受け」を「上面を平面にした、同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなる下部軸受け」と補正。 b1)「各下部軸受け面上へ」を「前記下部軸受け面の上部へ」と補正。 c1)「隣接ローラー列のローラーのピッチ」を「同列と隣接列の隣接ローラー列のローラーのピッチ」と補正。 これらa1)乃至c1)の補正について以下に検討する。 イ)a1)の補正に関しては、「下部軸受け」について「同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなる」と限定するものであるから、見かけ上、特許請求の範囲の減縮を目的とするもののようであるが、まず、「同列」及び「同列及び隣接列」なる事項は本願出願当初の明細書のどこにも記載のなかった事項であり、また、出願当初の図5において中央に記載された特定の列をなすローラー(補正後の「同列」を意図するものであろうか)については、そのローラーの軸2aが下部軸受け3に線接触するような構造が開示されていると推定される(発明の詳細な説明には、当該図5について何ら説明されていない)が、隣接する(左右の)ローラー列に属するローラーの軸(2a)についてはどのように軸支されるものか記載されていない。してみると、当該「同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなる」なる記載は、出願当初の明細書または図面に記載のなかった事項を追加するものといわざるを得ない。さらに、補正された「同列及び隣接列の隣接ローラー」は、その文意、および、当該記載とその他の記載との関連が明らかでなく、補正された請求項1の内容を不明確にするものである。 ロ)b1)の補正に関しては、本件補正1前においては「軸受け面上へ」と面に接した状態のみを意味していたところ、「軸受け面の上部」と面に接した状態のみならず、「面の上部」すなわち面から離間した状態をも包含することとなったものであり、特許請求の範囲を拡張するものである。 ハ)c1)の補正に関しては、ピッチを形成して架設された「隣接ローラー列」について「同列と隣接列の」とこれまた上記a1)と同様の、出願当初の明細書または図面に記載のない事項を追加するもので、かつ、当該補正の結果文意を不明確とするものである。 上記b1)の補正については、特許請求の範囲を拡張するものであり、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正の何れにも該当するものでもなく、平成14年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満足するものとは認められない。 また、a1)及びc1)の補正については、見かけ上特許請求の範囲の減縮を目的とするもののようであるが、当該補正は出願当初の明細書または図面に記載のない事項を追加するもので特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものではなく、さらに、当該補正の後の請求項1に係る発明は不明確なもので特許法第36条第4項第2号の規定を満足しておらず、本願は独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものである。 3.むすび したがって、本件補正1は、平成14年改正前特許法第17条の2第3項、第4項及び平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、結論1の通り決定する。 また、本件補正1が平成14年改正前特許法第17条の2第3項、第4項および第5項において準用する特許法第126条第5項の規定を満足するものであったとしても、以下の通り、本件補正1後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)は進歩性を有せず特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件補正1は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、この点からみても、上記結論1の通り決定すべきものである。 ※1独立特許要件(進歩性)について (1)引用刊行物記載の発明 イ)刊行物1記載の発明 原査定において拒絶の理由に引用された特開平9-12122号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下のことが記載されている。 a)「【0019】図1ないし図3はホイールユニット11を示し、このホイールユニット11は、複数のホイール12と、ホイールフレーム13とを備えている。 【0020】ホイール12は、例えば合成樹脂製で一体成形によって形成されており、例えば直径が12.5mm程度、幅が10mm程度の小径のローラ部14を有し、このローラ部14の両端から例えば直径が2mm程度の軸部15が突設されており、ローラ部14の直径と軸部15の直径との比が6倍以上になっている。 【0021】ホイールフレーム13は、例えば、合成樹脂製で一体成形によって、長さが150mm程度、幅が15mm程度の細長状に形成されており、両側の側板部16および両端の端板部17によってフレーム枠18が形成され、このフレーム枠18の内側が長手方向に沿って複数の仕切板部19によって仕切られて、複数のホイール収納凹部20が上下方向に開口形成されている。ホイール収納凹部20は、ホイールフレーム13の長手方向に周面を向けたホイール12が回転自在に収納可能になっている。 【0022】各ホイール収納凹部20の両側の側板部16には、ホイール12の軸部15が回転自在に軸支される軸受溝21が形成されている。軸受溝21は、上面開口部近傍の溝幅が軸部15の直径よりも狭く、その下側に軸部15を回転摺動可能に嵌合する軸受孔部21a が形成されており、軸受溝21の上方から軸受孔部21a に圧入された軸部15を抜け止め保持する。」(段落【0019】?【0022】) b)「【0026】なお、ホイールユニット11は、図5に示すように、ホイール12の数が多い長いホイールユニット11とホイール12の数が少ない短いホイールユニット11との2種類があり、両ホイールユニット11の嵌合溝22を一致させた状態で、両ホイールユニット11のホイール12の位置が互い違いに配置されるようになっている。 【0027】図4ないし図6はホイールユニット11を用いたコンベヤ31を示し、このコンベヤ31は、両側のコンベヤフレーム32を備え、この両側のコンベヤフレーム32が複数の横継ぎ部材33a ,33b で連結され、両側のコンベヤフレーム32間に複数のホイールユニット11が並列に取り付けられている。」(段落【0026】、【0027】) c)上記b)において、「両ホイールユニット11のホイール12の位置を互い違いに配置されるようになっている。」(段落【0026】)の記載は、隣接列のホイール12のピッチを1/2ずらして各ホイール12を架設したことを意味するものである。 d)また、同じくb)より、刊行物1に記載されたホイール12は、両側のコンベヤフレーム32と横継ぎ部材33a,33bとにより形成される枠状の箇所に設置されるものであることがわかる。 e)以上のこと、及び、図1乃至図6の記載を参酌すると、刊行物1には、次の発明が記載されているものといえる。 「複数のホイール12列よりなるコンベヤにおいて、コンベヤフレーム32及び横継ぎ部材33a,33bとにより形成される枠状の箇所へ、同列のホイール12の軸受けとなるようにした軸受溝21が形成された側板部16をホイール12の軸部15を受ける間隔で複数列設置し、前記各側板部軸受溝21へ、隣接ホイール12のピッチを1/2ずらして各ホイール12を架設し、前記側板部16の軸受溝21により各ホイール12の軸受けを構成した、コンベヤ31のホイール架設装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) ロ)刊行物2記載の技術 原査定において拒絶の理由に引用された特開平11-155701号公報(以下、「刊行物2」という。)には、段落【0001】、【0011】及び図面等の記載からみて、以下のことが記載されているといえる。 「複数のローラ111(本願補正発明1の「ローラー」に相当)列を配置されたローラ配設枠体11(本願補正発明1の「枠体」に相当)よりなる陳列棚。」(以下、「刊行物2記載の技術」という。) ハ)刊行物3記載の技術 原査定において拒絶の理由に引用された実願昭58-141080号(実開昭60-50611号)のマクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、以下のことが記載されている。 a)「斯る本考案のローラーコンベアは、2枚の平行な側板の間に複数のローラーを遊転自在に並設してなるローラーコンベアにおいて、各側板を外板と内板とで形成し、該外板の上縁をローラーコンベア内側に折り返すと共に、外板の折り返し部と内板との何れか一方にローラー軸を嵌め合い軸承する切欠を複数並設したことを特徴とする。 本考案第1実施例を第1図?第2図により説明すれば、図中(1)は外板、(2)は内板であり、両板(1)(2)にて側板を構成するものである。 内板(2)は帯状の板材であって、所定の間隔をおいて設置箇所であるベース(B)にねじ(7)にて取付ける。 外板(1)は帯状の板材の上縁を鋭角に折り返して折り返し部(1a)を形成すると共に、該折り返し部(1a)に所定間隔をおいてU字状の切欠(5)を設けたもので、折り返し部(1a)が対向するように前記内板(2)にねじ(6)にて取付ける。 ローラー(3)は従来周知のローラー軸(4)を備えたものであり、切欠(5)はローラー軸(4)に嵌め合って軸承するものである。」(明細書第2頁第12行?同第3頁第12行) b)「第2実施例を第3図により説明すれば、本実施例は外板(1')の上縁を略コの字状に折り返して折り返し部(1a')を形成したものであり、その他の構成及び組立手順は前記第1実施例と同一である。」(同第4頁第4?7行) c)上記のこと、及び第1図乃至第3図の記載からみて、刊行物3には次のことが記載されているといえる。 「上面を平面にした、ローラーの軸受けとなる内板(2)を、ローラーを受ける間隔で複数列(2列)設置し、前記内板(2)の上部へ、内板(2)上の各ローラー軸(4)に夫々嵌合するピッチの切欠(5)を、夫々下面に設けた折り返し部(1a')を配置して、各ローラー軸(4)を対応する切欠(5)に嵌合させて、前記折り返し部(1a')と内板(2)によりローラーの軸承部を構成した、ローラーコンベアにおけるローラーの架設装置。」(以下、「刊行物3記載の技術」という。) (2)対比 本願補正発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の備える「ホイール12」、「側板部16」、「軸部15」及び「コンベヤ31のホイール架設装置」は、それぞれ本願補正発明1の備える「ローラー」、「下部軸受け」、「ローラー軸」及び「ローラーの架設装置」に相当するものであり、また、刊行物1記載の発明の備える「コンベヤフレーム32及び横継ぎ部材33a,33bとにより形成される枠状の箇所」は、複数列のロ-ラーが設置されるもので、かつ、この内部にローラー軸受けを設けられるものであるから、本願補正発明1の「枠板」に相当し、刊行物1記載の発明が備える「側板部16」は上面を平面にして軸受けとなるようにしたものではないが、側板部16に軸受溝21を備え、「ローラー軸受けの軸受けとなる箇所がローラー軸を受ける間隔で複数設置し、ローラーの軸受けを構成」している限りにおいて本願補正発明1の備える「下部軸受け」と同様である。 したがって、両者は、 「枠板内へ、ローラーの軸受けとなるようにした下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数配置し、前記各下部軸受け上へ、同列と隣接列の隣接ローラーのピッチを1/2ずらして各ローラーを架設し、下部軸受けにより各ローラーの軸受けを構成したローラーの架設装置。」 である点一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1-1〉 本願補正発明1が「複数のロ-ラー列よりなる陳列棚」を前提とする「陳列棚等におけるローラーの架設装置」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、当該「陳列棚」を前提とするものかどうか明らかでない点。(以下、「相違点1-1」という。) 〈相違点1-2〉 本願補正発明1が「上面を平面にした、同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなる下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し」、「前記下部軸受けの上部へ、下部軸受け上の各ローラー軸に夫々嵌合するピッチの凹入部を夫々下面に設けた上部軸受けを配置して、各ローラー軸を対応する凹入部に嵌合させて、前記上部軸受けと下部軸受けによりローラーの軸受けを構成」したものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、上面に軸受溝21を設けた下部軸受けを、「ローラー軸を受ける間隔で複数列設置しローラーの軸受けを構成」したものであるが、上部軸受けを有するものではない点。(以下、「相違点1-2」という。) (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 イ)相違点1-1について 複数のローラー列を配置されたローラー配設枠体11よりなる陳列棚、は刊行物2記載の通りであり(「刊行物2記載の技術」を参照されたい)、刊行物1記載の発明の用途として刊行物2記載の技術にある通りとし、上記相違点1-1に係る本願補正発明1のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲でなしうる程度のことにすぎない。 ロ)相違点1-2について 刊行物3記載の技術の備える「折り返し部(1a')」、「内板(2)」、「切欠(5)」及び「軸承部」は、それぞれ本願補正発明1の備える「上部軸受け」、「下部軸受け」、「凹入部」及び「軸受け」に相当するものであり、刊行物3には「上面を平面にしてローラーの軸受けとなる下部軸受けを、ローラーを受ける間隔で複数列設置し、前記下部軸受けの上部へ、下部軸受け上の各ローラー軸に夫々嵌合できるピッチの凹入部を、夫々下面に設けた上部軸受けを配置して、各ローラー軸を対応する上部軸受けの凹入部に嵌合させ、前記上部軸受けと下部軸受けにより、ローラーの軸受部を構成したローラーの架設装置」が記載されているといえる。 また、「同列及び隣接列のローラー」すなわち、隣接するローラーの軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列配置し、当該軸受けの軸受け面上に「同列と隣接列の隣接ローラー」すなわち隣接するローラーのピッチを1/2程度ずらして各ローラーを架設することは、例えば、特開平5-238523号公報(軸受用U字切込み部13を有する板状体6(7)に関する記載を参照)、特開昭62-130912号公報(スロット22を有する対向側壁18に関する記載を参照)、特公昭58-25602号公報(中間板32に関する記載参照)に記載されているように、本願出願前、コンベア等におけるローラーの架設構造として周知の技術であったといえる(以下、「周知技術」という。)。 以上のことを参酌すると、刊行物1記載の発明においてその軸受けの配置として上記周知技術のようにし、その軸受け構造として、上面に載置された物品を回転移送するものである点共通する、刊行物3記載の技術のような構造を採用し、上記相違点1-2における本願補正発明1のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲で適宜なしうる程度のことにすぎない。 また、全体としてみても、本願補正発明1のようにした結果、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の技術及び上記周知技術から予測される以上の顕著な効果が生じたものとも認められない。 したがって、本願補正発明は刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、刊行物3記載の技術及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 [3]平成18年1月10日付け手続補正書でした補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論2〕 平成18年1月10日付け手続補正書でした補正を却下する。 〔理由〕 1.平成18年1月10日付け手続補正の内容 平成18年1月10日付け手続補正書でした補正(以下、「本件補正2」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正2により補正される前の(平成17年10月3日付け手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(a)に示す請求項1と補正するものである。(なお、上記の通り、平成17年12月12日付け手続補正書によりなした明細書の補正は、却下されたので、本件補正前の明細書は、平成17年10月3日付け手続補正書により補正された明細書となる。) (a)本件補正2により補正された特許請求の範囲 「【請求項1】 複数のローラー列よりなる陳列棚において、枠板内へ、上面を平面にして、同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなるようにした下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、前記各下部軸受け面上へ、同列と隣接列の隣接ローラーのピッチを1/2?1/4ずらして各ローラーを架設し、前記下部軸受けの上部へ、下部軸受け上の各ローラー軸に夫々嵌合できるピッチの凹入部を、夫々下面に設けた上部軸受けを配置して、前記各ローラー軸を夫々対応する上部軸受けの凹入部に嵌合させ、前記上部軸受けと下部軸受けにより、各ローラーの軸受けを構成したことを特徴とする陳列棚等におけるローラーの架設装置。」(下線部は当審で付したもので、補正箇所を示す。) 2.本件補正2の適否 (1)本件補正2により補正された内容 本件補正2は、本件補正2前の請求項1の記載を、a2)乃至d2)のように補正することを含むものである。 a2)「上面を平面にした下部軸受け」を「上面を平面にして、同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなるようにした下部軸受け」と補正。 c2)「隣接ローラー列のローラーのピッチ」を「同列と隣接列の隣接ローラー列のローラーのピッチ」と補正。 d2)「各ローラー軸に嵌合するピッチの凹入部を有する上部軸受けを嵌合して」を「下部軸受け上の各ローラー軸に夫々嵌合できるピッチの凹入部を夫々下面に設けた上部軸受けを配置して、各ローラー軸を夫々対応する凹入部に嵌合させて」と補正。 これらの補正のうち、a2)及びc2)に関しては、先に[2]、[理由]、「2.本件補正1の適否」においてa1)及びc1)に検討したと同様であり、当該補正は出願当初の明細書または図面に記載のない事項を追加するもので特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものではなく、さらに、当該補正後の請求項1に係る発明は不明確なもので特許法第36条第4項第2号の規定を満足していないので、本願は独立して特許を受けることができないもので、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものである。 また、d2)における本件補正2前の「各ローラー軸に嵌合するピッチ」を「各ローラー軸に夫々嵌合できるピッチの凹入部」とする補正において、「嵌合できる」なる記載は、実際に嵌合していなくても潜在的に嵌合可能な構造をも包含するものであり、本件補正2前の「嵌合する」という潜在的な可能性を包含しない記載に比べより広範な内容を包含するものであるから、この点の補正は特許請求の範囲を拡張するものであり、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正何れに該当するものでもなく、平成14年改正前特許法第17条の2第4項各号何れかに規定することを目的とするものとは認められない。 3.むすび したがって、本件補正2は、平成14年改正前特許法第17条の2第3項、第4項及び平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、結論2の通り決定する。 また、本件補正2が平成14年改正前特許法第17条の2第3項、第4項および第5項において準用する特許法第126条第5項の規定を満足するものであったとしても、以下の通り、本件補正2後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明2」という。)は進歩性を有せず特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、この点からみても、上記結論2の通り決定すべきものである。 ※2独立特許要件(進歩性)について (1)刊行物記載の発明、技術 刊行物1及び2には、上記「[2]、[理由]、※1独立特許要件(進歩性)について、(1)、イ)及びロ)」において指摘したような、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術が記載されている。 また、刊行物3には、上記「[2]、[理由]、※1独立特許要件(進歩性)について、(1)、ハ)」においてa)及びb)と摘示したことが記載されており、これらの点及び図面の記載からみて、刊行物3には、以下の技術が記載されているといえる。 「上面を平面にしてローラーの軸受けとなるようにした内板(2)を、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、前記内板(2)の上部へ、内板(2)上の各ローラー軸(4)に夫々嵌合できるピッチの切欠(5)を、夫々下面に設けた折り返し部(1a')を配置して、前記各ローラー軸(4)を夫々対応する折り返し部(1a')の切欠(5)に嵌合させ、前記折り返し部(1a')と内板(2)により、各ローラーの軸承部を構成した、ローラーコンベアにおけるローラーの架設装置。」(以下、「刊行物3記載の技術2」という。) (2)対比 本願補正発明2と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の備える「ホイール12」、「側板部16」、「軸部15」及び「コンベアのホイール架設装置」は、それぞれ本件補正発明2の備える「ローラー」、「下部軸受け」、「ローラー軸」及び「ローラーの架設装置」に相当するものであり、また、刊行物1記載の発明の備える「コンベヤフレーム32及び横継ぎ部材33a,33bとにより形成される枠状の箇所」は、複数列のロ-ラーが設置されるもので、かつ、この内部にローラー軸受けを設けられるものであるから、本願補正発明2の備える「枠板」に相当し、さらに、刊行物1記載の発明が備える「側板部16」は上面を平面にして軸受けとなるようにしたものではないが、側板部16に軸受溝21を備え、「ローラー軸受けの軸受けとなる箇所がローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、各ローラーの軸受けを構成」する限りにおいて本願補正発明2の備える「下部軸受け」と同様である。 したがって、両者は、 「枠板内へ、ローラーの軸受けとなる下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列配置し、前記各下部軸受け上へ、同列と隣接列の隣接ローラのピッチを1/2ずらして各ローラーを架設し、下部軸受けにより各ローラーの軸受けを構成したローラーの架設装置。」 である点一致し、以下の点で相違する。 〈相違点2-1〉 本願補正発明2が「複数のロ-ラー列よりなる陳列棚」を前提とする「陳列棚等におけるローラーの架設装置」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、当該「陳列棚」におけるものかどうか明らかではない点。(以下、「相違点2-1」という。) 〈相違点2-2〉 本願補正発明2が「上面を平面にして、同列及び隣接列の隣接ローラーの軸受けとなるようにした下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し」、「前記下部軸受けの上部へ、下部軸受け上の各ローラー軸に夫々嵌合できるピッチの凹入部を、夫々下面に設けた上部軸受けを配置して、前記各ローラー軸を夫々対応する上部軸受けの凹入部に嵌合させ、前記上部軸受けと下部軸受けにより、ローラーの軸受けを構成」したものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、上面に軸受溝を設けた下部軸受けを、「ローラー軸を受ける間隔で複数設置し、各ローラーの軸受けを構成」するものではあるが、上部軸受けを有するものではない点。(以下、「相違点2-2」という。) (3)判断 イ)相違点2-1について 上記相違点1-1について判断したと同様に、刊行物1記載の発明の用途として刊行物2記載の技術にある通りとし、上記相違点2-1に係る本願補正発明2のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲でなしうる程度のことにすぎない。 ロ)相違点2-2について 刊行物3記載の技術2の備える「折り返し部(1a')」、「内板(2)」、「切欠(5)」及び「軸承部」は、それぞれ本願補正発明1の備える「上部軸受け」、「下部軸受け」、「凹入部」及び「軸受け」に相当するものであり、刊行物3には「上面を平面にしてローラーの軸受けとなるようにした下部軸受けを、ローラーを受ける間隔で複数列設置し、前記下部軸受けの上部へ、下部軸受け上の各ローラー軸に夫々嵌合できるピッチの凹入部を、夫々下面に設けた上部軸受けを配置して、前記各ローラー軸を夫々対応する上部軸受けの凹入部に嵌合させ、前記上部軸受けと下部軸受けにより、ローラーの軸受部を構成したローラーの架設装置」が記載されているといえる。 上記相違点1-2について判断したと同様であるが、刊行物1記載の発明おいてその軸受けの配置として前記周知技術のようにし、その軸受け構造として刊行物3記載の技術2のような構造を採用し上記相違点2-2における本願補正発明2のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲で適宜なしうる程度のことにすぎない。 また、全体としてみても、本願補正発明2のようにした結果、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、刊行物3記載の技術2及び前記周知技術から予測される以上の顕著な効果が生じたものとも認められない。 したがって、本願補正発明2は刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術、刊行物3記載の技術2及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 [4]本願発明について 1.本願発明 平成18年1月10日付け手続補正書、及び平成17年12月12日付け手続補正書によりなした補正は上記の通り何れも却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成17年10月3日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、以下の事項により特定されるものである。 (1)特許請求の範囲、請求項1 「【請求項1】 複数のローラー列よりなる陳列棚において、枠板内へ、上面を平面にした下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、各下部軸受け面上へ、隣接ローラー列のローラーのピッチを1/2?1/4ずらして各ローラーを架設し、前記下部軸受け上へ、各ローラー軸に嵌合するピッチの凹入部を有する上部軸受けを嵌合して前記ローラーの軸受けとしたことを特徴とする陳列棚等におけるローラーの架設装置。」(以下、「本願発明」という。) 2.刊行物記載の発明、技術 (1)刊行物記載の発明、技術 イ)刊行物1記載の発明 刊行物1には、上記「[2]、[理由]、※1独立特許要件(進歩性)について、(1)、イ)」において指摘したような、刊行物1記載の発明が記載されている。 ロ)刊行物2記載の技術 刊行物2には、上記「[2]、[理由]、※1独立特許要件(進歩性)について、(1)、ロ)」において指摘したとおりの、刊行物2記載の技術が記載されている。 ハ)刊行物3記載の技術 刊行物3には、上記「[2]、[理由]、※1独立特許要件(進歩性)について、(1)、ハ)」にa)及びb)と摘示したことが記載されており、これらの点及び図面の記載からみて、刊行物3には、以下の技術が記載されているといえる。 「上面を平面にした内板(2)をローラー軸(4)を受ける間隔で複数列配置し、前記内板(2)上へ、各ローラー軸(4)に嵌合するピッチの切欠(5)を有する折り返し部(1a')を嵌合して前記ローラー(3)の軸承部としたローラーの架設装置。」(以下、「刊行物3記載の技術3」という。) (2)対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の備える「ホイール12」、「側板部16」、「軸部15」及び「コンベアのホイール架設装置」は、それぞれ本願発明の備える「ローラー」、「下部軸受け」、「ローラー軸」及び「ローラーの架設装置」に相当するものであり、また、刊行物1記載の発明の備える「コンベヤフレーム32及び横継ぎ部材33a,33bとにより形成される枠状の箇所」は、複数列のロ-ラーが設置されるもので、かつ、この内部にローラー軸受けを設けられるものであるから、本願発明の備える「枠板」に相当し、さらに、刊行物1記載の発明が備える「側板部16」は、上面を平面にして軸受けとなるようにしたものではないが、ローラー軸受けの軸受けとなる箇所である軸受溝21を備えた側板部16を、「ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、ローラーの軸受けした」限りにおいて、本願発明の備える「下部軸受け」と同様である。 したがって、両者は、 「枠板内へ、下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、前記各下部軸受けを、前記ローラーの軸受けとしたローラーの架設装置。」 である点一致し、以下の点で相違する。 〈相違点3-1〉 本願発明が「複数のロ-ラー列よりなる陳列棚」を前提とする「陳列棚等におけるローラーの架設装置」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、当該「陳列棚」におけるものかどうか明らかではない点(以下、「相違点3-1」という。)。 〈相違点3-2〉 本願発明が「上面を平面にした下部軸受けを、ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し」、「前記下部軸受け上へ、各ローラー軸に嵌合するピッチの凹入部を有する上部軸受けを嵌合して前記ローラーの軸受けとした」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明は「ローラー軸を受ける間隔で複数列設置し、前記ローラーの軸受けとした」ものではあるが、上部軸受けを有するものではない点(以下、「相違点3-2」という。)。 (3)当審の判断 イ)相違点3-1について 上記相違点1-1について判断したと同様に、刊行物1記載の発明の用途として刊行物2記載の技術にある通りとし、上記相違点3-1に係る本願発明のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲でなしうる程度のことにすぎない。 ロ)相違点3-2について 刊行物3記載の技術3の備える「折り返し部(1a')」、「内板(2')」、「切欠(5')」及び「軸承部」は、それぞれ本願発明の備える「上部軸受け」、「下部軸受け」、「凹入部」及び「軸受け」に相当するものであり、刊行物3には、「上面を平面にした下部軸受けを、ローラーを受ける間隔で複数列設置し、前記下部軸受け上へ、各ローラー軸に嵌合するピッチの凹入部を有する上部軸受けを嵌合して前記ローラーの軸受けとしたローラーの架設装置。」が記載されているといえる。 上面に載置された物品を回転移送するものである点共通する刊行物3記載の技術3を、刊行物1記載の発明の軸受け構造として採用し、相違点3-2に係る本願発明のようにすることは、当業者にとり、通常の創作力の範囲でなしうる程度のことにすぎない。 また、全体としてみても、本願発明のようにした結果、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術及び刊行物3記載の技術3から予測される以上の顕著な効果が生じたものとも認められない。 3.むすび したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術及び刊行物3記載の技術3に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-05 |
結審通知日 | 2008-06-10 |
審決日 | 2008-06-23 |
出願番号 | 特願2000-54727(P2000-54727) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B65G)
P 1 8・ 121- Z (B65G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関谷 一夫 |
特許庁審判長 |
早野 公惠 |
特許庁審判官 |
柳田 利夫 荘司 英史 |
発明の名称 | 陳列棚等におけるローラーの架設装置 |
代理人 | 山本 典弘 |
代理人 | 涌井 謙一 |
代理人 | 鈴木 一永 |
代理人 | 鈴木 正次 |