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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1182299 |
審判番号 | 不服2007-17506 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-06-22 |
確定日 | 2008-08-07 |
事件の表示 | 平成10年特許願第329807号「ビデオゲーム装置およびビデオゲーム用情報記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月 6日出願公開、特開2000-153063〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年11月19日に出願された特願平10-329807号であって、平成19年5月18日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年6月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成19年7月18日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成19年7月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成19年7月18日付けの手続補正を却下する。 [理由1]新規事項の追加 平成19年7月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲について、 ・補正事項1 請求項1に「前記カメラ選択手段によって前記仮想カメラが選択されてからの時間を検出する時間検出手段、前記時間検出手段によって検出された時間が所定値に達したか否かを判別する判別手段、および前記判別手段によって所定値に達したことが判別されたとき、前記カメラ選択手段によって選択された仮想カメラから他の仮想カメラに切り換えるカメラ切換手段」を追加する補正、 ・補正事項2 請求項6に「前記カメラ選択プログラムよって前記仮想カメラが選択されてからの時間を検出する時間検出プログラム、前記時間検出プログラムによって検出された時間が所定値に達したか否かを判別する判別プログラム、および前記判別プログラムによって所定値に達したことが判別されたとき、前記カメラ選択プログラムによって選択された仮想カメラから他の仮想カメラに切り換えるカメラ切換プログラム」を追加する補正、 とからなるものである。 上記補正事項1及び2により追加された事項が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているか否かについて、以下に検討する。 1 願書に最初に添付した明細書又は図面の記載事項 本件特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、上記補正事項1及び2と関連して、以下の記載がなされている。 (1) 「【0062】 ここで、図11に基づいて、実施例での仮想三次元空間中に配置された第1カメラ,第2カメラ,第3カメラ,第4カメラおよび第5カメラについて説明する。図11の例では、平面矩形の空間のほぼ中央に縦長に壁が設けられ、その壁の一部にドアが形成されている。そして、ドアの一方側(ドアが開く方向の側)にドアに向けられた第3カメラが固定的に設置されている。ドアの反対側には、第4カメラが設置されていて、その第4カメラは、ドアを開けて進入してくるプレイヤオブジェクトを撮影するズームカメラとして設定されている。さらに、空間の2つのコーナに第2カメラおよび第5カメラがそれぞれ個別に固定的に設定されている。第1カメラは、プレイヤオブジェクトに追従して移動する移動カメラとして設定されている。このようにして5つの仮想カメラが三次元空間中に設定されているこの実施例を前提として、以下のカメラ制御を説明する。ただし、具体的なカメラの数,カメラの配置あるいは各カメラの機能ないし役割(固定,移動,またはズーム等)は、必要に応じて適宜変更され得ることはいうまでもない。」 (2) 「【0064】 図10に戻って、ステップS602で第1カメラコードで検出されると、続くステップS603では、第1カメラ制御プログラムが選択的に設定される。・・・ 【0065】 第1カメラ制御プログラムは、第1カメラのための制御プログラムであり、その第1カメラは、先に述べたように、プレイヤオブジェクトに追従して移動する。そこで、図12に詳細に示す第1カメラ制御プログラムでは、まず、ステップS612において、画像データ領域205(図6)のデータを参照して、プレイヤオブジェクトの位置を検出する。次のステップS613では、CPU11は、第1カメラの位置を、プレイヤオブジェクトから第1カメラのでの距離が一定になるように、決定する。ついで、ステップS614では、第1カメラの撮影方向をプレイヤオブジェクトの方向に向ける。したがって、第1カメラは、図13に示すように、プレイヤオブジェクトの後姿を一定距離から撮影することになる。 【0066】 ステップS605(図10)で実行される第2カメラ制御プログラムでは、図14に示すように、最初のステップS615において、先のステップS612(図12)と同様にして、プレイヤオブジェクトの位置を検出し、ついで、ステップS616において、第2カメラの撮影方向をプレイヤオブジェクトに向ける。つまり、第2カメラでは、図11に示す固定位置から、プレイヤオブジェクトを撮影することになる。 【0067】 なお、第5カメラも第2カメラと同様に、固定カメラであるため、ステップS611で選択される第5カメラ制御プログラムは、図14の第2カメラ制御プログラムと同じである。 第3カメラは、図11に示したように、ドアの手前側に固定的に設けられている。したがって、第3カメラは、ドアを出入りするプレイヤオブジェクトを一定距離から撮影するだけである。・・・ 【0068】 図10のステップS609で実行される第4カメラ制御プログラムが図17に詳細に示される。第4カメラが選択されるのは、図11からよくわかるように、プレイヤオブジェクトがドアを通って進入したブロックに設定されている第4カメラコードを検出したときである。そして、図17の最初のステップS618では、その第4カメラコードを検出してステップS609に入ってから、すなわちカメラ切り換えが行われてからのフレーム数を検出する。これは、第4カメラによってプレイヤオブジェクトを撮影する方法が2通りあるからである。そして、フレーム数が所定数以下であるとき、すなわちカメラ切換の直後である場合、ステップS619において“YES”が判断される。この場合、CPU11は、ステップS620において、予め設定された所定の位置から、ドア内に進入したプレイヤオブジェクトを第4カメラで撮影するように、第4カメラを制御する。・・・ 【0069】 カメラ切換直後ではないがカメラ切換から所定フレーム数すなわち所定時間経過していないときには、ステップS621で“NO”が判断される。この場合、続くステップS622において、CPU11は、図19に示すように、プレイヤオブジェクトを近景のなかで撮影するように、第4カメラをズームアップする。つまり、プレイヤオブジェクトを含む比較的狭い範囲を撮影する。 【0070】 所定フレーム数が経過していれば、ステップS621において“YES”が判断され、この場合、CPU11は、ステップS623に示すように、第4カメラから第1カメラに切り換える。 ・・・」 (3) 【図17】には、上記(2)に対応する「第4カメラ制御プログラムを詳細に示すフロー図」が、記載されている。 2 当初明細書等の記載から理解できる事項 以上摘記した当初明細書等の記載をまとめると以下のようになる。 (1)カメラコードが検出されると、カメラ制御プログラムが選択的に設定されること。 (2)第4カメラ制御プログラムは、第4カメラコードを検出した直後から、所定フレーム数すなわち所定時間経過するまで、第4カメラを選択し、所定フレーム数すなわち所定時間経過後は、第1カメラに切り換えること。 (3)仮想カメラとして、移動カメラである第1カメラ、固定的に設定された第2カメラ及び第5カメラ、固定的に設置された第3カメラ、ズームカメラである第4カメラが、カメラコードとして、第1カメラコード、第4カメラコード、それぞれ例示されていること。 (4)具体的なカメラの数、カメラの配置あるいは各カメラの機能ないし役割(固定,移動,またはズーム等)は、必要に応じて適宜変更され得ること。 3 当審の判断 上記補正事項1及び2により追加された事項は、検出されたカメラコードに対応付けられた仮想カメラを選択するときは、必ず、仮想カメラが選択されてからの時間を検出し、検出された時間が所定値に達したことが判別されたとき、選択された仮想カメラから他の仮想カメラに切り換えることを含むものである。 一方、カメラコードに対応付けられた仮想カメラが選択されてからの時間を検出し、検出された時間が所定値に達したことが判別されたとき、選択された仮想カメラから他の仮想カメラに切り換えることについて、当初明細書等では、第1カメラコード及び第4カメラコードという複数のカメラコードのうち、第4カメラコードを検出した場合に、第4カメラ制御プログラムが、直後に選択された第4カメラを所定時間経過後に第1カメラに切り換えること、のみが記載されている。 また、上記2(4)からは、例えばズームカメラである第4カメラのズーム機能をなくす等の、単体の「各カメラの機能ないし役割(固定,移動,またはズーム等)」は適宜変更され得るものの、複数の仮想カメラ間の、切り換えや選択という機能ないし役割(、及びそのためのカメラ制御プログラム)が、適宜変更され得ることは記載されていない。 加えて、他に当初明細書等の記載された事項から、カメラの切り換えを必ず行うように変更することが、自明な事項とも認められない。 したがって、上記補正事項1及び2により追加された事項を含む本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものではない。 4 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [理由2]目的制限違反 仮に、本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであったとした場合、本件補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とする補正に該当するか否かについて検討する。 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について、上記「[理由1]新規事項の追加」欄で、「・補正事項1」及び「・補正事項2」として記載した事項からなるものである。 補正事項1で追加する記載により、選択される仮想カメラが、本件補正前のカメラコードのみと対応付けられたものではなくなり、カメラコードに加えて(所定)時間とも対応付けられたものとなったので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明には存在しなかった、時間と仮想カメラの対応に基づく新たな「解決しようとする課題」を有するものである。 したがって、補正事項1、及び補正事項1における各「手段」が各「プログラム」と変更されるのみであって、上述と同様の理由を有する補正事項2は、「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものとは認められない。 また、補正事項1、及び補正事項2が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明、の何れにも該当しないことは明らかである。 したがって、補正事項1、及び補正事項2は、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号に該当せず、同項1号,3号又は4号にも該当しないことが明らかであるから、本件補正は同項の規定に違反している。 以上のとおり、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合したとしても、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 [理由3]独立特許要件違反 仮に、本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号を目的とするものに該当するとした場合に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至10に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、「判別手段によって所定値に達したことが判別されたとき、前記カメラ選択手段によって選択された仮想カメラから他の仮想カメラに切り換えるカメラ切換手段」と記載されている。 しかしながら、請求項1には、「カメラ選択手段によって選択された仮想カメラで前記プレイヤオブジェクトを撮影した画像信号を発生する画像信号発生手段」以外に、仮想カメラを具体的に利用する記載がなされておらず、前記「カメラ選択手段によって選択された仮想カメラ」とは異なる、切り換えられた「他の仮想カメラ」が、請求項1に係る発明でどのように利用されるのか、明確でない。 また仮に、「カメラ切換手段」が、「カメラ選択手段によって選択された仮想カメラ」として「他の仮想カメラ」に切り換えて選択するものと解釈しても、請求項1に係る発明は「カメラコード検出手段によって検出されたカメラコードに対応付けられた仮想カメラを選択するカメラ選択手段」を有するので、「カメラ切換手段」の所定値の検出時間よりも短い時間間隔で「カメラ選択手段」が仮想カメラの選択を行う場合には、「カメラ切換手段」による切り換えが行われないか、「カメラ切換手段」と「カメラ選択手段」の間で異なる仮想カメラの選択という矛盾する動作を行うこととなって、請求項1に係る発明が明確でない。 請求項1を引用する請求項2乃至5に係る発明、及び請求項1の上記記載と同様の記載を有する請求項6乃至10に係る発明も、上記請求項1に係る発明と同様の理由により、明確でない。 したがって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至10に係る発明は、明確なく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 以上のとおり、仮に、本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号を目的とするものに該当するとした場合、本件補正は、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記「第2」欄で前述した理由により、平成19年7月18日付けの手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき発明は、平成19年1月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。) 「プレイヤオブジェクトおよび地形オブジェクトの画像データをプログラムに従って処理することによって、仮想三次元空間中の地形オブジェクト上に存在するプレイヤオブジェクトを表示するための、画像信号を発生してディスプレイに供給するビデオゲーム装置であって、 プレイヤオブジェクトの表示のためにプレイヤオブジェクト画像データを発生するプレイヤオブジェクト画像データ発生手段、および 地形オブジェクトを表示するために地形オブジェクト画像データを発生する地形オブジェクト画像データ発生手段を備え、 前記地形オブジェクト画像データはカメラコードを含み、 前記仮想三次元空間中に存在する前記プレイヤオブジェクトを撮影するために複数の仮想カメラを設定しておき、 前記カメラコードは、前記複数の仮想カメラのいずれかに対応付けられており、さらに 前記プレイヤオブジェクトの位置に基づいて当該位置に存在する前記地形オブジェクトの前記地形オブジェクト画像データに含まれている前記カメラコードを検出するカメラコード検出手段、 前記カメラコード検出手段によって検出されたカメラコードに対応付けられた仮想カメラを選択するカメラ選択手段、および 前記カメラ選択手段によって選択された仮想カメラで前記プレイヤオブジェクトを撮影した画像信号を発生する画像信号発生手段を備える、ビデオゲーム装置。」 2 引用例及びその記載事項 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平8-224376号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は画像処理装置に係わり、特にゲーム装置に関する。さらに詳しくは、複数人の参加を許容する通信対戦型ゲーム装置に関する。」 イ 「【0014】 メモリ30は画面上の表示体(キャラクタ、背景画像等)を連続的に移動させるためのモーションデータを備えており、このモーションデータに基づいて、ゲーム展開手段32は、ディスプレイ12に模擬運転感覚を達成するための移動映像を表示する画像信号を形成し、これを表示制御回路22に与えるようになっている。 【0015】 モーションデータとしては、例えば、自己の模擬運転車両がコース上を移動する平常運転状況、及び模擬運転の異常状態であるクラッシュ、スピン等に対応したものが用意されている。各模擬運転装置のゲーム展開手段はメモリ30のデータと操作装置14からのデータに基づいて、3次元座標上に模擬運転の仮想空間を形成するとともに、これを運転者側からの視点から見た画像にして表示制御回路22に供給することにより、ディスプレイ12には、運転者側の視点に相当する映像が連続的に表示される。なお、ここで、運転者側の視点には運転席からの視点を含むことは勿論であるが、これだけに限定されることなく、自分が運転する車両(キャラクタの一つ)を斜め後方より見た視点等も含まれるとする。また、後述するように、このゲーム展開手段は、運転者であるゲーム装置への参加者以外の視点に基づく画像データを形成することもできる。 【0016】 モーションデータは、キャラクタ、背景画像の各単位時間毎の映像を連続したものからなり、このモーションデータにより模擬運転の一連の動作を再現することができる。ゲーム展開手段32は操作装置14からの操作信号に基づき、必要なモーションデータを得、キャラクタ等が画面上の所定位置で選択されたモーション(動作)を採るような画像信号を演算出力する。ここで、キャラクタとしては、例えば模擬運転競技が実現されるコース、車両、壁等がある。このキャラクタは、例えばポリゴンデータによって構成される。その他、スクロールデータによって構成される背景画像も存在する。」 ウ 「【0018】 すなわち、各模擬運転装置のゲーム展開手段32は、全ての模擬運転装置の操作状況を全て取り込んだ共通の仮想空間を合成し、各模擬運転装置毎にそれぞれの運転者側からの視点に基づく画像データを合成してこれを各ディスプレイに表示する。したがって、各運転模擬装置のディスプレイには他の運転模擬装置との関連において模擬運転画面が再生され、例えば、自己の運転模擬車両が他人の模擬運転車両より後方にあるときに、前面にあるディスプレイには他人の模擬車両の後部が表示される。このために、それぞれの模擬運転装置への参加者は、この模擬運転装置を介して他人と模擬運転の優劣を競うことが可能になる。ゲーム展開手段32は三次元座標上で画像信号を形成しており、ディスプレイ12には三次元的な画面が合成・表示される。このディスプレイには、キャラクタや背景を一画面として表示すると共に、これらが移動表示される。」 エ 「【0021】 一方、S400においてコインの投入が無いと、模擬運転装置への参加要求が無いと判定されて次の処理に移行する。S408では、ゲームの名称、ゲームの概要、ゲームへの参加を促す等の初期画面(アドバタイズ)を表示し、他の模擬運転装置へのエントリがあるまでこの処理が継続される(S410)。S410において、他の模擬運転装置への参加要求があると、この時点からこの模擬運転装置は他人が模擬運転を競うことを表示する中継モニタとして動作するようになる。すなわち、この模擬運転装置は、ゲームへの参加者を運転者と仮定すると、運転者以外の視点からの映像を表示する。ここで、運転者以外の視点は、模擬運転競技が展開されているコースのコーナー等所定の箇所における視点、あるいは、コース全体を上方より臨む視点(いわゆる上空カメラ)等、特に限定されないが、本実施例における説明は、便宜上この二つの視点に基づくものとする。なお、ここで述べた視点は、実際の運転競技を中継するカメラに相当するものであるから、これを「カメラ」と称することもある。 【0022】 S410において、他のエントリが在ったと判定されると、ゲーム展開手段32はエントリが要求された運転模擬装置の各種データを通信回線20を介して取り込みながら中継対象郡を決定する処理(S414)を実行する。中継対象群の決定は視点位置を決定することにより実行される。この実施例の運転模擬装置は、この視点位置の決定の一例として、複数の参加者による模擬運転競技が順次展開されている3次元仮想空間の中で最も模擬車両が多い部分に向けて視点位置を設定することを採用している。したがって、この部分がディスプレイに表示される中継対象群となる。なお、視点の移動はその位置、向き、角度等によって特定され、その視点から見た所定の映像が拡大或いは縮小されてディスプレイ12に表示される。これら視点の位置を複数設定することもできる。模擬運転車両の多い箇所は、例えば、仮想空間の3次元座標系における模擬車両の集合度によって判定できる。 【0023】 S414は、中継の対象となった複数の車両の集合の中から中継対象の車両を決定する処理を実行する。各参加者の模擬運転車両毎に中継対象の車両であることを示す「中継対象フラグ(F)」が用意されており、F=1のとき中継対象の車両であることを示し、F=0のときは中継対象の模擬車両でないことを示す。各運転模擬装置のメモリ30は、各模擬運転車両毎にフラグ(F)の記憶領域を備える。S414では、このフラグが立っている模擬車両を中継車両として決定する。中継対象の選択処理、すなわちフラグのセット、あるいはリセットの動作については図5において後述する。 【0024】 この模擬運転装置は、三次元仮想空間内のデータから画像データを得るための視点を、既述のように、この空間の上方(上空)とコースを臨む複数の所定位置に固定し、これらを切り換え可能にしている。固定カメラの切換は、模擬運転競技の進行に応じて順次行われ、中継対象群との距離が最も小さいカメラが選択されるものとする。S416は中継対象の車両が固定カメラの位置を通過したか否かを判定し、固定カメラの位置を通過する以前は、固定カメラからの画像データに基づく映像をディスプレイに表示し(S418)、固定カメラの通過が完了した場合は、次の固定カメラとの距離が所定値に達するまで、上空カメラからの映像に切り換えている(S420)。次いで、全ての模擬運転装置における模擬運転競技が終了するか否か判定され(S422)、終了していないと判定された場合はS412の処理に移行し、終了したと判定された場合は、中継処理を終了する。」 オ 「【0030】 以上説明したように、本実施例によれば模擬運転装置とは別に中継用モニタを備えなくても、中継画面を参加が要求されていない模擬運転装置のディスプレイに表示することができる。また、各模擬運転装置への参加要求有無は、コインシュートへのコインの投入の有無により簡単に判定することができる。なお、参加が要求されていない模擬運転装置が複数存在する場合は、一つの模擬運転装置に中継映像を表示し、残り運転装置に初期画面をそのまま継続して表示しても良い。また、模擬運転装置毎に視点を変えた中継映像を表示することもできる。さらに、複数の視点からなる中継映像を一つの模擬運転装置に表示するようにしても良い。また、参加が要求されている模擬運転装置のディスプレイの一部に中継映像を表示するようにしても良い。」 上記記載事項ア乃至オ、及び図面から、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明1」という。) 「模擬運転競技が実現されるコース、自己の模擬運転車両等のキャラクタの各単位時間毎の映像を連続したモーションデータに基づいて、3次元座標上の仮想空間中の模擬運転競技が実現されるコース上を自己の模擬運転車両が移動する表示をするための、画像信号を形成して、参加が要求されている模擬運転装置のディスプレイ12の一部に中継映像を表示するようにしたゲーム装置であって、 模擬運転競技が実現されるコース、自己の模擬運転車両等の各単位時間毎の映像を連続したモーションデータに基づいて、3次元座標上の仮想空間中の模擬運転競技が実現されるコース、自己の模擬運転車両等を表示し、 画像データを得るために、三次元仮想空間内の上方(上空)とコースを臨む複数の所定位置に視点(カメラ)を固定し、 複数のカメラは、切り換え可能であり、模擬運転競技の進行に応じて、最も模擬車両が多い部分である中継対象群との距離が最も小さいカメラが選択され、中継対象の車両が固定カメラの位置を通過したか否かを判定し、固定カメラの位置を通過する以前は、固定カメラからの画像データに基づく映像をディスプレイに表示し、固定カメラの通過が完了した場合は、次の固定カメラとの距離が所定値に達するまで、上空カメラからの映像に切り換え、 切り換えられたカメラからの画像データに基づく映像をディスプレイに表示する、ゲーム装置。」 3 対比 そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。 ・対応関係1 引用発明1の「自己の模擬運転車両」「模擬運転競技が実現されるコース」「3次元座標上の仮想空間」「コース上を自己の模擬運転車両が移動する」「ゲーム装置」は、本願発明の「プレイヤオブジェクト」「地形オブジェクト」「仮想三次元空間」「地形オブジェクト上に存在するプレイヤオブジェクト」「ビデオゲーム装置」に相当する。 引用発明1の「キャラクタの各単位時間毎の映像を連続したモーションデータ」は、映像データであるので、本願発明の「画像データ」に相当する。 引用発明1のモーションデータがプログラムに従って処理されることは、自明である。 引用発明1の「画像信号を形成して、参加が要求されている模擬運転装置のディスプレイ12の一部に中継映像を表示する」ためには、画像信号がディスプレイに供給されていることは、自明である。 ・対応関係2 引用発明1の「模擬運転競技が実現されるコース、自己の模擬運転車両等の各単位時間毎の映像を連続したモーションデータに基づいて、3次元座標上の仮想空間中の模擬運転競技が実現されるコース、自己の模擬運転車両等を表示」するためには、「模擬運転競技が実現されるコース」及び「自己の模擬運転車両」の表示のための画像データが発生していることは自明であり、本願発明の「プレイヤオブジェクト画像データ発生手段」、及び「地形オブジェクト画像データ発生手段」の各々に相当する発生手段を有するといえる。 ・対応関係3 引用発明1の「画像データを得るために、三次元仮想空間内の上方(上空)とコースを臨む複数の所定位置に視点(カメラ)を固定」することは、本願発明の「仮想三次元空間中に存在する前記プレイヤオブジェクトを撮影するために複数の仮想カメラを設定」すること、に相当する。 ・対応関係4 引用発明1の「複数のカメラは、切り換え可能であり、模擬運転競技の進行に応じて、最も模擬車両が多い部分である中継対象群との距離が最も小さいカメラが選択され、中継対象の車両が固定カメラの位置を通過したか否かを判定し、固定カメラの位置を通過する以前は、固定カメラからの画像データに基づく映像をディスプレイに表示し、固定カメラの通過が完了した場合は、次の固定カメラとの距離が所定値に達するまで、上空カメラからの映像に切り換え」ることは、本願発明の「前記地形オブジェクト画像データはカメラコードを含み」「カメラコードは、前記複数の仮想カメラのいずれかに対応付けられており、さらに前記プレイヤオブジェクトの位置に基づいて当該位置に存在する前記地形オブジェクトの前記地形オブジェクト画像データに含まれている前記カメラコードを検出するカメラコード検出手段、前記カメラコード検出手段によって検出されたカメラコードに対応付けられた仮想カメラを選択する」ことと、仮想カメラを選択する点で一致し、手段を有することは自明であるので、本願発明の「仮想カメラを選択するカメラ選択手段」を備える点で一致する。 ・対応関係5 引用発明1の「切り換えられたカメラからの画像データに基づく映像をディスプレイに表示する」ことは、本願発明の「選択された仮想カメラで前記プレイヤオブジェクトを撮影した画像信号を発生する」ことに相当し、発生手段を有することは自明である。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「プレイヤオブジェクトおよび地形オブジェクトの画像データをプログラムに従って処理することによって、仮想三次元空間中の地形オブジェクト上に存在するプレイヤオブジェクトを表示するための、画像信号を発生してディスプレイに供給するビデオゲーム装置であって、 プレイヤオブジェクトの表示のためにプレイヤオブジェクト画像データを発生するプレイヤオブジェクト画像データ発生手段、および 地形オブジェクトを表示するために地形オブジェクト画像データを発生する地形オブジェクト画像データ発生手段を備え、 前記仮想三次元空間中に存在する前記プレイヤオブジェクトを撮影するために複数の仮想カメラを設定しておき、 仮想カメラを選択するカメラ選択手段、および 前記カメラ選択手段によって選択された仮想カメラで前記プレイヤオブジェクトを撮影した画像信号を発生する画像信号発生手段を備える、ビデオゲーム装置。」、 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1 仮想カメラを選択するカメラ選択手段として、本願発明では「地形オブジェクト画像データはカメラコードを含み」「カメラコードは、前記複数の仮想カメラのいずれかに対応付けられており、さらに前記プレイヤオブジェクトの位置に基づいて当該位置に存在する前記地形オブジェクトの前記地形オブジェクト画像データに含まれている前記カメラコードを検出するカメラコード検出手段、前記カメラコード検出手段によって検出されたカメラコードに対応付けられた仮想カメラを選択するカメラ選択手段」であるのに対し、引用発明1では「複数のカメラは、切り換え可能であり、模擬運転競技の進行に応じて、最も模擬車両が多い部分である中継対象群との距離が最も小さいカメラが選択され、中継対象の車両が固定カメラの位置を通過したか否かを判定し、固定カメラの位置を通過する以前は、固定カメラからの画像データに基づく映像をディスプレイに表示し、固定カメラの通過が完了した場合は、次の固定カメラとの距離が所定値に達するまで、上空カメラからの映像に切り換え」る手段である点。 4 当審の判断 ・相違点1について 引用発明1では、切り換えられるカメラを、模擬車両が多い部分である中継対象群と複数のカメラの距離に応じて定めていることは、中継対象群と複数のカメラの間で最も近いものを選択することや、次の固定カメラとの距離が所定値に達するまで上空カメラを選択するという事項から、明らかである。また、引用発明1では、複数のカメラがコースのコーナー等の所定位置に固定されている。 したがって、模擬車両が多い部分である中継対象群と複数のカメラの距離に応じて定められる、切り換えられるカメラは、中継対象群のコース上の位置に応じて定まることは明らかであって、切り換えられるカメラを、事前に中継対象群のコース上の位置に応じて定めておくようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。 その際に、地形に関するデータに、直接表示されないデータを含ませることが、周知慣用の技術手段である(例えば、特開平8-332280号公報の段落【0039】【0040】【0072】、特開平7-116355号公報の段落【0062】【0083】や特開平10-31412号公報の請求項3,6、段落【0059】、等参照。)ことから、地形オブジェクトであるコースに、切り換えられるカメラとしてのデータ、言い換えれば「カメラコード」、を含ませることは、前記容易に推考し得るカメラをコース上の位置に応じて定めておくための具体化手段として、適宜採用される事項である。また、カメラコードがコースに含まれていることから、中継対象群の位置に基づいてコースから、カメラコードを検出するカメラコード検出手段を有することは、明らかである。 中継対象群をどのようなものとするかは、ゲームの興趣性に基づき適宜選択される事項であって、「プレイヤオブジェクト」とすることは設計事項である。 してみれば、相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたといえる。 そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び周知慣用の技術手段から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。 したがって、本願発明は、引用発明1及び周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-04 |
結審通知日 | 2008-06-10 |
審決日 | 2008-06-23 |
出願番号 | 特願平10-329807 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(A63F)
P 1 8・ 537- Z (A63F) P 1 8・ 572- Z (A63F) P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清藤 弘晃、宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 武田 悟 |
発明の名称 | ビデオゲーム装置およびビデオゲーム用情報記憶媒体 |
代理人 | 山田 義人 |