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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580364 審決 特許
無効2007800191 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  C08G
審判 一部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  C08G
審判 一部無効 2項進歩性  C08G
管理番号 1182861
審判番号 無効2007-800213  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-03 
確定日 2008-07-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3894326号発明「合成樹脂発泡体の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3894326号の請求項1、2、23、24に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由
第1.手続の経緯
特許第3894326号は、平成14年10月21日(優先権主張 平成13年11月13日、日本国)を国際出願日とする出願に係る特許であって、平成18年12月12日に特許権の設定の登録(請求項の数36)がなされたものである。
これに対して、平成19年10月3日付けで請求人から本件特許無効審判の請求(審判の請求に係る請求項1、2、13、14、25及び26)がなされ、その後、当審において以下の手続がなされたものである。
答弁書(被請求人) 平成19年12月21日付け
訂正請求書(被請求人) 平成19年12月21日付け
弁駁書(請求人) 平成20年 2月 6日付け
上申書(請求人) 平成20年 3月17日付け
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成20年 4月10日付け
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成20年 4月10日付け
第1回口頭審理 平成20年 4月10日
訂正請求書の手続補正書(被請求人) 平成20年 4月24日付け
上申書(被請求人) 平成20年 4月24日付け
上申書(請求人) 平成20年 4月25日付け


第2.訂正の請求について
1.訂正の内容
被請求人による訂正の請求は、特許第3894326号の特許権の設定の登録時の明細書(以下、「特許明細書」という。)を、平成19年12月21日付けの訂正請求書(平成20年4月24日付け手続補正書により補正)に添付した訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?15からなるものである。

1-1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。」

「【請求項1】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4である発泡体の製造方法。」
と訂正する。

1-2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の
「【請求項2】
プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7以上である請求項1に記載の発泡体の製造方法。」

「【請求項2】
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する請求項1に記載の発泡体の製造方法。」
と訂正する。

1-3.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の
「【請求項3】
発泡剤として、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含む混合物を使用する請求項1または2に記載の発泡体の製造方法。」

「【請求項3】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。」
と訂正する。

1-4.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6の
「【請求項6】
発泡剤として、更にグリコール化合物を含む混合物を使用する請求項1に記載の発泡体の製造方法。」

「【請求項6】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更にグリコール化合物を含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。」
と訂正する。

1-5.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9の
「【請求項9】
発泡剤として、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと
(ii)グリコール化合物を含む混合物を使用する請求項1に記載の発泡体の製造方法。」

「【請求項9】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。」
と訂正する。

1-6.訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13及び14を削除する。

1-7.訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15の
「【請求項15】
更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含む請求項13に記載の発泡剤。」

「【請求項13】
ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含み、
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上となる発泡剤。」
と訂正する。

1-8.訂正事項8
特許請求の範囲の請求項18の
「【請求項18】
更に、グリコール化合物を含む請求項13に記載の発泡剤。」

「【請求項16】
ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、グリコール化合物を含み、
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上となる発泡剤。」
と訂正する。

1-9.訂正事項9
特許請求の範囲の請求項21の
「【請求項21】
更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと
(ii)グリコール化合物を含む請求項13に記載の発泡剤。」

「【請求項19】
ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を含み、
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上となる発泡剤。」
と訂正する。

1-10.訂正事項10
特許請求の範囲の請求項25の
「【請求項25】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。」

「【請求項23】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.7?4であるプレミックス。」
と訂正する。

1-11.訂正事項11
特許請求の範囲の請求項26の
「【請求項26】
プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.7以上である請求項25に記載のプレミックス。」

「【請求項24】
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する請求項23に記載のプレミックス。」
と訂正する。

1-12.訂正事項12
特許請求の範囲の請求項27の
「【請求項27】
発泡剤として、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含む混合物を用いる請求項25に記載のプレミックス。」

「【請求項25】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。」
と訂正する。

1-13.訂正事項13
特許請求の範囲の請求項30の
「【請求項30】
発泡剤として、更に、グリコール化合物を含む混合物を用いる請求項25に記載のプレミックス。」

「【請求項28】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、グリコール化合物を含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。」
と訂正する。

1-14.訂正事項14
特許請求の範囲の請求項33の
「【請求項33】
発泡剤として、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと
(ii)グリコール化合物を含む混合物を用いる請求項25に記載のプレミックス。」

「【請求項31】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。」
と訂正する。

1-15.訂正事項15
特許請求の範囲の請求項16、17、19、20、22?24、28、29、31、32、34?36の項番号を、それぞれ、請求項14、15、17、18、20?22、26、27、29、30、32?34に繰り上げる訂正をする。
これに伴い、訂正後の請求項14、15、17、18、20?22、26、27、29、30、32?34において引用する請求項の項番号を、それぞれ対応する訂正後の請求項の項番号に訂正する。

2.訂正の適否
2-1.訂正事項1について
訂正事項1は、特許無効審判の請求がされた請求項1に係る訂正事項であって、請求項1の発泡体の製造方法において、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比を、特許明細書の段落【0032】の記載に基づいて、「25℃において1.5以上」から「25℃において1.7?4」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-2.訂正事項2について
訂正事項2は、特許無効審判の請求がされた請求項2に係る訂正事項であって、請求項2の発泡体の製造方法において、引用する請求項1についての訂正事項1における限定に加えて、発泡剤として使用する1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を、特許明細書の段落【0035】の記載に基づいて、それぞれ、90?54重量%と10?46重量%に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-3.訂正事項3について
訂正事項3は、特許無効審判の請求がされていない請求項3に係る訂正事項であって、訂正前の請求項3で引用する請求項1及び2が訂正事項1及び2によって訂正されたことに伴い、訂正前後の請求項3の内容を同一のものとするために、請求項3に訂正前の請求項1の要件を加え、請求項1又は2を引用する従属形式から独立形式に改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-4.訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5は、特許無効審判の請求がされていない請求項6及び9に係る訂正事項であって、訂正前の請求項6及び9で引用する請求項1が訂正事項1によって訂正されたことに伴い、訂正前後の請求項6及び9の内容をそれぞれ同一のものとするために、請求項6及び9に訂正前の請求項1の要件を加え、請求項1を引用する従属形式から独立形式に改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4及び5が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-5.訂正事項6について
訂正事項6は、特許無効審判の請求がされた請求項13及び14に係る訂正事項であって、訂正前の請求項13及び14を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項6が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-6.訂正事項7?9について
訂正事項7?9は、特許無効審判の請求がされていない請求項15、18及び21に係る訂正事項であって、訂正事項6によって請求項13及び14が削除されたことに伴い、訂正前の請求項15、18及び21に同請求項13の要件を加えて、請求項13を引用する形式から独立形式に改めるとともに、それぞれ項番号を繰り上げて請求項13、16及び19とするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項7?9が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-7.訂正事項10について
訂正事項10は、特許無効審判の請求がされた請求項25に係る訂正事項であって、訂正前の請求項25のプレミックスにおいて、その気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比を、特許明細書の段落【0032】の記載に基づいて、「25℃において1.5以上」から「25℃において1.7?4」に限定するとともに、訂正事項6によって請求項13及び14が削除されたことに伴い、項番号を繰り上げて請求項23とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項10が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-8.訂正事項11について
訂正事項11は、特許無効審判の請求がされた請求項26に係る訂正事項であって、訂正前の請求項26のプレミックスにおいて、引用する請求項25についての訂正事項10における限定に加えて、発泡剤として使用する1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を、特許明細書の段落【0035】の記載に基づいて、それぞれ、90?54重量%と10?46重量%に限定するとともに、訂正事項6によって請求項13及び14が削除されたことに伴い、項番号を繰り上げて請求項24とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項11が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-9.訂正事項12?14について
訂正事項12?14は、特許無効審判の請求がされていない請求項27、30及び33に係る訂正事項であって、訂正前の請求項27、30及び33で引用する請求項25が訂正事項10によって訂正されたことに伴い、訂正前後の請求項27、30及び33の内容をそれぞれ同一のものとするために、訂正前の請求項27、30及び33に同請求項25の要件を加え、請求項25を引用する従属形式から独立形式に改めるとともに、訂正事項6によって請求項13及び14が削除されたことに伴い、それぞれ項番号を繰り上げて請求項25、28及び31とするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項12?14が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

2-10.訂正事項15について
訂正事項15は、特許無効審判の請求がされていない請求項16、17、19、20、22?24、28、29、31、32、34?36に係る訂正事項であって、訂正事項6によって請求項13及び14が削除されたことに伴い、訂正前の請求項16、17、19、20、22?24、28、29、31、32、34?36の項番号及びこれらの請求項で引用する請求項の項番号をそれぞれ繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項15が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

3.まとめ
したがって、上記訂正事項1?15からなる本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
なお、訂正事項1、2、6、10及び11は、特許無効審判の請求がされた請求項1、2、13、14、25及び26に係る訂正事項であり、訂正事項3?5、7?9、12?15は、特許無効審判の請求がされていない請求項3?6、9、15?24、27?36に係る訂正事項であって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものではないから、訂正事項1?15については、同条第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定は適用されない。
また、本件訂正の適否について当事者間に争いはない。


第3.本件発明
第2.で述べたとおり、本件訂正は認められたから、特許第3894326号の請求項1、2、23及び24に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明23」及び「本件発明24」という。)は、訂正明細書の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、23及び24に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4である発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する請求項1に記載の発泡体の製造方法。
【請求項23】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.7?4であるプレミックス。
【請求項24】
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する請求項23に記載のプレミックス。」


第4.請求人の主張の概要
請求人は、特許第3894326号の請求項1、2、13、14、25及び26に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めたところ、本件訂正により、請求項13及び14は削除され、請求項25及び26はそれぞれ請求項23及び24に訂正された。
そして、審判請求書、本件訂正後に請求人の提出した平成20年2月6日付け弁駁書、同年3月17日付け上申書、同年4月10日付け口頭審理陳述要領書及び同年4月25日付け上申書の記載からみて、本件特許無効審判の請求の趣旨は、本件訂正後の特許第3894326号の請求項1、2、23及び24に係る発明についての特許(以下、まとめて「本件特許」ということがある。)を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めるものであり、請求人は、その証拠方法として、以下の甲第1号証?甲第9号証の2及び参考資料1を提出し、以下の無効理由1及び2により、本件特許は無効にすべきものであると主張しているものと認められる。

1.証拠方法
甲第1号証:特開2001-247645号公報
甲第2号証:特開2001-181368号公報
甲第3号証:特開2001-310923号公報
甲第4号証:実験成績証明書(2007年4月26日 セントラル硝子(
株)化学研究所 玉井良一作成)
甲第5号証:特願2003-544101号についての平成18年10月
23日に提出された意見書
甲第7号証:施工部会・ウレタン対策専門部会編「ウレタン火災を防ごう
!」,社団法人建築業協会,平成11年10月発行
甲第8号証の1:前野昌弘・三國彰著「図解でわかる 統計解析」,株式
会社日本実業出版社,2005年6月1日第16刷発行
,第84?85頁
甲第8号証の2:三菱商事フューチャーズ証券株式会社のウェブページの
一部(「為替レート相関表」)を印字したもの(200
8年4月25日付け)
甲第8号証の3:ヤフーバリューインサイト株式会社のウェブページの一
部(「多変量解析の基礎知識」)を印字したもの(20
08年4月25日付け)
甲第9号証の1:日立化成テクノサービス株式会社のウェブページの一部
(「物性試験:液状特性」)を印字したもの(2008
年4月24日付け)
甲第9号証の2:危険物技術研究会編「危険物確認試験実施マニュアル」
,新日本法規出版株式会社,平成2年5月18日初版第
2刷発行,第54?65頁
参考資料1:日本ウレタン工業協会のウェブページの一部(「もっと!知
りたいウレタン」及び「トピックス」)を印字したもの(そ
れぞれ2008年1月21日付け及び2008年1月24日
付け)

なお、請求人の提出した甲第6号証は、平成20年4月10日に行われた第1回口頭審理において参考資料1とされた(第1回口頭審理調書 請求人の2の項)。
また、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証の成立について当事者間に争いはない。

2.無効理由の概要
2-1.無効理由1
本件発明1及び23は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1及び23についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

2-2.無効理由2
本件発明1、2、23及び24は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1、2、23及び24についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。


第5.被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出し、本件特許は、上記無効理由1及び2によっては無効とすることができないと主張している。

1.証拠方法
乙第1号証:特許第3894326号公報
乙第2号証:特許庁編「特許・実用新案 審査基準」,第II部第2章新規 性・進歩性の抜粋

なお、乙第1号証及び乙第2号証の成立について当事者間に争いはない。


第6.甲号各証の記載事項
請求人が提出した証拠方法のうち、本件特許に係る出願の優先権主張日前に日本国内において頒布されたことが明らかな甲第1号証及び甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

1.甲第1号証の記載事項
(摘示1-1)
「【請求項1】 ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、発泡剤、触媒、及びその他の助剤を混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームであって、
ポリオール成分として、フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分を用いたイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含む2種以上のハイドロフルオロカーボンを用いたことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
・・・
【請求項3】 請求項1又は2において、ハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】 請求項3において、ハイドロフルオロカーボンが、5?95重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと95?5重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】 請求項4において、ハイドロフルオロカーボンが、20?80重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと80?20重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
・・・
【請求項11】 請求項1ないし10のいずれか1項において、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項12】 1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外の発泡剤として常温常圧で沸点が0℃以下の低沸点ハイドロフルオロカーボンを用いて、請求項11の硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、該低沸点ハイドロフルオロカーボンをミキシングヘッド内又はミキシングヘッドへの他成分の導入管路に直接注入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
・・・」(特許請求の範囲)
(摘示1-2)
「【0004】硬質ポリウレタンフォームにおいては、現在、主たる発泡剤として用いられているジクロロモノフルオロエタン(HCFC-141b)にはオゾン層破壊の問題がある。このため、これに代る次世代の発泡剤として、オゾン層を破壊することのないハイドロフルオロカーボン(HFC)が候補に挙げられている。HFC類にはテトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)などがあり、これらのなかには、オゾン破壊性がなくHCFC全廃後の発泡剤として有力視される化合物もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、いずれのHFCもポリオール成分及びイソシアネート成分に対して溶解し難いという性質を持つために、単独で使用した場合、配合液の内圧が上昇して容器の破裂や液の沸騰などが起こったり、可燃性をもつものもあり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点がある。特に、フォームの難燃化を図る場合、ポリオール成分としてフタル酸或いはフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物の適用が不可欠となるが、この場合には、とりわけHFCの溶解性が低く、配合液の内圧が上昇し易かった。」(段落【0004】?【0005】)
(摘示1-3)
「【0011】このようなイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームにおいて、発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを単独で用いた場合、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンは可燃性であるため得られるフォームの難燃性を低下させる恐れがある上に、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンは分子量が大きいために所定のフォーム密度を得るための必要重量が多い。このため、発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを単独で用いることは安全面及び経済面から好ましくない。
【0012】本発明では、このような1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとを併用することで、発泡剤を混合した配合液の内圧の上昇を抑え、高難燃性で低密度の硬質ポリウレタンフォームを安価に得ることが可能とされる。」(段落【0011】?【0012】)
(摘示1-4)
「【0029】(4)(註:○で囲まれた数字が表記できないため、()付きの数字で代用。以下同様。) 発泡剤
発泡剤としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含む2種以上のHFCを用いる。1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとしては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン等が挙げられ、このうち、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンが好適に用いられる。
【0030】1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを用いる場合には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを5?95重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを95?5重量%、特に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを20?80重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを80?20重量%とすることが好ましく、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを用いる場合には、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを2?12重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを98?88重量%、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタンを5?10重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを95?90重量%とするのが好ましい。上記範囲を超えて1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンが多いと難燃性の低下、価格の高騰、共沸成分としての沸点の上昇の問題があり、逆に1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンが少ないと、低沸点発泡剤の濃度増大による配合液の内圧の上昇、配合液粘度の上昇がみられる。また、1,1,1,2‐テトラフルオロエタンは、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと混合して配合液中に投入しても良いし、第3成分として直接ミキシングヘッドなどに混合しても良い。」(段落【0029】?【0030】)
(摘示1-5)
「【0038】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0039】実施例1?5、比較例1?4
表1に示した配合処方に従って、配合液Aを調製すると共に、ポリイソシアネートを用意した。ポリイソシアネート及び配合液Aに用いた原料は次の通りである。
【0040】
ポリイソシアネート: 日本ポリウレタン工業(株)製
粗製ジフェニルメタンジイソシアネート
(NCO%:30.5)
ポリオールA: 第一工業製薬(株)製 マンニッヒ変性ポリオール
水酸基価: 700mg-KOH/g
ポリオールB: 武田薬品工業(株)製 エチレンジアミンベースポリエ
ーテルポリオール
水酸基価: 685mg-KOH/g
ポリオールC: 東邦理化(株)製 フタル酸ベースポリエステルポリオ
ール
水酸基価: 240mg-KOH/g
ポリオールD: 旭硝子(株)製 エチレンジアミン・シュークロースベ
ースポリエーテルポリオール
水酸基価: 440mg-KOH/g
難燃剤: 大八化学(株)製「TCPP(トリスモノクロロプロピルフォ
スフェート)」
整泡剤: 日本ユニカー(株)製「L5420」
(ジメチルシロキサンとポリエーテルのブロックコポリマー)
触媒A: 花王(株)製 テトラメチルヘキサメチレンジアミン
触媒B: 日本科学産業(株)製 オクチル酸カリウム溶液
発泡剤A: セントラル硝子(株)製 1,1,1,3,3-ペンタフル
オロプロパン(HFC245fa)
発泡剤B: ソルベイ(株)製 1,1,1,3,3-ペンタフルオロブ
タン(HFC365mfc)
発泡剤C: 旭硝子製(株)製 1,1,1-ジクロロモノフルオロエタ
ン(HCFC141b)
発泡剤D: 三井フロロケミカル(株)製 1,1,1,2-テトラフル
オロエタン(HFC134a)
表1に示す配合処方に従ってまず配合液Aとイソシアネートを用意した。配合液Aとポリイソシアネートは所定のイソシアネート指数となるように重量比を決め、液温20℃にてラボミキサーを使用して6000?9000rpmで5秒間攪拌して発泡させて、硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0041】この硬質ポリウレタンフォームの製造に当たり、配合液の内圧を容量200ccのガラス製オートクレーブに液温20℃の調整した配合液を120cc充填して測定し、結果を表1に示した。
【0042】また、難燃性の評価基準となるイソシアネート指数は表1に示す通りであった。
【0043】得られた硬質ポリウレタンフォームについて、コア密度を、寸法30mm×50mm×50mmで裁断したものについて測定し、結果を表1に示した。
【0044】表1より、本発明の硬質ポリウレタンフォームは、配合液の内圧の上昇が少なく、難燃性に優れた低密度フォームであることがわかる。
【0045】
【表1】

」(段落【0038】?【0045】)

2.甲第3号証の記載事項
(摘示3-1)
「【請求項1】 ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、発泡剤、触媒、及びその他の助剤を混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含むハイドロフルオロカーボンを用いた硬質ポリウレタンフォームであって、
フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
・・・
【請求項3】 請求項1又は2において、ポリオール成分として、フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分を用いたイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームであることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
・・・
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項において、ハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】 請求項5において、ハイドロフルオロカーボンが、5?95重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと95?5重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】 請求項6において、ハイドロフルオロカーボンが、20?80重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと80?20重量%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
・・・
【請求項10】 請求項1ないし9のいずれか1項において、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】 1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外の発泡剤として常温常圧で沸点が0℃以下の低沸点ハイドロフルオロカーボンを用いて、請求項10の硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、該低沸点ハイドロフルオロカーボンをミキシングヘッド内又はミキシングヘッドへの他成分の導入管路に直接注入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
・・・」(特許請求の範囲)
(摘示3-2)
「【0004】硬質ポリウレタンフォームにおいては、現在、主たる発泡剤として用いられているジクロロモノフルオロエタン(HCFC-141b)にはオゾン層破壊の問題がある。このため、これに代る次世代の発泡剤として、オゾン層を破壊することのないハイドロフルオロカーボン(HFC)が候補に挙げられている。HFC類にはテトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)などがあり、これらのなかには、オゾン破壊性がなくHCFC全廃後の発泡剤として有力視される化合物もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、いずれのHFCもポリオール成分及びイソシアネート成分に対して溶解し難いという性質を持つために、単独で使用した場合、配合液の内圧が上昇して容器の破裂や液の沸騰などが起こったり、可燃性をもつものもあり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点がある。特に、フォームの難燃化を図る場合、ポリオール成分としてフタル酸或いはフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物の適用が不可欠となるが、この場合には、とりわけHFCの溶解性が低く、配合液の内圧が上昇し易かった。」(段落【0004】?【0005】)
(摘示3-3)
「【0013】このような硬質ポリウレタンフォームにおいて、発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを単独で用いた場合、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンは可燃性であるため得られるフォームの難燃性を低下させる恐れがある上に、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンは分子量が大きいために所定のフォーム密度を得るための必要重量が多い。このため、発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを単独で用いることは安全面及び経済面から好ましくない。
【0014】従って、本発明では、このような1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとを併用することで、発泡剤を混合した配合液の内圧の上昇を抑え、高難燃性で低密度の硬質ポリウレタンフォームを安価に得ることが好ましい。この場合には、比較的沸点の高い1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと比較的沸点の低い他のHFCとを併用することで両者の共沸混合物により、配合液の内圧の上昇が抑制される。」(段落【0013】?【0014】)
(摘示3-4)
「【0038】(4) 発泡剤
発泡剤としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを用いる。この場合、発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを単独で用いても良いが、好ましくは、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCを併用するのが望ましい。1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとしては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン等が挙げられ、このうち、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンが好適に用いられる。
【0039】1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを用いる場合には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを5?95重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを95?5重量%、特に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを20?80重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを80?20重量%とすることが好ましく、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを用いる場合には、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを2?12重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを98?88重量%、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタンを5?10重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを95?90重量%とするのが好ましい。上記範囲を超えて1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンが多いと難燃性の低下、価格の高騰、共沸成分としての沸点の上昇の問題があり、逆に1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンが少ないと、低沸点発泡剤の濃度増大による配合液の内圧の上昇、配合液粘度の上昇がみられる。また、1,1,1,2‐テトラフルオロエタンは、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと混合して配合液中に投入しても良いし、第3成分として直接ミキシングヘッドなどに混合しても良い。」(段落【0038】?【0039】)
(摘示3-5)
「【0048】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0049】実施例1?5、比較例13
表1に示した配合処方に従って、配合液Aを調製すると共に、ポリイソシアネートを用意した。ポリイソシアネート及び配合液Aに用いた原料は次の通りである。
【0050】
ポリイソシアネート: 日本ポリウレタン工業(株)製
粗製ジフェニルメタンジイソシアネート
(NCO%:30.5)
ポリオールA: 第一工業製薬(株)製 マンニッヒ変性ポリオール
水酸基価: 700mg-KOH/g
ポリオールB: 東邦理化(株)製 フタル酸ベースポリエステルポリオ
ール
水酸基価: 295mg-KOH/g
ポリオールC: 東邦理化(株)製 フタル酸ベースポリエステルポリオ
ール
水酸基価: 240mg-KOH/g
ポリオールD: 武田薬品工業(株)製 エチレンジアミンベースポリエ
ーテルポリオール
水酸基価: 685mg-KOH/g
難燃剤: 大八化学(株)製「TCPP(トリスモノクロロプロピルフォ
スフェート)」
整泡剤: 日本ユニカー(株)製「L5420」
(ジメチルシロキサンとポリエーテルのブロックコポリマー)
触媒A: 花王(株)製 テトラメチルヘキサメチレンジアミン
触媒B: 日本化学産業(株)製 オクチル酸カリウム溶液
発泡剤A: セントラル硝子(株)製 1,1,1,3,3-ペンタフル
オロプロパン(HFC245fa)
発泡剤B: ソルベイ(株)製 1,1,1,3,3-ペンタフルオロブ
タン(HFC365mfc)
発泡剤C: 旭硝子(株)製 1,1,1-ジクロロモノフルオロエタン
(HCFC141b)
発泡剤D: 旭硝子(株)製 1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)
表1に示す配合処方に従ってまず配合液Aとイソシアネートを用意した。配合液Aとポリイソシアネートは所定のイソシアネート指数となるように重量比を決め、液温20℃にてラボミキサーを使用して6000?9000rpmで5秒間攪拌して発泡させて、硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0051】この硬質ポリウレタンフォームの製造に当たり、配合液の内圧を容量200ccのガラス製オートクレーブに液温20℃の調整した配合液を120cc充填して測定し、結果を表1に示した。
【0052】また、難燃性の評価基準となるイソシアネート指数は表1に示す通りであった。
【0053】得られた硬質ポリウレタンフォームについて、コア密度を測定すると共に、下記方法により物性ないし特性を調べ、結果を表1に示した。
[発煙係数]JIS A1321表面試験に基づく(燃焼時間6分、試験体厚味20mm)

[熱伝導率]JIS A1412の平板熱流計法で測定。
[気泡径]所定の区間(20mm)の気泡数を20倍のレンズを用いてカウント。
[独立気泡率]ASTM D2856により測定。
[酸素指数]長さ100mm、幅6.5mm、厚さ3mmの試験体について、JIS K7201に従って測定。
【0054】
【表1】

」(段落【0048】?【0054】)


第7.無効理由2についての検討
上記第4.2.2-2.無効理由2における請求人の主張、すなわち、本件発明1、2、23及び24が甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとの主張について検討する。

1.本件発明1について
1-1.本件発明1と引用発明1-1との対比・判断
1-1-1.引用発明1-1の認定
甲第1号証の請求項1には、
「ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、発泡剤、触媒、及びその他の助剤を混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームであって、
ポリオール成分として、フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分を用いたイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含む2種以上のハイドロフルオロカーボンを用いたことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。」
が記載され、
同請求項3には、
「ハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有すること」
同請求項11には、
「硬質ポリウレタンフォーム」が「ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られること」
が記載され(摘示1-1)、
同実施例1?4には、発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いて、硬質ポリウレタンフォームを製造した実験例が記載されている(摘示1-5)ことからみて、
甲第1号証には、
「ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られる硬質ポリウレタンフォームであって、
ポリオール成分として、フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分を用いたイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いたイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームを製造する方法」
が記載されているといえる。
また、上記方法における「ポリイソシアネート成分と、・・・ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させる」工程は、「発泡剤」の存在下に行われるものであり、同工程において、「ポリオール成分」と「ポリイソシアネート成分」とが反応していることは技術常識である。
さらに、甲第1号証の実施例には、「表1に示した配合処方に従って、配合液Aを調製する」と記載され、表1には、配合液Aの配合処方として、ポリオール成分、発泡剤、触媒、その他の成分(難燃剤及び整泡剤)が示されている(摘示1-5)ことからみて、上記工程は「ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液」を調製する工程を有するものであるから、結局、甲第1号証には、
「発泡剤の存在下に、フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを使用し、
前記ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液を調製する工程を有するイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームの製造方法」
の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されているものと認められる。

1-1-2.本件発明1と引用発明1-1との対比
引用発明1-1における「フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分」、「ポリイソシアネート成分」、「イソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォーム」、「ハイドロフルオロカーボン」及び「ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液」が、それぞれ、本件発明1における「ポリオール」、「ポリイソシアネート化合物」、「ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体」、「発泡剤とポリオールとを含むプレミックス」及び「混合物」に相当することは明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明1-1とを対比すると、両発明は、
「発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有する発泡体の製造方法」
の発明である点で一致し、以下の相違点1-1で相違する。
相違点1-1
本件発明1においては、「プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4である」のに対し、引用発明1-1においては、このような規定はなされていない点。

1-1-3.相違点1-1についての検討
甲第1号証の
「本発明では、このような1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとを併用することで、・・・高難燃性・・・の硬質ポリウレタンフォームを安価に得ることが可能とされる。」(摘示1-3)、
「発泡剤としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含む2種以上のHFCを用いる。1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとしては、・・・1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが好適に用いられる。
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを用いる場合には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを5?95重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを95?5重量%、特に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを20?80重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを80?20重量%とすることが好ましく、・・・上記範囲を超えて1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンが多いと難燃性の低下、・・・の問題があり、」(摘示1-4)
との記載からみて、同号証には、発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとを含む混合物を用いた硬質ポリウレタンフォームにおいて、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、硬質ポリウレタンフォームの難燃性の低下の問題があることが記載されているといえる。
また、「発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを単独で用いた場合、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンは可燃性であるため得られるフォームの難燃性を低下させる恐れがある」(摘示1-3)との記載からみて、上記硬質ポリウレタンフォームの難燃性の低下は、発泡剤の可燃性に起因するものと認められるから、上記(摘示1-3)及び(摘示1-4)の記載は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとを含む混合物を用いた硬質ポリウレタンフォーム用の発泡剤において、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、可燃性の問題があることを教示するものと解される。
さらに、同号証の
「硬質ポリウレタンフォームにおいては、現在、主たる発泡剤として用いられているジクロロモノフルオロエタン(HCFC-141b)にはオゾン層破壊の問題がある。このため、これに代る次世代の発泡剤として、オゾン層を破壊することのないハイドロフルオロカーボン(HFC)が候補に挙げられている。HFC類にはテトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)などがあり、これらのなかには、オゾン破壊性がなくHCFC全廃後の発泡剤として有力視される化合物もある。
しかしながら、いずれのHFCも・・・可燃性をもつものもあり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点がある。」(摘示1-2)
との記載からみて、同号証には、可燃性のHFCを用いた硬質ポリウレタンフォーム用の発泡剤は、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点を有することが記載されているといえる。

一方、引用発明1-1の「ポリイソシアネート成分と、・・・ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液」は、発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとの混合物を含むものである。
上述のとおり、上記発泡剤は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、その可燃性の問題があり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点を有するものであり、また、一般に、組成物中にその可燃性が問題とされる成分が含まれる場合には、組成物全体の可燃性も問題とされるものであるから、上記配合液は、発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、その可燃性の問題があり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点を有するものといえる。
してみると、引用発明1-1において、配合液の可燃性の問題を解消し、その取り扱い上の安全性を確保することを目的として、配合液に含まれる発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を低減させるとともに、その好適な範囲を実験的に決定することは、当業者が容易になし得ることである。
また、配合液の液相における2成分の重量比と、これと平衡にある気相における2成分の重量比とが強い正の相関関係を有することは技術常識であって、これは本件の訂正明細書に記載された実施例及び比較例の実験結果でも裏付けられているから、上記実験的に決定された発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量の範囲を、配合液の気相における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとの重量比により特定し、本件発明1における「気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4」と規定することは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、本件発明1により奏せられる不燃性のプレミックスが得られるという効果は、配合液に含まれる発泡剤の可燃性の問題を解消することによって、当然に奏せられるものであるから、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

1-1-4.被請求人の主張について
被請求人は、本件発明1の進歩性に関して、
(主張1)
「被請求人が口頭審理陳述要領書の第14頁の第14行?第16頁の下から2行で述べた通り、ポリウレタンフォーム形成時(発泡時)に発生するガス(発泡時に噴霧される成分)の燃焼性の問題は従来から存在していたが、「6.1本件発明」で示したように、本件発明にて初めて認識された常温下におけるプレミックスの気相の燃焼性についてはそもそも認識されていなかったのであるから、明白に別物である。そのため、発泡時に発生するガスが火気厳禁であったとしても、プレミックスの気相の燃焼性に思い至るはずはない。
甲第1?3号証は、HFC365mfcを含む発泡体自体(フォーム自体、製品自体)の難燃化を目的とするものであって、常温下でのプレミックスやプレミックスの気相の難燃化を目的とするものではない。・・・従来、常温下のプレミックスの気相の燃焼性の問題は認識されておらず、本件発明で初めて認識されたものである。
これらの点を考慮すれば、当業者が、甲第1?3、7号証の記載から、HFC365mfcを含むプレミックスの常温下の燃焼性について問題意識を持ったり、さらに常温下の該プレミックスの気相の燃焼性を低下させようとしたりすることは到底考えつかないはずである。
また、甲第1?3号証には、混合発泡剤(HFC245faとHFC365mfc)において、HFC365mfcの重量比が大きいものも含む広範な組成重量比が記載されるが、これは常温下におけるプレミックスの燃焼性を低下させるという問題意識がないことを示している。即ち、甲第1?3号証において認識されている安全性は、HFC365mfcの重量濃度が大きい、HFC245faとHFC365mfcの液相重量比が0.33であるプレミックスでも良いレベルのものであって、本件発明が課題とする安全性のレベルは記載されていない。このように、プレミックスの気相の燃焼性を低下させようとする問題意識がないのであるから、プレミックスの気相の燃焼性についても思い至らず、したがってプレミックスの気相重量比を1.7?4の範囲に制御しようとする動機付けはない。」(平成20年4月25日付け上申書第4頁第19行?第5頁第22行)
(主張2)
「さらに、液相重量比が一定であっても、ポリオール等の他の条件によりプレミックスの気相重量比が変化することを考慮すれば、プレミックスの液相におけるHFC365mfcの含有量を減らしても、プレミックスの気相重量比が1.7?4の範囲に含まれるとはいえない。従って、気相重量比を1.7?4の範囲に調整することは、当業者は容易に思いつかない。」(同第5頁第23行?第6頁第2行)
(主張3)
「なお、請求人は、甲第1?3号証には、発泡剤の液相重量比0.333?3.00のプレミックスが開示され、本件発明はこの中から、25℃気相重量比1.7?4を選択した数値限定発明であるから臨界的意義が必要であると主張する。しかしながら、被請求人が答弁書及び口頭審理陳述要領書で述べた通り、甲第1?3号証とは課題が相違し、作用効果が異質であることに疑いはない。従って、臨界的意義は要しない。」(同第6頁第3行?第8行)
と主張している。

上記(主張1)?(主張3)について検討すると、
(主張1)
上記1-1-3.で述べたとおり、甲第1号証には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとを含む混合物を用いた硬質ポリウレタンフォーム用の発泡剤において、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、その可燃性の問題があるものであることが記載されている。
また、一般に、組成物中にその可燃性が問題とされる成分が含まれる場合には、組成物全体の可燃性も問題とされるものであるから、上記発泡剤を含む配合液の可燃性の問題、すなわちプレミックスの燃焼性の問題は、当業者が通常認識し得るものであるといえる。
なお、甲第1号証に記載された1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとの重量比は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が大きいものを含む広範なものであるが、そのことをもって、直ちにプレミックスの燃焼性の問題の認識が否定されるものとはいえない。
したがって、上記配合液の可燃性の問題を解消することを目的として、配合液に含まれる発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を低減させるとともに、その好適な範囲を実験的に決定することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、配合液の液相における2成分の重量比と、これと平衡にある気相における2成分の重量比とが強い正の相関関係を有することは技術常識であり、上記実験的に決定された発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量の範囲を、配合液の気相における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとの重量比により特定することは、当業者が適宜なし得ることであるから、プレミックスの気相の燃焼性の問題の認識の有無にかかわらず、「気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4」と規定することは、当業者が容易になし得ることである。
(主張2)
上記(主張1)についての検討で述べたとおり、配合液の液相における2成分の重量比と、これと平衡にある気相における2成分の重量比とが強い正の相関関係を有することは技術常識であるから、ポリオール等の他の条件により、プレミックスの気相重量比が若干変化することはあるものの、配合液のに含まれる発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を低減させることにより、これと平衡にある気相における1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を低減させ、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比を25℃において1.7?4とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(主張3)
上記(主張1)についての検討で述べたとおり、甲第1号証の記載からプレミックスの燃焼性の問題は、当業者が通常認識し得るものであるといえるから、本件発明1と引用発明1-1の課題が相違するものとはいえない。
また、本件発明1の不燃性のプレミックスが得られるという作用効果は、配合液に含まれる発泡剤の可燃性の問題を解消することによって、当然に奏せられるものであるから、引用発明1-1の効果と異質なものであるとはいえない。
そして、訂正明細書の実施例及び比較例の記載をみても、プレミックスの気相重量比が本件発明1の範囲内であるものが、同範囲外であるものに比して、格別に優れた作用効果を奏するものとはいえないから、本件発明1におけるプレミックスの気相重量比の規定に臨界的意義はない。

したがって、被請求人の主張を採用することはできない。

1-1-5.まとめ
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

1-2.本件発明1と引用発明3-1との対比・判断
1-2-1.引用発明3-1の認定
甲第3号証の請求項1には、
「【請求項1】 ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、発泡剤、触媒、及びその他の助剤を混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含むハイドロフルオロカーボンを用いた硬質ポリウレタンフォームであって、
フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。」
が記載され、
同請求項5には、
「ハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有すること」
同請求項10には、
「硬質ポリウレタンフォーム」が「ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られること」
が記載され(摘示3-1)、
同実施例1?3には、発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いて、硬質ポリウレタンフォームを製造した実験例が記載されている(摘示3-5)ことからみて、
甲第3号証には、
「ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いた硬質ポリウレタンフォームであって、
フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下である硬質ポリウレタンフォームを製造する方法」
が記載されているといえる。
また、上記方法における「ポリイソシアネート成分と、・・・ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させる」工程は、「発泡剤」の存在下に行われるものであり、同工程において、「ポリオール成分」と「ポリイソシアネート成分」とが反応していることは技術常識である。
さらに、甲第3号証の実施例には、「表1に示した配合処方に従って、配合液Aを調製する」と記載され、表1には、配合液Aの配合処方として、ポリオール成分、発泡剤、触媒、その他の成分(難燃剤及び整泡剤)が示されている(摘示3-5)ことからみて、上記工程は「ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液」を調製する工程を有するものであるから、結局、甲第3号証には、
「発泡剤の存在下に、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて、
フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下である硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを使用し、
前記ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液を調製する工程を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法」
の発明(以下、「引用発明3-1」という。)が記載されているものと認められる。

1-2-2.本件発明1と引用発明3-1との対比
引用発明3-1における「ポリオール成分」、「ポリイソシアネート成分」、「フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下である硬質ポリウレタンフォーム」、「ハイドロフルオロカーボン」、「ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液」及び「硬質ポリウレタンフォーム」が、それぞれ、本件発明1における「ポリオール」、「ポリイソシアネート化合物」、「ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体」、「混合物」、「発泡剤とポリオールとを含むプレミックス」及び「発泡体」に相当することは明らかである。

したがって、本件発明1と引用発明3-1とを対比すると、両発明は、
「発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有する発泡体の製造方法。」
の発明である点で一致し、以下の相違点3-1で相違する。
相違点3-1
本件発明1においては、「プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4である」のに対し、引用発明1においては、そのような規定はなされていない点。

1-2-3.相違点3-1についての検討
甲第3号証の
「本発明では、このような1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとを併用することで、・・・高難燃性で低密度の硬質ポリウレタンフォームを安価に得ることが可能とされる。」(摘示3-3)、
「発泡剤としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含む2種以上のHFCを用いる。1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン以外のHFCとしては、・・・1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが好適に用いられる。
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを用いる場合には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを5?95重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを95?5重量%、特に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを20?80重量%、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを80?20重量%とすることが好ましく、・・・上記範囲を超えて1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンが多いと難燃性の低下、・・・の問題があり、」(摘示3-4)
との記載からみて、同号証には、発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとを含む混合物を用いた硬質ポリウレタンフォームにおいて、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、硬質ポリウレタンフォームの難燃性の低下の問題があることが記載されているといえる。
また、「発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを単独で用いた場合、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンは可燃性であるため得られるフォームの難燃性を低下させる恐れがある」(摘示3-3)との記載からみて、上記硬質ポリウレタンフォームの難燃性の低下は、発泡剤の可燃性に起因するものと認められるから、上記(摘示3-3)及び(摘示3-4)の記載は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとを含む混合物を用いた硬質ポリウレタンフォーム用の発泡剤において、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合は、可燃性の問題があることを教示するものと解される。
さらに、同号証の
「硬質ポリウレタンフォームにおいては、現在、主たる発泡剤として用いられているジクロロモノフルオロエタン(HCFC-141b)にはオゾン層破壊の問題がある。このため、これに代る次世代の発泡剤として、オゾン層を破壊することのないハイドロフルオロカーボン(HFC)が候補に挙げられている。HFC類にはテトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)などがあり、これらのなかには、オゾン破壊性がなくHCFC全廃後の発泡剤として有力視される化合物もある。
しかしながら、いずれのHFCも・・・可燃性をもつものもあり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点がある。」(摘示3-2)、
との記載からみて、同号証には、可燃性のHFCを用いた硬質ポリウレタンフォーム用の発泡剤は、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点を有することが記載されているといえる。

一方、引用発明3-1の「ポリイソシアネート成分と、・・・ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液」は、発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとの混合物を含むものである。
上述のとおり、上記発泡剤は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、その可燃性の問題があり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点を有するものであり、また、一般に、組成物中にその可燃性が問題とされる成分が含まれる場合には、組成物全体の可燃性も問題とされるものであるから、上記配合液は、発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量が多い場合には、その可燃性の問題があり、取り扱い上の安全性が確保できないという欠点を有するものといえる。
してみると、引用発明3-1において、配合液の可燃性の問題を解消し、その取り扱い上の安全性を確保することを目的として、配合液に含まれる発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を低減させるとともに、その好適な範囲を実験的に決定することは、当業者が容易になし得ることである。
また、配合液の液相における2成分の重量比と、これと平衡にある気相における2成分の重量比とが強い正の相関関係を有することは技術常識であって、これは本件の訂正明細書に記載された実施例及び比較例の実験結果でも裏付けられているから、上記実験的に決定された発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量の範囲を、配合液の気相における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとの重量比により特定し、本件発明1における「気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4」と規定することは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、本件発明1により奏せられる不燃性のプレミックスが得られるという効果は、配合液に含まれる発泡剤の可燃性の問題を解消することによって、当然に奏せられるものであるから、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

1-2-4.被請求人の主張について
上記1-1-4.で述べた理由と同様の理由により、被請求人の本件発明1の進歩性に関する主張を採用することはできない。

1-2-5.まとめ
よって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

1-3.小括
本件発明1は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

2.本件発明2について
2-1.本件発明2と引用発明1-1との対比・判断
本件発明2は、本件発明1に「前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」なる要件を付加したものである。
したがって、本件発明2と引用発明1-1とを対比すると、両発明は、上記1-1.で検討した相違点1-1に加えて、以下の相違点1-2で相違する。
相違点1-2
本件発明2においては、「発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」のに対して、引用発明1-1においては、このような規定はなされていない点。

上記相違点1-2について検討する。
甲第1号証の請求項4には、発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとの割合を、それぞれ、5?95重量%と95?5重量%とすることが記載されている(摘示1-1)。
そして、上記1-1-3.で述べたとおり、引用発明1-1において、配合液の可燃性の問題を解消し、その取り扱い上の安全性を確保することを目的として、配合液の成分である発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を低減させるとともに、その好適な範囲を実験的に決定し、発泡剤の組成を本件発明2における「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、被請求人は、本件発明2の進歩性に関して、
(主張4)
「請求人は、甲第1号証の実施例4には、構成(5)を満たす液相重量比が記載されるから、これと甲第1号証の実施例1等の発泡剤においてHFC365mfcを減少させようと動機づけられると主張する。しかし、甲第1号証には、常温でのプレミックスの燃焼性という課題の認識がないから、プレミックスの気相のHFC365mfcを減少させようとする動機付けは働かない。甲第1号証の実施例4は甲第4号証で追試されているものの厳密な追試ではないが、仮にその結果を採用したとしても、プレミックスの気相重量比は4.7乃至4.8であり、実施例4の液相重量比が3に近づけば本件発明の構成(4)の上限値4を越えてしまうことになる。よって、当業者は、甲第1?3号証から、プレミックスの気相重量比を「1.7?4」に調整することを容易に想到し得たとは考えられない。」(平成20年4月25日付け上申書第6頁第13行?第23行)
と主張している。
上記(主張4)について検討すると、(主張4)は、上記1-1-4.の(主張1)及び(主張2)と同趣旨のものであるから、(主張1)及び(主張2)についての検討で述べた理由と同様の理由により、被請求人の主張を採用することはできない。

したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-2.本件発明2と引用発明3-1との対比・判断
本件発明2は、本件発明1に「前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」なる要件を付加したものである。
したがって、本件発明2と引用発明3-1とを対比すると、両発明は、上記1-2.で検討した相違点3-1に加えて、以下の相違点3-2で相違する。
相違点3-2
本件発明2においては、「発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」のに対して、引用発明3-1においては、このような規定はなされていない点。

上記相違点3-2について検討する。
甲第3号証の請求項6には、発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとの割合を、それぞれ、5?95重量%と95?5重量%とすることが記載されている(摘示3-1)。
そして、上記1-2-3.で述べたとおり、引用発明3-1において、配合液の可燃性の問題を解消し、その取り扱い上の安全性を確保することを目的として、配合液の成分である発泡剤中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量を低減させるとともに、その好適な範囲を実験的に決定し、発泡剤の組成を例えば本件発明2における「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、上記2-1.で述べた理由と同様の理由により、被請求人の本件発明2の進歩性に関する主張を採用することはできない。

したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-3.小括
本件発明2は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3.本件発明23について
3-1.本件発明23と引用発明1-2との対比・判断
3-1-1.引用発明1-2の認定
甲第1号証の請求項1には、
「ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、発泡剤、触媒、及びその他の助剤を混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームであって、
ポリオール成分として、フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分を用いたイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含む2種以上のハイドロフルオロカーボンを用いたことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。」
が記載され、
同請求項3には、
「ハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有すること」
同請求項11には、
「硬質ポリウレタンフォーム」が「ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られること」
が記載され(摘示1-1)、
同実施例1?4には、発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いた実験例が記載されている(摘示1-5)ことからみて、
甲第1号証には、
「フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる配合液であって、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いた配合液」
の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されているといえる。

3-1-2.本件発明23と引用発明1-2との対比・判断
本件発明23と引用発明1-2とを対比する。
引用発明1-2における「フタル酸及び/又はフタル酸誘導体をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール化合物を含むポリオール成分」、「硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる配合液」及び「ハイドロフルオロカーボン」が、それぞれ、本件発明23における「ポリオール」、「プレミックス」及び「混合物」に相当することは明らかである。
したがって、本件発明23と引用発明1-2とを対比すると、両発明は、
「発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物であるプレミックス」
の発明である点で一致し、以下の相違点1-3で相違する。
相違点1-3
本件発明23においては、「プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4である」のに対し、引用発明1-2においては、このような規定はなされていない点。

上記相違点1-3について検討すると、上記1-1-3.で述べたとおり、引用発明1-2において、「気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4」と規定することは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、上記1-1.で述べた理由と同様の理由により、本件発明23は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-2.本件発明23と引用発明3-2との対比・判断
3-2-1.甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の請求項1には、
「【請求項1】 ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、発泡剤、触媒、及びその他の助剤を混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを含むハイドロフルオロカーボンを用いた硬質ポリウレタンフォームであって、
フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。」
が記載され、
同請求項5には、
「ハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有すること」
同請求項10には、
「硬質ポリウレタンフォーム」が「ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で得られること」
が記載され(摘示3-1)、
同実施例1?3には、発泡剤として、ハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いた実験例が記載されている(摘示3-5)ことからみて、
甲第3号証には、
「ポリオール成分、発泡剤、触媒及びその他の助剤を混合した、
フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下である硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる配合液であって、
発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含有するハイドロフルオロカーボンを用いた配合液」
の発明(以下、「引用発明3-2」という。)が記載されているといえる。

3-2-2.本件発明23と引用発明3-2との対比・判断
本件発明23と引用発明3-2とを対比する。
引用発明3-2における「ポリオール成分」、「フォームの気泡径が50?400μmであり、
フォームの気泡のうちの独立気泡の割合が50%以上であり、
コア密度が20?45kg/m^(3)であり、
コア部分の酸素指数(JIS K7201)が22以上であり、かつフォームの熱伝導率(JIS A1412)が0.022W/m・K以下である硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる配合液」及び「ハイドロフルオロカーボン」が、それぞれ、本件発明23における「ポリオール」、「プレミックス」及び「混合物」に相当することは明らかである。
したがって、本件発明23と引用発明3-2とを対比すると、両発明は、
「発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物であるプレミックス」
の発明である点で一致し、以下の相違点3-3で相違する。
相違点3-3
本件発明23においては、「プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4である」のに対し、引用発明3-2においては、このような規定はなされていない点。

上記相違点3-3について検討すると、上記1-2-3.で述べたとおり、引用発明3-2において、「気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4」と規定することは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、上記1-2.で述べた理由と同様の理由により、本件発明23は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-3.小括
よって、本件発明23は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.本件発明24について
4-1.本件発明24と引用発明1-2との対比・判断
本件発明24は、本件発明23に「前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」なる要件を付加したものである。
したがって、本件発明24と引用発明1-2とを対比すると、両発明は、上記3-1.で検討した相違点1-3に加えて、以下の相違点1-4で相違する。
相違点1-4
本件発明24においては、「発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」のに対して、引用発明1-2においては、このような規定はなされていない点。

上記相違点1-4について検討すると、上記2-1.で述べたとおり、引用発明1-2において、発泡剤の組成を「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4-2.本件発明24と引用発明3-2との対比・判断
本件発明24は、本件発明23に「前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」なる要件を付加したものである。
したがって、本件発明24と引用発明3-2とを対比すると、両発明は、上記3-2で検討した相違点3-3に加えて、以下の相違点3-4で相違する。
相違点3-4
本件発明24においては、「発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する」のに対して、引用発明3-2においては、このような規定はなされていない点。

上記相違点3-4について検討すると、上記2-2.で述べたとおり、引用発明3-2において、発泡剤の組成を「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本件発明24は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4-3.小括
本件発明24は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第8.むすび
以上のとおりであるから、特許第3894326号の請求項1、2、23及び24に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するので、請求人の主張する無効理由1について検討するまでもなく、無効にすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
合成樹脂発泡体の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.7?4である発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する請求項1に記載の発泡体の製造方法。
【請求項3】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含む混合物を使用し、前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。
【請求項4】
得られたプレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックス中の発泡剤の重量組成比及びHFC245fa/HFC365mfc重量組成比を変えずに沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを除いたプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項3に記載の発泡体の製造方法。
【請求項5】
沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルが、以下に示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項3に記載の発泡体の製造方法:
1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1-トリフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルエポキシド、1,2,2-トリフルオロエチレントリフルオロメチルエーテルおよび1,2,2-トリフルオロエチレン-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピルエーテル。
【請求項6】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更にグリコール化合物を含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。
【請求項7】
得られたプレミックスの40℃における蒸気圧が、グリコール化合物を除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項6に記載の発泡体の製造方法。
【請求項8】
グリコール化合物が、以下の式(A)?(C)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の発泡体の製造方法:
式(A)C_(a)H_(2a+1)(OCH_(2)CH_(2)O)_(b)C_(c)H_(2c+1)
[式中、a,bおよびcは、独立にa=0,1,2,3,4、b=1,2,3,4、c=0,1,2,3,4]、
式(B)C_(d)H_(2d+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(e)CO C_(f)H_(2f+1)
[式中、d,eおよびfは、独立にd=0,1,2,3,4、e=1,2,3,4、f=0,1,2,3,4]、および
式(C)C_(i)H_(2i+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(j)C_(k)H_(2k+1)
[式中、i,jおよびkは、独立にi=0,1,2,3,4、j=1,2,3,4、k=0,1,2,3,4]。
【請求項9】
発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を含む混合物を使用し、
前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、
得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。
【請求項10】
得られたプレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスから(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を除いた以外は同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項9に記載の発泡体の製造方法。
【請求項11】
沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルが、以下に示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項9に記載の発泡体の製造方法:
1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1-トリフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルエポキシド、1,2,2-トリフルオロエチレントリフルオロメチルエーテルおよび1,2,2-トリフルオロエチレン-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピルエーテル。
【請求項12】
グリコール化合物が、以下の式(A)?(C)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項9に記載の発泡体の製造方法:
式(A)C_(a)H_(2a+1)(OCH_(2)CH_(2)O)_(b)C_(c)H_(2c+1)
[式中、a,bおよびcは、独立にa=0,1,2,3,4、b=1,2,3,4、c=0,1,2,3,4]、
式(B)C_(d)H_(2d+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(e)CO C_(f)H_(2f+1)
[式中、d,eおよびfは、独立にd=0,1,2,3,4、e=1,2,3,4、f=0,1,2,3,4]、および
式(C)C_(i)H_(2i+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(j)C_(k)H_(2k+1)
[式中、i,jおよびkは、独立にi=0,1,2,3,4、j=1,2,3,4、k=0,1,2,3,4]。
【請求項13】
ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含み、
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上となる発泡剤。
【請求項14】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、
前記プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックス中の発泡剤の重量組成比及びHFC245fa/HFC365mfc重量組成比を変えずに沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを除いたプレミックスの40℃における蒸気圧に対して95%以下である請求項13に記載の発泡剤。
【請求項15】
沸点15℃以上のハロゲン化エーテルが、以下に示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項13に記載の発泡剤:
1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1-トリフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルエポキシド、1,2,2-トリフルオロエチレントリフルオロメチルエーテルおよび1,2,2-トリフルオロエチレン-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピルエーテル。
【請求項16】
ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、グリコール化合物を含み、
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上となる発泡剤。
【請求項17】
ポリオールと発泡剤とを含むプレミックスとしたときに、
前記プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスからグリコール化合物を除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項16に記載の発泡剤。
【請求項18】
グリコール化合物が、以下の式(A)?(C)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項16に記載の発泡剤:
式(A)C_(a)H_(2a+1)(OCH_(2)CH_(2)O)_(b)C_(c)H_(2c+1)
[式中、a,bおよびcは、独立にa=0,1,2,3,4、b=1,2,3,4、c=0,1,2,3,4]、
式(B)C_(d)H_(2d+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(e)CO C_(f)H_(2f+1)
[式中、d,eおよびfは、独立にd=0,1,2,3,4、e=1,2,3,4、f=0,1,2,3,4]、および
式(C)C_(i)H_(2i+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(j)C_(k)H_(2k+1)
[式中、i,jおよびkは、独立にi=0,1,2,3,4、j=1,2,3,4、k=0,1,2,3,4]。
【請求項19】
ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を含み、
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上となる発泡剤。
【請求項20】
ポリオールと発泡剤とを含むプレミックスとしたときに、
前記プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスから(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を除いた以外は同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項19に記載の発泡剤。
【請求項21】
沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルが、以下に示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項19に記載の発泡剤:
1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1-トリフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルエポキシド、1,2,2-トリフルオロエチレントリフルオロメチルエーテルおよび1,2,2-トリフルオロエチレン-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピルエーテル。
【請求項22】
グリコール化合物が、以下の式(A)?(C)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項19に記載の発泡剤:
式(A)C_(a)H_(2a+1)(OCH_(2)CH_(2)O)_(b)C_(c)H_(2c+1)
[式中、a,bおよびcは、独立にa=0,1,2,3,4、b=1,2,3,4、c=0,1,2,3,4]、
式(B)C_(d)H_(2d+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(e)CO C_(f)H_(2f+1)
[式中、d,eおよびfは、独立にd=0,1,2,3,4、e=1,2,3,4、f=0,1,2,3,4]、および
式(C)C_(i)H_(2i+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(j)C_(k)H_(2k+1)
[式中、i,jおよびkは、独立にi=0,1,2,3,4、j=1,2,3,4、k=0,1,2,3,4]。
【請求項23】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.7?4であるプレミックス。
【請求項24】
前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン90?54重量%と
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン10?46重量%とを含む混合物を使用する請求項23に記載のプレミックス。
【請求項25】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。
【請求項26】
プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックス中の発泡剤の重量組成比及びHFC245fa/HFC365mfc重量組成比を変えずに沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルを除いたプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項25に記載のプレミックス。
【請求項27】
前記の沸点15℃以上のハロゲン化エーテルが、以下に示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項25に記載のプレミックス:
1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1-トリフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルエポキシド、1,2,2-トリフルオロエチレントリフルオロメチルエーテルおよび1,2,2-トリフルオロエチレン-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピルエーテル。
【請求項28】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、グリコール化合物を含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。
【請求項29】
プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスからグリコール化合物を除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項28に記載のプレミックス。
【請求項30】
グリコール化合物が、以下の式(A)?(C)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項28に記載のプレミックス:
式(A)C_(a)H_(2a+1)(OCH_(2)CH_(2)O)_(b)C_(c)H_(2c+1)
[式中、a,bおよびcは、独立にa=0,1,2,3,4、b=1,2,3,4、c=0,1,2,3,4]、
式(B)C_(d)H_(2d+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(e)CO C_(f)H_(2f+1)
[式中、d,eおよびfは、独立にd=0,1,2,3,4、e=1,2,3,4、f=0,1,2,3,4]、および
式(C)C_(i)H_(2i+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(j)C_(k)H_(2k+1)
[式中、i,jおよびkは、独立にi=0,1,2,3,4、j=1,2,3,4、k=0,1,2,3,4]。
【請求項31】
発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、
発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、更に、(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。
【請求項32】
プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスから(i)沸点が15℃以上のハロゲン化エーテルと(ii)グリコール化合物を除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項31に記載のプレミックス。
【請求項33】
前記の沸点15℃以上のハロゲン化エーテルが、以下に示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項31に記載のプレミックス:
1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1-トリフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルメチルエーテル、パーフルオロプロピルエポキシド、1,2,2-トリフルオロエチレントリフルオロメチルエーテルおよび1,2,2-トリフルオロエチレン-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピルエーテル。
【請求項34】
グリコール化合物が、以下の式(A)?(C)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項31に記載のプレミックス:
式(A)C_(a)H_(2a+1)(OCH_(2)CH_(2)O)_(b)C_(c)H_(2c+1)
[式中、a,bおよびcは、独立にa=0,1,2,3,4、b=1,2,3,4、c=0,1,2,3,4]、
式(B)C_(d)H_(2d+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(e)CO C_(f)H_(2f+1)
[式中、d,eおよびfは、独立にd=0,1,2,3,4、e=1,2,3,4、f=0,1,2,3,4]、および
式(C)C_(i)H_(2i+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(j)C_(k)H_(2k+1)
[式中、i,jおよびkは、独立にi=0,1,2,3,4、j=1,2,3,4、k=0,1,2,3,4]。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法、前記方法に用いることのできる発泡剤およびプレミックスに関する。
【0002】
背景技術
ポリオールとポリイソシアネート化合物とを触媒と発泡剤の存在下に反応させて、合成樹脂発泡体を製造することは広く行われている。得られる合成樹脂発泡体としては、たとえばポリウレタン、ポリイソシアヌレートなどがある。
【0003】
上記ポリウレタン発泡体などの合成樹脂発泡体の製造に使用される有機化合物系発泡剤として、これまでトリクロロフルオロメタン(CFC-11)が主に使用されてきた。
【0004】
近年、ある種のフロンが、大気中に放出されると成層圏のオゾン層を破壊し、また、温室効果により地球の温暖化をもたらし、その結果、人類を含む地球上の生態系に重大な悪影響を及ぼすことが指摘されてきた。このため、オゾン層破壊の危険性の高いフロンについては、国際的な取り決めによって使用が制限されている。上記CFC-11は、この使用制限の対象となっている。この点から、オゾン層破壊又は地球温暖化問題を生ずることのない、或いはそのような危険性の低い新たな発泡剤の開発が必要となっていた。
【0005】
現在は、オゾン層に対する影響が小さいフロンとして、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b)または1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンが、CFC-11の代替として使用されている。
【0006】
しかしながら、これらの物質も分子中に塩素原子を含むので、依然としてオゾン層を破壊する危険性がある。
【0007】
特開平2-29440号公報、特開平2-235982号公報等には、塩素を含まずオゾン層を破壊する危険性のないフッ素化炭化水素を用いて発泡体を製造する方法が、開示されている。また、特開平5-239251号公報には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(以下「HFC-245fa」ということがある)をプラスチック発泡体製造用発泡剤として使用することが開示されている。
【0008】
HFC-245faは、沸点15℃の不燃性の化合物であり、水素原子を含むフッ素化炭化水素であることから、オゾン層破壊のおそれはないものと考えられている。更に、HFC-245faは、沸点がCFC-11やHCFC-141bに近く、しかも、不燃性であるので、HCFC-141bに代わる発泡剤の非常に有力な候補として注目を集めている。
【0009】
HFC-245faの沸点(15℃)は、許容範囲ではあるものの、CFC-11(沸点24℃)やHCFC-141b(沸点32℃)に比べるとやや低い。そのため、環境温度が高い場合には、すぐに蒸発するので発泡体の製造が難しくなる。また、ポリオールに対する溶解性が必ずしも高くはなく、HFC-245faとポリオールとを含むプレミックスは、相分離を生じることがある。このため使用できるポリオールが限定されるという問題点がある。
【0010】
発泡剤の沸点が低い場合やポリオールに対する溶解性が低い場合には、ポリオールとイソシアネート化合物とを混合反応させて発泡体を製造する時に、混合不良、未反応成分の残留、ボイドと呼ばれる粗泡などが生じ易く、結果、硬質ウレタンフォームに要求される物性である強度や熱伝導率を悪化させることとなる。さらに、HFC-245fa自身または発泡体原料との混合品(特にポリオールとの混合物であるプレミックス)が、気象条件によってはかなり高い蒸気圧を持つので、ハンドリングが難しい。更に、運搬時や貯蔵時の容器として、これまでにない耐圧性を持つものが必要となる。
【0011】
このように、HFC-245faをHCFC-141bの代替品として有効に使用するために、その沸点、溶解性等を制御する技術の開発が望まれている。
【0012】
一方、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(以下「HFC365mfc」ということがある)は、特開平2-235982号公報に発泡剤として開示されている。HFC365mfcは沸点が40℃であり、HFC245faとは逆に、CFC11やHCFC141bの沸点より高い。そのため、HFC245faのように、沸点が低いことに起因する課題は生じない。
【0013】
しかしながら、HFC365mfcには燃焼範囲(3.8%?13.3%)があり、燃焼する可能性がある。発泡剤としては、不燃性である方が適当である。特に建築現場等で発泡して使用する場合は不燃性が強く求められている。また、HFC365mfcも、ポリオールに対する溶解性は、HCFC141bやCFC11に比較するとやや低い。
【0014】
このように、HFC-365mfcをHCFC-141bの代替品として有効に使用するために、その燃焼性、溶解性等を制御する技術の開発が望まれている。
【0015】
一方、特表2001-506291には、HFC365mfc50?99重量%並びにHFC245faなどのフルオロ炭化水素1?50重量%を含有する混合物が、ポリウレタン発泡材料などの発泡プラスチックを製造するための発泡ガスとして使用できることが開示されている。前記公報に記載されている混合物は、HFC365mfcの割合が50重量%以上99%以下であるので、HFC365mfcの可燃性の課題が依然として解消されていないと考えられる。
【0016】
また、米国特許6451867号には、51?99重量%のHFC245faと1?49重量%のHFC365mfcを含む組成物が開示されている。この文献には、HFC245fa過剰の組成とすると、断熱性の指標であるk-ファクターがHFC245faまたはHFC365mfc単独の場合よりも改善されることが開示されている。しかしながら、発泡剤やプレミックスの燃焼性については記載がない。
【0017】
また、特開2002-47323号公報には、硬質ポリウレタンファームを製造する際に、ハイドロフルオロカーボンを発泡剤として使用し、且つ特定のフッ素系界面活性剤を使用する旨が開示されている。上記文献には、ハイドロフルオロカーボンとして、5?95重量%のHFC245faと95?5重量%のHFC365mfcの混合物を使用できると記載されている。上記文献は、難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを得ることを課題としているが、プレミックスの難燃性については、何ら記載されていない。
【0018】
発明の開示
本発明は、HFC-245faまたはHF365mfcの発泡剤としての性能は維持したままで、HFC-245faおよびHFC365mfcの有する課題を解決または低減した発泡剤および前記発泡剤を使用した合成樹脂発泡体の製造方法および前記発泡剤を含むプレミックスを提供することを主な目的とする。
【0019】
本発明者は、従来技術における上記の如き問題点に鑑みて研究を重ねた結果、発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて、ポリウレタン、ポリイソシアヌレートなどの合成樹脂発泡体を製造する方法において、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含み、特定の組成を有する混合物を発泡剤として用いることにより、目的を達成し得ることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、本発明は、以下の合成樹脂発泡剤の製造方法、発泡剤およびプレミックスに係る。
1.低沸点有機化合物系発泡剤(以下「発泡剤」ということがある)の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、低沸点有機化合物系発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン51?90重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン49?10重量%とからなる混合物を使用することを特徴とする合成樹脂発泡体の製造方法。
2.低沸点有機化合物系発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン60?80重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン40?20重量%とからなる混合物である上記1に記載の方法。
3.1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン51?90重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン49?10重量%とからなる混合物であるポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤。
4.1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン60?80重量%と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン40?20重量%とからなる混合物である上記3に記載の発泡剤。
5.低沸点有機化合物系発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法において、前記発泡剤として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物を使用し、前記発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを調製する工程を有し、得られるプレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上である発泡体の製造方法。
6.低沸点有機化合物系発泡剤として、更に、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコールおよびハロゲン化エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であって沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物を含む混合物を使用する上記5に記載の発泡体の製造方法。
7.得られたプレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスから沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物を除いたプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である上記5または6に記載の発泡体の製造方法。
8.低沸点有機化合物系発泡剤として、更にグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む混合物を使用する上記5または6に記載の発泡体の製造方法。
10.得られたプレミックスの40℃における蒸気圧が、グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項8に記載の発泡体の製造方法。
11.ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート用発泡剤であって、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含み、発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃において1.5以上となる発泡剤。
12.更に、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコールおよびハロゲン化エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であって沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物を含む上記11に記載の発泡剤。
13.発泡剤とポリオールとを含むプレミックスとしたときに、前記プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックス中の発泡剤の重量組成比及びHFC245fa/HFC365mfc重量組成比を変えずに沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物を除いたプレミックスの40℃における蒸気圧に対して95%以下である上記12に記載の発泡剤。
14.更に、グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を含む上記11または12に記載の発泡剤。
15.ポリオールと発泡剤とを含むプレミックスとしたときに、前記プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスからグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である上記14に記載の発泡剤。
16.更に、(i)ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコールおよびハロゲン化エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であって沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物と(ii)グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む請求項11に記載の発泡剤。
17.ポリオールと発泡剤とを含むプレミックスとしたときに、前記プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスから(i)沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物と(ii)グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを除いた以外は同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項16に記載の発泡剤。
18.発泡剤とポリオールとを含むプレミックスであって、発泡剤が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとを含む混合物であり、プレミックスの気相組成における1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの重量比が、25℃で1.5以上であるプレミックス。
19.発泡剤として、更に、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコールおよびハロゲン化エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であって沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物を含む混合物を用いる上記18に記載のプレミックス。
20.プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックス中の発泡剤の重量組成比及びHFC245fa/HFC365mfc重量組成比を変えずに沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物を除いたプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である上記19に記載のプレミックス。
21.発泡剤として、更に、グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を含む混合物を用いる請求項33に記載のプレミックス。
22.プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスからグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である請求項21に記載のプレミックス。
23.発泡剤として、更に、(i)ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコールおよびハロゲン化エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であって沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物と(ii)グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む混合物を用いる請求項18に記載の発泡剤。
24.プレミックスの40℃における蒸気圧が、前記プレミックスから(i)沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物と(ii)グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、95%以下である上記18に記載のプレミックス。
【0021】
本発明で用いる発泡剤は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)と1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)とからなる混合物である。また、本発明では、HFC245faとHFC365mfcとを含む混合物、並びにHFC245faとHFC365mfcとハロゲン含有化合物とを含む混合物も発泡剤として用いることができる。本発明の発泡剤は、上記発泡剤に、更に、グリコール系化合物及び/又はフッ素含有化合物とを含んでいてもよい。以下、上述したような発泡剤を「本発明の発泡剤」とうことがある。
【0022】
本発明には、本発明の発泡剤とポリオールとを含むプレミックスも含まれる。更に、本発明には、本発明の発泡剤または本発明のプレミックスを用いる合成樹脂発泡体の製造方法も含まれる。
【0023】
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンは、沸点40℃のHFC(hydrofluorocarbon:ハイドロフルオロカーボン)であり、オゾン層を破壊する能力のない物質である。また、HFC365mfc自身も発泡剤として優れた性質をもっている。
【0024】
しかしながら、HFC365mfcは、可燃性である(引火点:-18?-25℃、燃焼範囲:3.8vol%?13.3vol%)。HFC365mfcは、発泡剤として使用される炭化水素系の発泡剤、例えばペンタン類と比較すれば、燃焼性は低い。また、HFC245faの欠点は、前述のごとく、沸点が低いこととポリオールに対する相溶性が低いことに関するものである。
【0025】
そこで、HFC245faの欠点を克服し且つ発泡剤としての性能を維持するため特定の組成でHFC245faとHFC365mfcを混合する混合発泡剤を発明するに至った。即ち、特定の組成で、沸点15℃のHFC245faと沸点40℃のHFC365mfcとを混合することにより、それらの混合物の沸点を15℃以上にすることができ、HFC245faの欠点を克服できる。しかも、HFC365mfcの欠点である燃焼性も、不燃性のHFC245faと混合することにより同時に解消される。さらには、両方のHFCが、それぞれほぼ同等の優れた断熱性能をもつので、いずれかのHFCを単独で使用する場合とほとんど同等レベルの断熱性能を維持することができるという利点もある。従って、本発明の発泡剤は、ウレタン樹脂のように断熱性能が強く要求される発泡体の発泡剤として好適に用いることができる。
【0026】
本発明者は、気体のHFC-245faと気体のHFC365mfcとの混合割合と燃焼性の関係を鋭意研究した。燃焼性は、ASHRAE法方式に準じた方法(10L、球形フラスコ、放電点火、25℃)で燃焼性を判定した。ASHRAE法については、ASHRAE STANDARD 34-2001、ASTM Designatiion:E681-94に記載されている。気体のHFC-245fa 55重量%と気体のHFC365mfc 45重量%からなる混合物は、可燃性を示したが、気体のHFC245fa 65重量%と気体のHFC365mfc35重量%とからなる混合物は、不燃性を示した。
【0027】
実際の発泡体の製造工程においては、発泡剤とポリオールとを含む混合物、即ち、プレミックスの状態とした時に不燃性であることが求められる。プレミックスは、発泡剤とポリオール以外に、通常、発泡剤製造用触媒、整泡剤、分解抑制剤(安定剤)等を含んでいる。
【0028】
プレミックスの気相組成におけるHFC245faとHFC365mfcの重量比は、発泡剤のみの場合の気相組成におけるHFC245faとHFC365mfcの重量比とは異なる。発泡剤は、プレミックスに含まれるポリオール、発泡剤製造用触媒、整泡剤、分解抑制剤(安定剤)等と溶け合うので、プレミックスとすることにより気相組成が変化する。なお、発泡剤、ポリオール、発泡剤製造用触媒、整泡剤、分解抑制剤(安定剤)などを含むプレミックスから発泡剤を除いたものを「システム液」ということがある。
【0029】
例えば、液相組成がHFC245fa 40重量%とHFC365mfc 60重量%からなる発泡剤の25℃における気相組成は、HFC245fa 62重量%とHFC365mfc 38重量%であり不燃性を示す。しかしながら、液相組成がHFC245fa 40重量%とHFC365mfc 60重量%である発泡剤に、OH価が300mgKOH/gポリエステルポリオールを混合したプレミックス(ポリオールに対する発泡剤の重量比は100:40)の25℃における気相組成は、HFC245fa 54重量%とHFC365mfc 46重量%となり可燃性を示す。このように、発泡剤の気相組成が不燃性であるからといって、プレミックスの気相組成が不燃性であるとは必ずしもいえない。先に述べたように、このことは発泡剤とポリオール類との相溶性に依存することから生じる現象であるので、プレミックスに含まれる触媒、整泡剤、安定剤(分解抑制剤)等の成分の影響も受ける場合がある。
【0030】
なお、プレミックスの気相組成は、各成分を混合および撹拌後、気相組成をガスクロマトグラフィー法によって測定した。
【0031】
したがって、例えば25℃において不燃性のプレミックスを得ることを目的とする場合には、プレミックスの気相組成が25℃において、HFC245fa/HFC365mfcの重量比が1.5以上程度、好ましくは1.86以上程度となるようにHFC245faとHC365mfcの仕込み量を設定すればよい。このことは、単にHFC245faとHFC365mfcからなる発泡剤の気相組成が不燃か可燃かどうかを議論すればよいという考えとは大きく異なる。本発明者は、鋭意研究の結果、プレミックスの気相組成を不燃とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0032】
本発明の発泡剤においては、発泡剤、ポリオールなどを含むプレミックスとした時に、プレミックスの気相組成におけるFHC245faとHFC365mfcの重量比が、25℃において1.5以上程度であるのが好ましく、1.7以上程度がより好ましく、1.7?4程度であるのが最も好ましい。さらに、発泡剤、ポリオールなどを含むプレミックスとした時に、プレミックスの気相組成におけるFHC245faとHFC365mfcの重量比が、40℃において、1.85以上程度となるのが好ましく、1.9以上程度となるのがより好ましく、1.9?4程度であるのが最も好ましい。
【0033】
HFC245faとHFC365mfcからなる混合物の沸点(蒸気圧が約0.1Mpaを示す温度)は、HFC245faの沸点よりも高くなる。HFC245faとHFC365mfcからなる発泡剤の沸点は、17?27℃程度が好ましく、18?27℃程度がより好ましく、20?27℃程度が最も好ましい。このような範囲となるように、HFC245faとHFC365mfcの混合割合を設定すればよい。この場合もプレミックスの沸点がこのようになればよい。即ち、プレミックスの蒸気圧が0.101MPaになる温度が17?27℃程度が好ましく、18?27℃程度がより好ましく、20?27℃程度が最も好ましい。この様なプレミックスの沸点が、17℃程度になるHFC-245faとHFC365mfcの混合割合は、HFC-245faのHFC365mfc合計を100重量%としたときに、HFC-245fa:HFC365mfc=90?80重量%:10?20重量%程度である。また、プレミックスの沸点が27℃程度になるHFC-245faとHFC365mfcの混合割合は、HFC-245faのHFC365mfc合計を100重量%としたときに、HFC-245fa:HFC365mfc=60?50重量%:40?50重量%程度である。
【0034】
一方、プレミックスでHFC365mfcの燃焼性を無視できるような範囲は、HFC365mfcが49?55重量%未満、好ましくは43?49重量%以下、さらに好ましくは43重量%以下である。
【0035】
以上のことから、HFC-245faとHFC365mfcの好ましい仕込み比率は、おおよそHFC-245fa:HFC365mfc=90?51重量%:10?49重量%となる。より好ましくは、HFC-245faとHFC365mfcの合計を100重量%とした時に、HFC-245fa:HFC365mfc=90?54重量%:10?46重量%程度であり、特に好ましくはHFC-245fa:HFC365mfc=80?60重量%:20?40重量%程度である。
*ハロゲン含有化合物
本発明の発泡剤は、更に、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコール及びハロゲン化エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であって沸点が15℃以上であるハロゲン含有化合物を含んでいてもよい。即ち、本発明の発泡剤は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコール及びハロゲン化エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であって沸点が15℃以上であるハロゲン含有化合物とを含んでいてもよい。上記のような沸点15℃以上のハロゲン含有化合物を発泡剤に添加することにより、プレミックスの蒸気圧を低下させることができ、場合によってはプレミックスの燃焼性をさらに抑制することができる。
【0036】
ハロゲン含有化合物を含む発泡剤を用いる場合には、発泡剤、ポリオールなどを含むプレミックスとした時に、プレミックスの気相組成におけるFHC245faとHFC365mfcの重量比が、25℃において、1?6程度となるのが好ましい。
【0037】
本発明において用いるハロゲン含有化合物は、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子を少なくとも1種含む化合物である。本発明において用いるハロゲン含有化合物は、オゾン層を破壊する能力が実質的にゼロであることが好ましい。このようなハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロゲン原子としてフッ素および/またはヨウ素を含む化合物などを例示することができる。オゾン層を破壊する危険性が全くなくなるという点においては、ハロゲン原子としてFのみを含むハロゲン含有化合物が好ましい。一方、臭素または塩素含有化合物であっても、沸点の比較的高い物質は蒸発し難いので、オゾン層を破壊する可能性は低くなる。実際、オゾン層の破壊を回避するため規制されているCFC(クロロフルオロ炭化水素)は、炭素数が3までである。したがって、本発明において用いるハロゲン含有化合物には、炭素数が4以上のクロロフルオロアルカンが含まれる。
【0038】
本発明において用いるハロゲン含有化合物の沸点は、1気圧(約0.1MPa)において通常15℃以上であり、好ましくは25℃以上程度、より好ましくは35?140℃程度である。
【0039】
発泡剤中のHFC-245faとHFC365fmcとハロゲン含有化合物との混合割合は、用途、合成樹脂発泡体原料の組成などに応じて任意に選択できる。例えば、HFC245fa、HFC365mfc、ハロゲン含有化合物、ポリオールなどを含むプレミックスの40℃程度における蒸気圧が、ハロゲン含有化合物を除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、通常95%以下程度であり、好ましくは70?90%程度であり、より好ましくは70?85%程度となるようにHFC-245faとHFC365mfcとハロゲン含有化合物との比を設定するのが好ましい。より具体的な例を挙げると、(a)ハロゲン含有化合物:A重量部、(b)HFC-245faとHFC365mfcの合計:B重量部および(c)ポリオール:C重量部からなるプレミックスの場合、前記(a)?(c)を含むプレミックスの蒸気圧が、40℃程度において、(b)HFC-245faとHFC365mfcの合計:B重量部および(c)ポリオール:C重量部からなるプレミックスの蒸気圧に対して、95%以下程度、好ましくは90%以下程度、より好ましくは85%以下程度となるようにHFC-245faとHFC365mfcとハロゲン含有化合物との比を設定するのが好ましい。なお、蒸気圧の比の測定には、ポリオール100重量部に対して、HFC-245faとHFC365mfcとハロゲン含有化合物の合計量が、20?70重量部程度であるプレミックスを用いる。
(a)ハロゲン化炭化水素
本発明において用いるハロゲン化炭化水素としては、直鎖または分枝状のハロゲン化炭化水素、環式ハロゲン化炭化水素などを例示でき、直鎖または分枝状のハロゲン化脂肪族炭化水素、脂環式ハロゲン化炭化水素が好ましい。ハロゲン化炭化水素は、全ての水素がハロゲン原子によって置換されたパーハロゲン化炭化水素であってもよく、含水素ハロゲン化炭化水素であってもよい。また、ハロゲン化炭化水素は、飽和炭化水素であっても、不飽和炭化水素であってもよい。
【0040】
ハロゲン化炭化水素の沸点は、1気圧(約0.1MPa)において、通常15℃以上程度であり、好ましくは30?140℃程度、より好ましくは40?120℃程度である。ハロゲン化炭化水素の炭素数は、沸点が15℃以上であれば特に制限されないが、通常4以上、好ましくは4?9程度、より好ましくは4?6程度である。
【0041】
ハロゲン化脂肪族炭化水素の具体例として、例えば、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ1-ヘキセン(CH_(2)=CH(CF_(2))_(3)CF_(3)、沸点58℃)、2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CH_(2)=CFCF_(2)CF_(2)CF_(2)H)などのハイドロフルオロアルケン;
パーフルオロ-1-ブテン(CF_(2)=CFCF_(2)CF_(3))、パーフルオロヘキセン(C_(6)F_(12)、沸点46℃、49℃または51℃)、パーフルオロノネン(C_(9)F_(18))などのパーフルオロアルケン;
パーフルオロヘキサン(C_(6)F_(14)、沸点58℃)などのパーフルオロアルカン;
パーフルオロシクロブタン(c-C_(4)F_(8))などのパーフルオロシクロアルカン;
1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(CF_(2)HCF_(2)CF_(2)CF_(2)H 沸点44℃)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(CF_(3)CF_(2)CFHCFHCF_(3)沸点54℃)、2-トリフルオロメチル-1,1,1,2,3,4,5,5,5-ノナフルオロペンタン(C_(6)F_(12)H_(2)、沸点53℃)、2-トリフルオロメチル-1,1,1,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(C_(6)F_(13)H、沸点62℃)、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-トリデカフルオロペンタン(H(CF_(2))_(6)F、沸点72℃)などのハイドロフルオロアルカン;
1,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブタン(c-C_(4)F_(6)H_(2)、沸点63℃)、2,3,3,4,4,5,5-ペンタフルオロシクロペンタン(c-C_(5)F_(7)H_(3)、沸点83℃)などのハイドロフルオロシクロアルカン;
1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,2,3,4-テトラクロロブタン(CF_(2)ClCFClCFClCF_(2)Cl、沸点134℃)、2,3-ジクロロオクタフルオロブタン(CF_(3)CFClCFClCF_(3)、沸点63℃)、1,4-ジクロロオクタフルオロブタン(CF_(2)ClCF_(2)CF_(2)CF_(2)Cl、沸点66℃)などのクロロフルオロアルカン;
1-クロロ1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(CF_(2)ClCF_(2)CF_(2)CF_(2)H、沸点50℃)、1-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロヘキサン(CF_(2)ClCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2)H、沸点78℃)などのハイドロクロロフルオロアルカン;
1,2-ジクロロヘキサフルオロシクロブタン(-CFClCFClCF_(2)CF_(2)-、沸点60℃)などのクロロフルオロシクロアルカン;
アイオドトリフルオロメチル(CF_(3)I)、1-アイオドナノフルオロブタン(CF_(2)ICF_(2)CF_(2)CF_(3)、沸点67℃)などのアイオドフルオロアルカン;
1-ブロモプロパン(CH_(2)BrCH_(2)CH_(3)、沸点71℃)、2-ブロモブタン(CH_(3)CHBrCH_(2)CH_(3)、沸点91℃)などのハイドロブロモアルカンなどを例示できる。
【0042】
これらの中では、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ1-ヘキセン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン、1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,2,3,4-テトラクロロブタン、2,3-ジクロロオクタフルオロブタン、1,4-ジクロロオクタフルオロブタン、1-クロロ1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン、1-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロヘキサン、1,2-ジクロロヘキサフルオロシクロブタン、2-ブロモブタンなどが好ましい。
【0043】
(b)ハロゲン化アルコール
ハロゲン化アルコールとしては、直鎖状または分枝状ハロゲン化脂肪族アルコールなどを例示できる。ハロゲン化アルコールは、全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されたパーハロゲン化アルコールであってもよく、含水素ハロゲン化アルコールであってもよい。
【0044】
ハロゲン化アルコールの炭素数は、沸点が15℃以上であれば特に制限されないが、通常2以上、好ましくは2?5程度、より好ましくは2?4程度である。
【0045】
ハロゲン化アルコールの沸点は、1気圧(約0.1MPa)において、通常15℃以上程度であり、好ましくは40?130℃程度、より好ましくは50?120℃程度である。
【0046】
ハロゲン化アルコールの具体例として、例えば、1,1,1-トリフルオロエタノール(CF_(3)CH_(2)OH、沸点74℃)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパノール(CF_(3)CF_(2)CH_(2)OH、沸点82℃)、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール(CF_(2)HCF_(2)CH_(2)OH、沸点110℃)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロブタノール(CF_(3)CF_(2)CH_(2)CH_(2)OH、沸点100℃)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロブタノール(CF_(3)CFHCF_(2)CH_(2)OH、沸点114℃)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-オール(CF_(3)CH(OH)CF_(3)、沸点59℃)などのハイドロフルオロアルコールなどを例示できる。
【0047】
これらの中では、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、1,1,1,2,2-ペンタフルオロブタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-オールなどが好ましい。
【0048】
(c)ハロゲン化エーテル
本発明において用いるハロゲン化エーテルの沸点は、1気圧(約0.1MPa)において、通常15℃以上程度であり、好ましくは25?110℃程度、より好ましくは30?95℃程度である。ハロゲン化エーテルの中ではハイドロフルオロエーテル(HFE)が好ましい。
【0049】
本発明において用いるハイドロフルオロエーテルは、沸点が15℃以上であれば、特に制限されないが、HFEに含まれる炭素数は、通常3以上程度、好ましくは3?7程度、より好ましくは3?6程度である。
【0050】
沸点が15℃以上のハイドロフルオロエーテルとしては、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CF_(2)HCF_(2)OCHF_(2)、沸点29℃)、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル(CF_(2)HCF_(2)OCH_(3)、沸点37℃)、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(CF_(3)CH_(2)OCF_(2)CF_(2)H、沸点56℃)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(CF_(3)CFHCF_(2)OCH_(3)、沸点54℃)、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(CF_(2)HCF_(2)CH_(2)OCF_(2)CF_(2)H、沸点92℃)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル(CF_(2)HCF_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(3)、沸点70℃)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル(CF_(3)CFHCF_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(3)、沸点86℃)、ノナフルオロブチルメチルエーテル(C_(4)F_(9)OCH_(3)、沸点60℃)、ノナフルオロブチルエチルエーテル(C_(4)F_(9)OC_(2)H_(5)、沸点78℃)、1-トリフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル((CF_(3))_(2)CFOCH_(3)、沸点29℃)、パーフルオロプロピルメチルエーテル(CF_(3)CF_(2)CF_(2)OCH_(3)、沸点34℃)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル(CF_(3)CF_(2)CH_(2)OCHF_(2)、沸点46℃)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(CF_(3)CFHCF_(2)OCH_(2)CF_(3)、沸点72℃)、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル(CF_(3)CFHCF_(2)CH_(2)OCHF_(2)、沸点88℃)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピルエーテル(CF_(3)CFHCF_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)H、沸点102℃)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルメチルエーテル(CF_(3)CH(CF_(3))CF_(2)OCH_(3)、沸点71℃)等が挙げられる。これらの中では、1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルなどが好ましい。
【0051】
ハイドロフルオロエーテル以外のハロゲン化エーテルとしては、例えば、パーフルオロプロピルエポキシド(CF_(3)CF(O)CF_(2))などのパーフルオロアルキルエポキシド;1,2,2-トリフルオロエチレントリフルオロメチルエーテル(CF_(2)=CFOCF_(3))、1,2,2-トリフルオロエチレン-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピルエーテル(CF_(2)=CFOCF_(2)CF_(2)CF_(3))などの不飽和フルオロエーテルを挙げられる。
【0052】
本発明において用いるハロゲン含有化合物は、難燃性であることが好ましい。しかしながら、ハロゲン含有化合物自身が、難燃性である必要は必ずしもなく、発泡剤としたときに難燃性となればよい。特に、プレミックスとした時に、難燃性となるようなハロゲン含有化合物が好ましい。この様なハロゲン含有化合物としては、1,1,1-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテルなどを例示することができる。
【0053】
本発明において用いるハロゲン含有化合物は、HFC245faおよびHFC365mfcとの相溶性が高いことが好ましい。本発明において用いるハロゲン含有化合物は、合成樹脂の原料、特にポリオールとの相溶性が高いものが好ましい。例えば、ハロゲン含有化合物とポリオールとを10分程度振とうした後、0?25℃程度において5時間程度静置後も相分離しないハロゲン含有化合物が好ましい。ポリオールに対する相溶性が高く、HFC-245faとHFC365mfcとも相溶性が高いハロゲン含有化合物を用いると、ポリオールと発泡剤の混合物を開放系に置いた時の発泡剤のロスも低減できる。
【0054】
本発明において用いるハロゲン含有化合物としては、それ自身単独で発泡剤として使用できる化合物も好ましい。即ち、それ自身が、低い熱伝導率を有し、且つ沸点が15?90℃程度であるハロゲン含有化合物が好ましい。ハロゲン含有化合物の熱伝導率は、気体とした時に、1気圧(約0.1MPa)程度において、8?20mW/mK程度が好ましいこのようなハロゲン含有化合物としては、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテルなどを例示することができる。ハロゲン含有化合物自身が発泡剤である場合には、ハロゲン含有化合物を含む発泡剤の添加量は、HFC-245faとHFC365mfcのみからなる発泡剤の添加量と同程度とすることができる。即ち、発泡剤中に占めるHFC-245faおよびHFC365mfcの割合を低下させることができる。よって、本発明の発泡剤とポリオールとを含むプレミックスの蒸気圧において、HFC245faおよびHFC365mfcの分圧の合計を低下させる効果がより大きくなる。また、実際に発泡させた場合、ハロゲン含有化合物自身が発泡剤として働き、発泡体中に凝縮物として残存したりする懸念がなくなる。
【0055】
HFC245faとHFC365mfcとハロゲン含有化合物との混合割合は、ハロゲン含有化合物の種類、用途、処方などに応じて任意に選択できるが、発泡剤の沸点、即ち蒸気圧が1気圧(約0.1MPa)になる温度が、17?35℃程度になる割合が好ましく、18?30℃程度になる割合が特に好ましい。
【0056】
ポリオール、HFC245fa、HFC365mfc、ハロゲン含有化合物などを含むプレミックスの沸点は、17℃?32℃程度になることが好ましい。
【0057】
ハロゲン含有化合物を含む発泡剤とポリオールとの混合物(プレミックス)の蒸気圧は、特に制限されないが、通常17?32℃程度、好ましくは18?28程度、より好ましくは20?28℃程度である。
【0058】
HFC-245fa、HFC365mfcとハロゲン含有化合物との混合割合は、特に制限されず、ハロゲン含有化合物の種類などに応じて適宜設定することができるが、3者の合計を100モルとした時に、ハロゲン含有化合物は、通常50モル未満程度、好ましくは40モル未満、より好ましくは30モル未満、特に好ましくは25?3モル程度である。本発明の発泡剤としては、プレミックスとした時の蒸気圧や燃焼性に問題がなければ、ハロゲン含有化合物を加えない混合物であってもよい。
【0059】
ハロゲン含有化合物を含む場合、HFC-245faとHFC365mfcの比率は、特に制限されないが、HFC-245faとHFC365mfcの合計を100重量%とした時に、HFC-245fa:HFC365mfc=95?52重量%:5?48重量%であり、特に好ましくは、HFC-245fa:HFC365mfc=90?50重量%:10?50重量%である。
*相溶化剤
本発明の発泡剤は、更にグリコール系化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を含んでいてもよい。即ち、本発明の発泡剤は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとグリコール系化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む混合物であってもよい。または、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンと沸点が15℃以上のハロゲン含有化合物とグリコール系化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む混合物であってもよい。
【0060】
HFC245faおよびHFC365mfcは、HCFC141bと比較するとポリオールへの溶解性が低い。グリコール系化合物とフッ素含有界面活性剤は、相溶化剤として作用するので、グリコール系化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を用いることにより、発泡剤のポリオールへの相溶性が改善される。相溶性が改善されるとプレミックスから発泡剤が揮発することによるロスを低下できるとともに、プレミックスの蒸気圧を低減できる。特にプレミックス中のHFC245faの割合が高い場合はプレミックスの蒸気圧が高くなりやすいので、グリコール系化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を使用してプレミックスの蒸気圧を低減するのが好ましい。即ち、燃焼性をさらに抑制するためにはHFC245faの割合を増加すればよいが、その場合は発泡剤、プレミックスともに蒸気圧が増加する方向となる。その場合、グリコール系化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を添加することにより、燃焼性をほとんど変えずに蒸気圧だけを低下させることができる。
*グリコール系化合物
本発明において用いるグリコール系化合物としては、例えば、エチレングリコール化合物、プロピレングリコール化合物などを例示することができる。
【0061】
エチレングリコール化合物としては、以下の式(A)?式(C)で示される化合物などを例示することができる。
式(A)C_(a)H_(2a+1)(OCH_(2)CH_(2)O)_(b)C_(c)H_(2c+1)
[式中、a,bおよびcは、独立にa=0,1,2,3,4、b=1,2,3,4、c=0,1,2,3,4]、
式(B)C_(d)H_(2d+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(e)CO C_(f)H_(2f+1)
[式中、d,eおよびfは、独立にd=0,1,2,3,4、e=1,2,3,4、f=0,1,2,3,4]および
式(C)C_(i)H_(2i+1)CO(OCH_(2)CH_(2)O)_(j)C_(k)H_(2k+1)
[式中、i,jおよびkは、独立にi=0,1,2,3,4、j=1,2,3,4、k=0,1,2,3,4]。
【0062】
式(A)で示されるエチレングリコール化合物の具体例として、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールなどを例示できる。
【0063】
式(B)で示されるエチレングリコール化合物の具体例として、例えば、エチレングリコールモノフォルメート、エチレングリコールジフォルメート、ジエチレングリコールモノフォルメート、ジエチレングリコールジフォルメート、トリエチレングリコールモノフォルメート、トリエチレングリコールジフォルメート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノプロピオネート、エチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールモノプロピオネート、ジエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールモノプロピオネート、トリエチレングリコールジプロピオネートなどを例示できる。
【0064】
式(C)で示されるエチレングリコール化合物の具体例として、例えば、エチレングリコールメチルエーテルフォルメート、エチレングリコールエチルエーテルフォルメート、エチレングリコールプロピルエーテルフォルメート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルフォルメート、ジエチレングリコールエチルエーテルフォルメート、ジエチレングリコールプロピルエーテルフォルメート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、トリエチレングリコールメチルエーテルフォルメート、トリエチレングリコールエチルエーテルフォルメート、トリエチレングリコールプロピルエーテルフォルメート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、トリエチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、トリエチレングリコールプロピルエーテルプロピオネートなどを例示できる。
【0065】
エチレングルコール系化合物としては、式(A)においてaおよびcが1以上であるジエーテル化合物、式(B)においてdおよびfが1以上であるジエステル化合物、式(C)においてkおよびiが1以上であるエーテルエステル化合物などが好ましく、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノnブチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジnブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどがより好ましく、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルエチレングリコールモノnブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールn-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルも好適に用いることができる。
【0066】
プロピレングリコール化合物としては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、2-メトキシー1-プロパノール、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の化合物が挙げられる。特にトリプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテートが好ましい。
【0067】
グリコール化合物としては、HFC245faとHFC365mfcおよび/またはポリオールとの相溶性が高い化合物が好ましい。例えば、HFC245fa、HFC365mfc、グリコール系化合物、ポリオールなどを含むプレミックスを10分程度振とうした後、0?25℃程度において5時間程度静置した後も相分離しないグリコール化合物が好ましい。HFC245faとHFC365mfcおよび/またはポリオールとの相溶性の点においては、具体名を上述した化合物を好ましく使用できる。HFC-245faとHFC365mfcおよび/またはポリオールとの相溶性が高いグリコール化合物である程、ポリオール、発泡剤などを含むプレミックスを開放系に置いた時の発泡剤のロス(飛散量)を低減することができる。また、プレミックスの蒸気圧も低下できる。
【0068】
グリコール化合物としては、難燃性のものが好ましい。しかしながら、グリコール化合物が全く不燃である必要はなく、HFC-245faとHFC365fmcとの混合物としたときに、難燃性を保てる程度であればよい。グリコール化合物としては、危険物第4類、3石以上程度の難燃性を有していることが好ましいが、プレミックスとした時に、危険物第4類、3石以上程度の難燃性を有している限り、グリコール化合物の難燃性は、特に制限されない。なお、危険物第4類、3石以上程度の難燃性とは、1気圧、20℃で液体の化合物の発火点が100℃以上程度で、引火点が70℃以上程度であることを意味する。難燃性のグリコール化合物を用いると、発泡剤を難燃性に保ち、現場での発泡時に要求される難燃性を維持できる。例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの引火点は110℃であり、エチレングリコールジアセテートの引火点は96℃であり、ともに20℃において液体である。従って、これらのグリコール化合物は、危険物第4類、3石以上の難燃性を有している。
【0069】
本発明において用いるグリコール化合物の沸点は、特に制限されないが、通常85?300℃程度であり、好ましくは120?250℃程度である。
*フッ素含有界面活性剤
本発明において用いるフッ素含有界面活性剤としては、例えば、以下の式(D)?式(F)で示される化合物などを例示することができる。
式(D)HO[CH_(2)C(R)(CH_(2)OCH_(2)R^(fa))CH_(2)O]_(n)H
[式中、nは3?30であり、
R^(fa)は、-(CF_(2))_(a’)H(a’=1?8)または-(CF_(2))_(b’)F(b’=1?8)を示し、
Rは、Hまたは低級アルキル基を示す]、
式(E)HO[CH(CH_(2)R^(fb))CH_(2)O]_(m)H
[式中、mは3?30であり、
R^(fb)は、-(CF_(2))_(c’)H(c’=1?8)または-(CF_(2))_(d’)F(d’=1?8)を示す]、
式(F)R^(1)O[CH(R^(0))(CH_(2))_(1a)O]_(1b)R^(2)
[式中、R^(0)は、HまたはCH_(3)を示し、
R^(1)は、F含有アルキルまたはその置換体を示し、
R^(2)は、Hまたは低級アルキル基を示し、1a=1?3、1b=4?15である]。
【0070】
一般式(D)において、nは通常3?30程度であり、好ましくは3?10程度である。R^(fa)は、-(CF_(2))_(a’)H(a’=1?8)または-(CF_(2))_(b’)F(b’=1?8)を示す。a’は1?4が好ましく、b’は1?4が好ましい。Rは、水素原子または低級アルキル基を示す。Rで示される低級アルキル基の炭素数は、通常1?4程度であり、好ましくは1?2程度である。
【0071】
式(D)で示される化合物としては、HO[CH_(2)C(CH_(3))(CH_(2)OCH_(2)CF_(3))CH_(2)O]_(7)H、HO[CH_(2)C(CH_(3))(CH_(2)OCH_(2)C_(4)F_(8)H)CH_(2)O]_(6)Hなどが好ましい。
【0072】
一般式(E)において、mは通常3?30程度であり、好ましくは3?10程度である。R^(fb)は、-(CF_(2))_(c’)H(c’=1?8)または-(CF_(2))_(d’)F(d’=1?8)を示す。c’は1?4が好ましく、d’は1?4が好ましい。
【0073】
一般式(E)で示される化合物としては、HO[CH(CH_(2)C_(4)F_(9))CH_(2)O]_(6)H、HO[CH(CH_(2)C_(2)F_(5))CH_(2)O]_(6)Hなどが好ましい。
【0074】
一般式(F)において、nは、通常1?3程度であり、1?2程度が好ましい。mは、通常4?15程度であり、好ましくは4?10程度である。R^(1)は、F含有アルキルまたはその置換体を示す。R^(1)で示されるF含有アルキルの炭素数は、通常10?20程度であり、好ましくは12?18程度である。R^(1)で示されるF含有アルキルのフッ素原子の数は、通常10?40程度であり、好ましくは12?34程度である。R^(2)は、Hまたは低級アルキル基を示す。R^(2)で示される低級アルキル基の炭素数は、通常1?2程度である。
【0075】
一般式(F)で示される化合物としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のユニダインDS-401,DS-403;デュポン社製のゾニールFSO,FSNなどを例示できる。
【0076】
フッ素含有界面活性剤としては、HFC-245faとHFC365mfcおよび/またはポリオールとの相溶性が高い化合物が好ましい。例えば、HFC-245faとHFC365mfcとフッ素含有界面活性剤とポリオールとを含むプレミックスを10分程度振とうした後、0?25℃程度において5時間程度静置した後も相分離しないフッ素含有界面活性剤が好ましい。HFC-245faとHFC365mfcおよび/またはポリオールとの相溶性が高いフッ素含有界面活性剤である程、ポリオールと発泡剤とを含むプレミックスを開放系に置いた時の発泡剤のロス、即ち発泡剤の飛散量を低減することができる。
【0077】
フッ素含有界面活性剤としては、難燃性のものが好ましい。しかしながら、フッ素含有界面活性剤が全く不燃である必要はなく、HFC-245faとHFC365fmcとの混合物としたときに、難燃性を保てる程度であればよい。フッ素含有界面活性剤は、危険物第4類、3石以上程度の難燃性を有していることが好ましいが、プレミックスの状態とした時に、危険物第4類、3石以上程度の難燃性を有している限り、フッ素含有界面活性剤の難燃性は、特に制限されない。難燃性のフッ素含有界面活性剤を用いると、発泡剤を難燃性に保ち、現場での発泡時に要求される難燃性を維持できる。
【0078】
本発明において用いるフッ素含有界面活性剤の沸点は、特に制限されないが、通常100?300℃程度であり、好ましくは120?250℃程度である。
【0079】
発泡剤中のHFC-245faとHFC365fmcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤との混合割合は、用途、合成樹脂発泡体原料の組成などに応じて任意に選択できる。例えば、HFC245fa、HFC365mfc、グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤、ポリオールなどを含むプレミックスの40℃程度における蒸気圧が、グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を除いた以外は前記プレミックスと同じ重量組成比のプレミックスの40℃における蒸気圧に対して、通常95%以下程度であり、好ましくは70?90%程度であり、より好ましくは70?85%程度となるようにHFC-245faとHFC365mfcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤との比を設定するのが好ましい。より具体的な例を挙げると、(a)グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤:A重量部、(b)HFC-245faとHFC365mfcの合計:B重量部および(c)ポリオール:C重量部からなるプレミックスの場合、前記(a)?(c)を含むプレミックスの蒸気圧が、40℃程度において、(b)HFC-245faとHFC365mfcの合計:B重量部および(c)ポリオール:C重量部からなるプレミックスの蒸気圧に対して、95%以下程度、好ましくは90%以下程度、より好ましくは85%以下程度となるようにHFC-245faとHFC365mfcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤との比を設定するのが好ましい。なお、蒸気圧の比の測定には、ポリオール100重量部に対して、HFC-245faとHFC365mfcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤の合計量が、20?70重量部程度であるプレミックスを用いる。
【0080】
または、HFC-245fa、HFC365mfc、グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤、ポリオールなどを含むプレミックスの沸点、即ちプレミックスの蒸気圧が1気圧(約0.1MPa)になる温度が、通常15℃以上程度、好ましくは17?35℃程度、より好ましくは18?30℃程度になるように、HFC-245fa、HFC365mfc、フッ素含有界面活性剤などの混合比を設定すればよい。
【0081】
グリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤を含む本発明の発泡剤において、HFC-245faとHFC365mfcの配合量の合計は、HFC-245faとHFC365mfcとフッ素含有界面活性剤との総量に対して、通常50重量%以上程度、好ましくは65?99重量%程度、より好ましくは75?98重量%程度である。なお、HFC365mfcとHFC245faを発泡剤とするプレミックスの蒸気圧や燃焼性に問題がなければフッ素含有界面活性剤は、加えなくてもよい。
【0082】
HFC245faとHFC365mfcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む発泡剤におけるHFC245faとHFC365mfcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤の混合割合は、発泡剤の沸点が、17?35℃程度になる割合が好ましく、18?30℃になる割合がより好ましい。
【0083】
HFC245faとHFC365mfcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む発泡剤におけるHFC-245faとHFC365mfcとの混合比率は、HFC-245faとHFC365mfcの合計を100重量%とした時に、HFC-245fa:HFC365mfc=90?54重量%:10?46重量%であり、特に好ましくは、HFC-245fa:HFC365mfc=80?60重量%:20?40重量%である。
【0084】
更に、ハロゲン含有化合物を含む場合、即ち、ハロゲン含有化合物とHFC245faとHFC365mfcとグリコール化合物及び/又はフッ素含有界面活性剤とを含む発泡剤におけるHFC-245faとHFC365mfcとの混合比率は、HFC-245faとHFC365mfcの合計を100重量%とした時に、HFC-245fa:HFC365mfc=95?52重量%:5?48重量%であり、特に好ましくは、HFC-245fa:HFC365mfc=90?50重量%:10?50重量%である。
【0085】
以上のように、本発明の発泡剤としては、HFC245faとHFC365mfcの混合物をベースとしてプレミックスとした場合に、プレミックスの気相成分が不燃性となるように各成分の混合比を調製したものが好ましい。また、プレミックスの蒸気圧を下げたり燃焼性を改善するために、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコール、ハイドロフルオロエーテルなどのハロゲン含有化合物を加えることができる。さらに、ハロゲン含有化合物の有無に関係なく、相溶化剤であるグリコール化合物、フッ素含有界面活性剤またはその両者を発泡剤に加えることができる。
【0086】
本発明の発泡剤の使用量は、組成などに応じて適宜設定することができるが、ポリオール100重量部に対して、HFC-245faとHFC365mfcの合計量が、通常1?60重量部程度、好ましくは10?50重量部程度、より好ましくは20?45重量部程度である。
【0087】
本発明の発泡剤は、沸点が15℃より低い低沸点発泡剤を含んでいてもよい。低沸点発泡剤としては、例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素;空気、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガスなどを例示できる。低沸点発泡剤であるハロゲン化炭化水素としては、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンも例示できる。これらの発泡剤は、発泡時にプレミックスに混合されて使用されることが多い。他の低沸点発泡剤を使用する場合、HFC245faとHFC365mfcの総量の割合は、20重量%以上程度、特に40重量%以上程度が好ましい。
【0088】
本発明の発泡剤は、水を含んでいてもよい。即ち、混合発泡剤は、単独使用しても良く、水と併用してもよい。多くの場合、混合発泡剤は、水と併用される。これは、水を加えることにより発泡時に炭酸ガスが生成し、炭酸ガスが発泡に寄与するためである。しかし、多量に水を加えすぎると、発泡体の断熱性能等を低下させるおそれがある。水の添加量は、HFC-245fa、HFC365mfcと水の総量に対して、通常60モル%以下程度である。上記のような範囲内とすることによって、より確実に高断熱性発泡体を製造することができる。
【0089】
また、本発明の発泡剤は、必要に応じて、分解抑制剤を配合していてもよい。分解抑制剤としては、例えばニトロベンゼン、ニトロメタンなどのニトロ化合物;α-メチルスチレン、p-イソプロペニルトルエンなどの芳香族炭化水素;イソプレン、2,3-ジメチルブタジエンなどの脂肪族不飽和炭化水素;1,2-ブチレンオキシド、エピクロルヒドリンなどのエポキシ化合物;p-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールなどのフェノール化合物;クロロ酢酸イソプロピルエステルなどのクロロ酢酸エステル化合物などを好ましいものとして例示できる。
【0090】
分解抑制剤の配合割合は、抑制剤の種類などに応じて適宜設定することができるが、本発明の有機化合物系発泡剤100重量部に対して、通常0.05?5重量部程度である。分解抑制剤は、予め有機化合物系発泡剤と混合しておいても良く、または発泡時に別々に添加しても良い。
*その他の原料
ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造するために使用するその他の原料としては、公知のものを使用することができる。これらのものとしては、以下のものを例示することができる。
【0091】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば「岩田敬治、ポリウレタン樹脂ハンドブック71?98頁、日刊工業新聞社」に記載されている、脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の有機イソシアネートをいずれも使用することができる。最も一般的に使用されているポリイソシアネートとしては、主に2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)等があり、主に2,4-TDI/2,6-TDIの重量比が80/20の混合物や65/35の混合物として使用されている。また、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合物をホスゲン化することにより得られるポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(粗製-MDI)も使用されている。
【0092】
ポリオールとしては、例えば、「岩田敬治、ポリウレタン樹脂ハンドブック99?117頁、日刊工業新聞社」等に記載されているポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0093】
これらの内で、ポリエーテルポリオールは、活性水素原子を持つ開始剤とアルキレンオキサイドとの反応によって得ることができる。例えば、開始剤としてエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、メチルグルコジット、トリレンジアミン、ソルビトール、しょ糖などを使用し、アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどを使用して、両者を反応させて得られる官能基数が2?8で水酸基価が300?800mgKOH/g程度のものを例示することができる。
【0094】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸とグリコール若しくはトルオールとの脱水縮合によって得られる縮合系ポリエステルポリオール、カプロラクタムの開環重合によって得られるラクトン系ポリエステルおよびポリカーボネートジオールなどのうち、官能基数が2?4で水酸基価が250?500mgKOH/g程度のものを例示することができる。
【0095】
触媒としては、3級アミン、有機金属化合物等やそれらの混合物を使用することができる。通常はポリオール100重量部に対して、0.01?10重量部程度、好ましくは0.1?5重量部程度の触媒を使用する。
【0096】
触媒として使用できる3級アミンとしては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミンなどのジアミン類;トリエチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾールなどの環状アミン類;ジメチルアミノエタノールなどのアルコールアミン類等が挙げられる。また、有機金属化合物としては、スターナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテートなどが挙げられる。
【0097】
ポリウレタン発泡体を製造するためのその他の添加剤のうち、整泡剤としてシリコーン系界面活性剤、上述した以外の含フッ素界面活性剤等が使用され、具体的には、ポリシロキサン-ポリアルキレンブロックコポリマー、メチルポリシロキサンをベースにした界面活性剤などを使用することができる。整泡剤は、通常は、ポリオール100重量部に対して、0.1?10重量部程度用いることができる。
*製造方法
本発明の製造方法は、発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を製造する方法であって、上述したような本発明の発泡剤を用いる限り特に制限されない。本発明の製造方法では、予め発泡剤とポリオールとを混合してプレミックスとしてもよい。
【0098】
本発明の合成樹脂発泡体の製造方法では、上記した特定の発泡剤の存在下に、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させることによってポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの発泡体を得ることができる。
【0099】
ポリオールとポリイソシアネート化合物との配合割合については、適宜決めれば良いが、通常、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基1当量に対して、ポリオール中の活性水素が1?3当量程度となるように配合することが適当である。
【0100】
製造条件は、常法に従えば良く、原料を均一に混合できる装置であれば、如何なるものを用いても良いが、例えば、ミキサー、発泡機などを用いて、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒、その他の添加剤などの各原料をよく混合して、成形することによって、目的とする発泡体とすることができる。発泡剤及びその他の添加剤は、通常、ポリオール成分に予め溶解してプレミックスとして用いることによって、均一な発泡体を得易くなるが、これに限定されるものではなく、ポリイソシアネート化合物に予め溶解することもできる。
【0101】
本発明で用いる発泡剤は、オゾン層を破壊する危険性がないか、または危険性が低い。特に、塩素原子および臭素原子を含まないハロゲン含有化合物を用いる場合には、オゾン層を破壊する危険性が全くない。
【0102】
本発明で用いる発泡剤は、地球温暖化への影響が小さい。
【0103】
本発明の発泡剤は、ポリオールとの相溶性に優れたものである。特に、グリコール化合物および/またはフッ素含有界面活性剤を含む発泡剤は、ポリオールとの相溶性が極めて優れたものである。
【0104】
本発明で用いるプレミックスは、不燃性で適度な沸点を有する。特に、グリコール化合物、フッ素含有界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む発泡剤とポリオールとを含むプレミックスを用いると、HFC245faまたはHCF365mfcからなる発泡剤とポリオールとを含むプレミックスに比して、プレミックスを開放系においたときの発泡剤のロスも低減することができる。
【0105】
本発明の発泡剤の存在下に、各原料成分を反応させることによって、HFC245faまたはHCF365mfcを単独で発泡剤として用いた場合と同等の優れた断熱性、機械的強度などを有する合成樹脂発泡体を得ることができる。
【0106】
発明を実施するための最良の形態
なお、以下の実施例において用いたポリオールおよび発泡剤は次のとおりである。
ポリオールA:フタル酸にグリコールを反応させた水酸基価300mgKOH/gのポリエステルポリオール
ポリオールB:トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価440mgKOH/gのポリエーテルポリオール
ポリオールC:ショ糖にプロピレンオキシドを反応させた水酸基価550mgKOH/gのポリエーテルポリオール
発泡剤(イ):1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン 沸点15℃
発泡剤(ロ):1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(90/10重量%)、沸点17℃、不燃性
発泡剤(ハ):1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(70/30重量%)、沸点22℃、不燃性
発泡剤(ニ):1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(60重量部/40重量部)沸点23℃
発泡剤(ホ):1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(60重量部/40重量部)およびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(7重量部)沸点27℃
発泡剤(ヘ):1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(60重量部/40重量部)およびHO[CH_(2)C(CH_(3))(CH_(2)OCH_(2)CF_(3))CH_(2)O]_(7)H(7重量部)沸点25℃
発泡剤(ト):1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン/1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン/1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル(60重量部/15重量部/25重量部)およびジエチレングリコールモノエチルエーテル(7重量部)沸点27℃
試験例1:ポリオールとの相溶性
容量50mlのスクリュー栓付ガラス瓶に、上記発泡剤(イ)?(二)のいずれか10gと、ポリオールA、BまたはC 20gとを合計30gを入れ、振とう機で10分間振とうした後、25℃、1時間静置し、分離の有無を肉眼にて確認した。表1に結果を示す。なお、判定は次の基準でおこなった。
(i);均一溶解し、分離なし。(ii);分離しないが均一になり難い。(iii);分離。
【0107】
【表1】

【0108】
表1の結果から明らかなように、本発明相溶化剤を加えることにより相溶性が改善され安定したプレミックスを形成することが確認された。また、HFC245faとHFC365mfcの混合発泡剤でも均一になることが分かった。
参考例1 燃焼性試験
12Lガラス製フラスコに、HFC245faとHFC365mfcの混合ガス(重量組成で65/35)を、空気と混合ガスの体積比94:6で1気圧になるように調整した。ガス温度は25℃にした。フラスコの中心に置いた1mm径のタングステン線電極(電極間距離6.4mm)に15KV、30mAのスパークを0.4sec飛ばした。その際のフラスコの頭頂部での炎の広がりは中心から上方に90℃以内であった。これにより不燃性の組成であると認定した。
【0109】
同様に、HFC245faとHFC365mfcの混合ガス(重量組成で65/35)を、空気と混合ガスの体積比91.4:8.6で1気圧、25℃になるように調整した。この場合も、上記と同様の試験により不燃性であると認められた。
【0110】
一方、HFC245faとHFC365mfcの混合ガス(重量組成で55/45)を、空気と混合ガスの体積比92.9:7.1で、1気圧、25℃になるように調整した。この場合は、炎の広がりが90℃以上となるのが観測されたので、可燃性の組成であることが分かった。
参考例2
液体のHFC245fa 5gとHFC365mfc 7.5gを50ccのガラス瓶にいれパラフィン紙で蓋をし攪拌しながら25℃で15分おいた。その後、気相部をサンプリングしてガスクロマトグラフィーで測定したところHFC245faとHFC365mfcの重量組成比は62:38であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、不燃であった。
比較例1
ポリオールAを含むシステム液25gにHFC245fa 4gとHFC365mfc 6gを加え、参考例2と同様にして、気相部の組成を測定した。HFC245faとHFC365mfcの重量組成比は、54:46であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、可燃性を示した。
実施例2
ポリオールAを含むシステム液25gにHFC245fa 5gとHFC365mfc 5gを加え、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faとHFC365mfcの重量組成比は、65:35であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、不燃性を示した。
実施例3
ポリオールAを含むシステム液25gにHFC245fa 5gとHFC365mfc 5gとジエチレングリコールモノエチルアセテート0.7gを加え、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faとHFC365mfcの重量組成比は65:35であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、不燃性を示した。
実施例4
ポリオールAを含むシステム液25gに、発泡剤(ト)をHFC245faとHFC365mfcと1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテルの合計が10gとなり、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが0.7gとなる量を加え、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faに対するHFC365mfcと1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテルの合計の重量組成比は、76:24であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、不燃性を示した。
実施例5
ポリオールAを含むシステム液25gに発泡剤(ヘ)を、HFC245faとHFC365mfcの合計が10gとなり、HO[CH_(2)C(CH_(3))(CH_(2)OCH_(2)CF_(3))CH_(2)O]_(7)Hが0.7gとなる量を加え、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faに対するHFC365mfcの重量組成比は、73:27であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、不燃性を示した。
実施例6
ポリオールBを含むシステム液25gにHFC245fa 5gとHFC365mfc 5gを加え、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faに対するHFC365mfcの重量組成比は、62:38であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、不燃性を示した。
比較例2
ポリオールAを含むシステム液25gにHFC245fa 4.4gとHFC365mfc 5.6gを加え、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faに対するHFC365mfcの重量組成比は、58:42であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、可燃性を示した。
実施例7
ポリオールAを含むシステム液25gにHFC245fa 5.1gとHFC365mfc 4.9gを加え、温度を40℃にした以外は、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faに対するHFC365mfcの重量組成比は、65.5:34.5であった。この組成と同じ組成のガスについて、測定温度を40℃にした以外は参考例1と同様の方法で燃焼性を測定したところ、不燃性を示した。
比較例3
ポリオールAを含むシステム液25gにHFC245fa 4.6.gとHFC365mfc 5.4gを加え、温度を40℃にした以外は、参考例2と同様にして気相部の組成を測定した。HFC245faに対するHFC365mfcの重量組成比は、60:40であった。この組成と同じ組成のガスについて、参考例1に記載の方法で燃焼性を測定したところ、可燃性を示した。
実施例8?12及び比較例4
発泡体の製造
ポリオールB 100重量部に対して、シリコーン系整泡剤1.5重量部、水1重量部、触媒としてN,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミンをライズタイム70秒とするための必要量、および発泡剤を混合し、激しく攪拌した。このプレミックスと粗製ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(日本ポリウレタン工業製MR-100)112重量部とを混合、激しく攪拌して発泡させ、硬質ポリウレタン発泡体を得た。なお、発泡剤の使用量は、発泡体のコア密度が25±1kg/m^(3)となるよう調整した。用いたプレミックスの気相組成と同じ組成のガスを実施例1の方法で測定したところ全て不燃性を示した
得られた発泡体について、発泡1日後、-20℃又は25℃で1週間エージングした後の物理的性質の測定結果を表2に示す。なお、発泡体の評価方法は、JIS A9514に準じた。
【0111】
【表2】

【0112】
表2の結果から明らかなように、本発明の混合発泡剤を用いることによって、優れた特性を持つポリウレタン発泡体を得ることができることが確認された。即ち、本発明の発泡剤を用いるとHFC-245faを単独で用いた場合と同程度の熱伝導率および圧縮強度を有する発泡体を得ることができた。また、熱伝導率変化率および強度変化率についても、HFC-245faを単独で用いた場合と同程度の値を示した。
【0113】
参考例3
「非定常熱線法」で、50℃において測定した各発泡剤成分の気体状態、1気圧における熱伝導率を示す。
HFC245fa:15.2mW/mK
HFC365mfc:15.5mW/mK
【0114】
産業上の利用可能性
本発明の発泡剤の存在下に、各原料成分を反応させることによって、HFC245faまたはHCF365mfcを単独で発泡剤として用いた場合と同等の優れた断熱性、機械的強度などを有する合成樹脂発泡体を得ることができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-06-05 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-23 
出願番号 特願2003-544101(P2003-544101)
審決分類 P 1 123・ 121- ZA (C08G)
P 1 123・ 113- ZA (C08G)
P 1 123・ 832- ZA (C08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 野村 康秀
山本 昌広
登録日 2006-12-22 
登録番号 特許第3894326号(P3894326)
発明の名称 合成樹脂発泡体の製造方法  
代理人 齋藤 健治  
代理人 本多 広和  
代理人 横山 直史  
代理人 古橋 伸茂  
代理人 小林 浩  
代理人 三枝 英二  
代理人 林 雅仁  
代理人 中村 閑  
代理人 三枝 英二  
代理人 林 雅仁  
代理人 横山 直史  
代理人 加藤 寛史  
代理人 齋藤 健治  

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