• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20061739 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1182862
審判番号 不服2004-18550  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-08 
確定日 2008-09-02 
事件の表示 特願2002-700115「長期徐放型マイクロカプセル」拒絶査定不服審判事件〔不服2004-18550〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、「本件出願」という。)は、平成14年10月3日に出願され、平成16年7月29日付け(発送日 平成16年8月10日)で拒絶査定がされ、平成16年9月8日に審判請求がされたものである。

2.本件出願
本件出願は、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったとして、3年3月17日の特許権存続期間の延長を求めるものである(本件出願願書の添付書類「延長の理由を記載した資料」)。本件出願における延長の理由となる処分(以下、この処分を「本件処分」という)の内容として、願書には以下の記載がある。

「(1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認
(2)処分を特定する番号
承認番号21400AMZ00526000
(3)処分の対象となった物
リュープリンSR注射用キット11.25
(一般名:酢酸リュープロレリン)
(4)処分の対象となった物について特定された用途
前立腺癌 」

願書の添付書類として提出された「延長の理由を記載した資料」の記載内容を裏付けるための資料として、以下の資料が提出されている。
(1)特許公報
特許第2653255号公報写
(2)医薬品製造承認書(平成14年7月5日承認)
承認番号21400AMZ00526000号
(含医薬品製造承認申請書(平成13年3月30日提出))
該当部分写
(3)治験計画届出書(平成11年3月17日提出)
該当部分写

3.本件特許及び本件発明
本件出願において延長しようとする特許第2653255号(以下、「本件特許」という。)は平成3年1月31日に出願され(特願平3-32302号、優先権主張:平成2年2月13日、日本及び平成3年1月29日、日本)、平成9年5月23日に特許権の設定登録がされたものであって、その特許発明は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載にされた次のとおりのものと認められる。

「生理活性ポリペプチドとして、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)またはその類縁物質を約20?70重量%含有してなる内水相液と、乳酸/グリコール酸の組成比が90/10?100/0で重量平均分子量が7,000?30,000であるコポリマーないしホモポリマーを放出制御物質として含有してなる油相液とから調製されたW/Oエマルションをマイクロカプセル化して調製される、2カ月以上にわたってポリペプチドをゼロ次放出する長期徐放型マイクロカプセル。 」

4.酢酸リュープロレリンに関する本件処分以前の処分
本件処分前の平成4年7月3日に、承認番号04AM-0896号として、酢酸リュープロレリンを有効成分とする医薬品「販売名 リュープリン注射用3.75」について、効能・効果を前立腺癌とする1ヶ月製剤が承認されていた。

5.原審の拒絶理由の概要
原審の拒絶の理由は、「この出願に係る特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、この出願は、特許法第67条の3第1項第1号に該当する。」というものであり、より具体的には、有効成分が酢酸リュープロレリンであり、用途が前立腺癌である医薬品については、平成4年7月3日の処分をもって実施可能となっていることを考慮すれば、今回の処分に係る医薬品は「物」と「用途」についてみれば先の処分と相違するところはないので、本件特許発明の実施に本件処分が必要であったとは認められない旨を指摘している。

5.当審の判断
(1)特許権の存続期間の延長登録制度(以下、「期間延長制度」という。)は、出願から20年で満了する特許権の存続期間につき、一定の条件で例外的に特許権の存続期間の延長登録ができることとしたものであり、特許法第67条第2項に延長登録が認められるための要件、第67条の2第1項第4号には延長登録出願の願書の記載事項、第67条の3第1項には延長登録出願の拒絶理由、第68条の2には延長後の特許権の効力に関する規定が存在し、これら規定及び関連する政省令の規定により法制化されたものである。そして、期間延長制度における延長が認められるための要件に関する規定、延長登録が拒絶される事由、延長が認められた場合の効果、手続に関する規定が、全体として矛盾のないものでなければならないから、第67条第2項及び第67条の3第1項第3号の規定の解釈にあたっても、第68条の2をはじめ期間延長制度に関する他の規定を考慮する必要がある。
特許法第68条の2では、存続期間が延長された場合の特許権の効力について、「特許権の存続期間が延長された場合(第67条の2第5項の規定により延長されたものとみなされる場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となった第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」と定められ、「第67条2項の政令で定める処分の対象となった物」という一般的な場合を想定した文言に対し、括弧書きで「(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)」という特定の場合に適用される規定が存在する。この括弧書きの規定が対象とする場合として、薬事法14条1項の承認の対象となる医薬品が含まれることは明らかである。そうすると、特許法第68条の2の規定は、薬事法14条においては、医薬品について、その成分、効能・効果のみならず、名称、用法、用量、使用方法等を特定した品目ごとに製造承認等を受ける必要があるとされているにもかかわらず、特許法上の期間延長制度においては、処分の対象となった物における「物」と「用途」、医薬品でいえば、有効成分により特定される「物」、効能・効果により特定される「用途」について出願対象の特許発明を実施する範囲で、延長に係る特許権の効力が及ぶこととしたものと解される。すなわち、薬事法による医薬品の承認は、その成分、効能・効果のみならず、名称、用法、用量、使用方法等を特定した品目ごとにされるものではあるが、特許法としては、薬事法による承認が得られた品目に限定して延長に係る特許権の効力が及ぶとするのではなく、延長に係る特許権の効力は、「物(有効成分)」及び「用途(効能・効果)」について特許発明を実施する場合全般に効力が及ぶとしたものである。そこには、薬事法の規定とは別の特許法における独自の判断が加えられていることがうかがえる。
第67条2項及び第67項第3項第1号の「政令で定める処分を受けることが必要であったこと」とは、第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物についての一般的な場合を想定したものであり、第68条の2の規定は、「第67条2項の政令で定める処分の対象となった物」について、括弧書きで、「その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合」という特定の場合について規定しており、特許法としては、医薬品のような場合について、薬事法の規定とは別に、「物(有効成分)」と「用途(効能・効果)」という概念によって、処分という概念を画そうというものであるといえる。そうすると、特許法第67条2項及び67条の3第1項1号の「政令で定める処分を受けることが必要であった」という要件は、薬事法14条1項の承認の対象となる医薬品に関しては、「物(有効成分)と用途(効能・効果)という観点から処分を受けることが必要であったこと」というように解すべきであり、そうしてこそ制度全体として矛盾のない解釈となる。(知財高裁平成17年(行ケ)10345号事件判決参照)
そこで、上記解釈に基づき、以下検討する。

(2)まず、本件処分の対象となった物についてみると、これは承認を受けた品目「販売名 リュープリンSR注射用キット11.25」の有効成分である酢酸リュープロレリンである。これに対し、本件特許発明は、LH-RHまたはその類縁物質を活性成分(有効成分)として含有する長期徐放型マイクロカプセルに関するものであるが、酢酸リュープロレリンはLH-RH類縁物質の一種であり、また、本件特許明細書に酢酸リュープロレリンと同一の化学物質であるTAP-144(治験計画届出書(平成11年3月17日提出)の用法・用量の欄及び成分及び分量の欄を参照。)についての実施例が記載されていることからみて、本件特許発明は、酢酸リュープロレリンを有効成分とする長期徐放型マイクロカプセルに関するものでもあるといえる。したがって、本件特許発明における有効成分、すなわち、本願発明における物と本件処分の対象となった物は重複している。
次に、本件特許発明の実施のために物(有効成分)と用途(効能・効果)という観点から本件処分を受ける必要があったかを検討する。前記4.の本件処分以前の処分は、酢酸リュープロレリンを物(有効成分)とし、前立腺癌に対する用途(効能・効果)についてのものである。そうすると、有効成分と効能・効果が先の処分と同じである「販売名 リュープリンSR注射用キット11.25」についての本件処分は、物(有効成分)と用途(効能・効果)という観点からは本件特許発明の実施のために本件処分を受けることが必要であったものであるということができない。本件処分において「販売名 リュープリンSR注射用キット11.25」について薬事法上の処分が改めて必要であった理由は、すでに承認を受けた医薬品「販売名 リュープリン注射用3.75」と物(有効成分)と用途(効能・効果)が異なるからではなく、物(有効成分)と用途(効能・効果)以外の添加剤や投与期間の点で異なるからであるにすぎない。

請求人は、平成18年3月29日付で上申書を提出し、医薬品の有効成分は薬理効果を有する化学物質であり、それ自体は薬事法にいう医薬品でないこと等を根拠に挙げて、特許法第68条の2における処分の対象となった物はリュープリンSR注射用キット11.25であると述べ、原査定は処分の対象となった物を有効成分であると認定したことにより、特許法67条2項の政令で定める処分を受ける必要性の認定を誤り、特許法67条の3第1項第1号に関する判断を誤った旨を主張している。

しかしながら、68条の2で「特許権の存続期間が延長された場合・・・当該特許権の効力は、その延長登録の理由となった第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」と定められた趣旨は、延長後の特許権の効力の及ぶ範囲を処分の対象となった品目そのものとすると、実効性に欠けるため、「物」と「用途」(医薬品については、その規制のポイントとなる「有効成分」と「効能・効果」)によって延長後の特許権の効力を規定し、別の品目であっても、有効成分と効能・効果が同じ医薬品について、延長後の特許権の効力が及ぶようにしたものである。(東京高裁 平成10年(行ケ)第362号事件判決参照)
そうであるから、「処分の対象となった物」は医薬品については「有効成分」と解すべきであって、請求人の上記主張は採用できない。

よって、特許発明の実施に本件処分が必要であったとは認められず、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当する。

5.むすび
以上のとおり、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当し、本件特許権存続期間の延長登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-22 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-05-17 
出願番号 特願2002-700115(P2002-700115)
審決分類 P 1 8・ 71- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 齋藤 恵
吉住 和之
発明の名称 長期徐放型マイクロカプセル  
代理人 竹田 稔  
代理人 松居 祥二  
代理人 小林 浩  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ