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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1183043
審判番号 不服2005-18085  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-21 
確定日 2008-08-13 
事件の表示 特願2000-172548「遊技場における景品交換を管理するサーバ機器、及び景品交換システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月 4日出願公開、特開2001-334053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年5月29日に出願された特願2000-157850号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成17年8月18日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月21日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月20日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年10月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正前後の特許請求の範囲は次のとおりである。
(本件補正前の特許請求の範囲)
【請求項1】 遊技場に備えられた端末機器と通信回線を介して接続されたサーバ機器であって、次のような機能を有する。
a)遊技場内で遊技者が遊技を行った結果獲得し、一回の遊技分のみならず、複数回分蓄積していくことが可能な遊技の結果データ及び当該結果データの所有者を特定する認識データを前記端末機器から受信する。
b)遊技の結果としての遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品に関するデータである景品データを前記端末機器へ送信する。
c)遊技者が選択した景品データを前記端末機器から受信する。
d)遊技者により選択された前記景品データと前記認識データとを、景品の遊技者への発送を管理する別の端末機器へ送信する。
【請求項2】 前記サーバ機器は、遊技場における端末機器からのアクセス以外に一般家庭などパソコン機、携帯電話あるいは携帯用ゲーム機などを用いて電話回線を経由してインターネットを用いてアクセスすることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のサーバ機器。
【請求項3】 遊技場に備えられた端末機器と、当該端末機器と通信回線を介して接続されたサーバ機器とを用いた景品交換システムであって、
前記サーバ機器は、前記端末機器において入力された遊技場における遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品に関するデータである景品データを前記端末機器へ送信し、一方、前記端末機器において入力された前記遊技の結果データ、当該結果データの所有者を特定する認識データ及び前記結果データに応じて遊技者が選択した景品データを前記サーバ機器へ送信し、前記サーバ機器は前記遊技者が選択された景品データと前記認識データとを景品の遊技者への発送を管理する別の端末機器へ送信することを特徴とする景品交換システム。

(本件補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】 遊技場に備えられた端末機器と通信回線を介して接続されたサーバ機器であって、
遊技場内で遊技者が遊技を行った結果獲得し、一回の遊技分のみならず、複数回分蓄積していくことが可能な遊技の結果データ及び当該結果データの所有者を特定する認識データを前記端末機器から受信し、
遊技の結果としての遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品に関するデータである景品データを前記端末機器へ送信し、
遊技者が選択した景品データを前記端末機器から受信し、
遊技者により選択された前記景品データと前記認識データとを、景品の遊技者への発送を管理する別の端末機器へ送信する機能を有し、
前記認識データとして、前記端末機器において入力操作された遊技者を特定するための情報を受信することを特徴とするサーバ機器。
【請求項2】 前記認識データとして、前記端末機器においてパスワードを作成し、遊技者を特定するための情報を受信する請求項1に記載のサーバ機器。
【請求項3】 遊技場に備えられた端末機器と、当該端末機器と通信回線を介して接続されたサーバ機器とを用いた景品交換システムであって、
前記サーバ機器は、前記端末機器において入力された遊技場における遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品に関するデータである景品データを前記端末機器へ送信し、一方、前記端末機器において入力された前記遊技の結果データ、当該結果データの所有者を特定する認識データ及び前記結果データに応じて遊技者が選択した景品データを前記サーバ機器へ送信し、前記端末機器からサーバ機器へ送信される前記景品データと前記認識データを遊技場内に設置した管理機器へ同様に送信させ、前記サーバ機器は前記遊技者が選択された前記景品データと前記認識データとを景品の遊技者への発送を管理する別の端末機器へ送信することを特徴とする景品交換システム。

上記補正前後の記載を比較すると、補正前請求項2の「前記サーバ機器は、遊技場における端末機器からのアクセス以外に一般家庭などパソコン機、携帯電話あるいは携帯用ゲーム機などを用いて電話回線を経由してインターネットを用いてアクセスすることが可能である」との事項は、補正後のどの請求項にも存在しない。
また、本件補正前後を通じて請求項数は3であり、その数に変化はない。補正前の請求項2が削除されたとすると、補正後の何れか1つの請求項は新設請求項であり、請求項の新設を平成18年改正前特許法17条の2第4項は認めていない。そうすると、補正後の請求項の1つが補正前請求項2に対応しなければならないが、その際に補正前の上記事項を削除することを平成18年改正前特許法17条の2第4項は認めていない。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反しているから、その余の補正要件について検討するまでもなく、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年4月14日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技場に備えられた端末機器と通信回線を介して接続されたサーバ機器であって、次のような機能を有する。
a)遊技場内で遊技者が遊技を行った結果獲得し、一回の遊技分のみならず、複数回分蓄積していくことが可能な遊技の結果データ及び当該結果データの所有者を特定する認識データを前記端末機器から受信する。
b)遊技の結果としての遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品に関するデータである景品データを前記端末機器へ送信する。
c)遊技者が選択した景品データを前記端末機器から受信する。
d)遊技者により選択された前記景品データと前記認識データとを、景品の遊技者への発送を管理する別の端末機器へ送信する。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-89656号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?テの記載が図示とともにある。
ア.「会員カード1は、例えば当該パチンコホールの遊技会員として予め登録された遊技客に対して発行されるものであり、その表面には、テープ状の磁気記録部1aが設けられていると共に、加盟店及び上記会員に固有のデータに対応した数字列1b、会員の氏名を示す文字列1c、会員契約をした加入年月、カード発行年月、カード有効年月をそれぞれ示す数字列1d?1fがエンボス加工によって形成されている。」(段落【0012】)
イ.「本発明の対象である商品自動発注装置5は、パチンコホール内に設置された複数のデータ表示端末兼用の入力端末6と本発明でいう記憶手段、送信制御手段及び精算手段の機能を備えたホストコンピュータ7とを含んで成るもので、これら入力端末6及びホストコンピュータ7と前記POS端末4との間をLAN回線8で接続した構成となっている。また、上記ホストコンピュータ7はパチンコホール外の管理センタ9との間でモデム10及び電話回線11を介してデータの送受信を行い得る構成となっている。」(段落【0018】)
ウ.「図7には、上記入力端末6の電気的構成の概略が機能ブロックの組み合わせにより示されている、この図7において、カードリーダ18は、前記挿入口14に挿入された会員カード1の記憶データを読み出すために設けられている。」(段落【0021】)
エ.「ルーチンA3では、挿入された会員カード1からカードリーダ18を通じて読み取った会員コードΔBをホストコンピュータ7へ送信すると共に、この送信に応じてホストコンピュータ7側からアンサバックされてくる会員データΣM若しくは受付不可データを受信し、その受信データを図示しないバッファメモリに一時記憶する。」(段落【0026】)
オ.「ホストコンピュータ7には、各会員毎の多数の会員データΣMが例えば図56に示すようなフォーマットで記憶されている。つまり、図56において、会員データΣM中には、登録されている会員カード1に対応した会員コードΔBと、予め各会員毎に登録された例えば4桁の「暗証番号」と、当該会員が遊技により獲得したパチンコ玉数を示す「貯玉数」データと、当該会員コードΔBが無効なものであること(例えば紛失・盗難などの届け出があったもの)であることを示す無効フラグFZとを組み合わせた構成となっている。・・・「貯玉数」データは、POS端末4或いは入力端末6において後述のような貯玉動作や景品払出動作及び商品発注動作などが行われるのに応じて増減するデータである。」(段落【0027】)
カ.「挿入された会員カード1が有効なものであった場合には、バッファメモリに一時記憶している会員データΣM中の会員コードΔB、「暗証番号」、「貯玉数」データを、図示しない主メモリに対し、図23に示すようなフォーマットの会員データΣM′としてセットし、当該バッファメモリの記憶内容を初期化すると共に、モニタ12に対し図13(a)に示すようなメニュー画面を表示する(ステップA8、A9)。」(段落【0030】)
キ.「具体的には、図13(a)のメニュー画面には、メニューの内容を示す「ショッピング」、「貯玉照会」、「貯玉」の各文字a1 、a2 、a3 が表示されると共に、「終了」の文字a4 が表示される。」(段落【0031】)
ク.「メニュー選択操作の内容が「ショッピング」であった場合(ステップA22で「YES」)には、モニタ12に対して図14に示すようなショッピングメニュー画面を表示する(ステップA24)。」(段落【0040】)
ケ.「ショッピングメニュー画面の表示状態では、操作部13のショッピングメニュー選択スイッチ(文字b1 ?b8 部分)を通じたショッピングメニュー選択操作、若しくはメニュー画面スイッチ(文字b9 部分)を通じたメニュー画面選択操作が行われるまで待機する(ステップA25、A26)。」(段落【0041】)
コ.「メニュー画面選択操作が行われたときには、メニュー画面表示ステップA9へ戻るが、ショッピングメニュー選択操作が行われたときには、選択されたショッピングメニューの具体的内容を示すカタログ画面をモニタ12に表示するステップA27を実行する。」(段落【0042】)
サ.「上記カタログ画面には、ショッピングメニューの中から「産地直送グルメ便」が選択されたときの表示例を示す図15のように、カタログのタイトルc1 、カタログ商品の内容(商品名及びその商品と交換するのに必要なパチンコ玉数)を示す例えば4個の商品表示部c2 ?c5 、操作手順を指示するメッセージc6 、「前の商品」、「次の商品」、「メニュー復帰」、「終了」の各文字c7 ?c10が表示される。尚、このカタログ画面は、各画面を1枚のカードに模したカード形データベース形式で形成されている。」(段落【0043】)
シ.景品マスタデータΣPは、景品交換対象の一般商品及びカタログ商品の情報であり、各商品を示す商品コードΔHに対応させて、商品名、支払玉数(当該商品の交換単価に対応したパチンコ玉数)、一般商品かカタログ商品かの区別を示す区分フラグFK(例えば、一般商品は「0」、、カタログ商品は「1」)を組み合わせた構成となっている。」」(段落【0117】)
ス.「ホストコンピュータ7には、各会員毎の多数の受注データΣRが例えば図57に示すようなフォーマットで記憶されている。つまり、図57において、各受注データΣRは、登録されている会員カード1に対応した会員コードΔBと、前記会員端末6からの取引データΣQにより示される受注内容(商品コードΔH及び商品の発注数量)と、取引内容(発注若しくは発注取消)を示すフラグFPとを組み合わせた構成となっている。」(段落【0143】)
セ.「ホストコンピュータ7について図40?図59を参照しながら説明する。即ち、ホストコンピュータ7は、具体的には図示しないが、キーボード及びマウスより成る入力装置、CRTディスプレイより成る表示装置、プリンタより成る印字出力装置を備えており、その表示装置には、予め設定された処理プログラムが立ち上げられたときに例えば図42に示すような初期画面を表示するようになっている。」(段落【0159】)
ソ.「図41には、ホストコンピュータ7側におけるPOS端末4及び入力端末6との間のデータ伝送処理に関する制御内容が示されており、以下これについて説明する。」(段落【0194】)
タ.「図41のデータ伝送処理において、入力端末6から会員データΣM(図56参照)を要求するために送信される会員コードΔBを受信したとき(ステップE1で「YES」)には、その会員コードΔBに対応した会員データΣM中に無効フラグFZが存在するか否かを判断する(ステップE2)。」(段落【0195】)
チ.「入力端末6から送信される取引データΣQ(図24参照)を受信したとき(ステップE13で「YES」)には、その取引データΣQを受注データΣR(図57参照)として登録する(ステップE14)。」(段落【0199】)
ツ.「ホストコンピュータ7において上述のような制御が行われる結果、パチンコホール内の入力端末6を通じて発注された商品(カタログ景品)についての発注データファイルが管理センタ9へ送信されるものである。」(段落【0203】)
テ.「管理センタ9においては、会員カード1に関するマスタデータ(会員コードΔB、会員氏名及び住所などを含むデータで前記図54に示す会員マスタデータΣMmと同等のデータ)を、契約を行った各パチンコホール(加盟店)の全部について一括管理しており、パチンコホール側から送信される前記発注データファイルを上記マスタデータと突き合わせることにより、当該発注データファイル中の受注データΣRに含まれる商品コードΔHにより特定される商品の取扱店に対して、該当商品を上記受注データΣR中の会員コードΔBにより特定される会員の住所(マスタデータに登録された住所)へ配送するように指示する配送指示書を、例えば電話回線を使用したオンライン方式で送信する。そして、配送指示書を受けた商品取扱店は、指示された会員住所へ該当商品を発送する業務を行う。」(段落【0204】)

3.引用例記載の発明の認定
引用例は発明の名称を「遊技場用の商品自動発注装置」とする公開公報であり、記載イによれば「商品自動発注装置」は入力端末及びホストコンピュータとPOS端末との間をLAN回線で接続したものであるが、引用例からは「商品自動発注装置」を構成する「ホストコンピュータ」の発明も把握することができる。
「ホストコンピュータ」は入力端末及び「管理センタ9」と通信接続されており(記載ツ及び【図1】を参照。)されており、入力端末からは「会員コードΔB」及び「取引データΣQ」を受信する。
「ホストコンピュータ」は「各会員毎の多数の会員データΣM」を記憶し、入力端末から「会員コードΔB」を受信した後、「会員データΣM」を入力端末に送信する。「会員データΣM」には、会員コードΔB及び当該会員が遊技により獲得したパチンコ玉数を示す「貯玉数」データが含まれている。
記載ツ,テによれば、管理センタ9は、会員コードΔBを含む会員マスタデータΣMmを管理し、商品を会員コードΔBにより特定される会員の住所へ配送するように指示するのだから、「ホストコンピュータ」が管理センタ9に送信する発注データファイルには、会員コードΔBと取引データΣQが含まれていると解さなければならない。
したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「パチンコホール内に設置された複数の入力端末とLAN接続され、管理センタと通信接続されたホストコンピュータであって、
会員コード及び当該会員が遊技により獲得したパチンコ玉数を示す貯玉数データを含む各会員毎の多数の会員データを記憶し、
入力端末から会員コードを受信すると、入力端末に会員データを送信し、
入力端末からは取引データも受信し、会員コードと取引データを管理センタに送信するホストコンピュータ。」(以下「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明の「パチンコホール内に設置された複数の入力端末」及び「ホストコンピュータ」は本願発明の「遊技場に備えられた端末機器」及び「サーバ機器」にそれぞれ相当し、「LAN接続」は「通信回線を介して接続」ということができる。
引用発明の「遊技により獲得したパチンコ玉数を示す貯玉数データ」は本願発明の「遊技の結果データ」に相当し、引用発明の「会員コード」は貯玉数データの所有者と特定するデータといえるから、本願発明の「認識データ」に相当する。なお、引用例の記載オにあるように、貯玉数データは貯玉動作等により増減するから、「一回の遊技分のみならず、複数回分蓄積していくことが可能」と認める。
引用発明の「取引データ」は本願発明の「遊技者が選択した景品データ」に相当し、同データと会員コード(認識データ)の送信先である「管理センタ」は本願発明の「景品の遊技者への発送を管理する別の端末機器」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、
「遊技場に備えられた端末機器と通信回線を介して接続されたサーバ機器であって、次のような機能を有する。
a’)遊技場内で遊技者が遊技を行った結果獲得し、一回の遊技分のみならず、複数回分蓄積していくことが可能な遊技の結果データの所有者を特定する認識データを前記端末機器から受信する。
c)遊技者が選択した景品データを前記端末機器から受信する。
d)遊技者により選択された前記景品データと前記認識データとを、景品の遊技者への発送を管理する別の端末機器へ送信する。」点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明が「遊技の結果データ」を端末機器から受信する機能を有するのに対し、引用発明はそのデータを記憶している関係上受信しない点。
〈相違点2〉本願発明が「b)遊技の結果としての遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品に関するデータである景品データを前記端末機器へ送信する。」機能を有するのに対し、引用発明が同機能を有するとはいえない点。

5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点2について
便宜上、相違点2から検討する。
引用例記載の「商品自動発注装置」が、景品マスタデータΣPを記憶しカタログ画面を入力端末に表示することは記載ク?シのとおりであるが、景品マスタデータΣPがホストコンピュータに記憶されているとまでは認めることはできない。
引用例の記載ク?サにあるように、引用例では貯玉数データを景品に交換することをショッピングと称しており、通常のショッピングにおける貨幣の役割を貯玉数データが担っている。
本件出願当時にはインターネットが普及しており、インターネットショッピングとして端末機器を用いてショッピングを行うことが周知である。インターネットショッピングにおいては、個人のパソコンが端末機器に、ショッピングを運営するウエブサイトがサーバに相当する。そして、当然のことながら、個人のパソコンには商品に関する情報(引用発明の「景品マスタデータΣP」)は記憶されておらず、ウエブサイトから同情報が送信される仕組みになっており、金額の上限を指定した上で、上限内の商品のみを送信することも広く行われている。
そして、貯玉数データによりショッピングを行う場合、貯玉数データの範囲内でしかショッピングできないことは当然であり、貯玉数データがインターネットショッピングにおける上限金額に対応する。
パチンコホールで獲得した結果データ(貯玉数データ)を景品に交換する場合に限っても、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-99831号公報に「景品サーバー30は、景品名や各景品を交換するのに必要な玉数等の景品情報を記憶している。景品サーバー30は、例えば玉あるいは貯玉と景品との交換処理を行う景品交換端末(図示せず)等に景品情報を送信する。」(段落【0005】)及び「景品交換端末で景品Aを選択」(段落【0018】)などの記載があるように、遊技者(会員)が景品を選択する端末とは別のサーバに景品名や各景品を交換するのに必要な玉数(これは本願発明の「予め設定された変換率」に当たる。)等の景品情報を記憶し、同情報を景品を選択する端末に送信することは周知である。
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-33824号公報に「画面の右側に開かれたウインドウ23aには予め入力されている各種景品の内、残数(余り玉数)の範囲内で交換可能な景品の内容が表示される。」(段落【0049】)と記載されているように、景品交換に当たって、交換可能な景品だけを表示することも周知である。
そうであれば、引用発明を出発点として、景品マスタデータΣPを入力端末ではなくホストコンピュータに記憶し、会員が交換可能な景品データ、すなわち「遊技の結果としての遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品に関するデータ」を入力端末に送信する機能をホストコンピュータに持たせることには何の困難性もない。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することには何の困難性もなく、当業者にとって想到容易である。

(1)相違点1について
引用例記載の「商品自動発注装置」では、会員カードには貯玉数データは記憶されておらず、それはホストコンピュータのみに記憶されている。そのため、入力端末からホストコンピュータに貯玉数データを送信することはない。
しかし、会員カードに貯玉数データを記憶することも周知技術であり、引用例記載の「商品自動発注装置」においてこの周知技術を採用することには何の困難性もない。その場合、ホストコンピュータに貯玉数データを記憶しない。
相違点2に係る本願発明の構成を採用することの容易性は前示のとおりであるが、その際重要なのは、ホストコンピュータが貯玉数データ(結果データ)を把握することである。なぜなら、結果データを把握しなければ、「遊技の結果としての遊技の結果データに応じて、予め設定された変換率により獲得することが可能な景品」を決定できないからである。
すなわち、相違点2に係る本願発明の構成は、結果データをホストコンピュータ(サーバ)と入力端末(端末機器)が共有することが前提であり、そのために引用発明のホストコンピュータは結果データ送信機能を有している。上記周知技術に従い結果データの記憶箇所を会員カードに変更した場合、ホストコンピュータに結果データ受信機能を持たせる必要があることは当然である。
この場合、「景品データを前記端末機器へ送信」することだけを考えるならば、会員コード(認識データ)受信機能は不要となるが、景品データと認識データを管理センタに送信する関係上、会員コード受信機能が依然として必要であることは明らかである。
以上のとおりであるから、相違点1に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-18 
結審通知日 2008-06-19 
審決日 2008-07-02 
出願番号 特願2000-172548(P2000-172548)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 57- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎納口 慶太  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 小原 博生
深田 高義
発明の名称 遊技場における景品交換を管理するサーバ機器、及び景品交換システム  

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