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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F17C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F17C
管理番号 1183295
審判番号 不服2007-19766  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-17 
確定日 2008-08-22 
事件の表示 特願2003-363689「ガス充填システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-127421〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月23日の出願であって、平成19年6月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年7月17日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年8月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年8月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】自動車の燃料である高圧ガスを充填するためのガス充填システムにおいて、ガスステーション(1)のガスタンク(4)から輸送手段(41)で配送されるガス充填所(3)にはガソリン又はメタノールが入れられた貯蔵タンク(5)が設けられ、その貯蔵タンク(5)は配管(7)で改質機(42)、圧縮機(8)及び蓄圧器(9)に接続され、そしてその配管(7)は分岐されて各々遮断弁(10)を介してガス充填機(11)に接続されており、そのガス充填機(11)において配管(7)に接続された充填ホース(14)の先端に充填ノズル(15)が設けられ、充填ノズル(15)を掛けるノズル掛け(16)には充填ノズル(15)の掛脱を検知してオン・オフ信号を出力するノズルスイッチ(17)が設けられ、蓄圧器(9)に設けた圧力センサ(19)の圧力信号とノズルスイッチ(17)のオン・オフ信号が入力されて圧縮機(8)への駆動信号および遮断弁(10)への弁開閉信号を出力する制御装置(18)が設けられ、前記制御装置(18)は、充填ノズル(15)がノズル掛け(16)から外されてノズルスイッチ(17)がオンとなり、そして前記圧力センサ(19)の圧力信号が一定以上であれば遮断弁を開いてガス充填を開始し、ノズルスイッチ(17)がオンのときに前記圧力センサ(19)の圧力が一定以下になると、遮断弁(10)を閉じ報知器(23)を作動して充填中断を報知し、ガス充填を中断し、圧縮機(8)を駆動して蓄圧器(9)内にガスを加圧補充し、蓄圧器(9)内の圧力が一定以上になると遮断弁(10)を開き報知器(23)の作動を停止してガス充填を再開し、充填ノズル(15)がノズル掛け(16)に掛けられてノズルスイッチ(17)がオフとなると遮断弁(10)を閉じる機能を有することを特徴とするガス充填システム。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ガス充填システム」について「自動車の燃料である高圧ガスを充填するためのガス充填システム」、同じく「ガス充填所(3)」について「ガスステーション(1)のガスタンク(4)から輸送手段(41)で配送されるガス充填所(3)」、「配管(7)」について「その配管(7)は分岐されて各々遮断弁(10)を介してガス充填機(11)に接続されており、」、「ガス充填機(11)」について「そのガス充填機(11)において配管(7)に接続された充填ホース(14)の先端に充填ノズル(15)が設けられ、充填ノズル(15)を掛けるノズル掛け(16)には充填ノズル(15)の掛脱を検知してオン・オフ信号を出力するノズルスイッチ(17)が設けられ」、「蓄圧器内の圧力」を検知する手段について「蓄圧器に設けた圧力センサ(19)」、「制御装置(18)」について「制御装置(18)は、充填ノズル(15)がノズル掛け(16)から外されてノズルスイッチ(17)がオンとなり、そして前記圧力センサ(19)の圧力信号が一定以上であれば遮断弁を開いてガス充填を開始し、ノズルスイッチ(17)がオンのときに前記圧力センサ(19)の圧力が一定以下になると、遮断弁(10)を閉じ報知器(23)を作動して充填中断を報知し、」また「蓄圧器(9)内の圧力が一定以上になると遮断弁(10)を開き報知器(23)の作動を停止してガス充填を再開し、充填ノズル(15)がノズル掛け(16)に掛けられてノズルスイッチ(17)がオフとなると遮断弁(10)を閉じる機能を有する」ものとすると共に、「制御装置(18)」が「蓄圧器(9)内の圧力が一定以下になると圧縮機(8)を駆動して蓄圧器(9)内にガスを加圧補充する」のは「ガス充填を中断」した時、との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-241772号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【0012】【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
(実施例)本実施例のガソリンスタンドの構成は、図1のシステムフロー図に示すように、従来のガソリンスタンド同様に、地下に埋設設置された貯留手段であるガソリンタンク1に貯留されたガソリンを、通常の内燃機エンジンを備える自動車GCに対し、内在している給油ポンプP1並びに油量計量器81にて計量しながらガソリンを給油可能な給油装置8を備えている。
【0013】前記ガソリンタンク1は、該ガソリンタンク1に貯留されているガソリンから硫黄成分を除去する脱硫装置2を介して、これら脱硫されたガソリンから水素を生成する細菌型水素生成装置3並びに水蒸気改質型水素生成装置4の双方に接続されており、前記脱硫装置2にて脱硫されたガソリンが前記細菌型水素生成装置3並びに水蒸気改質型水素生成装置4に供給されるようになっている。」
(b)「【0021】これら水素分離器33内の水素吸蔵合金に吸蔵された水素は、バルブV3(V4も閉じた状態)とを閉じて吸蔵水素の一部放出を開始して水素分離器内のガスを水素にて置換した後、バルブV5を閉じるとともにバルブV4を開けることで
レシーバタンク5に供給される。」
(c)「【0027】これらレシーバタンク5に供給された生成水素は、昇圧ポンプP3にて比較的高い圧力に昇圧されて水素貯留手段である高圧水素ボンベ6に貯留される。尚、本実施例では、これら水素貯留手段に高圧水素ボンベ6を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら高圧水素ボンベ6に代えて水素吸蔵合金を内在する水素タンク等を用いるようにしても良い。
【0028】これら高圧水素ボンベ6に貯留された高圧の水素は、水素充填機7を通じて水素燃料電池自動車HCの水素タンクに充填される。この本実施例に使用した水素充填機7について説明すると、該水素充填機7内には、充填ガス圧力設定部73にて設定された所定圧力に前記高圧水素ボンベ6より供給される高圧の水素を減圧するガス圧調整減圧弁74と、該減圧された水素の温度を所定の温度に保つとともに、水素の充填に際して前記水素燃料電池自動車HCの水素タンクからの環流水素を所定の温度に保つように、加熱或いは冷却可能なチラーユニット72と、これら充填される水素の容量を計量する水素計量器71とが内在されており、充填する水素燃料電池自動車HCの種別に応じて前記充填ガス圧力設定部73にて充填圧力を変更できるようになっている。」
(d)「【0031】例えば、前記実施例では、燃料としてガソリンを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記細菌型水素生成装置3並びに水蒸気改質型水素生成装置4ともアルコール燃料や液化天然ガス(LNG)から水素を生成可能であり、これら使用する燃料をアルコール燃料や液化天然ガス(LNG)を用いるようにしても良い。」
以上の記載及び第1図によれば,引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されていると認めることができる。

「自動車の燃料である高圧ガスを充填するためのガス充填システムにおいて、ガソリンスタンドにはガソリン又はメタノールが入れられたガソリンタンク1が設けられ、そのガソリンタンクは配管で水素生成手段3,4、ポンプP3及び高圧水素ボンベ6に接続され、そしてその配管は水素充填機7に接続されているガス充填システム。」

(2-2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-190300号(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【0010】各図中、ガス供給装置1は、例えば自動車2の燃料タンク(被充填タンク)3に都市ガスを所定圧力に圧縮した圧縮天然ガス(CNG)を供給するガス供給ステーションなどに設置されている。
【0011】ガス供給装置1は、大略、都市ガスを所定圧力に圧縮し加圧されたガスを生成する圧力発生ユニット(ガス圧縮部)4と、圧力発生ユニット4により圧縮されたガスを燃料タンク3に供給するためのディスペンサユニット(ガス充填部)5と、顧客カードを読み取るカードリーダ6と、圧力発生ユニット4,ディスペンサユニット5,カードリーダ6に接続されたPOS端末機7と、圧力発生ユニット4,ディスペンサユニット5を制御する制御装置8とよりなる。」
(b)「【0013】圧力発生ユニット4は、都市ガス等が家庭に分岐される前の中圧管路10に接続された分岐管路11に、ガスを圧縮する多段式のコンプレッサ12が配設されている。コンプレッサ12は、例えばガスを圧縮するためのシリンダが複数(3個または4個)設けられ、前段のシリンダで圧縮されたガスを次段のシリンダでさらに高い圧力に加圧するようになっており、中圧管路10から供給されたガスを段階的に圧縮する。
【0014】さらに、コンプレッサ12から引き出された高圧管路13には、コンプレッサ12により生成されたガスの逆流を防止する逆止弁14が配設されている。この高圧管路13から分岐した分岐管路15,16の端部には、夫々第1の高圧ガス蓄圧器17と、第2の高圧ガス蓄圧器18と、が接続されている。尚、高圧ガス蓄圧器17,18は、一般に文献等では蓄ガス器とも呼ばれている。
【0015】上記高圧ガス蓄圧器17,18には、上記コンプレッサ12により圧縮された高圧ガス、本実施例では250kgf/cm2 に圧縮されたガスが蓄圧される。又、上記分岐管路15,16には電磁弁よりなる第1,第2の開閉弁19,20と、圧力伝送器21,22と、手動式開閉弁23,24とが配設されている。
【0016】上記圧力伝送器21,22は、内部に分岐管路15,16を流れるガスの圧力を検出する圧力センサが設けられており、ガスの圧力に応じた検出信号を上記制御装置8内に設けられたコンプレッサ制御回路25に送信する。
【0017】又、分岐管路15,16に連通するガス給送管路28の上流側には電磁弁よりなる第3の開閉弁26が配設されている。この第3の開閉弁26は、コンプレッサ12により圧縮されたガスが高圧ガス蓄圧器17,18へ供給される際に閉弁されてガスがディスペンサユニット5へ流出することを防止し、高圧ガス蓄圧器17,18内のガスが燃料タンク3に充填されるときは開弁される。」
(c)「【0019】従って、コンプレッサ12により圧縮されたガスが高圧ガス蓄圧器17,18へ供給される工程では、コンプレッサ制御回路25からの指令により第1,第2の開閉弁19,20が開弁されるとともに第3の開閉弁26が閉弁される。そして、高圧ガス蓄圧器17,18内の圧力が所定圧力に達すると、第1,第2の開閉弁19,20が閉弁されて、圧力発生ユニット4は充填作業可能な待機状態となる。尚、高圧ガス蓄圧器17,18から燃料タンク3に充填されるガス充填量は、後述するように燃料タンク3の残量に応じて変動するため、一方の高圧ガス蓄圧器17からのガス供給により燃料タンク3が満タンとなる場合と、両方の高圧ガス蓄圧器17,18からのガス供給により燃料タンク3が満タンとなる場合とがある。
【0020】又、圧力発生ユニット4とディスペンサユニット5との間は、ガス給送管路28を介して接続されている。そして、ディスペンサユニット5内に延在するガス給送管路28には、電磁弁よりなりガス給送管路28を開閉する開閉弁29と、圧力発生ユニット4から供給されたガスの圧力を検出する1次圧力伝送器30と、ガス給送管路28を流れるガス流量を計測する流量計31と、下流側へ給送されるガス圧力を所定圧力に調整する圧力調整弁32と、圧力調整弁32により調整された圧力を検出する2次圧力伝送器33と、所定以上の力で引っ張られたとき分離する緊急離脱カプラ34と、が配設されている。」
(d)「【0031】43は表示器で、燃料タンク3に充填されたガスの流量及び供給圧力を表示する。制御回路35は、流量計31から出力された流量パルスを積算して流量を算出するとともに、開閉弁29,1次圧力伝送器30,流量計31,圧力調整弁32,2次圧力伝送器33の動作制御を実行する。又、制御回路35と上記コンプレッサ制御回路25とは、相互に各制御信号を受け渡しを行っており、互いに協働して各機器の制御を行う。」
(e)「【0035】次に充填開始釦(図示せず)がオンに操作されると、コンプレッサ制御回路25は第1、第3の開閉弁19,26を開弁させるとともに、制御回路35は開閉弁29を開弁させる。これにより、第1の高圧ガス畜圧器17に畜圧された高圧ガスは、ガス給送管路28,高圧ガス供給ホース37,着脱カプラ40,42,管路44を介して燃料タンク3に充填される。」
(f)「【0037】本実施例では、燃料タンク3に充填される満タン時の充填圧力は200kgf/cm2 となる。例えば燃料タンク3内のガスが残っていると上記第1の高圧ガス畜圧器17からのガス充填だけで満タン状態(燃料タンク3内の圧力が200kgf/cm2 に昇圧した状態)になるが、燃料タンク3内の残留ガス量が少量で殆ど空の状態でガス充填作業を開始した場合には、上記第1の高圧ガス畜圧器17からのガス充填だけで満タン状態にはならない。
【0038】その場合、コンプレッサ制御回路25は第1の開閉弁19を閉弁させるとともに、第2、第3の開閉弁20,26を開弁させる。これにより、第2の高圧ガス畜圧器18のガスが燃料タンク3内に充填される。そして、燃料タンク3が満タン状態に達した時点で、コンプレッサ制御回路25は第2、第3の開閉弁20,26を閉弁させるとともに、制御回路35は開閉弁29を閉弁させる。」
以上の記載及び第1図ないし第2図によれば,引用例2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されていると認めることができる。

「自動車の燃料である高圧ガスを充填するためのガス供給装置において、ガス供給ステーションにはコンプレッサ12及び高圧ガス蓄圧器17,18を備えた圧力発生ユニット4と、開閉弁29を介して配管28で接続されたディスペンサユニット5が設けられており、高圧ガス蓄圧器に設けた圧力伝送器21,22の圧力信号が入力されるコンプレッサ制御回路25及び当該コンプレッサ制御回路と協働して開閉弁29への弁開閉信号を出力する制御回路35が設けられ、前記コンプレッサ制御回路は、コンプレッサにより圧縮されたガスの高圧ガス蓄圧器への加圧補充を制御するガス供給装置。」

(2-3)引用例3
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-100889号(以下、「引用例3」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【0052】又、上記S18において、Pin-Pout <規定値である場合には、高圧ガス蓄圧器14からのガス供給圧が可変圧ガス蓄圧器13により充填完了した燃料タンク3の充填圧Pout に近い値であるため、高圧ガス蓄圧器14の圧力が大幅に低下しているものと判断してS21に進み、アラーム装置35よりアラームを発するとともに表示器34に例えば「高圧ガス蓄圧器に異常あり」といったメッセージを表示する。
【0053】さらに、S22で圧力制御弁23を閉弁させた後、S23で高圧側の開閉弁18を閉弁させる。その後、充填表示ランプ36を消灯させて作業者に燃料タンク3へのガス充填が終了したことを知らせる(S24)。これで、一連のガス充填処理が終了する。」
また、第3図のフローチャートを参照すると、S21で充填異常アラームを発した後、S20でガス供給開閉弁20に相当するVESを閉弁させている。
以上の記載及び第1図ないし第3図によれば、引用例3には,次の発明(以下「引用発明3」という。)が開示されていると認めることができる。

「高圧ガス蓄圧器14の圧力が大幅に低下しているものと判断された場合に、アラーム装置35よりアラームを発するとともに表示器34に異常を知らせるメッセージを表示し、さらに、供給側の開閉弁20,18を閉弁させるガス供給装置。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「ガソリンスタンド」は、本願補正発明の「ガス充填所」に相当し、以下同様に、「ガソリンタンク1」は「貯蔵タンク」に、「水素生成手段3,4」は「改質機」に、「ポンプP3」は「圧縮機」に、「高圧水素ボンベ6」は「蓄圧器」に、「水素充填機7」は「ガス充填機」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「自動車の燃料である高圧ガスを充填するためのガス充填システムにおいて、ガス充填所にはガソリン又はメタノールが入れられた貯蔵タンクが設けられ、その貯蔵タンクは配管で改質機、圧縮機、蓄圧器及びガス充填機に接続されたガス充填システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、ガス充填所にガソリンまたはメタノールが、「ガスステーション(1)のガスタンク(4)から輸送手段(41)で配送される」のに対し、引用発明1ではかかる構成については言及していない点。

[相違点2]
本願補正発明は、配管が「分岐されて各々遮断弁(10)を介してガス充填機(11)に接続」されているのに対して、引用発明1ではかかる構成については言及していない点。

[相違点3]
本願補正発明は、ガス充填中に「蓄圧器(9)内の圧力が一定以下になると圧縮機(8)を駆動して蓄圧器(9)内にガスを加圧補充する」のに対して、引用発明1ではかかる構成を備えていない点。

[相違点4]
本願補正発明は、制御装置が、ガス充填中に「圧力センサ(19)の圧力が一定以下になると、遮断弁(10)を閉じ報知器(23)を作動して充填中断を報知し、」また「蓄圧器(9)内の圧力が一定以上になると遮断弁(10)を開き報知器(23)の作動を停止してガス充填を再開」するのに対し、引用発明1ではかかる構成を備えていない点。

[相違点5]
本願補正発明は、「ガス充填機(11)において配管(7)に接続された充填ホース(14)の先端に充填ノズル(15)が設けられ、充填ノズル(15)を掛けるノズル掛け(16)には充填ノズル(15)の掛脱を検知してオン・オフ信号を出力するノズルスイッチ(17)が設けられ」、「充填ノズル(15)がノズル掛け(16)から外されてノズルスイッチ(17)がオンとなり、そして前記圧力センサ(19)の圧力信号が一定以上であれば遮断弁を開いてガス充填を開始し」、「充填ノズル(15)がノズル掛け(16)に掛けられてノズルスイッチ(17)がオフとなると遮断弁(10)を閉じる機能を有する」のに対し、引用発明1ではかかる構成を備えていない点。

(4)判断
[相違点1]について
適宜の基地のタンクからローリ等の輸送手段でガス充填所にガソリン等を配送することは周知であって、引用発明1のガス充填所へも、適宜の基地のタンクから輸送手段でガソリン等を配送することを採用できないとする理由も見当たらないから、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
流体の配管を分岐させて複数の供給口を設けることや各分岐管に遮断弁を設けることは当業が適宜なす事項であって、引用発明1のガス充填所に複数のガス充填機を設置する場合に当該構成を採用できないとする理由も見当たらないから、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]について
蓄圧器に設けた圧力センサの圧力信号が入力される圧縮機制御回路により、圧縮機が圧縮したガスの蓄圧器への加圧補充を制御することは、引用発明2に示されたように周知の事項にすぎず、引用発明1の改質機によって生成されたガスを圧縮機で蓄圧器に加圧補充する場合に当該構成を採用できないとする理由も見当たらないから、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。引用例2では、前記2.(2)の(2-2)(c)のように蓄圧器の弁の開閉のみについて記載しているが、当然、蓄圧器の圧力の低下により加圧補充が必要になり、圧力が所定値に達すると補充は終了するのであり、一般に、蓄圧器に接続される加圧装置は圧力センサからの信号を受けて駆動制御されるものであるから(特開平10-139401号公報の段落【0087】?【0089】、特開2001-82329号公報の段落【0034】、特開2002-276603号公報の段落【0024】参照)、技術常識上、引用発明2の圧縮機も圧力センサからの圧力低下信号を受けた圧縮機制御回路によって駆動されるものと認めることができる。
また、引用発明2では、自動車への充填時でも、蓄圧器の圧力が低下した場合は充填を中断して、圧縮機から蓄圧器への加圧補充を行うのかは明らかではないが、充填時以外に予め蓄圧器への加圧補充を行っておくか、充填時に圧力が低下して初めて加圧補充を行うかは当業者が適宜選択し得る事項であって、充填中の中断を厭わないのであれば、充填時であっても充填を中断して、蓄圧器への加圧補充を行うことは当業者が容易になし得たものと認める。

[相違点4]について
ガス充填中に蓄圧器の圧力が低下しているものと判断された場合に遮断弁を閉じ、報知器を作動して充填中断を報知することは、引用発明3に示されたように周知の事項にすぎず、引用発明1の蓄圧器の圧力が低下した場合のに閉じる遮断弁を当該蓄圧器の下流に設け、また、その遮断弁による充填中断を報知する報知器を設けることができないとする理由も見当たらないから、相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、遮断弁による充填中断も圧縮機による蓄圧器への加圧補充も蓄圧器の圧力低下という異常事態に起因して実行されるものであるから、蓄圧器の圧力センサからの信号を受けた制御装置によって、遮断を実行し、加圧補充を実行することは当業者が容易になし得たものと認める。そして、異常事態が改善された場合は処理を再開することも当業者が適宜なす事項なので、蓄圧器内の圧力が一定以上になると遮断弁を開き報知器の作動を停止してガス充填を再開することは当業者が容易になし得たものと認める。

[相違点5]について
ガス充填機において、配管に接続された充填ホースの先端に充填ノズルが設けられることは一般的な事項であり、ガス充填機のノズル掛けにノズルスイッチを設けて、当該ノズルスイッチの信号によって充填作業の開始・終了を判断し、弁の開閉を行うことは、特開平4-102594号公報の第6頁左下欄第19行から右下欄第4行、特開平8-34498号の段落【0021】、【0025】に記載されたように周知であって、引用発明1のガス充填機に当該構成を採用できないとする理由も見当たらないから、相違点5に係る本願補正発明の構成は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。圧力が低い場合には遮断の制御が実行されることを考慮して、蓄圧器の圧力センサの圧力信号が一定以上の場合にガス充填を開始しすることは当業者が容易になし得たものと認める。

そして,本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
本願に係る平成19年5月17日付けの手続補正は平成19年6月12日付けで却下されており、平成19年8月8日付けの手続補正も上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は、平成19年2月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ガス充填所(8)の貯蔵タンク(5)にはガソリン又はメタノールが入れられ、貯蔵タンク(5)とガス充填機(11)とを接続した第1の配管(7)には、改質機(42)、圧縮機(8)、及び蓄圧器(9)が介装され、そして蓄圧器(9)内の圧力が一定以下になると圧縮機(8)を駆動して蓄圧器(9)内にガスを加圧補充する制御装置(18)が設けられていることを特徴とするガス充填システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「ノズルスイッチ(17)」、「圧力センサ(19)」、「遮断弁(10)」、「報知器(23)」にかかるに構成を省き、「ガス充填システム」について「自動車の燃料である高圧ガスを充填するためのガス充填システム」、「ガス充填所(3)」について「ガスステーション(1)のガスタンク(4)から輸送手段(41)で配送されるガス充填所(3)」、「配管(7)」について「その配管(7)は分岐されて各々遮断弁(10)を介してガス充填機(11)に接続されており」という限定をそれぞれ省き、そして、「制御装置(18)」が「蓄圧器(9)内の圧力が一定以下になると圧縮機(8)を駆動して蓄圧器(9)内にガスを加圧補充する」のは「ガス充填を中断」した時に実行するという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-24 
結審通知日 2008-06-25 
審決日 2008-07-10 
出願番号 特願2003-363689(P2003-363689)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F17C)
P 1 8・ 121- Z (F17C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 楠永 吉孝  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 熊倉 強
村山 禎恒
発明の名称 ガス充填システム  
代理人 高橋 敏邦  
代理人 高橋 敏忠  

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