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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 B21B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1183586
審判番号 不服2006-6203  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-04 
確定日 2008-08-26 
事件の表示 特願2000-590794「管の冷間ピルガー製法用の工具設計方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 6日国際公開、WO00/38852、平成14年10月 8日国内公表、特表2002-533219〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年7月5日(優先権主張 1998(平成10)年12月25日,ロシア国)を国際出願日とする出願であって、平成17年2月7日付で拒絶理由通知がなされ、同年8月15日付の手続補正がなされた後、同年12月19日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年5月2日付で手続補正がなされたものである。

2.明細書の記載について
特許法第36条第4項は、「・・・発明の詳細な説明は、通商産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。」と規定し、特許法施行規則第24条の2は、「特許法第三十6条第4項の通商産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定している。

また、同条第6項は、「・・・特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
・・・
二 特許を受けようとする発明が明確であること。」と規定している。

そこで、以下では、本願明細書がこれらの規定を満足しているか否かについて検討する。

本願の特許請求の範囲の記載は、平成18年5月2日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 外部金型の設計および内部金型プロフィールの展開を、数学的な計算に基いて、プロットされた曲線として作成することを含み、該外部および内部金型プロフィールの曲線が、種々のスプライン関数の、キーポイントの幾何学的位置を表し、
計算された曲線の、スプライン関数の幾何パラメータと共に、圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性を規定するファクタをも使用することを特徴とする、冷間ピルガー工具設計方法。
【請求項2】 各別々の外部または内部金型のスエージングおよび較正部分を、曲線として作成する、請求項1記載の冷間ピルガー工具設計方法。」

また、発明の詳細な説明の記載は、明1.?明6に分節すると、次のとおりである。
明1.技術分野および技術的背景「【0001】
【技術分野】
本発明は、塑性金属加工、特に管の圧延生産に関するものであり、圧延装置における、冷間ピルガー製管法に適用できる。
【0002】
【技術的背景】
圧延素材の物理-機械的パラメータおよび幾何的寸法の安定性を与える、圧延手順の効果的な変形スキームを実施することは、形削り工具加工表面の製造品質、該加工部品接合の平滑さ、および機械装置の可能性によって大きく規定され、該計算された曲線の形状にかなり近い、実際の加工表面形状を再現する。
利用できるものは、以下のようなピルガー金型であり、これは放物線状に仕上げられたロールパスリッジをもつミルローラーおよび放物線状の母線をもつ、減少する断面をもつマンドレルからなり、従って該ロールパスリッジは放物線ファクタを有し、これはマンドレル母線の放物線ファクタよりも大きな単位をもつ(本発明者の発明者証特許USSR-534261、国際分類B21、B21/02、I.E. 41,1976)。
【0003】
利用できるのは、以下のようなピルガー金型であり、これはテーパー付きマンドレルおよびピルガーローラーを含み、該ローラーは展開の長さ方向に沿って、圧下ゾーン、マンドレル母線の傾斜角よりも大きな、母線の、マンドレル軸に対する傾斜角をもつスエージングゾーン、予備的状態調節ゾーンおよび較正ゾーンをもつ。その上、該予備的状態調節ゾーンの母線は、該マンドレル軸に対する傾斜角を有し、該傾斜角はマンドレル母線の傾斜角の0.5-0.9であり、また該予備的状態調節ゾーンの長さは、該スエージングゾーンの長さの0.3-0.6である(本発明者の発明者証特許USSR-822937、国際分類B21、B21/02、1.B.15, 1981)。
利用できるのは、ジルカロイクラッド管用のピルガー金型(S. Reschke, A. Schaa T. Grimmelsmann, 「VERBESSERUNG DES HERSTELLUNGS-VERFAHRENS FUR ZIRCALLOY-HULLROHRE」, Metall., 1986, H, 4, S.338-346)であり、その特徴は以下の通りである:
・ その環状ダイの始点は、僅かに減衰するゾーンをもち;
・ その最大変形は、展開の前半において起こり;
・ その加工部分の端部におけるテーパー角度は、最小である(ロールバレル周長の10度当たり0.04mm)。
【0004】
本文から明らかな如く、これら工具を使用した場合、管の小さな欠陥形成を防止することは、全く不可能である。
請求の範囲に最も密接する技術は、ピルガー金型の設計であり、そこでは、外部および内部工具プロフィールの較正に関する展開(evolvement)は、全加工長さに沿った、一定の凹型の、主として放物線状の曲線形状を持つ。
この場合、(1) 内部工具の、該一定の主として放物線状の曲線、および外部工具の該展開は、一つの、同一の数学的な関数によって記載され、かつ同一の放物線数(parabolic number)をもち、(2) 較正部分にある曲線は、接線方向に伸び、かつ円筒状のかつテーパー付きの主形状と重なる(FRG特許 1777043,1971)。
【0005】
内部および外部工具の放物線状曲線の幾何形状は、圧延材料の物理的-機械的諸特性には依存しない。全加工長さに沿った、工具外部および内部プロフィールの展開の、一定の凹型の形状は、テーパー付きの金型または別の形状を持つ内部金型の製造を複雑化する(Z.A. Koff, P.M. Soloveytchik, V.A. Aljoshin, M.I. Grishpun, 管の冷間ピルガー製法(Tube Cold Pilgering), Metallurgizdat, Sverdlovsk, 1962; Glen Stapleton, 冷間ピルガー製管技術(COLD PILGER TECHNOLOGY), 1683 W.216^(th) Street, USA 1996)。」(【0001】?【0005】)

明2.発明の開示「【0006】
【発明の開示】
本発明は、管の幾何学的寸法精度および表面品質、その機械的特性の安定性に関る改善並びに管欠陥の低減に関る問題点を解決する。
この目的は、金属の物理-機械的諸特性および管ビレットの圧延スキームに関して計算された、加工工具設計の適用により、該管ビレットの最良の変形スキームを創製することによって達成することができる。
本発明の技術的結果は、以下のような事実によって達成される。即ち、外部および内部形状-形成工具として作成された、工具の既知の設計とは対照的に、加工長さに沿って、放物線状の曲線として形状付与され、数学的な計算により作成された、外部工具プロフィールおよび内部工具プロフィールの展開の幾何学的曲線を、種々のスプライン関数のキーポイントにより生成する(I.N. Bronshtein, K.A. Semendjaev, 数学ハンドブック(Handbook in mathematics), Moscow, Nauka, 1986, p. 504; K.De Bor, スプライン実務マニュアル(Spline practical manual), Moscow, Radio Communication, 1985)。
【0007】
本発明の技術的結果は、また以下のような事実によって達成される。即ち、各別々の外部または内部工具の、圧延設計の各段階は、統一曲線状態で実施される。このことは、工具プロフィール製造工程を自動化すること(例えば、CNCの使用を)可能とする。二次および高次のファクタの計算された曲線に従ってプロットされた、管の冷間ピルガー製造用の、工具の形状-形成プロフィールを作成する既存の方法は、相互の接合点における理想的に滑らかな転移を与えない。
計算におけるスプライン関数の適用は、既存の装置での、指示した点における加工表面の転移の滑らかさを与える。
【0008】
ファクタk、キーポイント列tをもつスプライン関数は、キーポイント列t(S k,t)に関するファクタkをもつB-スプラインの任意の線形組み合わせであると考えられるので、その量および列の選択は、しばしば区切り点における好ましい平滑レベルと、この点におけるキーポイントの量との結合を可能とする。それにもかかわらず、キーポイントの量が少ないことは、連続状態の数がより多いことに対応する。
圧延管の物理的-機械的特性の安定性を達成するためには、スプライン関数のパラメータを計算するように、幾何的パラメータと共に、曲線のキーポイントを計算する際に、圧延金属の物理的-機械的特性を考慮したファクター、例えば弾性率、降伏強さ、摩擦因子、並びに圧延スキーム:壁厚による歪速度および管内径、供給原料体積等が利用される。
【0009】
外部工具ACのパスリッジプロフィールの該展開は、モジュラスk3をもつ、キーポイントnを含む、スプライン関数S(x)として仕上げられる。内部工具A_(1)C_(1)のプロフィールは、モジュラスk_(1)3をもち、キーポイントn^(*)を含む、スプライン関数S_(1)(x)として仕上げられる。
スプライン関数S(x)およびS_(1)(x)のキーポイントの量は、適用された圧延装置の型および外部工具の型:セグメント、環状ダイに依存して、10?100の範囲で変動する。延性の低い金属を圧延する場合には、スプライン関数S(x)およびS_(1)(x)は、最大値に向かう曲率因子を有し、また延性金属の圧延の場合には、最小値に向かう曲率因子を有する。
圧延金属の安定な物理的-機械的特性を得るためには、スプライン関数S(x)およびS_(1)(x)は、外部および内部工具の長さに沿った、歪速度の減少状態に従って計算される。」(【0006】?【0009】)

明3.変法1「【0010】
発明実施の変法
変法1: ジルコニウム合金Zr-1.0Nbの、φ9.13mmをもつ管の製造
該ビレットを3段階に渡り冷間変形させて、最終的寸法の管を得る。該最終の圧延は、圧延装置 HPT-55で実施し、その外部金型を、半円盤状に仕上げた。その第二の圧延を、圧延装置 K.PW-25で行い、外部金型を環状ダイとして仕上げ、第三の圧延を、圧延装置 KPW-18で行い、その外部金型を環状ダイとして仕上げた。
圧延装置HPT-55の、内部金型プロフィールおよび外部金型ロールパスリッジのプロフィールは、種々のスプライン関数:ファクタk=6をもち、キーポイント50を含むスプライン関数S(x)およびファクタk_(1)=4を有し、キーポイント48を含むスプライン関数S_(1)(x)によって形成された。
圧延装置KPW-25の、内部金型プロフィールおよび外部金型ロールパスリッジのプロフィールは、種々のスプライン関数:ファクタk=4をもち、キーポイント100を含むスプライン関数S(x)およびファクタk_(1)=4を有し、キーポイント80を含むスプライン関数S_(1)(x)によって形成された。
【0011】
圧延装置KPW-18の、内部金型プロフィールおよび外部金型ロールパスリッジのプロフィールは、種々のスプライン関数:ファクタk=6をもち、キーポイント300を含むスプライン関数S(x)およびファクタk_(1)=5を有し、キーポイント250を含むスプライン関数S_(1)(x)によって形成された。キーポイント列の計算は、以下の式に従って行った:
D_(n) = K_(t)/[(K_(t) K)/D_(n-1) + K-1]
ここで、D_(n)はn-部分における内部工具の径であり、K_(t) = f(G,σ_(0.2), E)は、金属の物理的-機械的特性に依存するファクタであり、Gは、剪断弾性率であり、σ_(0.2)は降伏強さであり、Eは、弾性率であり、K = f(m,μ,Q…)は、圧延条件に依存したファクタであり、mは金属供給原料の体積であり、μはパス当たりの伸び率であり、Qは壁厚変形速度対内管径の変形速度の比である。
【0012】
φ9.13mmの管を製造した後、幾何的寸法の検討を行ったところ、外径のずれは30mkmまでであり、内径のずれは25mkmを越えなかった。外面および内面には、欠陥は何等検出されなかった。圧延管の長さおよび断面に沿った機械的特性の評価は、その値の分布が2%を越えないことを示した。既存の技術的方法に従って製造した管においては、これら値における分布は、10%に達した。」(【0010】?【0012】第1段落)

明4.変法2「変法2:チタン合金VT1-0製、φ25.4mmの管の製造
ビレットを2段階に渡り、冷間変形にかけて、最終的寸法の管を製造した。第一の圧延は、圧延装置HPT-55で行い、その外部金型を、半円盤型に仕上げた。該第二の圧延は、圧延装置HPT-32で行い、その外部金型は、同様に半円盤型に仕上げた。
【0013】
圧延装置HPT-55の、内部金型プロフィールおよび外部金型ロールパスリッジのプロフィールは、種々のスプライン関数:ファクタk=4をもち、キーポイント80を含むスプライン関数S(x)およびファクタk_(1)=6を有し、キーポイント80を含むスプライン関数S_(1)(x)によって形成された。
圧延装置HPT-32の、内部金型プロフィールおよび外部金型ロールパスリッジのプロフィールは、種々のスプライン関数:ファクタk=5をもち、キーポイント120を含むスプライン関数S(x)およびファクタk_(1)=4を有し、キーポイント200を含むスプライン関数S_(1)(x)によって形成された。
φ25.4mmの管を製造した後、幾何的寸法の検討を行ったところ、外径のずれは150mkmまでであり、内径のずれは120mkmを越えなかった。外面および内面には、欠陥は何等検出されなかった。圧延管の長さおよび断面に沿った機械的特性の評価は、その値の分布が5%を越えないことを示した。既存の技術的方法に従って製造した管においては、これら値における分布は、10%に達した。」(【0012】第2段落?【0013】)

明5.産業上の利用可能性「【0014】【産業上の利用可能性】
上記実施例から、外部および内部金型の較正およびスエージング部分を滑らかに接続し、かつ圧延金属および圧延スキームの諸特性を考慮している、計算された曲線の最適の形状を選択しているために、圧延工程の性能を大幅に改善することが可能となった。既存装置の外部および内部技術的金型の、計算されたプロフィールの再現を可能とするプログラムが作成され、現在JSC「チェペトスキーメカニカルプラント(Chepetsky Mechanical Plant)」において、首尾良くテストされた。
このソフトウエアは、システムCADDS5におけるモジュラスCVMACによって開発された。圧延装置用の加工金型製造のために、3-および5-配位装置CNC-ファヌク(Fanuk)およびGG-52を使用した。これらは、計算された金型幾何パラメータと実際の金型幾何パラメータとの一致を与えた。」(【0014】)

明6.図面の簡単な説明「【図面の簡単な説明】
【図1】外部工具パスリッジプロフィールおよび内部工具2のプロフィールの展開を表す図であり、本図においてABは、外部工具のスエージング部分であり、BCは、外部工具の較正部分であり、A_(1)B_(1)は、内部工具のスエージング部分であり、B_(1)C_(1)は、内部工具の較正部分であり、点1,2,3, .,n-1,nは、該外部工具プロフィールを形成する、スプライン関数のキーポイントであり、点1^(*),2^(*), 3^(*), ,n^(*)-1,n^(*)は、該内部工具プロフィールを形成する、スプライン関数のキーポイントである。」

また、上記明1.?明6.の他に
明7.図1として、「外部および内部工具プロフィールの展開」と図面右側に記載され、番号1が付され、点1、2、3、4、・・k・・n-2、n-1、nの隣接する各点を曲線分で繋いで、連続的な曲線としたA-B-C及び、番号2が付され、点1^(*)、2^(*)、3^(*)、4^(*)、・・k^(*)・・n-2^(*)、n-1^(*)、n^(*)の隣接する各点を曲線分で繋いで、連続的な曲線としたA1-B1-C1が示されている。

3.当審の判断
3-1.明細書の記載の全体構造について
上記2.において示したように、明細書の記載は、明1.?明6.に分節することができ、各明1.?明6.においては、概略、次のことに関して記載されている。
明1.(技術分野および技術的背景)では、「圧延素材の物理-機械的パラメータおよび幾何的寸法の安定性を与える、圧延手順の効果的な変形スキームを実施すること、形削り工具加工表面の製造品質、該加工部品接合の平滑さ、および機械装置の可能性によって大きく規定され、該計算された曲線の形状にかなり近い、実際の加工表面形状を再現する。」(【0002】)という技術分野に関する説明と、「内部および外部工具の放物線状曲線の幾何形状は、圧延材料の物理的-機械的諸特性には依存しない」(【0004】)従来技術と、「これら工具を使用した場合、管の小さな欠陥形成を防止することは、全く不可能である。」(【0005】)という、従来技術の問題点について説明している。
明2.(発明の開示)では、「管の幾何学的寸法精度および表面品質、その機械的特性の安定性に関る改善並びに管欠陥の低減に関る問題点を解決する」(【0006】)という本願の課題と、その解決手段について、スプライン関数を中心に説明している。また、「圧延管の物理的-機械的特性」乃至「圧延金属の物理的-機械的特性」及びその例について、【0006】、【0008】、【0009】に説明されている。
明3.(変法1)では、冷間ピルガー工具を用いて製造した、所謂実施例と考えられる実施の変法1について、金属の物理的-機械的特性に依存するファクタK_(t)及び、圧延条件に依存したファクタK(【0011】)を用いて、説明している。
明4.(変法2)では、被処理物の材質が異なる別の実施例と考えられる実施の変法2について、明3.の記載を簡略化するかたちで説明している。
明5.(産業上の利用可能性)では、本願の設計方法において使用した、CADソフトウェアや装置などの名称を挙げて、簡単な説明をしている。
明6.(図面の簡単な説明)では、図面において使用されている用語の説明をしている。図面の簡単な説明において使用されている用語と、同一の用語、同様の用語は、上記明2.?明4.においても使用されている。

3-2.請求項1の記載の全体構造について
請求項1に記載の冷間ピルガー工具設計方法は、次の第1特定事項から第3特定事項に分節される。

第1特定事項:「外部金型の設計および内部金型プロフィールの展開を、数学的な計算に基いて、プロットされた曲線として作成することを含み、」
第2特定事項:「該外部および内部金型プロフィールの曲線が、種々のスプライン関数の、キーポイントの幾何学的位置を表し、」
第3特定事項:「計算された曲線の、スプライン関数の幾何パラメータと共に、圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性を規定するファクタをも使用することを特徴とする、冷間ピルガー工具設計方法」

3-3.「冷間ピルガー工具設計方法」の意味について
「冷間ピルガー工具」とは、管などの材料を内側と外側とから挟んで圧延する、「冷間ピルガー圧延」において使用される工具であって、材料の内側に配される「内部金型」及び、材料の外側に配される「外部金型」のことと解されるから、請求項1における、「冷間ピルガー工具設計方法」とは、「冷間ピルガー工具」について、その形状等を設計する方法である。

3-4.第1特定事項の意味について
第1特定事項にいう、「外部金型の設計および内部金型プロフィールの展開」という語句の後に、第2特定事項の「該外部および内部金型プロフィールの曲線」という記載があることから、第1特定事項とは、外部金型及び内部金型の形状を数学的な計算に基いて、プロットされて曲線として作成すること、を意味すると考えられる。

3-5.第2特定事項の意味について
スプライン関数とは、「ある指定された関数をある区間上で近似するために用いられる関数であって、一連の部分区間上で一意に定義された個別的な関数から構成される。」(マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版)とされ、また、スプライン曲線とは、「内挿法の代表的な近似曲線。点列を通過する曲線として定義される。一般に点列が多くなると式の次数が高くなり、デザインの意図とかけ離れてしまうこともあるため,範囲をいくつかに分割してそのそれぞれに多項式を当てはめる。こうして得られる曲線をスプライン曲線という。」(JIS Z 8125:2004 印刷用語-デジタル印刷)とされている。
それゆえ、スプライン関数とは、複数のキーポイントを通過する曲線を形成するものと解されるから、第2特定事項においていう、スプライン関数とは、各点間を、点間毎に個別の関数を用いて、第1特定事項の計算を行って、曲線を形成するにあたっての、個別の関数をいい、「キーポイント」とは、スプライン関数により曲線を形成するにあたっての、点間を構成する各点を意味し、「幾何学的位置」とは、その座標、を表すと考えられる。
よって、第2特定事項とは、第1特定事項においていう、「計算に基づいて」が、隣接するキーポイント間を、その座標に基づいて、スプライン関数を用いて、曲線で近似すること、を指すと、考えられる。

3-6.第3特定事項の意味について
まず、第3特定事項においては、「計算された曲線の、スプライン関数の幾何パラメータ」及び「圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性を規定するファクタ」の両者を使用することと、推測できる。
また、「計算された曲線の、スプライン関数の幾何パラメータ」とは、「計算された曲線の、スプライン関数」に関するものであるから、第2特定事項におけるスプライン関数に用いられた、キーポイントの座標を指し、「(計算された曲線の、スプライン関数の幾何パラメータを)使用すること」とは、キーポイントの座標を、スプライン関数を用いた曲線形成のための計算に使用したことを指す、と、考えられる。

しかしながら、「圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性を規定するファクタ」が、具体的に何を意味するか不明である。また、「使用すること」とは、キーポイント位置の決定に使用するのか、あるいは、キーポイント間をスプライン関数で曲線近似するときのパラメータとして使用することをいうのか、あるいは、スプライン関数に加えさらに曲線を修正する別の手段を併用していて、該別の手段に使用するのか、あるいは、キーポイント位置決定前の設計工程に使用するのか、等、何に対し、どのように、使用することをいうのか不明であり、「使用すること」の意味が不明である。

そこで、上記不明な点については、本件明細書の記載を参酌して解釈すべきことになる。そこで、2.及び3-1.において分節した、本件明細書の各部の記載から、第3特定事項の意味が理解できるかについて、検討する。

3-7.第3特定事項の意味についての、明細書の記載に基づく検討
明1,明2に記載された、本願発明の課題は、「圧延素材の物理-機械的パラメータおよび幾何的寸法の安定性を与える、圧延手順」に関し、「内部および外部工具の放物線状曲線の幾何形状は、圧延材料の物理的-機械的諸特性には依存しない」従来技術が、「これら工具を使用した場合、管の小さな欠陥形成を防止することは、全く不可能」という、問題点をもち、「管の幾何学的寸法精度および表面品質、その機械的特性の安定性に関る改善並びに管欠陥の低減に関る問題点を解決する」というものであり、第3特定事項もそのような課題を実現するためのものと解しうる。
しかしながら、第3特定事項中の「物理-数学的特性」については、本願明細書の明1?明6のいずれにも記載されておらず、また、「物理-数学的特性」と、前記課題中の「機械的特性」との関連も明瞭でないし、そのような課題によって、上述の「使用すること」の意味が明確になるわけでもないから、前記課題を考慮しても、第3特定事項の意味は依然として明りょうでない。

上述のように、発明の詳細な説明には、「物理-数学的特性」という記載が全く存在しない一方、「圧延素材の物理-機械的パラメータ」(【0002】)、「圧延材料の物理的-機械的諸特性」(【0005】)、「金属の物理-機械的諸特性」(【0006】)、「圧延管の物理的-機械的特性」(【0008】)、「圧延管の物理的-機械的特性」乃至「圧延金属の物理的-機械的特性」(【0009】)等の記載が存在することから、仮に、「物理-数学的特性」と「物理的-機械的特性」とが同義のものと解するならば、「圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性を規定するファクタ」の意味を、一応、理解することができ、また課題との関連も、一応理解することができる。

しかしながら、明1、明2には、「物理的-機械的特性」等を使用した計算式等といった、「使用すること」についての具体的記載が無く、冷間ピルガー工具設計方法において、これら「物理的-機械的特性」等を、設計のどの時点で、どのように「使用すること」をいうのかについて、その意味を明らかにしていない。
また、使用したソフトウェアの名称などを説明した明5乃至、図面の説明である明6にも、冷間ピルガー工具設計方法において、「物理的-機械的特性」等をどのように使用するのか、について記載が無く、その意味を明らかにしていない。
よって、明1、明2、明5、明6の本件明細書の記載は、第3特定事項の意味を明らかにしていない。

次に、明3.乃至明4は、実施の変法1、2を説明したものであって、実施の変法1、2は、実施例と考えられる。しかしながら、明3.乃至明4.の記載は、実施例という例示である以上、どのように使用するのかや第3特定事項についても、例示するに留まる。よって、仮に、明3.乃至明4.において例示されたものの意味が明確であったとしても、そのことから、例示されたもの以外をも含む、どのように使用するのかや第3特定事項の意味が明確になるとはいえない。
このことは、逆にいうと、次のようにもいえる。明3.乃至明4.に記載された、実施の変法1、2は、実施例と考えられるものの、手順、即ち、まず、いかなるデータ、関数を準備し、第3特定事項やスプライン関数の使用を含め、如何なる各段階を経て、工具を設計するのか、という設計方法における工程全体について、これを、請求項1の「冷間ピルガー工具設計方法」と対応させて、順序立てて示した手順の記載がない。よって、明3.乃至明4.のどの記載が、第3特定事項に対応するかも明らかとはいえない。
上記例示の点を措くとしても、明3.乃至明4.の記載からは、以下の点で第3特定事項の意味を明確にしていない。
明4.と明3.とは同種の記載であるので、明3について、代表して検討すると、明3.には、本件明細書【0011】に、「圧延装置KPW-18の、内部金型プロフィールおよび外部金型ロールパスリッジのプロフィールは、種々のスプライン関数:ファクタk=6をもち、キーポイント300を含むスプライン関数S(x)およびファクタk_(1)=5を有し、キーポイント250を含むスプライン関数S_(1)(x)によって形成された。キーポイント列の計算は、以下の式に従って行った:
D_(n) = K_(t)/[(Kt K)/D_(n-1) + K-1]
ここで、Dnはn-部分における内部工具の径であり、K_(t) = f(G,σ_(0.2), E)は、金属の物理的-機械的特性に依存するファクタであり、・・・、K = f(m,μ,Q…)は、圧延条件に依存したファクタであり、」との記載がある。(合議体注。Gは、剪断弾性率であり、σ_(0.2)は降伏強さであり、Eは、弾性率であり、mは金属供給原料の体積であり、μはパス当たりの伸び率であり、Qは壁厚変形速度対内管径の変形速度の比である。以下同じ。)

上記式は、n-1部分における内部工具の径D_(n-1) から、次のn-部分における内部工具の径D_(n) を求める式であって、最初のD_(1)と該式を用いて、全ての点nについてのD_(n) を求めることができる式、と考えられる。
また、本件明細書の明6.明7.の記載からみて、内部金型(内部工具)プロフィールとは、スプライン関数のキーポイントである点1^(*),2^(*), 3^(*), ,n^(*)-1,n^(*)について、隣接する各点を曲線分で繋いで、連続的な曲線としたA1-B1-C1である。ここで、内部金型の半径は、図1において、金型中心軸をX軸、X軸と直交する方向をY軸として見た場合のY座標にあたるから、D_(n) は、第2特定事項にいう「キーポイントの座標」であり、また、第3特定事項にいう「スプライン関数の幾何パラメータ」とも考えられる。全ての点nについてのD_(n) が得られており、かつ、各々の点間を曲線で近似すれば、内部金型プロフィールが得られると、考えられる。

よって、上記明3.の記載からは、「圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性」とは、G,σ_(0.2), E,m,μ,Qを指し、これを使用する第3特定事項とは、
「点1^(*),2^(*), 3^(*), ,n^(*)-1,n^(*)というキーポイントの計算、即ち、n-部分における内部工具の径D_(n)を、以下の式
D_(n) = K_(t)/[(K_(t) K)/D_(n-1) + K-1]
によって計算し、
キーポイントを含むスプライン関数S(x)もしくはS_(1)(x)によって、
隣接する各キーポイントを曲線分で繋いで、連続的な曲線A1-B1-C1を作成するにあたり、
スプライン関数の幾何パラメータ D_(n-1)「と共に、」圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性を規定するファクタK_(t) = f(G,σ_(0.2), E)、圧延条件に依存したファクタK = f(m,μ,Q…)、「をも」使用すること」
、と考える余地がある。

しかしながら、明3.の記載に基づき、上記のように考えたとしても、K_(t) = f(G,σ_(0.2), E)、K = f(m,μ,Q…)、はそれぞれ、関数であることは読み取れるものの、具体的にどのような関数であるか明らかではない。また、Kの式右辺における「…」に、何が該当するのかも明らかでない。また、上記(1)式における、(K_(t) K)及び K-1は、K_(t) 乃至Kと関連があると推測されるものの、どのようにして、求めるものかは明らかでない。よって、本件明細書の記載からは、K_(t) 乃至Kをも使用して、D_(n)を計算することとは、具体的にどのようなことであるのか、不明であるので、「使用」や第3特定事項の意味も不明である。

よって、明3.(乃至明4.)の記載も、第3特定事項の意味を明らかにしておらず、明1.?明6の本件明細書の記載は、第3特定事項の意味を明らかにしていない。

3-8.請求項1の記載についての、検討のまとめ
以上、検討したように、第3特定事項、即ち、「計算された曲線の、スプライン関数の幾何パラメータと共に、圧延材料および圧延スキームの、物理-数学的特性を規定するファクタをも使用すること(を特徴とする冷間ピルガー工具設計方法)」の意味が不明である。よって、この記載を含む、本願の請求項1及び請求項1を引用する請求項2に係る発明は、発明が不明確であり、また、本願の請求項1、2に係る発明を当業者が実施しうる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されていない。

4.付言
応対記録のとおり、当審から、上記3.において検討した、第3特定事項の意味、設計方法における工程全体の手順、【0011】の意味等については、原審拒絶理由通知および拒絶査定においても指摘したものであり、これらについて、書面提出による釈明をするように電話で依頼したところ、請求人から、平成20年3月4日付で、書面を提出しない旨の回答を得た。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1、2に係る発明は、不明確であり、また、発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1、2に係る発明を実施しうる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本願は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、本願は拒絶すべきものであるので、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-26 
結審通知日 2008-03-31 
審決日 2008-04-14 
出願番号 特願2000-590794(P2000-590794)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (B21B)
P 1 8・ 536- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 要小谷内 章  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 小川 武
前田 仁志
発明の名称 管の冷間ピルガー製法用の工具設計方法  
代理人 箱田 篤  
代理人 中村 稔  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 小川 信夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  
代理人 村社 厚夫  
代理人 宍戸 嘉一  
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