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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1184105
審判番号 不服2005-9971  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-26 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 平成 7年特許願第157960号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月 7日出願公開、特開平 9- 702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1,手続きの経緯
本願は、平成7年6月23日の出願であって、平成13年11月8日付けで出願審査の請求と同時に手続補正がなされ、平成17年1月13日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年3月22日付けで手続補正がなされ、同年4月20日付けで拒絶査定がなされたところ、同年5月26日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年6月17日付けで手続補正がなされたものである。

2,平成17年6月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
請求項1に係る本件補正は、上記平成17年4月20日付け拒絶査定における「備考 <理由2>」の欄において、
「 出願人は・・・と主張している。
しかしながら、「長時間」としている比較の対象が不明であり、「スロー」についても同様に、「スロー」としている比較の対象を把握することができない。
また、「有効時間」との記載が追加されたが、何を「有効」としていのか明確に特定することができないので、当該記載の技術的意味が不明である。
したがって、依然として「リーチスクロール」等を把握することはできない。」との指摘を受け、
当該指摘を受けるような不明瞭な記載を補正しようとするものと認められる。

そうすると、本件補正は、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものであって、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第4号に規定された目的に該当し、適法なものである。

3,本願発明
本願の請求項1乃至4に係る発明は、上記平成17年6月17日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。
【請求項1】 始動口への入賞に基づき複数の識別情報を可変表示する可変表示装置を備え、この可変表示の停止態様が大当たり態様になることに基づき大当たり状態を発生可能な遊技機において、
リーチが発生して、最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後、該最終停止識別情報の再可変表示を行う再スタート手段と、
前記再可変表示が行われる場合は前記最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後から再可変表示が行われるまでの期間である有効時間にあることを報知する再スタート有効状態報知手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。(以下「本願発明」という。)

4,刊行物に記載された発明
刊行物;特開平6-218121号公報

原査定の拒絶理由通知に引用された、特開平6-218121号公報(以下、「引用刊行物」という。)には以下の記載がある。
(4-1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、所定の組合わせにより大入賞口を開放させる図柄組合わせ表示装置を備えたパチンコ機に関する。」、
(4-2)「【0014】前記始動口14又は開放された入賞口開閉装置15の側方から遊技球が流入すると、景品球の供給と共に図柄組合わせ表示装置6が駆動する。・・・
【0015】そして図柄組合わせ表示装置6が駆動すると、図柄表示器7a,7b,7cは図柄変動を開始し、約5秒程度経過すると、図柄表示器7a,7b,7cの順番に図柄が変動停止する。
【0016】このとき図柄表示器7aと図柄表示器7bの図柄が一致した場合にはいわゆるリーチ状態となり、図柄表示器7cが図柄を視認可能なように低速変動する。・・・
【0017】ここで図柄表示器7a,7b,7cの表示図柄は「0」?「9」、「¥」、「$」及び「☆」の13種があって、循環順序はあらかじめ定められている。そして、「☆」を更新図柄xとしている。」、
(4-3)「【0019】かかる制御態様を図4,5のフローチャートに従って説明する。
【0020】前記始動口14への入賞に伴って、あらかじめ記憶装置ROMに格納された当たり特別乱数から値を抽出する。これは、例えば「0」?「244」の245コマとし、その内のいずれか(例えば「56」)を当たりとする。そして、この値が記憶される。・・・
【0021】そして表示器7a,7b,7cが変動開始すると、上述の記憶内容を調べ、当たりである場合には、当たりルーチン(図4)が実行され、同様に外れの場合には、外れルーチン(図5)が実行される。
【0022】この当たりルーチン作動を図4に従って説明する。
【0023】まず、前記当たり選択により、同一図柄の組合わせ(例「1,1,1」、「2,2,2」)からなる13種の当たり図柄のうちからいずれかを抽選する。これは、各表示器7a,7b,7cに最終的に表示される図柄となり、一旦記憶保持される。
【0024】そして次に、更新図柄xである「☆」を表示して変化制御するかどうかを選択する。これは、CPU内のリフレッシュカウンタの最下位1ビットを抽選し、例えば「0」値の場合には「☆」を表示せず、「1」値の場合には「☆」を表示するようにする。そして、「0」値の場合には、既に決定された当たり図柄を各表示器7a,7b,7cで表示させる。これには、「☆,☆,☆」も含まれる。
【0025】一方、「☆」を表示する場合には、その発生位置の選定を行なう。この表示組合わせは6種類あり、これを抽選する。すなわち、「☆,X,X」、「☆,☆,X」、「☆,X,☆」、「X,☆,X」、「X,☆,☆」、「X,X,☆」である。ここでXは☆以外の図柄を示す。」、
(4-4)「【0028】そして、既に決定された当たり組合わせのうち、上記で選定された位置を、「☆」に置き換えて、表示器7a,7b,7cの順序で表示する。そして、各図柄が停止、または停止に近い緩速度で表示されてから、更新図柄xである「☆」が表示された表示器7a,7b,7cのみを変化させ、既に定められた当たり図柄を表示させる。このときも、更新図柄xが二つ出現した場合には、表示器7a,7b,7cの順で更新図柄xを変化させる。
【0029】この表示経過中に図柄が7a=7bとなった場合には、上述したようにリーチ状態となって、低速変動等の変化作動を生ずる。従って、「☆,☆,X」の場合にもリーチ状態となる。尚、このリーチ作動は、図4,5のフローチャートでは省略している。」、
(4-5)「【0031】次に、外れルーチン作動につき説明する。
【0032】まず、各表示器7a,7b,7cに対応する三つの外れ図柄乱数を用いて、前記表示器7a,7b,7cの順で、13種の図柄から順次選択する。尚、各図柄が揃った場合には、表示器7cの図柄を1コマ移動させ、外れ図柄を確定し、一旦記憶保持する。
【0033】次に、当たり図柄ルーチンと同様に、更新図柄xである「☆」を表示して変化させるかどうかを決める。そして、「☆」を表示しない場合には、上述の確定外れ図柄を表示器7a,7b,7cの順で停止して表示する。一方、「☆」を表示する場合には、上述した6種類の配置例からいずれかを選定する。そして、既に決定された外れ図柄のうち、上記で選定された位置を、「☆」に置き換えて、表示器7a,7b,7cの順序で表示する。そして、各図柄が停止、または停止に近い緩速度で表示されてから、更新図柄xである「☆」が表示された表示器のみを変化させ、既に定められた外れ図柄を表示させる。
【0034】このように、表示器7a,7b,7cを「☆」で一旦表示し、これを変化させるようにしたものであるから、遊技者は、「☆」が二つ又は、単一の場合で他の図柄が揃っている場合には、表示器7a,7b,7cの表示が確定するまで、更新図柄xの変化による大当りの発生を期待することとなる。
【0035】前記更新図柄xの変化作動は、次のイ?ハのような手段がある。
【0036】イ 一旦図柄変動を再始動させて、図柄が所定順序で高速変動した後に所定図柄で停止させる。
【0037】ロ 表示器7a,7b,7cの中心線を軸として反転させる。すなわち、あたかもトランプをひっくり返したような変化を、ドットの表示制御により視覚的に生じさせる。この場合には反転に従って所定の図柄が徐々に見えてくることとなる。
【0038】ハ 紙を下端又は上端からめくるような変化をドットの表示制御により視覚的に生じさせる。この場合にも、所定の図柄が徐々に見えてくることとなる。」、
(4-6)「【0041】さらにまた、上述の構成では、各表示器7a,7b,7cに更新図柄xとして、「☆」を一個図柄として含まれるようにしているが、表示器7a,7b,7cのうち、いずれかの表示器のみに、更新図柄xを包含させるようにしても良い。・・・」。

(4-7)また、本発明のパチンコ機1の機枠2を示す正面図である【図1】及び本発明の図柄組合わせ表示装置6の正面図である【図2】並びに中央制御装置CPUを示すブロック回路図である【図3】に示された事項を併せると、図面には、「一個の図柄を視認可能に各々に表示する左図柄表示器7a,右図柄表示器7b,中図柄表示器7c」の技術事項が示されている。

したがって、上記【0024】の「更新図柄xである「☆」を表示して変化制御するかどうかを選択する。」の記載、【0033】の「当たり図柄ルーチンと同様に、更新図柄xである「☆」を表示して変化させるかどうかを決める。」の記載に基づき、「更新図柄xである「☆」を表示」する場合について、上記(4-1)乃至(4-7)の技術事項をまとめると、
引用刊行物には、
「 始動口14から遊技球が流入すると、図柄組合わせ表示装置6が駆動し、所定の組合わせにより大入賞口を開放させる図柄組合わせ表示装置6を備えたパチンコ機1において、
前記図柄組合わせ表示装置6が駆動すると、「0」?「9」、「¥」、「$」及び「☆」の13種の表示図柄がある左図柄表示器7a,右図柄表示器7b,中図柄表示器7cは図柄変動を開始し、約5秒程度経過すると、左図柄表示器7a,右図柄表示器7b,中図柄表示器7cの順番に図柄が変動停止し、このとき左図柄表示器7aと右図柄表示器7bの図柄が一致した場合にはリーチ状態となり、中図柄表示器7cが低速変動するものであり、
前記始動口14への入賞に伴って、当たり特別乱数から値を抽出して、この値が記憶され、左、右、中図柄表示器7a,7b,7cが変動開始すると、上述の記憶内容を調べ、
当たりである場合には、当たりルーチンが実行され、外れの場合には、外れルーチンが実行され、
この当たりルーチン作動は、更新図柄xである「☆」の発生位置の選定を、「☆,X,X」、「☆,☆,X」、「☆,X,☆」、「X,☆,X」、「X,☆,☆」、「X,X,☆」である6種類の表示組合わせの抽選により行ない、既に決定された当たり組合わせのうち、選定された位置を、「☆」に置き換えて、左、右、中図柄表示器7a,7b,7cの順序で表示して、各図柄が停止表示されてから、「☆」が表示された左、右、中図柄表示器7a,7b,7cのみを左、右、中図柄表示器7a,7b,7cの順で「☆」を変化させて、既に定められた当たり図柄を表示させ、
外れルーチン作動は、上述した6種類の「☆」の配置例からいずれかを選定し、既に決定された外れ図柄のうち、選定された位置を、「☆」に置き換えて、左、右、中図柄表示器7a,7b,7cの順序で表示して、各図柄が停止表示されてから、「☆」が表示された表示器のみを変化させ、既に定められた外れ図柄を表示させるものであり、
前記更新図柄xである「☆」の変化作動は、一旦表示した「☆」を変化させて、所定の図柄で停止させる手段があり、
遊技者は、「☆」が二つ又は、単一の場合で他の図柄が揃っている場合には、左、右、中図柄表示器7a,7b,7cの表示が確定するまで、更新図柄xの変化による大当りの発生を期待することとなり、
また、左、右、中図柄表示器7a,7b,7cのうち、いずれかの表示器のみに、更新図柄xを包含させるようにしても良い、パチンコ機1。」の発明(以下「引用発明」という。)が、記載されていると認められる。

5,本願発明との比較・検討
本願発明と引用発明とを比較する。
(5-1)引用発明の「始動口14」は、本願発明の「始動口」に相当し、以下同様に「遊技球が流入する」は「入賞」に、「13種の表示図柄」は「複数の識別情報」に、「図柄変動」は「可変表示」に、「図柄組合わせ表示装置6」は「可変表示装置」に、「所定の組合わせにより」は「可変表示の停止態様が大当たり態様になる」に、「大入賞口を開放させる」は「大当たり状態を発生可能」に、「パチンコ機1」は「遊技機」に、それぞれ相当する。
(5-2)引用発明の「更新図柄xである「☆」の変化作動は、一旦表示した「☆」を変化させて、所定の図柄で停止させる手段があり、」の技術事項について検討する。
引用発明の、「更新図柄xである「☆」の発生位置を、「X,☆,X」に選定」する旨の記載、及び「左、右、中図柄表示器7a,7b,7cのうち、いずれかの表示器のみに、更新図柄xを包含させるようにしても良い、」との記載からは、「中図柄表示器7cのみに「☆」を表示」する技術事項が把握されるから、
引用発明には「左、右、中図柄図柄表示器7a,7b,7cの順番に図柄が変動停止し、このとき左図柄表示器7aと右図柄表示器7bの図柄が一致した場合にはリーチ状態となり、最後に停止する中図柄表示器7cに図柄「☆」が一旦停止表示されてから、更新図柄xである「☆」が表示された中図柄表示器7cの図柄を所定の図柄に変化させる手段があり、」の技術事項(以下、「再始動技術事項」という。)が記載されていると認められる。
そこで、当該再始動技術事項について検討すると、
(5-2-1)「リーチ状態となり」は、本願発明の「リーチが発生して」に相当し、以下同様に、「中図柄表示器7cの図柄」は「最終停止識別情報」に、「停止表示されてから」は停止の以前には変動していることは明らかであるから「可変表示を一旦停止した後」に、「所定の図柄に変化させる手段」は停止表示されている「☆」を所定の図柄に変化させるのであるから「再可変表示を行う再スタート手段」に、それぞれ相当するから、引用発明には本願発明の「リーチが発生して、最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後、該最終停止識別情報の再可変表示を行う再スタート手段を備え、」に相当する技術事項が記載されていると認められる。
また、前記再始動技術事項における「更新図柄xである「☆」の表示態様」について検討すると、
(5-2-2)「☆」は、最後に停止する中図柄表示器7cが一旦停止した時点から所定の図柄に変化するまでの間に継続して表示され、所定の図柄に変化した時点で表示されなくなるものであることは明らかであるから、「更新図柄xである「☆」の表示態様」と本願発明の「再可変表示が行われる場合は最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後から再可変表示が行われるまでの期間である有効時間にあることを報知する再スタート有効状態報知手段」とを比較すると、「再可変表示が行われる場合は最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後から再可変表示が行われるまでの期間に表示する再スタート表示手段」において一致する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

一致点
始動口への入賞に基づき複数の識別情報を可変表示する可変表示装置を備え、この可変表示の停止態様が大当たり態様になることに基づき大当たり状態を発生可能な遊技機において、
リーチが発生して、最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後、該最終停止識別情報の再可変表示を行う再スタート手段と、
前記再可変表示が行われる場合は前記最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後から再可変表示が行われるまでの期間に表示する再スタート表示手段と、
を備えた、遊技機。

相違点
再可変表示が行われるまでの期間に表示する再スタート表示手段が、本願発明では有効時間にあることを報知する再スタート有効状態報知手段であるのに対し、引用発明では当該期間に表示する再スタート表示手段である点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用発明の再スタート表示手段は、上記(5-2-2)に記載したように、最終停止識別情報の可変表示を一旦停止した後から再可変表示が行われるまでの期間に表示するものであるから、表示期間において本願発明の再スタート有効状態報知手段と比較して差異は認められない。また、遊技機の表示手段の作動により遊技状態の何らかの報知を行うことは遊技機の分野における技術常識であるから、表示期間において差異が認められない引用発明の再スタート表示手段を報知手段とし、上記相違点に係る「有効時間にあることを報知する再スタート有効状態報知手段」とすることは当業者が容易になし得ることである。

また、効果においても、引用発明は「遊技者は、「☆」が単一の場合で他の図柄が揃っている場合には、左、右、中図柄表示器7a,7b,7cの表示が確定するまで、更新図柄xの変化による大当りの発生を期待することとな」るものであるから、本願発明が格別の効果を奏するものとは認められない。

6,むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2008-07-10 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願平7-157960
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之澤田 真治小林 英司  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 後藤 政喜  

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