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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1184192
審判番号 不服2005-8114  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-02 
確定日 2008-09-10 
事件の表示 平成11年特許願第518281号「皮膚の刺痛を抑えるための組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月25日国際公開、WO99/13819、平成13年 4月24日国内公表、特表2001-505590〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本願は、平成10年9月21日(パリ条約による優先権主張:平成9年9月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年1月21日付で拒絶査定がされ、これに対し、平成17年5月2日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年6月1日付けで手続補正がされたものである。

2.平成17年6月1日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年6月1日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び8を、
「【請求項1】アミノ酪酸、グルタミン、グリシン及びこれらの誘導体から成る群から選ばれるアミノ酸又はそれらの混合物を抗刺痛的に有効な量で含む、刺痛を抑制又は予防するための局所化粧又は薬理組成物。
【請求項8】刺痛因子も含んで成る、請求項1?7のいずれか1項記載の組成物
から
「【請求項1】アミノ酪酸、グルタミン、グリシン及びこれらの誘導体から成る群から選ばれるアミノ酸又はそれらの混合物を抗刺痛的に有効な量で含む、レチノイド、ビタミンC、ヒドロキシ酸、及びプロピレングリコールから成る群から選ばれる少なくとも1種の刺痛因子によって誘導される刺痛を抑制又は予防するための局所化粧又は薬理組成物。
【請求項8】レチノイド、ビタミンC、ヒドロキシ酸、及びプロピレングリコールから成る群から選ばれる少なくとも1種の刺痛因子も含んで成る、請求項1?7のいずれか1項記載の組成物。」
とする補正を含むものである。

上記の請求項8において請求項1を引用する発明についての補正は、「刺痛」を「レチノイド、ビタミンC、ヒドロキシ酸、及びプロピレングリコールから成る群から選ばれる少なくとも1種の刺痛因子によって誘導される刺痛」に、「刺痛因子」をレチノイド、ビタミンC、ヒドロキシ酸、及びプロピレングリコールから成る群から選ばれる少なくとも1種の刺痛因子」にそれぞれ限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項8に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)独立特許要件について
原審の拒絶理由通知において引用された特開平7-242530号公報(以下、「引用例1」という。)には、「ジイソプロピルアミンジクロロアセテート及び/又はγ-アミノ酪酸と、炭素数が3から18であるα-ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一種とを含有することを特徴とする皮膚化粧料。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載され、α-ヒドロキシオクタン酸とγ-アミノ酪酸を含むローション(実施例2)、α-ヒドロキシミリスチン酸とγ-アミノ酪酸をスキンクリーム(実施例7)が具体的に記載されている。
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明のγ-アミノ酪酸、α-ヒドロキシカルボン酸はそれぞれアミノ酪酸及びヒドロキシ酸の1種であるから、両者は「アミノ酪酸およびヒドロキシ酸を含む局所化粧組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
A.本願発明ではアミノ酪酸が抗刺痛的に有効な量で含まれるのに対し、引用発明にはこの特定がない点、
B.本願発明ではヒドロキシ酸が刺痛因子であるとされているのに対し、引用発明にはこの記載がない点
C.本願発明の組成物は刺痛を抑制又は予防するためと特定されているが、引用発明にはこの記載がない点

・相違点Aについて
引用例1(段落【0011】)にはγ-アミノ酪酸の化粧料中への配合量は乾燥固形物量で総量を基準として好ましくは0.001?3wt%と記載されている。一方本願明細書においてアミノ酪酸の使用濃度は、一般に約0.1?20%の範囲、好ましくは約0.5?10%、そしてより好ましくは0.05?3%の範囲と記載され、この範囲が「抗刺痛的に有効な量」と解されるが、両者の使用濃度範囲は重複しているのであるから、この点は実質的な相違点ということはできない。

・相違点Bについて
本願明細書の記載によれば「刺痛因子」とは、「刺痛歴を有する個体のグループに試験したときに陽性反応を誘導するもの」と定義されており、ヒドロキシ酸はこの性質を有する化合物の1つとして挙げられている。そうすると、ヒドロキシ酸を含有していれば刺痛因子を含むことになるのであるから、その点の明記の有無により化粧組成物に何らかの相違が生じるものではない。したがって、この点も実質的な相違点ではない。

・相違点Cについて
引用発明も本願発明と同様に刺痛因子であるヒドロキシ酸と抗刺痛的に有効な量のアミノ酪酸が含まれるのであるから、その相互作用についての記載の有無に関わらず同じ「刺痛を抑制又は予防」の作用を潜在的に有している点で本願発明の化粧組成物と区別することはできない。そして、相違点Cが記載されていても、それは単にアミノ酪酸の性質を記載したにすぎず化粧組成物の使用者や使用時期が特定されるものでもない。したがって、上記相違点にしても実質的な相違点ということはできない。

そうすると本願発明は引用発明の化粧組成物となんら異なるところはないから、引用例1に記載された発明ということができ、特許法第29条第1項3号の規定に該当する。
請求人は、本願発明の組成物は用途が異なり、適用時期などにおいて区別可能と主張するが、上記のとおり、請求項8の組成物は化粧組成物としての用途、適用時期に何ら制限はなく引用発明の化粧組成物と区別することはできない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年6月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項8に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項8】刺痛因子も含んで成る、請求項1?7のいずれか1項記載の組成物。」

そして、請求項8のうち請求項1(アミノ酪酸、グルタミン、グリシン及びこれらの誘導体から成る群から選ばれるアミノ酸又はそれらの混合物を抗刺痛的に有効な量で含む、刺痛を抑制又は予防するための局所化粧又は薬理組成物。)を引用した発明は以下のとおりのものである。

「アミノ酪酸、グルタミン、グリシン及びこれらの誘導体から成る群から選ばれるアミノ酸又はそれらの混合物を抗刺痛的に有効な量で含み、刺痛因子も含んで成る刺痛を抑制又は予防するための局所化粧又は薬理組成物。」(以下、これを本願発明という。)

(2)判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明を包含するものである。そうすると、本願発明も、前記「2.(2)」に記載したと同様の理由により、引用例1に記載された発明である。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項3号に該当し特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-09 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-04-28 
出願番号 特願平11-518281
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 悟天野 貴子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 星野 紹英
弘實 謙二
発明の名称 皮膚の刺痛を抑えるための組成物及び方法  
代理人 新井 栄一  
代理人 平木 祐輔  
代理人 石井 貞次  
代理人 藤田 節  

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