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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1184693
審判番号 不服2006-21852  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-28 
確定日 2008-09-16 
事件の表示 特願2000- 62134「画像認識装置及び画像形成装置並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月23日出願公開、特開2001- 78030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成12年3月7日(優先権主張平成11年7月2日)の出願であって、平成18年8月22日に拒絶査定がされ、これに対して同年9月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月30日付けで手続き補正がなされたものである。

第2 平成18年10月30日付けの手続補正の却下について
1 補正却下の決定の結論
平成18年10月30日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1) 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。
「【請求項1】 画像認識装置の最終出力である認識結果を同一画像データに対して変動させるためのゆらぎ情報を作成するゆらぎ発生部と、
前記ゆらぎ発生部で発生したゆらぎ情報を加味して、与えられた画像データに対して画像認識処理を行う画像認識部と、
を備えたことを特徴とする画像認識装置。」
(この記載事項により特定される発明を以下、「本願補正発明」という。)

本件補正は、平成17年12月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「認識結果を変動させるためのゆらぎ情報を作成するゆらぎ発生部」を、「画像認識装置の最終出力である認識結果を同一画像データに対して変動させるためのゆらぎ情報を作成するゆらぎ発生部」と限定する補正であり、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平1-181178号公報(以下、「引用例1」という。)には次の事項が図面とともに開示されている。

ア 「〔実施例〕
次に、本発明について図面を参照して説明する。
第1図は本発明の一実施例の構成図である。認識対象図形1は、2値データ変換部2により光学・電気系信号変換が行われ、電気的な2値信号として2値データ記憶部3に記憶される。この記憶データは言ってみれば静止画像となるパターンデータである。次に、この画像は縦横に細分化された各微小部分(画素)の値が読取られ、パターン比較部6において識別用辞書5の中の全パターンと比較される。識別用辞書5は従来のものと変らない。
本発明では、このパターンマッチング処理に際して比較する微小部分の位置はすべてでは無く、乱数発生器4により発生される乱数にもとづいてランダムに指定される。パターン比較部6はランダムに指定された位置の微小部分の2値データと識別用辞書5の中のパターンにおける対応箇所の2値データとの比較を行い、一致、不一致を判定する。
パターンマッチング集計部7はパターン比較部6の比較結果を集計して識別用辞書5の中のパターンの中で一致の割合が最も大きく、しかもこの割合があらかじめ定められたしきい値を越えた時識別を完了して識別結果を出力するとともに、乱数発生およびパターン比較を停止させる。」(公報第2頁右上欄第1行?左下欄第8行)

前掲アの記載によると、引用例1には、
「パターン比較部において、乱数発生器により発生される乱数にもとづいてランダムに指定された識別対象図形の画素データと、識別用辞書の中のパターンにおける対応箇所の画素データとの比較を行い、パターンマッチング集計部は前記パターン比較部の比較結果を集計して前記識別用辞書の中のパターンの中で一致の割合が最も大きく、しかもこの割合があらかじめ定められたしきい値を越えた時識別を完了して識別結果を出力する画像認識装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明は、「パターン比較部」において比較する画素を、ランダムに指定するために「乱数発生器」により「乱数」を発生させるものであり、発生された「乱数」の値如何によって、「画像認識装置の最終出力である認識結果」を変動させ得ることは、自明のことであるから、引用発明と本願補正発明はともに、「画像認識装置の最終出力である認識結果を同一画像データに対して変動させるための手段」を有するという点で共通する。
また、引用発明の「パターン比較部」、「識別辞書」及び「パターンマッチング集計部」は、互いに協働して識別対象図形の識別結果を出力するものであるから、本願補正発明の「与えられた画像データに対して画像認識処理を行う画像処理部」に相当するといえる。

以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

【一致点】
「画像認識装置の最終出力である認識結果を同一画像データに対して変動させるための手段と、
与えられた画像データに対して画像認識処理を行う画像認識部と、
を備えたことを特徴とする画像認識装置。」

【相違点】
「画像認識装置の最終出力である認識結果を同一画像データに対して変動させるための手段」として、本願補正発明は、「ゆらぎ情報を作成するゆらぎ発生部」を有し、「ゆらぎ発生部」で発生した「ゆらぎ情報」を加味して、画像認識処理を行うのに対して、引用発明は、「乱数発生器」を有し、「乱数発生器」で発生した「乱数」に基づいて画像データの画素をランダム指定して、画像認識処理を行う点。

(4) 当審の判断
相違点について
「乱数」に基づいて画像データの画素をランダム指定することと、「ゆらぎ情報」を加味することは、ともに「同一画像データ」に対して変動を加えるという点で、均等の機能を有することといえ、これらを置き換えることは既知の均等物の置換に他ならないから、引用発明においても、「乱数」に基づいて画像データの画素をランダム指定する代わりに、「ゆらぎ情報」を加味して、画像認識処理を行うよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。
さらに、本願補正発明の奏する効果を検討してみても、引用例1に記載された発明から想定される範囲を超える格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 平成18年10月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年12月19日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項から特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 認識結果を変動させるためのゆらぎ情報を作成するゆらぎ発生部と、
前記ゆらぎ発生部で発生したゆらぎ情報を加味して与えられた画像データに対して画像認識処理を行う画像認識部とを備えたことを特徴とする画像認識装置。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「認識結果を変動させるためのゆらぎ情報を作成するゆらぎ発生部」を、「画像認識装置の最終出力である認識結果を同一画像データに対して変動させるためのゆらぎ情報を作成するゆらぎ発生部」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2」で判断したとおり、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-11 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-08-01 
出願番号 特願2000-62134(P2000-62134)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金田 孝之  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 伊藤 隆夫
西山 昇
発明の名称 画像認識装置及び画像形成装置並びに記録媒体  
代理人 松井 伸一  

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