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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1185495
審判番号 不服2006-2728  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-15 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 平成11年特許願第320762号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月22日出願公開、特開2001-137424〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年11月11日に出願されたものであって、平成18年1月12日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年2月15日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月14日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年3月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は
「【請求項1】
遊技中に様々な効果音を出音するスピーカと、乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段とを備え、この入賞態様決定手段により決定された入賞態様と遊技者の停止ボタンの操作とに応じてリールの回転が制御されるスロットマシンにおいて、
前記スピーカをスロットマシン筐体の左右に複数設け、これら複数のスピーカによってステレオ音を出力し、
左の前記スピーカから出力される音量と、右の前記スピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段と、
この出音制御手段により左右の前記スピーカから出力される各音の干渉点が遊技者の停止ボタンの操作を契機にずらされて行くパターンに基づいて、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に段階的に報知する報知手段と
を備えたことを特徴とするスロットマシン。」
と補正された。

そして、本件補正前の特許請求の範囲は、平成17年10月14日付け手続補正書に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
遊技中に様々な効果音を出音するスピーカを備えたスロットマシンにおいて、
前記スピーカをスロットマシン筐体の左右に複数設け、これら複数のスピーカによってステレオ音を出力し、
左の前記スピーカから出力される音量と、右の前記スピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段を備えたことを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】
乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段と、前記出音制御手段により左右の前記スピーカから出力される各音の干渉点をずらして行くパターンに基づいて、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に報知する報知手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のスロットマシン。
【請求項3】
前記報知手段は、遊技者の遊技操作に対応して前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に報知することを特徴とする請求項2に記載のスロットマシン。
【請求項4】
前記報知手段は、遊技者の遊技操作に応じて段階的に前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に報知することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のスロットマシン。」
すなわち、本件補正は、
補正前の請求項2を限定的に減縮して請求項1に繰り上げるとともに、補正前の請求項1、3及び4を削除するものであるので、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号及び第2号の請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)検討する。
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技中に様々な効果音を出音するスピーカと、乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段とを備え、この入賞態様決定手段により決定された入賞態様と遊技者の停止ボタンの操作とに応じてリールの回転が制御されるスロットマシンにおいて、
前記スピーカをスロットマシン筐体の左右に複数設け、これら複数のスピーカによってステレオ音を出力し、
左の前記スピーカから出力される音量と、右の前記スピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段と、
この出音制御手段により左右の前記スピーカから出力される各音の干渉点が遊技者の停止ボタンの操作を契機にずらされて行くパターンに基づいて、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に段階的に報知する報知手段と
を備えたことを特徴とするスロットマシン。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-305128号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

【0004】この内部当りシステムは、スロットマシン内部で自動的に抽選を行い、抽選の結果当選した場合には、遊技者のストップボタンを押すタイミングにかかわらず、一定範囲内で図柄が入賞配列となるようドラムを停止制御する・・・
【0005】具体的には、スロットマシン内部に備えられた内部当り抽選部によって、スタートレバーが押下された時点で、毎回自動的に抽選が行われて当選,不当選が決定される。そして、当選した場合には、以後所定量のメダルが払い出されるまでの間は、ゲームを続ける限り、各ドラムの特定の図柄(例えば「7」,「BAR」等)が、一定の範囲内で遊技者のストップボタンを押すタイミングにかかわらず一列に配列されて停止するようドラムが制御される。
【0006】ここで、内部当り抽選部で抽選される内部当りには、通常、大当り(大ボーナス,BB)及び中当り(中ボーナス,RB)等と呼ばれる二種類以上の異なる種類の当選がある。例えば、大当りに当選した場合には、以後所定量のメダルが払い出されるまで、大当り用の特定の図柄が配列されるように(例えば「7,7,7」)ドラムが制御され・・・
【0007】ただし、このような内部当りにおけるドラムの停止制御は一定範囲内に限られるもので、例えば、大当り当選の場合に、遊技者のストップボタンを押すタイミングが「7」の図柄から余りにずれている場合には、「7」でドラムを停止制御することはできない。
【0040】8はスピーカで、スロットマシン本体1の前面に設けられており、ドラムの図柄入賞時には、このスピーカ8から祝福のためのメロディーを流し、演出効果を高める。
【0107】一方、スピーカ40bから発せられる音による内部当りの報知としては、ランプの場合と同様に、大当り,中当りの内部当りの種類に応じて、異なる音を発するようにしてもよく、また、内部当りの種類に応じて、それぞれ異なる複数のスピーカが音を発するようにしてもよく、さらに、大当りと中当りの場合で、スピーカから音を発する時期が異なるように設定するようにしてもよい。
【0126】まず、図8を参照して、本実施形態にかかるスロットマシンの内部当りの報知を行う制御部10について説明する。同図に示すように、本実施形態の制御系も第一?第三実施形態のものとほぼ同様の構成となっており、制御部10は、内部当り抽選部11及び内部当り報知制御部12を備えている。
【0127】内部当り抽選部11は、図8に示すように、スタートレバー4からの信号によって、スタートレバー4の押下と同時に内部当りの抽選を行うようになっており、上述した第二,第三実施形態と同様、この内部当り抽選部11において、大当り及び中当りの二種類の内部当りが抽選されるようになっている。
【0129】そして、内部当り報知制御部12は、あらかじめ内部当りの種類に応じた異なる報知を行うように設定された内部当り報知部50を制御し、内部当りの種類に応じた報知を行わせる。すなわち、本実施形態における内部当り報知部50は、第三実施形態と同様に、内部当りを報知するランプ50a及びスピーカ50bを備えている。
【0131】すなわち、この内部当り報知制御部12は、例えばスタートレバー4の押下後、あるいは三つのストップボタン5a,5b,5cのいずれかが押された後に内部当り報知部50に報知させるよう、内部当りの報知時期をあらかじめ設定でき・・・
【0139】そして、その判別の結果、決定された報知時期に内部当り報知部50のランプ50aが点灯されるとともに、スピーカ50bから音が発せられ、遊技者に内部当りしたことが報知される(ステップ14)。このとき、内部当りの報知は、内部当りが大当りの場合には、予め設定された所定の大当りを示すランプ50aの点灯が行われるとともに、大当りを示す音がスピーカ50bから発せられ、これによって遊技者には大当りとなったこと知ることができる。
【0140】一方、内部当りが中当りの場合は、予め設定された所定の中当りを示すランプ50aの点灯が行われ、同時に、中当りを示す音がスピーカ50bから発せられ、遊技者に中当りとなったことを知ることができる。

以上の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「スロットマシンの内部当りの報知を行う制御部10は、内部当り抽選部11及び内部当り報知制御部12を備え、内部当り抽選部11は、スタートレバー4の押下と同時に内部当りの抽選が行われて当選,不当選が決定され、内部当り抽選部で抽選される内部当りには、大当り及び中当り等と呼ばれる二種類以上の異なる種類の当選があり、当選した場合には、以後所定量のメダルが払い出されるまでの間は、ゲームを続ける限り、各ドラムの特定の図柄が、一定の範囲内で遊技者のストップボタンを押すタイミングにかかわらず一列に配列されて停止するようドラムが制御されるスロットマシンにおいて、
スロットマシン本体1の前面にスピーカを設け、内部当り報知制御部12は、あらかじめ内部当りの種類に応じた異なる報知を行うように設定された内部当り報知部50を制御し、内部当りの種類に応じた報知を行なわせるものであり、内部当りの種類に応じて、それぞれ異なる複数のスピーカが音を発するようにしたスロットマシン。」

3.補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「ストップボタン」は、補正発明の「停止ボタン」に相当し、以下同様に、
「ドラム」は「リール」に、「スロットマシン本体1」は「スロットマシン筐体」に、それぞれ相当し、
さらに、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.摘記した引用文献1の【0040】あるいは【0107】の記載より、引用発明における「スピーカ」が遊技中に様々な効果音を出音することは明らかである。

b.引用発明において「内部当りの抽選」として乱数抽選を行うことはスロットマシンの分野において技術常識であり、また、引用発明における「内部当り抽選部で抽選される内部当り」には「異なる種類の当選」があることから、これら「異なる種類の当選」は、補正発明における「乱数抽選によって」決定される「遊技の入賞態様」に相当し、更に、引用発明において「内部当たり抽選部11」において内部当りの抽選を行い当選、不当選を決定するためには、補正発明における「乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段」に相当する構成を備えていなければならないことは明らかである。

c.引用発明における「ドラム」(補正発明の「リール」に相当)の回転は、摘記した【0004】乃至【0007】の記載から、内部当り抽選部11により決定された当選、不当選及び遊技者のストップボタンを押すタイミングに応じて制御されていることが分かるので、引用発明は補正発明の「入賞態様決定手段により決定された入賞態様と遊技者の停止ボタンの操作とに応じてリールの回転が制御される」に相当する機能を備えている。

d.引用発明において「内部当り報知制御部12は、あらかじめ内部当りの種類に応じた異なる報知を行うように設定された内部当り報知部50を制御し、内部当りの種類に応じた報知を行わせる」のであるから、「内部当り報知制御部12」及び「内部当り報知部50」は「報知手段」を構成しているといえる。また、引用発明において「内部当りの種類」(補正発明の「入賞態様決定手段で決定された入賞態様」に相当)に応じて、「それぞれ異なる複数のスピーカが音を発する」とは、「複数のスピーカのうちのどのスピーカが音を発するか」に基づいて「内部当りの種類」を遊技者に報知すると言い換えることができるため、引用発明における「内部当り報知制御部12は、あらかじめ内部当りの種類に応じた異なる報知を行うように設定された内部当り報知部50を制御し、内部当りの種類に応じた報知を行ない、内部当りの種類に応じて、それぞれ異なる複数のスピーカが音を発するようにした」ことと、補正発明における「出音制御手段により左右のスピーカから出力される各音の干渉点が遊技者の停止ボタンの操作を契機にずらされて行くパターンに基づいて、入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に段階的に報知する」ことは、「複数のスピーカから出力される音の発し方に基づいて、入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に報知する報知手段を備えた」という点で共通する。

したがって、補正発明と引用発明とは、
「遊技中に様々な効果音を出音するスピーカと、乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段とを備え、この入賞態様決定手段により決定された入賞態様と遊技者の停止ボタンの操作とに応じてリールの回転が制御されるスロットマシンにおいて、
前記スピーカをスロットマシン筐体に複数設け、これら複数のスピーカから出力される音の発し方に基づいて、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に報知する報知手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1>
補正発明は、複数のスピーカをスロットマシン筐体の左右に設けるのに対し、引用発明は複数の「スピーカ」を「スロットマシン本体1の前面」に設けるものの、その位置が左右か否か明らかでなく、ステレオ音を出力するか否かについても明示的な記載がない点。

<相違点2>
補正発明が「左の前記スピーカから出力される音量と、右の前記スピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段」を備えているのに対し、引用発明は、そのような手段を備えていない点。

<相違点3>
「報知手段」に関し、補正発明では、「出音制御手段により左右のスピーカから出力される各音の干渉点が遊技者の停止ボタンの操作を契機にずらされて行くパターンに基づいて、入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に段階的に報知する」ものであるのに対し、引用発明では、「それぞれ異なる複数のスピーカが音を発する」ことに基づいて入賞態様を報知するものであり、また、報知が段階的に行われるとはいえない点。

4.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点の判断
<相違点1、2>について
遊技機において、筐体の左右にスピーカを設けてステレオ音を出力すると共に、左のスピーカから出力される音量と、右のスピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段を備えることは、例えば特開平8-141167号公報(段落【0033】、【0039】及び【0043】)、特開平8-131613号公報公報(段落【0032】、【0038】及び【0042】)に記載されているように従来周知の技術である。引用発明において、複数のスピーカを設けるにあたり、当該周知技術を採用することに格別の困難性は見い出すことはできないので、上記相違点1,2に係る補正発明の構成は、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとって想到容易である。

<相違点3>について
上記「<相違点1、2>について」で示したとおり、出音制御手段により左右のスピーカから出力される各音の干渉点をずらして行く放音パターンは、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術A」という。)であり、引用発明及び周知技術Aともに、当り報知の演出を効果音で行うものである点で共通する。また、摘記した引用文献1の【0131】には「内部当り報知制御部12は、例えばスタートレバー4の押下後、あるいは三つのストップボタン5a,5b,5cのいずれかが押された後に内部当り報知部50に報知させるよう、内部当りの報知時期をあらかじめ設定でき」と、【0139】には「決定された報知時期に、・・大当りを示す音がスピーカ50bから発せられ、これによって遊技者には大当りとなったこと知ることができる」と、【0140】には「中当りを示す音がスピーカ50bから発せられ、遊技者に中当りとなったことを知ることができる」と記載され、引用発明とは放音態様は異なるものの、ストップボタン(補正発明の「停止ボタン」に相当)の操作を契機とする放音の時期によって、内部当りの種類(補正発明の「入賞態様決定手段で決定された入賞態様」に相当)を遊技者に報知する態様が記載されている。更に、スロットマシンにおいて、停止ボタンの操作を契機に、段階的に報知を行う点は、例えば、パチスロ必勝ガイドMAX1998 12月号,日本,株式会社白夜書房,1998年12月1日,第1巻第1号(通巻第1号),第123頁,ボルキャニックV25の記載、パチスロ攻略マガジン1988 12月号,日本,株式会社双葉社,1998年12月1日,第7巻第14号通巻第83号,第71頁,ボルキャニックV25の記載に示すとおり従来周知の技術(以下、「周知技術B」という。)である。これらの事項を総合すると、引用発明の「それぞれ異なる複数のスピーカが音を発する」ことに換えて周知技術Aを採用するとともに、周知技術Bを採用して、相違点3に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)補正発明の独立特許要件の判断
以上述べたとおり、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これらの構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は、引用発明、周知技術A、B及び引用文献1に記載された放音の時期によって、内部当りの種類を遊技者に報知する構成に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反しており、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年10月14日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定されるものであり、認定にあたり、請求項2は、請求項1を引用した上で構成を付加した記載となっているため、本願発明を独立形式に書き改めると、以下の構成を有するものと認められる。
「遊技中に様々な効果音を出音するスピーカと、乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段とを備えたスロットマシンにおいて、
前記スピーカをスロットマシン筐体の左右に複数設け、これら複数のスピーカによってステレオ音を出力し、
左の前記スピーカから出力される音量と、右の前記スピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段と、
前記出音制御手段により左右の前記スピーカから出力される各音の干渉点をずらして行くパターンに基づいて、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に報知する報知手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2[理由]2」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
「第2[理由]3」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明は、
「遊技中に様々な効果音を出音するスピーカと、乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段とを備えたスロットマシンにおいて、
前記スピーカをスロットマシン筐体に複数設け、これら複数のスピーカから出力される音の発し方に基づいて、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に報知する報知手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1’>
本願発明は、複数のスピーカをスロットマシン筐体の左右に設けるのに対し、引用発明は複数の「スピーカ」を「スロットマシン本体1の前面」に設けるものの、その位置が左右か否か明らかでなく、ステレオ音を出力するか否かについても明示的な記載がない点。

<相違点2’>
本願発明が「左の前記スピーカから出力される音量と、右の前記スピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段」を備えているのに対し、引用発明は、そのような手段を備えていない点。

<相違点3’>
「報知手段」に関し、本願発明では、「出音制御手段により左右のスピーカから出力される各音の干渉点をずらして行くパターンに基づいて、入賞態様決定手段で決定された入賞態様を遊技者に」報知するものであるのに対し、引用発明では、「それぞれ異なる複数のスピーカが音を発する」ことに基づいて入賞態様を報知するものである点。

4.本願発明の進歩性の判断
<相違点1’、2’>について
遊技機において、筐体の左右にスピーカを設けてステレオ音を出力すると共に、左のスピーカから出力される音量と、右のスピーカから出力される音量とに変化を付けることにより、左右の各音の干渉点をずらして行く出音制御手段を備えることは、「第2[理由]4(1)」に示したとおり従来周知の技術である。引用発明において、複数のスピーカを設けるに当たり、当該周知技術を採用することに格別の困難性は見い出すことはできないので、上記相違点1’、2’に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たというべきである。

<相違点3’>について
引用発明及び周知技術Aともに、当り報知の演出を効果音で行うものである点で共通するので、引用発明の「それぞれ異なる複数のスピーカが音を発する」ことに換えて周知技術Aを採用し、上記相違点3’に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されるべきものであり、本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-01 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-21 
出願番号 特願平11-320762
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
河本 明彦
発明の名称 スロットマシン  
代理人 峯岸 武司  

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