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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200519688 審決 特許
不服200524685 審決 特許
不服2005361 審決 特許
無効2007800236 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
管理番号 1185725
審判番号 不服2004-5747  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-23 
確定日 2008-10-08 
事件の表示 平成 7年特許願第516249号「核酸が媒介する電子伝達」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月15日国際公開、WO95/15971、平成 9年 6月30日国内公表、特表平 9-506510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年12月5日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1993年12月10日 米国)とする国際出願であって、その請求項1に係る発明は、平成19年11月15日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】電極に共有結合により付着された第一の1本鎖核酸、及び共有結合により付着された少なくとも1個の電子伝達成分を有する第二の1本鎖核酸を含んで成る標的核酸配列を検出するための組成物。」(以下、「本願発明」という。)

2.当審における拒絶の理由
これに対して、当審において平成19年5月14日付で通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(1)平成16年4月22日付手続補正の請求項1等に記載された事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書又は図面」という。)に記載されておらず、それに記載した事項の範囲内においてしたものでないから、平成6年改正前特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。
(2)本願発明の詳細な説明の記載は、請求項1等に関して特許法第36条第4項または第5項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3)本願請求項1の記載は、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。(なお、拒絶理由通知における「及び第5項」は「及び第6項」の誤記である。)
そして、上記拒絶理由通知に対して、本件請求人から提出された平成19年11月15日付手続補正により、補正前の請求項1?19のうち請求項11、13、17及び19を削除する補正のみがなされ、その他の請求項はそのまま維持されている。
3.当審の判断
(1)平成19年11月15日付手続補正が新規事項を含むか否かについて
(1-1)本願発明(請求項1の記載)
本願発明は、2種の1本鎖核酸を含む標的核酸配列を検出するための組成物であって、一方の1本鎖核酸は、共有結合により電極に付着され、他方の1本鎖核酸は、共有結合により少なくとも1個の電子伝達成分に付着されたものであり、これら2種の1本鎖核酸により標的核酸配列を検出するための組成物である。したがって、これら2種の核酸は、どのようなものでもよいわけでなく、それらが相俟って標的核酸の検出を可能とするものでなければならない。しかも、「電極」、「電子伝達成分」という記載からみて、その検出を電子の伝達により可能にするものでなければならない。しかしながら、請求項1には、そのような標的核酸の検出のための2種の核酸が、標的配列とどのような関係を有するものであるか、すなわち標的配列の存在により、2種の核酸の間でどのように電子の伝達が生じるものであるのかについては記載されていない。すなわち、本願発明は、どのような態様のものであろうと電子伝達が結果的に生じる組成物を意味し、核酸を介した電子伝達以外の態様により電子伝達を生じさせる組成物も包含するものである。
このことは、
(i)平成19年4月3日付で電話により、本件請求人に対して請求項1と本願明細書の記載の関係に関連して、本願発明に対応する論文等の提出を求めたところ、平成19年4月19日付で、Journal of Molecular Diagnostics(2001)Vol.3,No.2,p.74-84(以下、「文献1」という。)と、Journal of the American Chemical Society(2001)Vol.123,p.11155-11161(以下、「文献2」という。)とが提出されたこと、
(ii)上記文献を精査したところ、文献2は2つの1本鎖核酸を用いる態様のものではなく、また、文献1には2つの1本鎖核酸を用いる態様が記載されているものの、それらは標的配列に隣接してハイブリダイズすることにより、核酸を介する電子伝達を可能にして標的核酸を検出するものではなく、文献1の図1に記載された態様は、電極に付着され、電極を覆うオリゴフェニルエチニル鎖からなる‘分子電線’から突出する「第一の1本鎖核酸」に標的配列の一部がハイブリダイズすると、該標的配列のハイブリダイズしていない部分が分子電線側に配向され、その部分の標的配列に「第二の1本鎖核酸」の一部がハイブリダイズすると、該「第二の1本鎖核酸」のハイブリダイズしていない部分の電子供与体が複数付着させられた部分が分子電線と接触することにより、電子供与体から電子が電極に伝達され、それにより標的核酸の存在を検出するものであること、及び
(iii)このように文献1に記載された態様は、電子伝達成分(電子供与体)と電極の間の電子伝達は、オリゴフェニルエチニル鎖からなる分子電線を介して行われるものであり、核酸を介する電子伝達を利用するものではないが、請求人は、本願発明は、このような核酸を介在しない電子伝達系の使用を排除するものではないと主張していること、
からも明らかである。
(1-2)本願の当初明細書又は図面の記載
本願の当初明細書又は図面には、平成19年11月15日付手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された「電極に共有結合により付着された第一の1本鎖核酸、及び共有結合により付着された少なくとも1個の電子伝達成分を有する第二の1本鎖核酸を含んで成る標的核酸配列を検出するための組成物。」という記載そのものはない。
そこで、以下、請求項1に記載された事項が、本願の当初明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであるか否かについて検討する。
本願明細書の冒頭には、「発明の名称」に「核酸が媒介する電子伝達」、「発明の分野」に「本発明は、核酸を介しての電子伝達に関する。」と記載され、
(i)「一般に2重らせん核酸内の電子供与体と受容体半分(「受容体成分」の誤記と認められる。以下同様。)の間の電子伝達は、2重らせん構造内の電子供与体と受容体の間の配列内にヌクレオチド塩基対合が存在するのでない限り、測定できる速度では起こらない。電子伝達速度のこの相違が、プローブとしての用途のための本発明の有用性の基礎をなすものである。電子伝達成分が核酸のバックボーンに共有結合されている本発明の系においては、電子は、推定上、2本鎖核酸の積重ねられた塩基対のπ-軌道関数を介して走行する。電子伝達速度は、電子供与体-受容体の間の距離、反応の自由エネルギー(ΔG)、再編成エネルギー(λ)、介在媒質の寄与、供与体と受容体の配置と電子カップリング及び塩基間の水素結合を含め、さまざまな要因によって左右される。前記最後の項目は、A-T対がC-G対に比べ1つ少ない水素結合を含有していることから、実際の核酸配列に依存性を付与する。しかしながらこの配列依存性は、DNA塩基対マトリックス内の電子伝達速度とリボース-リン酸バックボーン、溶剤又はその他の電子トンネルを通しての速度の間には測定可能な差異が存在するという事実確認によって影が薄くなっている。この速度差は、少なくとも数ケタ分であると考えられ、積重ねられたヌクレオチド塩基を通しての場合は、その他の電子伝達経路に比べて4ケタ分も大きい可能性がある。従って、例えば遺伝子プローブ検定中の2重鎖核酸の存在は、ハイブリッド形成していないプローブについての速度と比較することによって決定できる。」(第15頁第9行?第16頁第5行)、
(ii)「本発明のもう1つの態様においては、1本鎖核酸中の標的配列は、互いに直接隣接している第1及び第2の標的ドメインを少なくとも含んでいる。第1の1本鎖核酸は第1の標的ドメインに対しハイブリッド形成し第2の1本鎖核酸は第2の標的ドメインに対してハイブリッド形成し、かくして第1及び第2の1本鎖核酸が互いに隣接するようになっている。結果として得られたこのハイブリダイゼーション錯体は、第1及び第2の核酸上で電子供与体成分と電子受容体成分の間で電子を伝達することができる。」(第11頁第3行?第10行)、
(iii)「一変形実施態様においては、電子伝達成分の1つは電極といったような固体支持体の形をしていてもよい。」(第31頁第16行?第17行)、
(iv)「類似の実施態様においては、前述の通り、2つの核酸がプローブとして利用される。例えば、1つの核酸が固体電極に付着され、共有結合によって付着された電子伝達成分を伴うもう1つの核酸は、溶液中に遊離している。標的配列のハイブリダイゼーションの時点で2つの核酸は、ハイブリッド形成された核酸の電子伝達半分(合議体注:「電子伝達成分」の誤記と認められる。)と電極の間で電子伝達が起こるように整列させられる。電子伝達は、上で概略説明された通りに、或いは当該技術分野において周知の技術を用いた電流測定、電位差測定又は導電率測定による電気化学センサーを使用することによって検出される。」(第32頁第17行?第25行)、
と記載されている。
これら本願当初明細書又は図面の記載を参酌すると、本願発明に係る標的核酸配列を検出するための組成物に含まれる2種の1本鎖核酸は、隣接して標的核酸に同時にハイブリダイズすることにより核酸を介した電子伝達を可能として標的核酸配列を検出するものであり、上記(iii)の電極に関する記載からみて、本願発明は、それら2種の1本鎖核酸に付着された電子供与体または電子受容体のいずれかを、電極という固体支持体の形にするものであると解される。
そして、このような核酸を介した電子伝達以外の電子伝達を用いて標的核酸を検出することができることは、本願の当初明細書又は図面には記載されておらず、かつ、それが自明な事項であるということもできない。請求項1に記載された事項により構成される本願発明は、上記(1-1)で述べたように、このような当初明細書又は図面には記載されていない電子伝達の態様を利用する組成物をも含むものであって、そのような技術的思想は本願の当初明細書に記載された事項の範囲内のものであるということはできず、平成19年11月15日付手続補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲においてしたものではない。
(1-3)請求人の主張
請求人は、平成19年12月6日付の上申書の2.(イ)?(ハ)において、「平成19年4月19日にFaxにて提出した文献1及び文献2に記載されているものは、本願発明の一態様です。」と主張し、このような態様が当初明細書に記載されている根拠として、以下のように主張している。
(イ-1)「例えば、本願明細書の第9頁第5?6行目には、『複数の伝達様式』なる記載があり、また同頁の下から9行目には『推定上の広い電子経路』なる記載があり、核酸が介在しない電子伝達系の使用を排除するものではありません。」
(イ-2)「さらに、審判官殿が引用された明細書第32頁第17?25行目の記載も、核酸を介在しない電子伝達系の使用の根拠となります。」
(ロ)「電子伝達成分と電極とを電気的に接続する手段としては、提出した文献1に記載されているような『分子電線』を使用する場合も、そうでない場合も本願発明に含まれます。しかしながら『電子伝達成分と電極とを電気的に接続する手段』の具体的な態様までは本願発明の特徴ではありません。
また、提出した文献1の第83頁右欄下から第17行目以降には、このシステムは『分子電線』を通して電子伝達を促進するために設計されたが、これに代わる経路が有効であることを示唆する証拠が存在すると記載されています。さらに、『我々の知見が示唆するところによれば、メカニズムは如何であれ、標的とのサンドイッチ構造に含まれることより表面近くに固定されたシグナル伝達プローブは金電極に電気的に接続される』旨記載されています。更に、『ハイブリド依存性サンドイッチ構造(図1A)がシグナル伝達プローブ中のフェロセンを金電極に電気的に接続する』と記載されています。」
(ハ)「拒絶理由通知書の第2頁最終パラグラフに記述されている文献1の図1の態様は、本願の図2A-7又は図2B-7に対応します。第二の1本鎖核酸から電極への電子伝達手段に関しては、明細書の第32頁下から第8?6行目に、『標的配列のハイブリダイゼーションの時点で2つの核酸はハイブリッド形成された核酸の電子伝達成分と電極の間で電子伝達が起こるように整列される』と記載されています。」
そこで、これらの主張について以下検討する。
(イ-1)について
請求人が指摘している部分は、その前後を含めると以下のとおりである。
「長距離電子伝達系の開発のための重要な刺激は、合成の集光系を作り出すことにある。これまでの研究は、人工的集光系がエネルギー伝達複合体、エネルギー移動複合体、電子伝達複合体及び電子移動複合体を含有することを示唆している(この分野の話題的な総説については、Chemical & Engineering News,1993年3月15日、P38?P48を参照のこと)。次の2つのタイプの分子が試された:すなわち、a)共有結合によって付着された電子伝達種を伴う炭化水素のごとき長い有機分子又は挿入されたもしくは部分的に挿入された又はらせん会合された電子伝達種を伴うDNA、及びb)合成重合体、である。
かなり剛性であるものの、長い有機分子は、開発をむずかしくしている数多くの要因によって影響される。これらの要因としては、溶剤の組成及び極性、供与体及び受容体基の配向、そして分子に対する電子伝達種の会合又は共有結合型リンケージのいずれかの化学的特性、が含まれる。
利用可能な重合体が可とう性の高いものでありすぎて複数の伝達様式が起こることから、受容可能な重合体電子伝達系を作り出すことは困難であった。充分な剛性をもつ重合体は往々にして電子伝達メカニズムに著しく干渉するか又はきわめて合成し難いものである。
従って、人工集光系を開発する上で、充分な剛性をもち規定の間隔で共有結合により付着された電子伝達種を有し合成し易くかつ電子伝達メカニズムと著しく干渉することがない電子伝達系の開発が有用であろう。
結論としては、供与体と受容体の間の距離が短かいものである可能性と結びつけられた電子供与体及び受容体対の無作為の分布及び移動度、供与体と受容体のゆるいそしておそらくは可逆的である会合、報告された溶剤に対する依存性及び推定上の広い電子経路、そして正常な塩基対合を不可能にする挿入された化合物のDNA構造の分断が全て、DNAマトリックス内の長い範囲の電子伝達の明白な制限条件として役立っている。従って、核酸構造の最小限の混乱及び正常に塩基対合するその能力の保持を得るため、電子供与体及び受容体のリキッドな共有結合型付着の生成方法が望まれる。本発明は、新しい生物導体(バイオコンダクタ)及び診断プローブの開発を可能にするこのような系を提供するのに役立つ。」(第8頁第17行?第9頁下から2行)
この記載からも明らかなように、請求人が根拠とする「複数の伝達様式」は、「受容可能な重合体電子伝達系を作り出すことは困難であった」という点の根拠とされており、本願発明においては排除すべき現象であることが理解できる。
また、「推定上の広い電子経路」も、「DNAマトリックス内の長い範囲の電子伝達の明白な制限条件として役立っている」ものとして、すなわち長い範囲の電子伝達を妨げるものとして記載されており、同じく、本願発明においては排除すべき現象であることが理解できる。
すなわち、請求人が指摘した記載部分は、請求人が主張するような態様が、明細書の記載から自明であることを示すものではなく、逆に、そのような「複数の伝達様式」や「推定上の広い電子経路」を避け、核酸が媒介する電子伝達のみを利用することを示すものである。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(イ-2)について
請求人の主張する本願明細書第32頁第17?第25行には、前記(1-2)(iv)で引用した通り、「類似の実施態様においては、前述の通り、2つの核酸がプローブとして利用される。例えば、1つの核酸が固体電極に付着され、共有結合によって付着された電子伝達成分を伴うもう1つの核酸は、溶液中に遊離している。標的配列のハイブリダイゼーションの時点で2つの核酸は、ハイブリッド形成された核酸の電子伝達半分と電極の間の電子伝達が起こるように整列させられる。電子伝達は、上で概略説明された通りに、或いは当該技術分野において周知の技術を用いた電流測定、電位差測定又は導電率測定による電気化学センサーを使用することによって検出される。」と記載され、これは、2種の1本鎖核酸を用い、一方が電極に付着され、他方が電子伝達成分を有するという、本願の請求項1の記載と最も関連していると思われる記載である。
そして、この記載は、特許を受けようとする発明の実施態様の一つとして、「2つの核酸をプローブとして使用」し、「1つの核酸が固体電極に付着され」ており、もう1つの核酸は、「共有結合によって付着された電子伝達成分を伴う」ものであり、それらの核酸が標的配列にハイブリダイゼーションした時点で生じる電子伝達を検出するという態様があり、その検出により標的配列の検出が可能であるという記載であることが理解できる。しかし、この部分には電子伝達がどのように起こるのかについては何ら記載されていない。
そして、本願の明細書の記載全体を前提とすれば、本願の明細書をみても、核酸を介する電子伝達以外の態様の電子伝達を標的核酸の検出に用いることは何ら記載されていないのであるから、この部分の記載は、核酸を介する電子伝達を利用するという前提で、すなわち、あくまでも2種の一本鎖核酸が標的配列にハイブリダイズした時に核酸を介した電子伝達が起こり、それを標的配列の検出に用いるということであると理解すべきである。
したがって、この点についての請求人の主張は採用できない。
(ロ)について
請求人のこの点の主張は、本願の優先日から7年以上後に頒布された文献1の記載を根拠とするものである。しかし、本願明細書に何が記載されているかの判断に当たっては、本願の出願当初の明細書の記載及び出願当時の技術常識が参酌されるべきであり、出願後の技術常識等は参酌すべきではないから、請求人の主張は採用できない。
(ハ)について
本願の明細書において、図2について、「電子伝達種の相対的配向は、図2で概略的に示すとおり、重要でなく、本発明は考えられる全ての配向を含むように意図されている。」(25頁下から7?5行)と記載されている。前記の通り、本願明細書に記載されている本願発明の原理は核酸を介した電子伝達の利用にあり、その他の態様の電子伝達を本願発明において利用することは記載されていないのであるから、図2に示された種々の態様は、核酸を介した電子伝達を利用するという前提で、その場合の電子伝達種の相対的配向について示すものと解され、核酸を介しない態様の電子伝達を利用することを示すものとは理解できない。また、図2A-7又は図2B-7に示される態様も、電子供与体(EDM)及び電子受容体(EAM)とが核酸上の異なる位置に存在しているものであるから、核酸を介した電子伝達が起こるものであることは明らかである。
したがって、本願の図2A-7又は図2B-7の態様は、いずれも他の2A1?6、8、9、2B-1?6、8、9と同様に、核酸が電子伝達を媒介するものと解するのがきわめて自然であり、核酸を介さずに電子供与体及び電子受容体との間で直接的に電子伝達が起こるものとは到底理解できない。
また、「核酸の電子伝達成分と電極の間で電子伝達が起こるように整列される」という記載も同様である。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(1-4)小括
したがって、平成19年11月15日付手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでないから、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。
(2)本願発明の実施可能要件について
また、平成19年5月14日付拒絶理由通知の備考で指摘したとおり、仮に、上記補正が新規事項でないとした場合であっても、下記に記載の理由により、本願発明のうち、請求人が本願発明に含まれると主張する核酸を介さない電子伝達を利用する場合の組成物については、当業者が容易にその実施をできる程度に発明の詳細な説明中にその発明の目的、構成及び効果が記載されているものとはいえない。
本願明細書又は図面には、核酸を介さない電子伝達を利用することが具体的に記載されていないのは上記(1)で述べた通りである。
一方、請求人が、本願発明に含まれる態様の例として提出した、2つの1本鎖核酸を用いて、オリゴフェニルエチニル鎖からなる分子電線を媒介して電極に電子伝達することが記載された上記文献1は、上述のとおり本願優先日から8年経過した2001年に頒布されたものであるばかりか、オリゴフェニルエチニル鎖からなる分子電線に関しても1999年(J.Am.Chem.Soc.(1999)Vol.121,p.1059-1064)に、さらに分子電線自体に関しても1995年(An Introduction to Molecular Electronics、Oxford University Press(1995))に公知になったものであり、すべて本願出願日後に明らかにされた技術である。
そして、上述のとおり、本願明細書には、分子電線のような核酸以外の電子伝達を媒介する物質についての記載はないにもかかわらず、核酸を媒介しない電子伝達の場合には、核酸に代わる電子伝達を媒介する物質が必須であるのであるから、そのような物質の具体的記載がない本願発明の詳細な説明には、当業者がそのような態様に係る本願発明を容易に実施できるように、その目的、構成、効果が記載されているものとはいえない。
したがって、本願は、平成6年改正前特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
また、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、平成6年改正前特許法第36条第5項第1号の要件も満たしていない。
(3)請求項1の記載について
本願請求項1には、組成物の構成としては、第一の1本鎖核酸に電極が、第二の1本鎖核酸に電子伝達成分が付着されることが記載されているだけであるが、各一本鎖核酸に電極および電子伝達成分が付着されてさえいれば、2種の1本鎖核酸としてどのようなものを用いたとしても、標的配列へのハイブリダイゼーションによって核酸を介した電子伝達が生じるわけではなく、請求項1に記載された組成物の構成のみで標的核酸を検出することができるわけではないことは、上述の如くである。
そして、請求項1に係る発明が標的核酸配列を検出するための組成物である以上、2種の1本鎖核酸により標的核酸を検出するために必要な構成、すなわち2種の1本鎖核酸が標的配列に対してどのような関係を有するものであるのかという点について記載されていない請求項1には、特許を受けようとする発明に欠くことができない事項が記載されているとは認められず、本願は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。
4.むすび
したがって、平成19年11月15日付手続補正は、特許法第17条の2第2項の規定に違反するものであり、また、本願は、特許法第36条第4項及び第36条第5項第1号、並びに特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていないので、本願は、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-07 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願平7-516249
審決分類 P 1 8・ 531- WZ (C12N)
P 1 8・ 534- WZ (C12N)
P 1 8・ 55- WZ (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高堀 栄二  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 小暮 道明
鈴木 恵理子
発明の名称 核酸が媒介する電子伝達  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 福本 積  
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