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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1186386
審判番号 不服2005-23095  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-01 
確定日 2008-10-16 
事件の表示 平成11年特許願第263421号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 79223〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成11年9月17日の出願であって、平成17年10月28日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成17年12月1日付けで本件審判請求がされるとともに、同月16日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成17年12月16日付けの手続補正を却下するとともに新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成20年7月30日付けで意見書及び手続補正書を提出した。

第2 本願発明の認定
当審で通知した拒絶理由はいわゆる最後の拒絶理由であるから、平成20年7月30日付け手続補正の許否をまず決定しなければならない。
当審の拒絶理由は、請求項1記載の「図柄の変動時間によって区別される複数の演出グループ」との文言を自然に解釈した場合に、特許法36条6項1号,2号に規定する要件を満たさないというものである。
請求人は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正した。
「複数の図柄の変動表示と遊技に関連した演出表示とを行う表示手段、及び
前記変動表示が停止したときの停止態様を決定し、該決定に応じて前記表示手段の表示を制御する制御手段
を備え、
前記制御手段は、
主制御部と図柄表示制御部の二つの制御部で構成され、
前記主制御部は、
所定の入力信号に応じて、特別遊技状態に移行するかどうかを判定する判定手段と、
該判定手段の判定結果に基づき、それぞれの図柄の変動時間が設定された複数の演出グループの中から一つの演出グループを決定する演出グループ決定手段と
を含み、
前記図柄表示制御部は、
前記演出グループ決定手段で決定された演出グループに属する何れも前記演出表示として予め定められた表示時間が同一である演出パターンの中から一つの演出パターンを決定する演出パターン決定手段と、
該演出パターン決定手段で決定された演出パターン及び前記停止態様を表示するように前記表示手段を制御する図柄表示制御手段と
を含むことを特徴とする遊技機。」
上記補正は、補正前に「図柄の変動時間によって区別される複数の演出グループ」とあったのが、同一グループ内では表示時間が同一であることを意味するにとどまり、異なる演出グループの表示時間(図柄の変動時間)が異なる旨の限定ではないことを明らかにすることを目的としたものと解されるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものと認める。上記補正が新規事項追加に該当しないことも明らかであるから、上記補正を却下することは適当でない。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記のとおりの平成20年7月30日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものと認める。

第3 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-246050号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?テの記載が図示とともにある。
ア.「複数の識別情報を可変表示する可変表示装置と、
可変表示装置の表示制御を行う表示制御手段と、
遊技状態の制御を行う遊技制御手段と、
を備えた遊技機において、
前記遊技制御手段に、遊技態様の判定に基づき可変表示装置に表示する表示種別を指令する表示種別指令手段を設け、
前記表示制御手段に、該表示種別指令手段からの表示種別指令信号に基づいて、表示種別に応じた表示を行うように可変表示装置の作動を制御することにより、表示種別に関連する制御を負担する表示種別制御負担手段を設けたことを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「遊技部内の特定位置の遊技球を検出する特定球検出手段と、
特定球検出手段からの特定球検出信号に基づいて遊技態様を判定する遊技態様判定手段とを設け、
前記表示種別指令手段は、遊技態様判定手段の判定に基づき可変表示装置に表示する表示種別を表示制御手段に対して指令することを特徴とする請求項1記載の遊技機。」(【請求項2】)
ウ.「前記表示制御手段は、複数の識別情報を記憶する識別情報記憶手段を有し、
前記表示種別制御負担手段は、表示種別指令手段からの表示種別指令信号に基づいて、識別情報記憶手段に記憶された複数の識別情報より特定の識別情報を選択する識別情報選択手段を有し、識別情報選択手段によって選択された特定の識別情報を可変表示装置に表示するような制御を行うことを特徴とする請求項1記載の遊技機。」(【請求項3】)
エ.「多彩な表示が可能な表示器を用いた可変表示装置を備えた従来の遊技機にあっては、多彩な表示は専用に設けた表示制御装置により行い、遊技制御は遊技制御手段(例えば、役物用のCPUを含む遊技制御装置)により行われている。」(段落【0005】)
オ.「本発明は、多彩な表示を行いながら、遊技制御装置側の制御の負担を軽減してROM容量を軽減できる遊技機を提供することを目的としている。」(段落【0008】)
カ.「特図の表示を行わないときは、他の表示、例えば呼込み表示、大当り発生を知らせるファンファーレ表示、大当り中の表示、インターバル表示、大当り終了時の表示等を行う。」(段落【0041】)
キ.「図5はパチンコ機1における制御系のブロック図である。図5において、この制御系は大きく分けると、役物装置に関連する制御を行う役物用CPU301を含む遊技制御手段360の系統と、可変表示装置102の表示についての制御を行う特図表示器用CPU302(以下、表示用CPU302という)含む表示制御手段370の系統とに区分される。」(段落【0054】)
ク.「ステップS30では表示制御装置400側にコマンドを送信する処理を行う。ここで、本実施例では表示制御装置400側に遊技制御手段360側の制御の一部を負担させることが行われ、具体的には、可変表示装置102に表示する表示種別(例えば、大当り、外れ、ラッキーナンバー等の停止コマンド)を役物制御用CPU301から表示制御用CPU302に指令し、表示制御用CPU302側では指令された表示種別に基づいて、表示種別に応じた表示を行うように可変表示装置102の作動を制御する。すなわち、役物制御用CPU301では図柄の可変表示、停止態様(大当り、外れ、ラッキーナンバー等)のみを指令することにより、表示制御装置400側が停止時の図柄を選択して可変表示装置102に表示させることが行われる。」(段落【0076】)
ケ.「ステップS52では読み出した乱数値が当り(すなわち、大当り)であるか否かを判別する。当りでなければステップS54で外れ停止コマンドをセットする。この外れ停止コマンドは表示用CPU302に送信され、表示用CPU302では外れ停止コマンドに基づいて外れの停止図柄を表示するように可変表示装置102の作動を制御する。」(段落【0079】)
コ.「ステップS54を経ると、次いで、ステップS56に進み、ステップS50で読み出した乱数値の内容がリーチであるか否かを判別する。リーチとは、第1停止図柄および第2停止図柄が同じで、第3図柄が変動している状態(例えば、「77X」)である。リーチのときはステップS58に進んでリーチコマンドをセットする。次いで、ステップS60でリーチ用の可変表示タイマをセット(例えば、3秒にセット)する。可変表示タイマは可変表示装置102の図柄を変動(可変表示)させている時間をカウントするものである。これにより、表示制御用CPU302側では、例えば8秒間だけリーチ状態の図柄変動となり所定の図柄に停止する表示制御が行われる。」(段落【0080】)
サ.「ステップS56でリーチでないときはステップS66に進んでロングリーチであるか否かを判別する。ロングリーチとは、前述したスペシャルリーチのことで、1、2個目の図柄が停止した後、3個目の図柄を停止させるときに通常停止と異なる特別停止で3個目の図柄を停止させるものである。特別停止における停止に関わる期間中は、図柄のスクロールがより一層緩やかになる。」(段落【0082】)
シ.「ロングリーチでないときはステップS68に進んで通常停止コマンドをセットするとともに、続くステップS70で通常停止用の可変表示タイマをセット(例えば、5秒にセット)する。これにより、表示制御用CPU302側では、例えば5秒間だけ通常の停止態様(つまり外れの図柄)となるような表示制御が行われる。」(段落【0083】)
ス.「ステップS66でロングリーチであるときはステップS72に分岐してロングリーチコマンドをセットし、続くステップS74でロングリーチ用の可変表示タイマをセット(例えば、10秒にセット)する。その後、ステップS62に進む。これにより、表示制御用CPU302側では、可変表示装置102の図柄変動を10秒という長い時間にわたってリーチ変動させてから停止させる制御が行われる。」(段落【0084】)
セ.「ステップS80ではロングリーチであるか否かを判別し、ロングリーチであるときはステップS72に進んでロングリーチコマンドをセットする。これにより、表示制御用CPU302側では、可変表示装置102の図柄変動を長い時間にわたってリーチ変動させてから停止させる制御が行われる。また、ロングリーチでなければステップS58に進んでリーチコマンドをセットする。これにより、表示制御用CPU302側では、例えば8秒間だけリーチの図柄変動となるような表示制御が行われる。なお、上記ステップS52、ステップS56、ステップS66、ステップS76、ステップS80の判定は何れも乱数値に基づいて行われる。また、上記の通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止等は識別情報の表示態様に相当する。」(段落【0087】)
ソ.「外れ停止コマンドを受信したときはステップS252で表示態様コマンドに基づき外れ停止図柄(例えば、リーチ停止であれば「113」のように第1、第2停止図柄がゾロ目であり、第3図柄が異なる図柄)を設定する。」(段落【0111】)
タ.「当り停止コマンドを受信したときはステップS256で当り停止図柄(例えば、「111」のようにゾロ目になる図柄)を設定する。」(段落【0113】)
チ.「図12は表示制御用メインルーチンのステップS222における停止処理のサブルーチンを示す図である。このサブルーチンに移行すると、ステップS300で通常停止コマンドを受信したか否かを判別する。通常停止コマンドとは、可変表示装置102の変動図柄をリーチではなく、通常の停止時間で停止させる指令である。通常停止コマンドであるときはステップS302に進んで通常停止処理を行う。」(段落【0115】)
ツ.「ステップS300で通常停止コマンドを受信しないときはステップS304に進んでリーチコマンドを受信したか否かを判別する。リーチコマンドとは、可変表示装置102の変動図柄をリーチで停止させる指令である。リーチコマンドであるときはステップS306に進んでリーチ停止処理を行う。これにより、可変表示装置102の変動図柄が通常の停止時間より長いリーチの時間で停止することになる。この場合のリーチ図柄は停止図柄決定処理で設定されたものになる。」(段落【0116】)
テ.「ステップS304でリーチコマンドを受信しないときはステップS308に進んでロングリーチコマンドを受信したか否かを判別する。ロングリーチコマンドとは、可変表示装置102の変動図柄をロングリーチで停止させる指令である。ロングリーチコマンドであるときはステップS310に進んでロングリーチ停止処理を行う。これにより、可変表示装置102の変動図柄が通常のリーチ停止時間より長いロングリーチの時間で停止することになる。この場合のロングリーチ図柄は停止図柄決定処理で設定されたものになる。」(段落【0117】)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載ク等の「図柄」は記載アの「識別情報」の具体例である。
引用例1の記載セに「通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止等は識別情報の表示態様に相当する。」とあり、これら停止態様は記載ア等の「表示種別」には含まれていないが、「遊技制御手段」で決定され、「表示制御手段」に送信されるコマンドの1つであることは明らかである。このコマンドを以下では「リーチ関連コマンド」ということにする。
そうすると、遊技制御手段で決定され表示制御手段に送信されるコマンドとしては、大当り停止(実施例では、「ラッキー停止」とそれ以外に区別されている。)又は外れ停止のコマンド(記載アの「表示種別」に該当)とリーチ関連コマンドの2種類のものがあり、表示制御手段では、受信したこれら2種類のコマンドに基づいて停止図柄を決定し同図柄で停止する(大当り停止の場合には、表示種別のみで停止図柄が決定されるが、外れ停止の場合には、リーチ関連コマンドも必要である。)とともに、停止までの態様(停止までの時間を含む。)が受信したリーチ関連コマンドに合致するように可変表示装置の作動を制御するものと認めることができる。
記載ケの「ステップS52では読み出した乱数値が当り(すなわち、大当り)であるか否かを判別」が記載イの「遊技態様を判定」の具体例であり、記載クが「遊技制御手段」についての説明文であることは明らかであるから、記載イの「遊技態様判定手段」は「遊技制御手段」の一部である。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「複数の図柄を可変表示する可変表示装置と、可変表示装置の表示制御を行う表示制御手段と、遊技状態の制御を行う遊技制御手段と、を備えた遊技機において、
前記可変表示装置は、大当り発生を知らせるファンファーレ表示、大当り中の表示等をも行うものであり、
遊技部内の特定位置の遊技球を検出する特定球検出手段を設け、
前記遊技制御手段に、特定球検出信号に基づいて遊技態様を判定する遊技態様判定手段及び前記遊技態様の判定に基づき前記可変表示装置に表示する大当り停止若しくは外れ停止の表示種別コマンド及び通常停止、リーチ停止若しくはロングリーチ停止のリーチ関連コマンドを指令する指令手段を設け、
前記表示制御手段は、受信した表示種別コマンドに応じた停止図柄となり、かつリーチ関連コマンドに合致するように前記可変表示装置の作動を制御する遊技機。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「可変表示」と本願発明の「変動表示」には表現上の相違しかなく、引用発明1の「大当り発生を知らせるファンファーレ表示、大当り中の表示」は「遊技に関連した演出表示」に当たるから、引用発明1の「可変表示装置」は本願発明の「複数の図柄の変動表示と遊技に関連した演出表示とを行う表示手段」に相当する。
引用発明1の「特定球検出信号に基づいて遊技態様を判定する遊技態様判定手段」と本願発明の「所定の入力信号に応じて、特別遊技状態に移行するかどうかを判定する判定手段」に相違はなく、引用発明1では遊技態様の判定に基づいて、大当り停止若しくは外れ停止となるように制御するのだから、引用発明1の「遊技制御手段」と「表示制御手段」は、本願発明の「主制御部」及び「図柄表示制御部」にそれぞれ相当し、それらを併せた手段は本願発明の「前記変動表示が停止したときの停止態様を決定し、該決定に応じて前記表示手段の表示を制御する制御手段」に相当する。
引用発明1の「リーチ関連コマンド」に関して、通常停止の図柄変動時間、リーチ停止の図柄変動時間及びロングリーチ停止の図柄変動時間は、この順に長くなり、どのコマンドとするかは、判定手段の判定結果に基づいて決定される。他方、本願発明の「演出グループを決定」について検討するに、「前記演出グループ決定手段で決定された演出グループに属する何れも前記演出表示として予め定められた表示時間が同一である演出パターンの中から一つの演出パターンを決定」とある以上、演出グループを決定することは、図柄変動時間を決定することでもある。
さらに、本願発明の「演出グループ決定手段」について検討するに、「それぞれの図柄の変動時間が設定された複数の演出グループの中から一つの演出グループを決定する」とあり、また「図柄表示制御部」の限定として「演出グループに属する何れも前記演出表示として予め定められた表示時間が同一である演出パターンの中から一つの演出パターンを決定」及び「該演出パターン決定手段で決定された演出パターン及び前記停止態様を表示」との限定があることからみて、「演出パターン」は引用発明1の「表示種別コマンドに応じた停止図柄」とは異なるものであり、少なくとも1つの「演出グループ」には複数の「演出パターン」が所属すると解すべきであるが、「演出パターン」を決定するのはあくまでも「図柄表示制御部」であって、「主制御部」の機能としてみれば、図柄表示制御部が演出パターンを決定する上での必要となる情報(その情報はコード化されているのが普通であり、その情報を「演出グループ」と認識できるのは、演出パターン決定手段を有する図柄表示制御部と接続されているからにほかならない。)を決定し、それを図柄表示制御部に送信するだけである。そして、図柄表示制御部にとって必要な情報は図柄変動時間のみである。
そうであれば、引用発明1の「遊技制御手段」と本願発明の「主制御部」は、「所定の入力信号に応じて、特別遊技状態に移行するかどうかを判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に基づき、図柄の変動時間を定める手段」を含む点で一致し、構成上は何の相違もないというべきである。
本願発明の「図柄表示制御部」と引用発明1の「表示制御手段」を比較すると、「演出パターン決定手段」の有無及び「該演出パターン決定手段で決定された演出パターン」を表示するように表示手段を制御することは相違点となるが、「前記停止態様を表示するように前記表示手段を制御する図柄表示制御手段」を含むこと、及び主制御部が決定した図柄変動時間に基づいて表示することは一致点である。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「複数の図柄の変動表示と遊技に関連した演出表示とを行う表示手段、及び
前記変動表示が停止したときの停止態様を決定し、該決定に応じて前記表示手段の表示を制御する制御手段
を備え、
前記制御手段は、
主制御部と図柄表示制御部の二つの制御部で構成され、
前記主制御部は、
所定の入力信号に応じて、特別遊技状態に移行するかどうかを判定する判定手段と、
該判定手段の判定結果に基づき、図柄変動時間を定める手段と
を含み、
前記図柄表示制御部は、
主制御部が決定した図柄変動時間に基づいて、前記停止態様を表示するように前記表示手段を制御する図柄表示制御手段と
を含む遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明の「図柄表示制御部」が、主制御部が決定した図柄変動時間に基づいて「何れも前記演出表示として予め定められた表示時間が同一である演出パターンの中から一つの演出パターンを決定する演出パターン決定手段」を含み、「図柄表示制御手段」は停止態様だけでなく「該演出パターン決定手段で決定された演出パターン」を表示するように表示手段を制御するとしているのに対し、引用発明1の「図柄表示制御部」は「演出パターン決定手段」を含まず、「該演出パターン決定手段で決定された演出パターン」を表示しない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-127877号公報(以下「引用例2」という。)には、
「特別図柄表示装置4には特図とそれ以外の背景画が表示され、所定条件に応じて背景画の表示を変更する制御が行われる。特に、リーチ発生(特別停止態様の停止表示の可能性が発生することに相当)したことに基づき背景画の表示の変更制御を行うとともに、リーチ発生と背景画の表示の変更とを関連付けた制御が行われる。」(段落【0020】)、
「図15(b)?(d)は特別図柄表示装置4における予告リーチ動作の表示画像を示す図である。予告リーチ動作では、図15(b)に示すように左図柄の停止スロースクロール時(中図柄および右図柄は速く変動中で左図柄の停止直前のスクロール時)に、予告リーチコマンドがセットされることによりリーチを予告するキャラクター(ここでは女性キャラクター)が当該左図柄(例えば、「7」)にくっつく画像が表示される。これにより、遊技者はリーチ発生の予告により、リーチへの期待感が高められる。なお、どの図柄にリーチ予告キャラクターが付加されるかはランダムに行われる。予告リーチコマンドが発生した場合、図15(d)に示すように、画面上でリーチ予告キャラクターがストップするとともに、右図柄は必ず同一図柄(例えば、「7」)で停止するようになり、これにより、リーチがかかる。なお、図15(b)?(d)のケースでは、背景画像として、生ビール等を置くテーブルを模した画面が表示される。」(段落【0075】)、
「図17(a)?(d)はリーチBの動作に対応する特別図柄表示装置4の表示画像を示す図である。リーチBの動作では、図17(a)に示すように画面上で「おやじメータ」が点灯し、当り図柄のみを数えた10コマ前の図柄を残して、おやじキャラクターがビールを飲んでいく画像(すなわち、中年男性がビールを飲んでいく画像)が表示される。おやじキャラクターはリーチ発生の途中から出現する。この例では、中図柄のビールを飲んでいく。したがって、おやじキャラクターが出てから、1?10コマ送る(1?10コマスクロールする)ことになる。なお、おやじキャラクターに変えてギャルキャラクター(若い女性がビールを飲んでいくもの)を出現するようにしてもよい。あるいは遊技の状況によって、おやじキャラクター又はギャルキャラクターを選択してもよい。」(段落【0077】)及び
「次いで、図17(b)に示すように当り図柄までカウントダウンすることになる。なお、ジョッキーでなく、ビールが缶である場合は、ビールの飲干した残量は見えないので、飲んでいる時間だけ同じとなる制御にする。」(段落【0078】)
との各記載がある。
引用例2記載の「特別図柄表示装置4」は本願発明の「表示手段」に相当するものであり、上記各記載によれば、図柄の変動表示を行う際に、背景画の表示を変更すること、リーチ予告キャラクターを図柄に付加すること、その際の図柄をランダムにすること、リーチ予告キャラクターを遊技の状況によって選択することが記載されている。また(段落【0078】)には、ジョッキー又は缶を選択する旨の直接記載はないものの、リーチ予告キャラクターと同様に選択することも示唆されているというべきである。
そして、背景画の表示を変更したり、リーチ予告キャラクターを図柄に付加することは、引用例1記載オの「多彩な表示」に該当するものである。
そうであれば、背景画の変更、リーチ予告キャラクターの付加、付加すべき図柄のランダムな選択、リーチ予告キャラクターの選択等を引用発明1の変動表示に加えることにより、より多彩な表示とすることは当業者にとって想到容易である。
ここで、引用発明1は「遊技制御装置側の制御の負担を軽減」(記載オ)を目的とした発明であり、そのために停止図柄を遊技制御装置ではなく表示制御手段にて決定していることを考慮すれば、背景画の変更、リーチ予告キャラクターの付加、付加すべき図柄のランダムな選択、リーチ予告キャラクターの選択等を表示制御手段にて行うことが自然であり、そこには何の困難性もない。
すなわち、引用発明1を出発点として、表示制御手段がリーチ関連コマンドを受信すると、リーチ関連コマンドに応じた停止制御をするに際し、背景画の表示や、リーチ予告キャラクターの有無又は種類、リーチ予告キャラクターを付加すべき図柄の選択等を表示制御手段にて行うことは当業者にとって想到容易といわなければならない。背景画、リーチ予告キャラクターの有無若しくは種類又はリーチ予告キャラクターを付加すべき図柄が異なれば、異なる演出パターンであるといえ、演出パターンは異なるものの図柄変動時間(表示時間)は同一であるから、結局のところ、主制御部が決定した図柄変動時間に基づいて「何れも前記演出表示として予め定められた表示時間が同一である演出パターンの中から一つの演出パターンを決定する演出パターン決定手段」を含み、「図柄表示制御手段」にて「該演出パターン決定手段で決定された演出パターン」を表示することにほかならない。
ここで、本願発明の「演出グループ」について再度言及すると、「図柄表示制御部」が図柄変動時間(主制御部が決定)に基づいて「何れも前記演出表示として予め定められた表示時間が同一である演出パターンの中から一つの演出パターンを決定する」のであれば、主制御部が図柄変動時間を決定することは、演出パターン選択の基礎となる「演出グループ」を決定することと等価であり、「図柄変動時間を定める手段」を「演出グループ決定手段」と称することができ、「演出パターン決定手段」は「前記演出グループ決定手段で決定された演出グループに属する何れも前記演出表示として予め定められた表示時間が同一である演出パターンの中から一つの演出パターンを決定」することとなる。
以上のとおりであるから、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-14 
結審通知日 2008-08-19 
審決日 2008-09-01 
出願番号 特願平11-263421
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太鉄 豊郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
小原 博生
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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