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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1187340 |
審判番号 | 不服2006-20486 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-14 |
確定日 | 2008-11-06 |
事件の表示 | 特願2000-121160「電子写真用トナー、及びその製造方法、並びに二成分現像剤」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 2日出願公開、特開2001-305779〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成12年4月21日の出願であって、平成18年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年10月16日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。 第2.平成18年10月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年10月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、及び無機微粒子を含有してなる電子写真用トナーであって、 該トナーの球形化度が100以上130以下であり、 該離型剤の平均粒径が0.1μm以上1μm以下、且つ長径と短径との比が1.1以上10以下であることを特徴とする電子写真用トナー。 【請求項2】 請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法であって、 結着樹脂を可溶させる有機溶媒中に、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び無機微粒子を混合して、油性成分を調整する工程と、 該油性成分を水性媒体中に懸濁させ、粒子化して懸濁液を調整する工程と、 該懸濁液から有機溶媒を除去する工程と、 を有することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【請求項3】 キャリアとトナーとを含有してなる二成分現像剤において、 該トナーが、請求項1に記載の電子写真用トナーであることを特徴とする二成分現像剤。」 から 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、及び無機微粒子を含有してなる電子写真用トナーであって、 該トナーの球形化度が100以上130以下であり、 該離型剤の平均粒径が0.1μm以上1μm以下、且つ長径と短径との比が1.1以上10以下であり、 前記無機微粒子が疎水性に表面処理させた無機微粒子であることを特徴とする電子写真用トナー。 【請求項2】 請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法であって、 結着樹脂を可溶させる有機溶媒中に、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び無機微粒子を混合して、油性成分を調整する工程と、 該油性成分を水性媒体中に懸濁させ、粒子化して懸濁液を調整する工程と、 該懸濁液から有機溶媒を除去する工程と、 を有することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【請求項3】 キャリアとトナーとを含有してなる二成分現像剤において、 該トナーが、請求項1に記載の電子写真用トナーであることを特徴とする二成分現像剤。」 に補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「無機微粒子」に関して、「疎水性に表面処理させた無機微粒子である」と限定したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第16条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.独立特許要件について (1)刊行物に記載された発明 (刊行物1について) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-207116号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。) ア. 「結着樹脂と着色剤とからなる静電潜像現像剤用トナーにおいて、該トナーがワックスを0.1?40重量%含有し、トナー表面に露出するワックスが1?10重量%であり、且つ、該ワックスの数平均分散径が0.1?2μmであることを特徴する静電潜像現像剤用トナー。」(【請求項1】) イ. 「前記ワックスが、ワックス粒子の全個数に対して、ワックスの分散単位の粒子の厚さが0.5μm以下であり、且つ、縦方向の最大長が厚さの2倍以上であり、横方向の最大長が厚さの1.5倍以上である薄片状のワックス粒子の割合が75%以上であることを特徴とする請求項2記載の静電潜像現像剤用トナー。」(【請求項3】) ウ. 「記録材(被記録体)にトランスペアレンシーフィルムを用いた際に、定着後の画像の透過性が若干低下するといった課題に対しては、トナー中に含有されるワックスの分散単位に依存することが確認された。すなわちトナー内でのワックスの分散単位を透過性に影響が出にくい粒径となるように分散すればワックスの結晶化度の大きさにかかわらず透過性の問題がなくなる。具体的には、トナー中に分散されたワックスの平均粒径(ここでは、数平均粒径を指す)が、2μm?0.1μm、より好ましくは1μm?0.1μmの範囲にすれば良い。この為には、トナー作製時に用いるワックスが、予め平均粒径が2μm以下、より好ましくは1μm以下に微細化されたワックスを用いることが必要である。トナー中に分散されたワックスの平均粒径が2μmを超えると、トランスペアレンシーフィルムを用いた際の、定着後の画像の透過性が落ちてしまう。また、ワックスの平均粒径が0.1μm未満であると離型性能が不十分となる。」(段落【0027】) エ. 「次に、本発明におけるトナーの製造方法を述べる。本発明において、ポリエステル樹脂に代表されるトナーの結着樹脂、着色剤及び必要に応じて用いるその他の添加剤は、樹脂が溶解可能な溶媒中に、溶解または分散され、油相が形成される。使用できる溶剤は、結着樹脂の構成成分にも依存するが、一般に、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロフォルム、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エーテル、テトラヒドロフラン等のアルコールまたはエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン等のケトン類が挙げられる。これらの溶媒は、主にポリエステル樹脂を溶解させる必要が有るが、着色剤、その他の添加剤は溶解してもしなくてもよい。油相に用いるトナー成分と溶剤の重量比は、10/90から80/30が造粒のし易さあるいは最終的なトナー収率の点で好ましい。 つぎに、得られた油相は、水相(水溶性溶媒)中で所定の粒径になるように造粒される。水相の主要媒体は水である。必要に応じて以下の無機分散安定剤及び/又は親水性コロイドを形成する有機分散安定剤を添加してもよい。無機の分散安定剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、珪酸ケイソウ土、粘土などがある。これらの無機分散安定剤の粒子径は好ましくは0.1μm以下である。これらは、ボールミル、サンドミル、アトライター等の湿式分散器により所望の粒径まで粉砕した後使用するのが望ましい。これら無機分散安定剤の粒子径が2μmを越えると、造粒したトナーの粒度分布が広くなりトナーとして使用できなくなる。」(段落【0046】、【0047】) オ. 「トナーを造粒する工程中で同時に、あるいは造粒工程後に溶剤を取り除く。溶剤の除去は、常温で行っても良く、あるいは減圧で行っても良い。常温で行う為には、溶剤の沸点より低く、かつ樹脂のTgを考慮した温度をかける必要がある。樹脂のTgを大きく越えると望ましくないトナーの合一が起こることがある。通常40℃近傍で3?24時間撹拌するのが都合良い。減圧する際は20?150mmHgで行うのが都合よい。」(段落【0052】) カ. 「本発明のトナーの形状は、トナー製造条件の違い、特にトナー材料の処方及び造粒後のトナーから溶剤を蒸発させる工程条件等を制御することにより、球形から不定形状まで、あるいは表面に微小な凹凸、皺、穴、突起を持ったトナー形状も得ることが可能である。具体的には形状係数MLS2で、100?140の範囲で制御されていることが、得られた現像剤の特性の観点から好ましい。 ここで、MLS2とは、例えば日立製作所製FE-SEM(S=800)を用い、倍率500倍に拡大したトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報をインターフェイスを介して、例えばニレコ社製画像解析装置(Luzex-II)に導入し解析を行い、下記式より算出して得られた値(形状系数値MLS2)として定義する。 MLS2=(トナー粒子の絶対最大長)2/(トナー粒子の投影面積)×π×1/4×100 本発明のトナー粒子は、前述の如き製造方法にて作製することにより、MLS2で、100?140の範囲で制御可能であるが、通常の混練粉砕法で作製したトナーの形状は不定形であり、MLS2を測定すると、140?160程度である。なお、MLS2で100とは真球状であることを示す。」(段落【0057】?【0059】) キ. 「本発明の製造方法で得られたトナーは、公知の乾式静電荷用現像法に制限なく使用できる。例えば、カスケード法、磁気ブラシ法、マイクロトーニング法などの二成分現像法、導電性一成分現像法、絶縁性一成分現像法などの一成分現像法、さらには非磁性一成分現像法などが挙げられるが、前述した、球形のトナー形状に起因するトナー付着力の低さを効果的に用いたユニークなプロセスを設計することも可能である。即ち、複数のトナー像を現像転写せしめるフルカラー複写機を用いた場合は、従来のモノクロトナーと比較して感光体上のトナー量が増加し、従来の不定形トナーを用いただけでは転写効率を向上させるのは困難である。このためカラーの画像形成では、四色のトナーが均一に転写されにくく、さらに中間体転写を用いる場合には、色ムラやカラーバランスの面で問題が生じ易く、高画質のフルカラー画像を安定に出力することは困難であった。この転写効率の問題点とトナー形状の相関を検討した結果、MLS2が140を越えるあたりからトナーの転写効率の低下が認められることが明らかとなった。本発明の静電潜像現像剤用トナーは前記の如く、MLS2で、100?140の範囲で形状を制御することが可能であり、トナーの製造条件を調整することにより、転写効率を高める為に好適なMLS2が100から120程度を実現することができる。従って、本発明のトナーを用いることにより、トナーの高転写効率特性を利用し、クリーニング部材レスを採用した、小型で簡素なプロセスを設計することも可能となったものである。」(段落【0060】) ク. 「本発明のトナーは、通常のトナーと同様に、キャリヤと組み合わせることにより、二成分現像剤として適する静電荷像現像剤とすることができる。」(段落【0061】) ケ.表4(段落【0098】)として、 表4から、「各実施例で作成されたトナー粒子は、MLS2の値として、103(実施例7)乃至109(実施例4)の範囲にあること」は明らかである。 上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。) 「少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有してなる電子写真用トナーであって、該トナーの形状係数(MLS2)が100以上120以下であり、該離型剤の平均粒径が0.1μm以上1μm以下である電子写真用トナー」 (刊行物2について) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-216267号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。) コ. 「【請求項1】潜像但持体に現像剤但持体を押しつけ、潜像を可視像とする前記現像剤但持体によって搬送される現像剤を、摩擦帯電するとともに、現像剤の層厚を規制する層厚規制部材をもつ非磁性一成分現像装置に用いる現像剤において、シリカ微粒子をトナーに内添することを特徴とする非磁性一成分用トナー。」 サ. 「つまり、シリカをトナーに内添することによってバインダ樹脂のフィラーとなるため、トナーは補強され、シリカは強負帯電性をもつため、トナーの負帯電能は向上される。これにより、初期から印字品位が高く、画像変化を生じない非磁性一成分現像用トナーを得ることができる。」(段落【0007】) シ. 「また、シリカをトナーに内添するには以下の方法がある。 (1)ラジカル重合可能なビニル系単量体中に着色剤およびシリカを分散したのち、懸濁重合し、該トナーを製造する方法。 (2)ラジカル重合可能なビニル系単量体中に着色剤およびシリカを分散したのち、乳化重合し、それをビルトアップし、該トナーを製造する方法。 (3)熱可塑性樹脂を結着樹脂とし、樹脂、着色剤およびシリカを混練、粉砕、分級し、該トナーを製造する方法。 (4)平均粒径5?20μmの着色剤含有樹脂にシリカ微粒子を静電的に付着させ、機械的エネルギにより、含有樹脂に融着させ、該トナーを製造する方法。」(段落【0008】) ス. 「これらどれを用いても良い。ここで用いることのできるシリカの市販品として、疎水性シリカでは、R972D(日本アエロジル,BET比表面積:110m^(2)/g),R805(日本アエロジル,BET比表面積:150m^(2)/g),R974(日本アエロジル,BET比表面積:170m^(2)/g),F100(東レシリコーン,BET比表面積:140m^(2)/g),F101(東レシリコーン,BET比表面積:190m^(2)/g),N-70TS(キャボット,BET比表面積:100m^(2)/g),TS-530(キャボット,BET比表面積:200m^(2)/g),H-2000(ヘキスト,BET比表面積:140m^(2)/g),H30D(ヘキスト,BET比表面積250m^(2)/g)等がある。」(段落【0009】) セ.「このトナー200gを・・・・・(中略)・・・・・。 実施例3 モノマ スチレン(和光純薬製) 90重量部 ブチルアクリレート(和光純薬製) 10重量部 n-ブチルメタクリレート(和光純薬製) 5重量部 2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル トリメチルアンモニウムクロライド 5重量部 乳化剤 ネオゲンSC(第一工業製薬製) 0.2重量部 水溶性熱重合開始剤 N-50 (和光純薬) 0.3重量部 以上を用い、70℃で8時間乳化重合し、樹脂Aを得た。 樹脂A 100重量部 着色剤 カーボンブラック(150T,デグザ社製) 3重量部 アゾクロム染料(S:34,オリエント社製) 2重量部 内添剤 疎水性シリカ R972 (日本アエロジル) 5重量部 以上の混合物をスラッシャで分散攪拌しながら90℃で6時間保持した。この間樹脂A、着色剤、シリカのコンプレックス(トナー)が10?12μmに成長を確認し、このトナーを遠心分離し、ろ別した。このトナーをpHが8以下になるまで水洗を繰り返し、平均粒径10?12μmのトナーを得た。このトナー200gを前記装置(20枚/分)に搭載し、連続印字テストを行い印字品位、層厚規制部材のフィルミングの有無、現像剤担持体上のトナーの粒径分布の変化および現像剤担持体上のトナー層の表面電位の変化を調べた。 結果、2万枚の連続印字後も摩擦帯電部材のトナー融着や連続印刷前後のトナーの粒径分布には全く変化は認められず、印字・画像に白いすじと黒いすじも発生しなかった。また現像剤担持体上のトナー層の表面電位は連続印刷前後で-90V程度であり、変化していなかった。」(段落【0014】?【0016】) してみると、刊行物2には、下記の事項が記載されているといえる。 ・少なくとも結着樹脂、着色剤、無機微粒子を含有してなる電子写真用トナーであって、該無機微粒子が疎水性に表面処理させた無機微粒子である電子写真用トナー、及び、 ・トナー粒子は、無機微粒子を内添することによりトナー粒子の帯電性が向上すること、その作用は、懸濁重合法、ビルトアップ法、混練・粉砕法、機械的エネルギーにより融着させる方法等のトナー粒子の製造方法によらず有効であること。 (2)対比 本願補正発明と刊行物1発明とを比較すると、本願補正発明における「球形化度」と、刊行物1発明における「形状係数(MLS2)」とは、ともに同じ定義(MLS2)に基づくものであるから、刊行物1発明における「該トナーの形状係数が100以上120以下」は、本願補正発明における「該トナーの球形化度が100以上130以下」に包含される。 したがって、両発明は、 「少なくとも結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有してなる電子写真用トナーであって、該トナーの球形化度が100以上130以下であり、該離型剤の平均粒径が0.1μm以上1μm以下である電子写真用トナー。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]トナーを構成する成分として、本願補正発明においては、「無機微粒子」を使用するのに対し、刊行物発明においては、そのような特定がない点。 [相違点2]離型剤の形状に関し、本願補正発明においては、「長径と短径との比が1.1以上10以下」であることを規定するのに対し、刊行物発明においては、そのような比率の明記がない点。 [相違点3]「無機微粒子」に関し、本願補正発明においては、「無機微粒子が疎水性に表面処理させた無機微粒子」であることを規定するのに対し、刊行物発明においては、無機微粒子の使用が記載されていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 (相違点1及び3について) まず、刊行物1発明における「トナー粒子」は、無機微粒子を含有することが記載されていないが、刊行物2には、上記摘記事項コ.のとおり、無機微粒子である、シリカ微粒子、しかも、疎水性シリカ(上記摘示事項ス.、セ.)をトナー粒子中に内添することにより、トナーの帯電性を向上させることができる(上記摘示事項サ.、ス.)ことが記載されている。 さらに、刊行物2には、そのような疎水性化したシリカ微粒子の内添による効果は、トナー粒子の製造方法によらず有効であることが示唆されている(上記摘示事項シ.)。 したがって、刊行物1発明のトナー粒子の製造に当り、さらに帯電性の向上を意図して、刊行物2に記載された疎水性シリカの内添を適用することは、刊行物1及び2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想起することである。 (相違点2について) 次に、刊行物1発明には、上記摘示事項イ.に、「縦方向の最大長が厚さの2倍以上であり、横方向の最大長が厚さの1.5倍以上である薄片状のワックス粒子の割合が75%以上であること」として、トナー粒子の厚さを基準として、縦方向の最大長と、横方向の最大長の比率が記載されており、例えば、縦方向の最大長が厚さの2倍で、横方向の最大長が厚さの1.5倍の場合は、長径と短径との比が1.33となるから、刊行物1発明においても離型剤の形状が「長径と短径との比が1.1以上10以下」を満たしている蓋然性が高い。 また、上記記載によれば、刊行物1発明のトナー粒子は、少なくとも縦長の形状を有するものであることが明らかであるから、その形状を表現するために、長径と短径との比で表わすことは、当業者が適宜為し得る設計的事項に過ぎないし、長径/短径の比の上限値、下限値を好ましい範囲に選定することも、当業者が実験や経験に基づき適宜なし得る設計的事項である。 (本願発明が奏する効果に関して) 本願明細書の段落【0006】では、発明の目的として、「発色性、定着性、OHP透過性、帯電性に優れた電子写真用トナーの提供」を掲げている。 それらの効果のうち、OHP透過性は、刊行物1にも記載されており、定着性の改善は、刊行物2に記載されているとおりであるから、刊行物1の発明になるトナーに対して、定着性の更なる向上を図る目的で刊行物2に記載の事項の適用を試みることは当業者の容易に想起しうるところであり、上記相違点によって本願発明が奏する効果も、予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 してみると、相違点1?3に係る構成の変更は、当業者が刊行物1及び2に記載された発明に基づいて適宜為し得たことである。 (5)まとめ 以上のように、本願補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.補正却下の決定についてのむすび 以上述べたとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成18年10月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、当初明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、及び無機微粒子を含有してなる電子写真用トナーであって、 該トナーの球形化度が100以上130以下であり、 該離型剤の平均粒径が0.1μm以上1μm以下、且つ長径と短径との比が1.1以上10以下であることを特徴とする電子写真用トナー。」 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用された刊行物1,2、及び、その記載事項は、前記第2.2.ア.?ス.で示したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から「無機微粒子」に関して、「疎水性に表面処理させた無機微粒子である」と限定した点を削除したものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加 したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-03 |
結審通知日 | 2008-09-09 |
審決日 | 2008-09-24 |
出願番号 | 特願2000-121160(P2000-121160) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菅野 芳男 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
淺野 美奈 伏見 隆夫 |
発明の名称 | 電子写真用トナー、及びその製造方法、並びに二成分現像剤 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 西元 勝一 |
代理人 | 中島 淳 |