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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1187365
審判番号 不服2007-5841  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-23 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 特願2004-142625「熱交換装置のパイプ接続構造,熱交換装置用操作バルブ,熱交換装置用操作バルブ構成体及び熱交換装置用操作バルブの操作部材」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開,特開2005-325872〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は,平成16年5月12日の出願であって,平成18年5月12日に特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされたものの,平成19年1月23日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年3月23日に特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされたものである。

2.平成19年3月23日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲における請求項1ないし12のうちの請求項6は,
「圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器を循環接続してなる熱交換装置において,前記圧縮機と前記凝縮器に取り付けられるようになっているとともに,冷媒用のパイプを接続するためのパイプ接続機構と冷媒の循環経路を開閉するバルブ機構とを備えたものであって,
操作バルブ構成体と操作部材とから構成され,
前記操作バルブ構成体は,前記パイプの挿入を可能とした筒状の継手本体と,前記バルブ機構とから構成され,
前記バルブ機構は,前記継手本体と一体に且つ前記継手本体に対して略直角に連通するように形成した筒部内に弁体を螺進可能に設けた形態であり,
前記パイプ接続機構は,
前記継手本体と,
前記継手本体に螺合される筒状の締付部材と,
前記継手本体内に挿入された前記パイプを囲むような筒状をなす金属製の締付リングと,
パイプ挿入方向に対して傾斜したテーパ面を有し,前記締付部材の螺進に伴い前記締付リングを前記継手本体の内周に対し気密状に密着させつつ縮径方向へ塑性変形させることで,その締付リングが前記パイプの外周に対し変位規制状態に食い込み及び/又は気密状態に密着する形態で締め付けるようにした縮径手段とを備えて構成され,
前記締付部材と前記締付リングとを組み付けることによって前記操作部材が構成されていることを特徴とする熱交換装置用操作バルブ。」
となった。

本件補正は,本件補正前の請求項6に係る発明を特定するのに必要な事項である,バルブ機構における「筒部」が,継手本体「に対して略直角に」連通するように形成したものであることを実質的に特定したものであるから,平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項6に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-232474号公報(以下「引用例」という。)には,図面と共に,以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,空圧機器・油圧機器の配管,冷熱空調機等の冷媒ガス充填用の配管,住宅用の給水・給湯などの水回り設備の配管などに用いられる金属製パイプの管継手であって,配管用のパイプを接続した後はそのパイプは外さない,という形態で使用される管継手に関するものである。」

・「【0011】
【発明の実施の形態】[実施形態1]以下,本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図7を参照して説明する。本実施形態の管継手Jは,主として空圧機器・油圧機器等の流体圧作動機器の配管に用いられる銅製(銅以外にもステンレスなどの他の金属でもよい)のパイプPを接続させるために用いられる。この他には,冷熱空調機等の冷媒ガス充填用に用いられる金属製のパイプPや,住宅用の給水・給湯などの水回り設備の配管に用いられる金属製のパイプPを接続させる場合にも適用することができる。」

・「【0012】管継手Jは,金属製の継手本体10,金属製の締付部材30,及び金属製の2つの締付リング40,50から構成されている。・・・。継手本体10は,全体として筒状をなし,その外周前端部には雄ネジ部11が形成され,この雄ネジ部11を相手側配管部材(図示せず)に螺合することにより管継手Jがその相手側配管部材に接続されるようになっている。継手本体10の後端部外周には,締付部材30を螺合させるための雄ネジ部12が形成されている。」

・「【0014】・・・。接続孔16の後端側部分は,後方に向かって拡径する後部テーパ孔20とされ,この後部テーパ孔20の内周面はテーパ面21(本発明の構成要件である縮径手段)とされている。」

・「【0016】2つの締付リング40,50は,継手本体10内に挿入されたパイプPを囲むような円筒状をなすとともに,軸方向(パイプ挿入方向)に沿って前後に並ぶように配されており,いずれも銅製とされている。前側に配される第1締付リング40の外周面には,テーパ面41(本発明の構成要件である縮径手段)が,第1締付リング40のほぼ全長に亘り前方に向かって縮径する形態で形成されている。このテーパ面41の傾斜角度は,継手本体10のテーパ面21よりも大きく設定されている。また,第1締付リング40の内周のうち,前端側部分は外周側のテーパ面41と略平行なテーパ状傾斜面42とされ,中央部分は,テーパ状傾斜面42の後端の内径よりも径の大きい定径面43とされ,このテーパ状傾斜面42の後端と定径面43との境界部分には,斜め前内向きに尖ったエッジ状の食い込み部44が全周に亘って連続して形成されている。」

・「【0022】・・・。この締付部材30の螺進に伴い,両締付リング40,50が縮径するように塑性変形させられてパイプPの外周を締め付ける。」

・「【0023】これにより,第1締付リング40の前端の締付部47が,前進しながら,継手本体10のテーパ面21の傾斜及び弧状部22の曲面にしたがって縮径変形させられつつパイプPの外周に食い込むとともに,パイプPの外周部と締付部47の双方が塑性変形を生じつつ互いに隙間なく水密状に密着される。一方,この締付部47の外周と継手本体10の内周との間でも,隙間なく水密状に密着した状態となる。また,これに伴い,第1締付リング40の食い込み部44が縮径してパイプPの外周に対して楔のように食い込むと共に水密状に密着した状態となる。そして,外周側のテーパ面41における食い込み部44と対応する部分も,継手本体10のテーパ面21に対して水密状に密着する。
【0024】また,この第1締付リング40の締付け動作とほぼ同時に,第2締付リング50の前端の締付部55が,第1締付リング40に追従するように前進しながら,第1締付リング40の内周のテーパ面45の傾斜及び弧状面46の曲面にしたがって縮径変形させられつつパイプPの外周に食い込むとともに,パイプPの外周と締付部55の双方が塑性変形を生じつつ互いに隙間なく水密状に密着される。」

・「【0025】上記のように両締付リング40,50の縮径が進んで締付リング40,50がパイプPに対して正規の締付け状態になると,各締付リング40,50の締付部47,55の前端及び食い込み部44がパイプPの外周に対して食い込むことにより,パイプPの後方への遊動,即ち管継手Jからの抜けが規制され,パイプPは確実に接続状態にロックされる。同時に,各締付リング40,50の締付部47,55及び食い込み部44がパイプPの外周に密着することで,締付リング40,50の内周とパイプPの外周との隙間が水密状にシールされた状態になるとともに,継手本体10の内周後端部と第1締付リング40の外周前端部との間,及び第1締付リング40の内周後端部と第2締付リング50の外周前端部との間も,水密状にシールされる。」

・「【0032】[実施形態2]以下,本発明を具体化した実施形態2を図8及び図9を参照して説明する。本実施形態2の管継手60は,上記実施形態1の管継手Jにバルブ機構61を設けたものであって,継手本体62の内周に筒状弁体63を軸方向への移動可能に設けるとともに,継手本体62の前端部に形成した雌ネジ孔64に弁杆65の前端を螺合により固定して構成されている。尚,その他の構成については上記実施形態1と同じであるため,同じ構成については,同一符号を付し,構造,作用及び効果の説明は省略する。尚,この実施形態2のバルブ機構61を備えた管継手60(以下の実施形態3,4の管継手80,100も同様)は,例えばエアコンの冷媒用の配管に用いられ,パイプPを接続した状態ではバルブ機構61が開弁状態となって冷媒の流通が可能となり,エアコンの交換などのために一時的にパイプPを外す際には,締付部材30を緩めるのに伴ってバルブ機構61が自動的に閉弁されることで冷媒の漏出を防止するようにしたものである。」

・「【0035】[実施形態3]以下,本発明を具体化した実施形態3を図10及び図11を参照して説明する。本実施形態3の管継手80は,上記実施形態1の管継手Jにバルブ機構81を設けたものである。」

・「【0037】・・・。尚,このバルブ機構81の開閉は,管継手80に対するパイプPの接続とは独立して行われる。」

・図5には,締付部材30が筒状のものであることが示されている。

・図2には,テーパ面21がパイプPの挿入方向に対して傾斜していることが示されている。

・図1及び2には,締付部材30と,第1締付リング40及び第2締付リング50とが,管継手Jに組み付けられている状態が示されている。

これらの記載事項及び図示内容によれば,引用例には,
「冷熱空調機において,冷熱空調機の冷媒ガス充填用に用いられるパイプを接続するための機構を備えたものであって,
組み付けられている締付部材及び2つの締付リングから構成され,
前記機構は,
継手本体と,
前記継手本体に螺合される筒状の締付部材と,
前記継手本体内に挿入された前記パイプを囲むような円筒状をなす金属製の2つの締付リングと,
パイプ挿入方向に対して傾斜したテーパ面を有し,前記締付部材の螺進に伴い前記2つの締付リングを前記継手本体の内周に対し水密状に密着させつつ縮径方向へ塑性変形させることで,その2つの締付リングが前記パイプの外周に対し食い込み及び水密状態に密着する形態で締め付けるようにした縮径手段とを備えて構成されている冷熱空調機用管継手。」
という事項を含む発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定することができる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「冷熱空調機」は本願補正発明の「熱交換装置」に相当し,以下同様に,「冷熱空調機の冷媒ガス充填用に用いられるパイプ」は「冷媒用のパイプ」に,「機構」は「パイプ接続機構」に,それぞれ相当する。
次に,本願補正発明の「操作部材」が「締付部材と締付リングとを組み付けることによって」構成されるものであることに照らせば(請求項6の下から2行目の記載を参照),引用発明の「組み付けられている締付部材及び2つの締付リング」は,実質的に,本願補正発明の「操作部材」に相当する。
また,引用発明の「2つの締付リング」は,実質的に,本願補正発明の「締付リング」と同様の機能・作用を有し,パイプの接続を簡易かつ確実なものにするという同様の効果を奏するためのものであること,及び,本願補正発明では「締付リング」の個数についての限定がされていないことを踏まえると,引用発明の「円筒状をなす金属製の2つの締付リング」は,本願補正発明の「筒状をなす金属製の締付リング」に相当する。
続いて,引用発明の「水密状」は,実質的に,本願補正発明の「気密状」に相当する。
さらに,引用発明の「パイプの外周に対し食い込み及び水密状態に密着する形態」は,少なくともその「食い込み」によって変位規制状態になるものと認められるから,本願補正発明の「パイプの外周に対し変位規制状態に食い込み及び/又は気密状態に密着する形態」に相当する。
また,前述したとおり,引用発明の「組み付けられている締付部材及び2つの締付リング」は,本願補正発明の「操作部材」に相当するから,本願補正発明でいう「締付部材と締付リングとを組み付けることによって操作部材が構成されている」という特定事項は引用発明にもあるということができる。
最後に,引用発明の「冷熱空調機用管継手」と本願補正発明の「熱交換装置用操作バルブ」とは,「熱交換装置用部品」という概念で共通する。

そうすると,両者は,
「熱交換装置において,冷媒用のパイプを接続するためのパイプ接続機構を備えたものであって,
操作部材から構成され,
前記パイプ接続機構は,
継手本体と,
前記継手本体に螺合される筒状の締付部材と,
前記継手本体内に挿入された前記パイプを囲むような筒状をなす金属製の締付リングと,
パイプ挿入方向に対して傾斜したテーパ面を有し,前記締付部材の螺進に伴い前記締付リングを前記継手本体の内周に対し気密状に密着させつつ縮径方向へ塑性変形させることで,その締付リングが前記パイプの外周に対し変位規制状態に食い込み及び/又は気密状態に密着する形態で締め付けるようにした縮径手段とを備えて構成され,
前記締付部材と前記締付リングとを組み付けることによって前記操作部材が構成されている熱交換装置用部品。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

・相違点1
熱交換装置に関し,本願補正発明では「圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器を循環接続してなる」との特定がされているのに対し,引用発明ではかかる特定がされていない点。

・相違点2
熱交換装置用部品に関し,本願補正発明では「圧縮機と凝縮器に取り付けられるようになっている」との特定がされているのに対し,引用発明ではかかる特定がされていない点。

・相違点3
熱交換装置用部品に,パイプ接続機構のほか,本願補正発明では「冷媒の循環経路を開閉するバルブ機構」を備えたとの特定がされているのに対し,引用発明ではかかる特定がされていない点。

・相違点4
熱交換装置用部品が,本願補正発明では操作部材と「操作バルブ構成体」とから構成されるとの特定がされているのに対し,引用発明では「操作バルブ構成体」についての特定がされていない点。

・相違点5
熱交換装置用部品に関し,本願補正発明では「操作バルブ構成体は,パイプの挿入を可能とした筒状の継手本体と,バルブ機構とから構成され,前記バルブ機構は,前記継手本体と一体に且つ前記継手本体に対して略直角に連通するように形成した筒部内に弁体を螺進可能に設けた形態」であるとの特定がされているのに対し,引用発明ではかかる特定がされていない点。

・相違点6
熱交換装置用部品における「部品」が,本願補正発明では「操作バルブ」であるのに対し,引用発明では「管継手」である点。

(4)相違点についての判断
・相違点1について
熱交換装置において,圧縮機,凝縮器,膨張弁及び蒸発器を循環接続する構成とすることは,周知の技術である(例えば,特開2001-4251号公報【0017】の記載を参照するとその図1には,冷凍機(「熱交換装置」に相当)用冷凍サイクル10において,冷媒圧縮機11,冷媒凝縮器12,膨張弁14及び冷媒蒸発器15が循環接続されているものが示されている)。
そうすると,引用発明において,前記周知の技術を参酌すると,熱交換装置(「冷熱空調機」が相当)を,「圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器を循環接続してなる」ものとして構成することは当業者が容易に想到できたことである。
したがって,引用発明において前記周知の技術を参酌し,相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

・相違点2ないし6について
前記「2.(2)」で摘記したとおり,引用例の【0032】や【0035】には,(パイプ接続機構を備えた)管継手に,冷媒用の配管を開閉するバルブ機構を設けたものが開示されている。
また,圧縮機や凝縮器に対してバルブ機構を介してパイプを接続すること,及び,バルブ機構として,弁本体に対して略直角に連通するように形成した筒部内に弁体を螺進可能に設けた形態は,いずれも周知の技術である(例えば,原査定において周知の技術として示された特開2000-310460号公報図8における,コンプレッサー81(「圧縮機」に相当),熱交換器82(「凝縮器」に相当),液側サービスバルブ84,ガス側サービスバルブ85,及び,配管90,91を参照。また,同公報図1には,空気調和機用のサービスバルブであって,弁本体8に対して略直角に連通するように形成した弁室3(「筒部」に相当)内に弁体10を螺進可能に設けたものが示されていることを参照)。
ここで,引用例の前記開示及び前記周知の技術を参酌すると,引用発明の管継手にバルブ機構を設け,圧縮機と凝縮器とに取り付けられるようにすること,及び,そのバルブ機構として,弁本体に対して略直角に連通するように形成した筒部内に弁体を螺進可能に設けた形態のものとすることは,いずれも当業者が容易に想到できたことである。その際,管継手の継手本体と,バルブ機構の弁本体とを,一体化した共用のものとするか否かは設計の際に適宜選択すればよい事項であると認められるから,継手本体と弁本体とを一体化した共用のものと設定することは当業者にとって適宜実施できることである。これに加えて,引用発明の継手本体がパイプの挿入を可能とした筒状のものであることは,引用発明の「継手本体内に挿入されたパイプ」という構成から理解できることを踏まえると,引用発明に引用例の前記開示及び前記周知の技術を参酌して容易に想起されるものは,パイプの挿入を可能とした筒状の継手本体と,バルブ機構とを有することになるから,これらを「操作バルブ構成体」と称することは適宜行えばよいことに過ぎない。同様にして,引用発明の管継手に前記周知の技術のバルブ機構を設けたものを,「熱交換装置用操作バルブ」と称することも適宜行えばよいことに過ぎない。
したがって,引用発明において,引用例の前記開示及び前記周知の技術を参酌し,相違点2ないし6に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

そして,本願補正発明の全体構成から奏される効果も,引用発明及び引用例の開示並びに周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明については,引用発明及び引用例の開示並びに周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する特許法126条5項の規定に違反するものであり,平成18年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成18年5月12日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器を循環接続してなる熱交換装置において,前記圧縮機と前記凝縮器に取り付けられるようになっているとともに,冷媒用のパイプを接続するためのパイプ接続機構と冷媒の循環経路を開閉するバルブ機構とを備えたものであって,
操作バルブ構成体と操作部材とから構成され,
前記操作バルブ構成体は,前記パイプの挿入を可能とした筒状の継手本体と,前記バルブ機構とから構成され,
前記バルブ機構は,前記継手本体と一体に且つ前記継手本体と連通するように形成した筒部内に弁体を螺進可能に設けた形態であり,
前記パイプ接続機構は,
前記継手本体と,
前記継手本体に螺合される筒状の締付部材と,
前記継手本体内に挿入された前記パイプを囲むような筒状をなす金属製の締付リングと,
パイプ挿入方向に対して傾斜したテーパ面を有し,前記締付部材の螺進に伴い前記締付リングを前記継手本体の内周に対し気密状に密着させつつ縮径方向へ塑性変形させることで,その締付リングが前記パイプの外周に対し変位規制状態に食い込み及び/又は気密状態に密着する形態で締め付けるようにした縮径手段とを備えて構成され,
前記締付部材と前記締付リングとを組み付けることによって前記操作部材が構成されていることを特徴とする熱交換装置用操作バルブ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.」で検討した本願補正発明から,発明を特定するのに必要な事項である,バルブ機構における「筒部」が,継手本体「に対して略直角に」連通するように形成したものであるとの特定を実質的に省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(4)」に記載したとおり引用発明及び引用例の開示並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,本願発明についても,相違点5についての検討のうちバルブ機構における「筒部」が継手本体「に対して略直角に」連通するように形成したものである点についての検討が不要になるほかは同様の理由により,引用発明及び引用例の開示並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明については,引用発明及び引用例の開示並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,特許法49条2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-05 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-24 
出願番号 特願2004-142625(P2004-142625)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
P 1 8・ 575- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 田良島 潔
本庄 亮太郎
発明の名称 熱交換装置のパイプ接続構造、熱交換装置用操作バルブ、熱交換装置用操作バルブ構成体及び熱交換装置用操作バルブの操作部材  
代理人 後呂 和男  
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所  

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