ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 H05K 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H05K 審判 全部無効 2項進歩性 H05K |
---|---|
管理番号 | 1187791 |
審判番号 | 無効2006-80271 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-12-27 |
確定日 | 2008-09-24 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3502502号「回路形成用基板および回路基板」の特許無効審判事件についてされた平成19年12月5日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10016号 平成20年5月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3502502号の請求項1?8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 平成7年4月17日 国内優先出願(特願平7-90658号、同7-90659号) 平成7年8月1日 国内優先出願(特願平7-196437号、同7-196438号) 平成8年4月10日 本件出願 平成15年12月12日 本件特許権の設定登録 平成18年12月27日 本件特許無効審判請求 平成19年3月26日 被請求人:訂正請求書、答弁書 平成19年5月11日 請求人:弁駁書 平成19年7月2日付 訂正拒絶理由通知 平成19年8月9日 被請求人:意見書 平成19年12月5日 無効審決(訂正を認めず。全部無効) 平成20年1月16日 被請求人:知的財産高等裁判所出訴 (平成20年(行ケ)第10016号) 平成20年4月14日 訂正審判請求(訂正2008-390041号) 平成20年5月9日 請求人:訂正2008-390041号審判事件に上申書 平成20年5月27日 差戻し決定(無効審判審決取消) 平成20年6月4日付 訂正請求のための期間指定通知 なお、被請求人は平成20年6月4日付期間指定通知(指定期間:10日)に対して訂正請求をしなかったので、被請求人が行った平成20年4月14日付の訂正審判請求(訂正2008-390041号)は、特許法第134条の3第5項の規定により、その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書又は図面を援用した、指定期間の末日である平成20年6月14日付訂正請求とみなされた。 また、特許法第134条の2第4項により、この平成20年6月14日付訂正請求によって、平成19年3月26日付訂正請求は取り下げられたものとみなされた。 2.平成20年6月14日付訂正請求の可否について 2-1.訂正請求の要旨 当該訂正請求の要旨は、本件特許の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、訂正事項は、下記のとおりである。 2-1-1.訂正事項a 請求項1に記載された「回路形成用基板であって、長尺ステンレス箔が」を「回路形成用基板であって、ポリイミド樹脂が一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有し ![]() かつ、長尺ステンレス箔が」と訂正する。 2-1-2.訂正事項b 請求項3?5及び、請求項11?13を削除する。 2-1-3.訂正事項c 訂正前請求項6、9(訂正後請求項3、6に対応)に記載された、「クロム層またはチタン層を介して、もしくは介さずに銅層を積層してなる」を、訂正後請求項3、6において、「クロム層を介して銅層を積層してなる」と訂正する。 2-1-4.訂正事項d?i 訂正前の請求項6?10、14の項番号を繰り上げて訂正後の請求項3?8とするとともに、訂正後の請求項4?8における引用項の項番号を整合させる。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 2-2-1.訂正事項aについて 訂正事項aは、ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなる回路形成用基板に関し、ポリイミド樹脂を、一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有するものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 そして、ポリイミド樹脂が、一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有する点は、願書に添付した明細書の段落【0079】?【0080】の実施例9の記載に裏付けられているから、上記訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-2-2.訂正事項b、d?iについて 訂正事項bは、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、また、訂正事項d?iは、訂正事項bにおける請求項の削除に伴って、請求項の項番号を繰り上げるとともに、引用項の項番号を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-2-3.訂正事項cについて 訂正事項cは、「クロム層またはチタン層を介して、もしくは介さずに銅層を積層してなる」という、積層される層の種類について、いくつかの選択肢を規定した記載の中から、「チタン層を介して、もしくは介さずに銅層を積層してなる」という選択肢を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 そして、クロム層を介して銅層を積層してなる点は、願書に添付した明細書の段落【0082】の「クロム、銅を連続的に同一バッチ内でメタライジング処理した。」という記載に裏付けられているから、上記訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件発明 本件特許明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、6における「サスペンジョンあり、かつ、」は、「サスペンジョンであり、かつ、」の誤記であると認めるので、本件請求項1乃至8に係る発明は、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 長尺ステンレス箔の片面もしくは両面に、ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなる回路形成用基板であって、ポリイミド樹脂が一般式〔化1〕 から選ばれる構造単位を分子内に有し ![]() かつ、長尺ステンレス箔がハードディスク用サスペンジョンであり、かつ、 長尺ステンレス箔の厚みが10?30μmであり、さらに、 5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする回路形成用基板。 【請求項2】 ポリイミド樹脂層の厚みが3?25μmである請求項1記載の回路形成用基板。 【請求項3】 長尺ステンレス箔およびポリイミド樹脂層上、またはポリイミド樹脂層上に、さらにクロム層を介して銅層を積層してなる導体層が形成されている請求項1記載の回路形成用基板。 【請求項4】 ポリイミド樹脂層が感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成されている請求項1または3記載の回路形成用基板。 【請求項5】 5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする請求項3記載の回路形成用基板。 【請求項6】 長尺ステンレス箔の片面もしくは両面に、ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなる回路形成用基板の長尺ステンレス箔およびポリイミド樹脂層上、またはポリイミド樹脂層上に、さらにクロム層を介して銅層を積層してなる導体層が形成されてなる請求項3記載の回路形成用基板において、導体層が微細パターン化されており、 長尺ステンレス箔がハードディスク用サスペンジョンであり、かつ、 長尺ステンレス箔の厚みが10?30μmであり、さらに、 5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする回路基板。 【請求項7】 5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする請求項6記載の回路基板。 【請求項8】 ポリイミド樹脂層が感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成されている請求項6記載の回路基板。」 (以下、請求項1ないし8に係る発明を、「本件発明1」ないし「本件発明8」といい、これらをまとめて「本件発明」という。) 4.請求人の主張 請求人は、本件発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲第1号証乃至甲第13号証を提出し、以下の無効理由1?3を主張している。 無効理由1:特許法第29条第2項違反 本件発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1?9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 無効理由2:特許法第36条第4項違反 本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本件特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 無効理由3:特許法第36条第6項第1号違反 本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 5.証拠方法 甲第1号証:特開昭60-246015号公報 甲第2号証:特開平2-172109号公報 甲第3号証:特公平7-19945号公報(平成7年3月6日公告) 甲第4号証:特開平5-347461号公報 甲第5号証:特開昭61-111181号公報 甲第6号証:特開平5-320379号公報 甲第7号証:特開平5-5995号公報 甲第8号証:特開平3-188449号公報 甲第9号証:特開平1-118527号公報 甲第10号証:特願平7-90658号の願書及び願書に添付した明細書 甲第11号証:特願平7-90659号の願書及び願書に添付した明細書 甲第12号証:特願平7-196437号の願書及び願書に添付した明細書 甲第13号証:特願平7-196438号の願書及び願書に添付した明細書 (甲第10?13号証は、本件特許の優先権主張基礎明細書) 6.被請求人の主張 一方、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、平成19年3月26日付答弁書及び、平成20年4月14日付審判請求書(訂正2008-390041号)において、上記無効理由1ないし3はいずれも理由がない旨主張した。 7.甲各号証の記載事項 7-1.甲第1号証 (1-ア)「2.特許請求の範囲 (1)磁気ヘッドを保持するジンバルばねにおいて、ばね片の表面に絶縁層を形成すると共に、この絶縁層上に前記磁気ヘッドのリード線を構成する導電膜を形成したことを特徴とする磁気ヘッド用ジンバルばね」(特許請求の範囲の請求項1) (1-イ)「本発明は電子計算機の記憶装置などに用いられる磁気ヘッド用ジンバルばねに関するものである。 [従来技術] 一般に高密度記録のためには磁気ヘッドと記憶媒体との間隙は小さいほど有利である。一方、記憶媒体として用いられている磁気円板などにおいては面振れや熱膨張があり、磁気ヘッドを単に機械的に固定したのでは前記間隙を一定に保つことは困難となる。このため、近年磁気ヘッドをジンバルばねに保持し流体力学的に浮動させ、前記面振れに追従しながら常に一定の微小間隙を保つ浮動ヘッド機構が開発されている。」(1頁左下欄15行?右下欄6行) (1-ウ)「10はこの絶縁層9上に周知の蒸着手段およびフォトリソグラフィ技術によって形成されたアルミニウムあるいはクロムと金の合金などの導電材からなる導電膜である。この導電膜10は前記絶縁層9に沿った一様な厚さおよび幅を有する薄膜状に形成され、薄膜ヘッド3の電極6に近接する位置にまで延設されている。このため、この導電膜10は薄膜ヘッドとばね片2の基端部とを電気的に接続するリード線を構成している。」(2頁左下欄10?19行) (1-エ)「本実施例においては、前記ばね片2にジンバルばね材として広く使用されている厚さ20?60μmのステンレス板を用い、先ずこのステンレス板を基板としてこの表面上にポリイミド樹脂を所定の厚さ例えば厚さ10μm程度に塗布した後、このポリイミド樹脂を周知のポリイミド樹脂のエッチング法により、ばね片2の基端部から縁部に沿って保持部2aに至る連続した所定の形状にエッチングして絶縁層9を形成している。・・・次いで、この絶縁層9上にアルミニウムあるいはクロムと金の合金などを周知の蒸着手段によって蒸着し、蒸着された膜を周知のフォトリソグラフィ技術により所定の形状に形成している。そして、最後にステンレス板をジンバル形状、すなわちばね片2の形状にエッチングすることにより、ジンバルばね8を形成している。」(2頁右下欄4行?3頁左上欄5行) 7-2.甲第2号証 (2-ア)「本発明は処理装置に使用される磁気ヘッドとディスク駆動機構との間に電気的接続をもたらすケーブルに関する。・・・」(2頁左上欄9行?11行) (2-イ)「E.実施例 本発明によれば、ステンレス・スチール・フォイルが可撓性支持ケーブルの基板として用いられる。ステンレス・スチール・フォイルは必要な可撓性とバネ作用をもたらす・・・通常、ステンレス・スチール・フォイルの厚さは約1 1/2ないし2ミルである。ポリマー材料の層をステンレス・スチール・フォイルの主要面の1つの頂部に設ける。ポリマー材料はポリイミドであることが好ましい。・・・所定の箇所にあるポリマー材料の層の頂面には、導電性回路パッドがある。本発明の好ましい態様において導電性回路パッドはクロムの層、銅の層を含んでおり、・・・クロムはポリマー層と銅の間の接着を行うために設けられたのであり・・・」(3頁右上欄2行?左下欄2行) 7-3.甲第4号証 (4-ア)「【請求項1】 イミド化後の線膨張係数がプリント回路用金属箔より1×10^(-6)(1/K)以上大となる半硬化状態のポリアミック酸層と1×10^(-6)(1/K)以上小となる半硬化状態ポリアミック酸層とから形成され、しかもイミド化後は層全体と金属箔との線膨張係数の差が 5×10^(-6)(1/K)以下であるポリアミック酸フィルム。」(【請求項1】) (4-イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、接着剤層を持たない2層フレキシブルプリント回路用基板として利用可能なポリアミック酸フィルムに関するものである。」(【0001】) (4-ウ)「【0011】該フィルムの線膨張係数が小のポリアミック酸層面を導体箔板に熱圧着することにより、カールのない2層フレキシブルプリント回路用基板を得ることが出来る。本発明のポリアミック酸フィルムは全体としてイミド化後の線膨張係数が金属箔と近いため、加熱硬化後の冷却による金属箔付の基板としてのカールが殆どない。金属箔との線膨張係数の差が 5×10^(-6)(1/K)より大きいとカールを生じてしまう。・・・」(【0011】) (4-エ)「【0018】本発明において、所定の線膨張係数のポリアミック酸は、それぞれ酸無水物とジアミンの種類を1種又は2種以上を適宜組み合わせて共重合させるとか、あるいは2種以上のポリアミック酸溶液をブレンドして得ることができる。」(【0018】) (4-オ)「【0020】導体層として用いることのできる材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル等の単体の金属箔に加え、Fe-Ni合金、Fe-Cr-Al合金等の金属箔が挙げられる。」(【0020】) (4-カ)「【0022】 【実施例】(合成例1)・・・、精製した無水の4,4'-ジアミノジフェニルエーテル200gをとり、・・・溶解した。・・・次いで、精製した無水のピロメリット酸二無水物218gを撹拌しながら少量ずつ・・・添加後、・・・、反応を終了してポリアミック酸溶液Aを得た。 【0023】(合成例2)・・・、精製した無水のパラフェニレンジアミン108gをとり、・・・溶解した。・・・次いで、精製した無水の3,3',4, 4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294gを撹拌しながら少量ずつ・・・添加後、・・・、反応を終了してポリアミック酸溶液Bを得た。 【0024】(実施例1)ポリアミック酸溶液AおよびBを、・・・ ・・・ 【0029】(実施例3)実施例1のポリアミック酸溶液AおよびBを、固形分比がA/B=20/80になるように混合撹拌してEを得た。このポリアミック酸溶液Eを用いて銅箔光沢面上にイミド化後の厚みが25μmとなるように直接塗布し、・・・加熱乾燥し、イミド化した後、銅箔を全面エッチングすることによりEのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数をTMAを用いて50?150℃の範囲で測定したところ、15×10^(-6)(1/K)であった。」(【0022】?【0029】) 7-4.甲第8号証 (8-ア)「一般に、ポリイミド系樹脂膜のエッチング或いはパターン形成には、フォトレジスト膜がマスク材として用いられ、アルカリ性水溶液又はヒドラジン系溶液をエッチング液に用いて穴開け(パターン化)し、その後不要となったフォトレジスト膜は剥離液で処理され、剥離除去される。 しかし、最近はポリイミド前駆体にパターン形成能を付与し、フォトレジスト膜の形成、剥離除去を不要とした感光性のポリイミド前駆体とし、プロセスの短縮化が試みられている。」(1頁右下欄17行?2頁左上欄7行) 8.当審の判断 8-1.無効理由1について 8-1-1.本件発明1に対する無効理由1について 8-1-1-1.甲第1発明の認定 甲第1号証には、摘示(1-ア)によれば、「ばね片の表面に絶縁層を形成すると共に、この絶縁層上に前記磁気ヘッドのリード線を構成する導電膜を形成した磁気ヘッド用ジンバルばね。」が記載されている。 また、摘示(1-イ)によれば、磁気ヘッド用ジンバルばねは、「電子計算機の記憶装置に用いられる」ものであって、「記憶媒体として用いられている磁気円板」を持つことおよび、「高密度記録のために」「磁気ヘッドと記憶媒体との」「間隙を一定に保つため、磁気ヘッドをジンバルばねに保持」するものであること、が記載されている。 また、摘示(1-ウ)によれば、導電膜は「蒸着手段およびフォトリソグラフィ技術によって形成された」「導電材からなる」ものであって、「薄膜ヘッドとばね片2の基端部とを電気的に接続するリード線を構成している。」ことが記載されている。 また、摘示(1-エ)によれば、「ばね片2にジンバルばね材として広く使用されている厚さ20?60μmのステンレス板を用い」ることが記載されている。 また、摘示(1-エ)によれば、絶縁層を形成することとは、「ポリイミド樹脂を所定の厚さ例えば厚さ10μm程度に塗布した後、このポリイミド樹脂を周知のポリイミド樹脂のエッチング法により、ばね片2の基端部から縁部に沿って保持部2aに至る連続した所定の形状にエッチングして絶縁層9を形成」することである、と記載されている。 また、摘示(1-エ)によれば、「ステンレス板を・・・エッチングすることにより、ジンバルばね8を形成している。」と記載されており、ステンレス板は、ジンバルばねの形成用ステンレス板であるといえる。 ジンバルばねの形成用ステンレス板を中心として、以上の記載をまとめると、甲第1号証には、 「高密度記録のために、電子計算機の記憶装置の記憶媒体として用いた磁気円板との間隙を一定に保つため、磁気ヘッドを保持するジンバルばねの形成用ステンレス板、であって、 厚さ20?60μmのステンレス板からなる、ばね片の表面に、ポリイミド樹脂を厚さ10μm程度に塗布した後、このポリイミド樹脂を所定の形状にエッチングして絶縁層を形成すると共に、この絶縁層上に前記磁気ヘッドのリード線を構成する、蒸着手段およびフォトリソグラフィ技術によって導電材からなる導電膜を所定の形状に形成した、ジンバルばねの形成用ステンレス板。」の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「甲第1発明」という。)。 8-1-1-2.本件発明1と甲第1発明との対比、判断 甲第1発明の「厚さ20?60μm」と、本件発明1の「厚みが10?30μm」とは、板形状のステンレスの厚さが20?30μmである点で共通しており、また、一般に、板と箔との区別は、厚さに基づいて行われるから、箔と重複する厚さである甲第1発明のステンレス板は、本件発明1の「ステンレス箔の厚みが20?30μm」であるともいえる。 また、板の表面とは、表面又は裏面の片方あるいは、表裏の両面のいずれかであるから、甲第1発明の「板からなる、ばね片の表面」は、本件発明1の「片面もしくは両面」に相当する。 また、甲第1発明の「ポリイミド樹脂を厚さ10μm程度に塗布した後、このポリイミド樹脂を所定の形状にエッチングして絶縁層を形成する」こととは、本件発明1の「ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなる」ことといえる。 また、甲第1発明の「高密度記録のために、電子計算機の記憶装置の記憶媒体として用いた磁気円板との間隙を一定に保つため」のものは、本件発明1の「ハードディスク用」といえる。 また、本件特許明細書【0006】の「ヘッドを実装するサスペンジョン」との記載からみて、甲第1発明の「磁気ヘッドを保持するジンバルばね」は、本件発明1の「サスペンジョン」に相当する。 また、磁気ヘッドのリード線を構成する導電膜を形成することは、回路形成であるから、導電膜を形成した、甲第1発明の「ジンバルばねの形成用ステンレス板」は、本件発明1の「回路形成用基板」といえる。 以上のことから、本件発明1と甲第1発明とは、「ステンレス箔の片面もしくは両面に、ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなる回路形成用基板であって、 ステンレス箔がハードディスク用サスペンジョンであり、かつ、 ステンレス箔の厚みが10?30μmである回路形成用基板。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A:ステンレス箔について、本件発明1は、「長尺」であるのに対し、甲第1発明においてはこの点について明らかでない点 相違点B:ポリイミドについて、本件発明1は、「ポリイミド樹脂が一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有し ![]() かつ、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)とステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にある」のに対して、甲第1発明は、この点について明らかでない点 で、相違する。 相違点A、Bについて検討する。 相違点Aについて:板や箔をコイル状などの長尺材として供給することは一般的であるから、甲第1発明のステンレス板は、長尺材であるともいえるので、相違点Aは実質的な相違でないか、かりに実質的な相違であるとしても、当業者が容易に想到しうる程度のものである。 なお、上記「長尺」との点につき、被請求人は、訂正2008-390041号の審判請求書の7、8頁において、「回路基板の生産において、長尺材をそのまま使用することは本件発明の優先日当時に現実的でなかった」ことを根拠に、「本件発明と甲第1号証発明が長尺ステンレス箔を用いる点で一致する」とはいえない旨主張しているが、ポリイミド樹脂層を形成した長尺材の回路形成用基板は、例えば、特開昭58-108132号公報の2頁左上欄3、4行、特開平6-190967号公報の【0035】、特公平1-15154号公報の4欄43、44行等に記載されているように多数存在しており、上記被請求人の主張は根拠のないものである。 相違点Bについて:本件発明において、nを規定する理由は、本件特許明細書の「基板を構成する各材料の熱膨張係数(線膨張係数)が異なっていると、発熱によって基板に反りが生じる。」(段落【0007】)、「(n)を、-5ppmから5ppmの間に調整することが、反りの防止の点から好ましい。」(段落【0013】)という記載からみて、「各材料の熱膨張係数(線膨張係数)が異なっていることによる反りの防止」のためと認められる。 これに対し、甲4号証には、摘示(4-ウ)に、「該フィルムの線膨張係数が小のポリアミック酸層面を導体箔板に熱圧着することにより、カールのない2層フレキシブルプリント回路用基板を得ることが出来る。本発明のポリアミック酸フィルムは全体としてイミド化後の線膨張係数が金属箔と近いため、加熱硬化後の冷却による金属箔付の基板としてのカールが殆どない。金属箔との線膨張係数の差が 5×10^(-6)(1/K)より大きいとカールを生じてしまう。」と記載され、摘示(4-ア)に、「イミド化後は層全体と金属箔との線膨張係数の差が 5×10^(-6)(1/K)以下であるポリアミック酸フィルム。」と記載されている。ここで、甲第4号証にいう、ポリアミック酸フィルムについて検討すると、甲第4号証の摘示(4-カ)に「4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物」を有する、「ポリアミック酸溶液A」と「パラフェニレンジアミン、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物」を有する「ポリアミック酸溶液B」とを混合攪拌して得たEを用いて加熱乾燥し、イミド化した後、エッチングすることにより、Eのポリイミドフィルムを得たことが記載されているから、甲4号証にいう、イミド化後のポリアミック酸フィルムは、「ポリイミド(樹脂)層」といえる。 次に、ポリイミドの構造単位について検討する。 摘示(4-カ)にいう「Eのポリイミドフィルム」は、ポリアミック酸溶液をブレンドすることによって得たものであるけれども、摘示(4-エ)には、「本発明において、所定の線膨張係数のポリアミック酸は、それぞれ酸無水物とジアミンの種類を1種又は2種以上を適宜組み合わせて共重合させるとか、あるいは2種以上のポリアミック酸溶液をブレンドして得ることができる。」と、ポリアミック酸溶液のブレンドの手段と、共重合の手段とを併記しているから、甲第4号証には、ポリアミック酸溶液A、Bの両成分である、「4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物、パラフェニレンジアミン、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物」の組み合わせを共重合して、ポリイミドを得ることについても、実質的に記載されているといえる。 そして、上記「4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物、パラフェニレンジアミン、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物」の組み合わせを共重合してポリイミドを得た場合、酸成分R1がピロメリット酸二無水物に対応した構造単位も形成される一方、酸成分R1が ![]() (3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対応)、ジアミン成分R2が ![]() (パラフェニレンジアミンに対応)と ![]() (4,4'-ジアミノジフェニルエーテルに対応)、という組み合わせの構造単位も形成され、後者の構造単位は、一般式〔化1〕にあたるので、甲第4号証に実質的に記載されたポリイミドは、後者の構造単位を含むから、本件発明1?8にいう、「ポリイミド樹脂が一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有し」ているポリイミドである、といえる。 次に、平均熱膨張係数を測定する温度範囲について検討する。 甲第4号証の摘示(4-カ)において、「線膨張係数をTMAを用いて50?150℃の範囲で測定したところ、」と記載されており、該温度範囲を上下に約50℃づつ拡げた範囲である「5?200℃」とは、平均熱膨張率の測定温度範囲について、おおむね重複しているから、測定温度範囲に基づく格別な差異はないといえる。 甲第4号証の摘示(4-ウ)に記載された事項を中心に、甲4号証に記載された事項を纏めると、回路基板を得るにあたり、金属層とポリイミド樹脂層との積層体において、各材料の熱膨張係数(線膨張係数)が異なっていることによる反りの防止を目的として、ポリイミド樹脂が一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有し、かつ、5?200℃における金属箔の熱膨張率とポリイミド樹脂層の熱膨張率との差を、-5ppmから5ppmの間に調整する発明が記載されているといえる。 それゆえ、甲第4号証に記載された発明に基づき、甲第1発明において、ポリイミド樹脂が一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有するものを選定し、5?200℃における金属箔であるステンレス箔の平均熱膨張率とポリイミド樹脂層の平均熱膨張率との差を、-5ppmから5ppmの間に調整することは、当業者が容易に想到しうるものである。 したがって、本件発明1は、甲第1、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-2.本件発明2に対する無効理由1について 本件発明2は、本件発明1の構成を全て含み、かつ、ポリイミド樹脂層の厚みが3?25μmであることを更に限定した発明である。 甲第1発明も、「ポリイミド樹脂を厚さ10μm程度に塗布した」ものであるから、ポリイミド樹脂層の厚みが3?25μmである、といえる。 したがって、本件発明2は、甲第1、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-3.本件発明3に対する無効理由1について 本件発明3は、本件発明1の構成を全て含み、かつ、 長尺ステンレス箔およびポリイミド樹脂層上、またはポリイミド樹脂層上に、さらにクロム層を介して銅層を積層してなる導体層が形成されていることを更に限定した発明である。 甲第1発明は、「絶縁層上に前記磁気ヘッドのリード線を構成する、蒸着手段およびフォトリソグラフィ技術によって形成されたアルミニウムあるいはクロムと金の合金などの導電材からなる導電膜を形成した」ものであるから、甲第1発明における「蒸着」「導電膜」は、本件発明3における「積層」「導体層」に、それぞれ相当しており、甲第1発明は「ステンレス箔およびポリイミド樹脂層上、またはポリイミド樹脂層上に、導体層が形成されている」といえる。 よって、本件発明3と、甲第1発明とを対比すると、両者は、上記8-1-1-2.の項において述べた相違点A、Bに加え、 相違点C:導体層が、本件発明3は、クロム層を介した銅層であるのに対し、甲第1発明はこのことについて明らかでない点 で、相違する。 相違点Cについて検討すると、甲第2号証の摘示(8-イ)には、ステンレス・スチール・フォイル上のポリイミド上に形成する導電性回路パッドにおいて、ポリイミド層と銅層の間の接着を行うためにクロム層を設けることが記載されており、ポリイミド樹脂層上に導体層を形成する甲第1発明において、相違点Cにあたる、導体層としてクロム層を介した銅層を選定することは、当業者が容易に想到しうるものである。 そして、相違点A、Bについては先に検討したとおりである。 したがって、本件発明3は、甲第1、2、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-4.本件発明4に対する無効理由1について 本件発明4は、本件発明1または3の構成を全て含み、かつ、ポリイミド樹脂層が感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成されていることを更に限定した発明である。 そして、本件発明1を引用する本件発明4と、甲第1発明とを対比すると、両者は、上記8-1-1-2.の項において述べた相違点A、Bに加え、 相違点D:本件発明4においては、ポリイミド樹脂層が、感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成されているのに対し、甲第1発明はこの点について明らかでない点 で、相違する。 相違点A、Bについては先に検討したとおりである。 相違点Dについて検討する。 甲第8号証の摘示(8-ア)には、ポリイミド系樹脂膜のエツチングにおいて、プロセスの短縮化を目的として、感光性のポリイミドを用いることが、記載されている。 、甲第1発明は「ポリイミド樹脂を所定の形状にエッチングして絶縁層を形成する」ものであり、かつプロセスの短縮化は、自明の課題であるから、甲8号証の記載に基づき、甲第1発明において、相違点Dにあたる、感光性ポリイミドを用いることは、当業者が容易に想到しうるものである。 したがって、本件発明4は、甲第1、4、8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-5.本件発明5に対する無効理由1について 本件発明5は、本件発明3の構成を全て含み、かつ、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあることを更に限定した発明である。 本件発明5と、甲第1発明とを対比すると、両者は、上記8-1-3.の項において述べた相違点A、B、Cに加え、 相違点E:本件発明5においては、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあるのに対し、甲第1発明はこの点について明らかでない点で、相違する。 相違点A、B、Cについては先に検討したとおりである。 相違点Eについて検討する。 甲第1発明は、ステンレス板からなる、ばね片の表面に、ポリイミド樹脂からなる絶縁層を形成し、この絶縁層上に導電材からなる導電膜、が形成された3層構造のものであるが、これをポリイミド樹脂からみる絶縁層を主体としてみると、絶縁層の一方の面に、ステンレス板からなるばね片が、絶縁層の他方の面に、導電材からなる導電膜、が形成されているものと、いえる。 絶縁層の一方の面に関して、ステンレス板からなるばね片と、ポリイミド樹脂からなる絶縁層との間に、各材料の熱膨張係数(線膨張係数)が異なっていることによる反りの問題があるのと同様に、絶縁層の他方の面に関して、ポリイミド樹脂からなる絶縁層と、導電材からなる導電膜との間にも、各材料の熱膨張係数(線膨張係数)が異なっていることによる反りの問題が生じることは、明らかである。 よって、相違点Bについてと同様の理由により、ポリイミド樹脂からなる絶縁層と、導電材からなる導電膜との間にも、反りの問題を解消すべく、甲第4号証に記載された発明に基づき、甲第1発明において、相違点Eにあたる、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあるようにすることは、当業者が容易に想到しうるものである。 したがって、本件発明5は、甲第1、2、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-6.本件発明6に対する無効理由1について 本件発明6は、本件発明3の構成を全て含む回路形成用基板において、 導体層が微細パターン化されており、 長尺ステンレス箔がハードディスク用サスペンジョンであり、かつ、 長尺ステンレス箔の厚みが10?30μmであり、さらに、 5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にある「回路基板。」の発明である。 本件発明6と、甲第1発明とを対比する。 磁気ヘッドのリード線を構成する導電膜を形成することは、回路形成であるから、導電膜を形成した、甲第1発明の「ジンバルばねの形成用ステンレス板」は、本件発明6の「回路形成用基板」に相当するとともに「回路基板」に相当するともいえる。 よって、上記8-1-1-2.における「回路形成用基板」についてと同様の理由により、回路基板についても、甲第1発明は「ステンレス箔がハードディスク用サスペンジョンであり、かつ、ステンレス箔の厚みが10?30μmで」あるといえる。 また、甲第1発明は、「蒸着手段およびフォトリソグラフィ技術によって所定の形状に導電材からなる導電膜を所定の形状に形成した、」ものであり、フォトリソグラフィは、微細パターンの形成に適した技術であることは明らかであるので、「導体層が微細パターン化されて」いるといえる。 以上の事項を考慮すると、両者は、上記8-1-3.の項において述べた相違点A、B、Cに加え、 相違点F:本件発明6においては、回路基板において、「5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)とステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にある」のに対し、甲第1発明はこの点について明らかでない点 で、相違する。 相違点A、B、Cについては先に検討したとおりである。 相違点Fについて検討する。 甲第1発明の「ジンバルばね」は、「回路形成用基板」であるとともに「回路基板」である以上、回路形成用基板に関する、相違点Bについてと同様のことが、回路基板についてもいえる。 よって、相違点Fにあたる、回路基板において、「5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)とステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にある」ことは、当業者が容易に想到しうるものである。 したがって、本件発明6は、甲第1、2、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-7.本件発明7に対する無効理由1について 本件発明7は、本件発明6の構成を全て含む回路基板において、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあることを更に限定した発明である。 本件発明7と甲第1発明とを対比すると、両者は、上記8-1-6.の項において述べた相違点A、B、C、Fに加え、相違点Eの点で、相違する。 そして、相違点A、B、C、F、Eについては先に検討したとおりである。 したがって、本件発明7は、甲第1、2、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-8.本件発明8に対する無効理由1について 本件発明8は、本件発明6の構成を全て含む回路基板において、ポリイミド樹脂層が感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成されていることを更に限定した発明である。 本件発明8と、甲第1発明とを対比すると、両者は、上記8-1-6.の項において述べた相違点A、B、C、Fに加え、相違点Dの点で、相違する。 そして、相違点A、B、C、F、Dについては先に検討したとおりである。 したがって、本件発明8は、甲第1、2、4、8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8-1-9.無効理由1についてのまとめ 上記8-1-1.?8-1-8.における検討から、本件発明1?8は、甲1、2、4、8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?8についての特許は、特許法第29条2項の規定に違反してされたものである。 8-2.無効理由2について 8-2-1.実施例9、10以外に、線膨張係数の規定を満たすポリイミドが不明な点に基づく実施可能要件違反について 請求人は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、実施例9、10の線膨張率の規定を満たすポリイミドについての記載から拡張乃至一般化できない程に広範なポリイミドを含有しているから、実施例9、10で用いたポリイミド以外のポリイミドを用いるものについて、当業者が実施できるように記載されていない旨主張する(審判請求書第62頁?第63頁参照)。 しかしながら、訂正後の本件発明1?8は、形成するポリイミドが「一般式〔化1〕 ![]() から選ばれる構造単位を分子内に有」するものに限定されており、実施例9、10にいう「3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物」は、[化1]における ![]() に対応するものであり、また、実施例9、10にいう「4,4’-ジアミノジフェニルエーテル」、「パラミン」は、それぞれ、[化1]における ![]() 、 ![]() に対応するから、訂正後の本件発明1?8におけるポリイミドと、実施例9、10のポリイミドとは、構造単位において共通するものとなったため、本件発明1?8について、実施例9、10の記載から拡張乃至一般化できるといえるので、本件発明1?8は、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されていないとはいえない。 8-2-2.吸水率、伸び率と線膨張係数との規定を共に満たすポリイミドの実施例がない点に基づく実施可能要件違反について 請求人は、吸水率、伸び率と線膨張率との規定を共に満たすポリイミドについての実施例が無いから、これらに関する訂正前の本件特許の特許請求の範囲3、4、11、12に記載された発明は、発明の詳細な説明に当業者が実施できるように記載されていない旨主張する(審判請求書第63?65頁参照)。 しかしながら、訂正後の本件発明1?8は、吸水率、伸び率と線膨張率との規定を共に満たすポリイミドに関するものではないから、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されていないとはいえない。 8-2-3.無効理由2についてのまとめ 以上の検討のとおり、本件発明1?8は、その発明の属する分野における通常の知識を有するものが、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。 したがって、本件発明1?8についての特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。 8-3.無効理由3について 8-3-1.実施例と比較例のポリイミドとが重複する点に基づく、サポート要件違反について 請求人は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、実施例2等のポリイミドを用いる態様を含むが、上記態様が発明の課題を解決できないことは実施例2のポリイミドと重複するポリイミドを用いた比較例1の記載からみて明らかであるから、上記態様を含む訂正前の本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明でない旨主張する(審判請求書第65?67頁参照)。 しかしながら、実施例2等は、酸成分がピロメリット酸二無水物に対応するポリイミドを用いているところ、訂正後の本件発明1?8は、酸成分として、上記実施例2等とは異なる、 ![]() (3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対応するもの)としたポリイミドに関するものに限定しており、実施例2等のポリイミドを用いる態様は含まれないから、訂正後の本件発明1?8は、発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。 8-3-2.吸水率、伸び率と線膨張率との規定を共に満たすポリイミドの実施例がない点に基づくサポート要件違反について 請求人は、吸水率、伸び率と線膨張率との規定を共に満たすポリイミドについての実施例が無いから、これらに関する訂正前の本件特許の特許請求の範囲3、4、11、12に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明でない旨主張する(審判請求書第67?69頁参照)。 しかしながら、訂正後の本件発明1?8は、吸水率、伸び率と線膨張率との規定を共に満たすポリイミドに関するものではないから、発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。 8-3-3.ステンレス箔の厚さが25μm未満の実施例がない点に基づくサポート要件違反について 請求人は、実施例におけるステンレス箔の厚さは25μmまたは30μmであるから、ステンレス箔の厚さについて、10?30μmと規定され、実施例の開示がない10μm以上25μm未満の場合を含む本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明でない旨主張する(審判請求書第69?70頁参照)。 しかしながら、実施例により、10?30μmの厚さの範囲のステンレス箔を例示しているのであり、本件発明において規定する全ての数値範囲において、実施例が記載されていないからといって、ただちに本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。 8-3-4.無効理由3についてのまとめ 以上の検討のとおり、本件発明1?8は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。 したがって、本件発明1?8についての特許は、特許法第36条6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたということはできない。 9.むすび 以上のとおり、本件発明1?8についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 回路形成用基板および回路基板 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】長尺ステンレス箔の片面もしくは両面に、ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなる回路形成用基板であって、ポリイミド樹脂が一般式〔化1〕から選ばれる構造単位を分子内に有し 【化1】 ![]() 構造単位とする芳香族基]、 かつ、長尺ステンレス箔がハードディスク用サスペンジョンあり、かつ、長尺ステンレス箔の厚みが10?30μmであり、さらに、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする回路形成用基板。 【請求項2】ポリイミド樹脂層の厚みが3?25μmである請求項1記載の回路形成用基板。 【請求項3】長尺ステンレス箔およびポリイミド樹脂層上、またはポリイミド樹脂層上に、さらにクロム層を介して銅層を積層してなる導体層が形成されている請求項1記載の回路形成用基板。 【請求項4】ポリイミド樹脂層が感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成されている請求項1または3記載の回路形成用基板。 【請求項5】5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする請求項3記載の回路形成用基板。 【請求項6】長尺ステンレス箔の片面もしくは両面に、ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなる回路形成用基板の長尺ステンレス箔およびポリイミド樹脂層上、またはポリイミド樹脂層上に、さらにクロム層を介して銅層を積層してなる導体層が形成されてなる請求項3記載の回路形成用基板において、導体層が微細パターン化されており、長尺ステンレス箔がハードディスク用サスペンジョンあり、かつ、長尺ステンレス箔の厚みが10?30μmであり、さらに、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする回路基板。 【請求項7】5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が、-5ppmから5ppmの間にあることを特徴とする請求項6記載の回路基板。 【請求項8】ポリイミド樹脂層が感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成されている請求項6記載の回路基板。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は回路形成用基板および回路基板に関し、詳しくは各種実装回路形成用基板および回路基板や、特に近年高容量化や小型化が急がれているハードディスク用サスペンジョン上に直接電気的信号線を形成するための部品としての回路形成用基板および回路基板に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、半導体の高密度実装や高速信号処理を目的とした薄膜多層基板が注目されており、一般には導電層としての銀箔と支持層としてのポリイミド樹脂層とを積層した基板が用いられている。このような基板にはデバイスが実装されるが、デバイスの特性上発熱を起こすためにデバイスを組み込んだシステム内部に蓄熱しないように、放熱効果の高い基板材料を用いることが要望されている。 【0003】このような基板としては各種のヒートスプレッダー付き回路基板が提案されているが、通常、これらの基板を作製するには枚葉基板を用い、放熱効果の高い金属基板上に液状の樹脂を塗布乾燥し、その後導体層を形成するという、所謂逐次積層法や、銅張り積層板と放熱効果の大きい金属板とをプレス加工するというプレス積層法などが提案されている。 【0004】しかしながら、前者の方法では加工のための工程数が多いためにコスト高となり、また、後者の方法では位置合わせ精度が粗いために細線化し難いという問題点がある。このような問題点は実用化における本質的な問題であるので、未だ高信頼性、高密度、低価格を実現するまでに至っていないのが実情である。 【0005】一方、ハードディスクの高記憶容量化や高速化などの点からは、磁気ヘッドとして従来のMIG(メタルインギャップ)や磁気誘導型である薄膜に代わって、磁気抵抗型のMR素子と薄膜を一体化させた、所謂MR-薄膜複合型ヘッドが注目されている。従来のヘッドが磁気信号の読み書きを1ヘッドで兼用させるのに対し、MRヘッドは読み書きを1ヘッド内で分業させるために端子の数は2倍(必要に応じてさらにアース端子も加わる)となって、ヘッドとディスク本体を接続するワイヤーの細線化が必要となる。しかしながら、細線化を行うとワイヤーが腐食しやすくなり、また、インピーダンスの整合も取りにくくなったり、ヘッドの実装も難しくなるという問題を生じるようになる。 【0006】このような新たな問題点を解決するための方法として、ヘッドを実装するサスペンジョン上に直接回路を形成する方法が提案されている(特開昭48-16620号公報参照)。 【0007】しかしながら、これらの基板を構成する各材料の熱膨張係数(線膨張係数)が異なっていると、発熱によって基板に反りが生じる。また、上記のような回路形成用基板に用いるポリイミド樹脂層の吸水率が高いと、例えばハードディスク本体にサスペンジョンとしてこのような基板を組み込んだ場合に、ポリイミド樹脂層への水の吸脱着に伴う寸法変化が大きくなって、サスペンジョン自体が反ってしまい、アライメント精度が低下すると共に、ディスクと本体との間隔が変化してデバイスとしての性能不良を起こす可能性も考えられる。 【0008】また、本発明のような回路形成用基板や回路基板は、長尺のステンレス箔上にポリイミド樹脂層、導体層を順次形成するという枚葉工程によって作製するが、製造工程が多くなると共に、工程が複雑となるためにコスト高となる。 【0009】さらに、銅張り積層板(例えば、ポリイミド樹脂層と銅箔との2層基板)と長尺ステンレス箔との3層基板を入手できたとしても、ポリイミド樹脂層のパターン加工に際してはプラズマエッチングやレーザーアブレーションなどのドライエッチングを施す必要がある。その結果、ステンレス箔や他の配線回路へダメージを与えたり、スループットの悪さに伴うコスト高となる恐れがある。一方、ウエットエッチングによるポリイミド樹脂層の加工も考えられるが、処理液としてヒドラジンなどの有害な薬品を用いなければならず、環境衛生において決して良好なものではなかった。 【0010】また、回路形成用基板は常に平板状態で使用するとは限らず、場合によっては回路を形成して回路基板とした後、部分的に90度近くまで折り曲げ加工を行なうことがある。このような加工処理を施すと折り曲げ部位にストレスが加わるので、基板を構成しているポリイミド樹脂層にクラックが発生して絶縁不良を起こす恐れがある。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は上記従来の問題点を解消し、各種回路基板を形成する上で実用的に重要な低コスト、高密度、高信頼性を充分に満足でき、しかも基板自体の反りもほとんど生じることがなく、また、90度近くの強いストレスが加わる折り曲げ加工を施しても、折り曲げ部でのポリイミド樹脂層の追従性が良く、絶縁不良を生じることがない加工性に優れた回路形成用基板およびそれを用いた回路基板を提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】即ち、本発明の回路形成用基板は、長尺ステンレス箔の片面もしくは両面に、ポリイミド樹脂層を全面もしくは部分的に形成してなることを特徴とするものである。 【0013】特に、5?200℃の温度範囲におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)を、-5ppmから5ppmの間に調整することが、反りの防止の点から好ましい。 【0014】また、本発明の回路形成用基板は、全面形成されたポリイミド樹脂層または部分的に形成されたポリイミド樹脂層と露出するステンレス箔上に、さらにクロム層またはチタン層を介して、もしくは介さずに銅層を積層してなる導体層が形成されているものである。 【0015】特に、本発明の回路形成用基板においては、ポリイミド樹脂層を感光剤を含有する感光性ポリイミド樹脂から形成することが、所望形状にパターン化するために好ましい。これらの回路形成用基板はハードディスク用サスペンジョンとして用いることが、本発明品の特性を十二分に発揮するために好ましいものである。 【0016】また、5?200℃の温度範囲におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)、およびα1と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が共に、-5ppmから5ppmの間に調整することが、反りの防止の点から好ましい態様である。 【0017】さらに、本発明は上記回路形成用基板を用いて形成される回路基板であって、上記回路形成用基板において、導体層が微細パターン化されていることを特徴とするものである。 【0018】上記のようにして回路形成用基板および回路基板を作製することによって、寸法安定性に優れた微細パターンを安価に製造すること、ならびに各層の構成材料の種類を選択することなく基板の反り現象や、ポリイミド樹脂層にクラックが生じない優れた回路基板を得ることができるのである。 【0019】 【発明の実施の形態】本発明の回路形成用基板および回路基板に用いられるポリイミド樹脂は、下記〔化7〕にて示される構造単位を分子内に有する、所謂全芳香族ポリイミドと呼ばれるものである。 【0020】 【化7】 ![]() 【0021】また、ポリイミド樹脂を長尺ステンレス箔上に層状に形成したときに、その吸水率を0.7重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の低吸水率とするためには、下記〔化8〕にて示される構造単位を分子内に有する、所謂全芳香族ポリイミドと呼ばれるものを用いることが好ましい。 【0022】 【化8】 ![]() 【0023】つまり、吸水率が0.7重量%以下のポリイミド樹脂層は、長尺ステンレス箔上に形成すると、上層に形成する導体層との間の絶縁層となって、電気信号線を自由に回路設計することが充分に可能となると共に、柔軟なステンレス箔でも環境温度によって反りが変動することが少ない基板を得ることができるのである。一方、回路形成用基板や回路基板に従来から用いられているポリイミド樹脂、特にハードディスク用のサスペンジョンとして従来から用いられているポリイミド樹脂では、吸水率が0.7重量%を超えて通常、1.0重量%以上であるので、本発明のような効果を発揮し得ないのである。なお、本発明において吸水率とは、85℃×85%R.H.の高温加湿条件下で100時間放置したのちのカールフィッシャー法で測定した場合の値である。 【0024】なお、上記〔化8〕にて示される構造単位を分子内に有する低吸水率のポリイミド樹脂のうち、特に好ましい構造はR_(1)が5,5’-〔2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン〕ビス-1,3-イソベンゾフランジオンであり、R_(2)が4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパンであるポリイミド樹脂である。 【0025】また、ポリイミド樹脂を長尺ステンレス箔上に層状に形成したときに、その伸び率を20%以上、好ましくは25%以上の高伸び率とするためには、下記〔化9〕にて示される構造単位を分子内に有する、所謂全芳香族ポリイミドと呼ばれるものを用いることが好ましい。 【0026】 【化9】 ![]() 【0027】つまり、伸び率が20%以上のポリイミド樹脂層は、長尺ステンレス箔上に形成すると、上層に形成する導体層との間の絶縁層となって、電気信号線を自由に回路設計することが充分に可能となると共に、信号線の端子部分を自由に折り曲げて他の回路と接続することが可能となるのである。一方、回路形成用基板や回路基板に従来から用いられているポリイミド樹脂、特にハードディスク用のサスペンジョンとして従来から用いられているポリイミド樹脂では、ポリイミド樹脂層を微細パターン化するために光重合性基を導入した感光性ポリイミド樹脂を用いているが、伸び率が20%に満たず、通常、10%以下であるので折り曲げ時にクラックが発生し、本発明のような効果を発揮し得ないのである。なお、本発明において伸び率とは、24?26℃の温度下でテンシロン式引張試験機(東洋ボールドウィン社製)を用い、試験片の幅2mm、チャック間距離5mm、引張速度5mm/分の条件下で測定した値であって、破断時までの伸び(破断伸び)を初期長さで除した値である。 【0028】なお、上記〔化9〕にて示される構造単位を分子内に有する高伸び率のポリイミド樹脂のうち、特に好ましい構造はR_(1)がビフェニル基であり、R_(2)が1,4-ビス(フェノキシ)フェニレン基であるポリイミド樹脂である。 【0029】本発明において用いる上記ポリイミド樹脂は、〔化7〕、〔化8〕または〔化9〕に示す構造単位を分子内に有するものであって、線膨張係数または吸水率が比較的小さいものや伸び率が比較的高いものであるが、線膨張係数、吸水率または伸び率の物性を大きく変動させない範囲であれば他の構造単位、具体的には上記R_(1)やR_(2)以外の基を有するポリイミド樹脂を共重合したり、混合したりすることができることは云うまでもない。 【0030】本発明において上記ポリイミド樹脂層は、長尺ステンレス箔の片面上もしくは両面上に形成する。通常、ポリイミド樹脂の合成に際してはN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルフィド、ジメチルスルホン、ピリジン、テトラメチルウレア、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ヘキサメチルホスホルアミドなどの有機溶媒を用いてポリイミド前駆体溶液を得る。次いで、これを長尺ステンレス箔上に塗布乾燥、イミド化することによって3?25μm厚、好ましくは5?20μm厚のポリイミド樹脂層を形成し、本発明の回路形成用基板を得ることができる(図1(a)参照)。ポリイミド樹脂層の厚みが3μmに満たない場合には、耐電圧が低くて絶縁膜としての絶縁信頼性が低下するようになったり、静電容量値が大きくなったりする。また、厚みが25μmを超えると、たとえ吸水率が0.7重量%以下であったり、伸び率が20%以上であっても、残存応力が大きくなり反りが大きくなって所望の効果を発揮し得ないことがある。 【0031】長尺ステンレス箔としてはフェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系などを用いることができるが、耐腐食性や屈曲性、溶接性などに優れるオーステナイト系が好適に用いられる。また、本発明において用いる長尺ステンレス箔とは、厚み10?75μm、好ましくは厚み10?40μm、さらに好ましくは厚み20?30μm程度であって、幅100?300mm、好ましくは幅110?250mm程度、長さ10m以上の箔状のものを示す。厚みが10μmに満たない場合には機械的なダメージを受けやすく、また、厚みが40μmを超えると、ハードディスク用サスペンジョンのバネ材として用いた場合に、浮動特性などに問題を生じて充分な特性が得られないことがあり好ましくない。 【0032】このようにして得られる本発明の回路形成用基板におけるポリイミド樹脂層は必要に応じてパターン加工が施される(図2(a)参照)。パターン加工を施すには非感光性ポリイミド樹脂とフォトレジストとを併用し、ヒドラジンなどによるウエットエッチングを施したり、プラズマエッチングやレーザーエッチングなどのドライエッチングを施すことによってパターンを形成する方法や、ポジ型またはネガ型の感光性ポリイミド樹脂を用いて直接パターン化する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、作業環境性や長尺物の処理に関するスループットの低さからは感光性ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。 【0033】そして、ポリイミド樹脂層の上にクロム層またはチタン層を介して、もしくは介さずに銅層を積層して導体層が形成される(図1(b)および図2(b)参照)。つまり、導体層はポリイミド樹脂層上にクロム/銅層、チタン/銅層、銅層のうちの何れかの層を形成してメタライズする。このようにして形成する導体層の厚みは2?20μm、好ましくは5?15μmとすることがインピーダンスの整合の点から好ましい。導体層の形成方法としては、連続スパッタリング法によって前記ポリイミド樹脂層上にクロム/銅層、または、チタン/銅層、銅層を数百?数千Å程度となるように形成し、引き続いて銅を電解メッキすることによって上記厚み範囲となるように厚付けする(図1(c)および図2(c)参照)。スパッタリング法以外には、例えば電解メッキ処理を行わずにEB蒸着法だけで導体層の形成を行うこともできる。なお、接着信頼性の点から、必要に応じて導体層上にクロム層やニッケル層を設けてもよい。 【0034】なお、図3(a)に示されるようにポリイミド樹脂層をステンレス箔上に部分的に形成した場合には、上記導体層は露出する長尺ステンレス箔およびポリイミド樹脂層の上に図3(b)に示すように形成する。 【0035】以下に本発明の回路形成用基板および回路基板を製造する方法の一例を具体的に説明する。 【0036】まず、ポリイミド樹脂層を形成するために用いるポリイミド前駆体を公知の方法によって調製し、上記〔化7〕?〔化9〕の何れかに記載の構造単位を含むポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の溶液を得る。 【0037】次いで、このポリイミド前駆体(ポリアミック酸)溶液をロールコータやコンマコータ、ナイフコータ、ドクターブレードなどを用いて長尺ステンレス箔上に塗布乾燥する。この場合、乾燥温度は60?120℃程度の温度として、溶媒である有機溶剤のみの除去を行いポリイミド前駆体層を形成する。 【0038】形成したポリイミド前駆体層を所望形状にパターン化する場合には、上記ポリイミド前駆体溶液の塗布の前に、溶液中にジエチルアミノエチルメタクリレートやミヒラーズケトンなどを添加して、ポリイミド前駆体溶液に感光性を付与する。ジエチルアミノエチルメタクリレートを添加する場合には、ポリイミド前駆体の固形分100重量部に対して5?20重量部、好ましくは10?15重量部の範囲で含有されるように配合し、また、ミヒラーズケトンを添加する場合には、ポリイミド前駆体の固形分100重量部に対して2?10重量部、好ましくは2.5?5重量部の範囲で含有されるように配合することが感光性の点から好ましい。配合量が上限値を超えると感光剤の析出やイミド化時の膜厚の減少が大きくなるおそれがある。 【0039】このようにして形成したポリイミド前駆体層に所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射を行うが、本発明では長尺物を用いているので連続長尺露光機を使用する。次に、通常、現像液として用いられているN-メチル-2-ピロリドンなどを主成分とする現像液を用いて連続現像処理を行う。なお、環境衛生や防爆性などの作業環境の点を考慮すると、現像液は有機溶剤ではなく水溶液を用いて行うことが好ましい。 【0040】このような水溶液を現像液として用いることができる感光剤としては、特開平6-75376号公報に記載の1,4-ジヒドロピリジン誘導体を感光剤として用いることが好ましく、また、必要に応じて公知の増感剤を配合することもできる。このような感光剤の具体的なものとして好適に使用できるものは、例えば2,6-ジメチル-3,5-ジシアノ-4-(2’-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2’-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2’,4’-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、4-(2’-ニトロフェニル)-2,6-ジメチル-3,5-ジカルボメトキシ-1,4-ジヒドロピリジンなどが挙げられる。このような1,4-ジヒドロピリジン系の感光剤は紫外線などの活性光線に曝される分子構造がピリジン骨格に変化して、塩基性を有するようになる。そして、露光後に約150?190℃、好ましくは160?180℃の加熱処理によってさらに化学反応が進行して前記ポリイミド前駆体との間で何らかの相互作用が生じてアルカリ水溶液に対する溶解性が低下し、現像処理によって良好なコントラストを有するネガ型パターンが得られる。現像液としてのアルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機アルカリの水溶液、またはプロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンなどの有機アルカリの水溶液を単独もしくは二種類以上混合して用いることができる。高純度と汎用性の点から、現像液としてはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを主成分とする水溶液を用いることが好ましい。さらに、このアルカリ水溶液(現像液)には必要に応じてアルコール類や界面活性剤を含有させることもできる。 【0041】このような感光剤を用いた場合の配合量は、形成されるポリイミド前駆体層中のポリイミド前駆体の固形分100重量部に対して5?70重量部、好ましくは15?55重量部の範囲となるように配合する。配合量が少ない場合には露光部の溶解阻止能が悪くなり、溶解性コントラストが不鮮明となりやすく、また、配合量が多すぎると溶液状態での保存において感光剤の析出が生じたり、パターン形成後の加熱処理時での膜厚減少が大きくなることがある。 【0042】次いで、以上のようにしてポリイミド前駆体層を長尺ステンレス箔上に形成した基板を約300℃以上、好ましくは350℃以上に加熱してポリイミド前駆体を脱水閉環してイミド化しポリイミド樹脂層にする。この際の加熱には熱風循環式加熱炉や遠赤外線加熱炉などの装置を用いることができ、樹脂層の酸化劣化やステンレス箔の表面酸化を防止するためにはアルゴンや窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下または真空下で加熱処理を行う。通常、酸素濃度を1容量%以下、好ましくは0.1容量%以下となるようして加熱処理を行う。 【0043】上記のようにしてステンレス箔の片面にポリイミド樹脂層を形成することができるが、ステンレス箔の両面にポリイミド樹脂層を形成する場合には、上記操作に引き続いて他面側にも同様の操作を行う。なお、両面にポリイミド樹脂層を形成し、ポリイミド樹脂層がパターン化されている場合には、ステンレス箔を介して両面に形成するポリイミド樹脂パターンが対向するようにすることが、基板の反りや捩じれ防止の点から好ましい。 【0044】本発明の回路形成用基板は上記のようにして得られるものであり、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)が、一般的には10?60ppm程度であるが、本発明品の場合には-5ppm?5ppmの間になるように調整することによって、熱収縮などによる回路パターンのズレや基材自体の反りを防止することができる。なお、1ppmとは1×10^(-6)、即ち1×10^(-4)%を意味するものであり、本発明における平均線膨張係数はサーマルメカニカルアナリシス法(TMA法)によって測定することができる。 【0045】以上のようにして本発明の回路形成用基板を得ることができるが、形成したポリイミド樹脂層の上にさらに導電層を形成して回路形成用基板を作製する。なお、導電層の形成方法は前記した通りである。 【0046】また、このようにして得られた導電層を有する回路形成用基板は、5?200℃におけるポリイミド樹脂層の平均線膨張係数(α1)と長尺ステンレス箔の平均線膨張係数(α2)との差(n)、およびα1と導体層の平均線膨張係数(α3)の差(m)が共に、-5ppm?5ppmの間になるように調整することが好ましい。差(n)および差(m)が上記範囲を外れると、回路基板の反りを防止しがたくなって好ましくない。 【0047】このようにして得られる導電層を形成した回路形成用基板を所望の細線パターンにエッチング処理することによって、本発明の回路基板を得ることができる。特に、長尺ステンレス箔をハードディスク用のサスペンジョンに加工することによって、磁気ヘッドにおけるワイヤーレス回路基板とすることができる。 【0048】 【発明の効果】以上のように、本発明の回路形成用基板は長尺ステンレス箔の片面もしくは両面に、ポリイミド樹脂層を全面または部分的に形成し、さらにポリイミド樹脂層の上に特定の導体層を形成している。 【0049】特に、特定の構造単位を有するポリイミド樹脂を用いることによって、ステンレス箔とポリイミド樹脂層との線膨張係数を近似させたり、低吸水性にすることができ、反り現象を極力抑制することが可能となる。さらに、各種折り曲げ加工を行なっても絶縁層としてのポリイミド樹脂層にクラックなどが生じず、追従性に優れるものである。 【0050】従って、導体層を細線パターンなどに加工処理してハードディスク用サスペンジョンなどの用途に用いる場合にも寸法精度を高く維持でき、実用的に高密度、高信頼性を有する回路形成用基板および回路基板を提供できるという効果を奏するものである。 【0051】 【実施例】以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお、以下の文中で部とあるのは全て重量部を意味するものである。 【0052】実施例1 ピロメリット酸二無水物と、4、4’-ジアミノジフェニルエーテルの略等モルを、N-メチル-2-ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体溶液を調製し、これを長尺ステンレス箔(SUS304、25μm厚)の片面にコンマコータを用いて均一に流延塗布し、約80℃で乾燥した。 【0053】次に、これを窒素ガス置換によって酸素濃度を0.1容量%以下にした連続加熱炉中に入れ、最高到達温度が400℃になるように加熱してポリイミド前駆体層をイミド化し、長尺ステンレス箔の片面にポリイミド樹脂層を有する回路形成用基板を作製した。 【0054】次いで、得られた回路形成用基板の他面側に、上記と同様にしてポリイミド樹脂層を形成して、長尺ステンレス箔の両面にポリイミド樹脂層を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0055】得られた回路形成用基板の断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、形成されているポリイミド樹脂層の厚みは両面とも約5μmであった。また、この基板は60℃の雰囲気下においても反りの現象は全く見られず、室温下と同等であった。 【0056】実施例2 実施例1において調製したポリイミド前駆体溶液にジエチルアミノエチルメタクリレートを前駆体固形分100部に対して15部、さらにミヒラーズケトンを3部配合して感光性を付与したのち、実施例1と同様の方法によってステンレス箔(SUS304、25μm厚)上に均一に流延塗布し、乾燥した。 【0057】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射(波長400nm以上の光で1000mJ/cm^(2))を行なったのち、N-メチル-2-ピロリドンを用いて現像処理を行ない、所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0058】次いで、これを実施例1と同様の方法でイミド化して長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層を有する回路形成用基板を作製した。 【0059】このようにして得られた回路形成用基板の他面側に、上記と同様にしてパターン化されたポリイミド樹脂層を形成して、長尺ステンレス箔の両面にパターン化されたポリイミド樹脂層を有する本発明の回路形成用基板を作製した。なお、ステンレス箔を介して両面に形成するポリイミド樹脂パターンを対向する位置に形成するために、ステンレス箔の一部に位置合わせ用の孔を予め形成しておき、アライメントを正確に行なった。 【0060】得られた回路形成用基板の断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、形成されているポリイミド樹脂層の厚みは両面とも約5μmであり、両面のパターンの位置ずれは10cm幅で±10μmであった。また、この基板は60℃の雰囲気下においても反りの現象は全く見られず、室温下と同等であった。 【0061】実施例3 実施例1におけるピロメリット酸二無水物の代わりに、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いた以外は、実施例1と同様にして長尺ステンレス箔の両面にポリイミド樹脂層を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0062】この基板の断面を実施例1を同様に走査型電子顕微鏡にて観察したところ、形成されているポリイミド樹脂層の厚みは両面ともに約5μmであり、実施例1と同様に60℃の雰囲気下においても反りの現象は全く見られなかった。つまり、本発明の構造を有する回路形成用基板は、ポリイミド樹脂の種類が異なっても反りの現象を示さないことから、材料選択性がないことが判明した。 【0063】実施例4 実施例1にて調製したポリイミド前駆体溶液に、4-(2’-ニトロフェニル)-2,6,-ジメチル-3,5-ジカルボメトキシ-1,4-ジヒドロピリジン(慣用名:ニフェジピン)を、前駆体固形分100部に対して30部配合して感光性を付与したのち、実施例1と同様な方法で長尺ステンレス箔(SUS304、30μm厚)上に均一に流延塗布し、80℃で乾燥した。 【0064】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射(波長360?440nm、照射エネルギー500mJ/cm^(2))を行なったのち、さらに160℃で加熱処理を行なった。そののち、5重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液/エチルアルコール(2/1容量比)の混合溶液を現像液として40℃で現像処理を行ない、水洗、乾燥して所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0065】次いで、これをバッチ雰囲気加熱炉中、真空状態(0.1torr)で最高到達温度が380℃になるように加熱してポリイミド前駆体層をイミド化し、長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0066】得られたパターンは正テーパーの良好な形状を有しており、前記実施例2と同様に両面に同じパターンのポリイミド樹脂層を形成しても反り現象が観察されなかった。 【0067】実施例5 上記実施例4にて得た長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する回路形成用基板を、長尺スパッタリング装置にてクロム、銅を連続的に同一バッチ内でメタライジング処理した。次いで、ポリイミド樹脂層を形成していない他面側のステンレス面にも同様にメタライジング処理した。この際に、走査型電子顕微鏡による断面観察を行なったところ、両面共にクロム層が500Å、銅層が1000Åであった。 【0068】次いで、スパッタリング膜の活性が低下しないように、スパッタリング処理後1時間以内に電解メッキ処理を行なって銅層をさらに形成し、導体層を有する回路形成用基板を作製した。得られたメッキ膜を触針式表面粗さ計にて測定した結果、10cm角幅で9?10μmの厚みを有し、9μm±10%の膜厚精度を有するものであった。また、この基板も反りの現象がほとんど見られないことから、導体層を加工処理して回路基板を作製する場合、高い寸法精度が確保されることが判った。 【0069】実施例6 ピロメリット酸二無水物と、4、4’-ジアミノジフェニルエーテル/パラミン(15/85モル%)の略等モルを、N-メチル-2-ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体溶液を調製し、このポリイミド前駆体溶液にジエチルアミノエチルメタクリレートを前駆体固形分100部に対して15部、さらにミヒラーズケトンを3部配合して感光性を付与したのち、実施例1と同様の方法によってステンレス箔(SUS304、25μm厚)上に均一に流延塗布し、乾燥した。 【0070】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射(波長400nm以上の光で1000mJ/cm^(2))を行なったのち、N-メチル-2-ピロリドンを用いて現像処理を行ない、ステンレス箔上の必要な部分にのみ所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0071】次いで、これを実施例1と同様の方法でイミド化して長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層を有する回路形成用基板を作製した。 【0072】得られた回路形成用基板の断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、形成されているポリイミド樹脂層の厚みは約5μmであった。また、この基板は60℃の雰囲気下においても反りの現象は全く見られず、室温下と同等であった。 【0073】実施例7 実施例6におけるピロメリット酸二無水物の代わりに、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いてポリイミド前駆体溶液を調製し、感光剤としてのミヒラーズケトンの配合量を10部とした以外は、実施例6と同様にして長尺ステンレス箔の片面にポリイミド樹脂層を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0074】この基板の断面を実施例1と同様に走査型電子顕微鏡にて観察したところ、形成されているポリイミド樹脂層の厚みは約5μmであり、実施例6と同様に60℃の雰囲気下においても反りの現象を全く見られなかった。つまり、本発明の構造を有する回路形成用基板はポリイミド樹脂の種類が異なっても反り現象を示さないことから、材料選択性がないことが明らかである。 【0075】実施例8 実施例6にて調製したポリイミド前駆体溶液に、4-(2’-ニトロフェニル)-2,6,-ジメチル-3,5-ジカルボメトキシ-1,4-ジヒドロピリジン(慣用名:ニフェジピン)を、前駆体固形分100部に対して30部配合して感光性を付与したのち、実施例1と同様な方法で長尺ステンレス箔(SUS304、30μm厚)上に均一に流延塗布し、80℃で乾燥した。 【0076】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射(波長360?440nm、照射エネルギー500mJ/cm^(2))を行なったのち、さらに160℃で加熱処理を行なった。そののち、5重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液/エチルアルコール(2/1容量比)の混合溶液を現像液として40℃で現像処理を行ない、水洗、乾燥して所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0077】次いで、これをバッチ雰囲気加熱炉中、真空状態(0.1torr)で最高到達温度が380℃になるように加熱してポリイミド前駆体層をイミド化し、長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0078】得られたパターンは正テーパーの良好な形状を有しており、また、基板には反り現象が観察されなかった。 【0079】実施例9 上記実施例6におけるピロメリット酸二無水物の代わりに、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、また、ジアミン成分を4,4’-ジアミノジフェニルエーテル20モル%とパラミン80モル%の混合物に置換してポリイミド前駆体溶液を調製した。 【0080】このポリイミド前駆体溶液をパターン形成後のキュアー(イミド化)における最高到達温度が420℃とした以外は実施例8と同様にして、長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0081】得られた回路形成用基板におけるα1は18ppm、α2は17.3ppmであり、これらの差(n)は0.7ppmであった。 【0082】実施例10 上記実施例9にて得た長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する回路形成用基板を、長尺スパッタリング装置にてクロム、銅を連続的に同一バッチ内でメタライジング処理した。次いで、ポリイミド樹脂層を形成していない他面側のステンレス面にも同様にメタライジング処理した。この際に、走査型電子顕微鏡による断面観察を行なったところ、両面ともにクロム層が500Å、銅層が1000Åであった。 【0083】次いで、スパッタリング膜の活性が低下しないように、スパッタリング処理後1時間以内に電解メッキ処理を行なって銅層をさらに形成し、導体層を有する回路形成用基板を作製した。得られたメッキ膜を触針式表面粗さ計にて測定した結果、10cm角幅で9?10μmの厚みを有し、9μm±10%の膜厚精度を有するものであった。また、この基板も反りの現象がほとんど見られないことから、導体層を加工処理して回路基板を作製する場合、高い寸法精度が確保されることが判った。なお、α1は18ppm、α2は17.3ppm、α3は18ppmであり、これらの差(n)は0.7ppm、差(m)は0ppmであった。 【0084】比較列1 実施例6にて用いたパラミンを全て4,4’-ジアミノジフェニルエーテルに置換した以外は、実施例6と同様にして回路形成用基板を作製した。 【0085】その結果、ステンレス箔の裏側には表面のポリイミド樹脂層の形がハッキリと現れており、ポリイミド樹脂層とステンレス箔との間に大きな応力が存在していることが明らかとなった。この際のα1は35ppm,α2は17.3ppmであり、これらの差(n)は17.7ppmであった。 【0086】比較例2 実施例6におけるアミン成分を、前記〔化7〕におけるR_(2)の例示の上段左から3つ目の芳香族基(ジフェニル基の2,2’-位にトリフルオロメチル基を有する芳香族基)に全て代えた以外は、実施例6と同様にして回路形成用基板を作製した。 【0087】その結果、基板はステンレス箔側に反りを生じていた。この際のα1は-7ppm,α2は17.3ppmであり、これらの差(n)は-24.3ppmであった。 【0088】実施例11 ピロメリット酸二無水物/5,5’-〔2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン〕ビス-1,3-イソベンゾフランジオンと、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル/4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパンの略等モルを、N-メチル-2-ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体溶液を調製し、これにジエチルアミノエチルメタクリレートを前駆体固形分100部に対して15部、さらにミヒラーズケトンを3部配合して感光液を調製した。 【0089】このようにして得られた感光液を長尺ステンレス箔(SUS304、25μm厚)の片面にコンマコータを用いて均一に流延塗布し、約80℃で乾燥して感光性を有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0090】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介してポリイミド前駆体層側から光照射(波長365nm以上の光で1000mJ/cm^(2))を行ったのち、N-メチル-2-ピロリドンを用いて現像処理を行い、長尺ステンレス箔上に所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0091】次に、これを窒素ガス置換によって酸素濃度を0.1容量%以下にした連続加熱炉中に入れ、最高到達温度が400℃になるように加熱してポリイミド前駆体層をイミド化し、長尺ステンレス箔の片面にポリイミド樹脂層を有する回路形成用基板を作製した。 【0092】得られた回路形成用基板の断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、形成されているポリイミド樹脂層の厚みは約5μmであった。また、この基板を85℃×85%R.H.雰囲気下に100時間放置したときのポリイミド樹脂層の吸水率は約0.5重量%であった。このときのポリイミド樹脂層の伸びは約0.1%で実質的な伸びはなく、吸水前後での形状変化はなく、反り現象が観察されなかった。 【0093】実施例12 実施例11におけるピロメリット酸二無水物の代わりに、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用い、ミヒラーズケトンの配合量を10部とした以外は、実施例11と同様にして長尺ステンレス箔の片面にポリイミド樹脂層を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0094】この基板のポリイミド樹脂層の吸水率は約0.5重量%で伸びは約10%であった。また、吸水前後での形状変化(反り現象)もほとんど観察されなかった。つまり、本発明の構造を有する回路形成用基板はポリイミド樹脂の種類が異なっても反り現象を示さないことから、材料選択性がないことが判明した。 【0095】実施例13 実施例11にて調製したポリイミド前駆体溶液に、ジエチルアミノエチルメタクリレートおよびミヒラーズケトンの代わりに感光剤としての4-(2’-ニトロフェニル)-2,6-ジメチル-3,5-ジカルボメトキシ-1,4-ジヒドロピリジン(慣用名:ニフェジピン)を、前駆体固形分100部に対して30部配合して感光性を付与したのち、実施例11と同様な方法で長尺ステンレス箔(SUS304、30μm厚)上に均一に流延塗布し、80℃で乾燥した。 【0096】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射(波長360?440nm、照射エネルギー500mJ/cm^(2))を行ったのち、さらに160℃で加熱処理を行った。そののち、5重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液/エチルアルコール(2/1容量比)の混合溶液を現像液として40℃で現像処理を行い、水洗、乾燥を行って所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0097】次いで、これをバッチ雰囲気加熱炉中、真空状態(0.1torr)で最高到達温度が380℃になるように加熱してポリイミド前駆体層をイミド化し、長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0098】得られたパターンは正テーパーの良好な形状を有しており、吸水率は0.6重量%であり、上記各実施例と同様に吸水前後での形状変化(反り現象)は観察されなかった。 【0099】実施例14 上記実施例13にて得た長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する回路形成用基板を、長尺スパッタリング装置にてクロム、銅を連続的に同一バッチ内でメタライジング処理した。この時、走査型電子顕微鏡による断面観察を行ったところ、クロム層が500Å、銅層1000Åであった。 【0100】次いで、スパッタリング膜の活性が低下しないように、スパッタリング処理後1時間以内に連続銅電解メッキ処理を行って銅層をさらに形成し、導体層を有する回路形成用基板を作製した。得られたメッキ膜を触針式表面粗さ計にて測定した結果、10cm角幅で9?10μmの厚みを有し、9μm±10%の膜厚精度を有するものであった。 【0101】得られた基板はプレッシャークッカードテストの条件下(121℃/2気圧)でも反り現象がほとんど見られないことから、導体層を加工処理して回路基板を作製する場合、高い寸法精度が確保されることが判った。 【0102】比較例3 実施例11におけるポリイミド前駆体合成に用いたモノマーを、ピロメリット酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとしてポリイミド前駆体溶液を調製した。それ以外は実施例11と同様にして感光液を調製し、回路形成用基板を作製した。 【0103】得られた基板におけるポリイミド樹脂層の吸水率は、1.5重量%であり、吸水前後における寸法変化(伸び)は1%以上であった。また、これらの基板の反りは吸水前においてポリイミド樹脂層側に反っていたものが、吸水後には平坦化しており、吸水することによって大きな形状変化(反りの変化)が生じるものであることが判明した。 【0104】実施例15 ピロメリット酸二無水物と、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの略等モルを、N-メチル-2-ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体溶液を調製し、これにジエチルアミノエチルメタクリレートを前駆体固形分100部に対して15部、さらにミヒラーズケトンを3部配合して感光液を調製した。 【0105】このようにして得られた感光液を長尺ステンレス箔(SUS304、25μm厚)の片面にコンマコータを用いて均一に流延塗布し、約80℃で乾燥して感光性を有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0106】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介してポリイミド前駆体層側から光照射(波長365nm以上の光で1000mJ/cm^(2))を行ったのち、N-メチル-2-ピロリドンを用いて現像処理を行い、長尺ステンレス箔上に所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0107】次に、これを窒素ガス置換によって酸素濃度を0.1容量%以下にした連続加熱炉中に入れ、最高到達温度が400℃になるように加熱してポリイミド前駆体層をイミド化し、長尺ステンレス箔の片面にポリイミド樹脂層を有する回路形成用基板を作製した。 【0108】得られた回路形成用基板の断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、形成されているポリイミド樹脂層の厚みは約5μmであった。また、この基板をポリイミド樹脂層が外側になるように90度の角度に折り曲げたところ、ポリイミド樹脂層にクラックは一切発生しなかった。 【0109】さらに、この基板のステンレス箔を塩化第二鉄でエッチング除去してポリイミド樹脂層のみにし、この伸び率を測定したところ、48%の伸び率を有するものであった。 【0110】実施例16 実施例15におけるピロメリット酸二無水物の代わりに、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用い、ミヒラーズケトンの配合量を10部とした以外は、実施例15と同様にして長尺ステンレス箔の片面にポリイミド樹脂層を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0111】この基板のポリイミド樹脂層の伸び率は35%で、実施例15と同様の折り曲げ試験を行なったところ、ポリイミド樹脂層にクラックの発生は一切観察されなかった。 【0112】実施例17 実施例15にて調製したポリイミド前駆体溶液に、ジエチルアミノエチルメタクリレートおよびミヒラーズケトンの代わりに感光剤としての4-(2’-ニトロフェニル)-2,6-ジメチル-3,5-ジカルボメトキシ-1,4-ジヒドロピリジン(慣用名:ニフェジピン)を、前駆体固形分100部に対して30部配合して感光性を付与したのち、実施例15と同様な方法で長尺ステンレス箔(SUS304、30μm厚)上に均一に流延塗布し、80℃で乾燥した。 【0113】次に、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射(波長360?440nm、照射エネルギー500mJ/cm^(2))を行ったのち、さらに160℃で加熱処理を行った。そののち、5重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液/エチルアルコール(2/1容量比)の混合溶液を現像液として40℃で現像処理を行い、水洗、乾燥を行って所望パターンを有するポリイミド前駆体層を形成した。 【0114】次いで、これをバッチ雰囲気加熱炉中、真空状態(0.1torr)で最高到達温度が380℃になるように加熱してポリイミド前駆体層をイミド化し、長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する本発明の回路形成用基板を作製した。 【0115】得られた基板におけるポリイミド樹脂層の伸び率は39%であり、実施例15と同様の折り曲げ試験を行なったところ、ポリイミド樹脂層にクラックの発生は一切観察されなかった。 【0116】実施例18 上記実施例17にて得た長尺ステンレス箔の片面にパターン化されたポリイミド樹脂層(約5μm厚)を有する回路形成用基板を、長尺スパッタリング装置にてクロム、銅を連続的に同一バッチ内でメタライジング処理した。この際に、走査型電子顕微鏡による断面観察を行なったところ、クロム層が500Å、銅層が1000Åであった。 【0117】次いで、スパッタリング膜の活性が低下しないように、スパッタリング処理後1時間以内に連続銅電解メッキ処理を行なって銅層をさらに形成し、導体層を有する回路形成用基板を作製した。得られたメッキ膜を触針式表面粗さ計にて測定した結果、10cm角幅で9?10μmの厚みを有し、9μm±10%の膜厚精度を有するものであった。 【0118】得られた基板を実施例15と同様の折り曲げ試験を行なったところ、ポリイミド樹脂層にクラックの発生は一切観察されなかった。 【0119】比較例4 実施例15におけるポリイミド前駆体の合成に用いたモノマーの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの代わりに、パラミンを用いてポリイミド前駆体溶液を調製した。それ以外は、実施例15と同様にして感光液を調製し、回路形成用基板を作製した。 【0120】得られた基板におけるポリイミド樹脂層の伸び率は16%であり、実施例15と同様の折り曲げ試験を行なったところ、ポリイミド樹脂層に絶縁不良を起こす程度の大きなクラックが発生した。 【図面の簡単な説明】 【図1】(a)?(c)は本発明の回路形成用基板を得るための各工程を示す断面図である。 【図2】(a)?(c)は本発明の他の回路形成用基板を得るための各工程を示す断面図である。 【図3】(a)および(b)は本発明の他の回路形成用基板を得るための各工程を示す断面図である。 【図4】図3(a)の長尺基板をロール状に巻回した状態を示す斜視図である。 【符号の説明】 1 長尺ステンレス箔 2 ポリイミド樹脂層 3 導体層(メタライジング膜) 4 導体層(電解メッキ後) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2007-11-07 |
結審通知日 | 2008-07-22 |
審決日 | 2007-12-05 |
出願番号 | 特願平8-88121 |
審決分類 |
P
1
113・
537-
ZA
(H05K)
P 1 113・ 536- ZA (H05K) P 1 113・ 121- ZA (H05K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長屋 陽二郎 |
特許庁審判長 |
綿谷 晶廣 |
特許庁審判官 |
小川 武 市川 裕司 |
登録日 | 2003-12-12 |
登録番号 | 特許第3502502号(P3502502) |
発明の名称 | 回路形成用基板および回路基板 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 山本 健二 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 谷口 操 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 山本 健二 |
代理人 | 速水 進治 |
代理人 | 谷口 操 |
代理人 | 高島 一 |