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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F23D
管理番号 1187797
審判番号 無効2006-80194  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-09-29 
確定日 2008-11-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3105182号「ターボジェット式高温高速バーナ」の特許無効審判事件についてされた平成19年 4月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成19年(行ケ)第10201号平成19年 8月31日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3105182号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3105182号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。
平成 9年 9月 5日 特許出願(特願平9-241076号)。
平成12年 9月 1日 特許権の設定登録(特許第3105182号、請 求項の数3)。
平成18年 9月29日 無効審判請求。
平成18年12月12日 答弁書及び訂正請求書提出。
平成19年 2月 8日 弁駁書提出。
平成19年 4月20日 第1回口頭審理。
口頭審理陳述要領書(請求人)提出。
口頭審理陳述要領書(被請求人)提出。
平成19年 4月26日 審決(訂正を認める。請求項1ないし3に係る発 明についての特許を無効とする。)
平成19年 6月 8日 知的財産高等裁判所出訴(平成19年(行ケ)1 0201号)。
平成19年 8月10日 訂正審判請求(審判2007-390095号)平成19年 8月31日 知的財産高等裁判所決定(審決を取り消す。)。平成19年11月16日 弁駁書(第2回)提出。

2.被請求人が請求した訂正の適否
訂正審判の請求書に添付された明細書、図面は、特許法第134条の3第3項の規定により、本件無効審判における「訂正の請求」に援用されたものとみなされるので、被請求人が求める訂正は、特許明細書を、平成19年8月10日付けの訂正請求に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものである 。

2-1 訂正の内容
訂正事項(1)
特許請求の範囲請求項1の「円筒状に形成される燃焼室の基端基部に基板部を設け、」を「円筒状に形成される燃焼室の基端基部に当該燃焼室の中心線に直交する基板部を設け、」に訂正する。

訂正事項(2)
特許請求の範囲請求項1の「前記燃焼室で熱交換される燃焼用空気を、」を「前記燃焼室は、密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体との間に内側管流路と外側管流路とを燃焼室の前部に設けた連通部で流通可能とし、かつ両流路の一方を外部の燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにし、前記燃焼室で熱交換される燃焼用空気を、」に訂正する。

訂正事項(3)
特許請求の範囲請求項1の「かつバーナノズルの中心線前方のバーナ噴射の噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向する複数の高圧空気噴射口の基部と、」を「かつ先端が前記燃焼室内に突出してバーナノズルの中心線前方のバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向する複数の管から成る高圧空気噴射口の基部と、」に訂正する。

訂正事項(4)
特許請求の範囲請求項1の「前記噴射口より吐出させる」を「複数の前記噴射口よりバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向するように吐出させる」に訂正する。

訂正事項(5)
特許請求の範囲請求項2を削除する。

訂正事項(6)
特許請求の範囲請求項3を、請求項2とし、「請求項1または2いずれか記載の」を「請求項1記載の」に訂正する。

訂正事項(7)
発明の詳細な説明段落【0009】の「(1)高熱燃焼ガスの吐出口を先端に開口し、この吐出口近くに直径絞り部を有する全体が円筒状に形成される燃焼室の基端基部に基板部を設け、この基板部の中心に、前記燃焼室の中心線上に向うバーナノズルを設け、かつ前記円筒状の燃焼室には外部より燃焼用空気を導入して熱交換できるようにすると共に、前記燃焼室で熱交換される燃焼用空気を、前記基板部のバーナノズルの外周環状位置に設けられ、かつバーナノズルの中心線前方のバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向する複数の高圧空気噴射口の基部と、連通させて前記噴射口より吐出させることができるようにしたことを特徴とするターボジェット式高温高速バーナ。」を「(1)高熱燃焼ガスの吐出口を先端に開口し、この吐出口近くに直径絞り部を有する全体が円筒状に形成される燃焼室の基端基部に当該燃焼室の中心線に直交する基板部を設け、この基板部の中心に、前記燃焼室の中心線上に向うバーナノズルを設け、かつ前記円筒状の燃焼室には外部より燃焼用空気を導入して熱交換できるようにすると共に、前記燃焼室は、密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体との間に内側管流路と外側管流路とを燃焼室の前部に設けた連通部で流通可能とし、かつ両流路の一方を外部の燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにし、前記燃焼室で熱交換される燃焼用空気を、前記基板部のバーナノズルの外周環状位置に設けられ、かつ先端が前記燃焼室内に突出してバーナノズルの中心線前方のバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向する複数の管から成る高圧空気噴射口の基部と、連通させて複数の前記噴射口よりバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向するように吐出させることができるようにしたことを特徴とするターボジェット式高温高速バーナ。」に訂正する。

訂正事項(8)
発明の詳細な説明段落【0010】を削除する。

訂正事項(9)
発明の詳細な説明段落【0011】の「(3)前記燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成したことを特徴とする前項(1)または(2)いずれか記載のターボジェット式高温高速バーナ。」を「(2)前記燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成したことを特徴とする前項(1)記載のターボジェット式高温高速バーナ。」に訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び変更・拡張の存否
訂正事項(1)は、【図1】の記載に基づいて、「基板部」の構成を限定するものであり、訂正事項(2)は、特許請求の範囲の請求項2の記載及び【図1】の記載に基づいて燃焼室へ接続される燃焼用空気の態様を限定することを目的とするものである。訂正事項(3)は、【図1】の記載に基づいて、高圧空気噴射口の態様を限定することを目的とするものである。訂正事項(4)は、特許明細書段落【0017】、【0023】の記載に基づいて、噴射口の設置形態を限定することを目的とするものである。訂正事項(5)は、請求項の削除を行うものであり、訂正事項(6)は、訂正事項(5)による請求項の削除に伴って、形式の整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

また、訂正事項(7)?(9)は、特許請求の範囲の訂正に係る訂正事項(1)?(6)の訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

そして、訂正事項(1)?(9)は、いずれも特許明細書の記載又は図面の記載に基づくものであり、これらの訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。

3.本件特許発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、平成19年8月10日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次の事項により特定されるものである。(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)

【請求項1】高熱燃焼ガスの吐出口を先端に開口し、この吐出口近くに直径絞り部を有する全体が円筒状に形成される燃焼室の基端基部に当該燃焼室の中心線に直交する基板部を設け、この基板部の中心に、前記燃焼室の中心線上に向うバーナノズルを設け、かつ前記円筒状の燃焼室には外部より燃焼用空気を導入して熱交換できるようにすると共に、前記燃焼室は、密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体との間に内側管流路と外側管流路とを燃焼室の前部に設けた連通部で流通可能とし、かつ両流路の一方を外部の燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにし、前記燃焼室で熱交換される燃焼用空気を、前記基板部のバーナノズルの外周環状位置に設けられ、かつ先端が前記燃焼室内に突出してバーナノズルの中心線前方のバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向する複数の管から成る前記高圧空気噴射口の基部と、連通させて複数の前記噴射口よりバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向するように吐出させることができるようにしたことを特徴とするターボジェット式高温高速バーナ。【請求項2】前記燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成したことを特徴とする請求項1記載のターボジェット式高温高速バーナ。

4.当事者の主張
4-1 審判請求人(以下「請求人」という。)の主張
請求人は、甲第1号証ないし甲第7号証を提示し、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものであるから、無効とされるべきであると主張している。

甲第1号証:島田荘平著「フレームジェット・エンジニアリング入門」1 995年(平成7年)4月3日産業図書株式会社発行、第2 ?3頁
甲第2号証:特開昭56-25604号公報
甲第3号証:特公昭59-19241号公報
甲第4号証:特開昭58-136907号公報
甲第5号証:特開平6-265109号公報
甲第6号証:特開平9-112823号公報
甲第7号証:特公昭60-26927号公報

4-2 審判被請求人(以下「被請求人」という。)の主張
被請求人は、平成19年8月10日付けの訂正の請求において、訂正された発明は、甲各号証に記載された発明から容易に発明できたものではないと主張している。

5.甲各号証
5-1 甲第2号証には、図面とともに以下の記載がある。

・「1.空気と燃料(灯油)を噴霧状で噴射混合し、燃焼筒内で燃焼させノズルより超音流を噴射させる火炎ジェットバーナにおいて、3乃至4割の空気を、同心円状に配置した多くのエアー噴出孔または、空気噴出用の内側スワーラから噴出させ、残りの7乃至6割の空気を外側スワーラから噴出させるようにしたことを特徴とする火炎ジェットバーナ。」(特許請求の範囲1)

・「本発明は、上述の諸欠点を完全に除去できるメカニズムのバーナを提供するもので、灯油への着火は、着火時に酸素を供給することなく、空気のみで、バーナ内部において、特殊な発火器によって着火させることができ、・・・(中略)・・・。酸素の供給が不要となり、バックファイヤの危険性がなくなり、かつ廃棄物処理プラント等に利用する場合に、バーナ送り装置が不要となり、かつバーナの燃焼状態が、熱電対によって常時検出される本発明による火炎ジェットバーナは、実用上その価値は絶大なものがある。」(第2頁左上欄第6行?右上欄第4行)

・「図1により詳細に説明すれば、次のようになる。
本発明による火炎ジェットバーナは、ノズル1、燃焼筒3、インジェクタ4、エア噴射部5などからなる。灯油は一定の圧力で供給され、インジェクタ4から噴霧状に噴射される。空気はコンプレッサから供給され、エア噴射部5により燃焼筒側へ噴出される。1部の空気(3?4割)はエア噴出孔6から噴出され、これはインジェクタ4から噴射された灯油噴霧と衝突し、灯油の噴霧性を助長する。残りの空気(6?7割)は、エア噴射部5の端部スワーラ7によって旋回流となり、燃焼筒内へ噴出される。」(第2頁右上欄第7行?第18行)

・「着火と同時に点火棒の電源は直ちに断たれ、灯油と空気量を次第に漸増させ、超音速状態にもってゆく。灯油と空気は燃焼筒3内で燃焼し、スロート2の所で音速となり、ノズル出□1からは、超音速となって外部へ噴射される。着火後、熱電対の示す温度は、常温より直ちに上昇し、最大550?600℃程度になり、定常運転状態になれば350?400℃を示すようになる。燃焼筒内部の温度は約2100℃程度であるが、インジェクタ4とエア噴射部5の付近では350?400℃程度であるので、熱のために点火棒と熱電対が損耗することはない。バーナ内部へ供給される空気は、通常コンプレッサから出る場合60?80℃の温度を有しているが、これが冷却水で冷却されないようにするため、冷却水通路と空気通路との間10には断熱材が挿入されている。」(第2頁左下欄第12行?右下欄第7行)

・「燃焼筒は外壁にそって冷却水が循環し、燃焼筒を保護している。このバーナでは、供給する空気の一部(6?7割)は、スワーラ7によって燃焼筒内壁に沿って旋回するようになっているため、これが燃焼筒内壁面に空気の薄膜を作り、燃焼筒内部の高温ガスが直接燃焼筒内壁面に接触するのを妨げ、そのため、燃焼筒壁面への熱の伝達は少なくなり、燃焼筒から冷却水へ逃げる熱損失も、従来のバーナよりは少なくなる。尚、11は燃焼通路パイプ、12は空気通路パイプ、13は冷却水通路、14は冷却水通路である。」(第2頁右下欄第8行?第16行)

また、図面及び従来周知の技術常識を参酌すると、燃焼筒の全体が円筒状に形成されていること、インジェクタが燃焼筒の中心線上に向うこと、エア噴出孔及びスワーラに連通する部位がエア噴射部のインジェクタの外周環状位置に設けられていることは、当業者にとって明らかなことである。

更に、複数のエア噴出孔は、噴出目標である、インジェクタの中心線前方の焦点をそれぞれ集中指向するものといえ、火炎ジェットバーナは、燃焼用空気がコンプレッサから供給されるものであって、ターボジェット式高温高速バーナといえる。

また、技術常識を参酌すると、図面には、燃焼筒が密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体との間に内側管流路と外側管流路とを燃焼筒の前部に設けた連通部で流通可能とし、かつ両流路を外部から導入される冷却水の通路とした点が記載されているといえる。

したがって、甲第2号証には、図面を参照すると、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲第2号証発明」という。)。

「高熱燃焼ガスのノズル1出口を先端に開口し、このノズル1出口近くにスロート2を有する全体が円筒状に形成される燃焼筒3の基端基部に高熱燃焼ガスのノズル1出口に向けて開拡する円錐状のエア噴射部5を設け、
このエア噴射部5の中心に、前記燃焼筒3の中心線上に向うインジェクタ4を設け、
かつ前記円筒状の燃焼筒3には外部より冷却水を導入して熱交換できるようにすると共に、
前記燃焼筒は、密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体との間に内側管流路と外側管流路とを燃焼筒の前部に設けた連通部で流通可能とし、かつ両流路を冷却水通路とし、
60?80℃の燃焼用空気を、前記エア噴射部5のインジェクタ4の外周環状位置に設けられ、かつインジェクタの中心線前方の焦点をそれぞれ集中指向する複数の筒状流路を有するエア噴出孔6と燃焼筒内壁に沿って旋回流を形成するスワーラ7とに連通する環状空気室と、連通させて前記エア噴出孔6とスワーラ7より吐出させることができるようにしたターボジェット式高温高速バーナ。」

5-2 甲第1号証には、図面とともに、以下の記載がある。

・「1.1.1. ジェットバーナ
図1.1に水冷式ジェットバーナの断面図を示す.バーナには燃料のケロシン,酸化剤の圧縮空気,バーナの内壁保護のための冷却水が供給される.ケロシンはインジェクタ(噴霧化装置)8で霧状に噴射され,燃焼筒2に供給される.圧縮空気は,スワーラ(旋回流発生装置)3を通って同じく燃焼筒に供給される.燃料・空気の混合気は点火プラグ7によって着火され,燃焼筒内で燃焼する.燃焼ガスはノズル1で加速され,ノズルスロート5で音速に達し,超音速となってノズルから外部に噴射される.燃焼筒外側部は冷却水を循環させるために二重管の構造になっている.バーナには点火と失火の状態を判断するため,熱電対4を挿入してある.現在使用しているノズルは,内側の絞り角度は片側で30度,出口側では10度の開き角度となっている。」(第2頁第2行?第12行)

・「図1.2には空気式ジェットバーナの断面図を示す.冷却に空気を使用する点が異なるだけで,空冷式の構造も水冷式とほぼ同じである.燃料のケロシンはケロシンポンプから供給され,インジェクタ5で噴霧化される.コンプレッサから供給される圧縮空気は、空気流路4から3を通り,最初は燃焼筒の冷却用として作用する.その後,空気の一部は直接燃焼筒2内に流入し,残りの空気はスワーラ6を通って燃焼筒内に入る.スワーラは,燃料と空気の混合促進と燃焼筒内面の保護の作用がある.燃焼筒に入った空気はケロシン噴霧と混合し可燃混合気を形成する.この混合気に点火棒7で点火し燃焼させる.燃焼ガスはノズル1から超音速で噴射される.燃焼筒内の点火,失火を検知するため,炎検知器8を取り付けている.」(第2頁第13行?第3頁第6行)

・「ここで紹介した空冷式は,バーナに供給される空気の全量が燃焼に関与するので,水冷式の場合と異なり冷却により奪われる熱量は殆どない.これは水冷式と空冷式の大きな相違点である.後で述べるように,ジェットバーナを使用した種々のプラントやシステムを考える場合には,熱効率を大きくする必要があり,この意味では空冷式は水冷式より優れているといえる.しかし,空冷式ではバーナの運転状態により,供給空気量が制限されることから,厳しい設計が要求される.現在,燃焼筒の寿命の面でまだ問題がある.」(第3頁第7行?第13行)

以上の記載及び図面及び技術常識からみて、甲第1号証には、ジェットバーナにおいて、内側管流路と外側管流路から成る二重管構造の燃焼筒外側部を循環する冷却水に代えて、コンプレッサから供給される圧縮空気を用い、この空気の一部を直接燃焼筒に流入させ、残りの空気をスワーラを通して燃焼室内に流入させて燃焼用空気とすることにより、熱効率を大きくすること(以下「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されている。

5-3 甲第4号証には、図面とともに、以下の記載がある。

・「2.特許請求の範囲
本文に詳記し、かつ実施例図に示すように、燃焼筒(1)に固定されたインゼクター(2)に取付けられるノズルチップ(8)に燃料輸送パイプ(5)を取付け、またインゼクター(2)には数個の酸化剤噴射孔(6)をあけ、インゼクター(2)に取付けられた酸化剤溜め(3)に圧力を有する酸化剤をパイプ(4)により送り、酸化剤噴射孔(6)の捻れ角度によって酸化剤に回転集中力を与え、この集中回転渦巻の渦中に燃料を噴射せしめるように位置せしめ、高電圧電極(9)における放電スパークをこの渦中に与え点火させ、この燃焼時の発熱膨張と、発生する圧力を、燃焼室(10)の内径の数分の1のノズル孔(7)によって燃焼筒(1)内の高圧を減圧、同時に火炎速度を上昇せしめ逐次ゼット流に増速させ、高速、高温即高カロリーの燃焼効果を得るようにした融合燃料専焼バーナー。」(特許請求の範囲)

また、図面を参照すると、甲第4号証には、高温高熱バーナーニオイテ、インゼクターに形成された酸化剤噴射孔は、バーナの中心線前方の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向すること(以下「甲第4号証記載の発明」という。)が記載されている。

5-4 甲第5号証には、図面とともに、以下の記載がある。

・「プラズマ炎からのエネルギー補助を受けつつ微粉炭を燃焼させるバーナーにおいて、プラズマ炎を囲むバーナータイルを有し、プラズマガスとして、窒素あるいは窒素を含むガスを用い、プラズマ炎と微粉炭が会合する領域に供給する空気量を空燃比0.3以上0.6以下にし、会合部より下流に、プラズマ炎の外縁に旋回流を形成する様に、さらに空気を供給することを特徴とするプラズマ助燃燃焼炉用バーナー。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

・「微粉炭と一次空気供給孔はプラズマトーチノズルの外側のプラズマトーチノズルと同心円となる円周上に複数個配置されている。更に、その外側に配置された二次空気供給孔(9)より、二次空気が供給される。二次空気供給孔はプラズマジェットに対し二次空気が旋回流(12)を形成するよう、円周接線方向速度成分を持って噴出する。プラズマジェットはバーナータイル(13)で囲まれている。(14)は燃焼炉である。」(段落【0009】)

上記記載及び図面から、甲第5号証には、燃焼炉用バーナーにおいて、二次空気供給孔を複数個配置し、プラズマジェットに対し、二次空気が旋回流を形成するよう噴出すること(以下「甲第5号証記載の発明」という。)が記載されている。

5-5 甲第7号証には、図面とともに、以下の記載がある。

・「本発明は車両用暖房装置等に用いられる灯油、軽油及びガソリン等の液体燃料の噴霧式燃焼装置に関する。
車両用暖房装置に用いられている従来の噴霧式燃焼装置を第1図を参照して説明すると、液体燃料は内筒1に装置された燃料噴射ノズル2より外筒3に連なる燃焼筒4内に形成された燃焼室5に噴射され霧化する。他方、燃焼用空気は燃焼用空気導入管6を通じて内筒1と外筒3とによって形成された環状の室7へ送り込まれる。この燃焼用空気は前記環状の室7を旋回し、一部は前記内筒1の先端部にて外方に周設されたフランジ状のバツフルプレート8の外周縁と前記外筒3との間の間隙9を通り、また残りはバツフルプレート8にL字状の切込みを入れ該切込み部を折返すことにより形成された複数個(例えば8個程度)の案内羽根付導気孔10を通っていずれも前記燃焼室5へ導かれる。尚、前記導気孔10の案内羽根はバツフルプレート8と所定の角度をなし、燃焼用空気は渦巻状に燃焼室5へ流入する。
そして、前記燃焼室5にて前述の霧化した燃料と燃焼用空気とが混合する。最初の着火は燃焼室5に臨ませた点火プラグ11を通電等により赤熱することにより行なわれ、これ以降は連続的に着火燃焼する。これにより生成された燃焼ガスは燃焼筒4の先方に設けられた図示しない熱交換器に導かれ、この熱交換器にて燃焼ガスと暖房用空気との間で熱交換が行なわれ、暖房用空気が加熱されて車室の暖房が行なわれる。」(第1頁第1欄第19行?第2欄第18行)

また、第1図には、燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成した点が記載されている。

6.対比・判断
6-1 本件特許発明1について
本件特許発明1(前者)と甲第2号証発明(後者)とを対比する。
後者の「ノズル1出口」は前者の「吐出口」に相当し、以下同様に、「スロート2」は「直径絞り部」に、「燃焼筒3」は「燃焼室」に、「インジェクタ4」は「バーナノズル」に、「エア噴出口6」は「高圧空気噴射口」に、それぞれ、相当している。
ここで、被請求人は、「『エア噴出孔(6、6)』は、・・・着火用空気の噴出孔というべきものであり、燃焼用空気の噴出孔に相当する事項(前記特徴ロ)ではなく、」(平成19年8月10日付け訂正審判請求書第16頁第14?17行)と主張しているので、検討する。
甲第2号証には、「定常運転状態になれば・・・エア噴出部5の付近では350?400℃程度である。」(第2頁左下欄第18行?同右下欄第3行)とあるのみで、定常運転時にエア噴出孔(6)において燃焼を行わないとの記載はないので、前記主張は、採用できない。

したがって、両者は、
高熱燃焼ガスの吐出口を先端に開口し、この吐出口近くに直径絞り部を有する全体が円筒形に形成される燃焼室の基端基部に部材を設け、
該部材の中心に、前記燃焼室の中心線上に向うバーナノズルを設け、
前記燃焼室は、密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体とを燃焼室の前部に設けた連通部で流通可能とし、
燃焼用空気を、前記部材のバーナノズルの外周環状位置に設けられ、かつバーナノズル中心線前方のバーナ噴射の焦点を集中指向する複数の高圧空気噴射口と、連通させて複数の高圧空気噴射口よりバーナ噴射の焦点を集中指向するように吐出させることができるようにしたターボジェット式高温高速バーナ
の点で一致し、次の点で相違している。

a 本件特許発明1では、バーナノズルと管から成る高圧空気噴射口を設ける部材を基板部とし、該基板部は、燃焼室の中心線に直交するものとすると共に、高圧空気噴射口の先端が燃焼室内に突出しているのに対し、甲第2号証発明では、該部材は、円錐状の部材であって、高圧空気噴射口が、筒状流路を備えた噴射口である点。

b 本件特許発明1では、外部より燃焼用空気を導入して燃焼室で熱交換できるようにするとともに、内側管流路及び外側管流路の一方を燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにしているのに対し、甲第2号証発明では、燃焼室で熱交換する流体は冷却水である点。

c 本件特許発明1では、燃焼用空気は、それぞれ旋回的に集中指向するように吐出するものであるのに対し、甲第2号証発明では、該構成は不明である点。

まず、相違点aについて検討する。
当該技術分野において、バーナノズルと高圧燃焼部材の噴射口を設ける基板部を、燃焼室の中心線に直交するものとした点は、本件出願前、周知であり(例えば、甲第4号証である特開昭58-136907号公報、特開平9-53810号公報参照。)、また、高圧空気噴射口を管から成るものとし、その先端を燃焼室内に突出したものとすることも周知の技術である(例えば、特開平8-28871号公報、特開平6-229510号公報参照。)。
そして、燃焼部材の噴射口を筒状流路とすることも、先端を燃焼室内に突出することも流路に指向性を持たせる点で、技術的に変わるところはない。

さらに、基板部を、燃焼室の中心線に直交するものとした点に、格別技術的意義があるものとも認められない。

そうすると、甲第2号証発明において、バーナノズルと高圧空気噴射口を設ける部材を基板部とし、該基板部は、燃焼室の中心線に直交するものとすると共に、管から成る高圧空気噴射口の先端が燃焼室内に突出しているものとした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

次に、相違点bについて検討する。
当該技術分野において、燃焼用空気を導入して熱交換できるようにするとともに、両流路の一方を燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにすることは、本件出願前周知の技術である(例えば、甲第1号証記載の発明、特開昭59-137714号公報、実願昭51-114057号(実開昭52-33738号)のマイクロフィルム参照。)。

そして、甲第2号証発明においても、燃焼筒内部の熱損失を少なくするものであり、バーナ内部へ供給される燃焼用空気が冷却されないようにするものであるように、燃焼室内の高温を維持することが記載されていることに加えて、熱効率の向上を図ることは、当該分野においては、周知の課題である。

したがって、甲第2号証発明において、冷却水により熱交換するものに代えて、外部より燃焼用空気を導入して熱交換できるようにするとともに、内側管流路と外側管流路の一方を燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにした点は、熱効率を向上する必要に応じ、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

さらに、相違点cについて検討する。
当該技術分野において、燃焼用空気を、それぞれ旋回的に集中指向するように吐出するものとすることは、本件出願前周知の技術である(例えば、甲第4号証記載の発明、甲第5号証記載の発明、特開平8-28871号公報参照。)。

そうすると、甲第2号証発明において、燃焼用空気を、それぞれ旋回的に集中指向するように吐出するものとした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

この点について、被請求人は、「『焦点をそれぞれ旋回的に』とは、複数の管から成る高圧空気噴射口のそれぞれが集中的に集約される指向先が、焦点そのものではなく、焦点そのものとは半径方向に若干離れた同心円上の点に向けて、それぞれの・・・(中略)・・・、当業者からみれば明らかである。そして、この場合、・・・集中性及び直進性はきわめて小さいものである。」(平成19年8月10日付け訂正審判請求書第8頁第24行?第9頁第9行)と主張しているが、明細書全体をみても、このような技術事項を表現しているものとは理解できず、請求項1の記載に基づく主張とはいえない。

仮にそのような意味であったとしても、燃焼用空気の集中性と直進性を達成するためのものであるとすると、相違点aについての検討でみたように、噴出口の先端を突出するものが周知である以上、格別の技術的意義を有するものとも考えられないので、前記主張は、採用できない。

次に、本件特許発明1の奏する作用効果について検討する。
被請求人は、作用効果について、概ね以下の主張をしている(平成19年8月10日付け訂正審判請求書第6頁第3行?第7頁第21行)。

(1)訂正発明は、流路内に燃焼用空気を流通させ、これにより熱交換させて高圧高温状態の活性化空気として供給しているので、燃焼室内での燃焼ガスは、著しく高温高熱状態を生成でき、きわめて効率の高い燃焼バーナとして機能させることができる。

(2)焦点へと熱交換された高温高圧の燃焼空気を、焦点まで等距離の位置から均等に吐出して、中心線上の焦点を旋回的に集中指向して噴霧化燃料内部に浸入させて、高圧空気の旋回流を与えることができる。

(3)バーナノズルから円錐状に拡散して着火燃焼する噴霧化燃料に対してほぼ直角方向から燃焼用空気を叩きつけるようにして、その拡散する着火燃焼炎の外周炎を突き破って、噴霧化燃料中心部分の比較的高密度で液滴粒子の大きい燃料粒子群の主流に対して直接的に吐出供給する。

(4)液滴粒子の大きい燃料粒子群の主流に対して到達可能として、完全に空気と混合して未燃物がないという状態を作り出すことができる。

(5)燃焼速度を高速化して、爆発的な燃焼により、燃焼ガス温度が高くなり、空気だけで高温のガス温度と、音速を超すガス速度が得られる。

(6)燃焼室全体の容積を基準とする従来の空燃比ではなく、中心部分の高密度の主流部分の局所的な容積を基準とした従来よりも低い割合の空燃比で燃焼させる希薄燃焼が実現可能となり、『単位時間、単位体積当たりの燃焼量が著しく増加する』ことで、燃費効率も大幅に節約可能となる。

(7)希薄燃焼の実現により、火炎温度を低くすることができる結果、窒素酸化物の排出を顕著に減少させることができる。

(8)爆発的な燃焼が噴霧化燃料中心部分の主流部分で完全燃焼が行われることから、燃焼室内周壁面付近での高温燃焼が無くなるため、燃焼室内周壁の損傷を防止することができる。

そこで、上記各主張について検討する。
まず、流路内に燃焼用空気を流通させ、これにより熱交換させて高圧高温状態の活性化空気として供給するようにした点は、甲第1号証記載の発明等の周知技術が具有する構成であり、該技術を適用すれば、当然、奏される効果である(前記「(1)、(4)、(5)」)。

そして、多数の空気噴出孔から吐出される燃焼用空気を、吐出目標である焦点まで、等距離の位置から均等に吐出する程度のことは、当業者が通常持ち得る技術常識といえる(「(2)」)。

また、噴霧化燃料内部に浸入させること、外周炎を突き破って、液滴粒子の大きい燃料粒子群の主流に対して直接的吐出供給すること、中心部分の主流での完全燃焼をすることについては、特許明細書から把握することができない効果である(前記「(3)、(4)、(6)、(7)、(8)」)。

さらに、中心部分における希薄燃焼、窒素酸化物の排出減少、燃焼室内周壁付近での損傷防止については、いずれも特許明細書に記載のない作用効果である。

そうしてみると、被請求人の主張する効果は、甲第2号証発明、周知技術から当業者が予測できる効果、又は特許明細書に記載のなかった効果のいずれかである。
したがって、前記主張は、採用できない。

以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第2号証発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6-2 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1に、「前記燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成した」との限定を付したものである。

したがって、本件特許発明2(前者)と甲第2号証発明(後者)とを対比すると、「本件特許発明1について」において示した一致点を有し、既に検討した相違点a?cに加えて、次の点で両者は、相違している。

相違点d
前者が、燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成したものであるのに対し、後者は、該構成を具備しない点。

そこで、上記相違点dについて検討する。
当該技術分野において、燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成することは、本件出願前周知の技術である(例えば、甲第7号証、特開平6-281114号公報参照。)。

そうすると、甲第2号証発明において、燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成したものとした点は、必要に応じ、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本件特許発明2の奏する効果も、甲第2号証発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

7.むすび
以上のとおり、本件特許発明1、本件特許発明2は、甲第2号証発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に違反して特許されたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ターボジェット式高温高速バーナ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】高熱燃焼ガスの吐出口を先端に開口し、この吐出口近くに直径絞り部を有する全体が円筒状に形成される燃焼室の基端基部に当該燃焼室の中心線に直交する基板部を設け、
この基板部の中心に、前記燃焼室の中心線上に向うバーナノズルを設け、
かつ前記円筒状の燃焼室には外部より燃焼用空気を導入して熱交換できるようにすると共に、
前記燃焼室は、密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体との間に内側管流路と外側管流路とを燃焼室の前部に設けた連通部で流通可能とし、かつ両流路の一方を外部の燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにし、
前記燃焼室で熱交換される燃焼用空気を、前記基板部のバーナノズルの外周環状位置に設けられ、かつ先端が前記燃焼室内に突出してバーナノズルの中心線前方のバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向する複数の管から成る前記高圧空気噴射口の基部と、連通させて複数の前記噴射口よりバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向するように吐出させることができるようにしたことを特徴とするターボジェット式高温高速バーナ。
【請求項2】前記燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成したことを特徴とする請求項1記載のターボジェット式高温高速バーナ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として燃焼炉や溶融炉等用に、また特に産業廃棄物の焼却等に適するターボジェット式高温高速バーナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
諸産業用の各種燃焼炉,溶融炉等には、用途に応じてそれぞれ所定の高温度が要求されるが、従来のこの種の汎用バーナにあっては、特にオイルを燃料とし、空気のみで燃焼させた形式にあっては、燃焼空気を過熱しない限り、効率的に得られる温度は、ほぼ1400℃が限度であった。
【0003】
これよりさらに高温度を必要とする場合には、燃焼空気の加熱を行う必要があり、このために空気加熱炉もしくは熱交換器等が必要となり、その分の設備費と燃料費とが加算される。
【0004】
また、後者の廃熱を利用する熱交換器も、燃焼空気の温度に限度があり、温度が高くなると共に、構成鋼材コストも数倍に増加し、技術的にも困難となるが、安定的に得られるバーナ温度は、1600℃前後が限度である。
【0005】
さらに高温度を必要とする場合、燃焼空気を酸素O_(2)に変えると、バーナ温度は、2000?3500℃の高温が容易に得られる。
【0006】
前記1600℃以上の高温を必要とする場合は、殆ど熔融関連に属するのが一般的であるが、しかしながら、これらの場合、中には酸素を極度に嫌う物質があり、例えば耐火物等はアルミナ、タンタル、人造黒鉛等、いずれも耐熱2300℃の保証を有する場合でも、高温酸素に対しては極めて弱い。また、酸素を燃料として多量に使用することは例えば産業廃棄物処理行等には、採算的に不可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような諸局面にかんがみてなされたもので、燃焼室自体に燃焼用空気の熱交換加熱機能を与え、全体として比較的低コストで高い燃焼温度と高いガス速度の得られるターボジェット式バーナの提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明においては、次の各項(1),(2)のいずれかのターボジェット式高温高速バーナを提供することにより、前記目的を達成しようとするものである。
【0009】
(1)高熱燃焼ガスの吐出口を先端に開口し、この吐出口近くに直径絞り部を有する全体が円筒状に形成される燃焼室の基端基部に当該燃焼室の中心線に直交する基板部を設け、この基板部の中心に、前記燃焼室の中心線上に向うバーナノズルを設け、かつ前記円筒状の燃焼室には外部より燃焼用空気を導入して熱交換できるようにすると共に、前記燃焼室は、密閉構造の外側管状体と内側管状体と中間管状体とより成り、前記中間管状体を介して内側管状体と外側管状体との間に内側管流路と外側管流路とを燃焼室の前部に設けた連通部で流通可能とし、かつ両流路の一方を外部の燃焼用空気と連通する連通管と接続し、他方を管から成る高圧空気噴射口と連通接続できるようにし、前記燃焼室で熱交換される燃焼用空気を、前記基板部のバーナノズルの外周環状位置に設けられ、かつ先端が前記燃焼室内に突出してバーナノズルの中心線前方のバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向する複数の管から成る高圧空気噴射口の基部と、連通させて複数の前記噴射口よりバーナ噴射の焦点をそれぞれ旋回的に集中指向するように吐出させることができるようにしたことを特徴とするターボジェット式高温高速バーナ。
【0010】(削除)
【0011】
(2)前記燃焼室の直径絞り部の直径絞り率を0として、前記燃焼室の形状を略々同一径の円筒形状に形成したことを特徴とする前項(1)記載のターボジェット式高温高速バーナ。
【0012】
【作用】
以上のような本発明構成により、燃焼室内は高圧高熱化され、化学反応速度の高速化により、内部の燃焼温度の増加と、排出ガスの高速化とが得られる。また、燃焼用空気は、燃焼室へ導入され熱交換されて有効に加熱されるので、燃焼室内での燃焼現象を促進できると共に、さらに燃焼ガスが高速拡散した場合、乱流火炎伝播現象により、従来の現象と異なる速度で燃焼する。
【0013】
例えば、自動車エンジンがその好例であり、混合気の流動を伴って火炎が動いているものの、燃焼速度の10倍も100倍もの燃焼速度で燃焼している。燃焼速度が遅いと言うことは火炎が長く、未燃物があり、火炎が短い時は、完全に空気と混合して未燃物が無いと言うことであり、同一燃料,空気の混合比で燃焼速度が早いと言うことは、高温高圧の外に、空気と燃料を高圧、高温の下に高速拡散させて乱流燃焼速度を作るものであり、このことにより、単位時間、単位体積当たりの燃焼量が著しく増加する。
【0014】
なお、高温/高速化を必要としない仕様の増合には、前記燃焼ガス出口直前の絞り部を省略して燃焼室を簡素化することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(構成)
図1に、本発明に係る高温高速バーナの典型的な一実施の形態の概要断面説明図を示す。図1において、1は、燃焼室基部の円形の基板部8Aの中央部に配設されたバーナノズルで、燃焼輸送管2を通じて、燃料入口から例えばケロシンのような燃料オイルが供給される。
【0017】
本発明の実施の形態の特徴は、実質的に円筒形で先端に吐出口8Bを開口し、この吐出口8B近くに絞り部23を有するバーナ燃焼室(フレーム)8を有し、基板部8A中心部のバーナノズル1の外周環状位置より均等に高圧空気取入口4からの複数(図例は36個)の高圧空気噴射口5を、バーナノズル1のバーナ燃焼室8の中心線上のバーナ噴射焦点14をそれぞれ集中的に指向するように配設して高圧空気の旋回流を与えるようにしたことである。
【0018】
なお、この高圧空気噴射口5は、右または左の斜め方向に屈曲させて旋回流を強制的に得られるように構成することもある。
【0019】
バーナ燃焼室8の円筒状外壁は、密閉構造の外側管状体9、中間管状体10及び内側管状板11の3層より成り、それぞれの板間には、外側管流路9Aと内側管流路11Aが形成され、燃焼室8の吐出口8B近くの連通部8Cで互いに連通できる構成となっている。
【0020】
また、前記基板8Aに設けた多数の高圧空気噴射口5の基部には、すべてに共通して連通する環状の空気室4が設けられ、前記外側管流路9Aか或は内側管流路11Aかいずれかと連通できる構成となっている。さらに前記燃焼室8の基部近くの外方より外側管流路9Aまたは内側管流路11Aのいずれかと連通する高圧空気導入管6が一以上多数設けられ高圧圧送ポンプなどで加圧された燃焼用空気を強制的に導入できるようになっており、外側管流路9Aおよび内側管流路11Aが、一種の熱交換器として働くようになっている。図示では高圧空気導入管6は相対向した二本として示され、いずれも内側管流路11Aと連通してあり、これにより外側管流路9Aの基部が前記空気室4と連通できる構成となっている。
【0021】
なお、18は、バーナの点火兼保燃焼用パイロット火炎発生手段を示し、図示されていないが、基板部8Aには燃焼室8内を監視できるカメラなどが付設され、さらに基板部8Aを耐火保護するための水冷または空冷の冷却施設を備える。17は、基板部8Aと燃焼室8の筒状部材とを強固に固定させるためのドッキングビスを示す。
【0022】
叙上の構成に基づいて作用を説明する。
【0023】
高圧空気導入管6より例えば2kg/cm^(2)の高圧状態の燃焼用空気を給送すると、矢符に示すように燃焼室8の内側管流路11Aを経て連通部8Cで外側管流路9Aに折返し基板部8A側に移行し環状の空気室4内へ導入される。この空気室4より多数の高圧空気噴射口5を経て勢いよくバーナ噴射焦点14へ向けて燃焼用空気は吐出される。
【0024】
バーナノズル1より噴射される燃料は、例えば60度位の噴射分散角度で燃焼室8内に吐出され、パイロット火炎発生手段18の点火作用と高圧燃焼用空気の送給作用で有効に燃焼されると共に、ことに燃焼用空気は燃焼室8内を通過する過程で十分熱交換され、例えば秒速50m/secで17.5kg/cm^(2)で噴出している燃料に叩きつける結果となり、高圧,高温,旋回,乱気流状態を呈し、この条件下で燃焼という化学反応の燃焼速度を加速的に促し、恰かも爆発的な燃焼状態を得ることができる。したがって、燃焼室8の吐出口8Bよりきわめて高圧高温の燃焼ガスを吐出させることができる。
【0025】
この場合100リットルで実験した処、バーナノズル1よりの燃料吐出速度を240M/Sとした場合、ガス温度は2300℃であった。燃焼室8を水冷とした場合の時より15?30%温度が高くなり、これ以上の温度,効率を望むと衝撃波が出てガス速度も音速を越すことが予測される。
【0026】
以上、この発明に係る実施の一例を記述したが、特に前記実施の形態において、あまり高温を必要としない場合とか、構成を簡易化したい場合は、絞り部23の絞り率を0とし全体として同径の円筒状構造として実施することもできる。
【0027】また、この実施例では、燃料としてケロシンのような液体油を用いたが、気体、あるいは両者の混合、さらには粉体など好みの燃料を用いることができる。
【0028】
【発明の効果】
この発明によれば燃焼用空気は、燃焼室で発生する高圧高温の熱エネルギーを燃焼室を構成する円筒材料中に流通できる流路を形成して、この流路内を流通させこれにより熱交換させて高圧高温状態の活性化空気として供給しているので、燃焼室内での燃焼ガスは著しく高温高熱状態を生成でき、きわめて効率の高い燃焼バーナとして機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態を示すターボジェット式高温高速バーナの構成断面図
【符号の説明】
1 バーナノズル
4 空気室
5 高圧空気噴射口
6 高圧空気導入管
8 燃焼室
8A 基板部
8B 吐出口
8C 連通部
9 外側管状体
10 中間管状体
11 内側管状体
14 バーナ噴射の焦点
17 ドッキングビス
18 パイロット火炎発生手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-01-04 
結審通知日 2008-01-09 
審決日 2007-04-26 
出願番号 特願平9-241076
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (F23D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 東 勝之  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
関口 哲生
登録日 2000-09-01 
登録番号 特許第3105182号(P3105182)
発明の名称 ターボジェット式高温高速バーナ  
代理人 近藤 彰  
代理人 磯野 道造  
代理人 近藤 彰  
代理人 磯野 道造  
代理人 近藤 彰  
代理人 近藤 彰  

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