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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1188602
審判番号 不服2006-13290  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-26 
確定日 2008-11-26 
事件の表示 特願2001-538793「複合フィルム形センサー」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月25日国際公開、WO01/36956、平成15年4月22日国内公表、特表2003-515131〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月20日(優先権主張 平成11年11月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年3月14日付けで補正却下の決定及び拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年7月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の目的について
本件補正は、平成16年3月23日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、
「【請求項1】第一表面及び第二表面をもつ基材、該基材と接触している検知電極、該検知電極の近くにあり、該第一表面から該第二表面まで延在する、ガスの流れを制御するための開口、及びガス拡散膜からなり、該ガス拡散膜は該検知電極に接触する電解質物質からなりそして該開口内にありそして検出すべきガスと該検知電極の間にあることを特徴とするガス検出用装置。」を、
「【請求項1】基材、検知電極、対電極及び参照電極からなるガス検知用センサーセルであって、該検知電極と対電極と参照電極が該基材と接触しており、該基材がそこを貫通している、ガスの流れを制御するための、開口を有し、該開口部に該検知電極が位置しており、該開口部に位置する該検知電極に接触し且つ検出すべきガスと該検知電極の間にガス拡散膜を有することを特徴とするガス検知用センサーセル。」とする補正を含むものである。
そして、上記補正で、
(ア)「第一表面及び第二表面をもつ基材」を「基材」とする補正は、基材が、表面と裏面、つまり第一表面及び第二表面を有することは明らかであるから、「第一表面及び第二表面をもつ」を省いても、実質的に変わるものではなく、
(イ)「該第一表面から該第二表面まで延在する、ガスの流れを制御するための開口」を「該基材がそこを貫通している、ガスの流れを制御するための、開口を有し」とする補正、及び「ガス検出用装置」を「ガス検知用センサーセル」とする補正は、表現が異なるだけであり、実質的に変わるものではない。
しかしながら、
(ウ)「ガス拡散膜は該検知電極に接触する電解質物質からなりそして該開口内にありそして検出すべきガスと該検知電極の間にある」を「該開口部に位置する該検知電極に接触し且つ検出すべきガスと該検知電極の間にガス拡散膜を有する」とする補正は、ガス拡散膜について「電解質物質からなり」という限定事項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものということはできない。また、この補正は、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当しない。

ところで、本件補正に至る経緯は、平成16年3月23日付け手続補正(以下、「第1補正」という。)が新規事項を含むことを指摘した最後の拒絶理由通知を回避するために、平成16年11月18日付け手続補正(以下、「第2補正」という。)で、ガス拡散膜について「電解質物質からなり」を削除し新規事項を撤回する補正をしたところ、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正のいずれを目的としたものでもないとして第2補正が却下されたので、特許法第17条の2第4項の立法趣旨から第2補正は許容されるべきである旨主張する審判請求の理由と共に、本件補正で、再度、ガス拡散膜について「電解質物質からなり」を削除し新規事項を撤回する補正をしたというものである。
そこで、この経緯が、上記(ウ)の補正が、特許請求の範囲の減縮等を目的としたものでないとすることに影響するか検討する。
第1補正は、請求項1に、「ガス拡散膜」という新たな構成を付加し、さらに、このガス拡散膜について「電解質物質からなり」と限定する構成を付加する補正を含むものである。そして、願書に最初に添付した明細書又は図面には、「ガス拡散膜」といえるものとして、ポリエチレン等の「速度制限ガス拡散バリアフィルム」(段落【0008】)あるいは「ガス透過性拡散フィルム」(段落【0013】)が記載されているが、これとは配置も機能も別の膜であるイオノマー膜が電解質物質からなることは記載されているものの、「速度制限ガス拡散バリアフィルム」あるいは「ガス透過性拡散フィルム」が、電解質物質からなることは記載も示唆もされていない。そして、電解質物質からなるガス拡散膜が、仮に一般に知られていたとしても、「ガス拡散膜」は、電解質物質からなるものに限られないから、「ガス拡散膜」が電解質物質からなることが記載も示唆もされていない以上、「ガス拡散膜」が電解質物質からなることが、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から自明な事項であるということはできない。そうすると、第1補正は、新規事項を追加する補正といえる。
そして、上記のとおり特許請求の範囲に新規事項である限定事項を付加する補正を撤回するためにした、「ガス拡散膜」についての限定事項である、「電解質物質からなり」を削除する第2補正及び本件補正により、請求項1には、「ガス拡散膜」として電解質物質以外のものが含まれることとなるから、特許請求の範囲の減縮等を目的とする補正に該当しないことは明白である。
そして、最後の拒絶理由通知後及び審判請求時の補正の制限の規定である特許法第17条の2第4項の規定の立法趣旨が、既に行った審査結果を有効に活用できる範囲内で補正を行うというものであるとしても、特許法第53条第1項で、特許法第17条の2第1項第2号及び第3号に揚げる場合、同条第3項から第5項の規定に違反した場合、その補正を却下しなければならないと規定されている以上、上記のとおり、第2補正及び本件補正はこの規定に明らかに違反していることから、却下されるべきものである。
そうすると、本件補正に至る経緯と上記立法趣旨を参酌しても、上記(ウ)の補正が特許請求の範囲の減縮等を目的としたものでないとすることに影響するものではない。
(新規事項を指摘されそれを解消するためにした補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しないことについては、平成19年(行ヶ)10159号の判決(平成20年3月19日判決言渡)参照。)
さらに、審判請求の理由で、第1補正を却下せずに最後の拒絶理由を通知したことが、新規事項を撤回する補正の道を閉ざすものであるから、立法趣旨に反するという主張がされているが、特許法第53条第1項では、最初の拒絶理由の通知に対する補正である第1補正を却下することは許されていないし、最後の拒絶理由としたことについては、最初の拒絶理由に対する補正により拒絶理由を通知する必要が生じた点についてのみの拒絶の理由が通知されているから妥当であるといえる。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(2)独立特許要件について
以上のとおり、上記(ウ)の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものでないことは明らかであるが、進歩性の判断についても併せて示すために、ここで、仮に、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであると仮定して、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについても検討することとする。

ア 引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、刊行物1(原査定では引用文献3)及び刊行物2(同引用文献1)には以下の事項がそれぞれ記載されている。

(刊行物1:特開昭64-88245号公報の記載事項)
(1a)「1)互いに離れて向かい合う第1および第2の表面を有し、かつ第1の表面から第2の表面に通じる通路を有する基板と、前記通路を横切って位置する気体透過性検知電極と、前記第1の表面および前記電極と接触する電解質と、および前記電解質と接触し、かつ前記電解質を介する以外は前記検知電極と電気的に絶縁している追加電極とを具えたことを特徴とする気体状および蒸気状物体用センサ。
2)前記センサが前記検知電極に隣接した前記通路中にさらに多孔性部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
・・・
8)前記追加電極が対向電極であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
9)前記対向電極が前記検知電極に近接して位置することを特徴とする請求項8に記載のセンサ。
10)前記電解質と接触し、かつ前記電解質を介する以外は前記検知および対向電極と電気的に絶縁されている参照電極をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のセンサ。
11)前記電解質が固体ポリマー電解質からなることを特徴とする請求項10に記載のセンサ。
12)前記固体ポリマー電解質と連絡する水性液体含有貯溜部をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のセンサ。
13)前記電解質がヒドロゲルからなることを特徴とする請求項10に記載のセンサ。
14)前記ヒドロゲルと連絡する水性液体含有貯溜部をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のセンサ。」(特許請求の範囲請求項1、2、8?14)
(1b)「ここで述べられた気体センサは、高感度であるばかりではなく非常に速い、約1-2秒またはそれ以下の応答時間を持つという利点がある。その気体センサは、電解質の構造の選択によってと同様に、気体透過性検知電極中の孔の大きさを選択することによって種々の気体状物体に対して応答することができる。電解質中に気体を溶解させる必要がないのでセンサの寿命はより長くなる。カプセル状にすることがより容易である。選択的な透過を介して通路に追加の選択力を与えることもできる。分析すべき気体が電解質に到達するまで、完全に気体相で気体透過性電極中の孔を通して通過するので、速時応答が達成される。その個所において、電極、分析すべき気体および電解質は互いに接触し、分析すべき気体が検出される。」(第4頁左上欄第4行目?第18行目)
(1c)「種々の異なった型の電解質26のいずれもが使用され得る。例えば電解質26は例えば水溶液のような溶液であってもよい。あるいはまた、電解質26はヒドロゲルであってもよい。しかしながら、より好ましくは、特にボルトアンメトリックな測定のために、水にさらされた時にイオンを伝導する固体ポリマーイオン交換体の一種類であるNafion(DuPontの商標)のような固体ポリマー電解質を含む固体電解質である。おそらく最もよく知られている例は固定された負のサイト(硫酸、カルボキシル酸あるいはリン酸)を有するポリスチレンあるいは固定された正のサイト(第4アンモニアあるいは第4フォスフォニウム)を有するポリスチレンから作られた膜である。これらの材料のイオンについては、選定はもっぱら電荷に基づいて行なっており、同じ電荷を持つイオンに対しては、識別はほとんどできない。ボルトアンメトリックな検知に、これらの材料を使用することは新規である。Nafion(過フッ化イオノマー)のほかの固体ポリマー電解質の他の例は硫酸化スチレン-ジビニルベンゼン樹脂およびジビニルナフタレートスルフォン酸ポリマーである。」(第4頁左下欄第15行目?右下欄第16行目)
(1d)「種々の型の検知電極20が使用され得る。これらは例えば白金、白金黒、銀、金、イリジウム、パラジウム、パラジウム/銀、二酸化イリジウム。白金黒/パラジウム、酸化白金およびこれらの混合物からなる電極20、電子的に導体であるポリマーおよび一般に電気化学的測定に常用される電極のいずれをも含む。検知電極20は通常、特殊な気体状物体に応じて選択される。種々の従来の材料が対向電極24および参照電極25として使用され得る。
気体透過性金属電極20は不活性の、通常は重合された、例えばポリスチレン粒子(通常は球形)の上に金属を付着させることによって作ることができる。高分子粒子は気体透過性金属電極20を残して除去される。小さな不活性粒子は圧縮された空気によって除去され得る。」(第5頁右下欄第3行目?第18行目)
(1e)「多孔性部材30は通路18内に検知電極20に隣接し、かつ一般的には接触して位置する。例えば多孔性部材30は多孔性シリコンであってよい。多孔性部材30の適切な形成によって、他の気体が存在するときにある気体に対して多孔性部材30が選択的に作用するように孔の大きさを制御することができる。・・・多孔性部材30が所望の気体および蒸気の流れの方向に気体および蒸気を選択的に透過させるようになる。・・・他の有用な多孔質材料30は、例えば、アルミナ、一般の無機酸化物、炭素、ポリマー、圧縮された不活性粒子およびその他同様のものを含む。」(第6頁左上欄第1行目?右上欄第8行目)
(1f)「第3図および第5図は本発明の実施例であり、多孔性シリコンが、通常は水である水性液のための貯溜部32を含む。例えば基板12の内部に空洞をエツチング形成し、そしてその空洞を多孔性部材30、本実施例においては一般にはシリコンのような多孔性材料で充填して基板12の中に多孔性部分34を形成することによって、電解質26と貯溜部32との間に液体の接触を与えるようにしてもよい。このようにして、電解質26ある所定の程度までを常に水和した状態に保つことができる。これによって気体センサ10の寿命が増加する。」(第6頁右下欄第10行目?第20行目)
(1g)第1図、第2図には、通路(18)を有する基板の一方の面に、通路を横切って配置された気体透過性検知電極(20)と、それに近接して配置された対向電極(24)と参照電極(25)、これらの上に基板表面と各電極に接触するように配置された固体電解質(26)、基板の通路内に、気体透過性検知電極(20)と接触するように配置された多孔質部材を有する気体センサが記載されている。
また、第3図、第5図には、さらに、水性液体含有貯留部(32)を有する気体センサが記載されている。(第9頁?第10頁、第1図、第2図、第3図、第5図)

(刊行物2:特開平1-216251号公報の記載事項)
(2a)「1 絶縁基板の同一面上に作用極、対極および参照極が設けられ、少なくとも各極の反応部間を覆って固体電解質層が設けられた電気化学式センサにおいて、固体電解質層および各反応部の表面側を覆って選択透過性フィルタが設けられていることを特徴とする電気化学式センサ。」(特許請求の範囲請求項1)
(2b)「選択透過性フィルタ7としては、対象ガスは通過できるが、対象ガスの検知に有害なガスは通過できない選択透過性があればよく、ガスセンサの作動環境に含まれる、対象ガス以外の有害ガスの成分等によって、適宜、金属酸化物、セラミック、合成樹脂、合成繊維等のフィルタ材料を単層あるいは複数積層したものを使用する。また、フィルタは多孔体に形成されていて、対象ガスの通過抵抗を小さくできるとともに、有害ガスの吸着面積を大きくとれるものが好ましい。」(第3頁左下欄第3行目?第13行目)

イ 対比・判断
上記刊行物1の記載事項(上記(1a)(1e)(1g))からみて、刊行物1には、
「互いに離れて向かい合う第1および第2の表面を有し、かつ第1の表面から第2の表面に通じる通路を有する基板と、前記通路を横切って位置する気体透過性検知電極と、前記検知電極に隣接した前記通路中に、所望の気体を選択的に透過させる多孔性部材を含み、前記第1の表面および前記電極と接触する固体ポリマー電解質と、前記電解質と接触し、かつ前記電解質を介する以外は前記検知電極と電気的に絶縁している対向電極および参照電極とを具えた気体状および蒸気状物体用センサ。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえるところ、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「互いに離れて向かい合う第1および第2の表面を有し、かつ第1の表面から第2の表面に通じる通路を有する基板」は、本願補正発明の、ガスの流れを制御するための貫通している開口を有している「基材」に相当し、同じく「前記通路を横切って位置する気体透過性検知電極」は、開口部に位置している「電極」に相当し、同じく「対向電極」及び「気体状および蒸気状物体用センサ」は、それぞれ、「対電極」、「ガス検知用センサーセル」に相当する。
(イ)刊行物1発明の「多孔性部材」は、所望の気体を選択的に透過させ、検知電極へと拡散させる部材であり、本願補正発明の「ガス拡散膜」は、発明の詳細な説明には、ポリエチレン等の「速度制限ガス拡散バリアフィルム」(段落【0008】)あるいは、「ガス透過性拡散フィルム」(段落【0013】)とされており、検出ガスを透過して、電極へと拡散させるものであるから、いずれも検出ガス透過性拡散部材である点で共通している。
したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)
基材、検知電極、対電極及び参照電極からなるガス検知用センサーセルであって、該検知電極と対電極と参照電極が該基材と接触しており、該基材がそこを貫通している、ガスの流れを制御するための、開口を有し、該開口部に該検知電極が位置しており、該開口部に位置する該検知電極に接触し且つ検出すべきガスと該検知電極の間に検出ガス透過性拡散部材を有することを特徴とするガス検知用センサーセルである点。
(相違点)
検出ガス透過性拡散部材が、本願補正発明では、「フィルム」であるのに対して、刊行物1発明では、多孔性部材であり、フィルム状であるか明らかでない点。

(相違点について)
刊行物1には、多孔性部材が、ポリマーでも良いことが記載され、電気化学式のガスセンサにおいて、セラミックや合成樹脂等の選択透過性のフィルタ膜を通過した検出ガスを電極と接触させることは、例えば、刊行物2(上記(2a)(2b))にも記載されるように、本願優先日前の周知技術であるから、刊行物1発明の多孔性部材をフィルム状にして用いることに困難性があるとはいえない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願明細書及び図面について
平成18年7月26日付けの手続補正は上記「2.」のとおり却下された。また、平成16年11月18日付け手続補正は、平成18年3月14日付け補正の却下の決定により却下され、この補正却下の決定は、上記「2.」のとおり違法ではない。
したがって、本願明細書及び図面は、平成16年3月23日付け手続補正書により補正されたとおりのものである。

4.新規事項について
原査定の拒絶の理由は、平成16年3月23日付け手続補正書で補正された請求項1及び段落【0001】で、「ガス拡散膜」が電解質物質からなるものとし、さらに、「ガス拡散膜」が請求項4でプロトン交換膜であるとし、請求項5でアニオン性ヒドロキシドイオン交換膜であるとし、請求項10でガス拡散膜と基材と検知電極が接着によって接触しているとし、請求項11でガス拡散膜が水性物質によって湿潤化されているとした点が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものでないので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。
上記「2.」でも記載したとおり、「ガス拡散膜」が電解質物質からなることは、出願当初明細書又は図面に記載も示唆もされておらず、また、出願当初明細書又は図面の記載から自明な事項であるということもできない。
また、「ガス拡散膜」がプロトン交換膜、あるいはアニオン性ヒドロキシドイオン交換膜であること、ガス交換膜と基材と検知電極が接着によって接触していること、ガス拡散膜が水性物質によって湿潤化されていることも、出願当初の明細書又は図面に記載も示唆もされていないし、出願当初明細書又は図面の記載から自明な事項であるということもできない。
以上のとおり、平成16年3月23日付け手続補正書は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものということはできない。

5.むすび
したがって、平成16年3月23日付け手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものでないので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-25 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-14 
出願番号 特願2001-538793(P2001-538793)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄柏木 一浩  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 村田 尚英
門田 宏
発明の名称 複合フィルム形センサー  
代理人 畑 泰之  
代理人 斉藤 武彦  

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