ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
不服200620938 | 審決 | 特許 |
不服200620942 | 審決 | 特許 |
不服20061739 | 審決 | 特許 |
不服200620941 | 審決 | 特許 |
不服2008406 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K |
---|---|
管理番号 | 1188891 |
審判番号 | 不服2006-20939 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-20 |
確定日 | 2008-12-04 |
事件の表示 | 特許権存続期間延長登録出願2005-700092拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本件特許及び本件特許発明について 特許第3134187号(以下、本件特許という。)は、平成9年3月6日に出願され、平成12年12月1日に特許権の設定登録がなされたものであって、その特許発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】薬物を含んでなる核が、(1)水不溶性物質、(2)硫酸基を有していてもよい多糖類、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基を有する多糖類、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールから選ばれる親水性物質および(3)酸性の解離基を有しpH依存性の膨潤を示す架橋型アクリル酸重合体を含む被膜剤で被覆された放出制御組成物。 【請求項14】薬物がモルヒネまたはその塩である請求項1記載の放出制御組成物。 (請求項2?13、15?22以下は省略する。以下、請求項14を本件特許発明という。) 2.本件特許権存続期間の延長登録出願について 本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、本件出願という。)は、平成17年12月16日に出願され、平成18年8月9日付けで拒絶査定がなされ、同年9年20日に審判請求がされたものである。 平成18年5月29日付け手続補正書により補正された本件出願の願書には、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったその政令で定める処分として、以下の内容が記載され、下記のa?eの資料が添付されている。 (i)延長登録の理由となる処分 薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認 (ii)処分を特定する番号 承認番号: 21700AMZ00739000 (iii)処分の対象となった物 パシーフカプセル120mg (iv)処分の対象となった物について特定された用途 中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛 通常、成人には塩酸モルヒネとして1日30?120mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。 提出資料 a.特許公報 特許3134187号公報写 b.特許登録原簿 特許3134187号登録原簿写 c.承認書 承認番号21700AMZ00739000に係る平成17年9月30日付け承認書該当部分写 d.第II相臨床試験の治験計画届該当部分写 また、請求人は当審において以下の資料を提出した。 資料1 平成17年12月1日付紋谷教授の意見書 資料2 平成17年11月2日付意見書依頼状及び平成17年11月25日 付早石博士の意見書 3、原審の拒絶の理由の概要 原審の拒絶の理由は、特許第3134187号に記載の医薬製剤の有効成分「塩酸モルヒネ」について「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」の用途に適用することは既に厚生労働大臣によって承認されていた(薬事日報社編、最近の新薬2004、薬事日報社 2004、ISBN4-8408-0785-X、p182参照)と認められるから、出願人が特許権の存続期間延長を求めている特許発明の有効成分、効能・効果に関し、特許発明は既に実施することができるようになっていたものであり、したがって、当該承認は、上記特許発明の実施に必要な処分とはいえず、特許法第67条の3第1項第1号に該当するというものである。 4、当審の判断 4-1 医薬品における「物」と「用途」の解釈 特許法67条2項は、特許発明の実施について安全性の確保等のために法律の規定によって許可その他の処分を受けることが定められ、その処分の目的、手続等からみて、その処分を的確に行うには相当の期間を要する場合には、処分を受けることが必要であるために特許発明を実施することができなかった期間、5年を限度として、特許権の存続期間を延長することができる旨を定めている。そして、同項は、上記処分については政令で定めるものとし、特許法施行令3条は、上記処分に当たるものとして、「薬事法14条1項に規定する医薬品に係る同項の承認」等を定めている。 薬事法14条1項は、医薬品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売について厚生労働大臣の承認を受けなければならないと規定し、同条2項は、前項の承認は、申請に係る医薬品の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用等を審査して行うものとし、(1)申請に係る医薬品が、その申請に係る効能、効果又は性能を有すると認められないとき、(2)申請に係る医薬品が、その効能、効果又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品として使用価値がないと認められるとき、(3)その他医薬品として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するときには、承認を与えない旨を規定している。したがって、薬事法14条1項に規定する医薬品に係る同項の承認は、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等を特定した品目ごとにされるものである。 一方、特許法68条の2は、特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力は同法67条2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には及ばない旨を規定する。この規定は、特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力は、処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)については、処分の対象となった品目とは関係なく特許権が及ぶ旨の規定と解されるから、特許法は、同法67条2項の政令で定める処分の対象となった品目ごとに特許権の存続期間の延長登録の出願をすべきであるという制度を採っていないことは明らかであり、処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)ごとに特許権の存続期間の延長登録の出願をすべきであるという制度を採用しているものと解される。 そうすると、最初(1度目)に特許法67条2項の政令で定める処分がなされると、その最初になされた処分は、その物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)について製造販売禁止を解除する必要があった処分であったということができるから、その処分に基づいて特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができるが、2度目以降にされた処分については、特許法67条の3第1項が定める「その特許発明の実施に第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき」に該当し、その特許権の存続期間の延長登録の出願は拒絶されるものと解される。 そして、医薬品については、特許法第68条の2にいう「物」が「有効成分」、「用途」が「効能・効果」を意味するものとして立法されたことは明らかであって、その理由として、新薬の特許は「有効成分」又は「効能・効果」に与えられることが多いが、薬事法上、医薬品の品目の特定のために要求されている各要素のうち、新薬を特徴付けるものは「有効成分」と「効能・効果」であることが多く、そのため、それらについて「物」と「用途」という観点から特許権の存続期間延長制度を設けることとしたと解することができる。そして、前記のとおり、特許法は、処分の対象となった「物」及び「用途」ごとに特許権の存続期間の延長登録の出願をすべきであるという制度を採用しており、存続期間が延長された特許権は、処分の対象となった品目とは関係なく、「物」と「用途」の範囲で、その効力が及ぶのであるから、「物」と「用途」の範囲は明確でなければならないところ、これらを「有効成分」と「効能・効果」と解すると「物」と「用途」の範囲が明確になるということができ、「物」と「用途」を「有効成分」と「効能・効果」と解さないと「物」と「用途」の範囲は極めてあいまいなものになるといわざるを得ず、法的安定性を欠くことになる。したがって、特許法68条の2にいう「物」「用途」は医薬品についてはそれぞれ「有効成分」「効能・効果」を意味すると解するというべきである。(平成18年(行ケ)第10311号判決参照) 4-2、本件出願について 以上の解釈に基づいて、本件出願をみるに、提出資料cによれば、承認番号21700AMZ00739000の処分(以下、「本件処分」という。)を受けた医薬品であるパシーフカプセル120mgの「有効成分」は「塩酸モルヒネ」、「効能・効果」は「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」である。(上記2.の願書の(iii)(iv)は処分の対象となった「物」、「用途」を正しく記載していない。) しかしながら、「塩酸モルヒネ」を「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」に使用する医薬品としては、「オプソ内服液5mg・10mg」が既に本件処分前である平成15年3月14日に承認され、同年6月13日に薬価収載、同年6月26日に販売開始されていることが明らかである(薬事日報社編、最近の新薬2004、薬事日報社 2004、ISBN4-8408-0785-X、p182参照)。 そうすると、塩酸モルヒネを有効成分(物)とし、同一の効能・効果(用途)を有する医薬品については本件の処分以前にすでに承認を受けていたのであるから、当該医薬品の有効成分、効能・効果以外の剤形などの変更の必要上、新たに処分を受ける必要が生じたとしても、本件処分は特許発明の実施に第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であつたものとすることはできない。 5.結び したがって、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号の規定に該当し、特許権の存続期間の延長登録を受けることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-01 |
結審通知日 | 2008-10-07 |
審決日 | 2008-10-21 |
出願番号 | 特願2005-700092(P2005-700092) |
審決分類 |
P
1
8・
71-
Z
(A61K)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長部 喜幸、荒木 英則 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
穴吹 智子 星野 紹英 |
発明の名称 | 放出制御組成物 |
代理人 | 高島 一 |