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審決分類 審判 全部無効 特29条の2  H01F
審判 全部無効 2項進歩性  H01F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01F
管理番号 1189284
審判番号 無効2008-800010  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-01-23 
確定日 2008-11-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3725776号発明「積層鉄芯の製造方法およびその製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3725776号(以下、「本件特許」という。)は、平成12年11月10日に出願され、平成17年9月30日に特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明について特許権の設定登録がなされた。
その後、平成20年1月23日付けで請求人JFEスチール株式会社(以下、「請求人」という。)から本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明に対して無効審判が請求され、平成20年4月11日付けで被請求人新日本製鐵株式会社(以下、「被請求人」という。)から答弁書が提出されるとともに、同日付けで訂正請求書が提出され、平成20年5月21日付けで請求人から弁駁書が提出され、平成20年7月31日に請求人及び被請求人のそれぞれから口頭審理陳述要領書が提出されるとともに、同日に第1回口頭審理が行われた。
なお、第1回口頭審理において、請求人は、平成20年1月23日付け審判請求書に記載した、本件特許は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものであるとの主張を撤回した。

2.請求人の主張
請求人は、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、
(1)本件特許の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に係る発明、及び、平成20年4月11日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に係る発明は、以下のように、(a)ないし(c)の甲号証に記載された発明の組み合わせ及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により、本件特許は無効とされるべきものである。
(a)甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明を適用する組み合わせ
(b)甲第1号証に記載された発明に甲第4号証に記載された発明を適用する組み合わせ
(c)甲第4号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用する組み合わせ
(2)本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項2ないし4及び請求項6ないし8に係る発明、及び、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2ないし4及び請求項6ないし8に係る発明は、甲第1号証ないし4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により、本件特許は無効とされるべきものである旨主張している。
(3)本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1ないし3及び請求項7に係る発明、及び、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3及び請求項7に係る発明は、甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により、本件特許は無効とされるべきものである。
(4)本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項5及び請求項6に係る発明、及び、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5及び請求項6に係る発明は、甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、また、甲第9号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明とも同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により、本件特許は無効とされるべきものである。
(5)本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項8に係る発明、及び、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項8に係る発明は、甲第9号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により、本件特許は無効とされるべきものである。
と主張し、証拠方法として、以下の甲第1号証ないし9号証及び甲第12号証ないし14号証を提出している。

甲第1号証:特開2000-164442号公報
甲第2号証:特開昭57-211957号公報
甲第3号証:特開平11-147141号公報
甲第4号証:特公平3-11855号公報
甲第5号証:WHITE SERIES No.11 最新小型モータ用材料の開発・応用、第327頁及び第328頁、昭和60年12月25日 株式会社トリケップス発行
甲第6号証:プレス加工便覧、第375頁ないし第379頁、昭和50年10月25日 丸善株式会社発行
甲第7号証:モータコア50年史 戦後モータ技術50年のあゆみ、第331頁ないし第370頁、平成12年7月 財団法人三井金型振興財団、株式会社三井ハイテック発行
甲第8号証:特開2001-321850号公報(特願2000-142991号の願書に最初に添付した明細書又は図面)
甲第9号証:特開2001-45717号公報(特願平11-213877号の願書に最初に添付した明細書又は図面)
甲第10号証:マグローヒル科学技術用語大辞典、第997頁、昭和63年12月25日 株式会社日刊工業新聞社発行
甲第11号証:インタープレス版 科学技術25万語大辞典英和編、第440頁、1989年6月15日 株式会社アイピーシー発行
甲第12号証:特開2002-151339号公報(本件特許の公開公報)
甲第13号証:図解機械用語辞典、第86頁及び第87頁、昭和50年7月30日 日刊工業新聞社発行
甲第14号証:制御用モータ技術活用マニュアル、第10頁ないし第33頁、第242頁ないし第259頁、昭和62年2月25日 総合電子出版社発行

なお、請求人は、弁駁書において、本件特許は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものであると主張し、甲第10号証及び甲第11号証を新たな証拠として提示しているが、審判請求書における、本件特許は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものであるとの主張は、第1回口頭審理において撤回されている。よって、弁駁書における特許法第36条第4項及び第6項第2号の規定に基づく主張は、審判請求書においてなされていない主張となったから、採用しない。

3.被請求人の主張
一方、被請求人は、答弁書及び口頭審理陳述要領書において、
(1)本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当するものではないから、特許法第123条第1項第2号の規定により、本件特許は無効とされるべきものではない。
(2)本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2ないし4及び請求項6ないし8に係る発明は、甲第1号証ないし4号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当するものではないから、特許法第123条第1項第2号の規定により、本件特許は無効とされるべきものではない。
(3)本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3及び請求項7に係る発明は、甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に該当するものではないから、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものではない。
(4)本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5及び請求項6に係る発明は、甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一ではなく、また、甲第9号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明とも同一ではなく、特許法第29条の2の規定に該当するものではないから、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものではない。
(5)本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項8に係る発明は、甲第9号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に該当するものではないから、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものではない。
と主張している。

4.平成20年4月11日付け訂正(以下、「本件訂正」という。)について
4-1.訂正の内容
本件訂正は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1、請求項4、請求項5及び請求項8、並びに発明の詳細な説明の0007段落を、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、請求項4、請求項5及び請求項8、並びに発明の詳細な説明の0007段落のとおりに訂正することを求めるものであり、訂正後の請求項1、請求項4、請求項5及び請求項8は以下のとおりである。
「【請求項1】
雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。」
「【請求項4】
単位鉄芯積層時に積層方向と垂直の方向から鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造方法。」
「【請求項5】
一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
「【請求項8】
単位鉄芯積層部に積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造装置。」

4-2.訂正の内容の整理
本件訂正による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、」を、訂正後の請求項1の「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、」と訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項1の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より供給される接着剤を該金型台で塗布する」を、訂正後の請求項1の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」と訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項4の「鉄芯に対し側圧をかけること」を、訂正後の請求項4の「鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行うこと」と訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項5の「接着剤を単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に塗布する接着剤供給部を該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、」を、訂正後の請求項5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、」と訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項8の「積層される鉄芯に対し側圧をかけるダンパー機構」を、訂正後の請求項8の「積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構」と訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の発明の詳細な説明の0007段落の「(1) 一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より供給される接着剤を該金型台で塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。」を、訂正後の発明の詳細な説明の0007段落の「(1) 雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。」と訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の発明の詳細な説明の0007段落の「(4) 単位鉄芯積層時に積層方向と垂直の方向から鉄芯に対し側圧をかけることを特徴とする前項(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造方法。」を、訂正後の発明の詳細な説明の0007段落の「(4) 単位鉄芯積層時に積層方向と垂直の方向から鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行うことを特徴とする前項(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造方法。」と訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の発明の詳細な説明の0007段落の「(5) 一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、接着剤を単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に塗布する接着剤供給部を該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」を、訂正後の発明の詳細な説明の0007段落の「(5) 一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」と訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の発明の詳細な説明の0007段落の「(8) 単位鉄芯積層部に積層される鉄芯に対し側圧をかけるダンパー機構を有することを特徴とする前項(5)乃至(7)のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造装置。」を、訂正後の発明の詳細な説明の0007段落の「(8) 単位鉄芯積層部に積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構を有することを特徴とする前項(5)乃至(7)のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造装置。」と訂正する。

4-3.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無について
(1)訂正事項1について
訂正事項1についての訂正は、訂正前の請求項1の「一つの金型台で」の前に、「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する」を追加するものであり、「一つの金型台」について「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する」ことを技術的に限定するものであるから、訂正事項1についての訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項1についての訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定された要件を満たすものである。
また、本件特許明細書等の請求項5及び0007段落には、「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し」と記載されており、「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する」「一つの金型台」は本件特許明細書等に記載された事項であるから、訂正事項1についての訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に規定された要件を満たすものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2についての訂正は、訂正前の請求項1の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より」及び「供給される接着剤」の間に、「雄型打抜き金型側から」を追加するものであり、「接着剤」を「供給」する態様について、「接着剤」が「雄型打抜き金型側から」「供給される」ことを技術的に限定するものであるから、訂正事項2についての訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項2についての訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定された要件を満たすものである。
また、本件特許明細書等の0032段落には、「接着剤塗布金型の雄型3と雌型5によって鋼板表面に熱硬化型接着剤を塗布させる。熱硬化型接着剤は接着剤供給タンク14から供給パイプ13を通じて接着剤塗布金型の雄型3に供給されている。」と記載され、本件特許明細書等の図面の図1には、「接着剤塗布雄金型3」が、「内周打抜き用雄金型2」と「外周打抜き用雄金型6」とを有する金型台の「内周打抜き用雄金型2」及び「外周打抜き用雄金型6」側に設けられていることが図示されており、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より」「雄型打抜き金型側から供給される」「接着剤を該金型台で塗布する」ことは、本件特許明細書等に記載された事項であるから、訂正事項2についての訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に規定された要件を満たすものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3についての訂正は、訂正前の請求項4の「鉄芯に対し側圧をかける」を「鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行う」と訂正するものであり、「側圧をかける」態様について、「積層鉄芯の端面揃えを行う」ことを技術的に限定するものであるから、訂正事項3についての訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項3についての訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定された要件を満たすものである。
また、本件特許明細書等の0025段落には、「積層されたあるいは積層途中の単位鉄芯の側面からダンパー機構を備えた側圧装置を用いて、積層鉄芯の端面揃えを行うことが可能である。」と記載されおり、「鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行う」ことは、本件特許明細書等に記載された事項であるから、訂正事項3についての訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に規定された要件を満たすものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4についての訂正は、訂正前の請求項5の「接着剤を単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に塗布する」を「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する」と訂正するものであり、「接着剤を」「塗布する」態様について「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して」「該金型台で塗布する」ことを技術的に限定するものであるから、訂正事項4についての訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項4についての訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定された要件を満たすものである。
また、本件特許明細書等の請求項1及び0007段落には「間欠作動する接着剤塗布雄金型より供給される接着剤を該金型台で塗布する」と記載されており、本件特許明細書等の0032段落には、「熱硬化型接着剤は接着剤供給タンク14から供給パイプ13を通じて接着剤塗布金型の雄型3に供給されている。」と記載され、本件特許明細書等の図面の図1には、「接着剤塗布雄金型3」が、「内周打抜き用雄金型2」と「外周打抜き用雄金型6」とを有する金型台の「内周打抜き用雄金型2」及び「外周打抜き用雄金型6」側に設けられることが図示されており、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して」「該金型台で塗布する」ことは、本件特許明細書等に記載された事項であるから、訂正事項4についての訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に規定された要件を満たすものである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5についての訂正は、訂正前の請求項8の「積層される鉄芯に対し側圧をかけるダンパー機構」を、「積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構」と訂正するものであり、「側圧」について「積層鉄芯の端面揃えを行う」ことを技術的に限定するものであるから、訂正事項5についての訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項5についての訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定された要件を満たすものである。
また、本件特許明細書等の0025段落には「積層されたあるいは積層途中の単位鉄芯の側面からダンパー機構を備えた側圧装置を用いて、積層鉄芯の端面揃えを行うことが可能である。」と記載されており、「積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構」は本件特許明細書等に記載された事項であるから、訂正事項5についての訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に規定された要件を満たすものである。
(6)訂正事項6ないし9について
訂正事項6ないし9についての訂正は、訂正事項1ないし5についての訂正により請求項1、請求項4、請求項5及び請求項8が訂正されたことにともない、課題を解決するための手段に係る本件特許明細書等の0007段落の記載を、訂正後の請求項1、請求項4、請求項5及び請求項8の記載と整合させるための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、訂正事項6ないし9についての訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定された要件を満たすものである。
また、上記(1)ないし(5)において検討した理由と同様の理由により、訂正事項6ないし9についての訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであって、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に規定された要件を満たすものである。

4-4.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無についてのまとめ
「4-3.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無について」において検討したとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項に規定された要件を満たすものであるので、本件訂正明細書のとおり訂正することを認める。

5.本件特許発明
本件訂正は認められるから、請求人が無効を主張する本件特許の請求項1ないし8に係る特許発明は、本件訂正明細書及び本件特許の願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。
【請求項2】
上記金型台で積層鉄芯を固着する際、積層鉄芯に加圧を付与することを特徴とする請求項1記載の積層鉄芯の製造方法。
【請求項3】
上記金型台で、電磁鋼板を内周側を打抜いた後に外周側を打抜き所定形状の単位鉄芯となる部位毎に熱硬化型接着剤を塗布し、外周側を打抜いて形成した単位鉄芯を該金型台で積層し、所定の温度まで積層鉄芯を加熱し、加圧することにより積層鉄芯を一体化させることを特徴とする請求項1または2記載の積層鉄芯の製造方法。
【請求項4】
単位鉄芯積層時に積層方向と垂直の方向から鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造方法。
【請求項5】
一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。
【請求項6】
単位鉄芯積層部に加圧機構を備えることを特徴とする請求項5記載の積層鉄芯の製造装置。
【請求項7】
単位鉄芯積層部に加圧および加熱機構を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の積層鉄芯の製造装置。
【請求項8】
単位鉄芯積層部に積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造装置。」

6.請求人が提出した証拠方法及びその記載事項
(a)刊行物1:特開2000-164442号公報(請求人が提出した甲第1号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物1である特開2000-164442号公報は、「板片の積層装置」(発明の名称)に関するものであって、図1および図2とともに、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定方向に搬送される帯状の板材の下面に、瞬間接着剤を所定の間隔で所定量ずつ塗布する工程と、
板材における瞬間接着剤が塗布された部分を、所定の位置にて、順次、所定形状に連続的に下方に打ち抜いて、前工程にて打ち抜かれた板片に、新たに打ち抜かれる板片を、瞬間接着剤にて接着した状態で積層する工程と、
を包含することを特徴とする板片の積層方法。
【請求項2】 間欠的に搬送される帯状の板材を順次所定の形状に打ち抜いて、打ち抜かれた板片を、順次、上下方向に積層するプレス機と、
このプレス機による板片の打ち抜きに同期して、プレス機に搬送される板材の下面に、所定量の瞬間接着剤を、順次、塗布する接着剤塗布機構と、を具備することを特徴とする金属片の積層装置。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属片等の板片の積層体を製造するために実施される板片の積層方法、および、その積層方法の実施に使用される板片の積層装置に関し、特に、磁性鋼板を打ち抜くことによって得られる所定形状の鋼板片を積層してトランスコア、モーターコア等を製造する際に好適に実施される板片の積層方法および積層装置に関する。」
「【0010】図1は、本発明の金属片の積層方法の実施に使用される積層装置の実施の形態の一例を示す概略構成図である。この積層装置は、トランスコア、モーターコア等の積層体を製造するために使用されるものであり、間欠的に供給される帯鋼板10を所定の形状の鋼板片11に打ち抜くプレス機20と、プレス機20に間欠的に供給される帯鋼板10の下面に瞬間接着剤を、順次、塗布する接着剤塗布機構30とを有している。
【0011】帯鋼板10は、表面に絶縁コーティングが施された磁性の珪素鋼板(例えば、日本鋼管株式会社製、商品名「スーパーE」)によって構成されており、ロール状に巻回された帯鋼板10が、一対のピンチローラー41によって挟持された状態で、間欠送り機構(図示せず)によって、プレス機20に水平状態で間欠的に供給されている。プレス機20に間欠的に供給される帯鋼板10の下面には、帯鋼板10の搬送に同期して駆動される接着剤塗布機構30によって、瞬間接着剤が、順次、所定の間隔をあけて塗布されている。
【0012】プレス機20は、金属板から金属片を打ち抜くために使用される一般的なプレス機と同様の構成になっており、上型21に上下方向へのスライド可能に設けられた断面長方形状のパンチ22と、上型21の下方に対向して配置されたダイス23とを有しており、間欠的に搬送される帯鋼板10が、パンチ22によって、順次、長方形状の鋼板片11に打ち抜かれる。打ち抜かれた鋼板片11は、パンチ22によって、ダイス23に設けられたシュート24内に、水平状態を保持して押し下げられるようになっており、パンチ22によって押し下げられる鋼板片11は、シュート24内にて、その下方に位置する鋼板片11に圧接されて、相互に圧着された状態で、順次、下方に搬送される。
【0013】図2は、接着剤塗布機構30の断面図である。接着剤塗布機構30は、プレス機20に間欠的に搬送される帯鋼板10の下側に、帯鋼板10の幅方向に並んで配置された一対の接着剤塗布具31を有している。各接着剤塗布具31は、それぞれ、同様の構成になっており、直方体状に構成された本体ブロック32内に垂直な状態でそれぞれ設けられている。」
「【0019】各接着剤塗布具31の上方には、ピストンロッド37aが下方に進出するようになったエアーシリンダ37が垂直に配置されている。エアーシリンダ37におけるピストンロッド37aの下端部には、その下方に搬送されて停止された帯鋼板10部分を下方に押圧する押圧部材38が設けられている。押圧部材38は、帯鋼板10の幅方向に沿った状態になっており、エアーシリンダ37のピストンロッド37aが下方に進出することによって、押圧部材38は、その下方に位置する帯鋼板10部分の上面に圧接して、帯鋼板10を下方に押圧する。押圧部材38によって押圧された帯鋼板10部分は、ガイド体35を圧縮バネ36の付勢力に抗して下方に押し下げつつ、ガイド体35の開口部35a内に湾曲状態で進入する。そして、湾曲状態になった帯鋼板10部分の下面が、各接着剤塗布具31の蓋体31fにそれぞれ圧接されて、各蓋体31fを下方に押し下げるようになっている。」
「【0022】このような構成の積層装置では、帯鋼板10が間欠的にプレス機20に搬送されて、パンチ22によって、順次、長方形状の鋼板片11に打ち抜かれる際に、その帯鋼板10の搬送に同期して、エアーシリンダ37が駆動され、帯鋼板11の下面に瞬間接着剤が塗布される。エアーシリンダ37は、帯鋼板10の搬送が停止されると、所定時間にわたって、ピストンロッド37aを下方に進出させた後に、上方の待機位置に復帰する。ピストンロッド37aが下降されると、ピストンロッド37aの下端部に設けられた押圧部材38が、その下方に位置する帯鋼板10部分を押圧して、その帯鋼板10部分の下面を、ガイド体35の開口部35aを通して、各接着剤塗布具31の蓋体31fに圧接させる。
【0023】これにより、各蓋体31fは、それぞれ下方に押し下げられて、吐出口31eが開放された状態になる。このとき、ノズル体31c内には、所定の加圧状態で瞬間接着剤が充填されているために、ノズル体31c内の瞬間接着剤が、吐出孔31eと蓋体31fとの間隙を通って、蓋体31fの外周面に沿って、吐出される。蓋体31fの外周面に沿って吐出される瞬間接着剤は、蓋体31fの上端部に圧接された帯鋼板10の下面に塗布される。
【0024】押圧部材38によって、帯鋼板10の下面が、所定の短時間にわたって各接着剤塗布具31の蓋体31fを押し下げられると、各ノズル体31cの吐出孔31eからは、所定量の瞬間接着剤がそれぞれ吐出されて、帯鋼板10の下面に塗布されることになる。
【0025】帯鋼板10の下面に所定量の瞬間接着剤が塗布された状態になると、帯鋼板10は、プレス機20内に間欠的に搬送される。そして、帯鋼板10の搬送が停止されると、パンチ22が駆動されて、パンチ22の下方に位置する帯鋼板10部分から鋼板片11が打ち抜かれる。このとき、同時に、エアーシリンダ37が駆動されて、各接着剤塗布具31の上方に位置する帯鋼板10部分に瞬間接着剤が塗布されることになる。
【0026】このようにして、順次、下面に接着剤が塗布された帯鋼板10部分が、パンチ22によって、瞬間接着剤が下面に塗布された帯鋼板10部分を長方形状の鋼板片11に打ち抜くと、打ち抜かれた鋼板片11は、シュート24内に押し込まれる。このとき、打ち抜かれた鋼板片11は、その前工程において帯鋼板10から打ち抜かれてシュート24内に保持された鋼板片11に圧接されて、両鋼板片11同士が、瞬間接着剤によって相互に圧着される。これにより、各鋼板片11同士が瞬間接着剤によって確実に接着された状態で積層される。
【0027】この場合、エアーシリンダ37は、製造される積層体を構成する鋼板片11の枚数分に相当する回数だけ駆動される度に、その後に帯鋼板10の搬送が停止された際には駆動されないようになっている。従って、その停止の間に、各瞬間接着剤塗布具31上に位置する帯鋼板10部分には、瞬間接着剤が塗布されないことになる。この瞬間接着剤が塗布されていない帯鋼板10部分が、パンチ22によって打ち抜かれて下側の鋼板片11に圧接されても、両鋼板片11同士は、相互に接着されないことになる。その結果、所定回数にわたって帯鋼板11が停止される都度、エアーシリンダ37の駆動が1回だけ停止されることにより、所定枚数の鋼板片11が相互に接着されて一体化された積層体が、順次製造されることになる。」

よって、刊行物1には、以下の発明がそれぞれ記載されている。
「パンチ22とダイス23で、帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の鋼板片11とし、該鋼板片11を積層し、接着することにより一体化させる、板片の積層方法において、該帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の該鋼板片11とする前に、該鋼板片11となる部位毎に部分的に、製造される板片の積層体を構成する該鋼板片11の枚数分に相当する回数だけ作動し、その後の1回は作動しない接着剤塗布具31より該ダイス23側から供給される瞬間接着剤を塗布する板片の積層方法。」(以下、「刊行物発明1」という。)、

「帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の鋼板片11とするパンチ22及びダイス23を具備し、打ち抜かれた該鋼板片11を積層するシュート24を、該ダイス23に備え、製造される金属片の積層体を構成する該鋼板片11の枚数分に相当する回数だけ作動し、その後の1回は作動しない接着剤塗布具31より瞬間接着剤を該ダイス23側から供給して該鋼板片11となる部位毎に部分的に塗布する接着剤塗布機構30を、該パンチ22及び該ダイス23の前に備え、該パンチ22は、打ち抜いた該鋼板片11を押し下げ、積層された該鋼板片11を圧接・圧着する機能を有することを特徴とする金属片の積層装置。」(以下、「刊行物発明2」という。)

(b)刊行物2:特開昭57-211957号公報(請求人が提出した甲第2号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物2である特開昭57-211957号公報は、「電動機用積層鉄心及びその製造装置」(発明の名称)に関するものであって、第1図ないし第3図及び第5図とともに、以下の事項が記載されている。
「第1図において、1は打抜きプレス、2は接着剤3を塗布する接着剤塗布装置、4はフープ材、5はシュート装置、6は自動定寸装置、7はコアである。8は積層装置で回転可能に形成されたベース11上のヒータ10及び加圧プレス9とからなっている。矢印方向に送られるフープ材4は逐次打抜かれ打抜きプレスの最終ステージの前段のアイドルステージ上に取り付けられている接着剤塗布装置2により、複数のステージで打ち抜かれ残された表面に絶縁材兼用接着剤3が塗布されるようになっている。その後、最終ステージで打抜きプレス1によりフープ材4からコア7が打ち抜かれ、重力を利用して案内されるシュート装置5により水平装置に直立状にコア7を図示のように整列し保持するようになっている。
そして、自動定寸装置6の把持具13の腕が上方から伸長し積層されたコア7を所定の枚数だけ掴み上方へ後退した後反時計方向に水平位置まで回動し、次に、把持具13を伸長させ第2図のように蝶番14部を回動されたヒータ10内の積層装置8のベース11上にセットするようになっている。ベース11上にコア7をセットした後、把持具13は後退し、また、ヒータ10が第3図のように閉じ、上方から加圧プレス9によりコア7を加圧すると共にヒータ10の熱で接着剤3を硬化させ第5図に示す如き積層鉄心が形成されるようになっている。この場合に、同時にコア7の相互間に介在されている接着剤3が絶縁膜になるため絶縁処理が施されるようになっている。」(第2頁右上欄第1行ないし同頁左下欄第9行)

(c)刊行物3:特開平11-147141号公報(請求人が提出した甲第3号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物3である特開平11-147141号公報は、「積層鉄芯の製造方法および製造装置」(発明の名称)に関するものであって、以下の事項が記載されている
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に加熱加圧することにより接着能を発揮する絶縁被膜の施された電磁鋼板を、雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打抜き加工装置によって単位鉄芯に打抜き、得られた単位鉄芯を積層して加熱加圧し一体化する積層鉄芯の製造方法において、打抜き加工装置によって打抜かれた単位鉄芯を雌型打抜き金型の下方に設けられた単位鉄芯積層部に積層し、積層された単位鉄芯を加熱するとともに雄型打抜き金型を用いて加圧して一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。
【請求項2】 雌型打抜き金型と雄型打抜き金型とを有する打抜き加工装置と、前記雌型打抜き金型下方に設けられた単位鉄芯積層部と、単位鉄芯積層部に設けられた加熱装置と、加熱装置と雌型打抜き金型との間に設けられた断熱部材とを備え、打抜き加工装置によって電磁鋼板から打抜かれた単位鉄芯を単位鉄芯積層部に積層し、積層した単位鉄芯を加熱装置によって加熱するとともに雄型打抜き金型によって加圧して単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はモーターやトランスなどの鉄芯製造方法および鉄芯製造装置に関するものである。」
「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明において用いる電磁鋼板の表面には、加熱および加圧により接着能を発揮する絶縁被膜、いわゆる接着被膜を有する必要がある。接着被膜は必ずしも鋼板両面に全面に施されている必要は無く、片面のみに施されていても、部分的に施されていても良い。また、電磁鋼板としては、無方向性電磁鋼板でも方向性電磁鋼板でもよく、一般的な鋼板を電磁鋼板として使用してもかまわない。」
「【0013】次に、積層した状態で加熱されて、接着被膜の接着能が発揮される温度域に達している単位鉄芯を固着して一体とするため加圧するが、本発明では打抜き加工装置の雄型打抜き金型によって圧力を加えて積層鉄芯を固着する。ここで、雄型打抜き金具は単位鉄芯を一枚打ち抜く毎に積層鉄芯を加圧するようにしてもよいし、積層鉄芯が所定の枚数に達した時点で雄型打抜き金具のストロークを通常の打抜きストロークよりも大きくして積層鉄芯を加圧するようにしてもよい。後者の方法によれば、積層鉄芯をより強力に固着することができる。さらに、積層鉄芯の固着を更に強固なものとするため、本工程を経た後にもう一度加圧加熱してもよい。」

(d)刊行物4:特公平3-11855号公報(請求人が提出した甲第4号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物4である特公平3-11855号公報は、「積層鉄心の金型装置」(発明の名称)に関するものであって、第1図ないし第7図とともに、以下の事項が記載されている
「〔産業上の利用分野〕
この発明は、電動機用の固定子や回転子あるいはトランスの鉄心等に用いられる積層鉄心の金型装置に関し、特に金属材料をプレス打抜きして鉄心片を相互にかしめながら積層する際の鉄心片の支持構造の改良に関する。」(第1頁左欄第20行ないし同頁右欄第1行)
「この金型装置は、第1ステーシヨンIから第5ステーシヨンVを有し、第1ステーシヨンIでは第4図に示すように、ストリツプ材1に軸孔2とパイロツト孔3を穿設し、第2ステーシヨンIIではスロツト孔4を穿設する。第3ステーシヨンIIIは金型構造上、強度を保持するための遊びのステーシヨンで加工は行なわない。第4ステーシヨンIVでは、ポンチ10によつて第5図に示すような4つのかしめ用突起5およびその裏面にかしめ用凹部7を形成する。
第5ステーシヨンVでは、ポンプ16およびダイ8によつてプレスストローク毎に鉄心片9の外形抜きおよびかしめ加工が施され、ダイ8内に抜き込まれた鉄心片9(第4図に仮想線6で示した部分)のかしめ用突起5は、第6図に示すように、先行の鉄心片9のかしめ用凹部7にかしめ嵌合されて一体結合される。第7図に外形抜きされた鉄心片9の詳細な一部平面形状を示す。
なお、第4ステーシヨンIVでは、設定された枚数おきにかしめ用突起5を形成しないようにしており、このため該突起5を有さない鉄心片は第5ステーシヨンVの外形抜き時に先行した鉄心片にかしめられない。このような分離用の鉄心片を用いることにより積層鉄心を所要枚数ごとに分離するようにしている。
第1図は、第3図に一点鎖線12で示した第5ステーシヨンVのダイ8側の構成を詳細に示すもので、この部分がこの発明の要部である。また、第2図は第1図のA-A′断面図である。
すなわち、これら第1図および第2図において、ダイ8の所定高さ位置には、鉄心片9の通過孔18から水平4方向に延びる4つの水平孔19が形成され、これら4つの水平孔19内を押圧体20がそれぞれ鉄心片9の半径方向(矢印B)に沿つて摺動自在なようになつている。各押圧体20の前面側は通過孔18に対応する円形状に、また後面側はテーパ状になつている。
これら押圧体20の後面には、テーパ状のカム30が当接されている。これらカム30はリニアアクチユエータ(流体シリンダ)40のロツド41に取付けられており、ロツドの伸縮動作に伴なつて上下方向(矢印C)に移動する。したがつて、押圧体20はカム30の上下移動に伴ない水平孔19内を矢印B方向に往復移動する。
リニアアクチユエータ駆動装置50はリニアアクチユエータ40に供給する流体の切換え制御を行なうことにより、リニアアクチユエータ40のロツド41を伸縮駆動するものであり、この駆動50にはプレスクランク角検出装置60で検出されたプレスクランク角αが入力されている。すなわち、リニアアクチユエータ駆動装置50では、プレスクランク角αに基づき、ポンチ16が下死点に達した時にロツド41が最も伸張し、ポンチ16が上死点に達した時にはロツド41が最も縮退するようリニアアクチユエータ40を往復移動させる。
かかる第1図および第2図に示す構成によれば、ポンチ16が下死点に達した時、すなわち鉄心片9が外形抜きされかつかしめ結合される時に、カム30が最も上側に移動され、これにより、この時押圧体20が最も鉄心片側9に突出されることになる。したがつて、鉄心片が外形抜きされる時に先行して打抜かれかつかしめ結合されている鉄心片の積層体が上記4つの押圧体20で周囲からしつかりと押圧固定されることにより、これにより外形抜きされた鉄心片をかしめ結合するのに必要な力が積層体と押圧体20との摩擦力によつて得られるようになる。」(第2頁右欄第5行ないし第3頁左欄第28行)

よって、刊行物4には、以下の発明がそれぞれ記載されている。
「ポンチ10、16及びダイ8を有する一つの順送り金型装置で、ストリップ材1に、軸孔2及びスロット孔4を穿設した後に、外形抜きを施し、所定の形状の鉄心片9とし、該鉄心片9を積層し、該鉄心片9の積層体を一体結合させる積層鉄心の製造方法において、該軸孔2及び該スロット孔4の穿設以降、該外形抜きの前に、該鉄心片9となる部位毎に、設定された枚数おきに作動しない、かしめ用突起5及びかしめ用凹部7を形成するための該ポンチ10により、該かしめ用突起5及び該かしめ用凹部7を形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。」(以下「刊行物発明3」という。)、

「一つの順送り金型装置にポンチ10、16及びダイ8を有する、軸孔2及びスロット孔4を穿設する第1及び第2ステーションI,IIと、鉄心片9の外形抜きを施す第5ステーションVとを具備し、打抜かれた該鉄心片9を積層する通過孔18をダイ8に備え、設定された枚数おきに作動しない、かしめ用突起5及びかしめ用凹部7を形成するためのポンチ10により、該鉄心片9となる部位毎に該かしめ用突起5及びかしめ用凹部7を形成する第4ステーションIVを、該第1及び第2ステーションI,IIと、該第5ステーションVとの間に備え、該第5ステーションVの外形抜きを施すポンチ16は、積層された該鉄心片9をかしめ嵌合し、一体結合する機能を有することを特徴とする積層鉄心の金型装置。」(以下「刊行物発明4」という。)

(e)刊行物5:WHITE SERIES No.11 最新小型モータ用材料の開発・応用、第327頁及び第328頁、昭和60年12月25日 株式会社トリケップス発行(請求人が提出した甲第5号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物5である WHITE SERIES No.11 最新小型モータ用材料の開発・応用、第327頁及び第328頁、昭和60年12月25日 株式会社トリケップス発行 には、図26(順送り方式の例)とともに、以下の事項が記載されている。
「鋼板はステータやロータの形状にプレス金型で一枚ずつ打ち抜かれる。打抜方式としては,ブランキング・ノッチング方式,ワン・パンチ方式,順送り方式等がある。小型モータ用鉄心は順送り方式が一般的であり,図26にその一例を示す。」(第327頁第21行ないし第328頁第1行)

(f)刊行物6:プレス加工便覧、第375頁ないし第379頁、昭和50年10月25日 丸善株式会社発行(請求人が提出した甲第6号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物6である プレス加工便覧、第375頁ないし第379頁、昭和50年10月25日 丸善株式会社発行 には、図4・87(単列抜きロータ抜き板順送り型レイアウト図)とともに、以下の事項が記載されている。
「4・5・1 順送り型の一般的特徴
数工程を要する部品の加工を行う場合,そのいくつかの工程を一定ピッチを置いて配列し,材料をピッチ分ずつ動かして,逐次工程を積み重ねていく型を順送り型と称している.」(第375頁第6行ないし第8行)
「a.打抜き順送り型 モータのロータ,ステータや,ICリードフレーム等に代表される.」(第376頁第1行)
「4・5・2 順送り型の実施例^(*)
a.実例1.単列抜き,ロータ・ステータ抜き板順送り型 図4・87の(1)は単列抜きの標準形式で,まずロータ・スロットを1スタンプで抜き,つぎにステータ・スロット,ロータ抜き落とし,ステータ抜き落としとつづく.ステータの内側からロータをとれるように製品設計しておく.
(2)は、ステータを全周で抜かず,4すみを抜き最後にシヤーカットする.製品には四方に直線部が残る.スクラップを磁気特性を落とさずもっとも少なくする方法で,材料利用率が向上する.」(第376頁第30行ないし第377頁第2行)

(g)刊行物7:モータコア50年史 戦後モータ技術50年のあゆみ、第331頁ないし第370頁、平成12年7月 財団法人三井金型振興財団、株式会社三井ハイテック発行(請求人が提出した甲第7号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物7である モータコア50年史 戦後モータ技術50年のあゆみ、第331頁ないし第370頁、平成12年7月 財団法人三井金型振興財団、株式会社三井ハイテック発行 には、図4・15(レイアウトの比較)、写真4・36(a)(ロータ、ステータ4工程順送り金型)、写真4・36(b)(標準的な4工程順送り抜型)、及び写真4・36(c)(9工程順送り抜型)とともに、以下の事項が記載されている。
「[3]プログレッシブ加工
今まで述べてきたモータコア打抜き法のノッチング加工法およびワンスタンプ加工法が、ステータおよびロータ鉄心を打抜くのにそれぞれステータ用金型、ロータ用金型、ステータ用プレスそしてロータ用プレスと、複数台の金型およびプレスを必要としていたのに対し、プログレッシブ加工は、1台の金型とプレスによってステータおよびロータコアを打抜くことができるという省力度の極めて高い加工方法である。(写真4・36(a?c))
しかも大量にモータ鉄心を生産できる加工手段であって、開発以来φ400mmを超えるような大型モータ鉄心や、生産数量の極めて少ない鉄心を除き、ほとんどのモータ鉄心打抜き方法は、プログレッシブ加工によって行われている。」(第362頁右欄第1行ないし第363頁左欄第3行)
「3-1.プログレッシブダイ(順送り金型)
JISでは「プレス多段送り型」と規定されているが、一般には「順送り金型」と呼ばれている。」(第363頁右欄第8行ないし第10行)
「プログレッシブダイの特長は、次の3点である。
○1 高能率で大量生産に適していること。
○2 複雑な形状のモータコア製品も、簡単な形状に分割した工程で、数回に分けて打抜くことができるために、金型の部品であるパンチやダイの形状を簡単にして、加工をしやすくすることができること。
○3 打抜きレイアウトによって材料歩留りを節約できること。(図4・15にレイアウト例を示す。)」(第366頁右欄第12行ないし第20行)

(h)刊行物8:特開2001-321850号公報(請求人が提出した甲第8号証)
刊行物8である特開2001-321850号公報には、本件特許の出願の日前の他の出願であって本件特許の出願後に公開された先願である特願2000-142991号の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「刊行物8に係る先願明細書等」という。)が掲載され、刊行物8に係る先願明細書等には、「積層コアの製造装置及び製造方法」(発明の名称)に関して、図1、図2、図4ないし7とともに以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 プレス成形ライン上に配置されて、プレス成形機の方向へ送り出された薄肉鋼板の上面と下面に付着したプレス用油を除去する油除去機構と、プレス用油が除去された前記薄肉鋼板の上下面の少なくともいずれか一方の所定位置に接着剤をスポット状に塗布する接着剤塗布機構と、前記プレス成形機によって所定形状に打ち抜かれた接着剤付きの各コア材を順次積み重ね収容しながら接着固定する収容保持機構とを備え、
前記プレス成形機と各機構を、上下金型体に前記薄肉鋼板の移動方向位置に所定の間隔をもって一体的に設け、前記上下金型体の開閉動に伴ってプレス成形機および各機構を同期作動させるように構成したことを特徴とする積層コアの製造装置。」
「【0010】この発明によれば、プレス成形機や各機構を上下金型体に、一体的に設けたため、該上下金型体の開閉作動に伴い油除去機構と接着剤塗布機構及びプレス成形機を同期作動させることができるため、各機構の作動タイミングを同一、すなわち例えばプレス成形機の下死点位置で油脂の除去作業と接着剤の塗布作業を同時かつ連続的に行なうことができる。」
「【0024】図1は積層コアの製造装置の第1の実施形態を示し、プレス成形ラインの端緒には、帯状の薄肉鋼板11を後述するプレス成形機16の方向に送り出す材料送り機構12が配置されていると共に、この材料送り機構12の下流側に、第1、第2油除去機構14、44と接着剤塗布機構15及びプレス成形機16、収容保持機構17を一体的に備えた上下金型体13が配置されている。
【0025】前記上下金型体13は、床面に固定された固定部である下側の下金型18と、該下金型18の上方位置に対向配置された上金型19とから主として構成されており、前記上金型19は、図外の油圧式などの駆動機構によって所定のタイミングで上下動するようになっている。これによって、第2油除去機構44やプレス成形機16の後述するパンチ30を上下方向へ同期作動させるようになっていると共に、連続的に送り込まれた前記薄肉鋼板11を、所定のリフターピンを介してプレス上死点(T・D)とプレス下死点(B・D)位置に一時的に保持するようになっている。」
「【0030】前記各吐出ノズル27a?27cは、各先端縁が下金型18の上壁18b上面よりも下方に位置していると共に、図5に示すようにリテーナ部25の周方向の約120°の角度位置に設けられて、図7に示す薄肉鋼板11が最終的に打抜かれる後述のコア材28の3つの放射腕部28a,28b,28cの所定位置に接着剤Cをそれぞれポイントスポット状に吐出して塗布するようになっている。」
「【0032】前記プレス成形機16は、図1及び図6に示すように前記接着剤塗布機構15の形成位置から直下流側の位置に配置されて、上金型19内の固定用孔29に固定されて、下端部が上金型19の下面より突出したほぼ円柱状のパンチ30と、下金型18の上壁18b内にパンチ30と対向配置された円筒状のダイ31とから構成されている。そして、パンチ30とダイ31が共働して前記薄肉鋼板11を図7に示す所定の形状に打ち抜いてコア材28を連続的に成形すると共に、パンチ30のプレス圧によって前記収納保持機能17内に順次積み重ね収容させるようになっている。
【0033】前記収容保持機構17は、図6に示すように下金型18の下壁内に形成された固定用孔17aと、該固定用孔17a内に固定されて、ダイ31と同じく円筒状に形成されかつ同軸上に配置された保持体32と、該保持体32の外周面に一体的に固定された円筒状の断熱材33とから構成されている。
【0034】前記保持体32は、周壁32aが金属の熱伝導材からなり、その内側に前記ダイ31のプレス孔31aから下降した各コア材28をそのまま収納保持する保持孔32bが上下に貫通形成されている。
【0035】また、前記周壁32aの内部には、各コア材28に塗布された接着剤Cを加熱硬化させるヒーター34が螺旋状に埋設されている。さらに、前記断熱材33は、セラミック材等によって形成されて、保持体32から下金型18への伝熱を遮断するようになっている。」
「【0037】すなわち、材料送り機構12から送り出されて上下面11a,11bにプレス用油が付着した薄肉鋼板11を下金型18と上金型19との間に連続的に移動させると、まず、上金型19が、アクチュエータによって上下作動することに伴いパンチ30が上下動すると共に、薄肉鋼板11も図外のリフターピンによって下金型18と上金型19間を上下動し、プレスタイミングの下死点(B・D)位置、つまり図1及び図2の実線位置に下降すると、第1、第2油除去機構14、44の導入通路21、21を通ってノズル22、22から圧縮空気が噴射されて、薄肉鋼板11の上下面11a,11bの幅方向中央位置及びその周辺の潤滑油を吹き飛ばす(油除去工程)。
【0038】続いて、かかる部位が接着剤塗布機構15の上方に移動し、薄肉鋼板11が再びプレスタイミングの下死点(B・D)位置になると、図4に示すように、接着剤塗布機構15の各吐出ノズル27aから薄肉鋼板11下面の所定の3点位置に接着剤Cがスポット状に吐出塗布される(接着剤塗布工程)。
【0039】そして、この直後に、薄肉鋼板11は、その接着剤が塗布された部位がプレス成形機16のパンチ30によってダイ31を介して図7に示すコア材28が最終的形状に打ち抜かれる(打抜き工程)。
【0040】次に、この各コア材28は、打ち抜かれた瞬間には3つの腕部28a,28b,28cのそれぞれのほぼ中央位置に前記スポット状の接着剤Cが塗布された状態になっている。
【0041】前記パンチ30によって打ち抜かれた各コア材28は、図6に示すように収容保持機構17の保持体32の保持孔32b内でプレス圧により順次積み重ねられながら下降移動すると共に、この際、各接着剤Cは対向する下側のコア材28の各腕部28a,28b,28cの上面つまり、予め油が除去された上面との間で潰されながら上下両腕部28a,28b,28c、28a,28b,28cの長手方向に伸びながら広がる。このとき、保持体32は、ヒーター34によって予め加熱されており、したがって、下降移動した各コア材28から伝達された高熱によって各接着剤Cが加熱される(加熱工程)。このため、該接着剤Cは、速やかに硬化乾燥しながら上下のコア材28、28を強固に結合する。これによって、各コア材28がそれぞれ強固に結合された積層コア40が完成する。
【0042】なお、前記接着剤塗布機構15は、図外の制御回路からの信号によってコア材28が所定枚数に達した際に、吐出ノズル27a,27b,27cから吐出作業を1枚だけ停止させて、この間の各コア材28の接着を回避して、積層コア40である積層ブロックを連続的に成形することができるようになっている。」
「【0054】さらに、前記第1の接着剤塗布機構15を下金型18側ではなく、上金型19側のみとすることも可能で有り、これによって、接着剤塗布機構15及びプレス成形機16の作動を、上金型19の作動タイミングで一緒に作動させることができるため、該作動タイミングの制御精度が一層向上する。」

よって、刊行物8に係る先願明細書等には、以下の発明がそれぞれ記載されている。
「パンチ30とダイ31とを有する一つの上下金型体13で薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状のコア材28とし、該コア材28を積層し、接着固定する積層コアの製造方法において、薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状の該コア材28とする直前に、該コア材28となる部位毎にスポット状に、該コア材28が所定枚数に達した際に接着剤塗布を1枚だけ停止する接着剤塗布機構15より、該パンチ30側から供給される接着剤を該上下金型体13で塗布することを特徴とする積層コアの製造方法。」(以下、「先願発明5」という。)、

「上下金型体13にパンチ30とダイ31とを有し、薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状のコア材28とするプレス成形機16を具備し、該コア材28を積層する収容保持機構17を、下金型18に備え、コア材28が所定枚数に達した際に、接着剤塗布を1枚だけ停止する接着剤塗布機構15より接着剤をパンチ30側から供給してコア材28となる部位毎にスポット状に該上下金型体13で塗布する構成を、プレス成形機16の直前に備え、該パンチ30は、該コア材28をプレス圧により順次積み重ね、接着固定する機能も有することを特徴とする積層コアの製造装置。」(以下、「先願発明6」という。)

(i)刊行物9:特開2001-45717号公報(請求人が提出した甲第9号証)
刊行物9である特開2001-45717号公報には、本件特許の出願の日前の他の出願であって本件特許の出願後に公開された先願である特願平11-213877号の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「刊行物9に係る先願明細書等」という。)が掲載され、刊行物9に係る先願明細書等には、「積層鉄芯の積層装置及びその方法」(発明の名称)に関して、図1及び図2とともに以下の事項が記載されている。
「【0009】図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る積層鉄芯の積層方法における積層鉄芯の積層工程10は、順送りされる薄板鋼板11に2個の順送り用パイロット孔12及び製品に必要な3個のスキュー用逃げ丸孔13を形成するパイロット孔加工工程Aと、順送りされる薄板鋼板11に所要数のロータスロット14及び軸孔15を形成するロータスロット加工工程Bと、必要に応じて、順送りされる薄板鋼板11の裏面の3箇所の接着剤塗布部16に接着剤を塗布する接着剤塗布工程Cと、順送りされる薄板鋼板11を外形打ち抜きして薄板個片(図2の符号50)を形成し、該薄板個片を該薄板個片に先行して外形打ち抜きされた薄板個片(図2の符号51)に固着して所定数の薄板個片を有する積層鉄芯(図2の符号54)にする打ち抜き・固着工程Dとを有して構成されている。
【0010】図2に示すように、積層鉄芯の積層工程10を実施可能な本発明の一実施の形態に係る積層鉄芯の積層装置10aは、パイロット孔加工工程A及びロータスロット加工工程Bを実施するパイロット孔加工ステーション及びロータスロット加工ステーションを省略して示しているが、接着剤塗布工程C及び打ち抜き・固着工程Dを実施する接着剤塗布ステーション17及び打ち抜き・固着ステーション18を備えた構成となっている。以下、図を参照して詳細に説明する。
【0011】接着剤塗布ステーション17では、前記パイロット孔加工ステーションでの順送り用パイロット孔12及びスキュー用逃げ丸孔13の形成、また、前記ロータスロット加工ステーションでのロータスロット14及び軸孔15の形成、さらに、打ち抜き・固着ステーション18での薄板鋼板11の外形打ち抜き及び薄板個片の固着に伴ってダイプレート19の上端面20に当接する薄板鋼板11の裏面22の3箇所の接着剤塗布部16(図1参照)に、必要に応じて、接着剤塗布手段21によって接着剤を塗布するようになっている。」
「【0018】打ち抜き・固着ステーション18では、薄板鋼板11の上方に配置された図示しないポンチによって薄板鋼板11を押し下げて、ダイプレート19に形成されたダイ49内に薄板個片50を外形打ち抜きすると共に、外形打ち抜きされた薄板個片50を、既に外形打ち抜きされてダイ49内に積層さている先行する薄板個片51に接着剤を介して固着するようにしている。
【0019】ダイ49の下端には、固着反力を負担可能な側圧手段の一例である、ダイ49の内径と同じ内径を有するシリンダー状の側圧リング52の上端が連接されており、側圧リング52の下端は下型定盤23の上部に形成された断面円形状の凹部53の底部53aの外側部に支持されている。ダイ49内及び側圧リング52内の接着剤を介して積層された複数枚(本実施の形態では6枚)の薄板個片からなる複数個(本実施の形態では6個)の積層鉄芯(製品)54は、ダイ49及び側圧リング52との摩擦力によって保持されて、ポンチによって薄板個片50を外形打ち抜きする際の打ち抜き反力に耐えると共に、接着剤を介して固着する時の固着反力にも耐えるようになっている。この点を考慮して、側圧リング52の長さLは決定されている。」

よって、刊行物9に係る先願明細書等には、以下の発明が記載されている。
「ダイプレート19及び下型定盤23に、ポンチ及びダイを有するロータスロット加工ステーション及び打ち抜き・固着ステーション18を具備し、該ダイは、打ち抜かれた薄板個片50を内部に積層し、該ダイプレート19に設けられ、積層鉄芯の最下層の該薄板個片50の下面には接着剤を塗布しない摺動ロッド24より接着剤を該ダイ側から供給して該薄板個片50となる部位毎の接着剤塗布部16に該ダイプレート19及び下型定盤23で塗布する接着剤塗布ステーション17を、該ロータスロット加工ステーション及び該打ち抜き・固着ステーション18の間に備え、該打ち抜き・固着ステーション18のポンチは、該薄板個片50を外形打ち抜きすると共に、既に外形打ち抜きされて積層されている先行する該薄板個片51に接着剤を介して固着することを特徴とする積層鉄芯の積層装置。」(以下、「先願発明7」という。)

(j)刊行物10:特開2002-151339号公報(本件特許の公開公報)(請求人が提出した甲第12号証)
刊行物10である特開2002-151339号公報は、本件特許の出願の公開公報であって、本件特許の出願である特願2000-343043号の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「本件当初明細書等」という。)が掲載され、本件当初明細書等には、「積層鉄芯の製造方法およびその製造装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 電磁鋼板を、所定の形状に打抜き単位鉄芯とし、打抜いた単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の打抜き以降、積層中に単位鉄芯の部分的表面あるいは端面から接着剤を塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。」
「【請求項6】 雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を分離して備え、接着剤を単位鉄芯の部分的表面あるいは端面に塗布する接着剤供給部を備えることにより、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
「【0039】
【発明の効果】本発明によれば、接着剤を用いて積層鉄芯の打抜き工程にて連続的に鉄芯を固着することが可能であり、従来の含浸設備を用いた固着では無いので、短時間に積層鉄芯を固着でき、積層鉄芯の固着工程の作業性が大幅に向上する。また、接着塗布時に鋼板は水平状態を保持しているので、接着剤の流れ出しを防止することが可能であり、強固に固着させることができる。」

(k)刊行物11:図解機械用語辞典、第86頁及び第87頁、昭和50年7月30日 日刊工業新聞社発行(請求人が提出した甲第13号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物11である図解機械用語辞典には、以下の事項が記載されている。
「金型(かながた) metal mold, metallic-[金属型,金属模型]○1金属で作った鋳型.用途によって材質が違うが,ふつう鋳鉄や耐熱材料が用いられる.くり返し使用できる.○2プラスチック成形に用いる金属製の型.」(第86頁第13行ないし第16行)

(l)刊行物12:制御用モータ技術活用マニュアル、第10頁ないし第33頁、242頁ないし第259頁、昭和62年2月25日 総合電子出版社発行(請求人が提出した甲14第号証)
本件特許の出願前に頒布された刊行物12である 制御用モータ技術活用マニュアル、第10頁ないし第33頁、及び242頁ないし第259頁、昭和62年2月25日 総合電子出版社発行 には、図2.7(アマチュア抜板)、図7.9(VR形ステッピングモータ)、及び図7.10(ステータ、ロータ、フレーム)とともに以下の事項が記載されている。
「○1積層コア(鉄心)
表面を絶縁した厚さ0.35?0.6mmの珪素鋼帯から,図2.7のように,円形に打ち抜いたアマチュア抜板を軸の周囲に円筒形に積み重ねたものが積層コアである(今日では,抜板を自動結束する各種の方法があり,積層結束されたコアをシャフトに圧入される場合が多い)。」(第21頁第6行ないし第10行)
「図7.9,図7.10はVR形モータの構造を示している。VR形モータのロータは,ロータコアとシャフトから構成される。」(第255頁第12行及び第13行)

7.当審の判断
7-1.本件特許の請求項1ないし8に係る特許発明が特許法第29条第2項の規定に該当するか否かの判断
7-1-1.本件特許の請求項1に係る特許発明(以下、「本件特許発明1」という。)について
(1)甲第1号証に記載された発明に甲第2号証または甲第4号証に記載された発明を適用する組み合わせについて
[対比]
本件特許発明1と刊行物発明1とを対比する。
(ア)刊行物発明1の「パンチ22」及び「ダイス23」は、それぞれ本件特許発明1の「雄型打抜き金型」及び「雌型打抜き金型」に相当し、また、刊行物発明1の「パンチ22」及び「ダイス23」が一つの金型台に設けられることは明らかである。
(イ)刊行物発明1の「帯鋼板10」、「鋼板片11」及び「瞬間接着剤」は、それぞれ本件特許発明1の「電磁鋼板」、「単位鉄芯」及び「接着剤」に相当し、刊行物発明1の「帯鉄鋼10を打ち抜いて所定の形状の鋼板片11と」する工程、及び「該鋼板片11を積層し、接着することにより一体化させる」工程は、それぞれ本件特許発明1の「外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯と」する工程、及び「該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる」工程に相当する。
(ウ)刊行物発明1の「板片の積層方法」は、本件特許発明1の「積層鉄芯の製造方法」に相当する。

したがって、本件特許発明1と刊行物発明1とは、
「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、接着剤を塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。」
である点で一致する。
ここで、請求人は、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、「「接着剤塗布雄金型」とは、「打抜きパンチを備える上金型台に設けられることで、打抜き動作と同期して接着剤塗布を行う接着剤塗布手段のことであると解される。」(審判請求書第21頁第23行ないし同頁第25行、弁駁書第5頁第15行ないし同頁第17行、口頭審理陳述要領書第5頁第5行ないし同頁第8行)と主張しているので、刊行物発明1の「接着剤塗布具31」が、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」に相当するか否かについて検討する。本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」は、「雄金型」である以上、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。また、請求人及び被請求人も、平成20年7月31日の第1回口頭審理において、本件訂正明細書に記載された「接着剤塗布雄金型」は、「電磁鋼板」の加工を伴う金型であって、接着剤塗布機能を備えたものであると認めている。一方、刊行物1には、「接着剤塗布具31」が「瞬間接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。よって、刊行物発明1の「接着剤塗布具31」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」と相違する。
したがって、本件特許発明1と刊行物発明1とは、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
本件特許発明1は、「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯と」するものであるのに対し、刊行物発明1は「パンチ22とダイス23で、帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の鋼板片11と」するものである点。
〈相違点2〉
本件特許発明1は、「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」ものであるのに対し、刊行物発明1は「該帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の該鋼板片11とする前に、該鋼板片11となる部位毎に部分的に、製造される板片の積層体を構成する該鋼板片11の枚数分に相当する回数だけ作動し、その後の1回は作動しない接着剤塗布具31より該ダイス23側から供給される瞬間接着剤を塗布する」ものであるが、本件特許発明1の、「接着剤を」「塗布する」工程を「単位鉄芯の内周側を打抜き以降」に実行し、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から」「接着剤を」供給し、「接着剤を該金型台で塗布」する工程を有さない点。

[相違点についての判断]
〈相違点2について〉
(ア)刊行物2には、「フープ材4」を「逐次打抜」いた後、「接着剤塗布装置2」により「絶縁材兼用接着剤3」を塗布し、その後「最終ステージで」「フープ材4からコア7」を「打ち抜」く工程が記載されている。刊行物2に記載された「フープ材4」、「コア7」及び「打ち抜きプレス1」は、それぞれ本件特許発明1の「電磁鋼板」、「単位鉄芯」及び「雄型打ち抜き金型」に相当し、刊行物2に記載された「最終ステージで」「フープ材4からコア7」を「打ち抜」く工程は、本件特許発明1の「単位鉄芯の外周側を打抜」く工程に相当する。また、刊行物2の記載によれば、「フープ材4」は打抜かれて「電動機用積層鉄心」を構成する「コア7」となることから、「最終ステージ」で「フープ材4」から「コア7」が打抜かれる前に、「フープ材4」の「コア7」となる部分の内周側が打抜かれることは明らかであり、刊行物2に記載された、「フープ材4」を「逐次打抜」く工程は、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜」く工程に相当する。さらに、刊行物2の第1図から、「絶縁材兼用接着剤3」が「打ち抜きプレス1」側から塗布されることも明らかである。よって、刊行物2には、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間」「に、」「雄型打抜き金型側から供給される接着剤を」「塗布する」工程が記載されている。
しかし、刊行物2には、「接着剤塗布装置2」が「絶縁材兼用接着剤3」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。一方、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」は、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。よって、刊行物2に記載の「接着剤塗布装置2」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」と相違する。また、刊行物2に記載の「絶縁材兼用接着剤3」は、「コア7」間を絶縁するものであるから、少なくとも「フープ材4」の「コア7」となる部位の全面に塗布されるものと認められ、本件特許発明1の如く、「単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に」塗布されるものではない。さらに、刊行物2には、「フープ材4」を「逐次打抜」く工程、及び「最終ステージで」「フープ材4からコア7」を「打ち抜」く工程を実行する金型台で、間欠的に「絶縁材兼用接着剤3」を塗布することは記載されておらず、自明でもない。
したがって、刊行物2には、本件特許発明1の「単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より」「供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程は記載されていない。
(イ)また、刊行物4には、「軸孔2」及び「スロット孔4」の穿設以降、「外形抜き」の前に、「鉄心片9」となる部位毎に、設定された枚数おきに作動しない「ポンチ10」により、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成することが記載されている。刊行物4に記載の「鉄心片9」は、本件特許発明1の「単位鉄心」に相当し、また、刊行物4に記載された「軸孔2」及び「スロット孔4」の穿設は、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜く」工程に相当し、さらに、刊行物4に記載された「外形抜き」は、本件特許発明1の「単位鉄芯の外周側を打抜く」工程に相当する。よって、刊行物4には、本件特許発明1の、「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く」工程が記載されている。
しかし、刊行物4には、「鉄心片9」どうしを「一体結合」する手段として、「鉄心片9」となる部位毎に、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成することが記載されているのみであり、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程は記載されていない。
(ウ)刊行物5ないし7の記載より、本件特許の出願前に、一つの金型台内で内周打抜きと外周打抜きとを順次行う「順送り打抜き加工」は周知・慣用技術であったと認められる。
しかし、刊行物5ないし7のいずれにも、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程は記載されておらず、また、当該工程が本件特許の出願前に周知・慣用技術であったとも認められない。
(エ)刊行物11及び刊行物12のいずれにも、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程について、何ら記載されていない。
(オ)上記(ア)ないし(エ)において検討したとおり、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11、及び刊行物12のいずれにも「単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より」「供給される接着剤を該金型台で塗布する」ことは記載されていないから、刊行物発明1に刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術のいずれを適用しても、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程を有するものとすることはできない。
そして、本件訂正明細書の0013段落に記載されているように、本件特許発明1は、「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程により、雄型の打ち抜き金型内部に、接着剤を塗布する構成を備えたものとすることができるので、接着剤を塗布する工程を、金型により電磁鋼板を打抜く工程と同時に実行し、作業性を低下することなく接着剤を塗布することが可能となる格別な効果を奏することができ、この点は、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12の記載から、当業者が予測し得たものでもない。
(カ)なお、請求人は、審判請求書において、「そうすると、この甲第4号証に記載の積層鉄芯の製造方法は、単位鉄芯どうしの接合手段が「接着剤」ではなく「かしめ」であるという点を除けば、本件請求項1の発明との相違点は全くない。つまり、本件請求項1の発明との間で上記相違点1?4は全くなく、「一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間に、単位鉄芯となる部位毎に、間欠作動する“接合手段付与用の金型”により“接合手段”を付与する」という点で、本件請求項1の発明と同じである。そして、このような積層鉄芯の製造方法を、甲第1号証に記載の発明に適用し、一つの金型台内において各金型手段によって「内周側の打抜き」、「接着剤の塗布」、「外周側の打抜き」を順次行うようにすることは、当業者が容易に想到できることである。」(第22頁第18行ないし同頁第29行)と主張しているので、この点について検討する。
刊行物4に記載された、「ポンチ10」が“接合手段付与用の金型”であり、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」が、“接合手段”であるとしても、刊行物4には、“接合手段”として「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」が記載されているのみであり、“接合手段付与用の金型”により金型台で接着剤を塗布し、“接合手段”として接着剤を用いることは記載されていない。そして、通常、金型は、接着剤の塗布のために用いられるものではないから、刊行物4の記載に基づき、“接合手段付与用の金型”により接着剤を塗布するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、刊行物4に記載された“接合手段付与用の金型”は「接着剤」を塗布する手段ではないから、“接合手段付与用の金型”を「瞬間接着剤」を塗布する手段として刊行物発明1に適用することはできず、阻害要因があるというべきである。また、仮に、刊行物発明1に刊行物4に記載された事項を適用するとしても、“接合手段”は「瞬間接着剤」となるから、“接合手段付与用の金型”は「瞬間接着剤」を塗布する機能を有し、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成する機能は有さないものとなり、本件特許発明1の、接着剤を供給する機能と、対応する雌金型と協働した金型としての機能との両方を有する「接着剤塗布雄金型」を構成することはできず、本件特許発明1を発明することはできない。

よって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲第4証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用する組み合わせについて
[対比]
本件特許発明1と刊行物発明3とを対比する。
(ア)刊行物発明3の「ポンチ10、16」及び「ダイ8」は、それぞれ本件特許発明1の「雄型打抜き金型」及び「雌型打抜き金型」に相当する。また、刊行物発明3の「ポンチ10、16」及び「ダイ8」は、「一つの順送り金型装置」に設けられるから、一つの金型台に設けられることは明らかである。
(イ)刊行物発明3の「ストリップ材1」及び「鉄心片9」は、それぞれ本件特許発明1の「電磁鋼板」及び「単位鉄芯」に相当し、刊行物発明3の「軸孔2及びスロット孔4を穿設」する工程、及び「外形抜きを施」す工程は、それぞれ本件特許発明1の「内周側を打抜」く工程、及び「外周側を打抜」く工程に相当する。そして、刊行物発明3の「ストリップ材1に、軸孔2及びスロット孔4を穿設した後に、外形抜きを施し、所定の形状の鉄心片9と」する工程、及び「該鉄心片9を積層し、該鉄心片9の積層体を一体結合させる」工程は、それぞれ本件特許発明1の「内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯と」する工程、及び「該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる」工程に相当する。
(ウ)刊行物発明3の「積層鉄心の製造方法」は、本件特許発明1の「積層鉄芯の製造方法」に相当する。

したがって、本件特許発明1と刊行物発明3とは、
「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点3〉
本件特許発明1は、「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程を有するのに対し、刊行物発明3はそのような工程を有さず、「該軸孔2及び該スロット孔4の穿設以降、該外形抜きの前に、該鉄心片9となる部位毎に、設定された枚数おきに作動しない、かしめ用突起5及びかしめ用凹部7を形成するための該ポンチ10により、該かしめ用突起5及びかしめ用凹部7を形成する」工程を有する点。

[相違点についての判断]
〈相違点3について〉
(ア)刊行物1には、「帯鋼板10」を打ち抜いて所定の形状の「鋼板片11」とする前に、「鋼板片11」となる部位毎に部分的に、製造される板片の積層体を構成する「鋼板片11」の枚数分に相当する回数だけ作動し、その後の1回は作動しない「接着剤塗布具31」より、「ダイス23側」から供給される「瞬間接着剤」を塗布することが記載されている。そして、刊行物1に記載された、「帯鋼板10」、「鉄板片11」及び「瞬間接着剤」は、それぞれ本件特許発明1の「電磁鋼板」、「単位鉄芯」及び「接着剤」に相当し、刊行物1に記載された「帯鋼板10」を打ち抜いて所定の形状の「鋼板片11」とする工程は、本件特許発明1の「単位鉄芯の外周側を打抜く」工程に相当する。よって、刊行物1には、本件特許発明1の「単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、」「接着剤を塗布する」工程が記載されている。
しかし、刊行物1には、「接着剤塗布具31」が「瞬間接着剤」を塗布することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。一方、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」は、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。よって、刊行物1に記載の「接着剤塗布具31」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」と相違する。また、刊行物1に記載の「瞬間接着剤」が「ダイス23」側(下側)から供給される構成は、本件特許発明1の「接着剤」が「雄型打抜き金型側」(上側)「から供給される」構成と、接着剤を供給する方向(下側、上側)が相違する。さらに、刊行物1には、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜く」工程が記載されておらず、「単位鉄芯の内周側を打抜」く工程及び「単位鉄芯の外周側を打抜く」工程を実行する金型台で「瞬間接着剤」を塗布することも記載されていない。
したがって、刊行物1には、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に」「間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程は記載されていない。
(イ)刊行物5ないし7の記載より、本件特許の出願前に、一つの金型台内で内周打抜きと外周打抜きとを順次行う「順送り打抜き加工」は周知・慣用技術であったと認められる。
しかし、刊行物5ないし7のいずれにも、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程は記載されておらず、また、当該工程が本件特許の出願前に周知・慣用技術であったとも認められない。
(ウ)刊行物11及び刊行物12のいずれにも、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程について、何ら記載されていない。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)において検討したとおり、刊行物1、刊行物5ないし7、刊行物11、及び刊行物12のいずれにも「単位鉄心の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に」「間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程は記載されていないから、刊行物発明3に、刊行物1、刊行物5ないし7、刊行物11、及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術のいずれを適用しても、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程を有するものとすることはできない。
そして、本件訂正明細書の0013段落に記載されているように、本件特許発明1は、「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程により、雄型の打ち抜き金型内部に、接着剤を塗布する構成を備えたものとすることができるので、接着剤を塗布する工程を、金型により電磁鋼板を打抜く工程と同時に実行し、作業性を低下することなく接着剤を塗布することが可能となる格別な効果を奏することができ、この点は、刊行物1、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12の記載から、当業者が予測し得たものでもない。
(オ)なお、請求人は、審判請求書において、「また、さらに観点を変えれば、本件請求項1の発明は、甲第4号証に記載の積層鉄芯の製造方法における単位鉄芯どうしの接合手段である「かしめ」を、甲第1号証などに示されるような「接着剤」に単に置き換えただけの発明であり、かかる観点からしても、甲第4号証および甲第1号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものである。」(第23頁第1行ないし同頁第5行)と主張しているので、この点について検討する。
刊行物発明3の「かしめ用突起5及びかしめ用凹部7を形成するための該ポンチ10」は、“接合手段”を付与するために「かしめ用突起5及びかしめ用凹部7を形成する」機能のみを有するものであり、接着剤を塗布する機能をも有するものではない。また、本件特許の出願前に、接着剤を供給する機能を金型に持たせることが、周知・慣用技術であったとも認められない。そして、通常、金型は接着剤を塗布するために用いられるものではないから、刊行物1に記載された事項をかんがみても、刊行物発明3に記載された「ポンチ10」に接着剤を供給する機能を持たせることは、当業者が容易に想到し得たことではない。また、仮に、刊行物発明3に刊行物1に記載された事項を適用するとしても、“接合手段”は「瞬間接着剤」となるから、「ポンチ10」は、「瞬間接着剤」を塗布する機能を備えるものの、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成する金型としての機能は有さないものとなり、本件特許発明1の、接着剤を供給する機能と、対応する雌金型と協働した金型としての機能との両方を備える「接着剤塗布雄金型」を構成することはできず、本件特許発明1を発明することはできない。

(3)本件特許発明1が特許法第29条第2項の規定に該当するか否かの判断についてのまとめ
上記(1)及び(2)において検討したとおり、本件特許発明1は、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

7-1-2.本件特許の請求項2ないし4に係る特許発明(以下、「本件特許発明2ないし4」という。)について
本件特許発明2ないし4は、いずれも本件特許発明1と同一カテゴリーの「積層鉄芯の製造方法」の発明であり、本件特許発明1の構成に欠くことができない事項(以下、「構成要件」という。)を全て含んだ上で、本件特許発明1に新たな構成要件を付加するものである。
したがって、本件特許発明1が、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明2ないし4についても、刊行物1ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

7-1-3.本件特許の請求項5に係る特許発明(以下、「本件特許発明5」という。)について
(1)甲第1号証に記載された発明に甲第2号証または甲第4号証に記載された発明を適用する組み合わせについて
[対比]
本件特許発明5と刊行物発明2とを対比する。
(ア)刊行物発明2の「パンチ22」及び「ダイス23」は、それぞれ本件特許発明5の「外周打抜き加工部」の「雄型打抜き金型」及び「雌型打抜き金型」に相当し、刊行物発明2の「パンチ22」及び「ダイス23」が一つの金型台に設けられることは明らかである。また、刊行物発明2の「鋼板片11」は、本件特許発明5の「単位鉄芯」に相当し、刊行物発明2の「帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の鋼板片11とする」ことは、本件特許発明5の「外周打抜き加工」を実行することに他ならないから、結局、刊行物発明2の「帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の鋼板片11とするパンチ22及びダイス23」は、本件特許発明5の「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する」「外周打抜き加工部」に相当する。
(イ)刊行物発明2の「打ち抜かれた該鋼板片11を積層するシュート24」は、本件特許発明5の「打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部」に相当する。そして、刊行物発明2の「打ち抜かれた該鋼板片11を積層するシュート24」は、「該ダイス23」に設けられるから、当然、「該ダイス23」を有する金型台に備えられることは明らかである。
(ウ)刊行物発明2の「瞬間接着剤」及び「接着剤塗布機構30」は、それぞれ本件特許発明5の「接着剤」及び「接着剤供給部」に相当する。
(エ)刊行物発明2の「該パンチ22は、打ち抜いた該鋼板片11を押し下げ、積層された該鋼板片11を圧接・圧着する機能を有する」工程は、本件特許発明5の「該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化する」工程に相当する。

したがって、本件特許発明5と刊行物発明2とは、
「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、接着剤を供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に塗布する接着剤供給部を備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
である点で一致する。
ここで、請求人は、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、「「接着剤塗布雄金型」とは、「打抜きパンチを備える上金型台に設けられることで、打抜き動作と同期して接着剤塗布を行う接着剤塗布手段のことであると解される。」(審判請求書第21頁第23行ないし同頁第25行、弁駁書第5頁第15行ないし同頁第17行、口頭審理陳述要領書第5頁第5行ないし同頁第8行)と主張しているので、刊行物発明2の「接着剤塗布具31」が、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」に相当するか否かについて検討する。本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」は、「雄金型」である以上、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。また、請求人及び被請求人も、平成20年7月31日の第1回口頭審理において、本件訂正明細書に記載された「接着剤塗布雄金型」は、「電磁鋼板」の加工を伴う金型であって、接着剤塗布機能を備えたものであると認めている。一方、刊行物1には、「接着剤塗布具31」が「瞬間接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。よって、刊行物発明2の「接着剤塗布具31」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」と相違する。
したがって、本件特許発明5と刊行物発明2とは、以下の点で相違する。
〈相違点4〉
本件特許発明5は、「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備」するものであるのに対し、刊行物発明2は「帯鋼板10を打ち抜いて所定の形状の鋼板片11とするパンチ22及びダイス23を具備」しているが、本件特許発明5の「内周打抜き加工部」を有さない点。
〈相違点5〉
本件特許発明5は、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」るものであるのに対し、刊行物発明2は「製造される金属片の積層体を構成する該鋼板片11の枚数分に相当する回数だけ作動し、その後の1回は作動しない接着剤塗布具31より瞬間接着剤を該ダイス23側から供給して該鋼板片11となる部位毎に部分的に塗布する接着剤塗布機構30を、該パンチ22と該ダイス23の前に備え」るものであるが、本件特許発明5の、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給」し、「接着剤を」「該金型台で塗布」し、「接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備える」構造を有さない点。

[相違点についての判断]
〈相違点5について〉
(ア)刊行物2には、「フープ材4」を「逐次打抜」く「打抜きプレス1」を有する「複数のステージ」と、「フープ材4からコア7」を「打抜く」「打抜きプレス1」を有する「最終ステージ」とを備え、「接着剤塗布装置2」より「打ち抜きプレス1」側から「絶縁材兼用接着剤3」を供給して、少なくとも「コア7」となる部位に塗布する「アイドルステージ」を、「複数のステージ」と「最終ステージ」の間に備えた「電動機用積層鉄心の製造装置」が記載されている。刊行物2に記載された「絶縁材兼用接着剤3」、「コア7」、「アイドルステージ」及び「電動機用積層鉄心の製造装置」は、本件特許発明5の「接着剤」、「単位鉄芯」、「接着剤供給部」及び「積層鉄芯の製造装置」に相当し、刊行物2に記載された、「フープ材4からコア7」を「打抜く」「打抜きプレス1」、及び「最終ステージ」は、本件特許発明5の「外周打抜き加工部」の「雄型打抜き金型」、及び「外周打抜き加工部」に相当する。また、刊行物2の記載によれば、「フープ材4」は打抜かれて「電動機用積層鉄心」を構成する「コア7」となることから、「最終ステージ」で「フープ材4」から「コア7」が打抜かれる前に、「フープ材4」の「コア7」となる部分の内周側が打抜かれることは明らかであり、刊行物2に記載された、「フープ材4」を「逐次打抜」く「打抜きプレス1」、及び「複数のステージ」は、本件特許発明5の「内周打抜き加工部」の「雄型打抜き金型」、及び「内周打抜き加工部」に相当する。さらに、刊行物2に記載の「複数のステージ」及び「最終ステージ」が、それぞれ「打抜きプレス1」に対応する雌型打抜き金型を有することは明らかである。したがって、刊行物2には、本件特許発明5の「接着剤を雄型打抜き金型側から供給して」「塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間」「に備え」た構造が記載されている。
しかし、刊行物2には、「接着剤塗布装置2」が「絶縁材兼用接着剤3」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。一方、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」は、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。よって、刊行物2に記載の「接着剤塗布装置2」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」と相違する。また、刊行物2に記載の「絶縁材兼用接着剤3」は、「コア7」間を絶縁するものであるから、少なくとも「フープ材4」の「コア7」となる部位の全面に塗布されるものと認められ、本件特許発明5の如く、「単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に」塗布されるものではない。さらに、刊行物2には、「絶縁材兼用接着剤3」を金型台で塗布することについて、何ら記載されておらず、自明でもない。
したがって、刊行物2には、本件特許発明5の如く「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を」「供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部」は記載されていない。
(イ)また、刊行物4には、設定された枚数おきに作動しない、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成するための「ポンチ10」により、「鉄心片9」となる部位毎に「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成する「第4ステーションIV」を、「軸孔2」及び「スロット孔4」を穿設する「第1及び第2ステーションI,II」と、「鉄心片9の外形抜き」を施す「第5ステーションV」との間に備えた「積層鉄心の金型装置」が記載されている。刊行物4に記載された「軸孔2」及び「スロット孔4」を穿設する「第1及び第2ステーションI,II」は、本件特許発明5の「内周打抜き加工部」に相当し、刊行物4に記載された「鉄心片9の外形抜き」を施す「第5ステーションV」は、本件特許発明5の「外周打抜き加工部」に相当する。したがって、刊行物4には、本件特許発明5の「該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部」が記載されている。
しかし、刊行物4に記載された、設定された枚数おきに作動しない、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成するための「ポンチ10」により、「鉄心片9」となる部位毎に「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成する「第4ステーションIV」は、「かしめ用突起5」及び「かしめ用凹部7」を形成するものであって、接着剤を塗布する機能を有さないことは明らかである。よって、刊行物4には、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」る構造は記載されていない。
(ウ)刊行物5ないし7の記載より、本件特許の出願前に、一つの金型台内で内周打抜きと外周打抜きとを順次行う「順送り打抜き加工」は周知・慣用技術であったと認められる。
しかし、刊行物5ないし7のいずれにも、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」た構造は記載されておらず、また、当該工程が本件特許の出願前に周知・慣用技術であったとも認められない。
(エ)刊行物11及び刊行物12のいずれにも、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」た構造は記載されていない。
(オ)(ア)ないし(エ)において検討したとおり、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12のいずれにも「間欠作動する接着剤塗布雄金型より」「接着剤を供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部」は記載されていないから、刊行物発明2に、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術のいずれを適用しても、本件特許発明5の如く、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」た構造を有するものとすることはできない。
そして、本件訂正明細書の0013段落に記載されているように、本件特許発明5は、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」た構造により、雄型の打ち抜き金型内部に、接着剤を塗布する構成を備えたものとすることができるので、接着剤を塗布する工程を、金型により電磁鋼板を打抜く工程と同時に実行し、作業性を低下することなく接着剤を塗布することが可能となる格別な効果を奏することができ、この点は、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12の記載から、当業者が予測し得たものでもない。

よって、相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明5は、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲第4号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用する組み合わせについて
[対比]
本件特許発明5と刊行物発明4とを対比する。
(ア)刊行物発明4の「ポンチ10、16」及び「ダイ8」は、それぞれ本件特許発明5の「雄型打抜き金型」及び「雌型打抜き金型」に相当する。
(イ)刊行物発明4の「軸孔2及びスロット孔4を穿設する第1及び第2ステーションI,II」及び「鉄心片9の外形抜きを施す第5ステーションV」は、それぞれ本件特許発明5の「内周打抜き加工部」及び「外周打抜き加工部」に相当する。
(ウ)刊行物発明4の「打抜かれた該鉄心片9を積層する通過孔18」は本件特許発明5の「打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部」に相当し、また、刊行物発明4の「打抜かれた該鉄心片9を積層する通過孔18」を備える「ダイ8」が金型台の一部を構成することは明らかであるから、刊行物発明4の「打抜かれた該鉄心片9を積層する通過孔18をダイ8に備え」る構成は、本件特許発明5の「打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え」る構成に相当する。
(エ)刊行物発明4の「該第5ステーションVの外形抜きを施すポンチ16は、積層された該鉄心片9をかしめ嵌合し、一体結合する」構造は、本件特許発明5の「該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化する」構造に相当する。

したがって、本件特許発明5と刊行物発明4とは、
「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点6〉
本件特許発明5は、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」るのに対し、刊行物発明4は、そのような構造を有さず、「設定された枚数おきに作動しない、かしめ用突起5を形成するためのポンチ10により、該鉄心片9となる部位毎に部分的に該かしめ用突起5を形成する第4ステーションIVを、該第1及び第2ステーションI,IIと、該第5ステーションVとの間に備え」る点。

[相違点についての判断]
〈相違点6について〉
(ア)刊行物1には、「金属片の積層体」を構成する「鋼板片11」の枚数分に相当する回数だけ作動し、その後の1回は作動しない「接着剤塗布具31」より「瞬間接着剤」を「ダイス23側」から供給して「鋼板片11」となる部位毎に部分的に塗布する「接着剤塗布機構30」を、「帯鋼板10」を打ち抜いて所定の形状の該「鋼板片11」とする「パンチ22」及び「ダイス23」の前に備えた、「金属片の積層装置」が記載されている。そして、刊行物1の「瞬間接着剤」、「パンチ22」、「ダイス23」及び「鋼板片11」は、本件特許発明5の「接着剤」、「雄型打抜き金型」、「雌型打抜き金型」及び「単位鉄芯」に相当する。よって、刊行物1には、本件特許発明5の「接着剤を」「供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に」「塗布する」ことが記載されている。
しかし、刊行物1には、「接着剤塗布具31」が「瞬間接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。一方、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」は、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められるから、刊行物1に記載の「接着剤塗布具31」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」と相違する。また、刊行物1に記載の「瞬間接着剤」が「ダイス23」側から供給される構成は、本件特許発明5の「接着剤」が「雄型打抜き金型側から供給される」構成と相違する。さらに、刊行物1に記載された、「接着剤塗布機構31」は、「パンチ22」及び「ダイス23」の前に備えられるものの、本件特許発明5の「該内周打抜き加工部」を有さない点で相違する。
したがって、刊行物1には、本件特許発明5の如く、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して」「該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」る構造は記載されていない。
(イ)刊行物5ないし7の記載より、本件特許の出願前に、一つの金型台内で内周打抜きと外周打抜きとを順次行う「順送り打抜き加工」は周知・慣用技術であったと認められる。
しかし、刊行物5ないし7のいずれにも、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」る構造は記載されておらず、また、当該構造が本件特許の出願前に周知・慣用技術であったとも認められない。
(ウ)刊行物11及び刊行物12のいずれにも、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」た構造は記載されていない。
(エ)(ア)ないし(ウ)において検討したとおり、刊行物1、刊行物5ないし刊行物7、刊行物11、及び刊行物12のいずれにも「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して」「該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」ることは記載されていないから、刊行物発明4に、刊行物1、刊行物5ないし刊行物7、刊行物11、及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術のいずれを適用しても、本件特許発明5の如く「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」た構造を有するものとすることはできない。
そして、本件訂正明細書の0013段落に記載されているように、本件特許発明5は、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」た構造により、雄型の打ち抜き金型内部に、接着剤を塗布する構成を備えたものとすることができるので、接着剤を塗布する工程を、金型により電磁鋼板を打抜く工程と同時に実行し、作業性を低下することなく接着剤を塗布することが可能となる格別な効果を奏することができ、この点は、刊行物1、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12の記載から、当業者が予測し得たものでもない。

(3)本件特許発明5が特許法第29条第2項の規定に該当するか否かの判断についてのまとめ
上記(1)及び(2)において検討したとおり、本件特許発明5は、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

7-1-4.本件特許の請求項6ないし8に係る特許発明(以下、「本件特許発明6ないし8」という。)について
本件特許発明6ないし8は、いずれも本件特許発明5と同一カテゴリーの「積層鉄芯の製造装置」の発明であり、本件特許発明5の構成に欠くことができない事項(以下、「構成要件」という。)を全て含んだ上で、本件特許発明5に新たな構成要件を付加するものである。
したがって、本件特許発明5が、刊行物1、刊行物2、刊行物4ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明6ないし8についても、刊行物1ないし7、刊行物11及び刊行物12に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明6ないし8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

7-2.本件特許発明が特許法第29条の2の規定に該当するか否かの判断
7-2-1.本件特許発明1について
(1)本件特許発明1が、甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるか否かについて
[対比]
本件特許発明1と先願発明5とを対比する。
(ア)先願発明5の「パンチ30」、「ダイ31」、及び「一つの上下金型体13」は、それぞれ本件特許発明1の「雄型打抜き金型」、「雌型打抜き金型」、及び「一つの金型台」に相当する。
(イ)先願発明5の「薄肉鋼板11」及び「コア材28」は、それぞれ本件特許発明1の「電磁鋼板」及び「単位鉄芯」に相当し、先願発明5の「薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状のコア材28と」する工程は、本件特許発明1の「電磁鋼板を」「外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯と」する工程に相当する。
(ウ)先願発明5の「該コア材28を積層し、接着固定する」工程は、本件特許発明1の「該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる」工程に相当し、先願発明5の「積層コアの製造方法」は、本件特許発明1の「積層鉄芯の製造方法」に相当する。
(エ)先願発明5の「該コア材28となる部位毎にスポット状に」「該パンチ30側から供給される接着剤を該上下金型体13で塗布する」工程は、本件特許発明1の「単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に」「雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」工程に相当する。

したがって、本件特許発明1と先願発明5とは、
「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。」
である点で一致する。
ここで、請求人は、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、「「接着剤塗布雄金型」とは、「打抜きパンチを備える上金型台に設けられることで、打抜き動作と同期して接着剤塗布を行う接着剤塗布手段のことであると解される。」(審判請求書第21頁第23行ないし同頁第25行、弁駁書第5頁第15行ないし同頁第17行、口頭審理陳述要領書第5頁第5行ないし同頁第8行)と主張しているので、先願発明5の「接着剤塗布機構15」が、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」に相当するか否かについて検討する。本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」は、「雄金型」である以上、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。また、請求人及び被請求人も、平成20年7月31日の第1回口頭審理において、本件訂正明細書に記載された「接着剤塗布雄金型」は、「電磁鋼板」の加工を伴う金型であって、接着剤塗布機能を備えたものであると認めている。一方、刊行物8に係る先願明細書等には、「接着剤塗布機構15」が「接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。よって、先願発明5の「接着剤塗布機構15」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」と相違する。
したがって、本件特許発明1と先願発明5とは、以下の点で相違する。
〈相違点7〉
本件特許発明1が、「電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯と」するのに対し、先願発明5は、「薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状のコア材28と」しているが、本件特許発明1の「内周側を打抜」く工程を有さない点。
〈相違点8〉
本件特許発明1が、「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布する」のに対し、先願発明5は、「薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状のコア材28とする直前に、該コア材28となる部位毎にスポット状に、該コア材28が所定枚数に達した際に接着剤塗布を1枚だけ停止する接着剤塗布機構15より、該パンチ30側から供給される接着剤を該上下金型体13で塗布」しているが、本件特許発明1の「単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に」「間欠作動する接着剤塗布雄金型より」「接着剤を」「供給」する工程を有さない点。

[相違点についての判断]
〈相違点8について〉
(ア)甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、「接着剤塗布機構15」が「接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。一方、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型」は、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。そして、対応する雌金型と協働する金型に接着剤を供給する機能を設けることは、周知・慣用技術ではなく、また、対応する雌金型と協働する金型に接着剤を供給する機能を設けることにより、金型による加工と接着剤の供給とを同一工程で行えるという新たな効果を奏することは明らかであるから、先願発明5が、本件特許発明1の「接着剤塗布雄金型より」「接着剤を」「供給」する工程を有さない点で、上記相違点8は実質的なものであり、相違点7について検討するまでもなく、本件特許発明1は先願発明5と実質的に同一ではない。

したがって、本件特許発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

7-2-2.本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、いずれも本件特許発明1と同一カテゴリーの「積層鉄芯の製造方法」の発明であり、本件特許発明1の構成に欠くことができない事項(以下、「構成要件」という。)を全て含んだ上で、本件特許発明1に新たな構成要件を付加するものである。
したがって、本件特許発明1が、先願発明5と実質的に同一ではない以上、本件特許発明2及び3についても、先願発明5と実質的に同一ではないから、本件特許発明2及び3は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

7-2-3.本件特許発明5について
(1)本件特許発明5が、甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるか否かについて
[対比]
本件特許発明5と先願発明6とを対比する。
(ア)先願発明6の「上下金型体13」、「パンチ30」及び「ダイ31」は、それぞれ本件特許発明5の「一つの金型台」、「雄型打抜き金型」及び「雌型打抜き金型」に相当する。
(イ)先願発明6の「薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状のコア材28とするプレス成形機16」は、本件特許発明5の「外周打抜き加工部」に相当する。
(ウ)先願発明6の「該コア材28を積層する収容保持機構17」は、本件特許発明5の「打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部」に相当する。そして、先願発明6の「下金型18」は「上下金型体13」の一部であるから、先願発明6の「該コア材28を積層する収容保持機構17を、下金型18に備え」る構成は、本件特許発明5の「打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え」る構成に相当する。
(エ)先願発明6の「接着剤をパンチ30側から供給してコア材28となる部位毎にスポット状に該上下金型体13で塗布する構成」は、本件特許発明5の「接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部」に相当する。
(オ)先願発明6の「該パンチ30は、該コア材28をプレス圧により順次積み重ね、接着固定する」構造は、本件特許発明5の「該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化する」する構造に相当する。
(カ)先願発明6の「積層コアの製造装置」は、本件特許発明5の「積層鉄芯の製造装置」に相当する。

したがって、本件特許発明5と先願発明6とは、
「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
である点で一致する。
ここで、請求人は、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、「「接着剤塗布雄金型」とは、「打抜きパンチを備える上金型台に設けられることで、打抜き動作と同期して接着剤塗布を行う接着剤塗布手段のことであると解される。」(審判請求書第21頁第23行ないし同頁第25行、弁駁書第5頁第15行ないし同頁第17行、口頭審理陳述要領書第5頁第5行ないし同頁第8行)と主張しているので、先願発明6の「接着剤塗布機構15」が、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」に相当するか否かについて検討する。本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」は、「雄金型」である以上、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。また、請求人及び被請求人も、平成20年7月31日の第1回口頭審理において、本件訂正明細書に記載された「接着剤塗布雄金型」は、「電磁鋼板」の加工を伴う金型であって、接着剤塗布機能を備えたものであると認めている。一方、刊行物8に係る先願明細書等には、「接着剤塗布機構15」が「接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。よって、先願発明6の「接着剤塗布機構15」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」と相違する。
したがって、本件特許発明5と先願発明6とは、以下の点で相違する。
〈相違点9〉
本件特許発明5が、「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備」するものであるのに対し、先願発明6は、「上下金型体13にパンチ30とダイ31とを有し、薄肉鋼板11を打抜いて所定の形状のコア材28とするプレス成形機16を具備」しているが、本件特許発明5の「内周打抜き加工部」を有さない点。
〈相違点10〉
本件特許発明5が、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」るのにのに対し、先願発明6は、「コア材28が所定枚数に達した際に、接着剤塗布を1枚だけ停止する接着剤塗布機構15より接着剤をパンチ30側から供給してコア材28となる部位毎にスポット状に該上下金型体13で塗布する構成を、プレス成形機16の直前に備え」るものであるが、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を」「供給」し、「接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え」る構造を有さない点。

[相違点についての判断]
〈相違点10について〉
(ア)甲第8号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、「接着剤塗布機構15」が「接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。一方、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」は、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。そして、対応する雌金型と協働する金型に接着剤を供給する機能を設けることは、周知・慣用技術ではなく、また、対応する雌金型と協働する金型に接着剤を供給する機能を設けることにより、金型による加工と接着剤の供給とを同一工程で行えるという新たな効果を奏することは明らかであるから、先願発明6が、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を」「供給」する構成を有さない点で、上記相違点10は実質的なものであり、相違点9について検討するまでもなく、本件特許発明5は先願発明6と実質的に同一ではない。

(2)本件特許発明5が、甲第9号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるか否かについて
[対比]
本件特許発明5と先願発明7とを対比する。
(ア)先願発明7の「ダイプレート19及び下型定盤23」、「ポンチ」、「ダイ」、「ロータスロット加工ステーション」及び「打ち抜き・固着ステーション18」は、それぞれ、本件特許発明5の「一つの金型台」、「雄型打抜き金型」、「雌型打抜き金型」、「内周打抜き加工部」及び「外周打抜き加工部」に相当する。
(イ)先願発明7の「薄板個片50」は、本件特許発明5の「単位鉄芯」に相当し、先願発明7の「該ダイは、打ち抜かれた薄板個片50を内部に積層」する構造は、本件特許発明5の「打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え」る構造に相当する。
(ウ)先願発明7の「接着剤を」「供給して該薄板個片50となる部位毎の接着剤塗布部16に該ダイプレート19及び該下型定盤23で塗布する接着材塗布ステーション17を、該ロータスロット加工ステーション及び該打ち抜き・固着ステーション18の間に備」える構造は、本件特許発明5の「接着剤を」「供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間」「に備え」る構造に相当する。
(エ)先願発明7の「該打ち抜き・固着ステーション18のポンチ」は、本件特許発明5の「該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型」に相当し、先願発明7の「該打ち抜き・固着ステーション18のポンチは、該薄板個片50を外形打ち抜きすると共に、既に外形打ち抜きされて積層されている先行する該薄板個片51に接着剤を介して固着する」構造は、本件特許発明5の「該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化する」構造に相当する。
(オ)先願発明7の「積層鉄芯の積層装置」は、本件特許発明5の「積層鉄芯の製造装置」に相当する。

したがって、本件特許発明5と先願発明7とは、
「一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、接着剤を供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
である点で一致する。
ここで、請求人は、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、「「接着剤塗布雄金型」とは、「打抜きパンチを備える上金型台に設けられることで、打抜き動作と同期して接着剤塗布を行う接着剤塗布手段のことであると解される。」(審判請求書第21頁第23行ないし同頁第25行、弁駁書第5頁第15行ないし同頁第17行、口頭審理陳述要領書第5頁第5行ないし同頁第8行)と主張しているので、先願発明7の「摺動ロッド24」が、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」に相当するか否かについて検討する。本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」は、「雄金型」である以上、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。また、請求人及び被請求人も、平成20年7月31日の第1回口頭審理において、本件訂正明細書に記載された「接着剤塗布雄金型」は、「電磁鋼板」の加工を伴う金型であって、接着剤塗布機能を備えたものであると認めている。一方、刊行物9に係る先願明細書等には、「摺動ロッド24」が「接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。よって、先願発明7の「摺動ロッド24」は、そもそも金型ではないから、対応する金型は存在せず、対応する雌金型と協働した金型として機能するものではない点で、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」と相違する。
したがって、本件特許発明5と先願発明7とは、以下の点で相違する。
〈相違点11〉
本件特許発明5が、「間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給」するのに対し、先願発明7は、「積層鉄芯の最下層の薄板個片50の下面には接着剤を塗布しない摺動ロッド24より接着剤を該ダイ側から供給」しているが、本件特許発明5の「接着剤を」「間欠作動する接着剤塗布雄金型より」「雄型打抜き金型側から供給」する構造を有さない点。

[相違点についての判断]
〈相違点11について〉
(ア)甲第9号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、「摺動ロッド24」が「接着剤」を供給することは記載されているが、金型としての機能を備えることは何ら記載されておらず、自明でもない。一方、本件特許発明5の「接着剤塗布雄金型」は、接着剤を供給する機能の他に、少なくとも、対応する雌金型と協働した金型としての機能を備えるものと認められる。そして、対応する雌金型と協働する金型に接着剤を供給する機能を設けることは、周知・慣用技術ではなく、さらに、対応する雌金型と協働する金型に接着剤を供給する機能を設けることにより、金型による加工と接着剤の供給とを同一工程で行えるという新たな効果を奏することは明らかであるから、先願発明7が、本件特許発明5の「間欠作動する接着剤塗布雄金型より」「接着剤を」「供給」する構成を有さない点で、上記相違点11は実質的なものである。
(イ)また、先願発明7は「接着剤を該ダイ側から」(下側から)「供給」するものであるのに対し、本件特許発明5は「接着剤を雄型打抜き金型側から」(上側から)「供給」するものであるから、両者は、接着剤を供給する方向が反対である。そして、先願発明7は、「ダイプレート19」及び「下型定盤23」に設けられた「摺動ロッド24」、「ロッド昇降機構25」、「接着剤塗布ノズル26」、「供給配管29」及び「接着剤塗布ノズル26」を備えた「接着剤塗布手段21」により接着剤を「ダイ側から供給」するものであるが、先願発明7において、前記「接着剤塗布手段21」を上型に設け、本件特許発明5の「接着剤を」「雄型打抜き金型側から供給」する構造とすることが、周知・慣用技術の付加であるとは認められない。よって、先願発明7が、本件特許発明5の「接着剤を」「雄型打抜き金型側から供給」する構成を有さない点で、相違点11は実質的なものである。
(ウ)よって、上記(ア)および(イ)において検討したとおり、上記相違点11は実質的なものであり、本件特許発明5は先願発明7と実質的に同一ではない。

(3)本件特許発明5が特許法第29条の2の規定に該当するか否かの判断についてのまとめ
上記(1)及び(2)において検討したとおり、本件特許発明5は先願発明6及び先願発明7のいずれとも実質的に同一ではない。
したがって、本件特許発明5は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

7-2-4.本件特許発明6について
本件特許発明6は、いずれも本件特許発明5と同一カテゴリーの「積層鉄芯の製造装置」の発明であり、本件特許発明5の構成に欠くことができない事項(以下、「構成要件」という。)を全て含んだ上で、本件特許発明5に新たな構成要件を付加するものである。
したがって、本件特許発明5が、先願発明6及び先願発明7のいずれとも実質的に同一ではない以上、本件特許発明6も、先願発明6及び先願発明7のいずれとも実質的に同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

7-2-5.本件特許発明7について
本件特許発明7は、いずれも本件特許発明5と同一カテゴリーの「積層鉄芯の製造装置」の発明であり、本件特許発明5の構成に欠くことができない事項(以下、「構成要件」という。)を全て含んだ上で、本件特許発明5に新たな構成要件を付加するものである。
したがって、本件特許発明5が、先願発明6と実質的に同一ではない以上、本件特許発明7も、先願発明6と実質的に同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

7-2-6.本件特許発明8について
本件特許発明8は、いずれも本件特許発明5と同一カテゴリーの「積層鉄芯の製造装置」の発明であり、本件特許発明5の構成に欠くことができない事項(以下、「構成要件」という。)を全て含んだ上で、本件特許発明5に新たな構成要件を付加するものである。
したがって、本件特許発明5が、先願発明7と実質的に同一ではない以上、本件特許発明8も、先願発明7と実質的に同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

8.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効にすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
積層鉄芯の製造方法およびその製造装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。
【請求項2】
上記金型台で積層鉄芯を固着する際、積層鉄芯に加圧を付与することを特徴とする請求項1記載の積層鉄芯の製造方法。
【請求項3】
上記金型台で、電磁鋼板を内周側を打抜いた後に外周側を打抜き所定形状の単位鉄芯となる部位毎に熱硬化型接着剤を塗布し、外周側を打抜いて形成した単位鉄芯を該金型台で積層し、所定の温度まで積層鉄芯を加熱し、加圧することにより積層鉄芯を一体化させることを特徴とする請求項1または2記載の積層鉄芯の製造方法。
【請求項4】
単位鉄芯積層時に積層方向と垂直の方向から鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造方法。
【請求項5】
一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。
【請求項6】
単位鉄芯積層部に加圧機構を備えることを特徴とする請求項5記載の積層鉄芯の製造装置。
【請求項7】
単位鉄芯積層部に加圧および加熱機構を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の積層鉄芯の製造装置。
【請求項8】
単位鉄芯積層部に積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モーターやトランスなどの積層鉄芯の製造方法及び製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電磁鋼板を用いてモーターやトランス等の積層鉄芯を製造する方法としては、鋼板を打抜きにより単位鉄芯とし、さらに所定枚数の単位鉄芯を積層し、ボルト締め、カシメ、溶接あるいは接着剤やワニス等の手段を用いて固着するのが一般的である。固着された後、積層鉄芯は巻線コイルの組込みなどの処理が施され、トランスやモーターの鉄芯が組み立てられるものである。
【0003】
積層鉄芯の固着が弱い場合、単位鉄芯に解けたり、隙間が開いたりするとコイルの巻線作業の能率が落ちたり、モーターの場合では騒音や振動の原因となることから、積層鉄芯は強く固着する必要がある。
しかし、ボルト締めにより固着する場合には、ボルトを通す貫通孔を積層鉄芯に設けることが必要であり、積層鉄芯に貫通孔を設けた場合には積層鉄芯の磁気特性が劣化することがあり、同様に溶接により積層鉄芯を固着する場合には溶接部に熱的歪みが入り、かしめではダボ形成時に機械加工されることにより積層鉄芯の磁気特性が劣化することがある。
【0004】
接着剤を用いて積層鉄芯を固着する場合には、鋼板を鉄芯形状に加工した後、積層してクランプなどで仮止めしてから接着剤やワニスを入れた浴に浸漬したり、液状接着剤を上方より垂らしたりして、鋼板と鋼板の間に毛細管現象を利用して接着剤やワニスを浸透させ、しかる後加熱などにより固着するのであるが、接着剤やワニスが鋼板全面に浸透せず、特にモーターのステーターの場合には接着剤が浸透した鉄芯の外周部の端部のみ固着し、内周側のティース部がフリーになって積層両端部が浮き上がるといった問題点や、加熱した時に接着剤やワニスの粘度が低下しすぎて余剰の接着剤やワニスが流れ出して固着強度が低下したり、流れ出した接着剤の処理に困るといった問題点があった。
また、接着剤やワニス含浸を行うには塗布した後固着するまでに時間がかかるため、作業性が低いといった問題点もあった。
【0005】
このような問題点を解決するため、特開昭57-3560号公報に、積層鉄芯を全含浸する場合、あらかじめ積層鉄芯を構成する鋼板に絶縁剤の硬化剤または硬化剤および硬化促進剤を付着差せた後、積層し、巻線してから含浸させる方法が開示されている。これは、積層鉄芯を含浸により固着する場合に、あらかじめ硬化剤を付着させておくことにより急激に含浸樹脂を硬化させ、これにより接着剤の流れだしを防止して鋼板同士を強固に固着させ、同時に絶縁性も確保するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法でも積層鉄芯を構成する鋼板一枚毎に付着材を塗布する必要があり、固着するまでの時間は短縮できるものの、打抜きなどにより単位鉄芯に加工してから積層鉄芯を固着するまでの作業性が低いといった問題が解決されたとはいえない。また、全含浸の必要性が無く、積層鉄芯を部分的に固着させたい場合に対処することも開示されていない。
本発明は、このような接着剤を用いて積層鉄芯を固着する場合の問題点を解決し、作業性よく積層鉄芯を得られる方法と、その方法に適した装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する一つの金型台で、電磁鋼板を、内周側を打抜いた後に外周側を打抜いて所定の形状の単位鉄芯とし、該単位鉄芯を積層し、固着することにより積層鉄芯を一体化させる積層鉄芯の製造方法において、単位鉄芯の内周側を打抜き以降、単位鉄芯の外周側を打抜く間(外周側を打抜く際を含む)に、単位鉄芯となる部位毎に部分的表面に、間欠作動する接着剤塗布雄金型より雄型打抜き金型側から供給される接着剤を該金型台で塗布することを特徴とする積層鉄芯の製造方法。
(2)上記金型台で積層鉄芯を固着する際、積層鉄芯に加圧を付与することを特徴とする前項(1)記載の積層鉄芯の製造方法。
(3)上記金型台で、電磁鋼板を内周側を打抜いた後に外周側を打抜き所定形状の単位鉄芯となる部位毎に熱硬化型接着剤を塗布し、外周側を打抜いて形成した単位鉄芯を該金型台で積層し、所定の温度まで積層鉄芯を加熱し、加圧することにより積層鉄芯を一体化させることを特徴とする前項(1)または(2)記載の積層鉄芯の製造方法。
(4)単位鉄芯積層時に積層方向と垂直の方向から鉄芯に対し側圧をかけて積層鉄芯の端面揃えを行うことを特徴とする前項(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造方法。
(5)一つの金型台に雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する内周打抜き加工部と外周打抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を該金型台に備え、間欠作動する接着剤塗布雄金型より接着剤を雄型打抜き金型側から供給して単位鉄芯となる部位毎の部分的表面に該金型台で塗布する接着剤供給部を、該内周打抜き加工部と該外周打抜き加工部の間あるいは該外周打抜き加工部に備え、該外周打抜き加工部の外周打ち抜き用雄金型に単位鉄芯を積層するための加圧用パンチを兼用して、積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。
(6)単位鉄芯積層部に加圧機構を備えることを特徴とする前項(5)記載の積層鉄芯の製造装置。
(7)単位鉄芯積層部に加圧および加熱機構を備えることを特徴とする前項(5)または(6)に記載の積層鉄芯の製造装置。
(8)単位鉄芯積層部に積層される鉄芯に対し、積層鉄芯の端面揃えを行う側圧をかけるダンパー機構を有することを特徴とする前項(5)乃至(7)のいずれか1項に記載の積層鉄芯の製造装置。
尚、本発明において単位鉄芯積層部を2つ以上具備し、所定枚数積層後、直ちに積層部を入替える入替装置を設け、さらに、単位鉄芯の排出装置を具備することにより、連続的に打抜き固着することを可能にする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明では、積層鉄芯に供する電磁鋼板は無方向性電磁鋼板でも方向性電磁鋼板でもよく、一般的な鋼板を電磁鋼板として使用してもかまわない。さらに、高Si材やアモルファス合金なども使用可能で、特に板厚が0.10?0.35mmの薄鋼板の使用に適しているが、通常の板厚の材料に関しても限定するものではない。
【0009】
本発明における単位鉄芯の加工には、打抜き金型により鋼板を単位鉄芯形状に打抜く装置が必要であり、打抜き部の打抜き金型にて単位鉄芯形状に加工した後、積層部に連続的に単位鉄芯を積層する際に、鋼板の表面あるいは積層端面に接着剤を塗布することにより鉄芯を固着するものである。
【0010】
本発明で使用する接着剤としては特に限定するものではないが、アクリル樹脂接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリエステル接着剤、ポリウレタン接着剤、メラミン樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤などの各種接着剤が使用できる。さらに適しているものとしては、加熱により化学反応が進行する熱硬化性有機樹脂接着剤が適当であり、具体的にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などの1種あるいは2種以上を主成分とする接着剤である。また、ポリエステル、アクリル樹脂などに架橋剤を添加し、熱硬化性を付与したものも好適である。また、加熱により脱水縮合反応が進行して硬化する無機系接着剤や、りん酸カルシウムなどを主成分とする常温硬化型無機接着剤を用いてもよい。
【0011】
本発明で加熱する場合、用いる加熱手段としては、通電加熱、誘導加熱、誘電加熱、電磁波照射、直接接触加熱などが使用でき、特に限定するものではないが、電熱ヒーターによる直接接触加熱が構造が簡単で好適である。本発明では、上記加熱装置を積層部に設置して加熱することにより、積層鉄芯に塗布した接着剤を速やかに加熱硬化させることが可能である。
【0012】
次に、鉄芯を固着するために加圧する方法として、本発明では加圧パンチを用いるが、加圧パンチは打抜き金型の雄型を兼用して用いることが可能である。この場合には、所定の打抜き枚数に達した時に通常の打抜きストロークよりも雄型のストロークを大きくすることにより、大きな圧力を積層鉄芯にかけることが可能であり、より固着強度を高めることができる。また、固着された積層鉄芯を更に強固なものとするため、本工程を経た後にもう一度加圧加熱してもよい。
【0013】
本発明では、接着剤の塗布方法として積層する前に鋼板表面に1枚ごとに塗布する方法を用いてもよい。鋼板表面に1枚ごとに接着剤を塗布する場合、雄型あるいは雌型の打ち抜き金型内部に、あるいは加圧パンチ内部に接着剤塗布金型を設けることにより、作業性を低下させること無く接着剤を塗布することが可能である。
【0014】
本発明では接着剤を塗布して固着する箇所に特徴が有る。
本発明で言う部分的表面とは内部部分的表面であり、鋼板表面に接着剤を塗布する時に鉄芯表面の外縁部と内縁部からそれぞれ中央付近に入ったところを言い、中央付近に部分的に塗布する。すなわち、EIコアの場合には、直線部の両端からそれぞれ内側に入ったところで、ほぼ等距離の部分に点状に塗布するのが望ましい。
【0015】
さらに、本発明で言う端面とは、外周側および内周側端面の両方あるいは片側から塗布する場合であり、モーターのコアの場合には、コアバック部の外周側と内周側からそれぞれ内側に入ったところで、固着箇所のバランスを取る上で、ティース部を固着する場合にはティース側から離れたところが良い。それぞれの固着箇所は全面的に端部から離れている必要は無く、鉄芯端部から中央付近にかけて固着しても良い。
【0016】
固着箇所の数は、EIコアの場合には、Eコアで3点から6点でIコアで2点から3点程度、モーターのステーターの場合、コアバック部に4点から12点で各ティース部にも塗布することが望ましく、ローターでは2点から10点程度が好適である。
【0017】
接着剤を積層端面から塗布する時には、EIコアの場合には外周部4点から10点程度、モーターのステーターの場合には外周部4点から12点で内周ティース側は各ティースごとあるいは1つ置きに、ローターの場合には2点から6点程度積層方向に連続して塗布するのがよい。
【0018】
本発明では、積層鉄芯の積層端面から接着剤を塗布しても良いが、鉄芯の端部を固着するのではなく、内部側に入ったところを部分的に接着するものである。
【0019】
図3にEコアの鋼板表面に接着剤を塗布した状態を示す。網掛け部が接着剤を塗布した部分である。使用する接着剤の粘性、付着量、鋼板とのなじみなどの各種要因により接着剤の広がり状態が異なるが、Eコアの場合には各直線部に付き1?2箇所を接着する。
【0020】
図4は、モーターのステーターコアに図2の装置を用いて接着剤を塗布した状態を示す。各ティース先端部とコアバック部4箇所に積層端面から接着剤を塗布すると、毛細管現象により接着剤が単位鉄芯間に流れ込み、鉄芯表面に広がる。
【0021】
図5にEコアを従来技術で固着した状態の1例を示す。積層がずれないよう上下からクランプした状態でエポキシ系接着剤を満たした槽にどぶ漬けし含浸した後に取り出し、オーブンで150℃に加熱して接着したものを分割し、接着剤の付着状況を示したものである。接着剤はクランプで締め付けていたため単位鉄芯表面の端部にのみ付着している。良く接着できている部分とそうでない部分があり、バラツキが大きい。
【0022】
図6は、モーターのステーターコアを従来技術で固着した状態の1例である。積層がずれないようステーターの内径に合致した円筒を鉄芯に挿入し、積層方向から押さえ冶具で押さえてから鉄芯外周部に接着剤を垂らして塗布し、ドライヤーで熱風を吹き付け接着したものを分割し、接着状況を示したものである。接着剤は外周部の端部のみに付着しているため、各ティース部には接着剤が付着せず、フリーの状態となっている。
【0023】
また本発明では、その他の固着方式と併用することも可能である。モーターのステーターの場合では、外周部をカシメで固着し、内周の各ティースを接着剤を用いて固着することが可能である。
【0024】
本発明では加熱する場合、打抜き金型と加熱装置の間には断熱部材を設置できる。有機樹脂系熱硬化型接着剤の硬化に必要な温度は、一般には150?250℃の間であり、無機系接着剤の場合には400?700℃であるが、打抜き金型には非常に高い精度が要求されるため、金型が膨張しないように加熱部分とは断熱部材にて熱が伝わらないようにする必要がある。ここで使用する断熱部材はセラミックスなど耐熱性が高いものが望ましいが、特に限定するものではない。
【0025】
本発明では加熱が必要な場合、所定枚数の単位鉄芯が積層された後あるいは積層している間に、積層部に隣接して設置した加熱装置により積層鉄芯を所定温度まで昇温する。このとき、積層されたあるいは積層途中の単位鉄芯の側面からダンパー機構を備えた側圧装置を用いて、積層鉄芯の端面揃えを行うことが可能である。
【0026】
また本発明では、積層部を2個以上具備し、これらを交互に打抜き部直後に配置できるように積層部可動装置を設置することにより、さらに効率を上げることが可能である。積層完了後あるいは単位鉄芯が供給されるたび毎に加圧装置にて加圧し、接着剤を硬化させ、積層された単位鉄芯を全体あるいは部分的に接着して鉄芯を固着させる。積層部の配置は鋼板の供給方向に垂直な方向に移動する方法だけでなく、積層部を円形に多数配置した回転方式でも良いし、あるいは他の方法を用いても良い。
さらに、単位鉄芯を積層後、打抜き部直後の位置から移動せしめた際に再度加圧装置にて加圧し、さらに強固に固着させることも可能である。
【0027】
上述した本発明の鉄芯の製造方法に適した装置の構成例を以下に説明する。
雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打ち抜き加工部を具備し、打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を分離して備え、接着剤を上記打ち抜かれた単位鉄芯の部分的表面あるいは端面に塗布する接着剤供給部を備えることにより、積層した単位鉄芯を一体化することが可能である。接着剤の供給部に関して、単位鉄芯の積層部端面に塗布する場合ついては単位鉄芯積層部に、単位鉄芯の表面に部分的に塗布する場合については、打ち抜き加工部に接着供給部を備えることが好ましい。
【0028】
更に、単位鉄芯を強固に固着する場合には、単位鉄芯積層部に加圧機構を設けることも可能である。加圧機構としては、加圧パンチあるいは、加圧パンチは打抜き金型の雄型を兼用して用いることも可能である。さらには、熱硬化型接着剤を用いる場合には、上記の加圧に加え、単位鉄芯積層部に加熱機構を設けることも可能である。加熱機構としては、通電加熱、誘導加熱、誘電加熱、電磁波照射、直接接触加熱などが考えられる。
【0029】
さらには、単位鉄芯積層部において、積層されたあるいは積層途中の単位鉄芯の側面から積層鉄芯の端面揃えを行うことが可能となるように、ダンパー機構を備えた側圧装置を用いることも可能である。また本発明では、積層部を2個以上具備し、これらを交互に打抜き部直後に配置できるように積層部可動装置を設置することも可能である。これによりさらに効率を上げることが可能となる。
【0030】
【実施例】
[実施例1]
図1は本発明の実施例であり、モーターコアの単位鉄芯形状に、電磁鋼板1を打抜き、打抜いた鋼板表面に熱硬化型接着剤を塗布した後、積層し加熱加圧して固着している状態の断面説明図を示す。
図において、1は電磁鋼板(供給部材)、2は供給部材1より単位鉄芯を打ち抜く際の内周打抜き用雄金型、4は金型2に対向して設けられる内周打抜き用雌金型である。また、6は単位鉄芯の外周打抜き用雄金型であり加圧パンチを兼用している。10は雄金型兼用加圧パンチ6に対向して設けられる外周周打抜き用雌金型であり、これらの金型で2段階の打抜き加工部を形成する。
【0031】
接着剤供給装置は、接着剤塗布金型の雄型3、雌型5、接着剤供給タンク14と接着剤供給パイプ13で構成される。これらによって鋼板表面に熱硬化型接着剤を塗布させる。例えば、図4に示すような接着位置に該当するモーターコアの鋼板表面に滴下する。
11は金型台、12は加熱装置受け台、9は加熱装置、8は積層鉄芯、7は加圧パンチ受け台、15は固着された積層鉄芯の受け台であり、これらを上記雄金型兼用加圧パンチ6と併せて積層部を構成する。
【0032】
コイル状に巻き取られた状態の電磁鋼板1は、供給部材として送り装置により本発明装置内に連続的に送り込まれる。打抜き金型の雄型2と雌型4によって内周側を打ち抜いた後、接着剤塗布金型の雄型3と雌型5によって鋼板表面に熱硬化型接着剤を塗布させる。熱硬化型接着剤は接着剤供給タンク14から供給パイプ13を通じて接着剤塗布金型の雄型3に供給されている。
次に、単位鉄芯となる鋼板の表面部分に接着剤を塗布した状態で、電磁鋼板1の送りに従って外周打抜き金型兼用加圧パンチ6まで送られる。外周側打抜き金型兼用加圧パンチ6と外周打抜き金型の雌型10によって打抜かれると共に、積層装置内部の積層鉄芯受け台7上に積層される。
【0033】
積層鉄芯8は、加熱装置9にて側面より加熱され、熱硬化型接着剤が硬化する温度150℃まで昇温される。積層鉄芯の分離部分16では接着剤塗布金型の雄型3が間欠作動することにより熱硬化型接着剤が塗布されていない。加圧パンチ受け台7が所定の位置まで降下すると、積層鉄芯8は固着された積層鉄芯の受け台15に送り出される。
【0034】
[実施例2]
図2は本発明の他の実施例であり、モーターコアの単位鉄芯形状に、電磁鋼板17を単位鉄芯形状に打抜き、打抜いた単位鉄芯を積層した後、端面から熱硬化型接着剤を塗布し、加熱加圧して固着している状態の断面説明図を示す。
【0035】
図において、17は電磁鋼板(供給部材)、18は供給部材17よりガイド穴打抜く際のガイド穴打抜き用金型雄型、21は金型18に対向して設けられるガイド穴打抜き用金型雌型である。19は供給部材17より単位鉄芯を打ち抜く際の内周打抜き用雄金型、21は金型19に対向して設けられる内周打抜き用雌金型である。また、20は積層鉄芯分離用の凸部形成金型雄型であり、23は金型20に対向して設けられる凸部形成金型雌型である。凸部形成金型雄型20,部形成金型雌型23は所定枚数ごとに間欠作動させる機構になっている。
また、25は単位鉄芯の外周打抜き用雄金型であり、加圧パンチを兼用している。32は雄金型兼用加圧パンチ25に対向して設けられる外周打抜き用雌金型である。以上の金型で2段階の打抜き加工部を形成する。
【0036】
接着剤供給装置は、雄金型兼用加圧パンチ25に併設され、接着剤供給タンク29と接着剤供給パイプ28、接着剤吐出部27で構成される。接着剤吐出部27は、雄金型兼用加圧パンチ25よりも低い位置にされ、雄金型兼用加圧パンチ25と同期して上下するように設定されている。これらによって積層端面に熱硬化型接着剤を塗布させる。接着剤を塗布する位置は、例えば図4に示す単位鉄芯の接着部分に相当する箇所へ塗布させる。
24は金型台、35は積層鉄芯側圧受け台、31は加熱装置、30は積層鉄芯、33は断熱部材であり、これらを上記雄金型兼用加圧パンチ25と併せて積層部を構成する。
【0037】
コイル状に巻き取られた状態の電磁鋼板17は、供給部材として送り装置により本発明装置内に連続的に送り込まれる。ガイド穴打抜き金型の雄型18と雌型21によりガイド穴を設けた後、内周打抜き金型の雄型19と雌型22によって内周側を打ち抜く。この時、外周部端面を接着する接着剤吐出部が通過できるように供給部材の所定の位置を打ち抜いておく。積層鉄芯分離用の凸部形成金型の雄型20と雌型23は所定枚数ごとに間欠作動させる。熱硬化型接着剤は接着剤供給タンク29から供給パイプ28を通じて接着剤吐出部27に供給されている。
【0038】
外周打抜き金型兼用加圧パンチ25で供給部材17から切り離された単位鉄芯は外周打抜き金型の雌型32の内部に積層される。接着剤吐出部27は、外周打抜き金型兼用加圧パンチ25よりも低い位置に設置されており、外周側を打抜く際に外周打抜き金型兼用加圧パンチ25と同期して降下し、積層鉄芯30の外周側と内周側の両端面から熱硬化型接着剤が塗布される。積層鉄芯30は、加熱装置31にて側面より加熱され、熱硬化型接着剤が硬化する温度150℃まで昇温される。積層鉄芯30が加圧パンチ側圧受け台35よりも下方にある所定の位置まで降下すると装置より送り出される。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、接着剤を用いて積層鉄芯の打抜き工程にて連続的に鉄芯を固着することが可能であり、従来の含浸設備を用いた固着では無いので、短時間に積層鉄芯を固着でき、積層鉄芯の固着工程の作業性が大幅に向上する。
また、接着塗布時に鋼板は水平状態を保持しているので、接着剤の流れ出しを防止することが可能であり、強固に固着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フープ状の無方向性電磁鋼板を単位鉄芯形状に打抜き、単位鉄芯1枚ごとに鋼板表面に接着剤を塗布し積層部にて加圧加熱して固着している状態を示す。
【図2】フープ状の無方向性電磁鋼板を単位鉄芯形状に打抜き、積層部にて積層しながらティース部とコアバック部に接着剤を端面塗布し加圧加熱して固着している状態を示す。
【図3】EIコアのEコアに接着剤を塗布した状態の単位鉄芯。網掛け部が接着剤が塗布された部分。鋼板の表面に接着剤を5箇所塗布した状態を示す。
【図4】図2の装置を用いて接着剤を塗布した状態の単位鉄芯。網掛け部が接着剤が塗布された部分。ティース部とコアバック外周部4箇所の端面部から接着剤を塗布した状態を示す。
【図5】従来技術を用いてEIコアのEコアに接着剤を塗布した状態の単位鉄芯。網掛け部が接着剤が塗布された部分を示す。
【図6】従来技術を用いて接着剤を塗布した状態の単位鉄芯。網掛け部が接着剤を塗布された部分を示す。
【符号の説明】
1,17:フープ状の電磁鋼板 2,19:内周打抜き金型の雄型
3:接着剤塗布金型の雄型 4,22:内周打抜き金型の雌型
5:接着剤供給金型の雌型 6,25:外周打抜金型兼用加圧パンチ
7:加圧パンチ受け台 8,30:積層鉄芯
9,31:加熱装置 10,32:外周打抜き金型の雌型
11,24:金型台 12:加熱装置受け台
13:接着剤供給パイプ 14:接着剤供給タンク
15:固着された積層鉄芯の受け台
16,34:それぞれの積層鉄芯の分離部分
18:ガイド穴打抜き金型雄型 20:積層鉄芯分離用凸部形成金型の雄型
21:ガイド穴打抜き金型雌型 23:積層鉄芯分離用凸部形成金型の雌型
26:加圧パンチ用スプリング 27:接着剤吐出部
28:接着剤供給パイプ 29:接着剤供給タンク
33:断熱部材 35:積層鉄芯側圧受け台
36:分離された積層鉄芯
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-09-05 
結審通知日 2008-09-10 
審決日 2008-09-29 
出願番号 特願2000-343043(P2000-343043)
審決分類 P 1 113・ 16- YA (H01F)
P 1 113・ 121- YA (H01F)
P 1 113・ 851- YA (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 正文  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 棚田 一也
橋本 武
登録日 2005-09-30 
登録番号 特許第3725776号(P3725776)
発明の名称 積層鉄芯の製造方法およびその製造装置  
代理人 中村 朝幸  
代理人 亀松 宏  
代理人 亀松 宏  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 中村 朝幸  
代理人 青木 篤  
代理人 苫米地 正敏  
代理人 青木 篤  
代理人 永坂 友康  
代理人 古賀 哲次  
代理人 永坂 友康  
代理人 石田 敬  

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