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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200480233 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特29条の2  G07F
審判 全部無効 2項進歩性  G07F
管理番号 1189379
審判番号 無効2008-800029  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-02-16 
確定日 2008-11-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3815295号発明「浄水自動販売機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
(1)本件特許第3815295号の請求項1ないし2に係る発明についての出願は、平成13年10月29日の出願であって、平成18年6月16日に特許権の設定登録がなされたものである。
(2)この特許に対し、請求人は平成20年2月16日に本件特許無効審判を請求した。
(3)被請求人は、平成20年4月30日付けで答弁書を乙第1号証と共に提出し、一方、請求人は、平成20年5月30日付けで証拠申出書と共に資料7?16を、同日に証人尋問申出書と尋問事項書を提出し、平成20年6月2日付けで証拠申出書(2)と共に資料17-1?3を提出した。
(4)その後、被請求人は平成20年6月13日付けで口頭審理陳述要領書、口頭審理陳述要領書(2)を乙第2号証?乙第6号証と共に提出し、請求人は、平成20年6月16日付けで口頭審理陳述要領書、証拠申出書(3)と共に資料18、19を提出した。
(5)平成20年6月16日に証拠調べ(証人尋問)及び口頭審理が行われた。
(6)平成20年6月19日付けで、被請求人は上申書を提出し、請求人は上申書、上申書(2)、及び証拠申出書(4)と共に資料20?資料23を提出した。

第2 本件発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下順に、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
注水位置に購入者が持参の容器をセットすると、注水口から原水を浄化した浄水が前記容器に注水される浄水自動販売機において、
前記注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサと、
注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構を備え、電源投入時に前記扉の閉じ状態をロックし、購入者が浄水を購入する操作を行うと、前記注水口から所定量の排水が行われて、浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄すると共に、洗浄後に前記扉のロックを解除し、容器が注水位置にセットされると容器に注水し、その後、容器の取り出しを前記容器検出センサが検出すると、前記扉の閉じ状態をロックするよう制御することを特徴とする浄水自動販売機。」(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項2】
上記購入操作は、代金支払い操作である請求項1記載の浄水自動販売機。」(以下、「本件発明2」という。)

第3 当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、「特許第3815295号発明の特許請求の範囲の請求項1および2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」(請求の趣旨)との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第8号証を提出し、無効とすべき理由を次のように主張している。
(1)理由1
請求項1及び2に係る各特許発明は、甲第1号証?甲第6号証に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)理由2
請求項1及び2に係る各特許発明は、本件特許出願の日前に出願され、本件特許出願後に公開された特開2002-269632号公報(甲第7号証)および特開2002-59161号公報(甲第8号証)の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
・甲第1号証:EDV-01の実機(大阪大学豊中キャンパスに設置されている)の写真(平成20年1月15日、16日に撮影)。
・甲第2号証:水の自動販売機のメンテナンス要項
・甲第3号証:特開平10-40459号公報
・甲第4号証:「食品、添加物等の規格基準」昭和34年12月28日厚生省告示第370号
・甲第5号証:実願昭58-53731号(実開昭59-160389号)のマイクロフィルム
・甲第6号証:特開平2-168391号公報
・甲第7号証:特開2002-269632号公報
・甲第8号証:特開2002-59161号公報

2 被請求人の主張の概要
これに対して、被請求人の主張は、以下の通りである。
(1)理由1に対して
甲第1号証に示された、平成14年7月24日付の日経新聞には「水の量り売り自動販売機」を「先月導入した」ことが記載されていることから、当該自動販売機は本件特許出願前に公然実施、あるいは公知となったものではない。
また、甲第2号証は、表紙右上に「平成11年5月9日」と印刷されているにすぎず、この年月日に作成されたものであるのか疑わしい。また、「水の自動販売機」のメンテナンス要項とあるだけで「EDV-01」のメンテナンス要項とは記載されていないことから、平成11年5月9日時点で「EDV-01」にロック機構が存在したことは立証されていない。
したがって、甲第1、2号証を考慮する必要はなく、請求項1、2に係る本件発明は、甲第3号証?甲第6号証記載の発明から当業者が容易に想到するとはいえない。また、たとえ甲第1、2号証を考慮に入れたとしても、請求項1、2に係る本件発明と甲第1?6号証記載の発明との相違点について、当業者が容易に想到するということはできない。
(2)理由2に対して
甲第7、8号証記載の発明は、請求項1、2に係る本件発明と実質的に同一とはいえない。

第4 当審の判断
1 理由1についての判断
(1)甲第1?6号証及び資料1?4には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア 甲第1号証、及び資料1?4、15?17
甲第1号証は、大阪大学豊中キャンパス図書館食堂横に設置されている自動販売機「おいしい水のはかり売り」(以下、「引用発明1」という。)をデジタルカメラで撮影したものであり、該自動販売機には、「大阪大学豊中キャンパスに『水の量り売り自動販売機』が登場した。容器ごみを減らすため、同大生協が先月導入した。」と記載された平成14年7月24日(水)付けの日本経済新聞(夕刊)の記事が貼られている。
また、請求人は、甲第1号証に係る引用発明1の実施開始時期等を証明する資料として資料1?4を提出している。
資料1は、協業組合オー・ド・ヴィのホームページの一部を抜粋したものであり、「平成10年4月 ”おいしい水のはかり売り”自動販売機を京都生活協同組合2店舗で試営業開始」、「平成11年10月に『EDV-01を販売』」と記載されている。
資料2は、協業組合オー・ド・ヴィが発行した証明書であり、「(1)平成10年4月より”おいしい水のはかり売り”自動販売機『EDV-01』を京都生活協同組合2店舗で試営業開始」、「(2)上記自動販売機『EDV-01』には、その筺体前面に設けられた取り出し扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構が設けられている」、「(3)上記ロック機構については、(1)の試営業開始日より現在に至るまで、何ら設計変更も行っていない(『EDV-01』について、何らの設計変更も行っていないという意味ではない)」旨、記載されている。
資料3は、協業組合オー・ド・ヴィを構成する株式会社フジタカの製品ラインナップを示したホームページを紙媒体に打ち出したものであり、EDV-01?EDV-03の三種の自動販売機が記載されている。
そして、資料4には、株式会社イシダが「’99廃棄物処理展 東京」に「EDV-01」を出展したことが示されている。
資料15?17は、甲第1号証に示された自動販売機がEDV-01という型式の装置であることを示している。
イ 甲第2号証
甲第2号証は、「平成11年5月9日」と日付が記載されている「水の自動販売機のメンテナンス要項」であり、次の事項が記載されている。
(ア)「はじめに『自動販売機による清涼飲料水のはかり売り営業は、自動販売機による喫茶店営業に該当する。」との厚生省からの回答があり、衛生面、品質面から下記の定期メンテナンスを行うものとする。』」
(イ)「9、自動販売機の動作は適正か。・・・(略)・・・取り出し扉のロックが正常に作動しているか確認。」
そうすると、甲第2号証には、「取り出し扉のロック装置を備えた水の自動販売機。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
ただし、該メンテナンス要項は日付が記載されているものの、いつの時点で作成されたかが明らかではなく、平成11年5月9日に公知であったかについて明確とはいえない。

ウ 甲第3号証
甲第3号証(特開平10-40459号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は上述の点に鑑みて提供したものであって、需要者が持参した容器であっても本装置内で完全に殺菌処理を施して、出水後の容器内における雑菌の増殖を防止し、安全性に非常に優れたミネラル水の自動販売装置を提供することを目的としたものである。」(段落【0009】)
(イ)「上述のようにして構成されるミネラル水自動販売装置1において、需要者は任意の大きさの容器4を持参し、まず、扉3をあけて容器4のくびれ部4aの部分をネックホルダー178、179の間に挿入して、容器4をネックホルダー178、179に装着する。容器4の装着後、所望量が例えば容器4の大きさに応じた1.5リットルであれば、前面操作部7の操作ボタン74を押操作する。すると、ミネラル水自動販売装置1は容器4の殺菌洗浄動作に入り、先ず第2の浄水器36から100ccのミネラル水Mを容器4に注水するとともに、タンク82から切換弁90を介して適度な量の塩素希釈液83が容器4に注入される。」(段落【0080】)
図1には、蛇口部43からミネラル水を容器に注入する構成が図示されている。
そして、上記記載事項(イ)、及び図9より、需要者がミネラル水を購入する操作を行うと、第2の浄水器36から容器4に注水することで蛇口部43から所定量の排水が行われる構成を備えているといえる。
これらの記載事項から、甲第3号証には、
「容器4をネックホルダー178、179に装着すると、蛇口部43からミネラル水が前記容器に注水されるミネラル水自動販売装置1において、需要者がミネラル水を購入する操作を行うと、第2の浄水器36から容器4に注水することで蛇口部43から所定量の排水が行われるミネラル水自動販売装置1。」(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

エ 甲第4号証
甲第4号証(食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号))には、次の事項が記載されている。
(ア)「4 食品の自動販売機・・・(略)・・・は、次の(1)から(3)までに掲げる条件のすべてを満たすものでなければならない。(1)自動販売機本体・・・(略)・・・2.構造及び機能・・・(略)・・・b 食品又はこれに直接接触する部品に外部から容易に接触できないものであること。・・・(略)・・・d 食品を保存し、又は調理する部分は、ねずみ、こん虫等の侵入及び塵埃じんあい等による汚染を防止できるものであること。e 食品の取出口は、販売するときのほか、外部と遮断されるものであること。・・・(略)・・・g 食品を収納する扉は、施錠できるものであること。h 調理を行うものにあつては、調理が販売の都度自動的に行われるものであること。・・・(略)・・・」(第48?49ページ)

オ 甲第5号証
甲第5号証(実願昭58-53731号(実開昭59-160389号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている。
(ア)「水槽内を介して冷却された飲料水の流れを電磁バルブにより制御し、かつ、この電磁バルブの出口側には先端に吐出ノズルを有するパイプを接続し、販売口に搬送されたカップに前記吐出ノズルから飲料水を吐出するようにした飲料自動販売機において、カップが販売口に搬送される以前に前記電磁バルブを所定時間開放し、バルブ出口側のパイプ内に残留する飲料水を排出せしめるようにしたことを特徴とする飲料自動販売機の制御装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「水出口パイプ内に残留した冷水中には吐出ノズルより侵入した細菌等が温度の上昇とともに繁殖するため、このような水を希釈水として飲料に添加することは衛生上問題である。」(明細書第3ページ第17行?第4ページ第1行)
(ウ)「カップが販売口に搬送される以前に前記電磁バルブを所定時間開放し、バルブ出口側のパイプ内に残留する飲料水を排出せしめるようにしたものである。」(明細書第4ページ第13?16行)

カ 甲第6号証
甲第6号証(特開平2-168391号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「カップホルダへのカップ受容およびカップ取出しを検知するカップ有無検知スイッチとを具備して成り、・・・(略)・・・構成したことを特徴とするカップ式飲料自動販売機の商品取出口装置。」(請求項1)
(イ)「・・・(略)・・・さらにカップ有無検知スイッチの動作信号により一旦販売に供された飲料入りカップを取り去らない限り販売待機状態に復帰しない。」(第3ページ左上欄第3?6行)

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
請求人は、平成20年2月16日付け審判請求書において、資料2について「当該証明書より、甲第1号証に示す実機についてのロック機構の実態を明らかにすれば、平成10年4月の試営業開始時点におけるEDV-01のロック機構の実態について明らかにしたことと同義となるものと解する。」(審判請求書第6ページ第24?26行)旨、主張している。
また、「以上、資料1?4に示したように、協業組合オー・ド・ヴィは、水の自動販売機EDV-01を本件特許の特許出願前である平成10年4月より試営業を開始し、また、協業組合オー・ド・ヴィの主力販売先である株式会社イシダは平成11年の5月に、これを展覧会に出展している。従って、自動販売機「EDV-01」は、本件特許出願前に日本国内において公然と実施、或いは公然知られたものであり、当該EDV-01が含む技術は、本件特許出願前に公然実施された発明、或いは公然知られた発明に該当する。」(請求書第7ページ第10?16行)とも主張している。
そこで、甲第1号証に示されたEDV-01が、いつの時点で公然実施された発明、或いは公然知られた発明であるのかについて、以下資料1?4を検討する。
資料1に、平成10年4月に「”おいしい水のはかり売り”自動販売機」を京都生活協同組合2店舗で試営業開始したことが記載されているが、該記載は、甲第1号証に示された大阪大学に設置されたEDV-01についてのものではないことは明らかといえる。
また資料1には、平成11年10月に「EDV-01」を全国販売開始していることが記載されていることから、甲第1号証に示された自動販売機が、平成11年10月において公然実施された発明、或いは公然知られた発明に該当するかについて検討する。
ここで、資料1のみでは、平成11年10月に全国販売開始された「EDV-01」と大阪大学に設置された「EDV-01」が同じ構成を備えるものであるかが不明であるので資料2を参酌すると、資料2は、平成10年4月より、京都生活協同組合2店舗でEDV-01の試営業を開始したこと、および、京都生活協同組合2店舗のEDV-01には、取り出し扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構が設けられ、そのロック機構は現在に至るまで、何ら設計変更が行っていないことが証明されているに過ぎず(資料2(2)、(3)参照)、甲第1号証の大阪大学に設置されたEDV-01が平成11年10月において公然実施されたものであったのか、或いは公然知られたものであったのかについて説明するものではない。
そして、資料2の(3)に「『EDV-01』について、何らの設計変更も行っていないという意味ではない」と記載されているように、京都生活協同組合2店舗の自動販売機の構成と平成11年10月に全国販売されたEDV-01の構成とが必ずしも同一といえず、同様にして甲第1号証に示されたEDV-01の構成が平成11年10月において全国販売されたEDV-01の構成と必ずしも同じ構成を備えているものとはいえない。
同様にして、資料3、4においても、甲第1号証に示されたEDV-01がいつの時点で公然実施された発明、或いは公然知られた発明であるのかを示す記載はない。
したがって、引用発明1は、平成14年7月の新聞記事における「先月導入した」との記載からから推測すると平成14年6月頃公然実施されたものと思われるものの、それ以前に公然実施された、あるいは公知であったことを示す資料は、資料1?4にはないといえる。
以上より、引用発明1が、本件発明の出願日である平成13年10月29日時点において設置されていたといえないことから、本件発明の出願時において公然実施をされた発明であったということができず、本件発明1及び2は、甲第1号証に基いて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

次に、甲第2号証を参照すると、甲第2号証の「水の自動販売機のメンテナンス要項」はいつ公知となったのかが明確とはいえない。
仮に、記載されている平成11年5月9日に公知であったとしても、引用発明2として「取り出し扉のロック装置を備えた水の自動販売機。」しか開示されていないことから、本件発明1及び2は、甲第2号証に基いて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。そこで、甲第3号証に記載の引用発明3に基いて、本件発明1及び2を容易に発明することができたものであるかを検討する。
本件発明1と引用発明3とを対比すると、引用発明3における「容器4」は、その機能又は構造からみて、本件発明1における「購入者が持参の容器」に相当し、「蛇口部43」は「注水口」に、「ミネラル水」は「原水を浄化した浄水」に、「ミネラル水自動販売装置1」は「浄水自動販売機」に、「需要者」は「購入者」に、「第2の浄水器36」は「浄水装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明3の「第2の浄水器36から容器4に注水することで蛇口部43から所定量の排水が行われる」構成は、排水が行われることで実質的に通路が洗浄されているといえるので、本件発明1の「浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄する」ことと同義といえる。
してみると、両者は、本件発明1の用語を用いて表現すると、
「購入者が持参の容器をセットすると、注水口から原水を浄化した浄水が前記容器に注水される浄水自動販売機において、
購入者が浄水を購入する操作を行うと、前記注水口から所定量の排水が行われて、浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄する浄水自動販売機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサと、注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構を備えているのに対して、引用発明3は、そのような構成を備えていない点。
<相違点2>
本件発明1は、電源投入時に前記扉の閉じ状態をロックし、浄水の通路を洗浄後に前記扉のロックを解除し、容器が注水位置にセットされると容器に注水し、その後、容器の取り出しを前記容器検出センサが検出すると、前記扉の閉じ状態をロックするよう制御するのに対し、引用発明3は、そのような構成となっていない点。

そこで、上記相違点1、2について以下に検討する。
<相違点1について>
甲第6号証には、飲料自動販売機において容器の有無を検出するためのセンサ(カップ有無検知スイッチ)を備えた構成が記載されている。
浄水自動販売機においても、注水するために容器が置かれているか否かを判別する必要があることは明らかであり、容器が置かれているか否かを判別する目的で甲第6号証に記載された構成を適用することは当業者が容易に想到し得る。
また、水の自動販売機において、扉にロック機構を設けることは例をあげるまでもなく周知といえる。
したがって、引用発明3に、甲第6号証に記載された構成及び周知技術を適用することによって、相違点1に係る本件発明1の特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
<相違点2について>
上記相違点1についてで検討したように、引用発明3の装置に、周知技術の扉のロック装置を適用することは当業者であれば容易に想到し得る。
一般的に、水の自動販売機において、安全面、衛生面を考慮して扉のロック装置が考えられ、その場合、購入前において外部の汚れが侵入しないように扉をロックしたり、扉内において装置が作動している際に安全を考慮して扉をロックしたり等、注水時の衛生面と安全面を考慮したタイミングにおいて扉をロックすることが想定される。
そうすると、引用発明3において、需要者がミネラル水を購入する操作を行う前に扉をロックすること、第2の浄水器36から容器4に注水する際に扉をロックすること、あるいは容器を取り出した後に扉をロックすることは容易に想到し得るといえるが、引用発明3は甲第3号証の記載事項(イ)を参酌すると、容器のセット後に通路の洗浄を行うものであるから、本件発明1のように容器が注水位置にセットされる前であって、浄水の通路の洗浄後に扉のロックを解除する構成を当業者が容易に想到するということができない。
したがって、本件発明1は、引用発明3、甲第6号証に記載された構成、及び周知技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
また、甲第4号証は「食品、添加物等の規格基準」についての証拠であるが、飲料水の自動販売機と上記基準における「h 調理を行うものにあつては、調理が販売の都度自動的に行われるものであること。」との関係については、平成20年6月16日に行われた証拠調べでの保科壽治氏の発言によると、都度排水をしなくても、飲料水の自動販売機として販売して良いという許可がでていたということであるから、該基準は、飲料水の自動販売機における構成を特定するものではないといえる。
そして、甲第5号証に記載の飲料自動販売機は、販売機内にあるカップが販売口に搬送される構成を備えたものであり、そもそもカップを殺菌洗浄する必要がないものであることから、本件発明1は、甲第4号証、あるいは甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たといえないことは明らかである。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て備え、さらに限定したものであるから、上記「ア 本件発明1について」で述べた理由と同様の理由で当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明1ないし2は、甲第1?6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

2 理由2についての判断
(1)甲第7、8号証には、次の事項が図面とともに記載されている

ア 甲第7号証
甲第7号証(特願2001-67697号(特開2002-269632号公報))の願書に最初に添附した明細書及び図面、以下、単に「先願明細書1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「流路内の逆浸透膜により原水から浄水を生成し、生成した浄水を容器に給水して販売する容器式水自動販売機において、ポンプと、複数の各開閉弁と、販売の都度、前記ポンプ及び各開閉弁を所定のタイミングで制御することにより前記流路内の滞留水を排水するように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする容器式水自動販売機。」(請求項1)
(イ)「前記容器を装着し給水を行う部分を保護するための給水扉と、所定の場合以外は前記給水扉をロックする手段と、利用者の接近を感知するセンサーと、前記センサーにより利用者の接近が感知されたときに、販売代金決済のための所定の操作を案内する手段と、前記所定の操作が行われたときに前記給水扉のロックを解除する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の容器式水自動販売機。」(請求項3)
(ウ)「これらの容器洗浄の工程は、浄水すなわち純水を供給するに当っては不可欠な工程である。すなわち、いくら利用者が自己責任に於いてボトルの洗浄を自宅あるいは自販機近くの上水道にて施したといえども、決してその洗浄は十分とは言えない。あるいは、雑菌等が内部に付着したボトルを知らずに利用し、水自体の問題ではなく、容器の汚染が原因で、疾病が誘発されないとも限らない。これらをことごとくを駆逐し、さらに、良質な水を持ち帰る手段として上記の容器洗浄は不可欠である。さらに、専用置場におかれたボトル用キャップの内面側が、洗浄水によって洗浄されるような設計とすることも当然である。」(段落【0061】)

イ 甲第8号証
甲第8号証(特願2000-244286号(特開2002-59161号公報))の願書に最初に添附した明細書及び図面、以下、単に「先願明細書2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「逆浸透膜で区画された一次側室と二次側室を備えた逆浸透膜浄水装置と、この逆浸透膜浄水装置の一次側室に原水を供給する一次側管路(5)に設けた原水供給弁(14)と、逆浸透膜浄水装置の二次側室に連結された二次側管路(7)の先端に設けられた純水供給弁(24)と、コイン投入口と、このコイン投入口から投入されたコインを検出するコインセンサと、給水開始ボタン(33)とを備えた純水供給装置とにおける純水の供給方法であって、コインセンサのコイン検出信号を受けて原水供給弁(14)を開き、次に純水供給弁(24)を開いて二次側管路内の留水が新たに逆浸透膜を通過してきた純水によって置換されるのに必要な時間が経過した後、純水供給弁(24)を閉じて待機し、給水開始ボタン(33)の操作信号を受けて再度純水供給弁(24)を開くことにより、純水の供給を開始することを特徴とする、純水供給方法。」(請求項2)
(イ)「この発明は、逆浸透膜を用いて得られる純水を適時供給する方法及び装置に関するもので、例えば純水の自動販売機に使用される上記方法及び装置に関し、特に装置内に純水の貯留タンクを有しない純水供給装置とその供給方法に関するものである。」(段落【0001】)
(ウ)「この種の自動販売機は、逆浸透膜を通過した純水を一時的に貯留する貯留タンクを備えており、例えばコインが投入されたときに、タンクに貯留している純水を給水口から一定量流出するようになっており、客は持参した容器に純水を受け取って飲料水などとして使用する。」(段落【0003】)
(エ)「この発明は、例えば自動販売機で販売される純水に、逆浸透膜浄水装置で得られた純水が客に販売される前に装置内に留まることによって生ずる雑菌の混入の危険を可及的に回避して、自動販売機のような間欠的な給水であっても、腐敗するおそれの極めて小さい純水を供給可能にすることを課題としている。」(段落【0006】)
(オ)「更に、メッセージ装置と、ロック装置を備えたドア及び容器検出センサを有する水容器設置部とを備えた純水供給装置において、コインセンサのコイン検出信号を受けて原水供給弁14を開き、水容器設置部に容器を設置すべきことをメッセージ装置に指示させた後、ドアを解錠し、容器を検出した後、純水供給弁24を開いて二次側管路内の所定量の留水を設置された容器内に流入した後、純水供給弁24を閉じ、メッセージ装置に容器内の水を廃棄すべきことを指示し、容器検出センサのオフ信号を受けた後の容器検出信号と給水ボタンの操作信号とのアンド信号により、純水の供給を開始するという方法を採用すれば、装置内の二次側管路7に貯留されていた純水で客が持参した容器内をすすぎ洗いすることができる。
装置内の二次側管路の留水であっても、通常の水道水より不純物や細菌の混入量が遥かに少ないので、この留水で客が持参した容器を濯ぎ洗いするようにすれば、供給される純水がより清潔な容器に収容されることとなって、容器内の雑菌の繁殖を防止できるほか、装置内の留水の有効利用にもなる。」(段落【0010】、【0011】)
(カ)「図1の実施例の留水排水弁27は、純水供給弁24と兼用することもできる。二次側管路7の留水の量にもよるが、留水の量が少なければその総てを容器の濯ぎ水として用いることができ、また、二次側管路の留水が多ければ、ドアをロックしたまま純水供給弁を開いて余分な量の留水を排出した後、一旦純水供給弁を閉じてドアを解錠し、客に容器を挿入するように指示し、その後純水給水弁を再び開いて濯ぎ用の留水を容器に供給するようにしてやればよい。」(段落【0026】)
(キ)図2には、水容器設置部35の前面にドア34のロック装置37を備えた構成が記載されている。

そうすると、先願明細書2には、
「客が持参した容器に純水を供給する純水供給装置において、
水容器設置部35に設置された容器を検出する容器検出センサ36と、水容器設置部35の前面にドア34のロック装置37を備え、コインセンサのコイン検出信号を受け、二次側管路7内の留水が新たに逆浸透膜を通過してきた純水によって置換されると共に、容器を留水によって濯ぎ洗いし、給水開始ボタン33の操作信号を受け純水の供給を開始する純水供給装置。」(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
まず、甲第7号証について検討する。
甲第7号証の記載事項(ア)?(ウ)を参酌すると、甲第7号証には、容器式水自動販売機が記載されており、審判請求書において請求人は、「甲第7号証においては、購入操作を行うと、直ぐに開錠状態となって、ボトル洗浄を含む販売動作が行われるのに対して、本件発明では、購入操作を行うと、排水動作を伴う洗浄を行い、その後に扉のロックを解除して注水位置にセットされた容器に対して注水を行う点で相違する」(請求書第20ページ第8?11行)が、扉をロック解除するタイミングや、排水・洗浄タイミングの差異は、周知技術である「容器洗浄機能」を削除した事に拠るものであり、甲第7号証記載の発明から「容器洗浄機能」を廃すれば、扉のロック解除のタイミングは、排水・洗浄動作の後に行われることは明らかである(請求書第22ページ第11?16行)旨、主張している。
しかし、甲第7号証には「さらに、良質な水を持ち帰る手段として上記の容器洗浄は不可欠である。」(上記記載2(1)ア(ウ)参照)と記載されているのであるから、容器式水自動販売機において容器洗浄機能を一連の工程から削除する動機付けがないといわざるを得ない。
したがって、容器洗浄機能を備えた甲第7号証に記載の発明と、本件発明1、2とが実質的に同一ということはできない。

次に、甲第8号証について検討する。
本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明における「客が持参した容器」は、その機能又は構造からみて、本件発明1における「購入者が持参の容器」に相当し、以下同様に、「水容器設置部35」が「注水位置」に、「水容器設置部に設置された容器を検出する容器検出センサ36」が「注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサ」に、「ドア34」が「扉」に、「純水」が「原水を浄化した浄水」に、「純水の供給を開始」が「容器に注水」に、「純水供給装置」が「浄水自動販売機」に相当する。
また、先願発明の「コインセンサのコイン検出信号を受け、二次側管路(7)内の留水が新たに逆浸透膜を通過してきた純水によって置換される」と、本件発明1における「購入者が浄水を購入する操作を行うと、前記注水口から所定量の排水が行われて、浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄する」とは、先願発明において購入者が浄水を購入する目的でコインを投入することは明らかであり、留水が純水によって置換されるとは、実質的に浄水の通路を洗浄しているといえ、留水が純水によって置換されると所定量の留水が注水口から排出されることも明らかであることから「購入者が浄水を購入する操作を行うと、前記注水口から所定量の排水が行われて、浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄する」ことと同義であるといえる。
また、購入者が容器を注水位置にセットすることは明らかといえる。
さらに、先願発明の「ドアのロック装置」と、本件発明1における「ロック機構」とは、「注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構」である点で共通する。
そうすると、両者は、本件発明1の用語を用いて表現すると、
「注水位置に購入者が持参の容器をセットすると、注水口から原水を浄化した浄水が前記容器に注水される浄水自動販売機において、
注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサと、注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構を備え、購入者が浄水を購入する操作を行うと、前記注水口から所定量の排水が行われて、浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄すると共に、容器に注水する浄水自動販売機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
容器のセットについて、本件発明1は、通路の洗浄後に容器が注水位置にセットされるのに対して、先願発明においては、所定量の排水(留水)によって濯ぐ構成を有すために、通路の洗浄前に容器をセットしている点。
<相違点2>
本件発明1は、電源投入時に扉の閉じ状態をロックし、通路の洗浄後に前記扉のロックを解除し、容器に注水した後、容器の取り出しを前記容器検出センサが検出すると、前記扉の閉じ状態をロックするよう制御する構成を備えているのに対し、先願発明は、ロック機構の制御について不明である点。

上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
先願明細書2には、雑菌の繁殖防止という技術思想のもと、容器を濯ぎ洗いすることが記載されていることから(上記2(1)イ(オ)参照)、容器を洗う工程を省略する構成について、つまり、通路を洗浄した後に容器を注水位置にセットするという構成が先願明細書2に記載されているとはいえない。
したがって、先願発明の「容器を留水によって濯ぎ洗い」する構成に換えて、通路の洗浄後に容器を注水位置にセットする構成とすることは設計上の微差ということはできない。
(イ)相違点2について
本件発明1のロック機構の制御は、通路を洗浄した後に容器を注水位置にセットする工程を前提とした制御となっている。
しかし、相違点1で検討したとおり、先願明細書2には通路を洗浄した後に容器を注水位置にセットする構成は記載されていないことから、ロック機構の制御を相違点2に記載された構成のようにすることについても記載されていない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て備え、さらに限定したものであるから、上記「ア 本件発明について」で述べた理由と同様の理由で甲第7号証及び甲第8号証の願書に最初に添附した明細書に記載された発明と実質的に同一とはいえない。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明1ないし2は、本件特許出願の日前に出願され、本件特許出願後に公開された甲第7号証および甲第8号証の願書に最初に添附した明細書に記載された発明と実質的に同一とはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明1ないし2についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-29 
結審通知日 2008-10-02 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願2001-331230(P2001-331230)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G07F)
P 1 113・ 16- Y (G07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥 直也  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 増沢 誠一
北村 英隆
登録日 2006-06-16 
登録番号 特許第3815295号(P3815295)
発明の名称 浄水自動販売機  
代理人 森本 聡  
代理人 冨永 博之  
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