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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1189430
審判番号 不服2005-15649  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-15 
確定日 2008-12-10 
事件の表示 特願2001-365201「光記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月10日出願公開、特開2003- 6877〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成13年11月29日(パリ条約による優先権主張2001年6月18日、韓国)の出願で、平成17年5月11日付けで特許法第37条に規定する要件を満たしてないとの理由で拒絶査定されたものである。
そして、平成17年8月15日付けで拒絶査定不服の審判請求がされ、前置審査で平成18年3月23日付け、平成18年8月15日付け、及び、平成18年12月12日付けで、特許法第36条に規定する要件を満たしていないと最後の拒絶理由が通知され、請求人は意見書、及び、補正書を提出した。
さらに、平成19年3月29日付けで、特許法第36条、及び、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないと最後の拒絶理由が通知されたものの、請求人は応答しなかった。

本願請求項1?12に係る発明は、平成19年3月9日付け手続補正書の明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとものと認められるところ、請求項1に係る発明は以下のとおりである。

「【請求項1】 使用者データ領域及びリードアウト領域を含む光記録媒体であって、 前記使用者データ領域及びリードアウト領域がグルーブとランドよりなっており、前記グルーブとランドの少なくとも一方にウォッブルが形成されており、前記リードアウト領域のウォッブル特性が前記使用者データ領域のウォッブル特性と異なるように形成され、前記リードアウト領域のウォッブルはアドレッシング情報または基準時間情報を含むことを特徴とする光記録媒体。」(以下「本願発明」という。)


2.先願発明
前置審査での平成19年3月29日付け拒絶理由通知に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2001-253250号(特開2002-260240号公報参照)(優先権主張 平成12年8月28日、平成12年12月28日)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の記載がある。
(i)「【0004】これらの光情報記録媒体においては、蛇行したグルーブとランドが螺旋状に交互に設けられており、通常はグルーブ上に情報が書き込まれている。また、グルーブとランドは、記録又は再生装置が有する光ピックアップを情報が書き込まれているゾーンに沿って走行させるための位置制御すなわちトラッキングを行うための位置検出のために用いられる。すなわち、光が照射される位置がグルーブまたはランドのどの位置にあたるかによって反射光の強さが異なるので、記録又は再生装置はその信号を受けて、光ピックアップの位置を制御し、情報が書き込まれている位置に正確に光が照射されるような制御を行う。
【0005】また、これらの光情報記録装置のうち、CD-R、CD-RW等においては、オレンジブックと称する規格が定められており、それによると、円盤状の光情報記録媒体(以下、単に「ディスク」と称することがある。)の内周から外周側に向けて、順にPCA(Power calibration area)領域、PMA(Program memory area)領域、リードイン領域、プログラム領域、リードアウト領域が設けられることになっている。PCAは記録ドライブで試し記録をするための領域であり、PMAは光情報記録媒体のメモリ使用状況を記録するための領域である。
【0006】また、リードイン領域は、光情報記録媒体に情報を記録したり光情報記録媒体から情報を読み取ったりするときに、記録装置や記録再生装置等に与える制御情報を記録するエリアである。プログラム領域は、ユーザーが情報を書き込んだり読み取ったりするために使用され、ユーザーが使用できる領域である。リードアウト領域は、プログラム領域の外側に設けられ、記録装置又は再生装置に設けられた光ピックアップのトラッキングがずれてプログラム領域をはみ出したときに、トラッキングを元に戻すために使用される。
【0007】このような、光情報記録媒体においては、できるだけトラックピッチを狭くしたり、情報の記録や再生に使用される線速度(m/s)を遅くしたりして情報の記録密度を上げることが、同じ光情報記録媒体に多くの情報を記録できることになり好ましい。また、プログラム領域をなるべく広くすることができれば、同様に同じ光情報記録媒体に多くの情報を記録できることになり好ましい。」
(ii)「【0026】本手段においては、プログラム領域とリードアウト領域のトラックピッチを同一とすることがディスクの制作上好ましいが、必ずしも同一とする必要はなく、例えば、リードアウト領域のトラックピッチをプログラム領域のトラックピッチよりも大きくしても小さくしてもよい。」
(iii)「【0031】リードアウト領域は情報の記録を行う領域ではないので、トラッキングエラーがある程度発生しても問題は無い。よって、本手段においては、リードアウト領域のトラックピッチを安定に読み書きできるトラックピッチよりもさらに狭くしている。前述のようにリードアウト領域の記録時間は例えば1分30秒以上と決められているが、トラックピッチを狭くすることにより、ディスクに占めるリードアウト領域の面積を小さくすることができ、その分をプログラム領域として使用することができるので、記録容量を増加させることができる。
(iv)「【0048】前記課題を解決するための第10の手段は、蛇行したグルーブ又はランドに沿ってトラッキングされた光ビームによって情報の記録・再生を行う円盤状の光情報記録媒体であって、内周から外周側に向けて、順にPCA領域、PMA領域、リードイン領域、プログラム領域、リードアウト領域を有するものにおいて、PCA領域、PMA領域、リードイン領域、プログラム領域のトラックピッチより、リードアウト領域のトラックピッチが狭くされていることを特徴とするもの(請求項10)である。
【0049】本手段においては、リードアウト領域のトラックピッチのみが狭くされている。リードアウト領域のトラックピッチを狭くする理由とその効果は、前記第3の手段と同じである。
【0050】前記課題を解決するための第11の手段は、蛇行したグルーブ又はランドに沿ってトラッキングされた光ビームによって情報の記録・再生を行う円盤状の光情報記録媒体であって、内周から外周側に向けて、順にPCA領域、PMA領域、リードイン領域、プログラム領域、リードアウト領域を有するものにおいて、PCA領域、PMA領域、リードイン領域の線速度より、プログラム領域の線速度が遅くされていることを特徴とする光情報記録媒体(請求項11)である。
【0051】前記課題を解決するための第12の手段は、前記第11の手段であって、プログラム領域の線速度より、リードアウト領域の線速度が遅くされていることを特徴とするもの(請求項12)である。」
(v)「【0109】そして、光情報記録媒体1には、蛇行したプリグルーブ2が形成されている。このプリグル一ブ2は、所定の周波数を有する基準信号とプリフォーマット情報が合成された信号(ATIP信号)に基づいて、蛇行状にウォブルされている。光情報記録媒体に情報を書き込む記録装置では、このプリグルーブから2の反射光量を復調し、得られたプリフォーマット情報に基づいて記録再生を行っている。
【0110】なお、本発明の実施の形態におけるプリグルーブ2は、搬送周波数が22.05kHzでFM変調されている。また、このプリグルーブ2は、CD-RやCD-RWのPCA領域、PMA領域、リードイン領域、プログラム領域、リードアウト領域にわたって連続的に形成されている。」 (vi)「【0140】次に、上述の実施の形態よりも記憶容量を増やした第3の実施の形態である光情報記録媒体を説明する。この光情報記録媒体は、リードアウト領域においても、トラックピッチ、線速度の少なくとも一方をプログラム領域より小さくした。なぜなら、リードアウト領域で決められている規格は、リードアウト領域の時間が1分30秒以上であることのみしか決められていない。
【0141】そのため、リードアウト領域の記録時間の規格を満足させる範囲で、リードアウト領域の占める面積を小さくすることができ、その部分をプログラム領域として使用可能であるので、プログラム領域の記録容量を増加させることができる。
【0142】第3の実施の形態である光情報記録媒体における各領域に対応するトラックピッチ又は線速度の分布は、図2(d)に示すとおりである。また、トラックピッチを第3の実施の形態のように変化させたときの光情報記録媒体の物理的フォーマットの概略図を図4に示した。
【0143】次に、プログラム領域のトラックピッチ又は線速度をPCA領域、PMA領域、リードイン領域よりも小さくすることなく、プログラム領域の記録容量を大きくした光情報記録媒体を説明する。
【0144】この光情報記録媒体は、リードアウト領域において、トラックピッチ、線速度の少なくとも一方が、他の領域におけるよりも小さくなっている。この光情報記録媒体の各領域に対応する線速度又は線速度の分布は、図2(e)に示した。」
(vii)【図2】は、本発明の各実施の形態であるCD-Rの記録領域の配置と各領域におけるトラックピッチ又は線速度の分布を示した図である。
【図3】は、本発明の第2の実施の形態である光情報記録媒体の物理的フォーマットの概略構成図で、プログラム領域とリードアウト領域でプリグルーブの形状を変更している。

以上の摘示事項、及び、特に【図2】【図3】を総合勘案すると、先願明細書等には、次の発明が開示されているものと認められる。
「内周から外周側に向けて螺旋状に交互にグルーブとランドが設けられ、順にPCA(Power calibration area)領域、PMA(Program memory area)領域、リードイン領域、プログラム領域、リードアウト領域が設けられた円盤状の光情報記録媒体であって、
プログラム領域は、ユーザーが情報を書き込んだり読み取ったりするために使用されるユーザーが使用できる領域であり、
リードアウト領域は、プログラム領域の外側に設けられ、記録装置又は再生装置に設けられた光ピックアップのトラッキングがずれてプログラム領域をはみ出したときに、トラッキングを元に戻すために使用され、
情報が書き込まれるグルーブは蛇行状にウォブルされたプリグルーブで形成され、プリグル一ブは所定の周波数を有する基準信号とプリフォーマット情報が合成された信号(ATIP信号)に基づいて、CD-RやCD-RWのPCA領域、PMA領域、リードイン領域、プログラム領域、リードアウト領域にわたって連続的に形成され、
プログラム領域の線速度より、リードアウト領域の線速度が遅くされている
光情報記録媒体。」(以下「先願発明」という。)


3.本願発明と先願発明との〔対比〕〔判断〕
〔対比〕
(i)先願発明の“ユーザーが情報を書き込んだり読み取ったりするために使用されるユーザーが使用できる領域”である「プログラム領域」は、本願発明の「使用者データ領域」に相当し、先願発明の“プログラム領域の外側に設けられ、記録装置又は再生装置に設けられた光ピックアップのトラッキングがずれてプログラム領域をはみ出したときに、トラッキングを元に戻すために使用”される「リードアウト領域」は、本願発明の光ピックアップによる記録/再生時に光ピックアップが使用者データ領域を離脱しないようにガード機能を行う「リードアウト領域」と共通する。

(ii)先願発明の「円盤状の光情報記録媒体」は、本願発明の「光記録媒体」に相当する。

(iii)先願発明の“プログラム領域”及び“リードアウト領域”の物理的構成を「内周から外周側に向けて螺旋状に交互にグルーブとランドが設け」は、本願発明の「使用者データ領域及びリードアウト領域がグルーブとランドよりなっており」に相当する。

(iv)先願発明の「情報が書き込まれるグルーブは蛇行状にウォブルされたプリグルーブで形成」であるが、少なくともグルーブは“蛇行状にウォブルされたプリグルーブ”されているのであるから、本願発明の「グルーブとランドの少なくとも一方にウォッブルが形成」に含まれる。

(v)先願発明の「プログラム領域の線速度より、リードアウト領域の線速度が遅くされている光記録媒体」であるが、対応する【図2】【図3】をみると、プログラム領域とリードアウト領域とで線速度を異なるようリードアウト領域で『遅くされている』ことから、蛇行状のウォブル特性の周期を、使用者データ領域よりリードアウト領域で短くしていることが把握できる。これは本願発明の「リードアウト領域のウォッブル特性が使用者データ領域のウォッブル特性と異なるように形成」する光記録媒体としての構成と共通する。

(vi)先願発明の“プリグル一ブは所定の周波数を有する基準信号とプリフォーマット情報が合成された信号(ATIP信号)に基づいて、CD-RやCD-RWのPCA領域、PMA領域、リードイン領域、プログラム領域、リードアウト領域にわたって連続的に形成”においての「所定の周波数を有する基準信号とプリフォーマット情報が合成された信号(ATIP信号)」は『同期信号、アドレスデータ(絶対時間データ)、誤り訂正符号CRF』等をもつことは自明(例:特開平4-113520号公報,特開平3-228266号公報,特開2001-143404号公報等参照)で、上記『アドレスデータ(絶対時間データ)』は本願発明の「アドレッシング情報または基準時間情報を含む」に対応することから、先願発明の上記事項は本願発明の「リードアウト領域のウォッブルはアドレッシング情報または基準時間情報を含むこと」で共通する。

結局、両発明は
「使用者データ領域及びリードアウト領域を含む光記録媒体であって、 前記使用者データ領域及びリードアウト領域がグルーブとランドよりなっており、前記グルーブとランドの少なくとも一方にウォッブルが形成されており、前記リードアウト領域のウォッブル特性が前記使用者データ領域のウォッブル特性と異なるように形成され、前記リードアウト領域のウォッブルはアドレッシング情報または基準時間情報を含む光記録媒体。」
で共通するものであり、実質的に同一であると認める。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、前置審査で通知した先願明細書に記載された発明と同一であると認められ、しかも、この本願の発明者がその出願前の上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、この出願の時において、その出願人が上記先願発明の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-25 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願2001-365201(P2001-365201)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 吉川 康男
小松 正
発明の名称 光記録媒体  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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