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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1189439
審判番号 不服2005-23250  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-01 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 特願2003-286054「映像データ記録再生システム、映像データ記録再生方法、編集制御装置及び映像データ記憶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 78945〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続きの経緯
本願は、平成6年5月27日に出願した特願平6-115067号の一部を平成15年8月4日に新たな特許出願としたものであって、平成17年10月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月27日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

II.平成17年12月27日付けの手続補正について
[結論]平成17年12月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
その理由は以下のとおり。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
外部から入力された映像データを記録する映像データ記憶装置と、映像データを読み出して編集を行う編集制御装置とを有する映像データ記録再生システムであって、
上記映像データ記憶装置、上記編集制御装置はイーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続されており、上記イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して供給される制御命令に基づいて、
上記編集制御装置は、上記映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行うことを特徴とする映像データ記録再生システム。
【請求項2】
上記映像データ記憶装置から読み出された映像データが上記編集制御装置によって加工されず送出に必要な部分が選び出された場合は、該映像データは再び上記映像データ記憶装置に記録されず、該映像データの必要な部分のアドレスが保持されることを特徴とする請求項1記載の映像データ記録再生システム。
【請求項3】
上記映像データ記憶装置及び上記編集制御装置と上記イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続されて映像データを送出する送出装置をさらに備え、
上記送出装置は上記編集制御装置が上記映像データ記憶装置から読み出して編集した映像データを送出することを特徴とする請求項1記載の映像データ記録再生システム。
【請求項4】
外部から入力された映像データを記録する映像データ記憶装置と、映像データを読み出して編集を行う編集制御装置とを有する映像データ記録再生システムによって実行される映像データ記録再生方法であって、
上記映像データ記憶装置、上記編集制御装置はイーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続されており、上記イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して供給される制御命令に基づいて、外部から入力された映像データを映像データ記憶装置に記録する記録工程と、
上記映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行う編集制御工程と
を備えることを特徴とする映像データ記録再生方法。
【請求項5】
上記映像データ記憶装置及び上記編集制御装置と上記イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続されて映像データを送出する送出装置をさらに備えた映像データ記録再生システムによって実行される映像データ記録再生方法であり、
上記記録工程によって映像データ記憶装置に記録された映像データを、上記編集制御工程が上記映像データ記憶装置から読み出して編集した映像データを送出する送出工程をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の映像データ記録再生方法。
【請求項6】
外部から入力された映像データを記録する映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行う編集制御装置であって、
上記映像データ記憶装置にイーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続されており、上記イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して供給される制御命令に基づいて、上記映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行うことを特徴とする編集制御装置。
【請求項7】
複数チャンネルの入出力端子と、複数のディスク装置に対して並列的に映像データを記録及び再生する記憶手段と、上記入出力端子から入力された情報データを1チャンネル或いは複数チャンネル同時に上記記憶手段に送り、この記憶手段にて再生された情報データを1チャンネル或いは複数チャンネル同時に任意の順序で上記入出力端子に出力する入出力手段とを有する映像データ記憶装置であって、
外部から入力された映像データを記録し、かつイーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続された編集制御装置によって編集が行われる映像データを読み出すときに、
上記入出力手段は、上記入出力端子から入力された複数チャンネルの映像データを圧縮すると共に、上記複数のディスク装置から再生された情報データを伸長する圧縮/伸長部を有することを特徴とする映像データ記憶装置。
【請求項8】
上記記憶装置として、複数のディスク装置に対して並列的に記録再生を行うディスクアレイ部を用い、
上記入出力手段内に、入力された複数チャンネルの情報データを分配して上記ディスクアレイ部の複数のディスク装置に送り、これらの複数のディスク装置から再生された情報データを集合して複数チャンネルの出力として取り出す分配/集合部を設けることを特徴とする請求項7記載の映像データ記憶装置。」

と補正された。(なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために付したものである。)

上記補正は、本件補正前の請求項1?8に係る発明を特定するために必要な事項である「コンピュータネットワーク」について、「イーサネットでなる」とする限定を付加したものであって、特許法第17条の2第3項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物の記載

原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-211587号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに、以下の記載がある。

(A)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 各録画が複数のフレームより成る未編集ビデオ録画を記憶するためのランダムアクセス記憶手段と、該記憶手段に接続され、上記の記憶された録画の選択されたフレームを表示するための手段と、上記の記憶手段を制御し、使用者に対してオフライン編集操作の際任意の時点で複数のビデオ・ポスト製作環境への全体的アクセスを可能とし、使用者が入力する指令に応じて編集物リストを発生するためのソフトウエアでプログラムされたコンピュータとを具えることを特徴とするオフライン編集システム。」

(B)「【0014】
【実施例】以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。図1は、ポスト製作オフライン編集時に行うステップを示す説明図である。図1では、製作時に製作スタッフがそれぞれ録画を表わす5個のビデオテープ(又は映画フィルム片)を作成した場合を考える。各録画は、1つの台本の一部分に対応するものとする。この録画は、集合的に「デイリーズ」(dailies)と呼ぶことがあり、ポスト製作編集用の素材になるものである。
【0015】各テープ(又は映画フィルム片)は、レーザビデオディスクに移(コピー)して本発明のビデオディスク再生ユニットに挿入できるようにする。編集者は、オフライン編集時に、図1の右上隅に示す代表的な「第1カット」の特徴を示す編集物リストを作成できる。
この第1カットは、5個の各録画を部分的につなぎ合せたもので、編集された番組を示す。
【0016】もっと詳しくいえば、編集者は、オフライン編集時に第1ディスクから編集物リスト上の第1「編集物」としてフレームのグループ「A」を決める。編集者は次に、第1ディスクから第2編集物としてフレームのグループ「B」を決める。以下同様にして、第2ディスクから第3編集物としてフレームのグループ「C」を、第3ディスクから第4編集物としてフレームのグループ「D」を、第4ディスクから第5編集物としてフレームのグループ「E」を、第4ディスクから第6編集物としてフレームのグループ「F」を、第5ディスクから第7編集物としてフレームのグループ「G」を、第5ディスクから第8編集物としてフレームのグループ「H」を決める。」

(C)「【0019】図2?7の例では、本発明は、コンピュータ・ファイルの形の編集物リストを発生するようにプログラムされたコンピュータ30を有する(したがって、編集物リストは、コンピュータ30により図2に示すような3.5インチのフロッピー・ディスケットに書込める。)。
【0020】使用者は、コンピュータ・モニタ35、マウス33、コンピュータ・キーボード31を使ってコンピュータ30とインタフェース(対話)する。コンピュータ30は6個のレーザビデオディスクユニット50を制御し、これらの各ユニット50は、レーザビデオディスク(これに未編集録画が記憶されている。)を動かす手段50b(図4及び5に示す。)と、レーザビデオディスクに(例えば、他のユニット50で再生する選択した録画を記憶させるため)1度書込む手段50aとを有するものがよい。ソニーのLVR-5000及びLVS-5000ビデオディスクユニットがそれぞれ、これらの手段50b,50aとして使用するのに適している。
【0021】ユニット50からのビデオ信号出力は、1つ以上のビデオモニタ52aに送られると共に、プログラムされたコンピュータ30の制御の下に動作するビデオスイッチャ46を介して1つ以上のビデオモニタ52bに送られる。図2では、簡単のため1つのビデオモニタ52aと1つのビデオモニタ52bのみを示したが、図4には全部で8つのビデオモニタ(52a,52b,52c,52d)を示す。ソニーのBVS-V1212ビデオルーティングスイッチャが、スイッチャ46として使用するのに適している。」

(D)「【0028】図4に示すように、上方3個のビデオディスクユニット50の各ビデオ再生出力は、ビデオモニタ群52a内の異なるビデオモニタに接続され、下方3個のビデオディスクユニット50の各ビデオ再生出力は、ビデオモニタ群52c内の異なるビデオモニタに接続される。各ビデオディスクユニット50の再生出力はまた、ビデオスイッチャ46に入力される。該スイッチャ46の出力は、最上方のユニット50内のビデオディスク記録ユニット50aに接続し、上記スイッチャ46のビデオ出力を該ユニット50a内のディスクに記録する。他のユニット50の1つ以上はまた、最上方ユニット50と同様に、該スイッチャ46に接続されたビデオディスク記録ユニットを有する。」

(E)「【0032】ビデオモニタ52a,52b,52c,52d、コンピュータモニタ35、音声スピーカ54、音声増幅器56、CDプレーヤ58、コンピュータ・キーボード31及びマウス33は、図6に示す操作卓ラックに設置するのがよい。図6の配置によれば、使用者は、編集の決定を本システムに入力するようマウスを操作しながら、ビデオモニタを見る(且つ注意を表示されたフレームに集中する)ことができる。そして、編集過程の他の時間に、使用者は、キーボードでコンピュータ指令をタイプしたり、マウスでコンピュータ指令を入力したりしながら、コンピュータ・モニタを見ることができて便利である。
【0033】また、6個のビデオディスクユニット50(それぞれレーザビデオディスク記録ユニット50a及び再生ユニット50bを含む。)、プログラムされたコンピュータ30、ブレークアウト回路ボックス38、ビデオ特殊効果ユニット42、ビデオスイッチャ46、音声スイッチャ48は、図7に示す装置ラックに設置するのがよい。
【0034】図8は、本発明のソフトウエアの機能を示す説明図である。図8に示すように、プログラムされたコンピュータ30は次の如きソフトウエアを含む。すなわち、本システムのビデオ及び音声周辺装置を制御するためのハードウエア駆動ソフトウエア(本システムに使用する周辺装置の各型に対する装置制御ルーチンを含む。)、シーン探索ソフトウエア(使用者が未編集録画を本システム内に取入れ、取入れた録画のリストを作成するのに便利)、編集決定ソフトウエア及び使用者インタフェース・ソフトウエアである。使用者インタフェース・ソフトウエアは、使用者がマウス33又はキーボード31を使って入力する指令に応じて他のシステム・ソフトウエアにアクセスでき、且つコンピュータ・モニタ35の画面に図9に示す形式の表示を発生できるものである。
【0035】シーン探索ソフトウエアは、使用者が2つの方法のどちらかにより未編集録画を本システムに取入れることを容易にするものである。その方法は、未編集録画がビデオテープ又はビデオディスクのどちらに記憶されているかによって決まる。まず、使用者がビデオテープに記憶された未編集録画からスタートする場合、シーン探索モジュールは、使用者が個々のビデオテープの録画を取入れ(録画再生用にビデオテーププレーヤが本システムに接続されている場合)、再生されている録画のフレームに「入」及び「出」をマークし、マークした録画をビデオディスクにコピーできるようにする(各コピーには、原ビデオテープ録画の最初及び最後のフレームのタイムコードのみならず、新ビデオディスク録画の最初及び最後のフレームのタイムコードをも記憶させる)。或いは、使用者がビデオディスクに記憶された未編集録画からスタートする場合、シーン探索モジュールは、使用者に該録画のうち所望の録画のフレームに「入」及び「出」をマークさせ、マークした各録画に「入」及び「出」(最初及び最後)のフレームのタイムコードを記憶させる(すなわち、シーン探索モジュールではマークした録画を取入れ(記憶す)る。)。
【0036】シーン探索モジュールはまた、使用者に(キーボード31を用いて)取入れた録画の説明を入力させ、使用者が入力した説明を記憶させる。また、シーン探索モジュールは、使用者が取入れた録画の説明を訂正したり、選択した録画をシーン探索データベース(このデータベースは、取入れた録画のアドレス及び説明を含む。)に加えたり或いはこれから削除したりできるようにする。
【0037】編集決定ソフトウエアは、図8に示すように「第1カット」モジュール、「同期ロール」モジュール、「見直し修正」モジュール及び「編集物リスト管理」モジュールを含む。第1カットモジュールは、使用者が取入れた未編集録画から編集物リストを容易に作成できるようにする。編集物リストは、該リスト上の編集物間の接合を決めるタイムコードと、各接合の種類(すなわちワイプ、ディゾルブ、フェード又は単純カット)を決めるコードと、該リスト上の編集物の使用者が入力した説明とを含む。」

図2には、ビデオディスクユニット50とコンピュータ30とが接続されていることが示されている。

ここで、上記摘記事項(B)には「各テープ(又は映画フィルム片)は、レーザビデオディスクに移(コピー)して本発明のビデオディスク再生ユニットに挿入できるようにする。」と記載され、同(E)の「6個のビデオディスクユニット50(それぞれレーザビデオディスク記録ユニット50a及び再生ユニット50bを含む。)」との記載、及び図2,図5からみて、レーザビデオディスクはビデオディスクユニット50の再生ユニット50bに挿入されるものと認められる。
そして、同(E)には、「使用者がマウス33又はキーボード31を使って入力する指令に応じて他のシステムソフトウェアにアクセスでき」ること、及びシーン探索ソフトウェアは「未編集録画を本システムに取り入れること」、編集決定ソフトウェアは「取り入れた未編集録画から編集物リストを容易に作成できる」ことが開示されているから、例えば「使用者がビデオディスクに記憶された未編集録画からスタートする場合」は、図2からみて、コンピュータ30は、「マウス33又はキーボード31を使って入力する指令に応じて、ビデオディスクユニット50から未編集録画を読み出して編集物リストの作成を行うこと」は明らかである。

これらの記載事項及び図面の内容を総合すると、刊行物1には、
「未編集録画が記憶されたレーザビデオディスクを挿入したビデオディスクユニット50と、
未編集録画を取り入れて編集物リストを作成するソフトウェアを含むコンピュータ30とを有するオフライン編集システムであって、
上記ビデオディスクユニット50、上記コンピュータ30は接続されており、
マウス33又はキーボード31を使って入力する指令に応じて、
上記コンピュータ30は、上記ビデオディスクユニット50から未編集録画を読み出して編集物リストの作成を行うことを特徴とするオフライン編集システム。」
という発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。

刊行物1発明の「未編集録画」は、レーザビデオディスクに記憶され、外部からレーザビデオディスクを介してオフライン編集システムに取り入れられるから、本願補正発明の「外部から入力された映像データ」に相当する。
また、刊行物1発明の「ビデオディスクユニット50」は、刊行物1の段落番号【0028】に記載されているように、各ビデオディスクユニット50のビデオ再生出力を、ビデオスイッチャを介して、最上方のビデオディスクユニット50内のビデオ記録ユニット50a内のディスクに記録するから、本願補正発明の「映像データを記録する映像データ記憶装置」に相当する。
そして、編集物リストの作成は編集の一種であるから、刊行物1発明の「未編集録画を取り入れて編集物リストを作成するコンピュータ30」は、本願補正発明の「映像データを読み出して編集を行う編集制御装置」に相当し、刊行物1発明における「編集物リストの作成を行う」という動作は、本願補正発明の「編集を行う」という動作に相当する。
さらに、刊行物1発明の「オフライン編集システム」は、「ビデオディスクユニット50」と「未編集録画を取り入れて編集物リストを作成するコンピュータ30」とを有し、編集を行い、この「ビデオディスクユニット50」は、刊行物1の段落番号【0028】に記載されているように、各ビデオディスクユニット50のビデオ再生出力を、ビデオスイッチャを介して、最上方のビデオディスクユニット50内のビデオ記録ユニット50a内のディスクに記録するから、本願補正発明の「映像データ記録再生システム」に相当する。
そして、本願補正発明は「イーサネットでなるコンピュータネットワークを介して供給される制御命令に基づいて、上記編集制御装置が上記映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行い」、一方、刊行物1発明は「マウス33又はキーボード31を使って入力する指令に応じて」、編集制御装置が映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行うから、両者は「供給される制御命令」に基づいて、編集制御装置が映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行う点で一致する。

そうすると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「外部から入力された映像データを記録する映像データ記憶装置と、
映像データを読み出して編集を行う編集制御装置と
を有する映像データ記録再生システムであって、
上記映像データ記憶装置、上記編集制御装置は接続されており、
供給される制御命令に基づいて、上記編集制御装置は、上記映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行う
ことを特徴とする映像データ記録再生システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
[相違点1]
本願補正発明では「映像データ記憶装置」、「編集制御装置」が「イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続されて」いるのに対し、刊行物1発明では、どのように接続されているのかが明らかでない点。

[相違点2]
本願補正発明において、「制御命令」は、「イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して」供給されるのに対して、刊行物1発明では、「マウス又はキーボードにより」供給される点。

(4)判断
[相違点1]について
特開平4-237381号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。

「【0007】
【作用】本発明に係る動画像編集処理装置が適用されるシステムは、図1に示すように、通信ネットワーク1、動画像ファイルサーバ2、ワークステーション3、動画像編集ワークステーション6からなる。動画像ファイルサーバ2は動画像記憶部21と通信部22を有し、ワークステーション3は編集指示部31、操作入力部32、画像表示部33、通信部34を有し、動画像編集ワークステーション6は動画像編集部61、操作入力部62、動画像表示部63、通信部64を有している。
【0008】このシステムにおいて、動画像は、主として動画像ファイルサーバ2に保存されている。動画像ファイルの内部構成は、図2に示すように、画像サイズ,色空間等の属性12と、動画像データ13と、そしてリンク情報14からなり、これらに予めインデックス11を付けたことを特徴としている。このような構成の複数の動画像ファイルを想定する。
【0009】本発明では、このインデックス情報を用いて編集操作手段により動画像の編集操作を行う。」

「【0020】なお、第1図に示したシステムには、動画像ファイルサーバ2、ワークステーション3および動画像編集ワークステーション6がそれぞれ1つであるものを示したが、これらの数に制限はなく、複数であってもよい。また、通信ネットワーク1は、同軸ケーブルを用いるイーサネット(Ethernet)に限らず、たとえばFDDI(光ファイバ100MHzネットワーク)や,無線などを用いることができる。」

また、特開平6-119400号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。

「【0013】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は本発明の一実施例に係る画像データファイリング装置の概略構成を示すブロック図であり、図2は本発明の要部であるバックアップ/リカバリ制御部の構成を示すブロック図である。」

「【0016】通信制御部4は、装置に接続されている通信デバイス13に対する装置制御等を行なうものである。通信デバイス13には所定の通信媒体14が接続されており、その通信媒体14に接続されている他の装置、例えば、画像作成装置や画像編集装置等との間でデータの授受を行なう。通信媒体14としては、例えば、公衆回線やイーサネットケーブル、光ファイバあるいは無線等があり、通信デバイス13は、その通信媒体14に応じた機器、例えば、通信媒体14が公衆回線であればモデム、イーサネットケーブルであればトランシーバ等で構成される。このような通信デバイス13と通信媒体14とに応じて、通信制御部4は所定のプロトコルに従って他の装置との通信を行ない、受信したデータをシステム制御部2に与えたり、システム制御部2から与えられたデータを他の装置に送信する等を行なう。」

「【0021】アプリケーションプログラム部7は、装置の提供している機能、例えば、光磁気ディスク16に記憶されている画像データを検索して、検索した画像データを他の装置に送信したり、あるいは、他の装置から画像データを受信し、受信した画像データを所定の光磁気ディスク16に記憶するために、管理情報にデータの登録を行なう等の各種のアプリケーションプログラムによって構成されている。例えば、システム制御部2から、光磁気ディスク16に記憶されている画像データを検索して、検索した画像データを他の装置に送信するプログラムが起動されると、システム制御部2を介して、光磁気ディスク制御部5や通信制御部4等を起動しながら処理を実行する。」

「【0024】図3は上述の画像データファイリング装置のハードウエア構成を示しているが、H/D18には管理情報以外にも、上述した処理制御部1の各部の処理を実行する処理手順(プログラム)が予め記憶されており、それらのプログラムはシステム起動時にH/D18からCPUメモリ19に読み出され、入力装置11から入力されたオペレータの指示等に従って所定のプログラムがCPU20で実行されるように構成されている。なお、上述した入力装置11、出力装置12、通信デバイス13、オートチェンジャ装置15、H/D18は、CPUメモリ19、CPU20とともにバス21を介して接続されている。」

これら周知例1、2に記載のように、「データを記憶する装置(「動画像ファイルサーバ2」、「画像データファイリング装置」)とデータを編集する装置(「編集指示部31を有するワークステーション3」、「画像編集装置」)とを、イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続すること」は、本願の出願時において周知(以下、「周知技術」という。)であったものと認められる。
そうすると、刊行物1発明において、映像データ記憶装置と編集制御装置とを接続するにあたって、上記周知技術を用いて、イーサーネットでなるコンピュータネットワークを介して接続することは、当業者であれば適宜なし得た設計事項である。

[相違点2]について
イーサネットを介して制御命令を供給することは例を挙げるまでもなく一般的に行われていることであるから、刊行物1発明において、編集制御装置に制御命令を供給するにあたって、マウス又はキーボードにより供給する方法に代えて、イーサーネットを介して制御命令を供給する方法を採用することは、当業者であれば適宜なし得た設計事項である。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も、刊行物1発明及び上記周知技術から予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年12月27日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)。は、平成17年9月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「外部から入力された映像データを記録する映像データ記憶装置と、映像データを読み出して編集を行う編集制御装置とを有する映像データ記録再生システムであって、
上記映像データ記憶装置、上記編集制御装置はコンピュータネットワークを介して接続されており、上記コンピュータネットワークを介して供給される制御命令に基づいて、
上記編集制御装置は、上記映像データ記憶装置から映像データを読み出して編集を行うことを特徴とする映像データ記録再生システム。」

(1)刊行物1
刊行物1の記載事項は、前記「2.平成17年12月27日付けの手続補
正についての補正却下の決定」の「(2)刊行物の記載」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.平成17年12月27日付けの手続補正について」の「(1)補正後の本願発明」で検討した本願補正後の請求項1に係る発明と対比すると、「イーサーネットでなる」との限定を省いたものと認められる。
そうすると、本願発明に包含される本願補正発明が、前記「2.平成17年12月27日付けの手続補正について」の「(4)判断」に記載したとおり、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上の通り、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-27 
出願番号 特願2003-286054(P2003-286054)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 貴俊  
特許庁審判長 江嶋 清仁
特許庁審判官 桑原 清
和田 志郎
発明の名称 映像データ記録再生システム、映像データ記録再生方法、編集制御装置及び映像データ記憶装置  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  

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