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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B64G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B64G
管理番号 1189475
審判番号 不服2006-14708  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-12 
確定日 2008-12-12 
事件の表示 特願2004-170559号「特殊宇宙飛行機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-324763号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成16年5月12日の出願であって、平成18年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。当審において、平成20年4月17日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、請求人は平成20年5月7日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)を行った。
本願は「特殊宇宙飛行機」に関するものと認められ、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3は以下のとおりとなった。
「【請求項1】
重力を脱するには特殊な動力が必要なため、液体水素を燃料に化学反応し、威力を高めるために特殊反射鏡で同方向に出し、微量でも反応しやすいように図2-1のように特殊管を使用した所、微量の反応でエネルギ-を最大に得られる炉心動力、そしてその動力の向きが縦方向に変わり、横に変わるように支点を造り、垂直上昇や減速のために進行と逆の力で制動可能にし、燃料注入にハッチを付けた特殊宇宙飛行機。
【請求項2】
風や高速飛行、着陸後等に翼が変化できると便利なため翼の根が軸になり、左右の翼が同方向にも、上下差になって逆方向にも回転でき風を発生させ動力故障しても翼の回転で上昇でき、高速時や着陸後に重ねて小さくできるようにした請求項1記載の特殊宇宙飛行機。
【請求項3】
無人でもコンピュ-タ操作できるよう機の2つのカメラが三角法で物体の位置・距離を割り出し減速や方向変換できるようにし、リモコン操作やマイクロ波送信で機からの発電も可能にした請求項1、2記載の特殊宇宙飛行機。」

2.当審の拒絶理由の概要
これに対して、当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
(理由A)本件出願において、提出日平成16年10月4日付け、提出日平成17年6月15日付け及び提出日平成17年8月8日付けの手続補正書による手続補正は、下記1?3の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(1)提出日平成16年10月4日付けでした手続補正書の、第4図及び第5図に記載された動力回転板の発明、第7図に記載された胴体内部に特殊バネを備えた発明は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内に全く記載しておらず、また、それらの構成を示唆する記載も全く認められない。
(2)提出日平成17年8月8日付けでした手続補正書には、請求項1においては特に、細い管に電子を帯電し弁で仕切るようにした点、及び「動く発電」として被災地に貢献できる点、請求項2においては特に、円盤の端に動力があれば円盤の回転で動力の向きが変わり、しかも静止器で力がほしい時に接し、力が不要な時は離し、瞬発的な力がほしい時は軽く接するなど力の調整もでき、回転のみで機に伝わらない時は発電として利用でき、縦に回転できるが左右ができないので円盤の先にドアのようにもう一つ支点をつくると全ての方向の力が出せるようにした点は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内に全く記載しておらず、また、それらの構成を示唆する記載も全く認められない。
(3)提出日平成17年6月15日付けでした手続補正書の請求項1には「炉心動力という、物質と反物質とを対消滅反応させると莫大なエネルギーが発する」と記載されているが、「物質と反物質とを対消滅反応させる」ということは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内に全く記載しておらず、また、それらの構成を示唆する記載も全く認められない。(願書に最初に添付した明細書には「液体水素を燃料に化学反応しヘリウムになる際、莫大なエネルギーが発する」(核融合反応)が記載されているが、この「核融合反応」は「物質と反物質の対消滅反応」と別概念の反応であるから、「物質と反物質の対消滅反応」については願書に最初に添付した明細書に記載された範囲内の事項、または示唆された事項とはいえない。)
(理由B)本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明と、請求項2乃至請求項8に係る発明とは、下記4の点で「同一の又は対応する特別な技術的特徴」を有しておらず、この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たさない。

(4)請求項1に記載される発明の技術的特徴とするところは、「炉心動力・・・特殊反射鏡、特殊管を使用した」ものであり、請求項2に記載される発明の技術的特徴とするところは、「動力自体の向きが変わったらどうかと・・・胴体横に動力をつける」ことであり、請求項3に記載される発明の技術的特徴とするところは、「宇宙空間の水素が入る・・・ハッチは動力前部にあるが・・・機首先端にもある」であり、請求項4に記載される発明の技術的特徴とするところは、「アームが伸びて手のように自分の傷を治す器」であり、請求項5に記載される発明の技術的特徴とするところは、「回転可能な左右の翼」であり、請求項6に記載される発明の技術的特徴とするところは、「胴体着陸可能」な点であり、請求項7に記載される発明の技術的特徴とするところは、「パラシュートを備えた」点であり、請求項8に記載される発明の技術的特徴とするところは、「カメラを用いた無人操縦」であると認められる。したがって、請求項1に係る発明と、請求項2乃至請求項8に係る発明とは、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しておらず、この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たさない。

(理由C)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記5,6の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号及び第4項に規定する要件を満たしていない。

(5)特許法第36条第4項について
本願請求項1に係る発明は、水素の原子核同士を融合させ、より重い原子核であるヘリウムに変える化学反応(核融合)を用いることで推力を生み出すと共に、「特殊反射鏡」(段落【0007】において「溶けにくい鏡」と説明)を利用して、同じ方向に推力を発生させるものであると考えられる。 しかしながら、一般的に核融合反応は、2つの原子核同士を高速のスピードで衝突させて融合させるものであり、前記スピードを得るために水素を1億度以上の温度に加熱する必要があるものとされる。
すると、まず、核融合可能な炉を提供することが困難であることが本願出願時における技術常識であり、さらに、「溶けにくい鏡」だけの記載だけでは、同じ方向に推力を発生させることを実現させるための一般的な解決手段を教示することにはならない。(核融合にて発生した光子を同じ方向に出す高温でも溶けない特殊反射鏡は、本件出願の明細書及び図面に記載された事項によってでは、その実施が達成されるものとは認められない。)
したがって、本件出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(6)特許法第36条第6項第2号について
特許請求の範囲には、特許を受けようとする発明が明確に記載されていなければならず、本件出願の特許請求の範囲の記載には技術的でない事項が記載されており、全体として発明に属する具体的な事物の範囲が不明確であり、その前提となる、発明を特定するための事項が明確に記載されているものとはいえない。

3.当審の判断
(1)特許法第17条の2第3項(理由A)について
イ.本件補正により補正された明細書(以下「補正明細書」という。)の「発明の詳細な説明」における「特殊反射鏡」の「鏡は溶けないよう高純度で半円型、熱を逃がすよう裏に金属を入れる。(詳細な説明の項【0007】)の記載は、出願当初の明細書の「特殊反射鏡(研磨99.99%以上の溶けないもの)」(詳細な説明の項【0004】)の記載に基づいて補正するものであるが、補正後の「高純度で、熱を逃がすよう裏に金属を入れる」という技術事項は出願当初の明細書に記載されておらず、また同明細書の記載から自明な事項とも認められない。

ロ.補正明細書の「発明の詳細な説明」における「炉心動力」の「炉心動力と名付け水素以外でもEを効率良く出せる」(詳細な説明の項【0007】)、「1分子ずつ反応し効率良く力に変える直接的動力の発明で、僅かの元素で莫大なエネルギ-を出せ」(詳細な説明の項【0009】)の記載は、出願当初の明細書の「液体水素を燃料に化学反応しヘリウムになる際、莫大なエネルギーが発する」(特許請求の範囲【請求項1】)、「図2-1は動力のしくみで、液体水素を少しずつ炉心へ注入しヘリウムに変わる際莫大なE(エネルギー)が発生する」(詳細な説明の項【0004】)の記載に基づいて補正するものであるが、補正後の「水素以外でもEを効率良く出せる」及び「1分子ずつ反応し効率良く力に変える直接的動力」という技術事項は出願当初の明細書に記載されておらず、また同明細書の記載から自明な事項とも認められない。
したがって、本件補正は、上記イ及びロの点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)特許法第36条第4項(理由C) について
補正明細書の「微量の反応でエネルギ-を最大に得られる炉心動力」及び「特殊反射鏡」の記載は、補正明細書の詳細な説明に当業者がその実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
すなわち、本件補正における「微量の反応でエネルギ-を最大に得られる炉心動力」は、液体水素を燃料に化学反応しさせて、「特殊反射鏡」(詳細な説明の項【0007】で「鏡は溶けないよう高純度で半円型、熱を逃がすよう裏に金属を入れる。」と説明)を利用して、同方向に出すものであるが(特許請求の範囲【請求項1】)、微量の反応でエネルギ-を最大に得られる液体水素を燃料にする化学反応は、詳細な説明では「水素を少しずつ炉心へ注入し反応」「水素が何に変化するかは不明だが従来の間接的Eとは比べられない力で、炉心動力と名付け水素以外でもEを効率良く出せる」(詳細な説明の項【0007】)や「1分子ずつ反応し効率良く力に変える直接的動力の発明で、僅かの元素で莫大なエネルギ-を出せ少量でも地球を脱せる」(詳細な説明の項【0009】)と記載されている。
一般的に、本願出願時において、液体水素を燃料に化学反応させ、僅かの元素で莫大なエネルギ-を出させて地球を脱する動力を提供することが困難であることは技術常識であり、さらに、「特殊反射鏡」は、液体水素を燃料に化学反応させて僅かの元素で莫大な、地球を脱するエネルギ-に対して「溶けないよう高純度で半円型、熱を逃がすよう裏に金属を入れる」(詳細な説明の項【0007】)と記載されているのみで、具体的な解決手段を記載しているものとは認められず、本件出願の明細書及び図面に記載された事項によってでは、その実施が達成されるものとはいえない。
したがって、本件出願の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

4.むすび
上記のとおり、本願は、特許法17条の2第3項及び第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-02 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-21 
出願番号 特願2004-170559(P2004-170559)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (B64G)
P 1 8・ 55- WZ (B64G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 悟史  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 寺本 光生
柴沼 雅樹
発明の名称 特殊宇宙飛行機  

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