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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1190408
審判番号 不服2007-23756  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-30 
確定日 2009-01-08 
事件の表示 特願2002-337135「遊技機及び遊技機用表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-167018〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
理 由

第1 手続の経緯

本願は平成14年11月20日に出願されたものであって、平成19年7月25日付けで拒絶の査定がされたところ、これを不服として同年8月30日付けで本件審判請求がされるとともに、同年9月27日付けで明細書についての手続補正がされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成19年9月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正前後における特許請求の範囲の記載

平成19年9月27日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、明細書の特許請求の範囲を補正するものであり、補正の前後における特許請求の範囲の記載は、下記のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
複数の図柄が外周面に描かれた回転自在なリールと、
停止ボタンの押動操作が検出された位置に基づいてリールの回転を停止するモータと、
前記リールを照らすリールバックランプを備えた遊技機であって、
前記リールの前面に設けられ、画像が表示される表示部と、
前記リールバックランプとは別体であって、前記表示部を照明するバックライトと、
前記表示部に遊技に関する画像を表示させる表示制御手段と、を備え、
前記リールバックランプは、電源投入状態においては、常時前記リールを照らし、
前記表示制御手段は、背後の前記リールの図柄が視認可能なように、前記表示部に相対的に透過性の高い画像を表示することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
画像ROMに記憶されている画像データを利用して一時的に形成された画像信号を前記表示部に適した拡大変換画像信号として拡大変換するスケール回路を備え、
前記表示制御手段は、前記スケール回路により拡大変換された拡大変換画像信号に基づいた画像を表示させることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記表示部は透明液晶表示装置から構成され、
前記表示制御手段と前記リールバックランプとに独立的に電源供給する電源供給手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記表示制御手段が設けられた前記表示部と、前記表示制御手段から供給される画像信号を受け取り、前記表示部に画像を表示させるとともに、当該画像信号が異常である場合には、前記表示部を一定の状態に制御する画像状態維持手段が設けられた画像状態維持部と、前記表示制御手段と前記画像状態維持部とを独立的に電源供給する電源供給手段と、を備えたことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の遊技機。」(ただし、下線は省略した。)

(補正後)
「【請求項1】
複数の図柄が外周面に描かれた回転自在なリールと、
停止ボタンの押動操作が検出された位置に基づいてリールの回転を停止するモータと、
前記リールを照らすリールバックランプを備えた遊技機であって、
前記リールの前面に設けられ、画像が表示される表示部と、
前記リールバックランプとは別体であって、前記表示部を照明するバックライトと、
前記表示部に遊技に関する画像を表示させるための各種の演出態様を決定する表示制御手段と、
前記表示制御手段から供給される画像信号を受け取り、前記表示部に画像を表示させる画像状態維持手段と、
電源装置からの電源を集中的に受け取り、分配する電源中継部が設けられ、前記表示制御手段と、前記画像状態維持手段とに独立的に電源供給する電源供給手段と、
を備え、
前記リールバックランプは、電源投入状態においては、常時前記リールを照らし、
前記バックライトは、電源投入状態においては、常時前記表示部を照らし、
前記表示制御手段は、背後の前記リールの図柄が視認可能なように、前記表示部に相対的に透過性の高い画像を表示し、
前記画像状態維持手段は前記表示制御手段から供給される画像信号が異常である場合には、前記表示部を一定の状態に制御することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記画像状態維持手段は、画像ROMに記憶されている画像データを利用して一時的に形成された画像信号を前記表示部に適した拡大変換画像信号として拡大変換するスケール回路を備え、
前記表示制御手段は、前記スケール回路により拡大変換された拡大変換画像信号に基づいた画像を表示させることを特徴とする請求項1記載の遊技機。」

2.補正事項及び補正目的の検討

補正前の請求項数が4、補正後の請求項数が2であるところ、補正前のいずれかの請求項が削除された点については、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項1号に規定する、第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とするものと認める。ここで、削除されたのが補正前のいずれの請求項であるかということ自体は、単独で平成18年改正前特許法第17条の2第4項1号-4号に規定する補正目的からの逸脱を生じるものではない一方、単に補正前の請求項1-4からいずれかの請求項を削除するのみでは補正後の請求項1-2とならないから、請求項の数が減少していることのみをもって、本件補正が前述した補正目的要件を満たすということはできない。
そのため、以下では補正前の請求項1-4のいずれかを基礎として、補正後の請求項1及び2になされた補正が、前述した補正目的要件を満たすかについて、検討する。

まず、本件補正について請求人は、「請求項1は、請求項3、4の構成を加えて独立項としました。すなわち、・・・・と、遊技機の構成を限定的に減縮することを目的とした補正を行いました。」(平成19年9月27日付手続補正書(方式)の第3頁18-38行)と主張しているが、本件補正後の請求項1は、補正前の請求項3に記載される事項を有していない。また、本件補正後の請求項1は、補正前の請求項2に記載される事項も有していない。そのため、本件補正後の請求項1を、補正前の請求項2または3を限定したものとみることはできない。加えて、補正前の請求項2または3に記載した事項をまるごと削除することは、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明とも認めることはできない。
そのため、本件補正による請求項1の補正は、補正前の請求項2または3を基礎と解した場合、平成18年改正前特許法第17条の2第4項1号、2号、3号、4号のいずれを目的としたものということもできない。

次に、上記した請求人の主張は、本件補正による請求項1の補正が、補正前の請求項1を基礎として、平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号の規定に適合するとの主旨と解することができるから、その妥当性につき検討する。
平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号の規定に適合するには、補正が「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明と、その補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」という要件(以下、「(第36条第5項の・・・・課題が同一であるものに限る)」の部分を「限定的減縮」という。)を満たさなければならない。
そして、補正前後の請求項1を比較すると、補正事項は、
(1-あ)「前記表示部に遊技に関する画像を表示させる」と「表示制御手段」の間に、「ための各種の演出態様を決定する」を挿入したこと、
(1-い)「前記表示制御手段から供給される画像信号を受け取り、前記表示部に画像を表示させる画像状態維持手段と、」を備えることを追加したこと、
(1-う)「電源装置からの電源を集中的に受け取り、分配する電源中継部が設けられ、前記表示制御手段と、前記画像状態維持手段とに独立的に電源供給する電源供給手段と、」を備えることを追加したこと、
(1-え)「前記バックライトは、電源投入状態においては、常時前記表示部を照らし、」を追加したこと、
(1-お)「前記画像状態維持手段は前記表示制御手段から供給される画像信号が異常である場合には、前記表示部を一定の状態に制御する」を追加したこと、
となる。
ここで(1-あ)については、「表示制御手段」の定義を、「画像を表示させる」ことからそのための「各種の演出態様を決定する」ことへと変えているから、発明を特定する事項を変更しているのであって、厳密には限定しているものではない。ただし、補正後の請求項1におけるその他の箇所の記載も含めて勘案すると、「表示制御手段」が有する「画像を表示させる」機能が「各種の演出態様を決定する」ことも含むことを限定したと解することもできるので、この点のみによって限定的減縮でないと判断することは控えることとする。(1-え)については、補正前から存在した「前記バックライト」の動作を限定しており、この点については限定的減縮を目的とするものと認める。
しかしながら、(1-い)は補正前にはなかった「画像状態維持手段」を新たに追加するものであり、また(1-う)は、電源供給自体については補正前に記載がなくとも当然に行われていたものとしても、新たに追加された「画像状態維持手段」との電源供給関係を指定するものであり、(1-お)は新たに追加された「画像状態維持手段」が「異常」に対処する機能の記載である。これに対して補正前の請求項1には、「画像維持手段」あるいはそれに対応する手段は記載されておらず、またかような手段により異常に対処するという課題は示されていないから、(1-い)(1-う)(1-お)の補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項のいずれを限定したものにも該当しない。また、補正前後の請求項1において、「産業上の利用分野」までは変更されていないものの、補正前には示されていなかった新たな課題が補正後には追加されているから、補正前の請求項1に記載される「発明の解決しようとする課題」と補正後の請求項1に記載される発明の「解決しようとする課題」とは、同一ではない。
そのため、(1-い)(1-う)(1-お)の補正事項は、限定的減縮を目的とするとは認められない。そして、このような新たな手段と課題との追加を行う(1-い)(1-う)(1-お)の補正事項は、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。
したがって、本件補正による請求項1の補正は、補正前の請求項1を基礎と解した場合にも、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項1号、2号、3号、4号のいずれを目的としたものともいうことができない。

続いて、本件補正による請求項1の補正が、補正前の請求項4を基礎と解すれば、補正目的要件を満たすかについて検討する。
補正前の請求項4と補正後の請求項1を比較すると、補正事項は、
(4-あ)補正前請求項1に記載した「前記表示部に遊技に関する画像を表示させる」と「表示制御手段」の間に、「ための各種の演出態様を決定する」を挿入したこと、
(4-い)補正前請求項4における「前記表示制御手段から供給される画像信号を受け取り、前記表示部に画像を表示させるとともに、当該画像信号が異常である場合には、前記表示部を一定の状態に制御する画像状態維持手段・・・・・を備えた」を、「前記表示制御手段から供給される画像信号を受け取り、前記表示部に画像を表示させる画像状態維持手段と、・・・を備えた」との記載、及び「前記画像状態維持手段は前記表示制御手段から供給される画像信号が異常である場合には、前記表示部を一定の状態に制御する」との記載に分離したこと、
(4-う)補正前請求項4における「・・・・が設けられた画像状態維持部と」を備えるとの記載が、削除されたこと、
(4-え)補正前請求項4における「前記表示制御手段と前記画像状態維持部とを独立的に電源供給する電源供給手段と、」なる記載が、「電源装置からの電源を集中的に受け取り、分配する電源中継部が設けられ、前記表示制御手段と、前記画像状態維持手段とに独立的に電源供給する電源供給手段と、」へと変更されたこと、
(4-お)補正前請求項4における「前記表示制御手段が設けられた前記表示部と、」なる記載が削除されたこと、
(4-か)「前記バックライトは、電源投入状態においては、常時前記表示部を照らし、」を追加したこと、
(4-き)補正前請求項4において、請求項2または3を引用する部分を削除したこと、
となる。
ここで、(4-あ)(4-か)については、(1-あ)(1-え)について既に述べたとおりであり、補正目的違反を生じさせる事項には該当しない。また、(4-い)は従属形式の請求項を独立請求項へとするに際しての記載の整理であり、(4-き)による択一肢の一部削除と合わせて、限定的減縮を目的とするものと認める。
しかしながら、(4-う)については、補正前に存在した「画像状態維持部」という発明特定事項を削除しており、限定的減縮を目的としたものということはできない。そして、補正前における「画像状態維持手段」が「画像状態維持部」に設けられているという関係は不明りょうではないから、誤記の訂正あるいは明りようでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。
また、(4-え)は、「独立的に電源供給する電源供給手段」が「電源装置からの電源を集中的に受け取り、分配する電源中継部」を備えるとした部分については、発明を限定したと言い得るにしても、「前記表示制御手段と・・・独立的に電源供給する」対象を「前記画像状態維持部」から「前記画像状態維持手段」へと変更した点においては、発明を拡張している。すなわち、補正前においては(4-う)の記載事項と合わせて、電源供給が「表示制御手段」と「独立的」でなければならない範囲は、「画像状態維持手段」を設けた「画像状態維持部」の全体であったのに対して、補正後においては、「画像状態維持手段」を除いては電源供給が「独立的」という要件が問われないこととなるから、この点において発明が拡張されている。そのため、この点の補正は、限定的減縮を目的とするものとは認められない。そして、補正前において「画像状態維持手段」が「画像状態維持部」に設けられ、「画像状態維持部」への電源供給が「表示制御手段」とは独立的に行われるという構成は明りょうであるから、この点の補正は、誤記の訂正あるいは明りようでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。
さらに、(4-お)についても、「表示制御手段」が「表示部」に設けられるという関係が発明特定要件でなくなるため、発明の拡張であり、補正前の当該関係自体は特段不明りょうというわけでないから、誤記の訂正あるいは明りようでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。
したがって、本件補正による請求項1の補正は、補正前の請求項4を基礎と解しても、平成18年改正前特許法第17条の2第4項1号、2号、3号、4号のいずれを目的としたものともいうことができない。

以上のとおり、本件補正は、いずれかの請求項を削除したという限度においては請求項の削除という目的を含んでいるが、補正前のいずれの請求項を基礎と解しても、補正後請求項1について、平成18年改正前特許法第17条の2第4項1号、2号、3号、4号のいずれにも該当しない補正事項を含んでいる。そのため、補正後請求項2についての補正事項を検討するまでもなく、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反しているから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されなければならない。

[補正の却下の決定のむすび]

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反しているから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されなければならない。

よって、補正の却下の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断

平成19年9月27日付け手続補正は当審において却下されたから、平成19年4月11日付けで補正された明細書及び図面に基づいて審理する。

1.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月11日付け手続補正により補正された明細書の、特許請求の範囲における【請求項1】の記載により特定されるものであり、その記載は先に「第2 補正の却下の決定」「1.補正前後における特許請求の範囲の記載」において、「(補正前)【請求項1】」として示したとおりである。

2.引用刊行物に記載される事項の認定

本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の理由に引用された特開2001-62032号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がされている。

ア.「複数の図柄表示部に夫々図柄をスクロール表示可能な図柄表示手段と、これら図柄表示部とその周囲部の前面側に配設された透明な前面パネルとを備えたスロットマシンにおいて、前記前面パネルの背面または背面近傍に、複数行複数列のドットを介してドットパターンで表示可能なマトリクス表示部を備えた光透過性のある情報表示パネルと、前記情報表示パネルの表示色に関連した色で発光可能で前記図柄表示手段を照明する照明手段と、を備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ.「ここで、前記各図柄表示部に設けられた回転リールの外周部を半透明に構成し、前記照明手段を各回転リールの内側に設けた場合(請求項1に従属の請求項2)には、各回転リール内側の空きスペースを有効活用して照明手段をコンパクトに設けることができる。しかも、照明手段からの光を、半透明である回転リールの外周部を介して広角度に且つ均一に拡散させて、情報表示パネルにバックライトとして照明させることができる。」(段落【0014】)
ウ.「以下、本発明の実施の形態について図面に基いて説明する。本実施形態は3リール式のスロットマシンに本発明を適用した場合の一例である。このスロットマシンは、メダルを投入してからスタートレバーを操作することで3つの回転リールを回転させ、ストップボタンを操作して回転リールを停止させたときの入賞ラインに対応する3つの図柄の組合せによる入賞に応じてメダルを払い出す構成のものである。」(段落【0019】)
エ.「前記各回転リール5?7の外周部はポリエステルフィルムなどからなる半透明に構成され、各回転リール5?7の外周面には、「7」、「BAR 」、「スイカ」、「プラム」、「ベル」・・・などの複数種類の21個の図柄が所定間隔おきに1列状に印刷されている。回転リール5?7及びその外周面の複数の図柄、リール駆動モータ51?53などが図柄表示手段に相当し、各回転リール5?7のうちの前端部分の3つの図柄(図柄表示窓3a?3cから見える3つの図柄)を表示する部分が各図柄表示部5a?7aである。ここで、入賞ラインは、後述の情報表示パネル4に表示される。LED表示ランプや2桁の7セグメント数字を表示する7セグメント型表示器などは設けられておらず、LED表示ランプの代わりの表示と2桁の7セグメント数字の表示は、情報表示パネル4を介して表示される。」(段落【0021】)
オ.「即ち、これら3種類のLED34R,34G,34Bを組合せて発光させることで、赤、緑、青の光の3原色だけでなく、情報表示パネル4の発光色(黄橙色)と同系色である黄橙色の光、情報表示パネル4の発光色と補色関係にある光(例えば、青紫色)を、情報表示パネル4の背面側から照明可能になっている。更に、これ以外にも桃色や紫色、黄色等の複数色を択一的に発光して回転リール5の図柄を照明可能になっている。ここで、中パネル3全体が半透明に構成されているが、図柄表示窓3a?3cに対応する部分だけは部分的に透明に構成してある。」(段落【0029】)
カ.「次に、制御装置35に予め格納した複数の制御プログラムを介して達成される種々の機能について、図9の機能ブロック図により説明する。乱数発生手段60、乱数抽選手段61、抽選結果判定手段62、停止図柄選択手段63、図柄停止制御手段64、停止図柄判定手段65、更には、表示情報記憶手段66、表示情報選択手段67、情報表示制御手段68、照明切換え手段69、モータ駆動手段70、リール位置検出手段71等が設けられている。乱数発生手段60は、スタートレバー13の操作により3個の回転リール5?7が回転を始めたときに抽選用の乱数を発生させる。」(段落【0035】)
キ.「このように、前面パネル2の背面近傍に、3つの図柄表示部5a?7aよりも前方に、中パネル3の前面近傍に光透過性のある情報表示パネル4を設け、その情報表示パネル4に発光可能な多数行多数列のドットを介してドットパターンで表示可能なマトリクス表示部4aを設け、各図柄表示部5a?7aの回転リール5の内側に、3種類の発光ダイオード34R、34G、34Bを有する照明機構31を夫々設けたので、情報表示パネル4の背面側から情報表示パネル4にこの発光色と補色関係の青紫の光を照明することで、回転リール上の図柄を照明するのと同時に、マトリクス表示部4aに表示された、メダル投入で有効化された入賞ラインL1?L5や種々のアニメーションA1,A2や説明情報やメッセージ、リーチマークM5や大当たりマークM7などを明瞭に且つ際立たせて表示することができる。更に、ゲームを面白くして盛り上げることができ、スロットマシン1の性能を高めることができる。」(段落【0050】)
ク.「しかも、情報表示パネル4は光透過性を有するので、情報表示パネル4により表示が行われていても、この情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄や中パネル3の前面に印されたその他の絵や文字などの下地が見えなくなることもなく、情報表示パネル4による表示情報と下地の情報とを重ね合わせて見ることができる。」(段落【0052】)
ケ.「前記EL素子25の発光層を、ZnS(硫化亜鉛)以外の蛍光体で構成し、緑色や赤色や青色等、蛍光体特有の発光色に発光可能に構成してもよい。また、情報表示パネルに光の3原色(RGB)に発光可能な3枚のEL素子を組み込み、カラー画像を表示可能に構成してもよい。」(段落【0058】)
コ.【図2】には、円形の回転リール5の内部に照明手段34R、34G、34Bが設けられ、その前面に中パネル3が設けられ、その前面に情報表示パネル4が設けられた断面図が示されている。この断面図によれば、中パネル3に対して、中央の透明な図柄表示窓3aの背後部分に照明手段34R、34G、34Bが配置され、透明な図柄表示窓3a及び半透明な周辺部を含めた全面の前側に、情報表示パネル4が配置されている。

3.引用刊行物記載の発明の認定

記載事項ア.にあるとおり、引用例は「図柄表示手段」及び「光透過性のある情報表示パネル」を有する「スロットマシン」に関する。記載事項イ.及び記載事項コ.によると、「図柄表示手段」は「回転リール」であり、「情報表示パネル4」は「回転リール」に対して「前面」に設けられている。記載事項ウ.にあるとおり、この「スロットマシン」は「ストップボタンを操作して回転リールを停止させ」るものであり、記載事項エ.にあるとおり「回転リール5?7」には「その外周面の複数の図柄、リール駆動モータ51?53」が備わっている。
ここまでを整理して図番をまとめると、すなわち、引用例には「外周面に複数の図柄を備える回転リール5?7と、リール駆動モータ51?53と、前記回転リール5?7の前面に設けられ、光透過性のある情報表示パネル4を有し、ストップボタンを操作して回転リール5?7を停止させるスロットマシン」という技術事項が開示されている。

記載事項ア.のうち「図柄表示手段を照明する照明手段」は、記載事項イ.によると「前記照明手段」として「各回転リールの内側に設け」られており、記載事項コ.を参酌して図番34R、34G、34Bに該当するとともに、記載事項イ.に戻ると、その「照明手段からの光を、半透明である回転リールの外周部を介して広角度にかつ均一に拡散させて、情報表示パネルにバックライトとして照明」させている。
すなわち、引用例には「回転リール5?7を照明する照明手段34R、34G、34Bを各回転リール5?7の内側に備え、該照明手段34R、34G、34Bからの光を、半透明である回転リール5?7の外周部を介して広角度にかつ均一に拡散させて、情報表示パネル4にバックライトとして照明する」という技術事項が開示されている。

記載事項オ.よると、「情報表示パネル4」と「リール5」との間には、「全体が半透明に構成されているが、図柄表示窓3a?3cに対応する部分だけは部分的に透明」である「中パネル3」が存在する。記載事項カ.によると「制御装置35」が表示情報の記憶、選択、制御等を行っており、記載事項キ.によると「情報表示パネル4」に表示されるのは「アニメーション」や「説明情報」や「メッセージ」等、「ゲームを面白く」するものである。そして、記載事項ク.にあるとおり、「情報表示パネル4により表示が行われていても、この情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄や中パネル3の前面に記されたその他の絵や字」といった「下地の情報とを重ね合わせて見ることができる」ものである。
すなわち、引用例には「情報表示パネル4とリール5?7との間には、全体が半透明に構成されているが、図柄表示窓3a?3cに対応する部分だけは部分的に透明である中パネル3が存在し、制御装置35が表示情報の記憶、選択、制御等を行い、情報表示パネル4にはアニメーションや説明情報やメッセージ等、ゲームを面白くする情報が表示され、情報表示パネル4により表示が行われていても、この情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄や中パネル3の前面に記されたその他の絵や字といった下地の情報とを重ね合わせて見ることができる」という技術事項が開示されている。

以上をまとめると、引用例には、
「外周面に複数の図柄を備える回転リール5?7と、
リール駆動モータ51?53と、
前記回転リール5?7の前面に設けられ、光透過性のある情報表示パネル4を有し、
ストップボタンを操作して回転リール5?7を停止させるスロットマシンであり、
回転リール5?7を照明する照明手段34R、34G、34Bを各回転リールの内側に備え、
該照明手段34R、34G、34Bからの光を、半透明である回転リール5?7の外周部を介して広角度にかつ均一に拡散させて、情報表示パネル4にバックライトとして照明し、
情報表示パネル4とリール5?7との間には、全体が半透明に構成されているが、図柄表示窓3a?3cに対応する部分だけは部分的に透明である中パネル3が存在し、
制御装置35が表示情報の記憶、選択、制御等を行い、
情報表示パネル4にはアニメーションや説明情報やメッセージ等、ゲームを面白くする情報が表示され、情報表示パネル4により表示が行われていても、この情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄や中パネル3の前面に記されたその他の絵や字といった下地の情報とを重ね合わせて見ることができる、
スロットマシン」

なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

4.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定

本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明において「回転リール5?7」は、本願発明における「リール」に相当する。また、「リール駆動モータ51?53」を備えて回転自在であることは明らかであるから、「複数の図柄が外周面に描かれた回転自在なリール」を備えることは、本願発明と引用発明との一致点である。
引用発明における「リール駆動モータ51?53」は本願発明における「モータ」に相当し、引用発明における「ストップボタン」は本願発明における「停止ボタン」に相当する。また、引用発明において「ストップボタンを操作して回転リール5?7を停止させる」ことは、「スロットマシン」である以上、ボタンが操作された時の回転リール位置を基礎情報の1つとして、リールの回転を停止するモータ制御を行うことが明らかであるから、「停止ボタンの押動操作が検出された位置に基づいてリールの回転を停止するモータ」を備えることは、本願発明と引用発明との一致点である。
引用発明において、「各回転リール5?7の内側に備え」られて「回転リール5?7を照射」する「照明手段34R、34G、34B」は、本願発明における「前記リールを照らすリールバックランプ」に相当し、引用発明における「スロットマシン」は本願発明における「遊技機」に相当するから、「前記リールを照らすリールバックランプ」を備えた「遊技機」であることは、本願発明と引用発明との一致点である。
引用発明における「情報表示パネル4」は「アニメーション」等も表示するから、本願発明における「画像が表示される表示部」に相当する。そのため、「前記リールの前面に設けられ、画像が表示される表示部」を備えることは、本願発明と引用発明との一致点である。
引用発明において、「情報表示パネル4」は回転リール内に設けられた照明手段からの光により、「バックライト」として照明されているから、本願発明と引用発明とは「前記表示部を照明するバックライト」が存在するという限度で一致する。
引用発明において「情報表示パネル4」に表示される「アニメーション」等「ゲームを面白くする情報」は本願発明における「遊技に関する画像」に相当し、引用発明における「制御装置35」は表示の制御も行っており本願発明における「表示制御手段」に相当するから、「前記表示部に遊技に関する画像を表示させる表示制御手段」を備えることは、本願発明と引用発明との一致点である。
引用発明において「情報表示パネル4により表示が行われていても、この情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄」を「見ることができる」ことは、「背後の前記リールの図柄が視認可能なように、前記表示部に画像が表示される」という限度で、本願発明における「前記表示制御手段は、背後の前記リールの図柄が視認可能なように、前記表示部に相対的に透過性の高い画像を表示する」と一致する。

以上を整理すると、両者は

「複数の図柄が外周面に描かれた回転自在なリールと、
停止ボタンの押動操作が検出された位置に基づいてリールの回転を停止するモータと、
前記リールを照らすリールバックランプを備えた遊技機であって、
前記リールの前面に設けられ、画像が表示される表示部と、
前記表示部を照明するバックライトと、
前記表示部に遊技に関する画像を表示させる表示制御手段と、を備え、
背後の前記リールの図柄が視認可能なように、前記表示部に画像が表示されることを特徴とする遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明においては「前記表示部を照明するバックライト」として「前記リールバックランプとは別体」のものを備えるのに対して、引用発明においては「別体」のものを備えているか不明であること
<相違点2>
本願発明においては、リールバックランプがリールを照らすのが、「電源投入状態においては、常時」であるのに対して、引用発明においては「電源投入状態においては、常時」であるかは不明であること
<相違点3>
本願発明においては「前記表示制御手段」が「相対的に透過性の高い画像」を表示するという制御をするのに対し、引用発明では、制御手段が、相対的に透過性が高い画像を表示するという制御をするか否かは明らかでないこと

5.相違点の判断及び本願発明の進歩性
(1)相違点1について
引用発明においては、「該照明手段34R、34G、34Bからの光を、半透明である回転リール5?7の外周部を介して広角度にかつ均一に拡散させて、情報表示パネル4にバックライトとして照明」することが示されている一方、記載事項コ.の構造から情報表示パネル4に対するバックライト照明効果を検討すると、いかに半透明であるリールの外周部により光を拡散させたとしても、照明手段34R、34G、34Bからの距離も近く半透明部材がリール外周部のみである箇所に対して、距離が遠くなるうえに中パネル3の半透明部分をさらに介する箇所では、バックライト照明の強度が著しく低下することが明らかである。バックライト照明の強度における顕著な不均一は、記載事項ク.におけるような重畳表示を、中パネル3が半透明である部分においても行うことに不利であるから、そこにおける光量減衰を補うために、引用発明において、リールバックランプとは別体で表示部を照明するバックライトを設けることとし、相違点1に係る本願発明の構成を得ることは困難ではない。

(2)相違点2について
引用発明において、照明手段34は、回転リール5?7を照明するという役割を担うとともに、引用例における記載事項オ.にある如く、情報表示パネル4の表示色と同系色あるいは補色のいずれに切り換えるにせよ、発光はさせているのであるから、実質的には常時発光させるべきものと言い得る。そして、このような照明手段を、電源投入状態においては常時発光させることは、たとえば特開平11-114136号公報の【図3】(1)からも分かるように通常行われていることであるから、単なる設計事項と言わざるを得ない。

(3)相違点3について
引用例には、記載事項ケ.にある如く、情報表示パネル4をカラー表示可能とすることも示されているところ、その場合にはいずれの色によりバックライト照明を行っているにせよ、情報表示パネル4の表示画像たる色調及び輝度の両方を制御部が制御する必要がある。その際に、「図柄表示部5a?7aの図柄や中パネル3の前面に記されたその他の絵や字といった下地の情報とを重ね合わせて見ることができる」という引用発明の状態が適切に維持される程度に、「相対的に透過性が高い画像を表示」する制御を制御部に行わせることとし、相違点3に係る本願発明の構成を得ることは、適宜なし得る事項である。

(4)本願発明の進歩性
以上のとおり、相違点1-3に係る本願発明の構成を得ることは困難ではなく、また、そのようにして本願発明の構成を採用したことによる効果も、格別のものとは認められない。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-04 
結審通知日 2008-11-11 
審決日 2008-11-26 
出願番号 特願2002-337135(P2002-337135)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 574- Z (A63F)
P 1 8・ 56- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 571- Z (A63F)
P 1 8・ 573- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 有家 秀郎
小原 博生
発明の名称 遊技機及び遊技機用表示装置  
代理人 正林 真之  

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