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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800228 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H04M
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04M
審判 全部無効 特174条1項  H04M
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H04M
管理番号 1191070
審判番号 無効2006-80205  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-13 
確定日 2008-12-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3048964号発明「電話送受信ユニット及び移動体通信端末」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3048964号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3048964号の請求項2ないし6に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その6分の5を請求人の負担とし、6分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
(イ)本件特許第3048964号の請求項1?6に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)についての出願は、平成9年6月24日に特許出願され、平成12年3月24日に設定登録されたものである。

(ロ)その後、請求人は、平成18年10月13日に、本件の請求項1?6に係る特許について、無効審判を請求した。

(ハ)これに対して、被請求人は、平成18年12月29日差出で、訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、本件特許発明の明細書及び図面を訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおりに訂正しようとするものである。即ち、明細書及び図面を下記のとおり訂正することを求めるものである(下線は、訂正箇所を示す。)。

訂正事項a)特許請求の範囲の請求項1の、
「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから出力する音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、
前記電子回路を含み、移動体通信端末に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと、
前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で信号を入出力する入出力部とを有することを特徴とする電話送受信ユニット。」という記載を、
「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、
前記電子回路を含み、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと、
前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し、 1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にすることを特徴とする電話送受信ユニット。」という記載に訂正する。

訂正事項b)特許請求の範囲の請求項2の、
「基地局との間で信号を送受信するアンテナと、
音声信号を出力するスピーカと、
音声信号を入力するマイクと、
操作に基づいて操作信号を生成する操作部と、
表示信号に基づいて表示する表示部と、
請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、
前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で信号を入出力する入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末。」という記載を、
「基地局との間で信号を送受信するアンテナと、
通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、
入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、
操作に基づいて操作信号を生成する操作部と、
表示信号に基づいて表示する表示部と、
請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、
前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末。」という記載に訂正する。

訂正事項c)特許請求の範囲の請求項4の、
「音声信号を入力するマイクと、
音声信号を出力するスピーカと、
請求項3記載の移動体通信中継端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末。」という記載を、
「入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、
通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、
請求項3記載の移動体通信中継端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末。」という記載に訂正する。

訂正事項d)発明の詳細な説明の段落0008の、
「【課題を解決するための手段】上記目的は、アンテナにより受信される受信信号をスピーカから出力する音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、前記電子回路を含み、移動体通信端末に設けられたスロットに着脱可能に形成されたカートリッジと、前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で信号を入出力する入出力部とを有することを特徴とする電話送受信ユニットにより達成される。」という記載を、
「【課題を解決するための手段】上記目的は、アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、前記電子回路を含み、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと、前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し、1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にすることを特徴とする電話送受信ユニットにより達成される。」という記載に訂正する。

訂正事項e)発明の詳細な説明の段落0009の、
「また、上記目的は、基地局との間で信号を送受信するアンテナと、音声信号を出力するスピーカと、音声信号を入力するマイクと、操作に基づいて操作信号を生成する操作部と、表示信号に基づいて表示する表示部と、上記の電話送受信ユニットを装着するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で信号を入出力する入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末により達成される。」という記載を、
「また、上記目的は、基地局との間で信号を送受信するアンテナと、通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、操作に基づいて操作信号を生成する操作部と、表示信号に基づいて表示する表示部と、上記の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末により達成される。」という記載に訂正する。

訂正事項f)発明の詳細な説明の段落0010の、
「また、上記目的は、基地局との間で信号を送受信するアンテナと、上記の電話送受信ユニットを装着するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で信号を入出力する入出力部と、移動体通信端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末により達成される。」という記載を、
「また、上記目的は、基地局との間で信号を送受信するアンテナと、上記の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で信号を入出力する入出力部と、移動体通信中継端末用の移動体通信端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末により達成される。」という記載に訂正する。

訂正事項g)発明の詳細な説明の段落0011の、
「また、上記目的は、音声信号を入力するマイクと、音声信号を出力するスピーカと、上記の移動体通信中継端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信端末により達成される。また、上記の移動体通信端末において、前記移動体通信端末は、携帯電話機、簡易型携帯電話機、携帯情報通信端末、又はモバイルコンピュータであることが望ましい。」という記載を、
「また、上記目的は、入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、上記の移動体通信中継端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末により達成される。また、上記の移動体通信端末において、前記移動体通信端末は、携帯電話機、簡易型携帯電話機、携帯情報通信端末、又はモバイルコンピュータであることが望ましい。」という記載に訂正する。

訂正事項h)発明の名称について、
「電話送受信ユニット及び移動体通信端末」という記載を、
「電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末」という記載に訂正する。

訂正事項i)発明の詳細な説明の段落0027の、
「また、ボディ12内に設けられたバッテリ76からは、これらの電子回路に対して電力が供給される。このように、本実施形態によれば、上記のような機能を有する電子回路を、PHS端末等の移動体通信端末に共通に形成されたスロットに着脱可能なカートリッジ内に納めたので、PHS端末を用いて移動体通信を行いたいときには、電話送受信ユニットをPHS端末のカートリッジに装着することにより移動体通信を行うことができる。電話送受信ユニットは様々な移動体通信端末に装着することができるので、複数の回線を契約することなく、1つの回線を契約するだけで、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。」という記載を、
「また、ボディ12内に設けられたバッテリ76からは、これらの電子回路に対して電力が供給される。このように、本実施形態によれば、上記のような機能を有する電子回路を、PHS端末等の移動体通信端末に共通に形成されたスロットに着脱可能なカートリッジ内に納めたので、PHS端末を用いて移動体通信を行いたいときには、電話送受信ユニットをPHS端末のスロットに装着することにより移動体通信を行うことができる。電話送受信ユニットは様々な移動体通信端末に装着することができるので、複数の回線を契約することなく、1つの回線を契約するだけで、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。」という記載に訂正する。

訂正事項j)発明の詳細な説明の段落0046の、
「このように、本実施形態によれば、電子メールのデータを文字として表示する機能を有しない移動体通信端末等を用いても、ユーザ宛の電子メールの内容を知ることのできる。
[変形実施形態]本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。」という記載を、
「このように、本実施形態によれば、電子メールのデータを文字として表示する機能を有しない移動体通信端末等を用いても、ユーザ宛の電子メールの内容を知ることができる。
[変形実施形態]本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。」という記載に訂正する。

第2 訂正の可否の判断
訂正事項a)について
本訂正事項のうち、「スピーカから音声として出力する」及び「マイクに入力される音声が変換された」とする訂正は、願書に添付した明細書又は図面(以下、「当初の明細書」という。)に記載した事項から自明な範囲内で、明りょうでない記載の釈明を目的とすることが明らかである。
次に、追加された「通話用」という表現は、当初の明細書に明記がないが、訂正された「通話用音声信号に変換する機能」及び「通話用音声信号を・・・変換する機能」は、スピーカとマイクを使って、通常の電話機能としての通話が行われるものであることを、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内でその構成を明示したものであると認められる。
同じく、「前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末」については、当初の明細書の図1等に記載された第1実施形態、図4等に記載された第2実施形態、及び図5等に記載された第3実施形態の何れにも記載されていることが明らかであるから、当該訂正事項も、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内でその構成を明示したものであると認められる。
同じく、「前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部」における「信号線」については、当初の明細書に明示がないが、当初の明細書の段落0026に「操作信号が制御部72に入力される。」及び「表示信号が、制御部72から液晶表示部20に出力される。」旨記載があるとともに、口頭審理の調書で被請求人が訂正の根拠として主張する図3を参照すると、操作部70と制御部72の間、及び制御部72と液晶表示部20の間に線が引かれていることから見て、前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線は、当初の明細書に記載された事項から自明な範囲内のものと認められる。同様に、当初の明細書の段落0023及び段落0024の記載及び図3の記載からみて、「前記通話用音声信号を入出力する信号線」もまた、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内のものと認められる。
同じく、「1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」との訂正については、当初の明細書の段落0027や0054に「電話送受信ユニットは様々な移動体通信端末に装着することができるので、複数の回線を契約することなく、1つの回線を契約するだけで、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。」旨記載があるとともに、前記したように、「前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末」は、当初の明細書の図1等に記載された第1実施形態、図4等に記載された第2実施形態、及び図5等に記載された第3実施形態の何れにも記載されていることが明らかであり、このスピーカとマイクは通常の電話機能としての通話を行うためのものであることが明らかであるから、当該訂正事項もまた、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内のものと認められる。
よって、訂正事項a)は、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内において、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的にしたものと言うべきである。

訂正事項b)について
本訂正事項の訂正は、前記訂正事項a)の訂正事項の一部と同様であるから、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内において、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的に訂正したものと言うべきである。

訂正事項c)について
本訂正事項の訂正は、前記訂正事項a)の訂正事項の一部と同様であるから、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内において、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的にしたものと言うべきである。

訂正事項d)?訂正事項g)について
本訂正事項の訂正は、前記訂正事項a)?c)により訂正された特許請求の範囲の記載と整合を取るためのものであるから、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的としたものと言うべきである。

訂正事項h)について
本項のように発明の名称を訂正することは、前記訂正事項a)?c)により訂正された特許請求の範囲の記載と整合を取るために訂正したものであると認められるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものと言うべきである。

訂正事項i)?訂正事項j)について
本訂正事項の何れの訂正も、記載された文章の前後関係から見て、当初の明細書に記載した事項から自明な範囲内において、誤記の訂正を目的にしたものであることが明らかである。

(むすび)
上記訂正事項は、上記「訂正事項a)について」?「訂正事項j)について」の項で述べたとおり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的としてしたものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、平成18年12月29日付けの訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項の規定において準用する同法第126条第3項、及び第4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2 訂正の可否の判断」の項において記載したとおり、本件訂正が認められるから、本件の訂正後の請求項1?6に係る発明(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明6」という。)は、平成18年12月29日差出の訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次のとおりのものと認める。

(本件特許発明1)
アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、
前記電子回路を含み、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと、
前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し、 1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にすることを特徴とする電話送受信ユニット。

(本件特許発明2)
基地局との間で信号を送受信するアンテナと、
通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、
入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、
操作に基づいて操作信号を生成する操作部と、
表示信号に基づいて表示する表示部と、
請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、
前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末。

(本件特許発明3)
基地局との間で信号を送受信するアンテナと、
請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、
前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で信号を入出力する入出力部と、
移動体通信中継端末用の移動体通信端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末。

(本件特許発明4)
入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、請求項3記載の移動体通信中継端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末。

(本件特許発明5)
請求項2記載の移動体通信端末において、
前記移動体通信端末は、携帯電話機、簡易型携帯電話機、携帯情報通信端末、又はモバイルコンピュータであることを特徴とする移動体通信端末。

(本件特許発明6)
請求項4記載の移動体通信中継端末用の移動体通信端末において、
前記移動体通信端末は、万年筆、キーホルダ、ライタ、又はペンダントの形態を有していることを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末。

第4 請求人の主張
請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、
1)平成11年11月29日付け補正書の補正により付加された、請求項1の「全体が収納されるような形状」、請求項2、3の「全体を収納する」は、願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内でしたものではないから、当該補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(以下、「無効理由1」という。)、
2)請求項1に記載された「移動体通信端末に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジ」は不明確であるから、請求項1及びその従属項である請求項2?6に記載された発明は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(以下、「無効理由2」という。)、
3)本件訂正前の請求項1に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない(以下、「無効理由3」という。)、
4)本件訂正前及び訂正後の請求項1に記載された発明は、甲第2、3、4号証に記載された発明に基いて、又は甲第5、3、4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、甲第2、3、4号証に係るものを「無効理由4-1」といい、甲第5、3、4号証に係るものを「無効理由4-2」という。)、
5)平成18年12月29日付けの訂正請求による訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の何れを目的とするものではないから、特許法第134条の2第1項ただし書きに該当しない(以下、「無効理由5」という。)、
旨を、無効審判請求書、弁駁書、陳述要領書、及び口頭審理の調書により主張する。

このうち、「5)」の項で述べた訂正請求については、前記「第2 訂正の可否の判断」の項において述べたとおり、その訂正は認められるものである。

第5 被請求人の主張
一方、被請求人は、請求人が主張する無効理由は何れも誤りであるから、本件特許発明1?6に無効理由は存在しない旨を、答弁書、陳述要領書、及び口頭審理における調書により主張する。また、口頭審理の日に、参考資料を提出した。

第6 甲第1号証?甲第6号証

(6-1)甲第1号証(特開平8-101900号公報)
甲第1号証は、無線通信用ICカードおよび同カードが装着されるデータ処理装置に関するものであって、添付図面と共に以下が記載されている。
イ)「【目的】パーソナルコンピュータのアンテナを用いて無線通信を行えるPCカードを実現する。
【構成】PCカード11のアンテナ接点115は、そのPCカード11がパーソナルコンピュータ12のカードスロットに装着された時に、パーソナルコンピュータ12に取り付けられたアンテナ125と電気的に接続される。このため、PCカード11は、パーソナルコンピュータ12のアンテナ125を使用して無線通信を行うことが可能となる。したがって、カード11に外部モジュールや拡張部を設ける必要がなくなり、カード全体をカードスロット内に収めることが可能となる。」(第1頁左下欄、(57)【要約】)、
ロ)「【請求項1】 データ処理装置のカードスロットに装着され、そのデータ処理装置と外部装置との間の無線通信を制御する無線通信用ICカードにおいて、
カード基体と、
このカード基体内の無線通信ユニットから前記カード基体表面に導出され、前記カードスロットを介して前記データ処理装置に設けられたアンテナと電気的に接続される1以上のアンテナ接点とを具備し、
前記データ処理装置のアンテナを使用して無線通信を行うことを特徴とする無線通信用ICカード。」 (第2頁1欄、特許請求の範囲)。

(6-2)甲第2号証(特開平9-149109号公報)
甲第2号証は携帯電話器ユニットに関するものであって、添付図面と共に以下が記載されている。
イ)「【請求項1】 携帯電話器の無線通信機能部品を内蔵する基本部と、携帯電話器の電話機能部品を内蔵する周辺部とを有し、前記基本部と周辺部を分離可能に接続したことを特徴とする携帯電話器ユニット。」(第2頁1欄、【特許請求の範囲】)、
ロ)「【0004】したがって、本発明の目的は、本来の携帯電話器として使用できると共に、携帯電話器が有する無線通信機能に着目して、無線通信機能を有する部分を他の電子機器と組み合わせて使用可能な携帯電話器ユニットを提供することにある。」(第2頁2欄)、
ハ)「【0008】基本部12は、パソコン等のメモリカードの一般的な規格、例えば、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association )規格の形状と一致するメモリカード(ICカード)形状の下部20と、後述する周辺部の基本部保持部に載置するのに適した形状の上部22と、上部22の上部に取り付けられたアンテナ24から成り、基本部12の内部には、画像、文章等のデータと音声を処理する処理部と、無線通信を行うための無線通信部と、制御部が設けられている。また、下部20の下端20aは、PCMCIA規格のコネクタとして構成されている。即ち、複数の接点を内部に持つプラグとして構成されている。
【0009】周辺部14は、本体部分30を有し、本体部分30の前面には、図2の断面図で示すように、スピーカ38、LCD(液晶表示装置)40、キー(プッシュボタン)42、マイク44が設けられている。また、周辺部14の後部には、本体部分30と一体となって筒状の基本部保持部32を形成している。・・・(中略)・・・
【0011】図2、図3に示すように、周辺部14の本体部30と基本部保持部32で形成された筒の内部にはPCMCIA規格のコネクタ46が設けられている。このコネクタ46は前述の基本部12のコネクタ20aと接続されるものであり、複数のピン46aを有するレセプタクルとして構成されている。勿論、筒の内部形状は、基本部12の下部を受け入れてガタなく保持する形状に形成されている。
【0012】次に、携帯電話器ユニットの電子回路を図4を参照して説明する。図4に示すように、基本部12は、RFモジュール50、変復調モデム52、チャンネルコーデック(TDMA方式:Time Division Multiple Access 方式)54、ADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation )コーデック56、PCMCIAI/F(インターフェース)58、ROM/RAM60、EEP-ROM62、マイクロコントローラ64、音声/データセレクタ66を有している。
【0013】前述の各部の機能を概略すると、RFモージュル50は、無線周波数の処理用モジュールであり、変復調モデム52は、送信のためにチャンネルコーデック54からの信号を変調し、また受信のためにRFモジュール50からの信号を復調するための変調復調器であり、チャンネルコーデック54は、送信、受信データの組立て、分解を行い、ADPCMコーデック56は適応型差分パルス符号変調(データ圧縮、伸張)を行い、PCMCIAI/F58は、周辺部14または後述するパソコン等のPCMCIAI/Fと接続するためのインターフェースである。
【0014】ROM/RAM60、EEP-ROM62は、基本部12を制御するプログラムを格納し、作業中のワーキング領域となるメモリであり、マイクロコントローラ64は、ROMに格納されたプログラムに従って基本部12および周辺部14内の各機能部品を制御するものであり、音声/データセレクタ66は、PCMCIAI/F58からの音声またはデータを選択的にチャンネルコーデック54またはADPCMコーデック56に転送し、またはそれらからの音声またはデータをPCMCIAI/F58に転送するものである。
【0015】周辺部14は、前述のように、LCD40、キースイッチ42、マイク44、スピーカ38を有している。」(第2頁2欄?第3頁4欄)、
ニ)「【0017】携帯電話器として用いる場合を概略すると、キースイッチ(プッシュボタン)42を用いて無線通話を行う相手の電話番号を押す。このとき、LCD40は電話番号を表示する。キースイッチ42で入力された電話番号データは基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ66に転送され、チャンネルコーデック54によって送信データに組み立てられ変復調モデム52によって変調され、RFモジュール50を介してアンテナ24によって無線によって送信される。
【0018】電話回線が接続されると、以後、通常の携帯電話器と同様な動作が行われる。即ち、通話の送信では、マイク44から入力された音声は基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ66に転送され、音声/データセレクタ66からADPCM56に転送され、そこで、音声は圧縮され、チャンネルコーデック54に転送され、チャンネルコーデック54によって送信データに組み立てられ変復調モデム52によって変調され、RFモジュール50を介してアンテナ24によって無線によって送信される。
【0019】一方、通話の受信では、アンテナ24で受信した音声信号は、RFモジュール50で処理され、その後変復調モデム52によって復調され、チャンネルコーデック54によって受信データとして分解され、ADPCM56によって伸張され、音声/データセレクタ66に転送され、次に、基本部12のPCMCIAI/F58を介して周辺部14のスピーカ38に転送され、音声として出力される。
【0020】図5(b)は、携帯電話器ユニット10をパソコン70と共に使用する例を示す。例えば、パソコン70で作成したデータを他の電子機器(パソコンを含む)に無線送信することや、他の電子機器(パソコンを含む)からのデータを無線受信することに使用できる。この場合、基本部12は周辺部14と分離され、パソコン70に設けられたPCMCIA規格のコネクタに接続される。その後、携帯電話器の無線通信機能を用いて無線でデータを送受を行う。
【0021】例えば、パソコン70からのデータの送信では、パソコンからのデータは、基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ66に転送され、音声/データセレクタ66からチャンネルコーデック54に転送され、チャンネルコーデック54によって送信データに組み立てられ変復調モデム52によって変調され、RFモジュール50を介してアンテナ24によって無線によって送信される。
【0022】一方、他の電子機器からのデータの受信では、アンテナ24で受信した音声信号は、RFモジュール50で処理され、その後変復調モデム52によって復調され、チャンネルコーデック54によって受信データとして分解され、音声/データセレクタ66に転送され、次に、基本部12のPCMCIAI/F58を介してパソコン70に入力される。」(第3頁4欄?第4頁5欄)、
ホ)「【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、携帯電話器を無線通信機能(RFモジュール、変復調モデム、チャンネルコーデック、ADPCMコーデック、音声/データセレクタ等)を内蔵する基本部と、電話機能(マイク、スピーカ、キースイッチ等)を内蔵する周辺部に分離できるように構成し、基本部の仕様をパソコン等の他の電子機器のインターフェース(例えば、PCMCIAインターフェース)、コネクタ規格(例えば、PCMCIA規格)と一致させたので、基本部を分離し、他の電子機器と共に用いることにより、他の電子機器とのデータを無線で送受できる。」(第4頁5?6欄)、
ヘ)「【補正内容】
【0015】周辺部14は、前述のように、LCD40、キースイッチ42、マイク44、スピーカ38を有している。また周辺部14はその内部の各種制御を行うマイクロコントローラ46を有している。」(第6頁右下欄)。
ト)甲第2号証の第5頁の図5の(a)、(b)や第9頁の図5の(a)、(b)では、一つの基本部12を周辺部14に装着して携帯電話器ユニット10として使うこと、及びパソコン70に装着して使うことを読み取ることができる。

ここで、段落0019の記載からみて、基本部は「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能」を有することが明らかである。
同じく、段落0018の記載からみて、基本部は「マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能」を有することが明らかである。
同じく、段落0017の記載によれば、キースイッチ(操作部)から入力されたデータは、例えば、チャンネルコーデックによって送信データに組み立てられるところ、この処理は、「操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う」ことに他ならないから、基本部は「操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能」を有することが明らかである。
同じく、段落0017?0019に記載された前記機能を実現する「音声/データセレクタ66」、「チャンネルコーデック54」、「変復調モデム52」、「RFモジュール50」、「ADPCM56」は、「電子回路」であるということができる。
同じく、段落0017の記載によれば、キースイッチ(操作部)で入力された電話番号データ(操作信号)は、基本部のPCMCIAI/Fを介して音声/データセレクタに転送されるのであるから、基本部に設けられたコネクタは、「周辺部との間で操作信号を入力する信号線を含む」ことが明らかである。
同じく、段落0018の「通話の送信では、マイク44から入力された音声は基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ66に転送され、」、及び段落0019の「通話の受信では、アンテナ24で受信した音声信号は、・・・(中略)・・・音声/データセレクタ66に転送され、次に、基本部12のPCMCIAI/F58を介して周辺部14のスピーカ38に転送され、」(注:下線加筆)旨の記載によれば、基本部に設けられたコネクタは、「周辺部との間で通話用音声信号を入出力する信号線」を含むことが明らかである。
同じく、請求項1の記載によれば、基本部は、無線通信機能部品を内蔵するのであるから、基本部とコネクタを併せて「無線通信機能ユニット」であるということができる。
同じく、段落0020の「基本部12は周辺部14と分離され、パソコン70に設けられたPCMCIA規格のコネクタに接続される。その後、携帯電話器の無線通信機能を用いて無線でデータを送受を行う。」の記載、段落0022の「一方、他の電子機器からのデータの受信では、アンテナ24で受信した音声信号は、・・・(中略)・・・、基本部12のPCMCIAI/F58を介してパソコン70に入力される。」の記載、及び第5頁図5(b)、第9頁図5(b)の記載を参照すれば、前記基本部は、パソコンのスロットに収納され、コネクタ接続されることにより、前記パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能が使用可能とされることが明らかである。

すると、上記甲第2号証の摘記事項、添付図面及びこの分野の技術常識を考慮すれば、上記甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能とを有する電子回路と、
前記電子回路を含み、前記スピーカ及び前記マイクを周辺部に備えた周辺部に設けられた筒状の基本部保持部に収納されるような形状に形成された基本部と、
前記基本部に設けられ、前記周辺部との間で前記操作信号を入力し、前記通話用音声信号を入出力する信号線を含むコネクタとを有する無線通信機能ユニットであって、
前記無線通信ユニットは、一つの無線通信ユニットが、前記周辺部(移動体通信端末)及びパソコンに共通に使用され、前記周辺部(移動体通信端末)に装着されたとき、移動体通信端末によって通話を可能にする一方、前記パソコンに装着されたとき、パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にする無線通信機能ユニット。」

(6-3)甲第3号証(特開平9-139972号公報)
甲第3号証は、携帯無線電話装置に係るものであって、添付図面とともに以下が記載されている。
イ)「【請求項1】送受信アンテナ部と、
供給されるデータに応じて上記送受信アンテナ部を通じて送出すべきデータ信号を形成する送信処理部と、
該送信処理部に音声データを供給するマイクロフォンを含んだ音声データ形成部と、
上記送受信アンテナ部を通じた外部データ信号を受信して再生データを得る受信処理部と、
該受信処理部から得られる再生データに基づいて再生音声を得るスピーカを含む音声再生部と、
上記送受信アンテナ部の部分,送信処理部,音声データ形成部,受信処理部及び音声再生部を収容し、標準化された三次元寸法を有するICカードを全体的に収容できるカード挿入部が該カード挿入部に収容されたICカードとの電気的接続がなされる内蔵コネクタ部を伴って設けられた電子情報処理機器に対し、上記カード挿入部に全体的に収容される状態をもって装着可能とされる外形寸法をとる匣体と、
該匣体に設けられ、該匣体が上記カード挿入部に全体的に収容される状態をもって装着されたとき上記内蔵コネクタ部に接続されて、上記電子情報処理機器からのデータが上記送信処理部に供給される状態、及び、上記受信処理部からの再生データが上記電子情報処理機器に供給される状態をもたらすコネクタ部と、を備えて構成される携帯無線電話装置。」(第2頁1欄、特許請求の範囲)、
ロ)「【0012】そして、本発明に係る携帯無線電話装置は、電子情報処理機器によるデータ通信に供される状態をとるときには、その匣体が電子情報処理機器に設けられたカード挿入部に全体的に収容される状態におかれるので、電子情報処理機器を含んで構成される装置全体を、外観的に優れたものにできるとともに、移動あるいは向きの変更等に際して取扱い易く、かつ、使い勝手が良いものなすことができる。」(第4頁5欄)。

上記「イ)」の項の記載によれば、匣体は、電話通信のための無線送受信機能を有することが明らかであるとともに、上記「ロ)」の項の記載によれば、当該匣体はカード挿入部に「全体的に収容される状態」におかれることが明示されている。
すると、上記甲第3号証の摘記事項、添付図面及びこの分野の技術常識を考慮すれば、上記甲第3号証には、
「無線送受信機能を有するユニットをパーソナルコンピュータ等の電子機器のスロットに装着する際、そのユニットが全体的に収容される状態にすることにより、パーソナルコンピュータ全体を外観的に優れたものにできるとともに、移動や向きの変更に際して取扱い易く、使い勝手が良いものとする」技術(以下、「甲3技術」という。)が開示されていると認められる。

(6-4)甲第4号証(国際公開第94/21058号パンフレット(1994))
甲第4号証には、信号入力装置及び信号通信装置に関する技術が、添付図面とともに、以下のとおり記載されている。
イ)「The present invention relates to modular radio communications equipment. More particularly, one aspect of the present invention includes providing card mounted radio telephone and/or modem equipment configured for wireless telecommunication (which includes voice and/or data) in accordance with a preselected standard and/or format. Such modular units may be replaceably secured within other items of electronic equipment for establishing therefrom a telecommunications link with a wireless network. In one embodiment, such equipment includes portable cellular radio subscriber terminals.
In other aspect, the invention includes a modular housing for mounting a radio transceiver adapted for telecommunications in accordance with a preselected standard. An array of contacts are arranged along a first end of the housing and adapted for engagement with a mating array of contacts in an item of electronic equipment, such as a computer or portable communications device.」(第4頁1行目?20行目)
訳文:「本発明は、モジュラー無線通信装置に関する。より詳細には、本発明の1つの形態は、予め選択された規格及び/又はフォーマットに従う無線通信(音声及び/又はデータを含む)のために構成されたカード型無線電話及び/又はモデム装置を提供することである。かかるモジュラーユニットは、それによる無線ネットワークとの通信リンクを確立するため、他種の電子装置の中に交換可能に保護収容される。一実施例では、そのような装置は、携帯セルラ無線電話加入者端末を含む。本発明の他の形態は、選択された規格に従った通信に適応される無線送受信機を搭載するためのモジュラー筐体を含む。接触子列が当該筐体の第一の端部に沿って配置され、その接続子列がコンピュータや携帯通信装置などのひとつの電子装置中の対応接触子列に係合可能となっている。」、
ロ)「Referring now to FIG.11 there is shown an alternative mounting of the modular unit 131 of FIG. 10 and an alternative modification to the PC 200. In this particular view, the modular unit 131 is being installed in PC 200 constructed with a flap 280. The flap 280 is provided in a configuration for closure over the unit 131 and direct coupling with coaxial connector 51, while continuing to expose external power connector 54. In this embodiment, an internal antenna 270 is installed within the PC 200 and connected by a wire 271 (shown in phantom) to flap connector pin 272 of flap 280. Aperture 273 is positioned in flap 280 for alignment with power connector 54 of module 131 and sized to facilitate receipt of, and connection from, plug 252A into connector 54. As described above, connector 133 of module 131 is shown to matingly connect with slot connector 204 disposed one end 205 of slot 201. In an alternative embodiment, not specifically shown, an internal power supply from the PC 200 may be connected to the connector 54 of module 131 by coupling to a power connection pin disposed on the flap 280 in place of the aperture 273. The illustration thereof, if shown, would be similar to the illustration of the power supply 290 of FIG. 12 (discussed below) but with a line 291 extending to the flap 280.」(第16頁27行目?第17頁17行目)
訳文:「図11を参照するに、図10におけるモジュラーユニット131の別の装着法とPC200の別の変形例とが示されている。この図を見ると、モジュラーユニット131は、フラップ280が設けられたPC200の中に装着されようとしている。このフラップ280は、外部電源コネクタ54を露出させつつ、ユニット131を閉包し、かつ同軸コネクタ51と直接連結されるように設けられている。この実施例において、内部アンテナ270はPC200内に設けられ、導線271(透視図により示される)によってフラップ280のフラップ接触子272へ接続される。開口273は、モジュール131の電源コネクタ54と一致するようにフラップ280に配置され、プラグ252Aがコネクタ54へ入りやすく、かつ接続しやすいような寸法とされる。以上説明したように、モジュール131のコネクタ133は、スロット201の端部205に配置されたスロットコネクタ204と対応接続することが示される。特に図示していない別の実施例では、開口273に代えてフラップ280に配置された電源接続接触子への結合により、PC200からの内部電源をモジュール131のコネクタ54に接続することができる。もしその図を描くとすれば、図12の電源290(以下に説明する)と同様の図になるが、導線291についてはフラップ280まで延長される。」、
ハ)「Referring now to FIG. 14 there is shown a diagrammatical illustration of the versatility and multiple uses possible with the modular units 31 and 131 of the present invention. As stated above, either module 31 or 131 may be used in such application, although only module 31 is represented in this particular drawing. As represented herein, there are at least two wireless functions provided by the modular units 31 and 131. Several technologies may, in fact, reside on a single card within the modular units 31 and 131. For example, Mobitex and AMPS communication formats may be utilized. With the unit 31 herein shown plugged into a notebook 300, data communication over Mobitex may be therein provided. Telephone calls may likewise be completed through the AMPS system or other format, wherein a head set 302 is shown linked to the notebook 300. An infrared link 304 is illustrated, although other connections would be possible. Likewise, module mounting slot 306 is shown within housing 308 of notebook 300. A communication antenna 310 is shown on the top 312 of the notebook 300. The notebook 300 may be of a conventional design which has been modified for the slot 306 and other connection and system aspects described above. More specifically, the slot 306 is constructed for receipt of, and mating engagement with, connector 33 of the module 31. It may be seen that the module 31 in this particular embodiment is constructed for both power and antenna coupling from the area around connector 33, as described in FIG. 4 above.」(第18頁33行?第19頁27行)
訳文:「ここで図14を参照すると、本発明によるモジュラーユニット31及び131と電子装置により構成されるシステムの多様で複合的な用途が図示されている。前述したとおり、モジュール31と131の両方がこのような応用に使用可能であるが、この図においてはモジュール31のみが描写されている。本明細書で説明しているように、少なくとも二つの無線機能がモジュラーユニット31及び131によって提供される。事実上、いくつかの技術がモジュラーユニット31及び131内の単一カード上に常駐可能である。例えば、Mobitex及びAMPS通信フォーマットが使用可能である。ユニット31を、図のようにノートブック300の中に装着し、データ通信を行う。そこでは、Mobitexが提供される。電話もAMPSシステムや他のフォーマットを通して同様に通話することができ、そこではノートブック300に接続されたヘッドセット302が示されている。赤外線接続304が示されているが、その他の接続手段も可能である。同様に、モジュール装着スロット306は、ノートブック300の筐体308内部に図示されている。通信アンテナ310はノートブック300の頂部312の上に図示されている。ノートブック300は、スロット306及びその他の接続並びに上述したシステムの形態について改良された通常のデザインでよい。より具体的には、スロット306はモジュール31のコネクタ33を受容し、対応接合するように構成されている。この特定の実施例におけるモジュール31は、前記図4で説明されたように、コネクタ33の周りの領域から電源とアンテナの両方の結合のために構成されることがわかる。」、
ニ)「Still referring to FIG. 14, a second utilization of the module 31 may be within a cellular telephone 309. The phone 309 incorporates a chassis 309A of conventional design, or which incorporates a special display (not shown). The modular 31 is inserted into slot 311 and connected with a software generated display that corresponds to technology and the standards that are activated. In that regard a touch screen may then display the available phone features that can then be dialed. Antenna 312 is shown to upstand from chassis 310 in accordance with the aspects of the invention discussed above.」(第19頁32行目?第20頁8行目)
訳文:「さらに図14を参照すると、モジュール31の二番目の利用態様は携帯電話309の内部にあることだろう。この電話309は、通常設計の、又は専用表示装置(図示せず)を備えたシャーシ309Aを含む。モジュール31は、スロット311の中に挿入され、有効な技術並びに規格に対応したソフトウエア生成表示につながれる。その点に関し、タッチスクリーンは、次にダイアルすることのできる有効な電話機能を表示するようにしてもよい。上述の本発明の形態に従い、アンテナ312はシャーシ310から直立して示されている。」、
ホ)「Still referring to FIG. 14 there is shown a pen based computer 313 or similar structure which serves to provide pen input while generating a display similar to a cellular phone when activated. Due to the fact that the system for a cellular phone is already in the computer by virtue of the module 31 secured within slot 314, the user can use the option of telephonic communication by simply connecting a headset 316 through an infra red connection 318 or a headset 320 connected by a conventional cable 322. The computer can then be simultaneously used for data communication, faxes, and other forms of informational exchanges which are deemed necessary.(第20頁9行目?第20頁21行目)
訳文:「さらに図14を参照すると、ペン型コンピュータ313あるいは活性化されたときに携帯電話と同様の表示を発生しつつペン入力を提供する同様の構造物が示されている。スロット314の内部に獲得された(secured within)モジュール31の力で(by virtue of)コンピュータの中に携帯電話のシステムが既に在るという事実により、使用者は、赤外線接続318を介したヘッドセット316、又は、通常のケーブル322によって接続されたヘッドセット320を、単に接続することにより、電話通信の選択を使うことができる。このコンピュータは、同時にデータ通信、ファックス、及び必要とされるその他の形式の情報交換に使用することができる。」。
ヘ)甲第4号証の図11に、アンテナを本体側に内蔵したPC200のスロット201に、モジュラーユニット131が装着され、モジュラーユニット側コネクタ133がスロット側コネクタ204に接続されると共に、モジュラーユニット131がフラップ280によって閉包(closure over)されることが読み取れる。
ト)甲第4号証の図14に、一つのモジュラーユニット31が、携帯電話309、ヘッドセットを備えたノートブック300、及び持ち運び可能でヘッドセットを備えたコンピュータ313の各スロットに交代で装着され使用されることが読み取れる。

上記「ロ)」の項の記載、及び図11によれば、モジュラーユニット131は、PC200のスロット201に装着され、モジュラーユニット側コネクタ133がスロット側コネクタ204に接続されると共に、モジュラーユニット131はフラップ280によってスロット内に閉包(closure over)されるものである。すると、甲第4号証の記載及び添付図面、並びにこの分野の技術常識によれば、上記甲第4号証には「パーソナルコンピュータ(パソコン、PC)に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されるモジュラーユニット(無線送受信ユニット)」の技術(以下、「甲4技術A」という。)が開示されていると認められる。

同様に、上記「ニ)」の項の記載、及び図14よれば、モジュラーユニット31は、タッチシート型携帯電話309に装着されることにより、移動体通信端末として通話が可能にされることが明らかである。
同様に、上記「ハ)」の項の記載及び図14によれば、ノートブック300に装着されたモジュラーユニット31内に、モビテックス(Mobitex)の通信フォーマットを搭載すればデータ通信できるようになる一方、アンプス(AMPS)等の通信フォーマットを搭載すれば電話ができるようになるのであるから、アンプス等を搭載したモジュラーユニット31が、ヘッドセット302を備えたノートブック300に装着されることにより、電話による通話が可能とされることが明らかである。ここで、甲第4号証の第1頁13?15行の「Personal computers have become smaller and more efficient in their progression through desktop, laptop, notebook, and palmtop versions.(訳文:パーソナルコンピュータは、デスクトップ、ラップトップ、ノートブック、及びパームトップの順の進行で、より小さく、より効率的になってきた。)」の記載、及び同じく第7頁27?29行の「Referring first to FIG.1,・・・such as a laptop or notebook computer 11(訳文:最初に図1を参照すると、・・・ラップトップやノートブックコンピュータのような)」の記載に照らせば、前記ノートブック300は、周知のノートブック型コンピュータのことであることが自明である。この点に関し、被請求人は口頭審理の調書の中で、ノートブック300は本件出願時の技術水準からは何を意味するのか不明である旨主張するが、前記のように甲第4号証により周知であることが明らかであるほか、被請求人が答弁書に添付した乙第1号証(トランジスタ技術 SPECIAL)の「●本格的な標準化の始まり」の項の1?2行目の「この1989年にはエプソンと東芝から最初のノートブック・パソコンが発売され、」の記載に照らせば、ノートブック・パソコンの発売時期は甲第4号証の優先権主張日である1993年3月4日を3年以上も遡るのであるから、上記被請求人の主張は採用できない。
そして、上記ノートブック型コンピュータを使って電話による通話を行うには、スピーカとマイクが必要であることは当然のことであるから、上記ノートブック型コンピュータに備えられたヘッドセットのスピーカとマイクが通話に使用されると解釈することが自然である。

同様に、上記「ホ)」の項の記載及び図14によれば、活性化されたときに携帯電話に似た表示が生成され、ペン入力できるペン方式コンピュータ313等においても、スロットに装着された同じモジュラーユニット31の力により、使用者は単にペンコンピュータ313にヘッドセット320を接続するだけで、電話通信の選択が可能となるのである。そして、上記ノートブック型コンピュータと同様に、ペン方式コンピュータにおいても、そこに備えられたヘッドセットのマイクとスピーカを使って通話が可能とされると解釈することが自然である。

そして、甲第4号証の第2頁34行?第3頁2行の「a telecomunications terminal, such as a portable telephone or a portable personal computer, could be adapted for communication with different systems by simply replacing the modular unit(訳文:持ち運び可能な電話又は持ち運び可能なパーソナルコンピュータのような無線通信端末は、単にモジュラーユニットを交代させるだけで異なったシステムの通信に適用可能になりうる)」旨の記載、及び図14に描かれた携帯電話309、ノートブック型コンピュータ300、及びペン方式コンピュータ313の図を参照すると、これらの装置が持ち運んで使用可能であることが示唆されるから、図14に記載された携帯電話、ノートブック型コンピュータ、及びペン方式コンピュータは、何れも移動体通信端末であるということができる。

以上により、上記甲第4号証の記載及び添付図面によれば、「一つの電話送受信ユニット(モジュラーユニット)が、スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代して装着されることにより、装着された各々の移動体通信端末において通話を可能にする電話送受信ユニット(モジュラーユニット)」の技術(以下、「甲4技術B」という。)が開示されていると認められる。

(6-5)甲第5号証(特開平8-265856号公報)
甲第5号証は、無線インターフェースカードに係るものであって、図面とともに以下が記載されている。
イ)「【目的】 本発明は、端末装置のカードスロットに挿入するだけで、データ通信と音声通信との両方に対応することができるとともに、利便性の高い無線インタフェースカードの提供を目的とする。
【構成】 データ信号と音声信号との入出力を行う端末装置に接続され、データ信号または音声信号とを無線により送受信する無線インタフェースカード10であって、前記端末装置との間でデータ信号及び音声信号との授受を行うインタフェース手段11と、データ信号の送受信に必要な処理を行うデータ処理手段12と、音声信号の送受信に必要な処理を行う音声処理手段13とを備え、インタフェース手段11を端末装置に接続することにより、データ信号と音声信号との送受信を行うことを特徴とする。」(第1頁左下欄、(57)【要約】)、
ロ)「【0013】〔第1実施例〕本実施例では、請求項1記載の発明に係わる無線インタフェースカードで、特に無線通信方式がデジタルセルラシステムに対応したものについて説明する。本実施例の無線インタフェースカードは、図1に示すように構成されているものであり、その外観が図2に示すようにPCMCIA(Personal Computer CardInternational Association)及び日本電子工業振興協会(JEIDA)によるPCカードの規格に準拠して形成されているものである。この無線インタフェースカード(以下、PCカードと称す)10は、その一端に設けられたコネクタ部10aを、図示しない端末装置に設けられたカードスロットに挿入して使用するものであり、前記端末装置とその通信相手である他の端末装置との間で、無線による通信を行うものである。
【0014】PCカード10が挿入される端末装置は、例えばパーソナルコンピュータや情報携帯端末等からなるものであり、データ通信のためのデータ信号と音声通信のための音声信号との入出力と、通信相手との通信に必要な制御信号の設定とが行われるものである。この制御信号には、通信相手を指定する信号(例えば回線接続のための信号)と、データ通信と音声通信とのどちらを行うかを指定する信号とがある。但し、制御信号は、端末装置と他の端末装置との間で通信を行う際に、前記端末装置において予め設定されるものである。また、通信相手である他の端末装置には、例えば無線基地局及び公衆回線を介して接続された他の端末装置や、特定の無線ネットワーク上の他の端末装置等がある。
【0015】PCカード10は、図1に示すように、インタフェース手段11と、データ処理手段12と、音声処理手段13と、チャネルコーデック手段14と、変復調手段15と、送受信手段16と、制御手段17とから構成されているものである。但し、これらの各手段は、それぞれDSP(Digital Signal Processor)等からなるものである。インタフェース手段11は、コネクタ部10aに相当するもので、PCMCIA及びJEIDAによる規格に準拠しているものである。このインターフェース手段11では、端末装置との間でデータ信号、音声信号、制御信号を授受するようになっている。」(第3頁4欄?第4頁5欄)、
ハ)「【0025】尚、本実施例では、データ信号と音声信号とのいずれか一方のみを送受信する場合について説明したが、・・・(中略)・・・、データ信号と音声信号との両方を時分割で交互に送受信することができる。従って、端末装置において、データ信号と音声信号とを同時に入出力することが可能となる。」(第5頁7?8欄)。

(6-6)甲第6号証(特表平4-503436号公報)
甲第6号証は、前記弁駁書における弁駁の中で周知例として提示されたものであって、集積化データ伝送コンピュータ及びシステムに係るものであって、添付図面とともに、以下が記載されている。
イ)「1.第1の区画と、第2の区画とを、相対的な開放位置と閉鎖位置とに枢動させるように、ヒンジ装置によつて連結された、前記第1及び第2の区画を持つハウジングと、
前記両区画が前記開放位置にあるときに、情報を表示するように、前記第1の区画内に少くとも部分的に配置された表示装置と、
前記第2区面内に配置された手動キーボードと、前記両区画のうちの一方の区画内に配置されたセルラー電話機と、
このセルラー電話機へ送られる信号及びこのセルラー電話機から送られる信号を変調/復調するように、前記両区画のうちの一方の区画内に配置された変復調装置と、
前記セルラー電話機からの信号を送信/受信するように、前記第1の区画
内に配置したアンテナと、
を備えた、携帯用コンピュータ。

2.前記アンテナを、前記第1の区画から延ばすことができるようにし、さらに、前記ハウジング内に残存する前記アンテナの一部分を実質的に取り囲む放射線しゃへいを備えた、請求項1に記載の携帯用コンピュータ。

3.前記ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、音声信号を送信/受信するように、前記セルラー電話機に動作可能に接続されたマイクロホンとスピーカとを、さらに備えた、請求項2記載の携帯用コンピュータ。」(第1頁左下欄?右下欄、特許請求の範囲)、
ロ)「好適な構造では携帯用コンピュータ(10)は又、音声信号の送信/受信のためにセルラー電話機トランシーバ(22)に動作可能に接続したポップ・アップスピーカ・ホーン(50)のようなマイクロホン及びスピーカを備えている。」(第3頁左下欄9?13行目)。

前記甲第6号証の記載及び添付図面によれば、甲第6号証に「携帯用コンピュータの本体に通話用マイクと通話用スピーカを備え、この携帯用コンピュータによって、通話を可能とする」技術が開示されていると認められる。

第7 検討

(7-1)無効理由1について
請求人は、平成11年11月29日付け補正書の補正により付加された、請求項1の「全体が収納されるような形状」、請求項2、3の「全体を収納する」は、願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内でしたものではないから、当該補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない旨、主張する。
そこで、願書に添付された出願当初の明細書(以下、「当初の明細書」という。)を参照すると、当該明細書には「全体が収納されるような形状」、及び「全体を収納する」という記載は見あたらないものの、その段落0017に「スロット26の挿入口近傍にはスライドボタン38とバネ(図示せず)より成るロック機構が設けられている。図2は、スライドボタン38を矢印の方向にスライドした図である。スライドボタン38にはバネが取り付けられているので、矢印の方向にスライドボタン38をスライドすると、矢印と反対の方向にスライドボタン38を戻すようにバネが機能する。電話送受信ユニット24をスロット26に挿入する場合は、図2に示すようにスライドボタン38を矢印の方向にスライドして挿入口を開き、電話送受信ユニット24を挿入する。その後、矢印の方向にスライドボタン38をスライドしていた力を緩めると、スライドボタン38はバネにより所定の位置に戻される。挿入された電話送受信ユニット24はスライドボタン38により固定される。」旨、記載されている。
このうち、「その後、矢印の方向にスライドボタン38をスライドしていた力を緩めると、スライドボタン38はバネにより所定の位置に戻される。挿入された電話送受信ユニット24はスライドボタン38により固定される。」に記載された「所定の位置」がカートリッジの側面を押して止まる位置なのか、又は、カートリッジの底面を蔽って止まる位置なのか必ずしも明確でないが、「挿入された電話送受信ユニット24はスライドボタン38により固定される。」というのであるから、スライドボタンが戻される所定の位置とは、カートリッジの底面を蔽って止まる位置であると解釈することが自然である。そして、この場合には、挿入された電話送受信ユニットは、スロットに全体が収納されることになるから、平成11年11月29日付け補正書の補正により、請求項1に「全体が収納されるような形状」、及び請求項2、3に「全体を収納する」を付加する補正は、実質的に、当初の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものと言うべきである。
よって、無効理由1によって、本件特許の請求項1?3に係る発明の特許については、無効とすることはできない。

(7-2)無効理由2について
請求人は、請求項1に記載された「スロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジ」は不明確であるから、請求項1及びその従属項である請求項2?6に記載された発明は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(以下、「無効理由2」という。)旨主張する。
そこで、検討すると、請求人は前記記載が不明確な理由として、本件請求項1にかかる特許発明は、所定の形状に形成されたカートリッジを有する電話送受信ユニットであるが、同じ形状に形成されたカートリッジを有する電話送受信ユニットであっても、移動体通信端末のスロット形状によって、本件請求項1にかかる特許発明の権利範囲に属する場合と属しない場合が生じ得ることをあげている。
しかし、本件請求項1に係るカートリッジは、複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されれば、その構成要件が足りるのであって、移動体通信端末によっては、そのスロットに全体が収納されないからといって、本件請求項1の記載が不明確であるとまではいうことはできない。
よって、無効理由2によって、本件特許の請求項1?6に係る発明の特許については、無効とすることはできない。

(7-3)無効理由3について
請求人は、本件訂正前の請求項1に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない旨、主張する。なお、本件訂正後の請求項1に記載された発明については、陳述要領書第3頁「(1)陳述の概要」の項において、甲第1号証に記載された発明であるとの主張は取り下げられた。
そこで検討すると、前記「第2 訂正の可否の判断」において述べたように、本件訂正は認められるものであるから、無効の対象とすべき本件訂正前の請求項1に係る発明は存在せず、当該無効理由はその前提を欠くものであるから、無効理由3は、審理することができない。

(7-4)無効理由4-1について
請求人は、本件特許発明1は、甲第2、3、4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨、主張する。そこで、以下に検討する。

(7-4-1)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。

a)甲2発明の「筒状の基本部保持部」、「基本部」、「コネクタ」は、それぞれ本件特許発明1の「スロット」、「カートリッジ」、「入出力部」に相当することが明らかである。
b)甲2発明の「周辺部」は、本件特許発明1の「端末本体」、「移動体通信端末」に相当することが明らかである。
c)甲2発明において、無線通信ユニットを装着されたパソコンは、通信端末であるということができる。
d)甲2発明の「無線通信機能ユニット」と 本件特許発明1の「電話送受信ユニット」は、「無線送受信ユニット」という点で一致する。

すると、本件特許発明1と甲2発明とは次の点で一致し、相違する。

(一致点)
「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能とを有する電子回路と、
前記電子回路を含み、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた移動体通信端末に設けられたスロットに収納されるような形状に形成されたカートリッジと、
前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で前記操作信号を入力するとともに、前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し、
移動体通信端末を含む複数の通信端末に装着されて、前記複数の通信端末によって無線通信を可能にする無線送受信ユニット。」

(相違点1)
電子回路が、本件特許発明1では、表示部に表示する表示信号を生成する機能を有するのに対し、甲2発明では、このような機能を有するかどうか不明な点。

(相違点2)
カートリッジが、本件特許発明1では、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されるのに対し、甲2発明では、カートリッジ(基本部)が前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた移動体通信端末(周辺部)に設けられたスロット(筒状の基本部把持部)に収納されるような形状に形成されるものの、「複数の移動体通信端末」かどうか不明であるとともに、スロットに「全体が収納される」構成になっていない点。

(相違点3)
入出力部が、本件特許発明1では、前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含むのに対し、甲2発明では、前記操作信号を入力するとともに、前記通話用音声信号を入出力するための信号線を含むものの、その余の構成については不明である点。

(相違点4)
無線送受信ユニットが、本件特許発明1では、1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にするのに対し、甲2発明では、一つの無線送受信ユニットが、複数の通信端末のうち、移動体通信端末(周辺部)に装着されたとき、当該移動体通信端末で通話を可能にする一方、他の通信端末であるパソコンに装着されたとき、当該パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にするものの、通話を可能とするかどうか不明な点。

(7-4-2)判断
以下、相違点について検討する。

(相違点1について)
甲第2号証の第3頁、段落0015の記載によれば、周辺部に表示部(LCD)が備えられるとともに、同じく段落0017の記載によれば、当該表示部(LCD)には操作部(キースイッチ)から入力された電話番号が表示されることが明らかである。そして、このように携帯電話器の表示部では、携帯電話器の操作部で入力された電話番号を表示するほか、例えば、携帯電話等に係る発明を開示する特開平6-141068号公報の第1頁の左下欄の「要約」の「目的」の項に、「受信した発信者名又は発信者番号デ-タを表示器に表示して発信者を確認でき」と記載されているように、アンテナから受信した信号を表示することが周知慣用である。
このような周知慣用技術において、移動体通信端末の内部回路が、移動体通信端末(携帯電話等)のアンテナから受信した文字情報を表示部に表示できるよう、その表示信号を生成する機能を含むことは自明であるところ、甲第2号証の段落0008の「基本部12の内部には、画像、文章等のデータと音声を処理する処理部と、」と記載されるように、前記基本部は、文章を処理する処理部を含むのであるから、甲第2号証の基本部の中の電子回路は、表示部に表示する表示信号を生成する機能を有する示唆があると言うべきである。
よって、携帯電話等に係る上記周知慣用技術を考慮すれば、甲2発明の電子回路は、実質的に表示部に表示する表示信号を生成する機能を有すると解釈することが自然であるから、相違点1に係る相違は実質的な相違ではない。

(相違点2について)
先ず、「カートリッジが、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに収納される」点について検討すると、前記「第6」の「(6-4)甲第4号証」の項で述べたように、甲第4号証に「一つの電話送受信ユニット(モジュラーユニット)が、スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代して装着されることにより、装着された各々の移動体通信端末において通話を可能にする電話送受信ユニット(モジュラーユニット)」の技術(甲4技術B)が開示されている。
ここで、当該甲4技術Bのスピーカ及びマイクは、端末本体に備えたものではないが、パソコンにスピーカ及びマイクの機能を備える際に、ヘッドセットを引き出しケーブルにより接続することに代え、端末本体に備えるようにすることが例えば甲第6号証に開示されているように周知である。
そして、甲2発明と甲4技術Bは、「一つの無線送受信ユニットを、携帯電話やパソコンを含む通信端末に交代して装着可能にする」技術であるという点で共通するとともに、甲2発明に甲4技術Bを適用することに特段の阻害要因は見あたらないから、前記周知技術を踏まえ、甲2発明に甲4技術Bを適用して、本件特許発明1のように「カートリッジが、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに収納される」よう構成することは当業者が容易になし得ることである。

次に、「スロットに全体が収納されるような形状に形成される」点について検討すると、前記「第6」の「(6-4)甲第4号証」の項で述べたように、甲第4号証に「パーソナルコンピュータ(パソコン、PC)に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されるモジュラーユニット(無線送受信ユニット)」の技術(甲4技術A)が開示されている。
また、前記「第6」の「(6-3)甲第3号証」の項で述べたように、甲3技術により、移動体通信端末のスロットに無線送受信ユニットを全体的に収納する効果についても明示されている。
すると、上記甲4技術Aや甲3技術によれば、移動体通信端末のスロットに無線送受信ユニットを装着する際、本件特許発明1のように、「スロットに全体が収納されるような形状に形成される」よう構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

よって、相違点2の全体としてみても、甲2発明に、前記甲第4号証及び甲第3号証に記載された技術を適用し、本件特許発明1のように、カートリッジが「前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成される」よう構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点3について)
前記「相違点1について」で述べたように、甲2発明の電子回路は、実質的に表示部に表示する表示信号を生成する機能を有するのであるが、この機能において、基本部の電子回路で生成された表示信号は、PCMCIAI/F58を介して周辺部の表示部に出力されることが自明である。
そして、例えば前記甲第1号証の段落0015に「音声通話およびデジタルまたはアナログのデータ通信を制御する通信制御部113」と記載され、同様に例えば前記甲第2号証の段落0014に「音声/データセレクタ66は、PCMCIAI/F58からの音声またはデータを選択的にチャンネルコーデック54またはADPCMコーデック56に転送し、またはそれらからの音声またはデータをPCMCIAI/F58に転送するものである。」と記載され、同様に例えば甲第5号証の段落0015に「このインターフェース手段11では、端末装置との間でデータ信号、音声信号、制御信号を授受するようになっている。」と記載されているところ、これらの記載によれば、入出力部(コネクタ)を介してデータ信号と音声信号を入出力する際に、データ信号と音声信号は別に分けられて入出力することが周知慣用である。
すると、当該周知慣用技術に照らせば、上記甲2発明で自明とされた「周辺部の表示部に出力される表示信号」に基づいて、甲2発明の入出力部を、前記操作信号と前記表示信号を入出力し、前記通話用音声信号を入出力するよう構成することは当業者が適宜行う設計事項であると認められる。

ここで、被請求人は、口頭審理の調書において、本件特許発明1の入出力部の「操作信号と表示信号を入出力する信号線」と「通話用音声信号を入出力する信号線」は独立して存在する旨主張するほか、乙第1号証の第95頁表4「PCカードの信号線」を基に、PCMCIAI/Fでは、音声信号とそれ以外の信号は同時に送れない旨主張し、甲第2号証の図4の周辺部にはI/Fが存在しない旨主張する。
そこで、本件特許発明1の入出力部の構成を参照すると、「前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部」と記載されているが、これら2つの信号線が「独立して存在する」とまでの記載はない。
同じく、本件特許発明1の入出力部の構成には、これら2つの信号線の信号を同時に送るとの記載も見あたらない。
一方、甲2発明では、前記甲第2号証の段落0011の「図2、図3に示すように、周辺部14の本体部30と基本部保持部32で形成された筒の内部にはPCMCIA規格のコネクタ46が設けられている。このコネクタ46は前述の基本部12のコネクタ20aと接続されるものであり、複数のピン46aを有するレセプタクルとして構成されている。」旨の記載、段落0017、0018、0019、0021の「PCMCIAI/F58を介して」旨の記載、及び図2、3のコネクタ46の図を参照すれば、第6頁や第8頁の図4の周辺部14側にもPCMCIAI/Fのレセプタクルが存在することが明らかであるとともに、このレセプタクルの複数のピンのために複数の信号線が基本部側及び周辺部側の双方に配線されると考えることが自然である。よって、第6頁や第8頁の図4で描かれた、基本部12と周辺部14を結ぶ1本の線は、複数の信号線を一括して記載したものと解釈すべきであるから、甲2発明で、基本部と周辺部の間の入出力は、複数の信号線によってなされるものであるということができる。
ここで、甲第2号証には、この複数の信号線を前記前記操作信号と前記表示信号を入出力し、前記通話用音声信号を入出力するため、どのように割り当てるかについて明示がないが、PCMCIAI/Fを使う事例として、例えば甲第5号証では、その段落0025の「尚、本実施例では、データ信号と音声信号とのいずれか一方のみを送受信する場合について説明したが、・・・(中略)・・・、本実施例のPCカード10によって、データ信号と音声信号との両方を時分割で交互に送受信することができる。従って、端末装置において、データ信号と音声信号とを同時に入出力することが可能となる。」の記載によれば、PCMCIAI/Fによって、データ信号と音声信号とを切り替えて又は時分割で同時に入出力されることが記載されている。
一方、通信分野において一般に、複数の信号を同時に送信する際、共通信号線を時分割で使用するか、信号毎に独立の信号線を割り当てて送信するかは、当業者が適宜選択する設計事項にすぎない。
そして、甲第2号証の段落0008の「例えば、PCMCIA」旨の記載、段落0024の「例えば、PCMCIAインターフェース」旨の記載によれば、甲2発明の入出力部の仕様は必ずしもPCMCIAに限られるものではなく、同じく甲第4号証の第12頁5?8行目の「The connector 33 comprises a pair of rows contacts 41A and 41B constructed in accordance with a modification to standard PCMCIA format.(訳:コネクタ33は、PCMCIA標準フォーマットを修正して構築した一対の接点列41Aと41Bで構成される。)」の記載によれば、コネクターの入出力仕様であるPCMCIA規格は適宜改造されて使われるものである。
以上によれば、複数の信号線によって構成される甲2発明の入出力部における入出力の仕様は、必ずしもPCMCIA規格に限定されず、また、PCMCIAの規格では、甲第5号証のように時分割で同時に入出力されるような使われ方があるとしても、前記甲第4号証に開示されるとおり、PCMCIAの規格は適宜改造されるものであると共に、一般に通信分野において、複数の信号を同時に送信する際、共通信号線を時分割で使用するか、信号毎に独立の信号線を割り当てて送信するかは、当業者が適宜選択する設計事項にすぎないのだから、甲2発明の入出力部を、前記操作信号と前記表示信号を入出力し、前記通話用音声信号を入出力するよう構成する際、甲2発明の入出力部が、本件発明1のように、「前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む」よう構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点4について)
前記「第6」の「(6-4)甲第4号証」の項で述べたように、甲第4号証に「一つの電話送受信ユニット(モジュラーユニット)が、スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代して装着されることにより、装着された各々の移動体通信端末において通話を可能にする電話送受信ユニット(モジュラーユニット)」の技術(甲4技術B)が開示されている。
ここで、「通話」は通信業者と回線を契約することによってそのサービスを受けることが可能になることが周知慣用であるから、甲4技術Bで、複数の移動体通信端末に対し交代して共用される電話送受信ユニット(モジュラーユニット)は、1つの回線を契約した上で交代して使用されるものに他ならない。
また、前記甲4技術Bの移動体通信端末に含まれるノートブック型コンピュータやペン方式コンピュータと、甲2発明のパソコンは、パーソナルコンピュータとして共通する。
そして、甲2発明と甲4技術Bは、「一つの無線送受信ユニットを、携帯電話やパソコンを含む通信端末に交代して装着可能にする」技術であるという点で共通するとともに、甲2発明に甲4技術Bを適用することに特段の阻害要因は見あたらないから、前記周知慣用技術を踏まえ、甲2発明に甲4技術Bを適用し、甲2発明のパソコンを、電話送受信ユニットが装着されて通話が可能にされる移動体通信端末として構成し、本件特許発明1のように「1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」よう構成することは当業者が容易になし得ることである。

上記相違点1?4についての判断に加え、本件特許発明1が奏する効果は、甲2発明、及び甲第4号証、甲第3号証に記載された発明及び上記周知慣用技術から容易に予測できる範囲内のものであり、格別のものではない。

また、被請求人が口頭審理の際に提出した資料を参酌しても、特段、上記判断を覆すに足りるものは見あたらない。

以上により、本件特許発明1は、甲2発明、及び甲第4号証、甲第3号証に記載された発明及び上記周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明の特許については、前記無効理由4-2について判断するまでもなく、無効とすべきものである。
一方、以上により、本件特許の請求項2?6に係る発明の特許については、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が5/6を負担し、被請求人が1/6を負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、
前記電子回路を含み、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと、
前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し、
1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にすることを特徴とする電話送受信ユニット。
【請求項2】
基地局との間で信号を送受信するアンテナと、通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、操作に基づいて操作信号を生成する操作部と、表示信号に基づいて表示する表示部と、請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項3】
基地局との間で信号を送受信するアンテナと、請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で信号を入出力する入出力部と、移動体通信中継端末用の移動体通信端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末。
【請求項4】
入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、請求項3記載の移動体通信中継端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末。
【請求項5】
請求項2記載の移動体通信端末において、前記移動体通信端末は、携帯電話機、簡易型携帯電話機、携帯情報通信端末、又はモバイルコンピュータであることを特徴とする移動体通信端末。
【請求項6】
請求項4記載の移動体通信中継端末用の移動体通信端末において、前記移動体通信端末は、万年筆、キーホルダ、ライタ、又はペンダントの形態を有していることを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の回線を契約することなしに、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を実現する電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、機器価格及び回線使用料の低下に伴い、携帯・自動車電話等の移動体通信への加入者が増加している。とくに、携帯電話やPHS(Personal Handyphone System、簡易型携帯電話)等の加入者の増加はめざましい。また、モバイルコンピュータ(Mobile Computer、携帯型コンピュータ)等の普及に伴い、モバイルコンピュータに携帯電話端末やPHS端末等を接続してデータ通信を行う用途も増加しつつあり、今後、移動体通信への加入者数はますます増加すると考えられる。
【0003】
また、最近では、PHS端末とPDA(Personal Digital Assistant、携帯情報通信端末)とを一体化させたPHS一体型端末も発売され、一台の端末で電話通話や電子メール等のサービスを利用できるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、移動体通信では、割り当てられた周波数帯域の電波により通信を行っており、割り当てられた周波数帯域では一定の回線数しか提供することができない。このため、このまま加入者が増加していくと回線提供能力の限界を超えてしまうという問題が発生すると考えられる。
【0005】
また、PHS一体型端末は、様々な機能を実現できる反面、PHS端末や携帯電話端末に比べて大型であり持ち運びがやや不自由であるため、PHS端末や携帯電話端末とは別個に回線を契約して、PHS一体型端末とPHS端末等とを適宜使い分けているユーザもいた。このように、TPO(Time,Place,Occasion)に合わせて快適に移動体通信を行うためには、それぞれ別個に回線使用料を支払わなくてはならず、ユーザの負担が大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
また、従来の通信サービスでは、電子メールのデータを文字として表示する機能を有しないPHS端末や携帯電話端末等では、ユーザ宛に送られてきた電子メールの内容を知ることはできなかった。本発明の目的は、複数の回線を契約することなしに、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を実現する電話送受信ユニット及び移動体通信端末を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、複数の回線を契約することなしに、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を実現する電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、前記電子回路を含み、前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと、前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し、1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にすることを特徴とする電話送受信ユニットにより達成される。
【0009】
また、上記目的は、基地局との間で信号を送受信するアンテナと、通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、操作に基づいて操作信号を生成する操作部と、表示信号に基づいて表示する表示部と、上記の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線、及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末により達成される。
【0010】
また、上記目的は、基地局との間で信号を送受信するアンテナと、上記の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと、前記スロットに設けられ、前記電話送受信ユニットとの間で信号を入出力する入出力部と、移動体通信中継端末用の移動体通信端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末により達成される。
【0011】
また、上記目的は、入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと、通話用音声信号を音声として出力するスピーカと、上記の移動体通信中継端末との間で信号を送受信する手段とを有することを特徴とする移動体通信中継端末用の移動体通信端末により達成される。
また、上記の移動体通信端末において、前記移動体通信端末は、携帯電話機、簡易型携帯電話機、携帯情報通信端末、又はモバイルコンピュータであることが望ましい。
【0012】
また、上記の移動体通信端末において、前記移動体通信端末は、万年筆、キーホルダ、ライタ、又はペンダントの形態を有していることが望ましい。
【0013】
【0014】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を図1乃至図3を用いて説明する。図1は、本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。図2は、本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を詳細に示す斜視図である。図3は、本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末の回路構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、PHS端末10のボディ12の側面には、使用時にユーザの耳に接近するスピーカ58と、使用時にユーザの口に接近するマイク60とが設けられている。また、ボディ12の側面には、電話番号や所望の操作を入力するための操作ボタン18と、入力した電話番号や動作状態等を表示する液晶表示部20とが設けられている。
【0016】
ボディ12の上面には、PHSの基地局との間で信号を送受信するための送受信アンテナ22と、電話送受信ユニット24を着脱するためのスロット26とが形成されている。図2は、電話送受信ユニット24とスロット26とを詳細に示した図である。電話送受信ユニット24のカートリッジ28内には、電子回路(図3参照)が収納されている。また、カートリッジ28には、電子回路にPHS端末10側から電力を供給したり、PHS端末10との間で信号の入出力を行ったりするための入出力端子30が形成されている。入出力端子30は、電話送受信ユニット24をスロット26に挿入したときにスロット26に形成された入出力端子32と接続するように形成されている。また、カートリッジ28には、スロット26に形成されたガイドレール34と照合するように溝36が形成されている。ガイドレール34と溝36とは照合するように形成されているので、電話送受信ユニット24の誤挿入を防止することができる。
【0017】
スロット26の挿入口近傍にはスライドボタン38とバネ(図示せず)より成るロック機構が設けられている。図2は、スライドボタン38を矢印の方向にスライドした図である。スライドボタン38にはバネが取り付けられているので、矢印の方向にスライドボタン38をスライドすると、矢印と反対の方向にスライドボタン38を戻すようにバネが機能する。電話送受信ユニット24をスロット26に挿入する場合は、図2に示すようにスライドボタン38を矢印の方向にスライドして挿入口を開き、電話送受信ユニット24を挿入する。その後、矢印の方向にスライドボタン38をスライドしていた力を緩めると、スライドボタン38はバネにより所定の位置に戻される。挿入された電話送受信ユニット24はスライドボタン38により固定される。
【0018】
次に、図3を用いて電話送受信ユニット24とPHS端末10との回路構成を説明する。本実施形態による電話送受信ユニット24及びPHS端末10は、日本国内で多く用いられているPDC(Personal Digital Cellular system)方式のデジタル通信に対応したものである。
【0019】
図3において、一点鎖線内の構成要素は電話送受信ユニット24側に設けられ、点線内の構成要素はPHS端末10側に設けられている。一点鎖線内の構成要素は、多くの移動体通信端末において汎用的に用いられているものであるので、電話送受信ユニット側に設けられている。一方、点線内の構成要素は、送受信アンテナ22や受信アンテナ42のように電話送受信ユニット側に設けると良好な特性が得られないもの、液晶表示部20、スピーカ58、マイク60、操作部70、及びバッテリ76のように各々の移動体通信端末においてスペックが異なるものであるので、PHS端末10側に設けられている。
【0020】
PHS端末10には、送受信アンテナ22の他に、受信専用の受信アンテナ42がボディ12内に収納されている。このように、受信するアンテナを2系統設け、受信するアンテナを適宜切り替えて受信することにより受信状態の変化を少なくする方式を、ダイバーシチ受信方式という。ダイバーシチ受信方式は、経路の異なる電波の干渉によるマルチパスフェージング(multipassphasing)下においても、基地局からの信号を安定的に受信するために非常に有効な方式である。
【0021】
送受信アンテナ22により受信された受信信号は、送受共用器44を介して受信機46に入力される。また、受信機46には高速切換えシンセサイザ48から所定の周波数の信号が入力される。受信機46は、高速切換えシンセサイザ48から入力される所定の周波数の信号を用いて、送受共用器44から入力された受信信号に所定の信号処理をして復調器50に出力する。なお、基地局との送受信にはTDMA(Time Division Multiple Access)方式が用いられている。TDMA方式は、フレーム内の割り当て時間をそれぞれ分割して使用する方法である。TDMA方式においては、移動体通信端末は間欠的に送受信するバースト信号間の空きタイムスロットを利用して、周辺の各基地局の受信電界強度を瞬時に測定して良好に通信できる基地局を判別するので、瞬時にチャネル切換を完了できる高速切換えシンセサイザ48が用いられる。
【0022】
また、受信アンテナ42により受信された受信信号は、受信機52に入力される。また、受信機52には高速切換えシンセサイザ48から所定の周波数の信号が入力される。受信機52は、高速切換えシンセサイザ48から入力される所定の周波数の信号を用いて、受信アンテナ42から入力された受信信号に所定の信号処理をして復調器50に出力する。
【0023】
復調器50は、受信機46から入力される信号、又は受信機52から入力される信号を選択的に復調してTDMA回路54に出力する。TDMA回路54は、信号の多重・分離、誤り訂正、秘匿処理等の処理を行う機能を有している。TDMA回路54は、復調器50から入力された信号に所定の処理をして、CODEC(COder-DECoder)56に出力する。CODEC56は、TDMA回路54から入力されたデジタル信号をアナログの音声信号に変換してスピーカ58に出力する。スピーカ58は、入力された音声信号を音声として出力する。スピーカ58から出力された音声は、ユーザの耳に伝わる。
【0024】
一方、ユーザの口から発せられた音声は、マイク60により音声信号に変換され、CODEC56に入力される。CODEC56はマイク60から入力された音声信号をデジタル信号に変換してTDMA回路54に出力する。CODEC56からTDMA回路54に入力された信号は、TDMA回路54により所定の処理が行われた後、波形整形部62に出力される。波形整形部62に入力された信号は、波形整形された後、直交変調器64に出力される。直交変調器64は、高速切換えシンセサイザ48から入力される所定の周波数の信号を用いて、波形整形部62から入力された信号をπ/4シフトQPSK(Quarternary Phase-Shift Keying)変調方式を用いて変調する。π/4シフトQPSK変調方式を用いることにより、伝送効率を向上させることができる。
【0025】
直交変調器64にて変調された信号は、電力増幅器68に出力される。この電力増幅器68は高い線形増幅性能を有しているので、π/4QPSK変調波を良好に増幅することができる。電力増幅器68により増幅された信号は、送受共用器44を介して送受信アンテナ22から基地局に向けて発せられる。
【0026】
また、電源の入/切、電話番号の入力等の操作は、操作部70として設けられた操作ボタン18により行われ、操作信号が制御部72に入力される。制御部72は、入力された操作信号に基づいて電子回路の制御を行う。また、動作状態や操作部70から入力された電話番号等を示す表示信号が、制御部72から液晶表示部20に出力される。
【0027】
また、ボディ12内に設けられたバッテリ76からは、これらの電子回路に対して電力が供給される。このように、本実施形態によれば、上記のような機能を有する電子回路を、PHS端末等の移動体通信端末に共通に形成されたスロットに着脱可能なカートリッジ内に納めたので、PHS端末を用いて移動体通信を行いたいときには、電話送受信ユニットをPHS端末のスロットに装着することにより移動体通信を行うことができる。電話送受信ユニットは様々な移動体通信端末に装着することができるので、複数の回線を契約することなく、1つの回線を契約するだけで、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。
【0028】
また、上記のような移動体通信端末では、電話送受信ユニット内に形成される電子回路を移動体通信端末側に形成する必要がないので、移動体通信端末のコストダウンに寄与することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を図4を用いて説明する。図4は、本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。図1乃至図3に示す第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔する。
【0029】
本実施形態の電話送受信ユニットは、第1実施形態による電話送受信ユニットと同様である。本実施形態は、移動体通信端末がモバイルコンピュータであることが第1実施形態と異なる。モバイルコンピュータ78には、図3の点線内と同様に、送受信アンテナ22、受信アンテナ(図示せず)、スピーカ58、マイク60、液晶表示部20、操作部70、バッテリ(図示せず)が設けられている。
【0030】
図4は、モバイルコンピュータ78の蓋部80を開いた状態を示している。本体部82には、操作部70として複数のキー86が設けられ、複数のキー86の右側にはマイク60とスピーカ58とが設けられている。マイク60は、ユーザから発せられる音声を良好に入力するため、所望の角度に傾けることができる。本体部82の手前側の側面には、電話送受信ユニット24を挿入するためのスロット26が形成されている。スロット26には、電話送受信ユニット24を固定するためのスライドボタン38が形成されている。
【0031】
一方、蓋部80には、液晶表示部20、送受信アンテナ22、受信アンテナ(図示せず)が形成されている。通信を行うとき、液晶表示部20には、電話番号や電子メールアドレス等を入力するための画面や、動作状態を示す画面等が表示される。このように、本実施形態によれば、モバイルコンピュータにスロットを形成したので、モバイルコンピュータを用いて移動体通信を行いたいときには、電話送受信ユニットをモバイルコンピュータのスロットに装着することにより移動体通信を行うことができる。これにより、複数の回線を契約することなしに、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。
【0032】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を図5を用いて説明する。図5は、本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。図1乃至図4に示す第1又は第2実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔する。
【0033】
本実施形態の電話送受信ユニットは、第1又は第2実施形態による電話送受信ユニットと同様である。本実施形態は、移動体通信端末がPDAであることが第1又は第2実施形態と異なる。PDA88には、図3と同様に、送受信アンテナ22、受信アンテナ(図示せず)、スピーカ58、マイク60、バッテリ(図示せず)が設けられている。ただし、本実施形態では、液晶表示部20と操作部70とを一体化したタッチパネル90を用いている。
【0034】
PDA88のボディ92には、タッチパネル90が形成され、タッチパネル90の右側にはマイク60とスピーカ58とが設けられている。ボディ92の手前側の側面には、電話送受信ユニット24を挿入するためのスロット26が形成されている。スロット26には、電話送受信ユニット24を固定するためのスライドボタン38が設けられている。
【0035】
通信を行うとき、タッチパネル90には、電話番号や電子メールアドレス等を入力するための画面が表示される。ユーザはタッチパネル90をタッチすることにより、電話番号や電子メールアドレス等を入力する。また、タッチパネル90には、動作状態を示す画面等も表示される。このように、本実施形態によれば、PDAにスロットを形成したので、PDAを用いて移動体通信を行いたいときには、電話送受信ユニットをPDAのスロットに装着することにより移動体通信を行うことができる。これにより、複数の回線を契約することなしに、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。
【0036】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末を図6を用いて説明する。図6は、本実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末を示す斜視図である。図1乃至図5に示す第1乃至第3実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔する。
【0037】
本実施形態では、第1乃至第3実施形態で移動体通信端末に設けられていた一部の構成要素を移動体通信中継端末に設けることにより移動体通信端末を小型化し、移動体通信中継端末により信号を中継して移動体通信を行うことに主な特徴がある。なお、本実施形態の電話送受信ユニットは、第1乃至第3実施形態による電話送受信ユニットと同様である。
【0038】
移動体通信中継端末94には、スロット26、送受信アンテナ22、受信アンテナ(図示せず)、バッテリ(図示せず)、所定の信号処理を行うための電子回路(図示せず)、及び移動体通信端末と信号の送受信を行うための送受信アンテナ96が設けられている。移動体通信中継端末94は、カバン等に入れて持ち運びができるように小型に形成されている。なお、スロット26の形状は、第1乃至第3実施形態に示したスロット26と同様である。また、スロット26には電話送受信ユニット24を固定するためのスライドボタン38が設けられている。
【0039】
図6に示すように、本実施形態による移動体通信端末は、腕時計98である。腕時計98のボディ100内には、移動体通信中継端末94と信号の送受信を行うための送受信アンテナ(図示せず)、及び所定の処理を行うための電子回路(図示せず)が形成されている。ボディ100の上面には、操作ボタン18、液晶表示部20、スピーカ58、マイク60が形成されている。通信を行うとき、液晶表示部20には、電話番号や電子メールアドレス等を入力するための画面が表示される。ユーザは、操作ボタン18を押して所定の操作を行うことにより、電話番号や電子メールアドレス等を入力する。また、液晶表示部20には、時刻や動作状態等を示す画面等も表示される。
【0040】
なお、液晶表示部20にタッチパネルを用い、タッチペンにより電話番号や電子メールアドレス等を入力するようにしてもよい。このように、本実施形態によれば、スロットを移動体通信中継端末に設けたので、小型の移動体通信端末である腕時計を用いて移動体通信を行いたいときには、移動体通信中継端末により送受信信号を中継して移動体通信を行うことができる。これにより、腕時計等の小型の移動体通信端末を用いて、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。
【0041】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末を図7を用いて説明する。図7は、本実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末を示す斜視図である。図1乃至図6に示す第1乃至第4実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔する。
【0042】
本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信中継端末は、第4実施形態と同様である。本実施形態は、移動体通信端末が第4実施形態と異なる。図7に示すように、本実施形態による移動体通信端末102のボディ104は、眼鏡のフレーム106に取付け可能に形成されている。ボディ104内には、所定の処理を行うための電子回路(図示せず)、移動体通信中継端末94と信号の送受信を行うための送受信アンテナ(図示せず)、及び電子回路に電力を供給するためのバッテリ(図示せず)が設けられている。ボディ104の側面には、最小限の操作ボタン18が形成されている。また、ボディ104には、マイク60が形成されている。マイク60は、ユーザの口に接近するよう棒状のフレーム108を有している。また、イヤホン112内に設けられたスピーカ58は、ボディ104内に形成された電子回路に配線ケーブルを介して接続されている。ユーザは、イヤホンを耳に装着し、マイク60から音声を入力することにより通信を行う。
【0043】
このように、本実施形態によれば、移動体通信端末を眼鏡に取り付けられるようにしたので、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による通信サービスシステムを図8を用いて説明する。図8は、本実施形態による通信サービスシステムを示すブロック図である。
【0044】
本実施形態は、第1乃至第5実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末等を用いて、電子メールデータを音声変換して配信する通信サービスを提供することに主な特徴がある。送信者から通信網を介して通信サービス業者に送信された電子メールデータや音声信号は、図8に示すように、データ/音声判定部114において、電子メールデータか音声かを判定し、電子メールデータである場合はデータ処理部116に入力される。データ処理部116は、入力された電子メールデータに所定のデータ処理を行い、音声合成部118に出力する。音声合成部118では、入力されたデータを音声信号に変換し、センターシステム120に出力する。センターシステム120では、入力された音声信号を記憶装置(図示せず)に記憶する。
【0045】
また、データ/音声判定部114において、音声と判断された音声信号は音声処理部122に入力される。音声処理部122は、入力された音声信号に所定の処理を行い、センターシステム120に出力する。センターシステム120では、入力された音声信号を記憶装置に記憶する。ユーザが電子メールの内容を知りたいときは、移動体通信端末等を用いてセンターシステム120にアクセスする。ユーザからのアクセスがあると、センターシステム120は記憶装置に記憶された音声信号をユーザの移動体通信端末等に送信する。
【0046】
このように、本実施形態によれば、電子メールのデータを文字として表示する機能を有しない移動体通信端末等を用いても、ユーザ宛の電子メールの内容を知ることができる。
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、第1乃至第5実施形態において、カートリッジ内に設けられる電子回路の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、CODECや制御部等の構成要素は移動体通信端末や移動体通信中継端末に設けられてもよい。また、一部の構成要素を一体化したり、省略してもよいし、他の構成要素を更に付加してもよい。
【0048】
また、第1乃至第5実施形態では、PDC方式のデジタル通信を例に説明したが、PDC方式のデジタル通信に限られるものではなく、他のデジタル通信方式でもよいし、アナログ通信等に適用してもよい。また、第1実施形態では、PHS端末を例に説明したが、通常の携帯電話や自動車電話などにも適用することができる。
【0049】
また、第1乃至第5実施形態において、信号の送受信は、PHSの基地局との間でのみ行われるものではなく、NTTの基地局、構内回線の基地局などあらゆる基地局との間で行うことができる。また、第1乃至第5実施形態では、カートリッジの断面形状はほぼ長方形に形成されているが、円形、又は楕円形などでもよい。また、電子回路を更に集積化すれば、カートリッジはカード型、チップ型などに形成することもできる。
【0050】
また、第1乃至第5実施形態において、移動体通信端末は、例えばノート型コンピュータ、電子手帳、携帯型DVD(Digital Versatile Disk)デッキ等でもよい。また、万年筆、グローブ、キーホルダ、ライタ、ユニホーム、ペンダント等のあらゆる物に移動体通信端末を取り付けられるようにしたり、組み込んだりしてもよい。
【0051】
また、第1乃至第3実施形態において、単に通話や電子メール通信等を行うだけでなく、液晶表示部やタッチパネル等を用いたテレビ電話などを実現してもよい。また、第4及び第5実施形態において、移動体通信中継端末に液晶表示部や操作部等を更に設けてもよい。
【0052】
また、第1乃至第5実施形態では、電話送受信ユニットと移動体通信端末、又は電話送受信ユニットと移動体通信中継端末との間の信号の入出力には入出力端子を用いているが、赤外線通信など他の方式により入出力するようにしてもよい。また、第6実施形態において、音声合成部からセンターシステムに入力された音声信号、及び音声処理部からセンターシステムに入力された音声信号は、センターシステムの記憶装置に記憶されずに、直接受信者に送信されてもよい。
【0053】
また、第6実施形態において、ユーザが用いる通信端末は移動体通信端末に限定される物ではなく、通常の電話機等を用いてセンターシステムにアクセスしてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、電話送受信ユニットを移動体通信端末のスロットに装着することにより、移動体通信端末を用いた移動体通信を行うことができる。電話送受信ユニットは様々な移動体通信端末に装着することができるので、複数の回線を契約することなく、1つの回線を契約するだけで、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。また、上記のような移動体通信端末では、電話送受信ユニット内に形成される電子回路を移動体通信端末側に形成する必要がないので、移動体通信端末のコストダウンに寄与することができる。
【0055】
また、本発明によれば、電話送受信ユニットを装着するスロットを移動体通信中継端末に設けたので、移動体通信中継端末により送受信信号を中継して、移動体通信端末を用いた移動体通信を行うことができる。移動体通信端末を小型化することができるので、時、場所、場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。
【0056】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を詳細に示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末の回路構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末を示す斜視図である。
【図7】本発明の第5実施形態による電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末を示す斜視図である。
【図8】本発明の第6実施形態による通信サービスシステムを示すブロック図である。
【符号の説明】
10…PHS端末
12…ボディ
18…操作ボタン
20…液晶表示部
22…送受信アンテナ
24…電話送受信ユニット
26…スロット
28…カートリッジ
30、32…入出力端子
34…ガイドレール
36…溝
38…スライドボタン
42…受信アンテナ
44…送受共用器
46…受信機
48…高速切換えシンセサイザ
50…復調器
52…受信機
54…TDMA回路
56…CODEC
58…スピーカ
60…マイク
62…波形整形部
64…直交変調器
68…電力増幅器
70…操作部
72…制御部
76…バッテリ
78…モバイルコンピュータ
80…蓋部
82…本体部
86…キー
88…PDA
90…タッチパネル
92…ボディ
94…移動体通信中継端末
96…送受信アンテナ
98…腕時計
100…ボディ
102…移動体通信端末
104…ボディ
106、108…フレーム
112…イヤホン
114…データ/音声判定部
116…データ処理部
118…音声合成部
120…センターシステム
122…音声処理部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-04-27 
結審通知日 2007-05-02 
審決日 2007-05-10 
出願番号 特願平9-166916
審決分類 P 1 113・ 537- ZD (H04M)
P 1 113・ 55- ZD (H04M)
P 1 113・ 113- ZD (H04M)
P 1 113・ 121- ZD (H04M)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉宮田 繁仁  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 富澤 哲生
山本 春樹
登録日 2000-03-24 
登録番号 特許第3048964号(P3048964)
発明の名称 電話送受信ユニット、移動体通信中継端末、及び移動体通信端末  
代理人 岩永 勇二  
代理人 山内 貴博  
代理人 上田 一郎  
代理人 樋口 正樹  
代理人 遠藤 和光  
代理人 遠藤 和光  
代理人 平田 忠雄  
代理人 平田 忠雄  
代理人 岩永 勇二  

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