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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H04N
管理番号 1191395
審判番号 無効2007-800070  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-05 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第3569522号「表示装置」の特許無効審判事件についてされた平成19年11月19日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10002号 平成20年 7月 9日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第3569522号の請求項1ないし請求項3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第一 経緯

(a)本件特許に係る経緯は、概要、以下のとおりである。
出願日 平成7年6月14日(遡及出願日)
(特願2003-344634号)
(特願平7-147445号の分割)
設定登録日 平成16年6月25日
(権利者:橋本公佑、請求項の数:3)
(b)本件審判の請求に係る経緯は、概要、以下のとおりである。
請求書 平成19年4月5日
答弁書 平成19年5月11日
口頭審理 平成19年7月13日
(口頭審理陳述要領書(請求人)の提出あり)
上申書(被請求人)平成19年7月20日
(口頭審理に準ずる陳述要領書と題して提出された もの)
上申書(請求人) 平成19年8月15日
上申書(被請求人)平成19年8月22日
先の審決 平成19年11月19日
(結論:請求不成立。)
(c)先の審決に対する訴えの経緯は、概略、以下のとおりである。
訴え 平成20年(行ケ)第10002号 審決取消請求 事件
(原告:本件審判の請求人)
判決言渡 平成20年7月9日
(主文:審決取消。)
(d)判決確定後の経緯は、概略、以下のとおりである。
訂正の申立 なし
上申書(その2-1)(被請求人)平成20年9月3日
上申書(その2-2)(被請求人)平成20年9月3日

(なお、以下「○1」、「○2」および「○3」なる表記は、判決中の記号「○の中に数字を入れた記号を示す。情報処理システムの能力上、判決中の同記号を表すことができないことによる。)

第二 本件特許発明

本件特許に係る請求項1から請求項3までの発明(以下請求項1に係る発明を「本件特許発明」、請求項2、3に係る発明をそれぞれ「本件特許発明2」、「本件特許発明3」という。)は、それぞれ、設定登録時における願書に添付した明細書(特許明細書)の特許請求の範囲の請求項1から請求項3までに記載された下記のとおりのものである。
記(特許明細書の特許請求の範囲の記載)
【請求項1】
LCDを備え、
前記LCDに異なる画像を順次表示する場合において、
前記LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に、前記LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記LCDにおける前記全画面黒信号の入力時の画面走査時の周波数を、前記映像信号のそれよりも高くするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記LCDにおいて、前記映像信号の入力と前記全画面黒信号の入力との間に入力信号が無い期間を設けたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

第三 当事者の主張

1.請求
(1)請求の趣旨
「特許第3569522号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求める。

(2)請求の理由
《予備的主張》
本件特許発明は「二次元表示装置」を含むものではない。
仮に、本件特許発明が「二次元表示装置」までも含むと解するならば、以下の無効理由1及び無効理由2が発生する。
〈無効理由1〉
本件特許の請求項1から請求項3までに係る発明は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された刊行物たる甲第2号証(原出願の公開公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。すなわち、
本件特許発明が「二次元表示装置」までも含むと解するならば、本件特許に係る出願は分割出願の要件を欠くことになり、出願日は実際に出願された日である平成15年10月2日となる。甲第2号証は、本件特許の原出願の明細書に記載した事項及び図面の内容を掲載した刊行物(公開公報)である。本件特許発明の技術的範囲に含まれる「三次元表示装置」が甲第2号証に記載されていることは明らかである。
〈無効理由2〉
本件特許の請求項1から請求項3までに係る発明は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された刊行物たる甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

《無効理由3》
本件特許の請求項1から請求項3までに係る発明は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された刊行物たる甲第6号証、甲第7号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。すなわち、
(a)甲第6号証には「異なる方向像を時間的に交互に表示すること」が記載されている。そして、方向像を左右両眼に分離投影させることは、立体映像表示装置として成立させるための原理原則である。
甲第7号証または甲第4号証には、1フィールド期間において画像をLCDに表示させるごとに表示させた画像を消去する技術が開示されているところ、この技術を甲第6号証に適用して請求項1(本件特許発明)のように構成することは容易に想到し得る。
甲第4号証では、フィールド周波数の倍の走査速度で画素を消去しているところ、この技術を甲第6号証に適用して請求項2のように構成することは容易に想到し得る。
甲第7号証では、第1期間22と動作消去期間24との間に休止期間23を設けているところ、この技術を甲第6号証に適用して請求項3のように構成することは容易に想到し得る。
(b)本件特許発明のLCDが誘電分極原理によるものであることは特許請求の範囲に記載されていない。甲第7号証のLCDが「強誘電体LCD」であると限定的に解することはできない。

(3)証拠方法
甲第1号証:平成18年(ワ)12733号に基づく損害賠償(特許権) 請求事件の被告第3準備書面
甲第2号証:特開平8-340556号公報
甲第3号証:平成18年(ワ)12733号に基づく損害賠償(特許権) 請求事件の訴状
甲第4号証:国際公開95/01701パンフレット
甲第5号証:特表平8-500915号公報
甲第6号証:特開平6-205446号公報
甲第7号証:国際公開94/06249パンフレット
甲第8号証:特表平8-505014号公報

2.答弁
(1)答弁の趣旨
「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。

(2)答弁の理由
《予備的主張に対して》
本件特許発明の名称は「表示装置」であり、次元について格別限定をしていないので、本件特許発明は「二次元表示装置」を含むものである。
〈無効理由1に対して〉
分割の適法性は、審査過程で判断されるものであって、特許権の設定の登録があった後において判断されるものではない。特許権の設定の登録があった後において出願日を変更する規定は、特許法のどこにもない。認否を留保する。
また、原出願の明細書には「二次元表示装置」についての記載もあり(段落0028、段落0112、図17など)、本件特許発明は「二次元表示装置」を含むものである。
〈無効理由2に対して〉
甲第4号証には「立体映像表示装置において全画面黒画像信号を入力する」は記載されていない。

《無効理由3に対して》
(a)面順次で立体画像を表示することは公知である(甲第6号証)。
(b)甲第4号証では「全画面黒信号」につき深堀りが不足している。ネマティック液晶の装置では、電圧非印加状態(ノーマルブラック)でも電圧印加状態(ノーマルホワイト)でも偏向フィルムの配置次第で黒にできる。電圧VBで「全画面黒信号」を規定することはできない。
(c)本件特許発明のLCDは誘電分極原理(ネマティック液晶)によるものであり、自発分極原理(強誘電体LC)によるものではない。
甲第7号証は強誘電体LCDである。その帰線消去期間は、強誘電体LCDの特性上(電界除去後も分子配向が保持される)やむを得ず必要な期間であり、格別のものではない。また、「帰線消去」や「フルオン又はフルオフのどちらかにする」の記載があるだけで「黒表示」という文言はない。

(3)証拠方法
答弁書の添付書類の目録の欄に「甲第9号証 特許庁審査官による特許メモ写し」と記載して、同写しを添付している。
平成20年9月3日付け上申書(その2-2)に乙第1?4号証を添付している。
乙第1号証:「薄膜ハンドブック」(発行1983年)表紙コピー
乙第2号証:「薄膜ハンドブック」(発行1983年)622頁・623頁コピー
乙第3号証:雑誌「MICRODEVICES」(2005-12)表紙コピー
乙第4号証:雑誌「MICRODEVICES」(2005-12)の3頁の
コピー

第四 当審の判断

1.予備的主張について
(1)特許明細書の記載の要点
特許明細書の記載の要点は、以下のとおりである。
(a)本発明の目的は、透過型映像表示板が時分割して表示する方向像を観察者の左右両眼に投影する立体映像表示装置に関して、左右方向に3以上の方向像を投影することができ、また、観察者の位置が左右、上下および前後方向に移動しても、観察者の位置に追従して常に立体映像を表示することができ、また、通常の2次元映像表示に切り換えた場合に、広い範囲で観察でき、また、透過型映像表示板にLCDを使用しても、時分割した方向像を時間的に分離して表示することができる立体映像表示装置を得ることにあること。(段落0018、段落0021、段落0027、段落0031)
(b)本発明の表示装置は、LCDに異なる画像を順次表示する場合において、LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に、LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力するとの手段を備えること。(段落0032)
(c)本発明の表示装置によれば、どの任意の時間で前後の映像が一部分でも同時に表示されることが無く、前後の映像を時間的に分離して表示することができるとの効果を得ること。(段落0033)
(d)実施例1とする例(図1)において、1は透過型映像表示板、2は凸レンズ板、oは凸レンズ板中心、FLは焦点、3は透過型映像表示板1を境に観察者のいる空間から反対側の空間に配置された発光面上の任意の部分領域で発光する分割光源であること。
分割光源3の発光領域3Lが発光しているときは線Lを含む斜線領域内から見た場合だけ、また発光領域3Rが発光しているときは線Rを含む斜線領域内から見た場合だけ透過型映像表示板1の映像を観察することができるので、映像R、Lを高速に切り換えて表示し、それに対応して分割光源3の左右発光領域3R、3Lを高速に切り換えることで、線Lを含む斜線領域内のどの位置からでも左眼で、また線Rを含む斜線領域内のどの位置からでも右眼で、映像R、Lを左右眼別々に視差角の異なる方向像として見ることができること。(段落0034、段落0035)
(e)実施例15とする例(図17)において、4は透過型映像表示板1に表示する2つの方向像の信号を出力する左右映像信号源で、4R、4Lはそれぞれ映像R、Lを出力する右眼映像、左眼映像信号源である。5は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像を時間交互に切り換える時分割回路、6は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像の時間交互の切り換えに対応して分割光源3を左右2分割した領域3R、3Lで交互に発光するように制御する分割制御回路であること。(段落0034)
立体(3次元)表示と平面(2次元)表示を切り換える平面表示変更回路27を備えること。
立体表示の場合には、平面表示変更回路27により時分割回路5と分割制御回路6の側が選択され、分割光源3を分割制御すると同時に映像R、Lを時間交互に切り換えて表示板1に入力して立体表示をし、平面表示の場合には、平面表示変更回路27により片眼用映像(右眼映像4R)と全面発光回路26の側が選択され、分割光源3を全面で発光させると同時に専ら右眼映像Rを表示板1に入力して平面表示をすること。
通常の立体でない映像を広い範囲で観察できること。(以上、段落0059)
(f)実施例22?実施例24とする各例(図24、図25、図26、図27)において、4は透過型映像表示板1に表示する2つの方向像の信号を出力する左右映像信号源で、4R、4Lはそれぞれ映像R、Lを出力する右眼映像、左眼映像信号源である。5は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像を時間交互に切り換える時分割回路、6は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像の時間交互の切り換えに対応して分割光源3を左右2分割した領域3R、3Lで交互に発光するように制御する分割制御回路であること。(段落0034)
映像R、L(映像RとLはあらかじめフィールド1とフィールド2が逆にされている)の片フィールドを、全画面黒表示切換回路41で全画面黒表示信号源42と切り換え、時分割回路5でフレーム切り換え透過型映像表示板1に入力すること。このとき、1フィールド目(1ライン目から262.5ライン目まで)に映像R-1のフィールド1が入力され、次に2フィールド目(1ライン目から262.5ライン目まで)に全画面黒信号が入力されて映像R-1が消去され、次に3フィールド目に映像L-1のフィールド1が入力され、次に4フィールド目に全画面黒信号が入力されて映像L-1が消去され、以下これを繰り返すこと。この結果、どの時間をとっても両画面は一部分なりとも同時に表示されることがなく、映像R、Lの全画面を時間分離できること。(段落0067)
(g)図25には、「右眼用映像R-1」(フィールド)、「黒信号」(フィールド)、「左眼用映像L-1」(フィールド)、黒信号(フィールド)、「右眼用映像R-1」(フィールド)、「黒信号」(フィールド)、「左眼用映像L-1」(フィールド)、・・・の順のように、図27には、「右眼用映像R-1・右眼用映像R-2」(フレーム)、「黒信号」(フレーム)、「左眼用映像L-1・左眼用映像L-2」(フレーム)、「黒信号」(フレーム)、「右眼用映像R-1・右眼用映像R-2」(フレーム)、「黒信号」(フレーム)、「左眼用映像L-1・左眼用映像L-2」(フレーム)の順のように、 それぞれ、黒信号を挟んで右眼用信号(フィールド単位又はフレーム単位)と左眼用信号(フィールド単位又はフレーム単位)が時間的に交互に表示することが見て取れること。

(2)検討
(a)本件特許発明は「異なる画像を順次表示する場合において、・・・全画面黒信号を入力する」構成であるので、「異なる画像を順次表示する」構成と「全画面黒信号を入力する」構成とを併せて備える実施例(22?27)を参照すべきである。以下、実施例22を代表して参照し検討をする。
実施例22によれば、本件特許発明の「異なる画像」とは、右眼用映像信号源4Rと左眼用映像信号源4Lからそれぞれ出力される2つの方向像(右眼用映像Rと左眼用映像L)のことであり、「順次表示する」とは、2つの方向像を時分割回路5により時間的に交互に切り換えて透過型映像表示板1に交互に表示することであることが認められる。すなわち、「異なる画像」とは「(異なる映像信号源から出力される方向の)異なる画像」であり、「順次表示する」とはこのような「(方向の)異なる画像」を「時間的に交互に表示する」ことであることが認められる。
したがって、本件特許発明は、実質、三次元表示装置であるということができる。
(b)特許明細書には「また、透過型映像表示板に表示する映像をフィールド毎に異なる方向像とせず同一映像の繰り返しと線状光源の同時照射によって通常の2次元映像表示をする場合でも、観察位置が立体表示と同様に1カ所しかないという問題点があった。」(段落0014)との記載がある。
これによれば、特許明細書では、「透過型映像表示板に表示する映像をフィールド毎に異なる方向像と」することが立体表示であり、「透過型映像表示板に表示する映像をフィールド毎に異なる方向像とせず同一映像の繰り返し」をすることが二次元表示であると言っていることは明らかである。
なお、同様の趣旨の記載は、甲第6号証の段落0021、甲第7号証の34頁にも記載されており、上記認識は、本件特許明細書に限らず、一般的な認識でもあることが窺われる。
(c)2つの方向像(右眼用映像R、左眼用映像L)のそれぞれについて一つ一つを見れば「(単一の映像信号源から出力される)経時的に変化する一連の画像」であり、その限度において「異なる画像」と言うこともできるが、本件では、2つの方向像を交互に表示板1に入力することから、「LCDに・・・順次表示する」段階での「異なる画像」は、もはや「経時的に変化する一連の画像」ではあり得ない。結果、「LCDに異なる画像を順次表示する」を、「LCDに異なる画像(経時的に変化する一連の画像)を順次表示する」と解釈することはできない。
(d)実施例15の平面表示の態様では表示板1に専ら右眼用映像Rを入力するところ、右眼用映像Rが「経時的に変化する一連の画像」であることは前記のとおりであり、「LCDに異なる画像(経時的に変化する一連の画像)を順次表示する」と言うこともできる。しかし、この平面表示の態様において「全画面黒信号を入力すること」は記載されておらず、実施例15は、本件特許発明「異なる画像を順次表示する場合において、・・・全画面黒信号を入力する」の実施例ではない。
(e)被請求人は、原出願の明細書には「二次元表示装置」についての記載もあり(段落0028、段落0112、図17など)、本件特許発明が「二次元表示装置」を含むものであると主張する。
しかし、原出願の明細書に記載された「二次元表示装置」は「全画面黒信号を入力する」構成を備えた「二次元表示装置」ではない。他方、「経時的に変化する一連の画像」に「全画面黒信号入力する」構成を備えた表示装置については記載がない。本件特許発明が「二次元表示装置」を含むものであるとはいえない。
(f)以上によれば、本件特許発明は、三次元表示装置であり、二次元表示装置をも含むものであると解釈する余地はない。

(3)まとめ
本件特許発明が二次元表示装置をも含むものであると解釈する余地はないことは前記のとおりである。予備的主張のうち、本件特許発明が二次元表示装置を含むことを前提とする無効理由1および無効理由2の部分については採用することができない。

2.無効理由3について
(1)甲各号証の検討
甲各号証には、以下の記載がある。
(a)甲第6号証(特開平6-205446号公報)
(ア)「【産業上の利用分野】本発明は眼鏡を必要としない立体映像表示装置に係り、特に、解像度が高く、明るい立体映像を表示することのできる立体映像表示装置に関する。」(段落0001)
(イ)「【従来の技術】眼鏡を必要としないで立体映像を表示するには、なんらかの光学作用で、立体映像を構成する多方向像のうち各方向像に対応する表示光線を観察者の眼の位置で収束させ、それぞれの収束点が横方向に観察者の左右両眼の間隔(瞳孔間隔)になるようにすることによって、そこに両眼を置くと自律的に左右両眼にそれぞれ左右映像が分離投影され、立体映像として観察できるようにする必要がある。」(段落0002)
(ウ)「・・・図5に上方から見た原理図で示すように、映像表示装置として背面照射型の液晶表示板(LCD)など透過型映像表示板を用い、このLCDをはさんで観察者とは反対側に複数の線状の光源Lを配置して構成するものも考えられている。 LCDに表示する映像としては、その表示面上に各方向像が方向の順で繰り返し並ぶようにする。図5では、方向数が立体映像を構成しうる最低の2方向とした場合を示し、図中に示される表示画素P1は観察者の左眼EYE1への映像を、表示画素P2は観察者の右眼EYE2への映像をそれぞれ示している。図示のように、観察者の左眼EYE1と表示画素P1ならびに観察者の右眼EYE2と表示画素P2をそれぞれ結ぶ各線の交点に線状光源Lを配置すれば、線状光源からの照射光によるLCD上に繰り返し並んでいる表示画素P1とP2はそれぞれ観察者の左眼EYE1と右眼EYE2の位置に分離して収束し、ここに左右眼を置いたとき、眼鏡を必要としないで立体映像が観察できるようになる。」(段落0004、0005)
(エ)「【発明が解決しようとする課題】図5について説明した従来の立体映像表示装置は、LCDの照射光源として複数の線状光源を使用しているため、線状光源Lの輝度を高めることにより原理的には大幅な明るさ向上が見込め、また、レンチキュラー板レンズ等を使用していないので収差ボケもあり得ない。従ってこの種の立体映像表示装置は、従来のスリット板やレンチキュラー板レンズを使ったものに比し、大幅に改善されたものであるということができる。しかし、この改善された立体映像表示装置においても、他の種類の表示装置と同様、方向数(図5の場合は2)の増加とともにLCDの表示面全体に1方向像の占める割合が1/方向数となって小さくなり、その面での解像度低下は免れ得ない。 本発明の解決しようとする課題は、図5について説明した種類の立体映像表示装置を改良して、明るい表示映像が得られるなど装置のもつ本来的に優れた利点はそのまま維持しながら、方向数に関係なく高解像度な映像表示が行なえるようにし、そのための立体映像表示装置を提供することが本発明の目的である。」(段落0006、0007)
(オ)「【実施例】以下に添付図面を参照して実施例により本発明を詳細に説明する。図5に示す従来型との違いが一目して分かるように、本発明による立体映像表示装置を上方から見た原理図で示したのが図1である。 図1において、LCDなど透過形映像表示板の映像表示面には、図5のように各方向像が方向の順に繰り返し並ぶのではなく、いずれか1種類の方向像を表わす映像VD1またはVD2が表示画素P1、P2、P3、--- に表示されてこれが観察者の左眼EYE1または右眼EYE2にそれぞれ照射されるようにする。そして映像表示面が左眼EYE1用の映像VD1を表示しているときには、観察者からみて映像表示板の背後に配置された複数の線状光源Lのうち●で示す左眼EYE1用の光源LL1のみを点燈し、○で示す右眼EYE2用の光源LL2は消燈しているようにする。 次の時点で映像表示面に右眼EYE2用映像VD2が表示され、これに合わせて複数の線状光源Lのうち○で示す右眼EYE2用の光源LL2が点燈し、●で示す左眼EYE1用の光源LL1は消燈する。この表示映像VD1、VD2と線状光源LL1、LL2が時間の経過とともに変化していく状態を図2に示す。 以上のように、本発明は、従来LCDなど透過形映像表示板の映像表示面を空間的に分割して左眼用、右眼用映像を表示させていたのを、映像表示面に左眼用ないし右眼用映像として全面同じ側の映像を表示させて、映像照射用の複数の線状光源も含めこれを左眼用、右眼用と時分割的に切り替える(状態変化)ようにしたことに特徴があり、これにより方向数の増加等による解像度の低下を生ずることがなくなった。」(段落0009?0012)
(b)甲第7号証
(ア)「1. Field of the Invenntion This invention relates to illumination systems designed to improve image resolution and permit look-around viewing in liquid crystal and similar flat panel transmissive three dimensional (3-D)displays and enhanced resolution and color two dimensional (2-D) displays, for use in computers, television and the like viewing apparatus.」(1頁20?27行)
「1.発明の分野 この発明は、コンピュータ、テレビジョン、及び同様のビューイング装置内に使用される、液晶及び類似のフラットパネル伝送性三次元(3-D)ディスプレイ及びエンハンスト解像度かつ色彩二次元(2-D)ディスプレイ内の画像解像度を改善しかつルックアラウンド(look around)ビューイングをできるようにするために設計された照明システムに関する。」(甲第8号証を参照する際の対応する箇所は、13頁4?9行。)
(イ)「DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS
The basic concept of displays using the stroboscopic illumination systems object of this invention is explained with reference to FIG. 1 which depicts schematically a general configuration of autostereoscopic and 2-D displays incorporating the system. A two dimensional light valve array 6, such as a liquid crystal panel (LCD) or a similar imaging device, is used to generate images by electronically scanning the array 6 which is comprised of rows and columns of individual pixels. The operation of such imaging devices is well known to those skilled in the art. Information is inputted to the LCD 6 via an input 10 which is usually a ribbon cable.
The illumination of the LCD 6 is provided by the stroboscopic or non-stroboscopic light source means 3, which is described in its several versions in the following, can consist of several different types of light sources, some in combination with electro-optical shutters. The emitting regions of the light sources will generally be long, thin, and vertically oriented or will be small and point like, as described in US -A-5,036,385. Light source means 3 is controlled and driven by signals through input 9 from the electronic control module I. Control module 1 receives its timing signals through input 8 and generates a sequence of light flashes appropriately synchronized with the generation of an image on LCD 6. In addition to light sources or combination of light sources and electro-optical shutters, the light source means 3 contains appropriate reflectors, mechanical supports, cooling means, and means for adjusting the position of said light sources to achieve a desired geometry of the illttmination system. An opaque flat black non-reflective barrier 96 blocks the area between and to the sides of the light sources 3, so as not to allow light to exit the light source 3 or be reflected from the light source 3 from points other than the light source 3. Barrier 96 can be a flat black metal plate with slots or holes cut in its surface in front of the light source 3.」(9頁26行?10頁23行)
「好適実施例の説明 この発明の立体照明システム目的を使用するディスプレイの基本構想が、このシステムを組み込んでいる立体及び2-Dディスプレイの全体構成を概略的に描く第1図を参照して説明される。液晶パネル(LCD)又は類似の作像デバイスのような、二次元ライトバルブアレイ(6)は、個々の画素の行と列で構築されるアレイ(6)を電子的に走査することによって画像を発生するために使用される。このような作像デバイスの動作は、当業者に周知である。情報は、通常リボンケーブルである入力(10)を経由してLCD(6)に入力される。 LCD(6)の照明は、立体又は非立体光源手段(3)によって提供され、この光源手段は次にそのいくつかの品型において説明されるが、いくつかの型式の光源から構築され、一部の光源は電気光学シャッタと組み合わせられる。これらの光源の発光領域は、米国特許第5,036,385号に説明されたように、全体的に長く、細く、垂直に配向されるか、又は小さく、点状である。光源手段(3)は、電子制御モジュール(1)から入力(9)を通して信号によって制御されかつ駆動される。制御モジュール(1)は、入力(8)を通してそのタイミング信号を受信し、かつLCD(6)上の画像の発生と適当に同期を取らされた光フラッシュの順序を発生する。光源及び電気光学シャッタに加えて、光源手段(3)は、適当な反射器、機械的支持機構、冷却手段、及び照明システムの所望幾何学を達成するために前記光源の位置を調節する手段を含む。オペーク平坦黒色非反射性障壁(96)が、光を光源(3)から外へ出せない又は光源(3)から光源(3)以外の点から反射されないように、光源(3)の両側間及び両側に対するエリヤをふさぐ。障壁(96)は、光源(3)の前方のその表面にスロット又は孔を切られた平坦黒色金属板であってよい。」(甲第8号証を参照する際の対応する箇所は、19頁9行?20頁3行。)
(ウ)「When the systems described above use an image flip between pixel columns, then it is desirable, when switching between one set of lamps and the next, to keep both lamps off during all or most of the short period when the pixels on the LCD are changing to flip the positions of the left and right eye images. Otherwise, a double image become visible for an instant, during the short time the plxels of the display are changing from one state to the next. 」(26頁4?11行)
「上に説明されたシステムが画素列間の画像フリップを使用する際、ランプの1つの集合と他との間をスイッチするとき、左及び右眼画像の位置をフリップするためにLCD上の画素が変化する短い期間の全体又はほとんどの間中両ランプをオフに維持することが望ましい。そうしなければ、ディスプレイの画素が1つの状態から次に変化している短い時間中、二重画像が瞬間だけ眼に見えるようになる。」(甲第8号証を参照する際の対応する箇所は、34頁16?21行。)
(エ)「The timing sequence of LCD scan (during which all pixels are addressed) , pixel transmittance changes to form the next image component, and light source turn on and turn off when a small number of lamps is used for full resolution 3-D imaging as in FIG. 2 is shown in FIG.s 3a - 3c.
The timing diagram is shown in FIG.s 3a - 3c. FIG. 3a depicts the repeated address of LCD rows starting at the top row and proceeding to the bottom row. FIG. 3b shows the change from "off" or opaque state to "on" or clear state (or vice versa) of the first and the last pixels in a video field, after these pixels have been addressed, and the flashing of the first light emitting point or lamp 42 shown in FIG. 2. In the case of TFT and Ferroelectric LCDs, when a pixel is turned on during the scan of an LCD, it stays on until turned off, in this case until the scan of the entire LCD to display one video frame is completed, and the last pixels have had time to change their state.
As shown in FIG. 3a the time period between the start of one LCD scan and the start of the next is divided into three periods during which three actions occur: a first period 22 during which the LCD is scanned and its rows sequentially addressed usually starting at the top row 20 and ending at the bottom row 21 causing the pixels to change state in order to display the next image, a pause or waiting period 23 during which nothing happens, and an optional blanking period 24 of beneficial effect in some LCDs in which the LCD is scanned again and all the pixels are addressed and made to change state to either full on or full off depending on LCD configuration, to completely erase the previous image. Typically, all the pixels of a given row are addressed at the same time. 」(29頁35行?30頁27行)
「LCD走査のタイミング順序(この間全ての画素がアドレス指定される)、次の画像成分を形成するための画素透過率変化、及び少数のランプが第2図におけるような完全解像度3-D作像に使用されるときの光源ターンオン、ターンオフが、第3a-3c図に示されている。 タイミング線図が、第3a-3c図に示されている。第3a図は、最上行で開始しかつ最下行へ進行するLCD行の繰り返しアドレス指定を描く。第3b図は、それらの画素がアドレス指定された後、ビデオフィールド内の最初及び最後の画素の『オフ』又はオペーク状態から『オン』又はクリヤ状態への(又はこの逆の)変化、及び第2図に示された第1発光点又はランプ(42)のフラッシングを示す。TFT及び強誘電体LCDの場合、LCDの走査中画素がターンオンされると、それはターンオフされるまで、この場合1ビデオフレームを表示するための全LCDの走査が完了し、かつ最終の画素がそれらの状態を変化する時間を持つまで、オンに滞在する。第3a図に示されたように、1つのLCD走査の開始と次の開始との間の時間区間は3つの期間に分割され、これらの間中3つの作用が起こる。すなわち、第1期間(22)中LCDが走査されかつその行が通常最上行で開始しかつ最下行で終端する順次アドレス指定されて、次の画像を表示するために画素の状態を変化させ、休止又は待機期間(23)中何も起こらず、或る種のLCDにおいて有益な効果のある動作消去期間(24)中LCDは再び走査され及び全ての画素がアドレス指定され、かつ先行画像を完全に消去するために、LCDの構成に応じてフルオン又はフルオフのどちらかをするように状態を変化させられる。典型的に、所与の行の全ての画素は、同じ時刻にアドレス指定される。」(甲第8号証を参照する際の対応する箇所は、38頁4?25行。なお、上記(エ)の記載中の「TFT及び強誘電体LCDの場合」とある部分の原文(甲第7号証)の文言は、「In the case of TFT and Ferroelectric LCDs」(30頁8行)であり、「LCDs」が複数形であること、及びこの記載部分で問題となっているのは、液晶表示器(LCD)の特性であって、TFT(薄膜トランジスタ)自体が問題となっているものではないことに照らして、「TFT及び強誘電体LCDの場合(In the case of TFT and Ferroelectric LCDs)」とは、「TFT(駆動型の)LCD及び強誘電体LCDの場合(In the case of TFT LCD and Ferroelectric LCD)」の趣旨であることが明らかである。)
(オ)「Lamps, of course, never flash instantaneously, but rather emit light for a short time and then turn off. The duration that the lamp is emitting light depends on the lamp, and can be controlled with some lamps, such as LEDs. In general, the lamp should emit light only during the time period between the completion of the last pixel's change and the beginning of the next address scan. However, if a blanking scan is used, and the LCD is blanked to a dark state, the lamps may emit light during the blanking period without significant image degradation. However, if the LCD is blanked to the bright or transparent state, the lamps should stop emitting light before the blanking period begins. Otherwise, contrast will be lessened considerably. 」(31頁36行?32頁9行)
「ランプは、もちろん、決して瞬間的にフラッシュはせず、短い時間にわたり発光し、次いでターンオフする。ランプが発光する持続時間はそのランプに依存し、かつLEDのような、或るランプで以て制御され得る。一般に、ランプは、最後の画素の変化の完了と次のアドレス指定走査の開始との間の時間区間中にのみ発光するべきである。しかしながら、もし帰線消去走査が使用され、LCDが暗状態へ帰線消去されるならば、ランプは有意な画像劣化を伴うことなく帰線消去期間中発光すると云える。しかしながら、もしLCDが明るい又は透明状態へ帰線消去されるならば、帰線消去期間が始まる前にランプは発光を停止するべきである。そうしないと、コントラストが可なり低下しよう。」(甲第8号証を参照する際の対応する箇所は、40頁2?10行。なお、「ランプは有意な画像劣化を伴うことなく帰線消去期間中発光すると云える。」とある部分の原文(甲第7号証)の文言は、「the lanps may emit light during the blanking period without significant image degradation.」(32頁5?6行)であり、この文言の「may」は、「?である場合がある。?をすることがある。?することができよう。」というような意味で用いられていることが明らかであるから、上記文言は、「ランプは有意な画像劣化を伴うことなく、帰線消去期間中、発光することができよう。」との趣旨であるものと認めることができる。)
(c)甲第4号証
(ア)「It is an object of the present invention to provide a matrix display system which offers improved display quality when displaying moving images and a method of operating a matrix display system which helps to alleviate the problem of unwanted visual effects when displaying moving images.」(3頁17?21行)
「本発明の目的は、動いている像を表示している場合の表示品質を改善したマトリックス表示システムと、動いている像を表示している場合の好ましくない視覚現象の問題を軽減するのに役に立つマトリックス表示システムの動作方法とを提供することである。」(甲第5号証を参照する際の対応する箇所は、7頁24?27行。)
(イ)「In a second preferred embodiment of a matrix display system according to the present invention, the drive circuit is operable in the time intervals between successive display information address periods to drive the picture elements of the array to their substantially non-transmissive display states.
In a second preferred embodiment of a method according to the present invention, in the time interval between successive display information address periods the picture elements of the array are driven to their substantially non-transmissive display states.
In this second embodiment, the driving of the picture elements to their substantially non-transmissive, i.e. black, states in intervals between successive display information address periods introduces the aforementioned "dark" intervals between the presentation to a viewer of successive display fields, thereby resulting in the improvement to the perceived resolution of moving images.」(7頁27行?8頁12行)
「本発明による方法の第2の好適な実施例において、順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において、画素の配列を、ほぼ非透過表示状態に駆動する。
本発明による方法の第2の好適な実施例において、順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において、画素の配列を、ほぼ非透過表示状態に駆動する。
この第2の実施例において、順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において画素をほぼ非透過、すなわち黒に駆動することによって、順次の表示フィールドの見る人への表示の間に上述した「暗い」期間が挿入され、知覚される動いている物の解像度が改善される。」(甲第5号証を参照する際の対応する箇所は、10頁28行?11頁7行)
(ウ)「Turning now to the system embodiment of Figure 2, then following the writing of data for one TV field into the display panel 10 in a display information address period comprising one half the TV signal field period as previously described, the picture elements of the array are addressed again in the interval comprising the remaining half of the TV signal field period to drive them to their substantially non-transmissive, black, state, unlike the scheme described in EP-A-0487140 in which the picture elements are addressed again with the same display information in the second half of the TV field period. To achieve this, selection signals are again supplied by the row driver circuit 20 to each of the row conductors in turn during this interval corresponding to the latter half of the TV field period with the selection signal of the first row conductor coinciding substantially with the beginning of the interval. For the duration of this period a predetermined reference voltage, VB, is applied to each of the column conductors 1 6, which is selected such that the picture elements are driven to their substantially non-transmissive state. The reference voltage is applied by means of a switch circuit 35 connected between the outputs of the column driver current 22 and the set of column conductors which switches the column conductors between the column driver circuit's outputs and the reference voltage under the control of a switching signal S supplied by the circuit 21. The row conductors are scanned with a selection signal at the same rate as previously so that the rows of picture elements are set to their substantially non-transmissive states in sequence with the final rows being set close to the end of the interval. In one TV field period, therefore, there are two display panel address periods namely a display information address period in which the picture elements are driven to the required display states and a succeeding interval in which they are driven to their substantially non-transmissive states.
At the end of the TV field period, the change-over switches 28 and 32 are operated, and the switch circuit 35 reset, so that the data signals for the next TV field are read out to the circuit 24 from the other store, again at twice the field rate of the TV signal and in synchronism with scanning of the row conductors at twice the conventional rate and while the subsequent TV field is being loaded into the first store. After this next field has been loaded into the display panel, the picture elements are again driven to their substantially non-transmissive display states as before in the remaining latter half of the TV field period. This manner of operation is repeated for successive TV fields.
Thus, the operation of the display panel occupies a succession of approximately equal periods of time, each corresponding to approximately one half of the TV signal field period, e.g. 10ms, in which alternate periods constitute first display panel field periods during which the picture elements are loaded with display information for a respective TV field and in which the intervening intervals constitute second display panel field periods during which the picture elements of the array are driven to their black state. This is depicted diagrammatically in Figure 4 in which T represents time and F(A) to F(D) denote four successive field periods of the applied TV signal, VS. The relative timings of the operating periods of the display panel, DP, are illustrated in which f(A) to f(C) represent the first display panel field (display information address) periods, and the periods f represent the intervals therebetween constituting the second display panel address periods.」(18頁11行?20頁5行)
「ここで図2のシステムの実施例を考えると、画素を、TVフィールド周期の他の半分内に同じ表示情報によって再びアドレスする欧州特許出願公開明細書第0487140号に記述されている方法とは異なり、上述したようなTV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル10に書き込むのに続いて、画素の配列を、TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する。これを達成するために、TVフィールド期間の後半に等しいこの期間の間に、間隔の開始とほぼ一致する第1の行導線の選択信号によって、選択信号を行駆動回路20によって各行導線に順番に再び供給する。この期間が続いている間、画素をほぼ非透過状態に駆動するように選択される予め定めた基準電圧VBを列導線16の各々に印加する。基準電圧を、列駆動回路22の出力端子と列導線の組との間に接続され、回路21によって供給される切り換え信号Sの制御のもとに、列導線を行駆動回路の出力と基準電圧との間で切り換える切り換え回路35によって印加する。行導線を、あらかじめ、画素の行が時間間隔の終了時に最終行が完了するまで順番にほぼ非透過状態に設定されるように、選択信号によって同じ速度において走査する。したがって1TVフィールド周期において、2つの表示情報アドレス期間、すなわち、画素を液晶表示状態に駆動する表示情報アドレス期間と、それに続く、画素をほぼ非透過状態に駆動する時間間隔とが存在する。
TVフィールド期間の終わりにおいて、再びTV信号のフィールド速度の2倍の速度において、通常の2倍の速度における行導線の走査に同期して次のTVフィールドを第1の記憶装置にロードしている間、次のTVフィールドに関するデータ信号が他の記憶装置から回路24に読み出されるように、切り換えスイッチ28および32を動作する。この次のフィールドを表示パネル内にロードした後、以前のようにTVフィールド周期の残りの後半内で、ほぼ非透過表示状態に再び駆動する。この動作方法を、順次のTVフィールドに対して繰り返す。
したがって、表示パネルの動作は、各々がTV信号フィールド周期のほぼ半分、例えば10msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要とし、一つ置きの期間は、画素が各々のTVフィールドに関する表示情報によってロードされる間の第1の表示パネルフィールド期間を構成し、それらの間の時間間隔は、配列の画素を黒い状態に駆動する間の第2の表示パネルフィールド期間を構成する。これを図4に図式的に示し、ここでここでTは時間を表し、F(A)からF(D)は供給されたTV信号VSの4つの連続するフィールド期間を示す。表示パネルの動作期間の相対的なタイミングDPは、f(A)からf(C)が第1の表示パネルフィールド(表示情報アドレス)期間を示し、期間f′がそれらの間の第2の表示パネルアドレス期間を示す。」(甲第5号証を参照する際の対応する箇所は、18頁7行?19頁13行。)
(エ)「It may not always be necessary to restrict illumination of the panel to certain time periods. The driving of the picture elements to the black state in the intervals between the display information address periods introduces the required pause intervals and could be sufficient by itself. In this case, the light source can be arranged to illuminate the panel continuously.
The relative durations of the display panel first and second address periods (f and f' respectively in Figure 4) can also be varied to an extent. As described above, each of these periods corresponds to approximately half the field period (F) of the TV signal. However, the
panel address periods f and f' could be different, for example one third and two thirds respectively of the TV field period or vice versa, although this would complicate driving.
In the particular embodiment described, the rows of picture elements are set to their non-transmissive states in the intervals by scanning the rows in turn with the setting of the first and last row coinciding approximately with beginning and end of interval respectively. However, other schemes for driving the picture elements to this state could be used. For example the rows could be set in a sequence of groups of successive rows or possibly substantially all together rather than in a sequence. These latter schemes would entail modification to the row drive circuit 20 however.
Moreover, the driving of the picture elements to their non-transmissive states need not commence at the beginning of the interval. Instead, a short predetermined delay time, as shown at d in Figure 4, may be introduced at the beginning of the intervals before the picture elements are set to this required state. This delay time would constitute a dormant period which follows after all the picture elements have been set to their display state in the period f(A), f(B), etc., during which the panel is illuminated. The end of this delay time d may be chosen to coincide with the end of the illumination period, as indicated by the dashed line in Figure 4, with the picture elements to this state in the remaining part of the interval will require a faster scanning rate which can be achieved by operating the row drive circuit at a higher clocking speed.」(25頁6行?26頁11行)
「常にパネルの照明をある期間に限定する必要はない。表示情報アドレス期間の間の時間間隔中に画素を黒い状態に駆動することは、必要な休止期間をもたらし、それだけで十分である。この場合、光源を、パネルを連続して照明するように用意することができる。
表示パネルの第1および第2アドレス期間(図4におけるfおよびf′の各々)の相対的な持続時間も、ある程度変化させることができる。上述したように、これらの期間の各々は、TV信号のフィールド周期(F)のほぼ半分に相当する。 しかしながら、パネルアドレス期間fおよびf′を、例え複雑な駆動になるとしても、例えばおのおのがTVフィールド周期の1/3および2/3、またはその逆となるように異ならせることができる。
特に本実施例において、画素の行を、時間間隔内に、時間間隔の開始および終了の各々によって、第1および最終行をほぼ同時に設定することによって行を交互に走査することによって非透過状態に設定する。しかしながら、画素をこの状態に駆動する他の方法を使用することもできる。例えば、行を、連続した行の組を順番に、またはできるかぎりほぼ全て同時に設定することができる。しかしながら、これらの後者の方法は、行駆動回路20を変更する必要がある。
さらに、画素の非透過状態への駆動は、間隔の開始時に始める必要はない。代わりに、図4に示すようなより短い予め定めた遅延時間を、画素をこの必要な状態に設定する前に、時間間隔の開始時に挿入してもよい。この遅延時間は、パネルが照明されている間の期間f(A)、f(b)、その他における、全ての画素が表示状態に設定された後に続く休止期間を構成する。この遅延時間dの終了時は、図4中に破線で示されるように、照明期間の終了時と一致させて選んでもよい。画素をこの間隔の残りの部分内でこの状態にするには、より速い走査速度を必要とする。これは行駆動回路をより高いクロック速度によって動作することによって達成することができる。」(甲第5号証を参照する際の対応する箇所は、23頁4行?28行。)

(2)本件特許発明について
(2-1)甲第6号証に記載された発明との対比
上記(1)(a)の各記載によれば、甲第6号証には、背面照射型の液晶表示板(LCD)等の透過型映像表示板を用いた立体映像表示装置において、LCD上に、観察者の左眼EYE1への映像表示画素P1と、右眼EYE2への映像表示画素P2を交互に並べ、それぞれの線状光源からの照射光により、表示画素P1とP2が各々観察者の左眼EYE1と右眼EYE2の位置に分離して収束するようにした従来技術における、LCDの表示面全体に対する1方向像の占める割合が、方向数の増加とともに小さくなり、解像度が低下するという問題を、解決すべき技術課題として、LCD表示面を空間的に分割して左眼用、右眼用映像を表示させるのではなく、表示面全面に左眼用又は右眼用の同一方向の映像を表示させ、左眼用映像VD1が表示された時は観察者の左眼位置に収束する左眼用の映像照射用線状光源LL1のみが点灯し、右眼用映像VD2が表示された時は観察者の右眼位置に収束する右眼用の映像照射用線状光源LL2のみが点灯するようにするとともに、かかる表示映像と映像照射用線状光源とを、左眼用、右眼用と時分割的に切り替えるように構成した立体映像表示装置の発明が記載されているものと認められる。
しかるところ、上記のとおり、甲第6号証記載の発明における「表示映像VD1、VD2と線状光源LL1、LL2が時間の経過とともに変化していく状態」を示した甲第6号証の図2には、時間区分t1では、液晶表示板(LCD)上に映像VD1を表示させるとともに、線状光源LL1を点灯させ、次の時間区分t2では、表示映像をVD2に切り替えるとともに、線状光源LL2を点灯させ、この手順をt3、t4・・・と繰り返すことにより、映像VD1と映像VD2を時分割的に切り替えて表示させることのほか、一方の映像から他方の映像に切り替わる際に、線状光源LL1及びLL2がいずれも消灯している時間が短時間存在することが示されており、映像が時分割的に切り替わる短時間の間は、LCD表示面上に何も表示されない状態(暗状態)となることを看て取ることができる。
そして、LCD表示面上に何も表示されない状態(暗状態)となるということは、LCDが全画面黒表示となるということであるから、甲第6号証記載の発明は、表示映像が切り替わる間、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることにより、LCDが全画面黒表示となる構成を備えているものと認められる。(判決26頁17行?27頁18行)
甲第6号証記載の発明における「LCDに全画面黒表示を行わせる」技術手段は、上記のとおり、表示映像が切り替わる間(すなわち、LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に)、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることであって、本件特許発明のように「全画面黒信号を入力する」手段によるものではない(判決28頁9?13行)から、相違する。
したがて、本件特許発明と甲第6号証に記載された発明との一致点および相違点は、以下のとおりである。

記(一致点)
LCDを備え、
前記LCDに異なる画像を順次表示する場合において、
前記LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に、前記LCDに全画面黒表示を行わせることを特徴とする
表示装置。
記(相違点)
「LCDに全画面黒表示を行わせる」技術手段が、本件特許発明は「全画面黒信号を入力する」手段によるものであるのに対して、甲第6号証に記載された発明は「表示映像が切り替わる間、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させること」によるものである点。

(2-2)相違点の判断
上記(1)(b)の各記載によれば、甲第7号証には、液晶パネル(LCD)とランプとを備え、右眼用画像と左眼用画像とを切り替えて(flip)、表示する三次元又は彩色二次元ディスプレイの照明システムの発明に関し、○1右眼用画像と左眼用画像とを切り替える短い時間の間は、右眼用ランプと左眼用ランプの両方をオフにすることが望ましく、そうしないと、切り替えの短時間に、二重画像が瞬間だけ眼に入ること、○2TFT駆動型LCDや強誘電体型LCDの場合は、LCDの全画素(1フレーム)が走査され画像が表示されると、次にこのLCDの画素が走査されて状態が変更されるまで従前の表示状態が保持されるところ、甲第7号証記載の発明の照明システムでは、LCDの構成に応じて、LCDをすべてオンの状態又はすべてオフの状態に走査することにより、前の表示状態を消去する制御が用意されていること、○3ランプは、画素の変化の完了(すなわち、画像を表示する1フレーム分の走査の完了)と次のアドレス指定走査の開始との間の時間区間中にのみ発光させるようにすべきであるが、帰線消去走査が使用され、LCDが暗状態へ帰線消去される場合は、ランプは、有意な画像劣化を招来させることなく、帰線消去期間中、発光させたままとすることができること、以上の事項が記載されているものと認めることができる。
すなわち、甲第7号証は、甲第6号証記載の発明と同様、LCDと映像照射用光源(ランプ)とを備え、表示映像(画像)と映像照射用光源とを、左眼用、右眼用と時分割的に切り替えるように構成した立体(三次元)映像表示装置において、一方の映像から他方の映像に切り替える際に、二重画像が瞬間だけ眼に入る(前の画像と後の画像が表示面上で時間的に重なって、分離されないということであり、画質の低下を招来するものであることは、技術常識上明らかである。)という問題点があることを指摘した上、この問題点を解決するための技術手段として、第1に、一方の映像から他方の映像に切り替える短時間の間、左眼用光源と右眼用光源の双方とも消灯するという手段を、第2に、上記映像の切り替えの際にLCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行うという手段を開示しているものといえるところ、これらの手段は、いずれも、「LCDに全画面黒表示を行わせる」ための技術手段であり、上記(1)(b)(オ)の「帰線消去走査が使用され、LCDが暗状態へ帰線消去されるならば、ランプは有意な画像劣化を伴うことなく帰線消去期間中発光すると云える」(「発光すると云える」との文言が「発光することができよう」との趣旨であることは、上記のとおりである。)との文言にかんがみて、相互に代替することのできる並列的な手段として開示されたものであることは明らかである。そして、このうちの第1の手段は、甲第6号証記載の発明が採用した構成であり、また、第2の手段は、本件特許発明が採用した「全画面黒信号を入力する」構成にほかならない。
そうすると、上記のとおり、表示映像が切り替わる間(すなわち、LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に)、線状光源LL1及びLL2(すなわち、右眼用光源及び左眼用光源)のいずれをも消灯させることにより、「LCDに全画面黒表示を行わせる」甲第6号証記載の発明について、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることに代えて、甲第7号証に開示されている「LCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行う」手段を採用し、本件特許発明に係る「全画面黒信号を入力する方法により」との構成とすることは、当業者であれば、容易になし得たものと認めることができる。(判決31頁20行?33頁10行)
したがって、本件特許発明は、甲第6号証および甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許発明2について
(3-1)甲第6号証に記載された発明との対比
本件特許発明2と甲第6号証に記載された発明とを対比すると、一致点は上記(2-1)の一致点と同じであり、相違点は下記のとおりである。

記(相違点)
「LCDに全画面黒表示を行わせる」技術手段が、本件特許発明2は「全画面黒信号を入力する」手段によるものであるのに対して、甲第6号証に記載された発明は「表示映像が切り替わる間、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させること」によるものであり、さらに、本件特許発明2は「前記LCDにおける前記全画面黒信号の入力時の画面走査時の周波数を、前記映像信号のそれよりも高くするようにし」ているのに対し、甲第6号証に記載された発明はそのようにしていない点。

(3-2)相違点の判断
表示映像が切り替わる間、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることにより、「LCDに全画面黒表示を行わせる」甲第6号証記載の発明について、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることに代えて、甲第7号証に開示されている「LCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行う」手段を採用し、本件特許発明2に係る「全画面黒信号を入力する方法により」との構成とすることは、当業者であれば、容易になし得たものと認めることができることは、上述のとおりである(上記(2-2))。
「甲第7号証は、・・・第1に、一方の映像から他方の映像に切り替える短時間の間、左眼用光源と右眼用光源の双方とも消灯するという手段を、第2に、上記映像切り替えの際にLCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行うという手段を開示しているものといえる」(上記(2-2)、判決32頁16?20行)のであるから、帰線消去走査を行う期間は、一方の映像から他方の映像に切り替える短時間の間である。そうすると、帰線消去走査は、一方の映像から他方の映像に切り替える短時間の間に行い、映像信号の走査は、1フィールドまたは1フレーム期間から帰線消去走査を行う短時間を除いた時間の間に行うことになる。また、甲第6号証においても一方の映像から他方の映像に切り替わる期間は短時間である。
一方、甲第4号証には、黒い状態に駆動する際により速い速度によって動作することが開示されている(上記(1)(c)、特に、上記(c)(エ)参照のこと。)。
これらのことを勘案すれば、表示映像が切り替わる間、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることにより、「LCDに全画面黒表示を行わせる」甲第6号証記載の発明について、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることに代えて、甲第7号証に開示されている「LCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行う」手段を採用する際に、LCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査は短時間に行うのであるから、短期間に走査を行うために、映像信号走査よりも速く走査すること、すなわち、全面黒信号の入力時の画面走査時の周波数を映像信号の走査時の周波数よりも高くすることは当業者が容易になし得ることである。
したがって、本件特許発明2は、甲第6号証、甲第7号証および甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(4)本件特許発明3について
(4-1)甲第6号証に記載された発明との対比
本件特許発明3と甲第6号証に記載された発明とを対比すると、一致点は上記(2-1)の一致点と同じであり、相違点は下記のとおりである。

記(相違点)
「LCDに全画面黒表示を行わせる」技術手段が、本件特許発明3は「全画面黒信号を入力する」手段によるものであるのに対して、甲第6号証に記載された発明は「表示映像が切り替わる間、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させること」によるものであり、さらに、本件特許発明3は「前記LCDにおいて、前記映像信号の入力と前記全画面黒信号の入力との間に入力信号が無い期間を設け」ているのに対し、甲第6号証に記載された発明はそのようにしていない点。

(4-2)相違点の判断
表示映像が切り替わる間、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることにより、「LCDに全画面黒表示を行わせる」甲第6号証記載の発明について、線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることに代えて、甲第7号証に開示されている「LCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行う」手段を採用し、本件特許発明3に係る「全画面黒信号を入力する方法により」との構成とすることは、当業者であれば、容易になし得たものと認めることができることは、上述のとおりである(上記(2-2))。
甲第7号証には、上記(1)(b)(エ)および第3a図に示されているようにLCDに全画面黒表示を行わせるために帰線消去走査を行う際に、LCD走査と帰線消去走査との間に休止期間を設けることが示されているから、甲第7号証に開示されている「LCD走査と帰線消去走査との間に休止期間を設け、LCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行う」手段を採用し、本件特許発明3に係る構成とすることは当業者であれば、容易になし得たものと認めることができる。
したがって、本件特許発明3は、甲第6号証および甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(5)被請求人の主張について
被請求人は、甲第7号証に記載された発明は、強誘電体LCDであるのに対し、本件特許発明のLCDは、誘電分極原理(ネマティック液晶)によるものであると主張するが、本件特許発明のLCDが、誘電分極原理(ネマティック液晶)によるものであることは、本件特許発明の要旨の規定するところではなく、上記主張は、発明の要旨に基づかないものとして失当である。また、被請求人は、甲第7号証には「黒表示」との文言はないと主張するが、上記(1)(b)(オ)の「LCDが暗状態へ帰線消去される」ことは、LCDを「黒表示」することに相当するものであるから、この主張も失当である(判決33頁11?18行)。
したがって、被請求人の主張は採用できない。

(6)まとめ
以上によれば、本件特許発明および本件特許発明3は、甲第6号証および甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明2は、甲第6号証、甲7号証及び甲4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第五 被請求人の主張について

1.被請求人は平成20年9月3日差出の上申書(その2-1)を提出し、無効審判請求書における形式(手続)に関する瑕疵に関しての以下の主張をしている。
(1)審判請求書に添付された甲第3号証(訴状)を無効にし、全体の提出を拒絶されるべきである(上記上申書の第1の2に記載の「審査請求書」は「審判請求書」の誤記である。)。
(2)審判請求書に記入すべき代理人の住所(居所)が正確でなく、適法でない。
(3)特許法第123条を参照しても“分割要件違反の条項は無”く、不適法な手続の却下(特許法第133条の2)とすべきである。

(1)について
甲第3号証は、訴訟における被請求人の主張を立証するために、被請求人が大阪地方裁判所に提出した訴状の写しを、請求人が提出した証拠である。
訴状の写しを証拠として提出することに違法性はなく、訴状の写しを証拠として提出したことをもって審判請求の手続に瑕疵があるとは認められない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。
(2)について
審判請求書の代理人の住所(居所)が正確でなく、適法でないとは認められない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。
(3)について
審判請求書第5頁1行?7行の記載は、本件特許の請求項1ないし3に係る発明が甲第2号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきであると記載され、甲第2号証が本件出願前に頒布された刊行物に該当する理由として、本件出願が分割出願の適法要件を満たしていないことを主張しているのであって、無効事由の主張として理解できる。

したがって、被請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、被請求人主張の審判請求書における形式(手続)の瑕疵はなく、請求人の主張は採用できない。

2.被請求人は平成20年9月3日差出の上申書(その2-2)を提出し、甲第7号証30頁8行の「TFT and Ferroelectric LCDs」における「TFT」について縷々述べているが、「TFT and Ferroelectric LCDs」に関しては、上記第四の2.(1)(b)(エ)の甲第8号証の対応部分の摘記のあとの「なお書き」のとおり「TFT(駆動型の)LCD及び強誘電体LCD」の趣旨であることは明らかであり、被請求人の主張は採用できない。

第六 むすび

以上、本件特許の請求項1に係る発明および請求項3に係る発明は、いずれも、甲第6号証および甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項2に係る発明は、甲第6号証、甲第7号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効にすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-29 
結審通知日 2008-11-12 
審決日 2008-11-26 
出願番号 特願2003-344634(P2003-344634)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 五貫 昭一
小池 正彦
登録日 2004-06-25 
登録番号 特許第3569522号(P3569522)
発明の名称 表示装置  
代理人 杉谷 勉  
代理人 阿部 隆徳  
代理人 戸高 弘幸  

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