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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1192024
審判番号 不服2006-9541  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2003-410745「バカラゲームシステムおよびバカラゲーム用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月30日出願公開、特開2005-168664〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成15年12月9日の出願であって、平成18年4月6日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年5月11日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで特許請求の範囲及び明細書の補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。
本件補正前後を通じて、請求項数は3であり、請求項1,2は「バカラゲームシステム」についての発明を記載した請求項であり、請求項3は「コンピュータのバカラゲーム用プログラム」についての発明である。そして、本件補正は、補正前に従属形式で記載されていた請求項3のうち、請求項1引用部分を独立形式に書き改めるとともに、補正前請求項1記載の「参加者がベットしたベット情報とによりゲーム結果を算出する配当算出手段」を「参加者がベットしたベット情報とゲーム結果とから参加者の配当情報を算出する配当算出手段」と補正(独立形式となった請求項3にも同様の補正がされている。)するものである。この補正事項につき検討するに、「ゲーム結果を算出する配当算出手段」はそもそも日本語として不自然なだけでなく、配当を算出するには「ベット情報」と「ゲーム結果」の両者が必要なことは常識に属するから、自明な誤記訂正に該当する。
従属形式の請求項3を独立形式に書き改めること自体には違法性はなく、補正前請求項3は請求項2をも引用しているものの、補正前請求項2の限定事項は各参加者の端末が「ベット情報表示画面」を備えることや、「映像用サーバ(110)」、「データベースサーバ(120)」、「大型画面(40、50)」、「カード画像撮影カメラ(21)」、「シュータ画像撮影カメラ(22)」、「ディーラー用端末(130)」及び「管理用端末(140)」の接続関係を限定するものであるが、それらは「バカラゲームシステム」を特定するものの、「コンピュータのバカラゲーム用プログラム」を特定するものではないから、引用請求項から請求項2を削除することは、明りようでない記載の釈明に該当する。もっとも、このことは、本件補正後の請求項3の記載が明確であることを意味するわけではない。補正後請求項3記載の各ステップを見るに、ディーラー用コンピュータのプログラムと参加者用コンピュータのプログラムのステップが混在しており、著しく不明確といわざるを得ないが、そのことは原審において通知されていないので、審決では採り上げない。
また、本件補正が新規事項を追加しないことも認める。
したがって、本件補正を却下することは妥当でなく、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「ディーラー用ゲームテーブル上のカード画像を撮影するカード撮影手段と、前記カード画像撮影手段により撮影したカード画像を配信するカード画像配信手段と、配信された前記カード画像を表示するカード画像表示手段とを有し、前記カード画像撮影手段は、ディーラー用ゲームテーブルから離れたゲーム参加者用スペースに設けたカード画像表示手段に、前記カード画像配信手段によりリアルタイムで配信可能とし、参加者用スペースにはベット情報を入力できるベット情報入力端末を備え、かつ前記ディーラー用ゲームテーブルにゲーム結果を入力できるゲーム結果入力端末を備えて、前記ベット情報入力端末に参加者がベットしたベット情報とゲーム結果とから参加者の配当情報を算出する配当算出手段を備えると共に、前記カード画像撮影手段は、カード画像をビデオ信号として映像用サーバを介して各端末、ディーラー用端末(130)、管理用端末(140)へのゲーム画像をリアルタイムで配信でき、各参加者は各端末を用いて配信される画像を見ながらベット情報を入力し、ネットワーク(N)およびハブ(150)を介してデータベースサーバ(120)へ送信し、各参加者のベット情報の記録を可能とし、前記データベースサーバ(120)が算出した配当情報を受信して、的中か否か、配当値、履歴を、前記端末やデータベースサーバ(120)に蓄積できるようにしたことを特徴とするバカラゲームシステム。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物記載の発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第02/013932号パンフレット(以下「引用例」という。なお、行数としては、引用例各頁の左端部記載の数字をそのまま用い(空白行も1行としてカウント)、翻訳文として、対応日本国出願での公表公報(特表2004-520089号公報)を採用し、括弧内に書き加える。)には、
「A system for players using terminals at remote sites to play along with a table game at a casino type location comprising:
a camera at the location to view the game action and means at the location for producing wagering status signals and game result data;
distribution means for broadcasting from the location to the remote terminals the output of the camera view, a status signal that wagering on a game is terminated and the result data of the game played at the location;
each said remote terminal comprising;
(a) a receiver for receiving the camera view, the wagering termination status signal and the game result data broadcast from the location,
(b) a video display for displaying the view of the table action viewed by the camera,
(c) means including computer means for generating and for displaying an electronic representation of the game being played for placing wagers on the game being played, and
(d) computer means for managing the account of the player and responsive to the received game result data for computing winning amounts based on the amount of the wager and computer stored betting odds of the wager placed on the game and losses based on the amount of the wager placed and for updating the account. 」(14頁1?20行)
(翻訳文:「カジノタイプの所定場所でのテーブルゲームと協調してプレイするために離隔した場所で端末を使用するプレーヤのためのシステムであって、
ゲームの挙動を見るための前記所定場所にあるカメラと、賭け状況信号及びゲーム結果データを生成するための前記所定場所にある手段と、
前記カメラ映像の出力, ゲームへの賭けが終了したことを示す状況信号及び前記所定場所で行なわれたゲームの結果データを前記所定場所から遠隔端末へ放送する配信手段と
を備え、
前記各遠隔端末は、
(a)前記所定場所から放送された前記カメラ映像, 前記賭け終了状況信号及び前記ゲーム結果データを受信する受信機と、
(b)前記カメラが捉えた前記テーブルの挙動の映像を表示するビデオディスプレイと、
(c)進行中のゲームに賭金を置くために、進行中のゲームの電子的描写を生成し、表示するコンピュータ手段を含む手段と、
(d)プレーヤの口座を管理し、受信したゲーム結果データに応答して、賭金の額とコンピュータに記憶されているゲームに置かれた賭金のオッズとに基づいて勝ち額を計算し、置かれた賭金の額に基づいて損失を計算し、前記口座を更新するためのコンピュータ手段と
を備えることを特徴とする遠隔ルーレットシステム。」(公表公報【請求項1】)
との発明(以下「引用発明という。)が記載されており、引用例にはそれ以外に以下のア?エの記載がある。
ア.「 A player establishes an information link with a casino from an interface station including a video monitor and keypad. In response to the player's entry of financial account information, the casino establishes an information line with the player's financial institution. The casino assigns the player to a gaming table at which a "live" game is occurring, transmitting all images of game play and instructions to the player. The player transmits bet and game play information to the casino. Because of the open line between the casino and player's financial institution, bets are checked, winnings paid, and losses debited. While this method permits a view of a live game, it is somewhat complicated in that the casino requires a central computer to keep track of all the accounts and to communicate with each terminal. If the central computer fails, then all of the remote terminals also fail. There also must be communication between the casino and a third party financial institution. This method also places an added burden on the casino to maintain the various devices, wagers and accounts. 」(2頁7?21行)
(翻訳文:「プレーヤは、ビデオモニタ及びキーパッドを含むインタフェイスステーションからカジノとの情報リンクを確立する。プレーヤが金融口座情報を入力するのに応答して、カジノはプレーヤの金融機関に情報ラインを確立する。カジノは、「生の」ゲームが発生しているゲームテーブルをプレーヤに割り当て、ゲームプレイの全ての画像及び指示をプレーヤへ送信する。プレーヤは、賭金及びゲームプレイの情報をカジノへ送信する。カジノとプレーヤの金融機関との間のオープンラインのため、賭金がチェックされ、勝ちは支払われ、負けは借方に記入される。この方法は、生のゲームを見ることを可能にするが、全ての口座の経過を追い、各端末と通信するためにカジノが中央コンピュータを必要とするため、幾分複雑である。もしも、中央コンピュータが機能しなくなった場合は、全ての遠隔端末も機能しなくなる。また、カジノと第三者の金融機関との間にも通信が必要である。この方法は、種々の装置、賭金及び口座を管理するためにカジノに追加負担もかける。」(公表公報段落【0005】))
イ.「In accordance with the invention a camera follows a game that is being played at a roulette table in a casino. A microphone can also pick up the sound of the players at the table and the game play. 」(2頁27行?3頁1行)
(翻訳文:「本発明によれば、カメラがカジノのルーレットテーブルで行なわれているゲームを追う。マイクロフォンが、テーブルについているプレーヤ及びゲームプレイの音を拾うこともできる。」(公表公報段落【0010】))
ウ.「The invention is applicable to other types of casino games played at a table such as blackjack, dice, baccarat and similar games. 」(5頁8?9行)
(翻訳文:「本発明は、ブラックジャック, ダイス, バカラ及び類似のゲーム等のテーブルで行なわれる他の種類のカジノゲームに適用可能である。」(公表公報段落【0018】))
エ.「The player enters his bet via the touch screen 44 b . That is, the player selects whether it is a straight number, combination or other type of bet.」(10頁17?18行)
(翻訳文:「プレーヤは、タッチスクリーン44bを介して自分の賭金を入力する。即ち、プレーヤは、単独の数字か、組み合わせか、又は他のタイプの賭かを選択する。」(公表公報段落【0034】))

2.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
本願発明は「バカラゲームシステム」であるのに対し引用発明は「遠隔ルーレットシステム」であるところ、これらは「ゲームテーブル」を用いたゲームシステムの点では共通し、ゲーム種類の相違に起因して、撮影する対象も異なるけれども、引用発明の「カメラ」と本願発明の「カード撮影手段」は「撮影手段」の点では一致する。
引用発明における「遠隔端末」の設置場所は、本願発明の「ディーラー用ゲームテーブルから離れたゲーム参加者用スペース」に相当し、引用発明における「賭金の額」は参加者が選択することは明らか(記載エ参照)であるから、「前記画像撮影手段は、ディーラー用ゲームテーブルから離れたゲーム参加者用スペースに設けた画像表示手段に、前記画像配信手段によりリアルタイムで配信可能とし、参加者用スペースにはベット情報を入力できるベット情報入力端末を備え」ること、及び「前記画像撮影手段は、画像をビデオ信号として各端末へのゲーム画像をリアルタイムで配信でき、各参加者は各端末を用いて配信される画像を見ながらベット情報を入力」することも本願発明と引用発明の一致点である。
引用発明では、現実にルーレットゲームが行われることが前提であり、「ゲーム結果データ」を遠隔端末が受信するためには、「ゲーム結果データ」が「ディーラー用ゲームテーブル」側で入力されなければならない(「入力」は手入力だけでなく、ゲーム結果を自動的に判断することも通常含み、仮に手入力に限るとしても、どのように入力するかは設計事項である。)から、「ディーラー用ゲームテーブルにゲーム結果を入力できるゲーム結果入力端末を備え」ることも本願発明と引用発明の一致点である。
したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「ディーラー用ゲームテーブル上の画像を撮影する撮影手段と、前記画像撮影手段により撮影した画像を配信する画像配信手段と、配信された前記画像を表示する画像表示手段とを有し、前記画像撮影手段は、ディーラー用ゲームテーブルから離れたゲーム参加者用スペースに設けた画像表示手段に、前記画像配信手段によりリアルタイムで配信可能とし、参加者用スペースにはベット情報を入力できるベット情報入力端末を備え、かつ前記ディーラー用ゲームテーブルにゲーム結果を入力できるゲーム結果入力端末を備えると共に、前記画像撮影手段は、画像をビデオ信号として各端末へのゲーム画像をリアルタイムで配信でき、各参加者は各端末を用いて配信される画像を見ながらベット情報を入力できるようにしたゲームシステム。」
〈相違点1〉本願発明が「バカラゲームシステム」であり、「撮影手段」により撮影され、「画像配信手段」により配信されるものが「カード画像」であり、「ゲーム参加者用スペースに設けた画像表示手段」が「カード画像表示手段」であるのに対し、引用発明は「遠隔ルーレットシステム」であり、撮影,配信及び表示される画像が「カード画像」ではない点。
〈相違点2〉本願発明が「前記ディーラー用ゲームテーブルに・・・前記ベット情報入力端末に参加者がベットしたベット情報とゲーム結果とから参加者の配当情報を算出する配当算出手段を備える」としているのに対し、引用発明は同構成を有さない点。
〈相違点3〉本願発明では、ゲーム画像をリアルタイムで配信するに当たり、「映像用サーバを介して」配信するとともに、各端末だけでなく、「ディーラー用端末(130)」及び「管理用端末(140)」にも配信するのに対し、引用発明にはそのような限定はない点。
〈相違点4〉本願発明が「各参加者は・・・ネットワーク(N)およびハブ(150)を介してデータベースサーバ(120)へ送信し、各参加者のベット情報の記録を可能とし」と限定しているの対し、引用発明にはこの限定構成はない点。
〈相違点5〉本願発明が「前記データベースサーバ(120)が算出した配当情報を受信して、的中か否か、配当値、履歴を、前記端末やデータベースサーバ(120)に蓄積できるようにした」と限定しているの対し、引用発明にはこの限定構成はない点。

3.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用発明は「遠隔ルーレットシステム」であるが、引用例の記載ウに基づき、ルーレットをバカラゲームに変更することには何の困難性もなく、バカラゲームであれば、「テーブルの挙動の映像」として必要なものは当然「カード画像」である。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成に至るには何の創作力も必要とせず、当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
バカラゲームでは、通常はバンカーに賭け勝った場合は1.95倍、プレイヤーに賭け勝った場合は2倍といったように配当率が定められており、ルールレットゲームも、何に賭けるかによって勝った場合の配当率が定まっている。そうではあるが、バカラゲームの配当算出については、競馬等と同様、賭け金総額から運営者取り分を差し引いた額を勝者に配分する方式もあり、本願発明がどちらの方式に従って配当を算出するのかは明らかでないので、どちらを採用しても想到容易であることを述べる。
まず、後者(賭け金を勝者に配分する方式)である場合の検討を行う。その場合、バンカー勝利の賭け金、プレイヤー勝利の賭け金及び引き分けの賭け金それぞれの合計を知る必要がある。従来技術についての記載ではあるものの、引用例の記載アによれば、「ディーラー用ゲームテーブル」側にも中央コンピュータがあり、それに対して遠隔端末から賭け状況を送信することが記載されているところ、この構成を引用発明においても維持すれば、「ディーラー用ゲームテーブル」側ですべての参加者の賭け状況を把握することが可能であり、翻って、配当を算出することも可能なことは明らかである。そして、引用例には、従来例が「カジノに追加負担」の点で課題がある旨指摘している(記載ア参照。)が、遠隔端末から賭け状況を送信する程度のことが大きな負担になると認めることはできないから、引用発明を出発点とした場合であっても、遠隔端末から賭け状況を送信するとの従来例の構成を維持することは阻害要因とはならない。そうであれば、ルーレットをバカラゲームに変更した際に必要となる配当情報を、「参加者がベットしたベット情報とゲーム結果とから」算出する「配当算出手段」をディーラー用ゲームテーブルに備えることは当業者にとって想到容易といわざるを得ない。
次に前者である場合の検討を行う。この場合の「配当」は配当率ではなく、配当額の意味である。引用例には「プレーヤは、賭金及びゲームプレイの情報をカジノへ送信する。・・・カジノと第三者の金融機関との間にも通信が必要である。」(記載ア)との記載があり、従来例においては、ベット情報が中央コンピュータ(本願発明における「ディーラー用端末(130)」に相当)に送信され、ディーラー側にて配当額を算出している。引用例には、従来例が「カジノに追加負担」の点で課題がある旨指摘しているが、引用発明の構成であれば、逆に遠隔端末でプレーヤの口座を管理しなければならず、ゲームへの参加と並行して金融機関等との接続が必要となり、遠隔端末の負担が大きくなることは明らかである。そして、一方が他方に比して格段に有利であると認めることはできないから、どちらの負担軽減を重視するかは任意であり、遠隔端末の負担軽減に重きを置き、配当額の算出をディーラー側で行うこと、すなわち相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。
以上のとおり、どちらの解釈を採用しても相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
画像に限らず、情報を配信するに当たりサーバを介することはごく普通のことであり、配信される情報が画像であれば、そのサーバを「映像用サーバ」と称することができるから、「映像用サーバを介して」配信することには何の困難性もない。
また、引用例の記載ウによれば、引用発明はテーブルについているプレーヤをもゲーム参加者として想定している。そして、本願明細書に従来例として、【図9】を用いた説明があるところ、「バンカーおよびプレイヤーの出目を入力装置5に入力することで、一連の出目データを小型ディスプレイ601a?601gおよび大型ディスプレイ602に表示」(段落【0016】と記載されているとおり、これらディスプレイの表示制御をするために、ディーラー用ゲームテーブル側のコンピュータ(本願発明でいう「ディーラー用端末(130)」に相当)に映像用サーバを介してリアルタイムで配信することにも困難性はない。
さらに、カジノ等の遊技場においては、不正が行われていないか等を知るために、遊技設備とは別の管理装置にて監視することが広く行われている。そして引用発明では、テーブルの挙動の映像が捉えられ、遠隔端末に配信されているのだから、管理装置側にも映像を受信できる端末(本願発明の「管理用端末(140)」に相当)を設け、同端末に映像用サーバを介してリアルタイムで配信することにも困難性はない。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(4)相違点4について
(2)で説示したことから、参加者がベットしたベット情報をディーラー側に送信し、配当情報を算出することは容易である。そのためには、参加者から送信されたベット情報を記録すべきことは当然であるから、そのための記憶手段や算出手段を1つのサーバ(本願発明の「データベースサーバ(120)」に相当)として設けることも容易である。
情報送信に当たりネットワークを介することは当然である。また、本願明細書に「ハブ150の代わりにルータを備えてもよい。」(段落【0053】)と記載があるとおり、ハブを介することは必ずしも不可欠ではないものの、複数のコンピュータ等を接続するに当たり、ハブを介することは周知であるから、「ネットワーク(N)およびハブ(150)を介してデータベースサーバ(120)へ送信」とすることにも困難性はない。
以上のとおりであるから、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(5)相違点5について
原査定の拒絶の理由に引用された特表2000-513983号公報に「ゲーム結果データベース265は、プレーヤ選択データの各集合と関連した結果を追跡しかつプレーヤID番号261、選択データ追跡番号262、ゲーム結果268、結果値269、結果の時刻271、及び支払い状況272用フィールドを含む。」(17頁24?27行)と記載されているように、一般にカジノ等の遊技場においては、遊技設備の稼働状況、顧客(プレーヤ)の遊技結果や遊技成績等を管理することが周知である。「的中か否か、配当値、履歴」は、遊技結果や遊技成績の代表的な項目であるから、これらを蓄積することには何の創作力も要しない。蓄積するためには記憶手段が必要であるところ、それが「各参加者のベット情報の記録」手段と別の記憶手段である必要はないから、「データベースサーバ(120)に蓄積」することも当然容易である。
ところで、請求項1には「端末」との用語について、「ベット情報入力端末」、「ゲーム結果入力端末」、「各端末」(参加者用スペースの端末の趣旨と認める。)、「ディーラー用端末(130)」及び「管理用端末(140)」が列挙されており、相違点5における「端末」がどの端末であるのか、その文言のみからは明らかでないが、接頭辞なしの「端末」との用語は参加者用スペースの端末の意味でのみ用いられていること、及び本願明細書に「データベースサーバ120は、ゲーム参加者12ごとのベット情報の履歴や配当情報の履歴などを人手によらず端末30やデータベースサーバ120に蓄積することができる。」(段落【0070】)と記載があることからみて、参加者用スペースの端末を意味するものと解する。
「的中か否か、配当値」は、各参加者の遊技成績そのものであり、各参加者がもっとも関心を寄せる情報である。「履歴」についても、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-220169号公報に「本発明によれば、バカラゲームの参加者に対して、各ゲームテーブルの出目傾向を図表化して分かりやすく提示することができ、これによりバカラゲームの魅力を一層に増進させることができる。」(段落【0104】)と記載されているとおり、各参加者が関心を寄せる情報である。すなわち、「的中か否か、配当値、履歴」は、ゲーム運営者が管理上必要なだけでなく、各参加者にとっても有用な情報であるから、各参加者がこれら情報を直ちに入手できるように、端末にも蓄積することも当業者にとって想到容易である。
ところで、ベット情報は参加者用スペースの端末で入力され、(2)における前者解釈であれば、ゲーム結果が判明すれば配当を参加者用スペースの端末で割り出すことができるから、必ずしも「前記データベースサーバ(120)が算出した配当情報を受信」する必要はない(後者解釈であれば、配当情報を受信しなければ蓄積できない。)。本願発明が、どのような理由で「前記データベースサーバ(120)が算出した配当情報を受信」(「前記端末やデータベースサーバ(120)に蓄積」と記載されているところ、データベースサーバ(120)が算出した配当情報を同サーバが受信すると理解することは困難であるから、受信主体は「端末」と解する。)する構成を採用したのか、発明の詳細な説明を参酌しても明らかではないものの、端末側で配当額を知るには、ゲーム結果又は配当額のどちらかの情報が必要であり、ディーラー側又はデータベースサーバにはどちらの情報も存在するのだから、「データベースサーバ(120)が算出した配当情報」を端末に送信することは設計事項程度である。
以上のとおりであるから、相違点5に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(6)本願発明の進歩性の判断
相違点1?5に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-01 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-16 
出願番号 特願2003-410745(P2003-410745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 真吾小林 英司  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 有家 秀郎
川島 陵司
発明の名称 バカラゲームシステムおよびバカラゲーム用プログラム  
代理人 野口 忠夫  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 丹羽 宏之  

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